説明

卵白含気泡組成物及び該卵白含気泡組成物を用いた菓子

【課題】
起泡性(泡立ち易さ、気泡の状態)、気泡安定性(気泡の経時安定性)、作業性に優れた卵白含気泡組成物を提供することである。
また、浮き(膨らみ具合)が良く、特有の食感、口溶けを有する菓子類を提供することである。
【解決手段】
本発明の卵白含気泡組成物は、卵白、卵黄を含有し、下記(a)及び(b)の条件を満たすことを特徴とする。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に製菓領域で用いられる起泡性、気泡安定性、作業性に優れた卵白含気泡組成物及びこれを含有する浮きが良く、特有の食感、口溶けを有する菓子類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーキの生地、ダックワーズ等の菓子類は、配合される卵、特に卵白の起泡力によりソフトな食感、良好な口溶けを有している。これらの菓子類は、オールインミックス法、共立て法、別立て法等により製造される。
【0003】
オールインミックス法により製造される菓子類は、全卵、小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、水、乳化剤等の全原料を一度に混合することで製造される。
共立て法により製造される菓子類は、全卵を起泡させることで得られる全卵の含気泡物に小麦粉等のその他の原料を加えて混合することで製造される。
【0004】
別立て法により製造される菓子類は、全卵を卵白と卵黄に分けた後、卵白を起泡させることで調製した卵白の含気泡物と、卵黄に小麦粉等のその他の原料を加えて混合することで調製した卵黄生地を、混合することで製造される。特に卵白は、起泡させる際に砂糖等の糖類が配合されることが多く、得られる卵白の含気泡組成物は、いわゆるメレンゲと呼ばれるものである。卵白の含気泡組成物を用いて製造される菓子類は、卵白の優れた起泡力により、オールインミックス法や共立て法により製造される菓子類よりも浮きが良く、よりソフトな食感、良好な口溶けを有するものとなる。卵白の含気泡組成物は、シフォンケーキ、バターケーキ、スポンジケーキ等の別立て法による生地の製造やその他、スフレ、ダックワーズ、マカロン、マシュマロ等の製造に用いられる。
【0005】
卵白の含気泡組成物は、卵白の含気泡組成物自体の気泡が消えやすく、また、別立て法による生地の製造においても卵黄生地と混合する際にも生地中の気泡が消泡しやすく、非常に不安定なものであった。また、卵白の含気泡組成物は、油脂等のその他の成分が配合されると、起泡力が低下したり、気泡が消泡しやすくなる場合多いため、砂糖等の糖以外の成分を配合せずに起泡させるのが一般的である。起泡性の悪い卵白の含気泡組成物や消泡した卵白の含気泡組成物を使用すると、浮きが良く、よりソフトな食感、良好な口溶けを有する菓子類が得られなくなる。
【0006】
よって、卵白の含気泡組成物の製造や卵白の含気泡組成物を用いた別立て法による生地の製造の際には、気泡が消泡しやすいため、調製後、直ちに焼成する等の加工が必要であり、卵白の含気泡組成物を用いた菓子類の製造には相当の熟練を必要としていた。このため、卵白の含気泡組成物の製造や卵白の含気泡組成物を用いた別立て法による生地の製造は、小バッチで製造することが多く、大量生産することが困難であり、作業性の面でも問題があった。
【0007】
卵白の含気泡組成物の消泡を抑制し、卵白の含気泡組成物を安定化するための改善策として、乾燥卵白や酒石酸水素カリウムを卵白の含気泡組成物に使用する例があるが、消泡の抑制力は充分でなかった。また、特定のガム質(例えば、特許文献1)やカゼインナトリウム分解物(例えば、特許文献2)を卵白の含気泡組成物の安定化剤として添加する方法が提案されているが、必ずしも効果として十分ではなかった。
そこで、起泡性、気泡安定性、作業性に優れた卵白含気泡組成物が求められていた。
【特許文献1】特開平10−165082号公報
【特許文献2】特開平8−173044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、起泡性(泡立ち易さ、気泡の状態)、気泡安定性(気泡の経時安定性)、作業性に優れた卵白含気泡組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、浮き(膨らみ具合)が良く、特有の食感、口溶けを有する菓子類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、卵白を起泡させる際に、従来消泡作用があり卵白とは厳密に分けるべきとされていた卵黄を、卵白に対して特定量添加することで、起泡性、気泡安定性、作業性に優れた卵白含気泡組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、卵白及び卵黄を含有し、下記(a)及び(b)の条件を満たす卵白含気泡組成物である。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明に記載の卵白含気泡組成物を含有する菓子である。
【0012】
本発明の第3の発明は、前記菓子が、シフォンケーキ、スフレ、バターケーキ、スポンジケーキ又はダックワーズである第2の発明に記載の菓子である。
