説明

印刷装置

【課題】高価でしかも大きな体積を占めるモータの個数を2つに抑えつつも、単色印刷を繰り返すことによって行われるカラー印刷についての印刷時間の短縮を図ることができる印刷装置を提供すること。
【解決手段】搬送ローラ27の回転及びインクリボン7の巻き取りを媒体側モータ13の駆動力で行うとともに、ヘッドユニット11の上下動及びインクリボン7の巻き取りをリボン側モータ12の駆動力で行っている。そして、媒体側モータ13による搬送ローラ27の回転により用紙が印刷開始位置に往路搬送される際において、リボン側モータ12によるインクリボン7の頭出しを並行して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像情報等を被記録媒体にカラー印刷する熱転写型の印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、熱転写型の印刷装置である画像プリンタが記載されている。この画像プリンタでは、カラー印刷の三原色であるイエロー・マゼンタ・シアンの各色が順に塗布されたインクシートを用いて、イエロー・マゼンタ・シアンの各色について各1回の合計3回の印刷動作を繰り返すことにより、記録紙に所定のフルカラーの画像を印画する。
【0003】
そして、この画像プリンタでは、記録紙の搬送を行うための駆動源とインクシートの巻取を行うために駆動源とを1つのモータで兼用している。従って、高価でしかも大きな体積を占める部品であるモータを1つを削減することができ、これによって、モータについては、この兼用モータとサーマルヘッドの押圧・退避を行う他のモータの2つで足りることから、安価で小型軽量化された画像プリンタを実現することができる。
【特許文献1】特開平10−181145号公報(第2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、各色毎に行われる印刷動作は、記録紙の頭出し(印刷開始位置に搬送)、インクシートの頭出し(印刷開始位置に巻取)、サーマルヘッドの押圧、記録紙の搬送及びインクシートの巻取(単色印刷)、サーマルヘッドの退避等の各工程で構成されているので、印刷動作の一部の工程、例えば、記録紙の頭出しとインクシートの頭出しについては、工程上は同時進行することが許されることになり、印刷時間の短縮を図ることができるけれども、上記特許文献1に記載の画像プリンタのように、記録紙の搬送とインクシートの巻取とを一つのモータで行うと、その構成では、同時進行することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、高価でしかも大きな体積を占めるモータの個数を2つに抑えつつも、単色印刷を繰り返すことによって行われるカラー印刷についての印刷時間の短縮を図ることができる印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、用紙トレーと、前記用紙トレーに積層状態で収納された被記録媒体を給紙する給紙手段と、前記給紙手段で給紙された被記録媒体を往復搬送する用紙搬送手段と、前記用紙搬送手段で搬送される被記録媒体の搬送方向に対して略直角方向に長い長尺状に設けられたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを上下方向に移動させるサーマルヘッド移動手段と、前記サーマルヘッド移動手段によって前記サーマルヘッドが圧接・離間されるプラテンローラと、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとの間に配置されるカラー印字用インクリボンが収納されたリボンカセットを着脱可能な状態で支持するカセット支持手段と、前記カセット支持手段に支持されたリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取るインクリボン巻取手段と、を有し、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを離間させた状態で被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送すると同時にリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取って頭出しを行った後に前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態で被記録媒体を復路搬送しながらリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取ることにより単色印刷を行い、各単色印刷を繰り返すことによりカラー印刷が完了した被記録媒体を、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを離間させた状態で、復路搬送することにより排紙する印刷装置において、前記サーマルヘッド移動手段は、被記録媒体が給紙・排紙される際には前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを第1距離に離間させた状態にし、被記録媒体に各単色印刷がそれぞれ行われる際には前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態にし、再び被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送するときには前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを前記第1距離よりも小さい第2距離に離間させた状態にするカム機構を備え、前記用紙搬送手段と前記インクリボン巻取手段の駆動源を兼ねた第1モータと、前記第1モータが所定方向に回転する場合には、前記第1モータの駆動力を前記用紙搬送手段に伝達することにより、被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送させる一方で、前記第1モータが反所定方向に回転する場合には、前記第1モータの駆動力を前記用紙搬送手段及び前記インクリボン巻取手段に伝達することにより、被記録媒体を復路搬送させながらリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取らせる第1伝達手段と、前記サーマルヘッド移動手段と前記インクリボン巻取手段の駆動源を兼ねた第2モータと、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドが前記第1距離に離間した状態にある場合に、前記第2モータが所定方向に回転するときには、前記第2モータの駆動力を前記サーマルヘッド移動手段に伝達することにより、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態を経た後に、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとを前記第2距離に離間させるとともに、前記第2モータの駆動力を前記インクリボン巻取手段に伝達することにより、リボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取って頭出しを行わせる一方で、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドが前記第2距離に離間した状態にある場合に、前記第2モータが反所定方向に回転するときには、前記第2モータの駆動力を前記サーマルヘッド移動手段に伝達することにより、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態を経た後に、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとを前記第1距離に離間させる第2伝達手段と、を備えたこと、を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明の印刷装置では、被記録媒体の往復搬送とインクリボンの巻取を第1モータで行うとともにサーマルヘッドの移動とインクリボンの巻取を第2モータで行っており、被記録媒体の往路搬送を第1モータで行う際にインクリボンの巻取を第2モータで行うことにより、第1モータによる被記録媒体の往路搬送と第2モータによるインクリボンの頭出しを同時に行っているので、高価でしかも大きな体積を占めるモータの個数を2つに抑えつつも、単色印刷を繰り返すことによって行われるカラー印刷についての印刷時間の短縮をより図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。本実施の形態の印刷装置は、イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)の各原色印刷を繰り返した後にオーバーコート(OP)の印刷を行うことにより、映像情報等を被記録媒体にカラー印刷する熱転写型の印刷装置である。
【0009】
図2は、本実施の形態の印刷装置1とリボンカセット8の概略構成を示す斜視図である。図3は、本実施の形態の印刷装置1にリボンカセット8を装着した状態を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、本実施の形態の印刷装置1は、左右両側に配設される側壁3及び4を持つフレーム5等から構成される本体筐体2と、この側壁3に貫通される横長のリボンカセット孔6に側面側から嵌め込むことによって該フレーム5内に着脱自在に取り付けられインクリボン7が巻装されたリボンカセット8と、被記録媒体としての用紙9が複数枚積層状態で収納されて本体筐体2の前面側下部に前側から嵌め込んで装着される用紙トレー10と、本体筐体2のリボンカセット8に対向する上側に長尺状のサーマルヘッドが前側下端縁部に配設され所定回転方向に付勢されつつフレーム5の各側壁3、4に回動可能に取り付けられたヘッドユニット11と、用紙9の搬送・インクリボン7の巻取・ヘッドユニット11の回動等の駆動源であるリボン側モータ12及び媒体側モータ13等とから構成されている。
【0010】
