説明

危険情報通信システム、危険情報送信装置、危険情報受信装置及び危険情報通知方法

【課題】 障害物を運転者が確認した場合に、車線変更によって障害物を回避する危険性を提示することが可能な「危険情報通信システム、危険情報送信装置、危険情報受信装置及び危険情報通知方法」を提供する。
【解決手段】 第1の車両10では、第1の車両10の位置、向き、速度と障害物60の位置とに基づいて、危険領域A〜Bと第1の車両10が危険領域A〜Bにいる時間帯とを計算して第2の車両20に送信し、第2の車両20では、第2の車両20の位置、向き、速度と受信した情報とに基づいて、第2の車両20が危険領域にいる時間帯を計算し、各時間帯が一致した場合に警告情報を出力するようにしているので、第2の車両20が車線変更によって障害物60を回避したときの危険性を提示することができ、運転者は、第2の車両20が危険な状態に陥らないようにすることができ、事故を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険情報通信システム、危険情報送信装置、危険情報受信装置及び危険情報通知方法に関し、特に、車両が走行する際の危険性を通知する危険情報通信システム、危険情報送信装置、危険情報受信装置及び危険情報通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図8に示すように、自車両100と他車両200とが道路300上の対向車線を互いに近付くように走行している場合に、自車両100と他車両200との間の自車両100と同じ車線上に人などの障害物400が存在するときがある。このような場合には、自車両100の運転者は、障害物400を確認した時点で、自車両100を対向車線に車線変更させることで障害物400を回避する。また、自車両100を車線変更させようとしたときに他車両200が障害物400に近接しているときは、車線変更した自車両100が他車両200に衝突してしまう可能性が高くなるので、自車両100の運転者は、自車両100を徐行又は停車させて障害物400を回避する。
【0003】
ところが、自車両100から見て、他車両200と障害物400とが建造物や地形などの壁500によって生じる死角600に存在する場合には、自車両100の運転者は、障害物400を確認するのが遅れてしまう。そのため、自車両100の走行速度や自車両100と障害物400との距離によっては、自車両100の運転者は、障害物400を回避するために自車両100を徐行又は停車させることができず、しかも、他車両200が障害物400に近接していると自車両100を車線変更させることもできなくなってしまい、非常に危険な状態に陥ってしまうという問題があった。
【0004】
ところで、自車両以外の他の物体(障害物)の位置情報を、外部装置から通信によって取得し、自車両と他の物体との位置関係に基づいて自車両と他の物体との接触可能性を判断して報知する技術が知られている(例えば特許文献1など)。
【特許文献1】特開2002−342899号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、自車両以外の他の物体との接触可能性を判断して報知することはできるが、自車両が接触可能性のある他の物体を回避した場合に、更に別の物体に接触する可能性を判断して報知することができない。従って、前述したような、自車両100が車線変更して障害物400を回避した場合に自車両100が他車両200と接触する危険性があることを報知することができず、非常に危険な状態に陥ってしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、自車両が走行している場合に、自車両が障害物を回避しようとしたときに他車両に接触する非常に危険な状態に陥ることを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の危険情報通信システムでは、危険情報送信装置は、検出した障害物の位置、第1の車両の位置、向き、速度に基づいて第1の車両が障害物と重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、第1の車両が危険領域にいる時間帯を危険情報として生成して送信する。また、危険情報受信装置は、送信された危険情報を受信し、受信した危険情報、検出した第2の車両の位置、向き、速度に基づいて第2の車両が危険領域にいる時間帯を検出し、第1の車両が危険領域にいる時間帯と第2の車両が危険領域にいる時間帯とが一致した場合に警告情報を出力するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、第2の車両が障害物を回避するために車線変更すると第1の車両(対向車両)に接触する危険性があることを示す情報が第2の車両にて提示されるので、第2の車両の運転者に対して、車線変更によって障害物を回避することが危険であるということを前もって認識させることができ、非常に危険な状態に陥ることを防止することができる。