【0013】
本発明の第4の発明は、卵白及び卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させることを特徴とする卵白含気泡組成物の製造方法である。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【0014】
本発明の第5の発明は、卵白及び卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させた卵白含気泡組成物を、菓子に用いることを特徴とする菓子の製造方法である。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【0015】
本発明の第6の発明は、卵白、卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させることを特徴とする卵白含気泡組成物の安定化方法である。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、起泡性、気泡安定性、作業性に優れた卵白含気泡組成物を提供することができる。
また、本発明によると、浮きがよく、特有の食感、口溶けを有する菓子類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明について、詳細に説明する。
まず、本発明の卵白含気泡組成物について、説明する。
本発明の卵白含気泡組成物は、卵白、卵黄を含有し、下記(a)及び(b)の条件を満たすことを特徴とする。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【0018】
本願における卵白含気泡組成物とは、卵白を起泡させる(泡立てる)ことで得られるものを意味し、卵白の優れた起泡力により、きめ細かい気泡(泡)を含有することを特徴としている。卵白含気泡組成物は、いわゆるメレンゲと呼ばれるものである。卵白含気泡組成物は、別立て法により製造される菓子等のメレンゲを使用して製造される菓子の製造に用いられる。
【0019】
本発明で使用する卵白は、卵(全卵)から卵黄を除いたものであれば、特に制限なく使用することができる。
本発明の卵白含気泡組成物中における卵白の含量は、26〜87質量%であり、37〜83質量%であることが好ましく、49〜80質量%であることがより好ましい。
卵白含気泡組成物中における卵白の含量が上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡が安定したものとなる。
【0020】
本発明で使用する卵黄は、卵(全卵)から卵白を除いたものであれば、特に制限なく使用することができる。
本発明の卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比は、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25であり、卵白:卵黄=1:0.06〜1:0.20であることが好ましく、卵白:卵黄=1:0.07〜1:0.12であることがより好ましい。
一般的に卵黄には消泡作用があると言われているため、通常、卵白含気泡組成物には卵黄を配合しないが、卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比が上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡が安定したものとなる。
なお、全卵の卵白と卵黄の質量比は、大体、卵白:卵黄=1:0.5である。従って、本発明は、全卵を用いて製造される共立て法とは明確に区別されるものである。
【0021】
本発明の卵白含気泡組成物は、糖及び/又は糖アルコールを配合することが好ましい。
糖としては、砂糖、グラニュー糖、ブドウ糖、液糖、水飴、トレハロース等が挙げられる。
糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴、エリスリトール等が挙げられる。
本発明の卵白含気泡組成物中の卵白と糖及び/又は糖アルコールの質量比は、卵白:糖及び/又は糖アルコール=1:0.10〜1:2.00であることが好ましく、卵白:糖及び/又は糖アルコール=1:0.10〜1:1.00であることがより好ましく、卵白:糖及び/又は糖アルコール=1:0.30〜1:0.70であることが更に好ましい。
卵白含気泡組成物中の卵白と糖及び/又は糖アルコールの質量比が上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡がより安定したものとなる。
【0022】
本発明の卵白含気泡組成物のpHは、4.5〜7.0であることが好ましい。卵白含気泡組成物のpHを上記範囲とするためには、レモン果汁、食酢、有機酸等を配合することが好ましい。
卵白含気泡組成物にレモン果汁を配合する場合、卵白含気泡組成物中の卵白とレモン果汁の質量比は、卵白:レモン果汁=1:0.01〜1:0.20であることが好ましく、卵白:レモン果汁=1:0.03〜1:0.17であることがより好ましく、卵白:レモン果汁=1:0.05〜1:0.15であることが更に好ましい。
