説明

印刷装置

【課題】着色剤の残量が乏しい状態であっても,印刷カウンタをより多く消化できる印刷装置を提供すること。
【解決手段】まず,印刷ジョブデータを受信する(S101)。そして,印刷ジョブの印刷が可能であるか否か,すなわち印刷ページ数が印刷カウンタ以内であるか否かを判断する(S104)。その後,トナー残量が十分であるか否かを判断する(S105)。例えば,印刷カウンタの値に対するトナーの必要残量を取得し,その必要残量が実際のトナー残量よりも少なければ,トナー残量が十分と判断する。トナー残量が十分であれば(S105:YES),非抑制モードでの印刷を行う(S121)。一方,トナー残量が十分でなければ(S105:NO),トナーの抑制を行う抑制モードでの印刷を行う(S106)。その後,印刷ページ数分の印刷カウンタを消化する(S107)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着色剤を用いて記録媒体に画像を形成する印刷装置に関する。さらに詳細には,カウンタを用いて印刷を制限することが可能な利用制限機能を有する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,カウンタを用いて印刷を制限する利用制限機能を有する印刷装置が提案されている。利用制限機能を利用して印刷量を管理することで,無闇に印刷を行う行為を抑制することが期待できる。利用制限機能を有する印刷装置としては,例えば特許文献1に,利用者毎に印刷枚数を管理できる機能を有し,カラーと白黒とでそれぞれ独立した印刷可能枚数を保持して印刷を制限するカラープリンタ装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−103753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,前記した従来の印刷装置には,次のような問題があった。すなわち,上述の特許文献1にもあるように,従来の印刷装置では,印刷カウンタを保持し,当該印刷カウンタが許容する範囲内で印刷を行うことが可能である。このような技術では,印刷カウンタが許容する範囲内であれば,問題無く印刷を行えるという印象を与えがちである。しかし,実際には,着色剤が欠乏することで,印刷カウンタが許容する範囲内であっても印刷を行うことができないことがある。このような場合に,印刷カウンタを消化しきれない。
【0004】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,着色剤の残量が乏しい状態であっても,印刷カウンタをより多く消化できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,印刷カウンタによって許容される印刷可能残数を取得する取得手段と,印刷可能残数に対する着色剤の使用可能残量を基に,着色剤の使用を抑制するか否かを判断する判断手段と,判断手段にて着色剤の使用を抑制しないと判断した場合には非抑制モードで印刷し,判断手段にて着色剤の使用を抑制すると判断した場合には非抑制モードと比較して着色剤の使用を抑制する抑制モードで印刷するように制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
本発明の印刷装置は,印刷カウンタによって印刷可能残数を管理している。印刷カウンタは,ページ数単位であってもよいし,用紙枚数単位であってもよい。また,印刷カウンタは,印刷した回数を表すカウンタであってもよいし,印刷可能な残り回数を表すカウンタであってもよい。また,印刷可能残数の管理は,装置ごとに設定してもよいし,ユーザごとに設定してもよい。
【0007】
さらに,本発明の印刷装置は,着色剤の使用量を抑制して印刷を行う抑制モードが設けられている。そして,印刷可能残数に対する着色剤の使用可能残量を基に着色剤を抑制するか否かを判断し,その判断結果を基に抑制モードへの移行を制御している。着色剤の使用可能残量は,着色剤収容器内の着色剤の実残量であってもよいし,例えば時間単位あるいはユーザ単位で着色剤の使用許可量が規定されているならば,その使用許可量に対応する残量であってもよい。
【0008】
すなわち,本発明の印刷装置は,着色剤の使用可能残量を考慮し,着色剤が不足していると判断した際には,抑制モードに移行して着色剤の使用を抑制して印刷を行う。着色剤の使用を抑制する方法としては,低濃度で印刷する,ドットを間引く,他色を代用する等が挙げられる。これにより,非抑制モードで印刷し続けた場合と比較して,着色剤の消費を低減することができ,より多くの印刷を行うことができる。その結果として,印刷カウンタをより多く消化でき,未消化の印刷カウンタが大量に残る問題,すなわち,印刷カウンタが許容する範囲内であれば,問題なく印刷を行えるという印象を有するユーザに対する不満や困惑を軽減できる。
【0009】
本発明の印刷装置の判断手段としては,例えば,所定の印刷可能残数に対する着色剤の想定必要量を規定しており,着色剤の使用可能残量が印刷可能残数に対する想定必要量よりも少ない場合に,着色剤の使用を抑制すると判断するとよりよい。すなわち,本発明の印刷装置では,印刷可能残数に対して着色剤の使用可能残量が少ないか否かの判断閾値となる着色剤の想定必要量(例えば,印刷可能残数300に対して着色剤30mg)を規定しておく。そして,その想定必要量と実際の着色剤の使用可能残量とを比較することで抑制モードへの移行を判断する。これにより,実際に着色剤の使用可能残量が欠乏してしまう前の段階から着色剤の使用を抑制できる。よって,着色剤の使用可能残量が欠乏してしまう直前で抑制モードに移行する場合と比較して,より多くのカウンタを消化することが期待できる。