従って、事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による危険情報通信システムの構成例を示すブロック図である。また、図2は、カーブにおける第1の車両10と第2の車両20と障害物60との位置関係を示す図である。図1に示すように、本実施形態による危険情報通信システムは、危険情報送信装置1と危険情報受信装置11とにより構成されている。また、本実施形態による危険情報通信システムでは、危険情報送信装置1は、図2に示す第1の車両10に搭載されており、危険情報受信装置11は、第2の車両20に搭載されている。
【0010】
図2において、第1の車両10及び第2の車両20はカーブ状の道路30上の反対車線を向かい合って走行している。また、第1の車両10に搭載された危険情報送信装置1は障害物60(例えば人など)を検出可能であり、第2の車両20に搭載された危険情報受信装置11は壁40によって生じる死角50により障害物60を検出することができない。また、障害物60は第2の車両20と同じ車線を第2の車両20に向かって走っている。
【0011】
図1において、危険情報送信装置1は、障害物検出部2、第1の自車両状況検出部3、第1の制御部4、送信部5を備えて構成されている。また、危険情報受信装置11は、第2の自車両状況検出部12、受信部13、第2の制御部14、警告部15を備えて構成されている。
【0012】
障害物検出部2は、図示しないレーダーなどによって第1の車両10から障害物60までの距離及び方向を検出して障害物位置情報として出力する。ここで、障害物位置情報は、第1の車両10の位置から見た障害物60の相対的な位置を示す情報である。レーダーとしては、赤外線レーザーレーダーやミリ波レーダーが使用される。なお、レーダーの代わりにステレオカメラ等を使用することで障害物60を検出しても良いし、レーダー及びステレオカメラを併用しても良い。
【0013】
赤外線レーザーレーダーは、赤外線レーザーのパルスを発射し、赤外線レーザーが障害物60から反射してくるまでの時間により赤外線発射位置から障害物60までの距離を求める。また、赤外線レーザーレーダーは、パルスの発射方向により障害物60の方向を求める。
【0014】
また、ミリ波レーダーは、赤外線レーザーレーダーに比べて雨や霧、夜間等の悪条件下において有利であり、例えば76GHzの電波を発射し、電波が障害物60から反射してくるまでの時間により電波発射位置から障害物60までの距離を求める。また、ミリ波レーダーは、電波の発射方向により障害物60の方向を求める。
【0015】
また、ステレオカメラは、左右の同じ高さに設置した二つのカメラによって撮影された画像を立体画像認識することで、障害物60までの距離及び方向を求める。
【0016】
第1の自車両状況検出部3は、第1の車両10の現在位置、向き、及び速度を測定する。第1の自車両状況検出部3は、自立航法センサ、GPS(Global Positioning System)受信機、位置計算用CPU(Central Processing Unit)等で構成されている。自立航法センサは、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して第1の車両10の移動距離を検出する車速センサ(距離センサ)3aと、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)とを含む。自立航法センサは、これらの車速センサ及び角速度センサからの出力によって第1の車両10の相対位置及び方位を計算する。
【0017】
位置計算用CPUは、自立航法センサから出力される第1の車両10の相対的な位置及び方位のデータに基づいて、絶対的な自車両位置(推定車両位置)及び自車両方位を計算する。また、GPS受信機は、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して、3次元測位処理或いは2次元測位処理を行って第1の車両10の絶対位置及び方位を計算する(自車両方位は、現時点における自車両位置と1サンプリング時間ΔT前の自車両位置とに基づいて計算する)。
【0018】
第1の制御部4は、第1の自車両状況検出部3によって検出された第1の車両10の現在位置及び向きを現在位置情報及び向き情報として入力する。また、障害物検出部2から出力された障害物位置情報を入力する。そこで、第1の制御部4は、第1の自車両状況検出部3によって得られた第1の車両10の現在位置情報と障害物検出部2によって得られた障害物位置情報とに基づいて障害物60の絶対位置を計算する。また、第1の制御部4は、第1の自車両位置検出部3に搭載された車速センサ3aによって検出された第1の車両10の速度を速度情報として入力する。
