説明

印鑑照合装置および印鑑照合方法

【課題】押印の際の力の大きさや方向等によって生じる差異と軽微な異印が押印されたことによって生じる差異とを区別することが可能な技術を提供する。
【解決手段】印鑑照合装置10は、取得した照合用画像データから照合印画像データを抽出し、抽出した照合印画像データと登録印画像データとを重ね合わせる印鑑照合制御部100と、印鑑照合制御部100が重ね合わせた照合印画像データと登録印画像データとにおいて一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較する誤差画像判定補助部500と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらかじめシステム上に登録された登録印と、帳票上の押印欄に押印された印影とを照合する印鑑照合装置および印鑑照合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印鑑照合装置は、照合したい印影(以下、「被照合印影」という)をイメージ読取装置などで画像化して画像データ(以下、「照合印画像データ」という)を取得する。また、印鑑照合装置は、あらかじめ登録された対応する印影(以下、「登録印影」)を画像化したデータ(以下、「登録印画像データ」という)をデータベースから取り出す。そして、印鑑照合装置は、両画像(「照合印画像」と「登録印画像」)の傾きや位置を調整して両画像を重ね合わせて表示している。オペレータは表示された画像の確認を行っている。この確認において、オペレータが両画像の違いを見つける作業を支援する仕組みが従来から存在している。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている技術では、両画像に細線化処理を施すことで、押印時の力の具合による線幅の差の吸収を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−245459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、照合印画像の線分を鮮明に得られない場合が多くある。線分が正しく得られなければ有効な細線化画像の作成はできない。
【0006】
他にも、照合印画像と登録印画像とにおいて重なり合う部分の面積の割合を数値化して表示する一般的な方式がある。しかし、押印された印影は押印の際の力の大きさや方向等によってある程度異なるため、この数値によって、押印の際の力の大きさや方向等によって生じる差異と軽微な異印(正常な印とは異なる印)が押印されたことによって生じる差異とを区別することは困難であるという問題がある。また、照合印画像と登録印画像との差異が小さい場合にその差異を見落としてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、押印の際の力の大きさや方向等によって生じる差異と軽微な異印が押印されたことによって生じる差異とを区別することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、事前に登録されている登録印画像データと照合印が押印された照合印画像データとを照合することによって照合印が登録印と同印であるか否かを判定する印鑑照合装置であって、照合用画像データを記憶する照合用画像データ記憶部と、照合用画像データ記憶部が記憶する照合用画像データを管理する照合用画像データ管理部と、登録印画像データを記憶する登録印画像データ記憶部と、登録印画像データ記憶部が記憶する登録印画像データを管理する登録印画像データ管理部と、照合用画像データ記憶部から照合用画像データ管理部を介して照合用画像データを取得し、取得した照合用画像データから照合印画像データを抽出し、抽出した照合印画像データと登録印画像データとを重ね合わせる印鑑照合制御部と、印鑑照合制御部が重ね合わせた照合印画像データと登録印画像データとにおいて一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較する誤差画像判定補助部と、を備えることを特徴とする、印鑑照合装置が提供される。
【0009】
誤差画像判定補助部は、一方の中心画素が所定の画素値を有する画素であり、他方の中心画素または隣接周囲画素に所定の画素値を有する画素が1つも無い場合に、対応する画素に誤差が生じていると判定し、その他の場合には対応する画素が一致していると判定することとしてもよい。
【0010】
誤差画像判定補助部は、誤差が生じていると判定した対応する画素と、一致していると判定した対応する画素とを異なる画素値として設定した誤差画像データを生成することとしてもよい。印鑑照合制御部は、誤差画像データを表示部に出力することとしてもよい。
【0011】