【0010】
また,本発明の印刷装置の判断手段は,着色剤の使用可能残量が閾値以上の場合は,着色剤の使用を抑制しないと判断するとよりよい。すなわち,着色剤の使用可能残量が十分であるか否かの判断指標となる閾値を設定しておき,着色剤の残量がその閾値以上の際に抑制モードへの移行を制限することで,非抑制モードによる印刷が一定期間確保される。そのため,ユーザの不信感を回避できる。
【0011】
また,本発明の抑制モードでは,非抑制モードと比較して印刷濃度を薄くするとよりよい。すなわち,印刷濃度を薄くする方法(1ドットあたりの着色剤の使用量を少なくする方法)は,他色を利用したりドットを間引きしたりして着色剤の使用を抑制する方法と比較して,画質の低下を抑えつつ着色剤の使用が抑制されることを期待できる。
【0012】
また,本発明の印刷装置の制御手段は,着色剤の抑制度合いを多段階に設定可能であるとよりよい。すなわち,着色剤の残量や印刷可能残数に応じて抑制度合いを設定することで,着色剤の消費抑制と画質維持とのバランスをとることができる。
【0013】
また,上記の印刷装置の制御手段は,印刷の度に,着色剤の抑制度合いの設定を更新するとよりよい。すなわち,印刷の度に着色剤の抑制度合いを更新することで,着色剤の実際の残量に見合う適切な着色剤抑制処理を行うことができる。例えば,着色剤の消費抑制の効果によって着色剤が足りてきたら抑制度合いを軽くして画質を向上させることができる。なお,抑制度合いの見直し(フィードバック)は,1ページごとに行ってもよいし,1ジョブごとに行ってもよい。
【0014】
また,本発明の印刷装置は,判断手段にて着色剤の使用を抑制すると判断した場合に,着色剤の使用を抑制するか否かをユーザに選択させる選択手段を備え,制御手段は,選択手段によって着色剤の使用を抑制することが選択された場合に抑制モードで動作するとよりよい。すなわち,抑制モードに移行する前に,選択手段にて抑制モードへの移行をユーザに問い合わせることで,ユーザが抑制モードへの移行を認識できるとともに,ユーザの意向を反映できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,着色剤の残量が乏しい状態であっても,印刷カウンタをより多く消化できる印刷装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,利用制限機能を有する電子写真方式のプリンタに本発明を適用したものである。
【0017】
[第1の形態]
[プリンタの全体構成]
第1の形態のプリンタ100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取るスキャナ部20とを備えている。また,スキャナ部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。また,表示部41は,後述する印刷カウンタの表示が可能になっている。
【0018】
また,本形態のプリンタ100は,ネットワークを介してパーソナルコンピュータ(PC)が接続されている。そして,PCからプリンタ100に対して印刷要求が出力され,プリンタ100はその印刷要求を受け付けて印刷処理を行う。なお,プリンタ100は,ネットワークを介さず,直接PCに接続することもできる。
【0019】
[プリンタの画像形成部の構成]
画像形成部10は,周知の電子写真方式によって画像を形成するものであり,図2に示すように,画像を形成するプロセス部50と,未定着のトナー像を定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット90,91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。
【0020】
画像形成部10内には,底部に位置する給紙カセット90ないし給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ72ないし給紙ローラ73,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ74を介して上部の排紙トレイ92への導かれるように,略S字形状の搬送経路71が設けられている。すなわち,画像形成部10は,給紙カセット90ないし給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0021】
プロセス部50は,感光体ドラム1と,感光体ドラム1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体ドラム1の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と,トナーを収容するとともに静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体ドラム1上のトナー像を用紙に転写させる転写装置5と,感光体ドラム1上の残留トナーを除去するクリーニングブレード6とを有している。感光体ドラム1,帯電装置2,現像装置4,およびクリーニングブレード6は,プロセスカートリッジとして構成され,装置本体に対して着脱可能になっている。