【0019】
そして、第1の制御部4は、第1の車両10の現在位置情報と向き情報と速度情報と障害物60の絶対位置情報とに応じて、第1の車両10と障害物60とが重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、第1の車両10が危険領域にいる時間帯を計算して危険情報を生成する。ここで、第1の車両10と障害物60とが重なる状態とは、第1の車両10と障害物60とが道路30上で並ぶ状態を指す。また、危険情報とは、少なくとも危険領域の位置を示す位置情報と第1の車両10が危険領域にいる時間帯を示す情報とを含むものである。
【0020】
送信部5は、第1の制御部4にて生成された危険情報を第2の車両20に送信する。また、危険情報受信装置11に搭載された受信部13は、危険情報送信装置1から送信された危険情報を受信する。送信部5と受信部13との間の通信は、図示しない地上波アンテナなどを用いた車々間通信により行われる。ここで、地上波アンテナを用いた車々間通信は、いわゆる無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth、特定省電力無線機などの通信手段を用いて行う。なお、道路30上に中継装置を設置して、その中継装置を介して通信を行う路車間通信を使用しても良い。
【0021】
第2の自車両状況検出部12は、第2の車両20の現在位置、向き、及び速度を検出し、第2の車両20の現在位置情報、向き情報、速度情報として出力する。ここで、第2の自車両状況検出部12の構成は、危険情報送信装置1に搭載された第1の自車両状況検出部3と同一であるので説明を省略する。
【0022】
第2の制御部14は、受信部13によって受信した危険情報を入力し、第2の自車両状況検出部12によって検出された第2の車両20の現在位置情報、向き情報を入力する。また、第2の制御部14は、第2の自車両状況検出部12に搭載された車速センサ12aによって検出された第2の車両20の速度情報を入力する。
【0023】
また、第2の制御部14は、第2の車両20の現在位置情報、向き情報、速度情報に基づいて、危険情報により得られる危険領域に第2の車両20がいる時間帯を検出する。そして、第2の制御部14は、第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが一致するか否かを調べる。第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが一致すると第2の制御部14にて判断した場合には、第2の制御部14は、警告情報を生成し出力する。ここで、時間帯が一致するとは、時間帯同士が完全に一致する場合だけではなく、時間帯の一部が重複する場合を含むものである。また、警告情報は、第2の車両20が車線変更して障害物60を回避した場合に第1の車両と接触する危険性があることを示す。
【0024】
警告部15は、第2の制御部14にて生成された警告情報を入力し、第2の車両20内に警告音声や警告画像を出力する。ここで、警告部15は、警告情報に基づいて、警告を行うための警告音声を生成して図示しないスピーカにより出力したり、警告情報に基づいて、警告を行うための警告画像を生成して図示しない表示装置により出力したりする。
【0025】
第2の車両20の運転者は、警告音声や警告画像を確認することにより、死角50にいる障害物60を実際に確認する前に、それを回避するために車線変更をすることは危険であると認識することができる。そのため、障害物60が確認できた時点で第2の車両20を余裕をもって徐行させたり、停車させたりして障害物60を回避し、第1の車両10との衝突も回避することができる。
【0026】
なお、警告が出されていない場合は、第2の車両20の運転者は、障害物60が確認できた時点で第2の車両20を車線変更して障害物60を回避すれば良い。また、第2の車両20の運転者は、第2の車両20を徐行させたり、停車させたりして障害物60を回避しても良い。
【0027】
図3は、カーブにおける危険領域の例を示す図である。また、図4は、カーブにおける危険領域の例を直線状に模式して示す概念図である。図3及び図4において、O地点は、第1の車両10に搭載された障害物検出部2が障害物60を検出する位置である。また、A地点は、第1の車両10の先端がこの地点に到達すると、車線変更を行って走行してきた第2の車両20が安全に元の車線に戻れなくなってしまうという限界位置である。また、B地点は、第1の車両10の後端がこの地点より先に進んでいないと、第2の車両20が安全に車線変更を行って走行することができないという限界位置である。
【0028】