卵白含気泡組成物のpHが上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡がより安定したものとなる。
【0023】
本発明の卵白含気泡組成物は、乳化油脂を配合することが好ましい。乳化油脂は、油脂、乳化剤、糖、糖アルコール、多価アルコール、水等を原料とし、乳化することで製造される。
乳化油脂の原料として用いられる油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の食用油脂であれば特に制限なく使用することができる。
乳化油脂の原料として用いられる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンモノ脂肪酸エステル等)、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル等)、ジグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノ脂肪酸エステル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
乳化油脂の原料として用いられる糖としては、キシロース、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、水飴等が挙げられる。
乳化油脂の原料として用いられる糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等が挙げられる。
乳化油脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。乳化油脂の具体例としては、例えば、日清オイリオグループ株式会社製のジセル100を好適に使用することができる。
本発明の卵白含気泡組成物中の卵白と乳化油脂の質量比は、卵白:乳化油脂=1:0.10〜1:0.30であることが好ましく、卵白:乳化油脂=1:0.15〜1:0.27であることがより好ましく、卵白:乳化油脂=1:0.18〜1:0.25であることが更に好ましい。
卵白含気泡組成物中の卵白と乳化油脂の質量比が上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡がより安定したものとなる。
【0024】
本発明の卵白含気泡組成物の比重は、0.20〜0.15であることが好ましく、0.18〜0.15であることがより好ましく、0.17〜0.15であることが更に好ましい。
卵白含気泡組成物の比重は、卵白含気泡組成物の気泡状態の指標となるものであり、例えば、比重カップ法により測定することができる。比重カップ法は、容量既知のカップに測定物を入れ、測定物の質量を量り、測定物の質量/カップの容量を計算することで、比重を算出することができる。
卵白含気泡組成物の比重が上記範囲にあると、卵白含気泡組成物の気泡がより安定したものとなる。
【0025】
本発明の卵白含気泡組成物は、従来のメレンゲと同様に、上記配合範囲の卵白に、卵白と卵黄の質量比が上記した範囲となるように卵黄を配合し、起泡させることで製造することができる。本発明の卵白含気泡組成物には、上記したその他の原料を配合して製造することもできる。
【0026】
本発明の卵白含気泡組成物は、起泡性が良く、得られた気泡も消えにくく、気泡安定性に優れたものである。また、本発明の卵白含気泡組成物は、気泡安定性に優れたものであることから、卵白含気泡組成物の製造時の作業性も優れたものとなる。
【0027】
本発明の卵白含気泡組成物は、上記配合範囲の卵白に、卵白と卵黄の質量比が上記した範囲となるように卵黄を配合し、起泡させることで、卵白含気泡組成物の気泡を安定化することができる。
【0028】
本発明の卵白含気泡組成物は、メレンゲを使用して製造される菓子に好適に使用することができる。
【0029】
次に、本発明の菓子について説明する。
本発明の菓子は、本発明の卵白含気泡組成物を含有することを特徴とする。
【0030】
本発明の菓子とは、メレンゲを使用して製造される菓子のことを意味する。
本発明の菓子の具体例としては、シフォンケーキ、バターケーキ、スポンジケーキ等のメレンゲを使用する別立て法により製造されるケーキ生地やスフレ、ダックワーズ、マカロン、マシュマロ等が挙げられる。
【0031】
本発明の菓子は、本発明の卵白含気泡組成物を用いて製造する以外、特別な原料や特別な製造条件を必要とせず、常法により製造することができる。本発明の菓子に配合される本発明の卵白含気泡組成物の量は、菓子の種類によって異なるため、特に限定されるものではない。
【0032】
例えば、別立て法により製造されるケーキ生地の場合、卵黄に小麦粉(薄力粉、強力粉等)、糖(砂糖、グラニュー糖、水飴等)、牛乳、乳化油脂、液状油脂、ベーキングパウダー等の原料を加えて混合することで卵黄生地を調製した後、卵黄生地と調製した卵白含気泡組成物を混合し、焼成することで製造することができる。乳化油脂は、卵白含気泡組成物に配合するものと同じものを使用することができる。液状油脂は、常温(25℃)で液状のものであれば特に制限なく使用することができ、具体的には、菜種油、大豆油等が挙げられる。また、液状油脂は、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンモノ脂肪酸エステル等)等の乳化剤を配合したものを用いることもできる。