図4は、本実施の形態の印刷装置1にリボンカセットを装着した状態を示す平面図である。図4に示す本実施の形態の印刷装置1では、カラー印刷する際の工程としては、初めて用紙9を往路搬送して印刷開始位置にセットする給紙工程と、リボンカセット8内のインクリボン7に繰り返し配置されたイエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・オーバーコート(OP)の各インクの頭出しを行う頭出工程と、ヘッドユニット11を下方向に回動させることによりサーマルヘッドをプラテンローラに圧接させるヘッドダウン工程と、用紙9の復路搬送及びインクリボン7の巻取を同時に行う単色印刷工程と、ヘッドユニット11を上方向に回動させることによりサーマルヘッドをプラテンローラから離間させるヘッドアップ工程と、再び用紙9を往路搬送して印刷開始位置にセットする再セット工程などを有している。
【0011】
各工程を実施する構成を説明するため、先ず、本実施の形態の印刷装置に組み込まれたカム機構について、図5、図6、図7に基づいて説明する。図5は、本実施の形態の印刷装置1に組み込まれたカム機構100を示した正面図である。図6と図7は、そのカム機構100の一部を抜粋して示した正面図である。
【0012】
図5に示すように、本実施の形態の印刷装置1に組み込まれたカム機構100は、第1カム101と、第2カム201、第1リンク部材301、第2リンク部材401などから構成される。
【0013】
この点、第1カム101は、略半円の形状を有しており、その円周には当該第1カム101を回動させるための歯面G1が形成されるとともに、その円周に沿って突出したリブ102が背面側に形成されている。また、第1カム101の正面側には、ヘッドユニット11を上下方向に回動させるための突起物103が形成されている。さらに、第1カム101には、当該第1カム101を側壁4の内側で軸支するための軸104が嵌挿されており、その軸104は軸支ピン105で固定されている。
【0014】
尚、側壁3の内側にも、もう1つの第1カム101のみが軸支されるが、当該第1カム101には、歯面G1やリブ102は設けられていない。
【0015】
また、第2カム201は、第1カム101の歯面G1に噛み合う歯面G2が外周に形成された歯車202と、その歯車202を同軸上に突設させた歯車203などから構成されており、その歯車203の外周には当該第2カム201を回動させるための歯面G3が形成されている。尚、符号206は、歯車202,203を軸支するための軸である。
【0016】
さらに、第2カム201における歯車203の背面側には、図6や図7に示すように、第1リンク部材301や第2リンク部材401をリンク運動させるためのカム曲線204が形成された背面案内溝205が設けられている。
【0017】
また、図6に示すように、第1リンク部材301は、略直角三角形の形状を有しており、第1の一角付近で軸302によって軸支されるともに、上記カム曲線204に当接する突起303が第2の一角付近に設けられている。従って、第2カム201が回動すると、カム曲線204と突起303の位置関係により、第1リンク部材301の第3の一角付近に嵌挿された軸304が左右に回動することが制限される。
【0018】
また、図7に示すように、第2リンク部材401は、略L字の形状を有しており、その中央付近で軸402によって軸支されるともに、上記カム曲線204に沿って摺動する突起403が一端に設けられている。従って、第2カム201が回動すると、カム曲線204と突起403の位置関係により、第2リンク部材401の他端を上下に回動させることができ、これによって、側壁5の長孔Hから突出する係合物Fが上下に移動することが制限される。尚、符号404は、第2リンク部材401を図7の紙面の時計方向に付勢させる不図示のバネの一端を係止させるための孔である。
【0019】
次に、初めて用紙9を往路搬送して印刷開始位置にセットする給紙工程について説明する。図8は、本実施の形態の印刷装置1を給紙工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。図8に示すように、本実施の形態の印刷装置1においては、図8の紙面の垂直方向に長尺状のサーマルヘッド21を設けたヘッドユニット11が不図示のトーションバネによって付勢されながら回動軸23によって軸支されており、給紙工程中では、第1カム101の突起物103でヘッドユニット11の位置を調整することにより、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とを最大に離間させている(以下、この最大離間状態を「大UP」という)。
尚、第1カム101が「大UP」を実現する位置にあるか否かはヘッドセンサ25で判別される。
【0020】
さらに、給紙工程中では、用紙9が、給紙ローラ26の回転により用紙トレー10からピックアップされ、さらに、搬送ローラ27の所定方向の回転により印刷開始位置にまで往路搬送される。このとき、用紙9の位置は用紙センサ28で判別される。そして、ここでは、給紙ローラ26及び搬送ローラ27を回転させるために、媒体側モータ13(図2等参照)の駆動力を使用している。