また、X地点は、第1の車両10が障害物60を検出したときの障害物60の位置である。また、Xa地点は、第1の車両10の先端がA地点に到達したときの障害物60の位置である。また、Xb地点は、第1の車両10の後端がB地点を通過したときの障害物60の位置である。
【0029】
ここで、図4に示すように、障害物60の速度は第1の車両10の速度V及び第2の車両20の速度Vに比べて充分に無視できるほど遅いため、第1の車両10の先端がA地点に到達したときの障害物60のXa地点及び第1の車両10の後端がB地点を通過したときの障害物60のXb地点はX地点と同じ位置とする。また、カーブにおける道路30の内側の車線と外側の車線との長さの差は無視できるものとする。ここで、危険領域は、A地点からB地点までの間の領域である。
【0030】
例えば、図4(b)に示すように、第2の車両20が第1の車両10とすれ違う前に車線変更を行って障害物60を回避して元の車線に戻る場合には、第2の車両20は、第1の車両10の先端がA地点に到達する前に元の車線に戻っていなければならない。第1の車両10の先端がA地点に到達する前に元の車線に戻れない場合には、第1の車両10と第2の車両20とが接触してしまう危険性が高くなってしまう。ここで、A地点と障害物60の位置であるX地点との第1の距離AXは、第2の車両20が障害物60と接触せずに第1の車両10とも接触しない距離である。
【0031】
なお、第1の距離AXは、固定値でも良いし可変値でも良い。また、第1の距離AXが可変値である場合には、第1の距離AXは第2の車両20の長さLのm倍の値としても良い。ここで、第1の車両10にて第1の距離AXを求める場合に、第2の車両の長さLを使用するときには、第1の車両10は、図示しない受信部などにより第2の車両20から第2の車両20の長さLを受信するようにしても良い。また、第2の車両20の長さLは、第1の車両10に搭載された危険情報送信装置1の図示しないデータベースなどに記憶された固定値であっても良い。
【0032】
また、mは、第1の車両10の速度V及び第2の車両20の速度Vに基づいて考えられる安全率を代表する値である。安全率とは、第1の車両10と第2の車両20が接触しない可能性を示す確率であり、mの値は固定値でも良いし可変値でも良い。また、mの値が可変値である場合には、mは、第1の車両10の速度V及び第2の車両20の速度Vの一方又は両方が遅い場合には小さい数値となり、速い場合には大きい数値となる。また、第1の車両10の速度Vや第2の車両20の速度Vによってmの値を決めるためのテーブル情報を持つようにしても良い。ここで、第1の車両10にてmの値を求める場合に、第2の車両の速度Vを使用するときには、第1の車両10は、図示しない受信部などにより第2の車両20から第2の車両20の速度Vを受信するようにしても良い。
【0033】
また、図4(c)に示すように、第2の車両20が第1の車両10とすれ違った後で、車線変更を行って障害物60を回避するためには、第2の車両20は、第1の車両10の後端がB地点を通過し終わっていなければ車線変更を行うことができない。第1の車両10の後端がB地点を通過し終わる前に車線変更を行った場合には、第1の車両10と第2の車両20とが接触してしまう危険性が高くなってしまう。ここで、B地点と障害物60の位置であるX地点との第2の距離BXは、第2の車両20が第1の車両10と接触せずに障害物60を回避できる距離である。
【0034】
なお、第2の距離BXは、固定値でも良いし可変値でも良い。また、第2の距離BXが可変値である場合には、第2の距離BXは第2の車両20の長さLのn倍の値としても良い。ここで、第1の車両10にて第2の距離BXを求める場合に、第2の車両の長さLを使用するときには、第1の車両10は、図示しない受信部などにより第2の車両20から第2の車両20の長さLを受信するようにしても良い。また、第2の車両20の長さLは、第1の車両10に搭載された危険情報送信装置1の図示しないデータベースなどに記憶された固定値であっても良い。
【0035】
距離BXを求める場合のmの値も、nの値と同様に固定値でも良いし可変値でも良い。また、m=nとしても良い。
【0036】
第1の車両10に搭載された危険情報送信装置1の第1の制御部4は、障害物検出部2にて検出した障害物60までの距離OX及び向きを障害物位置情報として入力し、第1の自車両状況検出部3にて検出した第1の車両10の現在位置情報、向き情報及び速度情報Vを入力する。
【0037】
また、第1の制御部4は、第1の車両10の先端がA地点に到達するまでの時間Ta及び第1の車両10の後端がB地点を通過するまでの時間Tbを演算する。第1の車両10の先端がA地点に到達するまでの時間Taは、O地点からA地点までの距離をOA、O地点からX地点までの距離をOXとすると、
Ta=OA/V=(OX−AX)/V
となる。
【0038】