【0022】
プロセス部50では,感光体ドラム1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,トナーが感光体ドラム1に供給される。これにより,感光体ドラム1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0023】
[プリンタの電気的構成]
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。プリンタ100は,図3に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,USBインタフェース37とを備えた制御装置30を有している。
【0024】
ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0025】
NVRAM34には,1日の制限印刷枚数と印刷カウンタとが記憶されている。印刷カウンタは,1枚の印刷ごとに1ずつ減さられる。そして,印刷カウンタが0となった後は印刷不可となる。つまり,印刷カウンタは,印刷可能残数と等価となる。印刷カウンタは,所定の期間(例えば,日や月)が経過する度にリセットされて制限印刷枚数に戻される。
【0026】
また,NVRAM34には,印刷カウンタ(印刷可能残数に相当)に対する必要最低限のトナー残量(以下,「必要トナー量」とする。想定必要量の一例)を規定するテーブル(以下,「想定必要量テーブル」とする)が記憶されている。必要トナー量は,印刷カウンタに対してトナーの残りが少ないか否かの判断材料となる。本形態では,図4に示すように,所定の印刷カウンタごとに必要トナー量を規定する想定必要量テーブル341を備えている。
【0027】
ASIC35は,プロセス部50,スキャナ部20,表示部41,ボタン群42等と電気的に接続されている。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,ASIC35を介してプリンタ100の各構成要素(例えば,搬送路71を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示)やスキャナ部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を制御する。
【0028】
ネットワークインタフェース36ないしUSBインタフェース37には,情報機器が接続され,このネットワークインタフェース36等を介して相互のデータ通信が可能になっている。
【0029】
[印刷利用制限の動作]
続いて,印刷利用制限下での印刷モードの切り替え動作について説明する。本形態のプリンタ100は,印刷のモードとして,トナーの使用量を抑えない通常の印刷を行う非抑制モードと,その非抑制モードと比較してトナーの使用量を抑えて印刷する抑制モードとを有している。プリンタ100では,印刷カウンタの値に対応して規定される必要トナー量と,トナー容器内の実際のトナー残量とを比較することによってモードが切り替えられる。
【0030】
例えば,図5に示すように,1日の制限印刷枚数として500枚が設定されているとすると,印刷カウンタの初期値は500となる。そして,トナー残量が十分ある状態では,非抑制モードでの印刷が行われる(図5の実線矢印)。そして,トナー残量が十分ある状態のままであれば,印刷カウンタが0になるまで非抑制モードでの印刷が行われる。一方,トナー残量が十分でなくなった場合,例えば印刷カウンタの値が300の段階でトナー残量が30mgより少なくなった場合,非抑制モードでの印刷を繰り返すと,トナーが早期に欠乏して印刷カウンタの値が0に到達する前に印刷不可となる可能性が高くなってしまう。そこで,トナー残量が十分でなくなったと判断した時点から抑制モードでの印刷を行う(図5の破線矢印)。
【0031】
[印刷処理]
以下,上述したような印刷利用制限下における印刷処理(取得手段,判断手段,制御手段の一例)を,図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお,本処理は,印刷ジョブを受け付ける度に実行される。
【0032】
まず,印刷ジョブデータを受信する(S101)。受信する印刷ジョブデータには,印刷データの他,各種の設定(指定トレイ,用紙サイズ,印刷方向,印刷品質等)が含まれる。
【0033】
次に,受信した印刷ジョブデータから,印刷ページ数を取得する(S102)。印刷ジョブデータに含まれる印刷データはページごとのファイルであり,ここでいう「印刷ページ数」はプロセス部50が画像を印刷する回数と等価である。次に,受信した印刷ジョブデータから,トナーの消費量を算出する(S103)。すなわち,印刷データの種類(文字,写真等)や,用紙サイズ,用紙品質等の設定を基に,トナーの予測消費量を算出する。なお,S102の処理とS103の処理の順序は逆であってもよい。
【0034】
次に,受信した印刷ジョブの印刷が可能であるか否かを判断する(S104)。具体的には,S102の処理で取得した印刷ページ数が印刷カウンタ以内であれば,印刷可能と判断する。さらには,S103の処理で算出したトナーの予測消費量がトナー容器内の実際のトナー残量より少なければ,印刷可能と判断する。印刷可能でなければ(S104:NO),印刷が不可であることを報知し(S141),印刷を中止して本処理を終了する。報知方法としては,例えば表示部41への表示や警告音の発音がある。