本発明の卵白含気泡組成物を用いて別立て法により製造されるケーキ生地は、気泡が消えにくく、気泡安定性に優れたものである。また、本発明の卵白含気泡組成物を用いて別立て法により製造されるケーキ生地は、気泡安定性に優れたものであることから、ケーキの製造時の作業性も優れたものとなる。さらに、本発明の卵白含気泡組成物を用いて別立て法により製造されるケーキは、気泡安定性に優れたものであることから、浮き(膨らみ具合)がよく、メレンゲを使用したときに得られる食感、口溶けと同様の特有のソフトな食感、良好な口溶けを有するものとなる。
【0033】
別立て法により製造されるケーキ生地の場合、ケーキ生地中における本発明の卵白含気泡組成物の含量は、30〜76質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましく、40〜50質量%であることが好ましい。
ケーキ生地中における本発明の卵白含気泡組成物の含量が上記範囲にあると、ソフトな食感、良好な口溶けとなる。
【0034】
別立て法により製造されるケーキ生地の場合、ケーキ生地の比重は、0.30〜0.60であることが好ましく、0.35〜0.40であることがより好ましく、0.36〜0.38であることが更に好ましい。
ケーキ生地の比重は、ケーキ生地の気泡状態の指標となるものであり、例えば、比重カップ法により測定することができる。
ケーキ生地の比重が上記範囲にあると、ソフトな食感、良好な口溶けとなる。
【0035】
別立て法により製造されるケーキ生地の配合組成は、例えば、好ましくは本発明の卵白含気泡組成物30〜76質量%、卵黄6〜16質量%、小麦粉7〜23質量%、糖3〜9質量%、牛乳4〜12質量%、液状油脂3〜9質量%、ベーキングパウダー0.1〜0.3質量%であり、より好ましくは本発明の卵白含気泡組成物35〜60質量%、卵黄9〜15質量%、小麦粉13〜22質量%、糖5〜8質量%、牛乳7〜11質量%、液状油脂5〜8質量%、ベーキングパウダー0.16〜0.26質量%であり、更に好ましくは本発明の卵白含気泡組成物40〜50質量%、卵黄12〜14質量%、小麦粉17〜20質量%、糖6〜8質量%、牛乳8〜10質量%、液状油脂6〜8質量%、ベーキングパウダー0.2〜0.24質量%である。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明について詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
【0037】
表1の配合に従い、比重の目標値を0.20〜0.15として、縦型卓上ミキサーを用いて原料を混合・攪拌することにより起泡させて、実施例1〜2及び比較例1〜3の卵白含気泡組成物を調製した。なお、乳化油脂としては、日清オイリオグループ株式会社製のジセル100を用いた。
卵白含気泡組成物の調製時(泡立てる過程)の比重を比重カップ法により経時的に測定すること及び卵白含気泡組成物の状態を目視にて観察することで、起泡性を評価した。目標とする比重になるまでの時間が短いほど起泡性がよく、作業性に優れていると言える。
調製した卵白含気泡組成物を室温に120分間放置後、卵白含気泡組成物の状態を目視にて観察することで、卵白含気泡組成物の気泡安定性を評価した。気泡安定性がよいほど、作業時間に余裕ができ、熟練性を必要としなくても製造することが可能となる。
卵白含気泡組成物の起泡性及び気泡安定性の評価基準は、◎:「非常によい」、○:「よい」、△:「普通」、×:「悪い」とした。結果を表1に示した。
【0038】
表2の配合に従い、卵黄生地を調製し、卵黄生地と調製直後の実施例1〜2及び比較例1〜3の卵白含気泡組成物を表2の配合となるように混合した後、卵黄生地と卵白含気泡組成物の混合後から15分間以内に焼成(上火180℃、下火160℃で30分間)することで、実施例3〜4及び比較例4〜6のシフォンケーキ生地を調製した。なお、各卵白含気泡組成物は、実施例1が比重0.17、実施例2が比重0.16、比較例1が比重0.16、比較例2が0.16、比較例3が0.22のものを用いた。また、液状油脂としては、日清オイリオグループ株式会社製のジセルスポンジを用いた。
焼成前の生地を室温に放置し、焼成前の生地の比重を比重カップ法により経時的に測定することで、生地の気泡安定性を評価した。生地の比重が低く、経時的な生地の比重の上昇が少ないほど、生地の気泡安定性に優れていると言える。生地の気泡安定性がよいほど、作業時間に余裕ができ、熟練性を必要としなくても製造することが可能となる。
焼成した生地の高さを測定することで、生地の浮き(膨らみ)を評価した。
焼成した生地を食べることで、生地の食感・口溶けを評価した。
シフォンケーキ生地の気泡安定性、浮き及び食感・口溶け評価基準は、◎:「非常によい」、○:「よい」、△:「普通」、×:「悪い」とした。結果を表3に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
卵白含気泡組成物中に卵黄を配合した実施例1及び2の卵白含気泡組成物は、起泡性及び気泡安定性が満足できるものであった。
また、実施例1及び2の卵白含気泡組成物を配合した実施例3及び4のシフォンケーキ生地は、焼成前の生地の気泡安定性、焼成生地の浮きが満足できるものであり、焼成生地の食感・口溶けもメレンゲを使用したときに得られる食感・口溶けと同様の特有のソフト感、歯切れのよさを有するものであった。