また、第1の車両10の後端がB地点を通過するまでの時間Tbは、第1の車両10の長さをL、O地点からB地点までの距離をOBとすると、
Tb=(OB+L)/V=(OX+BX+L)/V
となる。
【0039】
また、第1の制御部4は、第1の車両10から障害物60までの距離OXから第1の距離AXを減算することで、第1の車両10からA地点までの距離OAを求める。そして、その求めた第1の車両10からA地点までの距離OAと、第1の車両10の現在位置情報と向き情報とに基づいて、A地点の位置情報を取得する。
【0040】
また、第1の制御部4は、第1の車両10から障害物60までの距離OXに第2の距離BXを加算することで、第1の車両10からB地点までの距離OBを求める。そして、その求めた第1の車両10からB地点までの距離OBと、第1の車両10の現在位置情報と向き情報とに基づいて、B地点の位置情報を取得する。
【0041】
そして、第1の制御部4は、A地点の位置情報、B地点の位置情報と、時間Ta、時間Tbを含む危険情報を生成する。
【0042】
次に、本実施形態による危険情報通信システムの動作及び危険情報通知方法について説明する。図5は、本実施形態による危険情報通信システムの動作及び危険情報通知方法を示すフローチャートである。図5において、まず、第1の車両10に搭載された危険情報送信装置1の障害物検出部2は、第1の車両10の周辺の障害物60を検出し、障害物位置情報を出力する(ステップS1)。また、第1の自車両状況検出部3は、第1の車両10の現在位置、向き、速度を検出する(ステップS2)。
【0043】
そして、第1の制御部4は、ステップS1にて検出された障害物60の位置情報と、ステップS2にて検出された第1の車両10の現在位置情報、向き情報、速度情報とに基づいて、第1の車両10と障害物60とが重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域の境界点A,Bの位置情報、及び、第1の車両10が危険領域にいる時間帯を表す情報Ta,Tbを計算して、これらの情報を含む危険情報を生成する(ステップS3)。第1の制御部4は、生成した危険情報を送信部5に出力し、送信部5は、危険情報を送信する(ステップS4)。
【0044】
一方、第2の車両20に搭載された第2の制御部14は、受信部13が危険情報を受信したか否かを調べる(ステップS5)。受信部13が危険情報を受信しないと第2の制御部14にて判断した場合には(ステップS5にてNO)、ステップS5の処理を繰り返す。一方、受信部13が危険情報を受信したと第2の制御部14にて判断した場合には(ステップS5にてYES)、第2の自車両状況検出部12は、第2の車両20の現在位置、向き、速度を検出する(ステップS6)。
【0045】
第2の制御部14は、第2の車両20の現在位置情報、向き情報、速度情報に基づいて、危険情報により得られる危険領域に第2の車両20がいる時間帯を計算する(ステップS7)。具体的には、第2の車両20の現在位置からB地点に到達するまでの時間Tb´、現在位置からA地点に到達するまでの時間Ta´を計算する。
【0046】
また、第2の制御部14は、第1の車両10が危険領域にいる時間帯Ta〜Tbと第2の車両20が危険領域にいる時間帯Tb´〜Ta´とが一致するか否かを調べる(ステップS8)。時間帯が一致しないと第2の制御部14にて判断した場合には(ステップS8にてNO)、第2の制御部14は、ステップS5の処理に戻る。
【0047】
一方、時間帯が一致すると第2の制御部14にて判断した場合には(ステップS8にてYES)、第2の制御部14は、警告情報を生成し警告部15に出力する。警告部15は警告情報を第2の車両20内に出力する(ステップS9)。そして、ステップS5の処理に戻る。ここで、第2の車両20内に警告情報が出力されると、第2の車両20の運転者は、障害物60が確認された場合に、障害物60を回避して車線変更を行うと、対向車両である第1の車両10と接触する危険性があることを認識できる。これに応じて第2の車両20の運転者は、第2の車両20の速度を落として徐行運転したり、第2の車両20を停車させたりすることが可能である。
【0048】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、第1の車両10において、危険領域と第1の車両10が危険領域にいる時間帯とを計算して危険情報として第2の車両20に送信する。そして、第2の車両20において、第1の車両10と同じ時間帯に第2の車両20が危険領域にいるか否かを判定して、同じ時間帯に危険領域にいると判断した場合には警告情報を出力するようにしている。これによって、第2の車両20の運転者が障害物60を確認した後で車線変更によって回避すると第1の車両10に接触する危険性があることを示す警告情報を事前に提示することができるので、第2の車両20の運転者は、第2の車両20の車線変更によって障害物60を回避すべきか、第2の車両20の徐行や停車によって障害物60を回避すべきかを適切に判断して、非常に危険な状態に陥ることを防止することができる。従って、事故を防止することができる。