印鑑照合制御部は、誤差画像データに設定されている画素値を、誤差画像を分割して得られる領域別に所定量以上誤差があるか否かを判定し、所定量以上誤差があると判定した領域を誤差領域として判定することとしてもよい。印鑑照合制御部は、誤差領域を特定するための情報を表示部に出力することとしてもよい。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、事前に登録されている登録印画像データと照合印が押印された照合印画像データとを照合することによって照合印が登録印と同印であるか否かを判定し、照合用画像データを記憶する照合用画像データ記憶部と、照合用画像データ記憶部が記憶する照合用画像データを管理する照合用画像データ管理部と、登録印画像データを記憶する登録印画像データ記憶部と、登録印画像データ記憶部が記憶する登録印画像データを管理する登録印画像データ管理部と、を備える印鑑照合装置による印鑑照合方法であって、印鑑照合制御部により、照合用画像データ記憶部から照合用画像データ管理部を介して照合用画像データを取得し、取得した照合用画像データから照合印画像データを抽出し、抽出した照合印画像データと登録印画像データとを重ね合わせるステップと、誤差画像判定補助部により、印鑑照合制御部が重ね合わせた照合印画像データと登録印画像データとにおいて一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較するステップと、を含むことを特徴とする、印鑑照合方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、押印の際の力の大きさや方向等によって生じる誤差と軽微な異印が押印されたことによって生じる誤差とを区別することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置の機能構成を示す図である。
【図2】本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】照合用画像の一例を示す図である。
【図4】照合印画像の一例を示す図である。
【図5】照合印が正常な場合において算出された差分抽出結果の一例を示す図である。
【図6】照合印に誤りがある場合において算出された差分抽出結果の一例を示す図である。
【図7】照合印の印影が鮮明ではない場合における差分抽出画像の例を示す図であり、(a)は、照合印の印影にムラがある場合、(b)は、照合印の印影が細い場合、(c)は、照合印の印影が太い場合を示している。
【図8】照合印に誤りがある場合において算出された差分抽出結果の他の一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る印鑑照合装置の機能構成を示す図である。
【図10】対応する画素に「誤差」が生じている場合と対応する画素が「一致」している場合として考えられる組み合わせを示す図である。
【図11】本実施形態に係る印鑑照合装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本実施形態に係る印鑑照合装置によって作成された誤差画像の一例を示す図である。
【図13】本実施形態に係る印鑑照合装置によって判定された誤差領域を示す図である。
【図14】本実施形態に係る印鑑照合装置によってさらに狭い範囲によって特定された誤差領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<本実施形態に適用しうる一般的な技術>
[構成の説明]
図1は、本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置の機能構成を示す図である。図1に示したように、本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置10’は、印鑑照合制御部100’と、登録印画像データ管理部200と、登録印画像データ記憶部210と、照合用画像データ管理部300と、照合用画像データ記憶部310と、帳票読取部400とを備えるものである。印鑑照合制御部100’は、事前に登録されている登録印画像データと照合印が押印された照合印画像データとを照合することによって照合印が登録印と同印であるか否かを判定する。
【0017】
登録印画像データ管理部200は、登録印画像データを管理するものである。すなわち、登録印画像データ管理部200は、登録印画像データの登録を受け付けて登録印画像データ記憶部210に記憶させ、印鑑照合制御部100’からの指示により、登録印画像データ記憶部210から登録印画像データを読み出して印鑑照合制御部100’に出力する。登録印画像データ管理部200は、例えば、スキャナ等の入力装置、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、例えば、入力装置が登録印画像を読み込むことによって登録印画像データを取得して登録印画像データ記憶部210に記憶させる。また、登録印画像データ管理部200は、例えば、CPUが印鑑照合装置10’内に存在するRAM(Random Access Memory)等のメモリに格納されたプログラムを実行することによってその機能が実現される。また、登録印画像データ管理部200は、通信装置等によって構成され、印鑑照合装置10’の外部に備えられた入力装置が取得した登録印画像データを通信装置によって受信することとしてもよい。