【0021】
すなわち、本実施の形態の印刷装置1では、図9に示すように、側壁4の外側において、媒体側モータ13の駆動力を伝達するための機構として、媒体側モータ13の駆動軸に直結したギヤG21や、ギヤG22,G23,G24が設けられている。この点、ギヤG24は搬送ローラ27(図8参照)に直結されていることから、媒体側モータ13の駆動力を搬送ローラ27(図8参照)に伝達させることができる。
尚、図9は、本実施の形態の印刷装置1の給紙工程中での側面図である。
【0022】
また、ギヤG24と同軸上に設けられたギヤG31や、ギヤG32,G33,G34、遊星ギヤG35,G36、ギヤG37が設けられており、ギヤG37は給紙ローラ26(図8参照)に直結されていることから、媒体側モータ13の駆動力を給紙ローラ26(図8参照)に伝達させることができる。
【0023】
この点、遊星ギヤG35,G36については、側壁4に軸支された第3リンク部材501の一端に遊星ギヤG36が設けられ、当該第3リンク部材501の同軸(軸支点502)上に遊星ギヤG35が設けられている。さらに、当該第3リンク部材501の他端には、側壁4の内側に突出する係合物F(図7参照)が設けられており、その係合物Fは、図8に示すように、側壁4の長孔Hに嵌通して側壁4の内側に突出することによって、第2リンク部材401の他端で押し下げられる位置に配置されている。従って、第1カム101の回転によってリンク運動する第2リンク部材401の他端で第3リンク部材501の動きを制限することができる。
【0024】
但し、第1カム101が「大UP」を実現する位置にある場合には、図8や図9に示すように、第2リンク部材401の他端は第3リンク部材501の係合物Fを押し下げておらず、これによって、遊星ギヤG36を給紙ローラ26に直結したギヤG37に噛み合わせることができる。一方、第1カム101が後述する「小UP」や後述する「DOWN」を実現する位置にある場合には、第2リンク部材401の他端は第3リンク部材501の係合物Fを押し下げるので、これによって、遊星ギヤG36を給紙ローラ26に直結したギヤG37に噛み合わせることができなくなる。
【0025】
次に、リボンカセット8内のインクリボン7に繰り返し配置されたイエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・オーバーコート(OP)の各インクの頭出しを行う頭出工程について説明する。この頭出工程を行うためには、リボンカセット8内のインクリボン7を巻き取る必要があるが、その巻き取りを行う駆動力をリボン側モータ12から伝達させている。
【0026】
先ず、イエロー(Y)のインクの頭出しについて説明する。図10は、本実施の形態の印刷装置1を頭出工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。図10に示すように、本実施の形態の印刷装置1においては、頭出工程中では、第1カム101の突起物103でヘッドユニット11の位置を調整することにより、上述した「大UP」から、後述する「DOWN」を経て、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とを最小に離間させている(以下、この最小離間状態を「小UP」という)。そのためには、第1カム101を所定方向に回転させ続けることによって突起板Jに当接させる必要があるが、その回転させる駆動力はリボン側モータ12から伝達させている。
尚、突起板Jは、側壁4の内側に設けられている。
【0027】
すなわち、図11に示すように、側壁4の内側において、リボン側モータ12の駆動力を伝達するための機構として、リボン側モータ12の駆動軸に直結したギヤG41や、ギヤG42,G43,G44,G45,G46,G47が設けられており、ギヤG47が第1カム101の歯面G1と噛み合うことにより、リボン側モータ12の駆動力で第1カム101を回転させ続けることによって突起板Jに当接させることができる。
尚、ギヤG46は、第2カム201における歯車203の歯面G3に相当する(図5〜図7参照)。また、ギヤG47は、第2カム201における歯車202の歯面G2に相当する(図5〜図7参照)。
【0028】
但し、ギヤG45にはバネクラッチKが設けられており、第1カム101が突起板Jに当接すると、リボン側モータ12が所定方向に回転を続けても、リボン側モータ12の駆動力が第1カム101に伝わることはない。
【0029】
そして、イエロー(Y)のインクの頭出しについては、以下の伝達機構により行うことができる。すなわち、図11に示すように、側壁4の外側において、リボン側モータ12の駆動力を伝達するための機構として、上述したリボン側モータ12の駆動軸に直結したギヤG41や、ギヤG42,G43,G44に加えて、ギヤG44に噛み合う遊星ギヤG51や、遊星ギヤG52、ギヤG53が設けられており、リボンカセット8(図2・図10等参照)内のインクリボン7(図2等参照)を巻き取るための巻取軸31がギヤG53と直結されていることから、リボン側モータ12の駆動力でリボンカセット8内のインクリボン7を巻き取らせることができる。尚、インクリボン7の位置は、図10等に示されたリボンセンサ34により判別される。