【0049】
なお、前記実施形態において、第1の車両10が走行している道路30が死角50を有する危険な状態であるか否かを調べて、危険な状態であるときのみ危険情報を生成して送信するようにしても良い。このようにすれば、第1の車両10が見通しのきく道路を走行しており、第2の車両20の運転者が第1の車両10及び障害物60の状況を充分に確認できるような状況では、第2の車両20に対して警告が行われないので、第2の車両20の運転者は、煩わしさを感じることがなくなる。
【0050】
具体的には、図6に示すように、危険情報送信装置1に地図データ記憶部6を設けるようにしている。地図データ記憶部6は、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)やCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの図示しない地図データ記憶媒体から読み出した地図データを記憶する。第1の制御部4は、第1の自車両状況検出部3から出力される第1の車両10の現在位置情報に基づいて、地図データ記憶部6に記憶された地図データから第1の車両10の周辺の地図データを読み出す。
【0051】
第1の制御部4は、第1の車両10の現在位置情報及び第1の車両10の周辺の地図データに基づいて、第1の車両10が走行している道路30の状況を検証する。そして、第1の車両10が走行している道路30が所定の危険条件に該当するか否かを判定し、危険条件に該当する場合に、危険領域及び時間帯を計算する。ここで、危険条件とは、道路30がカーブなどの形状であり、壁40などによって死角50を生じるという条件である。
【0052】
なお、危険条件に該当するか否かの検証は、第1の車両10の現在位置情報及び第1の車両10の周辺の地図データを用いる方法に限定されない。例えば、第1の車両10の走行軌跡によって第1の車両10がカーブなどの形状の道路30上に存在することを推測し、第1の車両10が走行している道路30が危険条件に該当するか否かを判定するようにしても良い。また、第1の車両10に搭載したレーダーなどによって第1の車両10の周辺に壁40などが存在することを検出して第1の車両10が走行している道路30が危険条件に該当するか否かを判定するようにしても良い。
【0053】
また、本実施形態では、第2の車両20が第1の車両10から危険情報を受信したときには必ず、第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが一致するか否かを調べ、その結果に応じて警告情報を生成しているが、これに限定されない。例えば、第2の車両20が危険情報を受信したときに、第2の車両20が危険領域に到達するか否かを第2の制御部14にて調べ、到達しない場合には警告情報を全く生成しないようにしても良い。ここで、第2の車両20が危険領域に到達しない場合とは、例えば、第2の車両20が第1の車両10と同じ車線を同じ方向に走行している場合や、危険領域の存在する道路とは別の道路を走行している場合、危険領域に至る途中の分岐点から別の道路に進行する場合などを指す。別の道路に進行するか否かは、図示しないナビゲーション装置に設定されている誘導経路の情報や、ウインカーなどの情報に基づいて判断することが可能である。
【0054】
また、前述した実施形態では、危険情報送信装置1が第1の自車両状況検出部3を備え、危険情報受信装置11が第2の自車両状況検出部12を備えているが、これに限定されない。例えば、危険情報送信装置1は、別途設けられたナビゲーション装置などから第1の車両10の現在位置情報、向き情報、速度情報を取得するようにしても良いし、危険情報受信装置11は、別途設けられたナビゲーション装置などから第2の車両20の現在位置情報、向き情報、速度情報を取得するようにしても良い。
【0055】
また、前述した実施形態では、障害物60が第2の車両20と同じ車線を第2の車両20に向かって移動しているが、これに限定されない。例えば、障害物60は、第1の車両10と同じ車線に存在していても良いし、第2の車両20と同じ方向に移動していても良いし、停止していても良い。
【0056】