【0018】
登録印画像データ記憶部210は、登録印画像データを記憶するものである。登録印画像データ記憶部210は、登録印画像データ管理部200から登録印画像データが入力されると、入力された登録印画像データを記憶する。また、登録印画像データ管理部200からの指示により、記憶している登録印画像データを登録印画像データ管理部200に出力する。登録印画像データ記憶部210は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等によって構成される。
【0019】
照合用画像データ管理部300は、照合用画像データを管理するものである。すなわち、照合用画像データ管理部300は、帳票読取部400から照合用画像データが入力されると、入力された照合用画像データを照合用画像データ記憶部310に記憶させ、印鑑照合制御部100’からの指示により、照合用画像データ記憶部310から照合用画像データを読み出して印鑑照合制御部100’に出力する。照合用画像データ管理部300は、例えば、CPU等によって構成され、CPUが印鑑照合装置10’内に存在するRAM等のメモリに格納されたプログラムを実行することによってその機能が実現される。
【0020】
照合用画像データ記憶部310は、照合用画像データを記憶するものである。照合用画像データ記憶部310は、照合用画像データ管理部300から照合用画像データが入力されると、入力された照合用画像データを記憶する。また、照合用画像データ管理部300からの指示により、記憶している照合用画像データを照合用画像データ管理部300に出力する。照合用画像データ記憶部310は、例えば、HDD等によって構成される。
【0021】
帳票読取部400は、照合用画像データを取得するものである。すなわち、帳票読取部400は、照合用画像データを取得して照合用画像データ管理部300に出力する。帳票読取部400は、例えば、スキャナ等の入力装置等によって構成され、例えば、入力装置が帳票を読み取ることによって照合用画像データを取得して照合用画像データ管理部300に出力する。帳票読取部400が照合用画像データを取得する手法については特に限定されるものではなく、印鑑照合を行う必要のある照合印が押印された帳票以外のものから照合用画像データを取得することとしてもよい。
【0022】
印鑑照合制御部100’は、印鑑照合装置10’内の各機能ブロックを制御して照合処理を行うものである。具体的には、印鑑照合制御部100’は、照合印画像データと登録印画像データとを照合する。印鑑照合制御部100’は、照合をするに際して、照合用画像データを出力する旨を示す指示を照合用画像データ管理部300に出力し、照合用画像データ管理部300から入力された照合用画像データから照合印画像データを抽出して照合印画像データを取得する。すなわち、印鑑照合制御部100’は、照合用画像データ管理部300を介して照合用画像データ記憶部310から照合用画像データを取得する。また、印鑑照合制御部100’は、登録印画像データを出力する旨を示す指示を登録印画像データ管理部200に出力し、登録印画像データ管理部200から登録印画像データの入力を受け付けることで登録印画像データを取得する。すなわち、印鑑照合制御部100’は、登録印画像データ管理部200を介して登録印画像データ記憶部210から登録印画像データを取得する。
【0023】
印鑑照合制御部100’は、取得した照合印画像データと登録印画像データとを重ね合わせて差分量を算出し、算出した差分量を判定することによって、照合印と登録印とが同じものであるのか(照合印が正常であるのか)、異なるものであるのか(照合印に誤りがあるのか)について判定する。印鑑照合制御部100’は、例えば、CPU等によって構成され、CPUが印鑑照合装置10’内に存在するRAM等のメモリに格納されたプログラムを実行することによってその機能が実現される。
【0024】
[動作の説明]
続いて、本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置が実行する処理の概要を図2に示す。図2は、本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0025】
ステップS10では、印鑑照合制御部100’は、照合用画像データ管理部300を制御し、照合用画像データ管理部300が帳票読取部400から取得した照合用画像データを取得する。帳票読取部400は、照合用画像をスキャンして照合用画像データを取得する。
【0026】
スキャンされる照合用画像の一例を図3に示す。図3は、照合用画像の一例を示す図である。ステップS20では、印鑑照合制御部100’は、帳票上(照合用画像311)の座標位置などを基に、照合用画像311から印影画像(例えば、図3に示した「捺印」の矩形枠内の領域)の切り出し(照合印画像データの抽出)を行う。切り出された照合印影画像(照合印画像)の一例を図4に示す。図4は、照合印画像の一例を示す図である。図4に示す照合印画像312(312a)は、正常な照合印(登録印と同じ照合印)が押印された画像である。