【0030】
この点、遊星ギヤG51,G52については、側壁4に軸支された第4リンク部材601の一端に遊星ギヤG52が設けられ、当該第4リンク部材601の同軸(軸支点602)上に遊星ギヤG51が設けられている。従って、遊星ギヤG51が回転すると、第4リンク部材601が軸支点602を中心として図11の紙面の反時計方向に回動するので、遊星ギヤG52をギヤG53に噛み合わせることができる。
【0031】
以上より、リボン側モータ12の駆動力については、リボン側モータ12を所定方向に回転させ続けても、第1カム101が突起板Jに当接した以降は、バネクラッチKによって、第1カム101に伝わることはないが、遊星ギヤG51,G52によって、リボンカセット8内のインクリボン7を巻き取らせる駆動力が発生することになる。
【0032】
尚、第4リンク部材501の中央には突起603が設けられており、第1カム101が「小UP」を実現する位置にある場合には、その突起603が第1カム101のリブ102に当接することはない。
【0033】
しかし、第1カム101が後述する「DOWN」を実現する位置にある場合には、その突起603が第1カム101のリブ102に当接することによって、第4リンク部材601が軸支点602を中心として図11の紙面の反時計方向に回動する動きを制限するので、遊星ギヤG51が回転しても、遊星ギヤG52をギヤG53に噛み合わせることができない。この点は、第1カム101が上述した「大UP」を実現する位置にある場合も同様である。
【0034】
尚、マゼンタ(M)・シアン(C)・オーバーコート(OP)の各インクの頭出しについては後述する。
【0035】
次に、ヘッドユニット11を下方向に回動させることによりサーマルヘッド21をプラテンローラ24に圧接させるヘッドダウン工程について説明する。図12は、本実施の形態の印刷装置1をヘッドダウン工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。図12に示すように、ヘッドダウン工程中では、第1カム101の突起物103でヘッドユニット11の位置を調整することにより、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とを圧接させている(以下、この圧接状態を「DOWN」という)。そのための駆動力は、第1カム101の位置が「大UP」から「DOWN」を経て「小UP」を実現する際と同様にしてリボン側モータ12から伝達させているが、頭出工程からのヘッドダウン工程では、その回転方向は逆となる。
尚、第1カム101が「DOWN」を実現する位置にあるか否かは、ヘッドセンサ25やリボン側モータ12に対する駆動パルス数などで判別される。
【0036】
次に、用紙9の復路搬送及びインクリボン7の巻取を同時に行う単色印刷工程について説明する。単色印刷工程中では、用紙9が、搬送ローラ27の反所定方向の回転により印刷終了位置にまで復路搬送される。このとき、用紙9の位置は用紙センサ28で判別される。そして、ここでは、搬送ローラ27を回転させるために、媒体側モータ13の駆動力を使用している。
【0037】
すなわち、本実施の形態の印刷装置1では、図13に示すように、側壁4の外側において、媒体側モータ13の駆動力を伝達するための機構として、上述したように、媒体側モータ13の駆動軸に直結したギヤG21や、ギヤG22,G23,G24が設けられている。そして、ギヤG24は搬送ローラ27(図12参照)に直結されていることから、媒体側モータ13の駆動力を搬送ローラ27(図12参照)に伝達させることができる。
尚、図13は、本実施の形態の印刷装置1の単色印刷工程中での側面図である。
【0038】
但し、単色印刷工程における用紙9の復路搬送は、給紙工程における用紙9の往路搬送とは反対なので、単色印刷工程と給紙工程では媒体側モータ13の回転も反対となる。
【0039】
また、単色印刷工程においては、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とが圧接しており、第1カム101が「DOWN」を実現する位置にあるので、図12や図13に示すように、第2リンク部材401の他端は第3リンク部材501の係合物Fを押し下げており、これによって、図13に示すように、遊星ギヤG36を給紙ローラ26に直結したギヤG37から離間させる。従って、単色印刷工程中は、媒体側モータ13の駆動力が給紙ローラ26に伝達することはない。
【0040】
また、単色印刷工程中では、リボンカセット8内のインクリボン7を巻き取る必要があるが、その巻き取りを行う駆動力は、搬送ローラ27の回転と同様にして、媒体側モータ13から伝達させている。
【0041】