また、前述した実施形態では、障害物60の速度が第1の車両10の速度V及び第2の車両20の速度Vに比べて充分に遅いため無視しているが、これに限定されない。例えば、障害物60の速度が速くなると、障害物60が停止しているときと比較して、第1の車両10が障害物60を追い越すまでの時間が長くなり、第1の車両10が障害物60と重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域が大きくなる。そのため、障害物60の速度に応じて危険領域の大きさを変えるようにしても良い。ここで、障害物60の速度を求めるためには、例えば、次のような処理を行う。まず、第1の車両10と障害物60とが移動したことにより変化した両者の距離を求める。求めた両者の距離を移動前後の時間差で除算すると、両者の速度差が得られる。そして、第1の車両10の速度V1と両者の速度差との差を計算することで障害物60の速度が得られる。ここで、第1の車両10と障害物60とは同じ方向又は逆の方向に移動しているものとする。
【0057】
また、前述した実施形態では、第2の車両20から見て第1の車両10及び障害物60が死角50に存在しているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、第1の車両10、第2の車両20、障害物60が直線状の道路30上にあっても良い。
【0058】
また、前述した実施形態では、第1の車両10に危険情報送信装置1が搭載されており、第2の車両20に危険情報受信装置11が搭載されているが、これに限定されない。例えば、第1の車両10に危険情報受信装置11を搭載して、第2の車両20に危険情報送信装置11を搭載しても良いし、第1の車両10及び第2の車両20に危険情報送信装置1及び危険情報受信装置11を搭載しても良い。これにより、障害物60を回避しない第1の車両10に対しても、第2の車両20が車線変更を行うことによる危険性を提示することができる。
【0059】
また、前述した実施形態では、第1の車両10が危険領域にいる時間帯Ta〜Tbと第2の車両20が危険領域にいる時間帯Tb´〜Ta´とが一致するか否かを検証しているが、これに限定されない。例えば、第2の車両20が第1の車両10から危険情報を受信したときに、第2の車両20がそのときの現在位置から時間Ta〜Tb後にいる位置の領域を計算し、その領域が危険領域と一致するか(少なくとも一部の領域が重なるか)否かを検証するようにしても良い。
【0060】
また、前述した実施形態では、第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが一致した場合に警告情報を出力するようにしているが、これに限定されない。例えば、危険の度合いに応じて警告情報の出力の有無を決定しても良いし、危険の度合いに応じて警告情報の内容(例えば、音声や画像によるメッセージの内容など)を変更するようにしても良い。ここで、第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが完全に一致する場合には、危険の度合いを高くし、警告情報を出力するようにする。一方、第1の車両10が危険領域にいる時間帯と第2の車両20が危険領域にいる時間帯とが一部だけ一致する場合には、危険の度合いを低くし、警告情報を出力しないようにする。
【0061】
その他、前述した本実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両が障害物を回避して走行する際の危険性を通知する警告装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態による危険情報通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】カーブにおける第1の車両と第2の車両と障害物との位置関係を示す図である。
【図3】カーブにおける危険領域の例を示す図である。
【図4】カーブにおける危険領域の例を示す概念図である。
【図5】本実施形態による危険情報通信システムの動作及び危険情報通知方法を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態による危険情報通信システムの変形例を示すブロック図である。
【図7】第1の車両と第2の車両と障害物との位置関係及び危険領域の他の例を示す図である。
【図8】カーブにおける自車両の死角の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 危険情報送信装置
2 障害物検出部
3,12 自車両位置検出部
3a,12a 車速センサ
4,14 制御部
5 送信部
11 危険情報受信装置
13 受信部
15 警告部
10 第1の車両
20 第2の車両
30 道路
40 壁
50 死角
60 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両の位置、向き、速度を検出する第1の自車両状況検出部と、前記第1の車両の周辺の障害物を検出する障害物検出部と、前記第1の自車両状況検出部により検出された前記第1の車両の位置と向きと速度と前記障害物検出部により検出された前記障害物の位置情報とに基づいて前記第1の車両が前記障害物と重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯を危険情報として生成する第1の制御部と、前記第1の制御部にて生成された危険情報を送信する送信部と、を備えた危険情報送信装置と、