【0035】
なお,トナー残量は,例えば,トナーフル時のトナー量を記憶し,さらにこれまで印刷処理した際のドット数を蓄積し,そのドット数からトナーの推定総消費量を算出し,その推定総消費量を基に算出することができる。この他,公知の他の手段によってトナー残量を取得する構成としてもよい。
【0036】
印刷可能であれば(S104:YES),トナー残量が十分であるか否かを判断する(S105)。具体的には,想定必要量テーブル341を参照して印刷カウンタの値に対する必要トナー量を取得する。そして,トナー残量が必要トナー量よりも多ければ,トナー残量が十分と判断する。例えば,印刷カウンタの値が300であれば,必要トナー量は30mgとなる。そこで,実際のトナー残量が30mgよりも多ければトナー残量が十分となる。一方,実際のトナー残量が30mgよりも少なければトナーの残りが少なくなったと推定される。
【0037】
トナー残量が十分であれば(S105:YES),非抑制モードでの印刷を行う(S121)。一方,トナー残量が十分でなければ(S105:NO),トナーの抑制を行う抑制モードでの印刷を行う(S106)。本形態では,現像バイアスを低下させる等して,現像装置4による現像効率を下げ,非抑制モードよりも画像の濃度を低くする。濃度は,トナー残量やトナーの予想消費量を基に適切な濃度が設定される。濃度を低く設定することで,トナーの使用量が抑制される。
【0038】
なお,濃度は,例えば,トナーの予想消費量等を基に算出して設定してもよいし,抑制モード用に記憶された固定値であってもよい。また,トナーを抑制する方法は,濃度の変更に限るものではない。例えば,ドットの間引き,縮小印刷が適用可能である。また,カラープリンタであれば,他色で代用することで,抑制対象となっている色のトナー消費を抑制してもよい。
【0039】
S106あるいはS121の印刷処理後は,印刷ページ数分の印刷カウンタを消化する(S107)。すなわち,現在の印刷カウンタの値から印刷したページ数を減算する。S107の処理後は,本処理を終了する。
【0040】
プリンタ100は,印刷内容によって消費するトナー量は異なる。つまり,同じ印刷カウンタを1つ消費する場合であっても,ベタ塗り画像とテキスト画像とではトナーの消費量が大きく異なる。そのため,未来にどのようなジョブが投入されるか判らず,トナーの消費傾向が正確に把握できない。
【0041】
本形態のプリンタ100では,印刷カウンタの値に対応する必要トナー量と実際のトナー残量とを基に,印刷カウンタに対するトナーの使用可能残量が少ないか否かを判断している。すなわち,印刷カウンタを消化しきれない可能性があることを事前に検知している。そして,印刷カウンタに対するトナーの使用可能残量が少なくなったことを検知した場合に,抑制モードに移行して低濃度で印刷を行っている。これにより,トナーの使用が抑制され,結果としてより多くの印刷が可能になる。
【0042】
[第2の形態]
続いて,第2の形態のプリンタについて説明する。本形態のプリンタは,抑制モード時に,1ページずつ濃度を調節しながら印刷処理を行う。つまり,トナーの抑制度合いを多段階に設定可能である。この点,抑制モードへの移行時に設定した濃度で印刷し続ける第1の形態とは異なる。なお,プリンタのハード構成は,第1の形態と同じであるため,説明を省略する。
【0043】
[印刷処理]
以下,第2の形態の印刷処理について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。フローチャート中,第1の形態と同様の処理については,第1の形態と同様の符号を付し,説明を省略する。
【0044】
本形態の印刷処理では,トナー残量が十分でなければ(S105:NO),抑制モードでの印刷を行う(S211)。具体的には,まず,第1の形態と同様に,実際のトナー残量等を基に適切な濃度を設定する。そして,その濃度で1ページ分の印刷を行う。
【0045】
次に,全ページ分の印刷が終了したか否かを判断する(S212)。全ページの印刷が終了していなければ(S212:NO),印刷したページの濃度やドット数を基に,トナーの実使用量を算出する(S213)。そして,そのトナーの実使用量を基に適切な濃度を再計算し,次のページの印刷の際の濃度を更新する(S214)。一方,全ページの印刷が終了していれば(S212:YES),印刷カウンタを消化し(S107),本処理を終了する。
【0046】
本形態のプリンタでは,トナーの抑制度合いを多段階に設定可能であり,抑制モード中に適切な濃度を再計算して濃度の更新を行っている。つまり,濃度のフィードバック制御を行っている。これにより,第1の形態と比較して,濃度低下に伴う画質劣化とトナー消費の抑制とのバランスをとることができる。例えば,極端な抑制によって画質に大きな影響を与えることを回避できる。また,トナーの残り具合が回復して来た場合には,濃度を高くして画質を向上させることができる。また,フィードバック制御を行うことで,トナーの実際の残量に見合う適切なトナー抑制処理を行うことができる。
【0047】
[第3の形態]