すなわち、本実施の形態の印刷装置1では、図13に示すように、側壁4の外側において、媒体側モータ13の駆動力を伝達するための機構として、上述した媒体側モータ13の駆動軸に直結したギヤG21や、ギヤG22,G23,G24,G31に加えて、遊星ギヤG61、ギヤG62が設けられている。そして、リボンカセット8(図2・図12等参照)内のインクリボン7(図2等参照)を巻き取るための巻取軸31がギヤG62と直結されていることから、媒体側モータ13の駆動力を巻取軸31に伝達させることができる。
【0042】
もっとも、遊星ギヤG61は、第1リンク部材301の第3の一角付近に嵌挿された軸304(図6参照)によって軸支されているので、第1リンク部材301のリンク運動によって、巻取軸31に直結したギヤG62に噛み合う場合と噛み合わない場合が存在する。この点、第1リンク部材301は、その突起物303(図6参照)が第2カム201(図6参照)のカム曲線204(図6参照)に当接するので、第1カム101が「DOWN」を実現する位置にあると、第1リンク部材301の突起物303(図6参照)と第2カム201(図6参照)のカム曲線204(図6参照)の位置関係から、遊星ギヤG61をギヤG62と噛み合う位置に移動させることが許される。一方、第1リンク部材301は、第1カム101が「大UP」や「小UP」を実現する位置にあると、第1リンク部材301の突起物303(図6参照)と第2カム201(図6参照)のカム曲線204(図6参照)の位置関係から、遊星ギヤG61をギヤG62と噛み合わない位置に移動させてしまう。尚、第1リンク部材301は、上述したように、その第1の一角付近に嵌挿された軸302(図6参照)によって軸支されているが、その軸302(図6参照)は搬送ローラ27の回動軸と同一である。
【0043】
次に、ヘッドユニット11を上方向に回動させることによりサーマルヘッド21をプラテンローラ24から離間させるヘッドアップ工程について説明する。図10は、本実施の形態の印刷装置1をヘッドアップ工程中にて図2の線A−Aで切断した断面図でもある。図10に示すように、ヘッドアップ工程中では、第1カム101の突起物103でヘッドユニット11の位置を調整することにより、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とを「DOWN」から「小UP」にさせており、「大UP」から「DOWN」を経て「小UP」を実現する場合と同様にして、その回転させる駆動力はリボン側モータ12から伝達させている。
【0044】
さらに、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とが「DOWN」から「小UP」になった直後から、マゼンタ(M)・シアン(C)・オーバーコート(OP)の各インクの頭出しが行われるが、その際の伝達機構は、イエロー(Y)のインクの頭出しにおける伝達機構と同様である。
【0045】
次に、再び用紙9を往路搬送して印刷開始位置にセットする再セット工程について説明する。再セット工程中では、用紙9が、再び、搬送ローラ27の所定方向の回転により印刷開始位置にまで往路搬送されるが、その往路搬送を行う駆動力は、上述した給紙工程と同様にして、媒体側モータ13から伝達させている。
【0046】
また、再セット工程中においては、サーマルヘッド21とプラテンローラ24とが最小に離間しており、第1カム101が「小UP」を実現する位置にあるが、第1カム101が「DOWN」を実現する位置にある場合と同様にして、図10や図11に示すように、第2リンク部材401の他端は第3リンク部材501の係合物Fを押し下げており、これによって、上記図13に示すようにして、遊星ギヤG36を給紙ローラ26に直結したギヤG37から離間させる。従って、再セット工程中は、媒体側モータ13の駆動力が給紙ローラ26に伝達することはない。
【0047】
さらに、本実施の形態の印刷装置1では、オーバーコート(OP)の単色印刷が完了した用紙9については排紙されるが、その排紙をする直前に、第1カム101を「DOWN」から「大UP」を実現する位置に戻す。そのための駆動力は、第1カム101の位置が「大UP」から「DOWN」を経て「小UP」を実現する際と同様にしてリボン側モータ12から伝達させているが、その回転方向は逆となる。
【0048】
そして、第1カム101を「大UP」の位置にさせると、用紙9を排紙させるために、排紙ローラ35を回転させる必要があるが、その回転の駆動力は、単色印刷工程と同様にして、媒体側モータ13から伝達させている。尚、排紙ローラ35にはギヤG72が直結しており、媒体側モータ13の駆動力の伝達系を構成するギヤG21,G22,G23,G24,G31,G32,G33,G71,G72により、排紙ローラ35も回転するようになっている。
【0049】
尚、第1カム101が「大UP」の位置にあり、第1リンク部材301の突起物303(図6参照)と第2カム201(図6参照)のカム曲線204(図6参照)の位置関係から、遊星ギヤG61をギヤG62と噛み合わない位置に移動させることから、媒体側モータ13を回転させても、リボンカセット8(図2・図12等参照)内のインクリボン7(図2等参照)を巻き取るための巻取軸31に媒体側モータ13の駆動力が伝達することはない。
【0050】