【0027】
ステップS30では、印鑑照合制御部100’は、登録印画像データ管理部200を制御し、登録印影画像データ(登録印画像データ)を取得する。登録印画像データ記憶部210に登録印画像データと口座番号とが対応付けられて記憶されている場合には、印鑑照合制御部100’は、例えば、口座番号を指定して所望の登録印画像データを登録印画像データ管理部200から取得することができる。このときに指定される口座番号は、例えば、印鑑照合制御部100’が、帳票読取部400により照合用画像311の「口座番号」欄から読み取った読み取りデータから口座番号を抽出することによって取得される。
【0028】
ステップS40では、印鑑照合制御部100’は、登録印画像の向きを変更しながら、登録印画像と照合印画像とにおいて重なる部分が大きい状態における登録印画像の向き・位置を決定する。重なる部分とは、対応する登録印画像を構成する画素と照合印画像を構成する画素との間で画素値が等しくなる部分を意味するものとする。画素値とは、画素の色や明るさを示す値である。なお、ここでは、印鑑照合制御部100’は、登録印画像の向きを変更することとするが、照合印画像の向きを変更することとしてもよい。ステップS50では、ステップS40で重ね合わせた画像同士を比較し、対応する画素間における画素値の差分値を算出する。算出した差分値を各画素に対応する座標位置に並べて得られる画像を差分抽出画像とする。
【0029】
図5は、照合印が正常な場合において算出された差分抽出結果の一例を示す図である。図5に示すように、印鑑照合装置10’は、登録印画像212と照合印画像(正常な印)312(312a)との差分抽出結果として差分抽出画像511(511a)を取得する。図5において、一方の画像の画素が黒で、他方の画像の対応する画素が白である場合には、その画素は、差分値を有する画素として黒で示されている。図5に示す例では、照合印が正常であるため(照合印が鮮明であり、登録印と同印であるため)、差分値を有する画素はほとんど存在しない。
【0030】
図6は、照合印に誤りがある場合において算出された差分抽出結果の一例を示す図である。図6に示すように、印鑑照合装置10’は、登録印画像212と照合印画像(誤りのある印)312(312b)との差分抽出結果として差分抽出画像511(511b)を取得する。図6に示す例では、照合印に誤りがあるため(照合印が登録印と異なる印であるため)、差分値を有する画素が多く存在する。
【0031】
ステップS60では、印鑑照合制御部100’は、ステップS50で算出した差分値(差分量)を集計して、照合印が登録印と同じ印であるか否かを判定する。印鑑照合制御部100’は、例えば、差分値を有する画素の数を累計し、累計して得た画素数があらかじめ決めた閾値Thr1以下であれば、同じ印と判定する。印鑑照合制御部100’は、例えば、差分値が「0」以外である画素が差分値を有すると判定してもよいし、差分値が閾値Thr2よりも大きい画素が差分値を有すると判定してもよい。ここでは、画素値として、「0(白)」と「1(黒)」とのうちのいずれかの値を取り得るものとし、差分値が「0」以外である画素が差分値を有すると判定することにする。これらの閾値Thr1、Thr2等は、例えば、印鑑照合装置10’内に存在するRAM等のメモリに格納されているものとする。
【0032】
[本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置のまとめ]
本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置について説明したが、実際に押印される照合印の印影は鮮明であるとは限らず、照合印と登録印との間にはしばしば多くの差異が検出される。例を3つ図7に示す。図7は、照合印の印影が鮮明ではない場合における差分抽出画像の例を示す図であり、図7(a)は、照合印の印影にムラがある場合、図7(b)は、照合印の印影が細い場合、図7(c)は、照合印の印影が太い場合を示している。
【0033】
図7(a)は、登録印画像212と照合印画像(ムラのある印影)312(312c)との差分抽出画像511(511c)を示している。図7(b)は、登録印画像212と照合印画像(細い印影)312(312d)との差分抽出画像511(511d)を示している。図7(c)は、登録印画像212と照合印画像(太い印影)312(312e)との差分抽出画像511(511e)を示している。
【0034】
図8は、照合印に誤りがある場合において算出された差分抽出結果の他の一例を示す図である。図8に示すように、印鑑照合装置10’は、登録印画像213と照合印画像(誤りのある印)313との差分抽出結果として差分抽出画像512を取得する。図8に示す例では、図6に示した場合と同様に、照合印に誤りがあるため(照合印が登録印と異なる印であるため)、差分値を有する画素が存在する。