続いて,第3の形態のプリンタについて説明する。本形態のプリンタは,抑制モードへの移行前に,ユーザに対して抑制モードでの印刷の確認を行う。この点,トナー残量が十分でなければ無条件で抑制モードに移行する第1の形態とは異なる。なお,プリンタのハード構成は,第1の形態と同じであるため,説明を省略する。
【0048】
[印刷処理]
以下,第3の形態の印刷処理(選択手段の一例)について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。フローチャート中,第1の形態と同様の処理については,第1の形態と同様の符号を付し,説明を省略する。
【0049】
本形態の印刷処理では,トナー残量が十分でなければ(S105:NO),抑制モードへの移行を行うか否かを問い合わせる(S311)。本形態では,例えば図9に示すように,プリンタの表示部41に抑制モードへの移行を問い合わせる画面を表示する。その際,スタートキーが抑制モードへ移行するためのトリガとなり,ストップキーが非抑制モードを続行するためのトリガとする。なお,印刷ジョブを送信したPCに対して抑制モードへの移行を問い合わせる信号を出力してもよい。
【0050】
次に,抑制モードへの移行が選択されたか否かを判断する(S312)。抑制モードへの移行が選択された場合には(S312:YES),抑制モードでの印刷を行う(S106)。一方,抑制モードへの移行が選択されなかった場合には(S312:NO),非抑制モードでの印刷を行う(S121)。
【0051】
本形態のプリンタでは,抑制モードへの移行前に,抑制モードへの移行を問い合わせている。そのため,抑制モードでの印刷の他,非抑制モードでの印刷を続行することもできる。つまり,抑制モードへ移行して印刷可能枚数を増やすか,非抑制モードを継続して画質を維持するかを,ユーザが選択できる。また,ユーザが選択した上で抑制モードに移行するため,ユーザが抑制モードへの移行を認識でき,低濃度で印刷されたことへの不信感を回避することができる。
【0052】
なお,本形態では,抑制モードへの移行が選択されなかった場合に,非抑制モードでの印刷を行うが,印刷を中止するとしてもよい。また,印刷の中止と非抑制モードでの印刷とを選択できるようにしてもよい。
【0053】
[第4の形態]
続いて,第4の形態のプリンタについて説明する。本形態のプリンタは,トナーの残量がフルに近い状態での,抑制モードへの移行を回避する。すなわち,トナーカートリッジの交換直後における抑制モードへの移行を回避する。この点,トナーの使用初期段階であっても抑制モードへ移行する可能性がある第1の形態とは異なる。なお,プリンタのハード構成は,第1の形態と同じであるため,説明を省略する。
【0054】
[印刷処理]
以下,第4の形態の印刷処理について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。フローチャート中,第1の形態と同様の処理については,第1の形態と同様の符号を付し,説明を省略する。なお,本形態の印刷処理では,あらかじめトナー残量がフルであるか否かの判断指標となる閾値が設定されている。
【0055】
本形態の印刷処理では,印刷可能であれば(S104:YES),実際のトナー残量が閾値以上であるか否かを判断する(S411)。トナーの残量が閾値以上の場合には(S411:YES),トナー残量が十分であるか否かの判断(S105)を行わず,非抑制モードにて印刷を行う(S121)。一方,トナー残量が閾値よりも少ない場合には(S411:NO),第1の形態と同様に,トナー残量が十分であるか否かを判断し(S105),印刷のモードを選択する。
【0056】
本形態のプリンタでは,トナー残量があらかじめ規定されている閾値以上の場合には,強制的に非抑制モードによる印刷を行うこととしている。そのため,トナー残量がフルに近い状態では抑制モードへ移行しない。すなわち,トナーの残量が十分のときは,画質を優先して着色剤の抑制は行わない方が好ましい。トナーの残量が十分のときの一例として新品に近い状態が考えられるが,そのような状態から抑制モードで印刷すると,ユーザに不信感を与えることが懸念される。そこで,トナーカートリッジの使用初期段階における抑制モードへの移行を回避することで,結果としてユーザの不信感を回避することができる。
【0057】
以上詳細に説明したように実施の形態のプリンタ100では,トナーの使用量を抑制して印刷を行う抑制モードが設けられている。そして,トナー残量(使用可能残量)を基に抑制モードへの移行を判断している。すなわち,プリンタ100は,トナーの使用可能残量を考慮し,トナーが不足していると判断した際には,抑制モードに移行してトナーの使用を抑制して印刷を行っている。これにより,非抑制モードで印刷し続けた場合と比較して,トナーの使用量を減らすことができ,より多くの印刷を行うことができる。その結果として,印刷カウンタをより多く消化でき,未消化の印刷カウンタが大量に残る問題を軽減できる。
【0058】
また,実施の形態のプリンタ100では,想定必要量テーブル341に,トナーの残りが少なくなったことの判断閾値となる必要トナー量(想定必要量)を規定している。そして,その必要トナー量と実際のトナー残量とを比較することで抑制モードへの移行を判断している。これにより,トナーの残りが少なくなったと想定される状態を検知でき,その状態から抑制モードへ移行することができる。つまり,実際にトナーが欠乏してしまう前の段階からトナーの使用を抑制できる。よって,実際にトナーが欠乏してしまう段階で抑制モードに移行する場合と比較して,より多くのカウンタを消化することが期待できる。