以上より、本実施の形態の印刷装置1において、カラー印刷する際の各工程を詳細に説明したが、カラー印刷する際の各工程をタイムチャートにまとめると、図1のようになる。すなわち、本実施の形態の印刷装置1では、図1に示すように、カラー印刷する際には、サーマルヘッド21とプラテンローラ24の状態(ヘッドユニット11の上下動の状態)を、「大UP」→「DOWN」→「小UP」→「DOWN」(イエロー(Y)の単色印刷)→「小UP」→「DOWN」(マゼンタ(M)の単色印刷)→「小UP」→「DOWN」(シアン(C)の単色印刷)→「小UP」→「DOWN」(オーバーコート(OP)の単色印刷)→「大UP」の順に移行させているが、この移行は、リボン側モータ12が所定方向又は反所定方向に回転する際の駆動力により第1カム101が回動することで実現させている。
【0051】
そして、本実施の形態の印刷装置1においては、搬送ローラ27の回転及びインクリボン7の巻き取りを媒体側モータ13の駆動力で行うとともに、第1カム101の回動(ヘッドユニット11の上下動)及びインクリボン7の巻き取りをリボン側モータ12の駆動力で行っており、高価でしかも大きな体積を占めるモータの個数を2つに抑えつつも、図1のタイムチャートで示すように、媒体側モータ13による搬送ローラ27の回転により用紙9が印刷開始位置に往路搬送される際において、リボン側モータ12によるインクリボン7の頭出しを並行して行うことができるので、カラー印刷する時間の短縮化を図ることができる。
【0052】
尚、図1のタイムチャートにおいて、リボン側モータ12の「正転」「逆転」と媒体側モータ13の「正転」「逆転」は、各モータ12,13における回転方向を個別に明記するものであって、必ずしも、各モータ12,13間で相対的に回転方向を明記するものではない。
【0053】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態の印刷装置1では、単色印刷工程がイエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・オーバーコート(OP)の4色あったが、3色又は5色以上あってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、単色印刷を繰り返して行うカラー印刷の高速化技術に適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態の印刷装置のカーラー印刷のタイムチャート図である。
【図2】本実施の形態の印刷装置とリボンカセットの概略構成を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態の印刷装置にリボンカセットを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の印刷装置にリボンカセットを装着した状態を示す平面図である。
【図5】本実施の形態の印刷装置に組み込まれたカム機構を示した正面図である。
【図6】本実施の形態の印刷装置に組み込まれたカム機構の一部(第2カムと第1リンク部材)を抜粋して示した正面図である。
【図7】本実施の形態の印刷装置に組み込まれたカム機構の一部(第2カムと第2リンク部材)を抜粋して示した正面図である。
【図8】本実施の形態の印刷装置を給紙工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。
【図9】本実施の形態の印刷装置の給紙工程中での側面図である。
【図10】本実施の形態の印刷装置を頭出工程中又はヘッドダウン工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。
【図11】本実施の形態の印刷装置の頭出工程中での側面図である。
【図12】本実施の形態の印刷装置をヘッドダウン工程中にて図4の線A−Aで切断した断面図である。
【図13】本実施の形態の印刷装置の単色印刷工程中での側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 印刷装置
6 リボンカセット孔
7 インクリボン
8 リボンカセット
9 用紙
10 用紙トレー
12 リボン側モータ
13 媒体側モータ
21 サーマルヘッド
24 プラテンローラ
26 給紙ローラ
27 搬送ローラ
35 排紙ローラ
100 カム機構
101 第1カム
102 リブ
201 第2カム
204 カム曲線
301 第1リンク部材
303 突起
401 第2リンク部材
501 第3リンク部材
601 第4リンク部材
F 係合物
G21〜G24 ギヤ
G31〜G34 ギヤ
G35,G36 遊星ギヤ
G37 ギヤ
G41〜G47 ギヤ
G51,G52 遊星ギヤ
G53 ギヤ
G61〜G62 ギヤ
G71〜G72 ギヤ
H 長孔
J 突起板
K バネクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙トレーと、前記用紙トレーに積層状態で収納された被記録媒体を給紙する給紙手段と、前記給紙手段で給紙された被記録媒体を往復搬送する用紙搬送手段と、前記用紙搬送手段で搬送される被記録媒体の搬送方向に対して略直角方向に長い長尺状に設けられたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを上下方向に移動させるサーマルヘッド移動手段と、前記サーマルヘッド移動手段によって前記サーマルヘッドが圧接・離間されるプラテンローラと、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとの間に配置されるカラー印字用インクリボンが収納されたリボンカセットを着脱可能な状態で支持するカセット支持手段と、前記カセット支持手段に支持されたリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取るインクリボン巻取手段と、を有し、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを離間させた状態で被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送すると同時にリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取って頭出しを行った後に前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態で被記録媒体を復路搬送しながらリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取ることにより単色印刷を行い、各単色印刷を繰り返すことによりカラー印刷が完了した被記録媒体を、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを離間させた状態で、復路搬送することにより排紙する印刷装置において、
前記サーマルヘッド移動手段は、被記録媒体が給紙・排紙される際には前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを第1距離に離間させた状態にし、被記録媒体に各単色印刷がそれぞれ行われる際には前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態にし、再び被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送するときには前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを前記第1距離よりも小さい第2距離に離間させた状態にするカム機構を備え、
前記用紙搬送手段と前記インクリボン巻取手段の駆動源を兼ねた第1モータと、
前記第1モータが所定方向に回転する場合には、前記第1モータの駆動力を前記用紙搬送手段に伝達することにより、被記録媒体を印刷開始位置にまで往路搬送させる一方で、前記第1モータが反所定方向に回転する場合には、前記第1モータの駆動力を前記用紙搬送手段及び前記インクリボン巻取手段に伝達することにより、被記録媒体を復路搬送させながらリボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取らせる第1伝達手段と、
前記サーマルヘッド移動手段と前記インクリボン巻取手段の駆動源を兼ねた第2モータと、
前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドが前記第1距離に離間した状態にある場合に、前記第2モータが所定方向に回転するときには、前記第2モータの駆動力を前記サーマルヘッド移動手段に伝達することにより、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態を経た後に、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとを前記第2距離に離間させるとともに、前記第2モータの駆動力を前記インクリボン巻取手段に伝達することにより、リボンカセットのカラー印字用インクリボンを巻き取って頭出しを行わせる一方で、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドが前記第2距離に離間した状態にある場合に、前記第2モータが反所定方向に回転するときには、前記第2モータの駆動力を前記サーマルヘッド移動手段に伝達することにより、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを圧接させた状態を経た後に、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドとを前記第1距離に離間させる第2伝達手段と、を備えたこと、を特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−136683(P2007−136683A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329287(P2005−329287)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】