【0035】
上記した手法によって照合印が登録印と同じ印であるか否かを判定する場合に、単純に許容する差分画素量(Thr1)を大きくすれば、登録印と異なる照合印を見落とすことになってしまう。また、上記した特許文献1に開示された技術においても、鮮明でない画像や、太く連結情報が変わってしまった画像に対して細線化処理は有効に働かない。
【0036】
<第1本実施形態>
[構成の説明]
図9は、本実施形態に係る印鑑照合装置の機能構成を示す図である。図9に示すように、本発明の第1実施形態に係る印鑑照合装置10は、印鑑照合制御部100の機能が印鑑照合制御部100’の機能と異なり、誤差画像判定補助部500をさらに備えている点において、上記した本実施形態に適用しうる一般的な印鑑照合装置10’と相違する。したがって、印鑑照合装置10が備える構成のうちで、印鑑照合装置10’が備える構成と同一の機能を有するものについては、印鑑照合装置10’が備える構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
印鑑照合制御部100は、印鑑照合装置10内の各機能ブロックを制御して照合処理を行うものである。具体的には、印鑑照合制御部100は、照合印画像データと登録印画像データとを照合する。印鑑照合制御部100は、照合をするに際して、照合用画像データを出力する旨を示す指示を照合用画像データ管理部300に出力し、照合用画像データ管理部300から入力された照合用画像データから照合印画像データを抽出して照合印画像データを取得する。また、印鑑照合制御部100は、登録印画像データを出力する旨を示す指示を登録印画像データ管理部200に出力し、登録印画像データ管理部200から登録印画像データの入力を受け付けることで登録印画像データを取得する。印鑑照合制御部100は、取得した照合印画像データと登録印画像データとを誤差画像判定補助部500に出力する。
【0038】
また、印鑑照合制御部100は、誤差画像判定補助部500から入力された「誤差画像」データを差分量として判定して、照合印と登録印とが同じものであるか(照合印が正常であるのか)、異なるものであるのか(照合印に誤りがあるのか)について判定する。印鑑照合制御部100は、上記の判定を、「誤差画像」を構成する領域別に行うこととしてもよい。印鑑照合制御部100は、判定結果を印鑑照合装置10に接続された表示部(不図示)に出力する。
【0039】
誤差画像判定補助部500は、以下に説明する「誤差画像」を取得する処理を実行する。誤差画像判定補助部500は、例えば、CPUが印鑑照合装置10内に存在するRAM等のメモリに格納されたプログラムを実行することによってその機能が実現される。
【0040】
「誤差画像」は、重なり合う部分が大きくなるように照合印画像と登録印画像とを重ね合わせて各画像の対応する座標に対し、図10に示すようなパターンで処理を行うことによって得られる画像である。
【0041】
具体的には、誤差画像判定補助部500は、一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較する。誤差画像判定補助部500は、比較の結果、「一方の中心画素が黒の(所定の画素値を有する)画素であり、他方の中心画素または隣接周囲画素に黒の(所定の画素値を有する)画素が1つも無い場合」には対応する画素に「誤差」が生じていると判定し、「その他の場合」には対応する画素が「一致」していると判定する。隣接周囲画素は、中心画素を除いて中心画素の周囲N画素までに存在する画素とする。Nの値は特に限定されるものではなく、隣接周囲画素の数は、(2N+1)−1となる。Nが1の場合は中心画素の1つ外側を囲うように存在する8つの画素が隣接周囲画素となる。
【0042】
図10は、対応する画素に「誤差」が生じている場合と対応する画素が「一致」している場合として考えられる組み合わせを示す図である。破線枠は、隣接周囲探索範囲を示している。隣接周囲探索範囲内の画素が隣接周囲画素である。ただし、隣接探索範囲の中心に存在するのは中心画素である。図10では、登録印画像の中心画素および隣接周囲画素を「登録」と示しており、照合印画像データの中心画素および隣接周囲画素を「被照合」と示している。
【0043】
誤差画像判定補助部500は、図10に示したように対応する画素について「一致」または「誤差」を判定結果として求め、対応する画素を指定する座標に対応付けて値を格納できる配列に判定結果を格納する。配列は、例えば、印鑑照合装置10内に存在するRAM等のメモリに確保されているものとする。この配列は、「誤差」と「一致」とで塗り分けられた画像データと考えられるため、「誤差画像」データとよぶことにする。誤差画像判定補助部500は、このようにして、誤差が生じていると判定した対応する画素と、一致していると判定した対応する画素とを異なる画素値として設定した誤差画像データを生成する。
【0044】
[動作の説明]