第2の車両の位置、向き、速度を検出する第2の自車両状況検出部と、前記送信部によって送信された危険情報を受信する受信部と、前記第2の自車両状況検出部により検出された前記第2の車両の位置と向きと速度と前記受信部により受信した危険情報とに基づいて前記第2の車両が前記危険領域にいる時間帯を検出し、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯と前記第2の車両が前記危険領域にいる時間帯とが一致する場合に警告情報を生成する第2の制御部と、前記第2の制御部にて生成された警告情報を出力する警告部と、を備えた危険情報受信装置と、
を備えたことを特徴とする危険情報通信システム。
【請求項2】
前記第1の制御部は、前記第1の自車両状況検出部により検出された前記第1の車両の位置と前記第1の車両の周辺の地図データとに基づいて、前記第1の車両が死角を有する道路上に存在するという危険条件に該当するか否かを判定して、前記危険条件に該当すると判断した場合に前記危険情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の危険情報通信システム。
【請求項3】
第1の車両の位置、向き、速度を検出する自車両状況検出部と、
前記第1の車両の周辺の障害物を検出する障害物検出部と、
前記自車両状況検出部により検出された前記第1の車両の位置と向きと速度と前記障害物検出部により検出された前記障害物の位置情報とに基づいて前記第1の車両が前記障害物と重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯を危険情報として生成する制御部と、
前記制御部にて生成された危険情報を第2の車両に対して送信する送信部と、
を備えた危険情報送信装置。
【請求項4】
障害物及びその障害物を検出した第1の車両が重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯を示す危険情報を受信する受信部と、
第2の車両の位置、向き、速度を検出する自車両状況検出部と、
前記自車両状況検出部により検出された前記第2の車両の位置と向きと速度と前記受信部により受信した危険情報とに基づいて、前記第2の車両が前記危険領域にいる時間帯を検出し、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯と前記第2の車両が前記危険領域にいる時間帯とが一致する場合に警告情報を生成する制御部と、
前記制御部にて生成された警告情報を出力する警告部と、
を備えた危険情報受信装置。
【請求項5】
第1の車両の周辺の障害物を検出する第1のステップと、
前記第1の車両の位置、向き、速度を検出する第2のステップと、
前記第1のステップにて検出された前記障害物の位置情報と、前記第2のステップにて検出された前記第1の車両の位置と向きと速度とに基づいて、前記第1の車両が前記障害物と重なる領域とその周辺の領域とを含む危険領域、及び、前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯を危険情報として生成する第3のステップと、
前記第3のステップにて生成された危険情報を前記第1の車両から第2の車両に向けて送信する第4のステップと、
前記第4のステップにて送信された危険情報を前記第2の車両にて受信する第5のステップと、
前記第2の車両の位置、向き、速度を検出する第6のステップと、
前記第6のステップにて検出した前記第2の車両の位置と向きと速度と前記第5のステップにて受信した危険情報とに基づいて、前記第2の車両が前記危険領域に到達する時間帯を検出する第7のステップと、
前記第1の車両が前記危険領域にいる時間帯と前記第2の車両が前記危険領域にいる時間帯とが一致するか否かを判定する第8のステップと、
前記第8のステップにて、前記時間帯が一致すると制御部にて判断した場合に、警告情報を生成する第9のステップと、
前記第9のステップにて生成された警告情報を出力する第10のステップと、
を備えたことを特徴とする危険情報通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−236030(P2006−236030A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50153(P2005−50153)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】