【0059】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタに限らず,複合機,コピー機等,印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0060】
また,実施の形態では,装置単位で印刷カウンタを管理しているが,これに限るものではない。例えば,ユーザごとに印刷カウンタを設定してもよい。さらには,ユーザごとに制限印刷枚数やトナーの使用可能量を設定してもよい。この場合,ユーザ個々に割り当てられたトナーの使用可能量を基に,抑制モードへの移行を判断する。つまり,実際のトナー残量が十分であったとしても,ユーザ個々に割り当てられたトナーの使用可能量が少ない状態となった際には,抑制モードへ移行してトナーの使用を抑制する。
【0061】
また,実施の形態では,トナー容器内の実際のトナー残量がトナーの使用可能残量となっているが,これに限るものではない。例えば,1日ごとのトナー使用可能量が規定されているならば,そのトナー使用可能量からその日の印刷で消費したトナー量の差分がトナー使用可能残量となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の形態にかかるプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図2】プリンタの画像形成部の概略構成を示す概念図である。
【図3】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】印刷可能残数に対する必要トナー量を規定するテーブル(想定必要量テーブル)の一例を示す図である。
【図5】印刷利用制限下に係るモードの遷移例を示す図である。
【図6】第1の形態にかかる印刷利用制限の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の形態にかかる印刷利用制限の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第3の形態にかかる印刷利用制限の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】抑制モード移行問い合わせ画面の一例を示す図である。
【図10】第4の形態にかかる印刷利用制限の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
10 画像形成部
20 スキャナ部
30 制御部
41 表示部
42 ボタン群
50 プロセス部
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷カウンタによって許容される印刷可能残数を取得する取得手段と,
前記印刷可能残数に対する着色剤の使用可能残量を基に,着色剤の使用を抑制するか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にて着色剤の使用を抑制しないと判断した場合には非抑制モードで印刷し,前記判断手段にて着色剤の使用を抑制すると判断した場合には前記非抑制モードと比較して着色剤の使用を抑制する抑制モードで印刷するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記判断手段は,印刷可能残数に対する着色剤の想定必要量を規定しており,着色剤の使用可能残量が印刷可能残数に対する前記想定必要量よりも少ない場合に,着色剤の使用を抑制すると判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する印刷装置において,
前記判断手段は,着色剤の使用可能残量が閾値以上の場合は,着色剤の使用を抑制しないと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記抑制モードでは,前記非抑制モードと比較して印刷濃度を薄くすることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記制御手段は,着色剤の抑制度合いを多段階に設定可能であることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載する印刷装置において,
前記制御手段は,印刷の度に,着色剤の抑制度合いの設定を更新することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記判断手段にて着色剤の使用を抑制すると判断した場合に,着色剤の使用を抑制するか否かをユーザに選択させる選択手段を備え,
前記制御手段は,前記選択手段によって着色剤の使用を抑制することが選択された場合に前記抑制モードで動作することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52250(P2010−52250A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219192(P2008−219192)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】