提案する手順を図11に示す。図11は、本実施形態に係る印鑑照合装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS10〜ステップS40の処理については、図2を用いて説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
ステップS150では、誤差画像判定補助部500は、ずらし差分抽出を行い、上記した「誤差画像」の作成を行う。Nに設定される値は特に限定されるものではないが、例えば、照合印画像の幅の3%程度(または5%程度でもよい)の値を指定することとすればよい。印鑑照合制御部100は、「誤差画像」を、対応する画素間で画素値が一致しない場合でも、その画素からN画素離れた隣接周囲に存在する画素に対しても探索を行う。このため、印鑑照合制御部100は、対応する画素間において画素値に差異が生じている画像間において、画素値に差異が生じている連続領域が比較的広い範囲にひろがっている場合にはその連続領域については誤差が生じていると判定することができる。他方において、画素値に差異が生じている連続領域が比較的狭い範囲にしかひろがっていない場合にはその連続領域については誤差が生じていないと判定することができる(誤差を許容することができる)。
【0046】
図12は、本実施形態に係る印鑑照合装置によって作成された誤差画像の一例を示す図である。図12に示すように、誤差画像612を構成する画素のうち、軽微な異印が押印されたことによって登録印画像213と照合印画像313との間に差異が生じている連続領域(「太田」の点に相当する部分)を構成する画素については大きく黒で示されている。他方において、押印の際の力の大きさや方向等によって両画像に差異が生じている連続領域(印鑑の縁の部分や、「大田」に相当する部分)については、小さく黒で示されている。
【0047】
ステップS160では、印鑑照合制御部100は、誤差画像の差分量(誤差画像データに設定されている画素値)を領域別に判定する。ステップS150で誤差画像判定補助部500が作成した誤差画像612を分割する。分割する方向については特に限定されるものではないが、本実施形態では、縦方向、横方向に誤差画像612を分割するものとする。印鑑照合制御部100は、分割して得られる各領域内に所定量以上誤差があるか否かを判定し、所定量以上誤差があると判定した場合、その領域を誤差領域として判定する。所定量以上とする理由は、照合印画像に存在する微細なノイズを除外するためである。また、各領域内の誤差となる部分の前記連続領域について、連続領域の広さ(連続している画素の数等)が一定以上の場合に、所定量の誤差があると判断するようにしてもよい。これにより細かい誤差が除外されるので、さらにノイズの除外の精度を上げることができる。
【0048】
図13は、本実施形態に係る印鑑照合装置によって判定された誤差領域を示す図である。図13に示した例では、印鑑照合制御部100は、誤差画像612を縦方向および横方向にそれぞれ4分割することとしている。また、図13に示した例では、印鑑照合制御部100は、誤差領域613(613a)を所定量以上誤差がある領域であると判定している。また、印鑑照合制御部100は、誤差領域613(613a)を新たに誤差画像として設定し、新たに設定した誤差画像に対して同様に誤差領域を判定する処理をさらに行うこともできる。これによって、所定量以上誤差がある領域をさらに狭い範囲によって特定することができる。
【0049】
図14は、本実施形態に係る印鑑照合装置によってさらに狭い範囲によって特定された誤差領域を示す図である。図14に示した例では、印鑑照合制御部100は、所定量以上誤差がある領域としての誤差領域613(613b)をさらに狭い範囲によって特定している。
【0050】
ステップS170では、ステップS160で決定した誤差領域を視覚的に把握することができるように表示するために、印鑑照合制御部100は、誤差領域を特定するための情報を表示部(不図示)に出力する。なお、誤差領域を視覚的に把握することができるように表示する手法としては、例えば、誤差領域を拡大して表示したり、誤差領域を囲う色付き枠を表示したりする手法があげられる。
【0051】
[効果の説明]
(1)本実施形態によれば、押印の際の力の大きさや方向等によって生じる誤差と軽微な異印が押印されたことによって生じる誤差とを区別することが可能となる。この効果は、印鑑照合装置10が上記した誤差画像を作成すること、印鑑照合装置10が誤差領域を判定すること等によって奏するものである。
(2)印鑑照合装置10は、誤差画像を表示部に表示させることができる。また、印鑑照合装置10は、誤差領域を注視すべき場所として表示部に強調表示させることができる。このため、印鑑照合装置10のオペレータ等は、押印に使用された印鑑の印が異印であるか否かを容易に確認することが可能となる。
【0052】
[変形例]
上記では、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
10 印鑑照合装置
10’ 印鑑照合装置
100 印鑑照合制御部
100’ 印鑑照合制御部