【0043】
一方、卵白含気泡組成物中に卵黄を配合していない比較例1〜3の卵白含気泡組成物やこれらの比較例1〜3の卵白含気泡組成物を配合した比較例4〜6のシフォンケーキ生地は、満足できるものではなかった。
【0044】
表4〜6の配合に従い、比重の目標値を0.20〜0.15として、縦型卓上ミキサーを用いて原料を混合・攪拌することにより起泡させて、実施例5〜10及び比較例7〜11の卵白含気泡組成物を調製した。比較例11の卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比は、ほぼ全卵の卵白と卵黄の質量比に相当するものである。なお、乳化油脂としては、日清オイリオグループ株式会社製のジセル100を用いた。
上記した評価方法及び評価基準と同様の評価方法及び評価基準にて、卵白含気泡組成物の起泡性、気泡安定性を評価した。結果を表4〜6に示した。
【0045】
表2の配合に従い、卵黄生地を調製し、卵黄生地と調製直後の実施例7、比較例8及び比較例9の卵白含気泡組成物を表2の配合となるように混合した後、卵黄生地と卵白含気泡組成物の混合後から15分間以内に焼成(上火180℃、下火160℃で30分間)することで、実施例11、比較例12及び比較例13のシフォンケーキ生地を調製した。なお、各卵白含気泡組成物は、実施例7が比重0.15、比較例8が比重0.21、比較例9が0.15のものを用いた。また、液状油脂としては、日清オイリオグループ株式会社製のジセルスポンジを用いた。
上記した評価方法及び評価基準と同様の評価方法及び評価基準にて、シフォンケーキ生地の気泡安定性、浮き及び食感・口溶けを評価した。結果を表7に示した。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比が規定範囲である実施例7〜10の卵白含気泡組成物は、起泡性及び気泡安定性が満足できるものであった。
また、実施例7の卵白含気泡組成物を配合した実施例11のシフォンケーキ生地は、焼成前の生地の気泡安定性、焼成生地の浮きが満足できるものであり、焼成生地の食感・口溶けもメレンゲを使用したときに得られる食感・口溶けと同様の特有のソフト感、歯切れのよさを有するものであった。
【0051】
一方、卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比が規定範囲外である比較例7〜11の卵白含気泡組成物は、起泡性が満足できるものではなかった。比較例7及び8の卵白含気泡組成物は、目標とする比重まで到達せず、起泡力が満足いくものではなかった。また、比較例9〜11の卵白含気泡組成物は、目標とする比重まで到達するが、気泡状態が軟らかく、満足いくものではなかった。
また、卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比が下限値未満である比較例8の卵白含気泡組成物を配合した比較例12のシフォンケーキ生地は、焼成生地の浮きが満足いくものではなかった。卵白含気泡組成物中の卵白と卵黄の質量比が上限値を超える比較例9の卵白含気泡組成物を配合した比較例13のシフォンケーキ生地は、焼成生地の食感・口溶けが特有のソフト感、歯切れのよさを有するものではなく、メレンゲを使用したときに得られる食感・口溶けと同様のものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白及び卵黄を含有し、下記(a)及び(b)の条件を満たす卵白含気泡組成物。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【請求項2】
請求項1に記載の卵白含気泡組成物を含有する菓子。
【請求項3】
前記菓子が、シフォンケーキ、スフレ、バターケーキ、スポンジケーキ又はダックワーズである請求項2に記載の菓子。
【請求項4】
卵白及び卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させることを特徴とする卵白含気泡組成物の製造方法。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【請求項5】
卵白及び卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させた卵白含気泡組成物を、菓子に用いることを特徴とする菓子の製造方法。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25
【請求項6】
卵白及び卵黄を下記(a)及び(b)の条件を満たすように起泡させることを特徴とする卵白含気泡組成物の安定化方法。
(a)卵白含気泡組成物中の卵白の含量が、26〜87質量%
(b)卵白と卵黄の質量比が、卵白:卵黄=1:0.05〜1:0.25

【公開番号】特開2009−273429(P2009−273429A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129412(P2008−129412)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】