200 登録印画像データ管理部
210 登録印画像データ記憶部
212 登録印画像
213 登録印画像
300 照合用画像データ管理部
310 照合用画像データ記憶部
311 照合用画像
312 照合印画像
313 照合印画像
400 帳票読取部
500 誤差画像判定補助部
511 差分抽出画像
512 差分抽出画像
612 誤差画像
613 誤差領域




【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に登録されている登録印画像データと照合印が押印された照合印画像データとを照合することによって前記照合印が前記登録印と同印であるか否かを判定する印鑑照合装置であって、
照合用画像データを記憶する照合用画像データ記憶部と、
前記照合用画像データ記憶部が記憶する前記照合用画像データを管理する照合用画像データ管理部と、
前記登録印画像データを記憶する登録印画像データ記憶部と、
前記登録印画像データ記憶部が記憶する前記登録印画像データを管理する登録印画像データ管理部と、
前記照合用画像データ記憶部から前記照合用画像データ管理部を介して前記照合用画像データを取得し、取得した前記照合用画像データから照合印画像データを抽出し、抽出した前記照合印画像データと前記登録印画像データとを重ね合わせる印鑑照合制御部と、
前記印鑑照合制御部が重ね合わせた前記照合印画像データと前記登録印画像データとにおいて一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較する誤差画像判定補助部と、
を備えることを特徴とする、印鑑照合装置。
【請求項2】
前記誤差画像判定補助部は、
一方の前記中心画素が所定の画素値を有する画素であり、他方の前記中心画素または前記隣接周囲画素に前記所定の画素値を有する画素が1つも無い場合に、対応する画素に誤差が生じていると判定し、その他の場合には対応する画素が一致していると判定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の印鑑照合装置。
【請求項3】
前記誤差画像判定補助部は、
誤差が生じていると判定した前記対応する画素と、一致していると判定した前記対応する画素とを異なる画素値として設定した誤差画像データを生成する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の印鑑照合装置。
【請求項4】
前記印鑑照合制御部は、
前記誤差画像データを表示部に出力する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の印鑑照合装置。
【請求項5】
前記印鑑照合制御部は、
前記誤差画像データに設定されている画素値を、前記誤差画像を分割して得られる領域別に所定量以上誤差があるか否かを判定し、所定量以上誤差があると判定した領域を誤差領域として判定する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の印鑑照合装置。
【請求項6】
前記印鑑照合制御部は、
前記誤差領域を特定するための情報を表示部に出力する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の印鑑照合装置。
【請求項7】
事前に登録されている登録印画像データと照合印が押印された照合印画像データとを照合することによって前記照合印が前記登録印と同印であるか否かを判定し、照合用画像データを記憶する照合用画像データ記憶部と、前記照合用画像データ記憶部が記憶する前記照合用画像データを管理する照合用画像データ管理部と、前記登録印画像データを記憶する登録印画像データ記憶部と、前記登録印画像データ記憶部が記憶する前記登録印画像データを管理する登録印画像データ管理部と、を備える印鑑照合装置による印鑑照合方法であって、
前記印鑑照合制御部により、前記照合用画像データ記憶部から前記照合用画像データ管理部を介して前記照合用画像データを取得し、取得した前記照合用画像データから照合印画像データを抽出し、抽出した前記照合印画像データと前記登録印画像データとを重ね合わせるステップと、
前記誤差画像判定補助部により、前記印鑑照合制御部が重ね合わせた前記照合印画像データと前記登録印画像データとにおいて一方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素と他方の画像を構成する画素のうちで対応する座標によって指定される中心画素および中心画素の隣接周囲画素とを比較するステップと、
を含むことを特徴とする、印鑑照合方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−231543(P2010−231543A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78927(P2009−78927)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】