説明

厚さ測定装置

【課題】本発明は、特殊な金属を使用することなく、距離検出器間の設定距離の変動による測定誤差を軽減することが可能な高精度な厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被測定物8を挟み、対向する位置で距離を測定する一対の距離検出器3a(3b)を備える検出部10と、検出部の内気温度を一定に制御する空調器7と、夫々の前記距離検出器の出力から厚さを求める厚さ演算部とから成り、検出部は、一対の距離検出器をその腕部に固定するC型ベース2と、C型ベースを囲むように設けられる、断熱材を内張りしたC型フレーム1と、C型ベースをC型フレームに固定する固定部材6と、C型ベースの腕部の先端部から内気を排出する一対のダクト4a(4b)と、C型フレームの先端部の内気温度を検出する温度検出器5とを備える厚さ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離検出器を用いた厚さ測定装置に係わり、特に、被測定物が一方向に移動する鋼板などの厚さ形状を測定する距離検出器を用いた厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三角測量方式の距離検出器は、非接触、高精度で距離を測定できることから被測定物の表面形状の測定に使用されているが、高速で移動する鋼板などの厚さ形状の測定にも応用されている。
【0003】
従来、厚板製造プロセスにおいては、γ線による厚さ測定を行っていたが、光学式の距離検出器を用いた厚さ測定装置よれば、特別の安全管理が不要であることから、その用途が拡大している。
【0004】
この厚板等の厚さ測定装置について、図4を参照して説明する。C型フレーム1の互いに離間して対向する夫々の腕部の空間部に厚さtの被測定物8が配置され、夫々の腕部に所定の間隔Ldを持って配置されたレーザビーム等の光源部32とカメラ33を用いた距離検器30と、該距離検出器30の出力La及びLbから厚さtを演算(t=Ld−La−Lb)して求める厚さ演算部17とを備える。
【0005】
距離検出器30には、被測定物8の表面に鉛直方向に複数のレーザビームを投射する光源部と、被測定物8に投射された複数のレーザビームの反射光を鉛直平面上において対称な受光角で受光するように配置された2台の多分割光検出手段と、多分割光検出手段の出力信号の積分値を一定にする夫々の受光光量制御手段と、受光光量制御手段で制御された多分割光検出手段の出力信号の複数のレーザビームにおけるパターンの谷部の形状の変化から被測定物と距離検出装置間の距離を演算により求める距離演算手段とを備え、C型フレーム一方に配置された距離検出装置の出力及びC型フレームの他方に配置された距離検出装置の出力とから被測定物の厚さを厚さ演算手段で求めるようにしているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3966804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示した光学式の距離検出器を用いた厚板等の厚さ測定装置の場合、被測定物8との接触を避けるため、C型フレーム11の互いに離間して対向する夫々の腕部の空間の設定距離Ldは、1000mm程度の比較的大きな寸法の装置となっていた。
【0007】
そのため、特許文献1に示す厚さ測定装置では、レーザビームの投光光軸位置の位置ずれによる測定誤差を軽減するため、投光光軸に対して対称な位置に2つの多分割光検出手段を配置し、投光光軸位置のずれをキャンセルするようにしていた。
【0008】
また、距離検出器30の設定距離Ldの変動は、厚さ測定の精度に直接影響を与える誤差要因となることから、距離検出器30を固定するC型フレーム11は、線膨張率の小さなアンバー材等の高価な金属を使用して支持していた。
【0009】
このような厚板の厚さ測定に要求される精度は、5.0〜100.0mmの測定範囲に対して、±50μのレベルであったが、薄板の場合には1.0〜5.0mmの測定範囲に対して、±1μレベルの高精度が要求されるため、アンバー材等の特殊な金属を使用しただけではこの要求が満足されず、また、このような特殊な金属が入手難である事からも問題があった。
【0010】
例えば、薄板の厚さ測定の場合、厚板の場合に比べて狭い空間で許容できることから設定距離Ld(=200mm)とし、装置が使用される通常の周囲温度の変化(Δt)を25℃±25℃、設定距離Ldを支持する金属の線膨張係数αとすると、この時の設定距離の変動ΔLdは、下記式で示される。
ΔLd=α・Ld・Δt
したがって、金属の線膨張係数αを1×10−6/℃のアンバー材を採用したとすると、ΔLd=±5.0×10−6(m)となる。
【0011】
また、この値は、厚さ測定軸方向の伸縮以外に、C型フレームの構造物の熱歪みによる他の軸方向の変動もある。例えば、C型フレームを一枚の金属板から形成した場合でも、その内周部と外周部とでは温度変化に対する線膨張率が異なり、その熱歪みによって初期の設定距離Ldが3次元的に変動する。即ち、光源部32とカメラとを支持する機構構造の熱歪みにより誤差が大きくなり、ミクロンレベルの厚さ測定装置を実現するには問題があった。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、特殊な金属を使用することなく、距離検出器間の設定距離の変動による測定誤差を軽減することが可能な高精度な厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の厚さ測定装置は、移動する被測定物との間の距離を求め、厚さを測定する厚さ測定装置であって、前記厚さ測定装置は、前記被測定物を挟み、対向する位置で距離を測定する一対の距離検出器を備える検出部と、前記検出部の内気温度を一定に制御する空調器と、夫々の前記距離検出器の出力から厚さを求める厚さ演算部とから成り、前記検出部は、一対の前記距離検出器をその腕部に固定するC型ベースと、前記C型ベースを囲むように設けられる、断熱材を内張りしたC型フレームと、前記C型ベースを前記C型フレームに固定する固定部材と、前記C型ベースの腕部の先端部から内気を排出する一対のダクトと前記C型フレームの先端部の内気温度を検出する温度検出器とを備え、前記空調器は、前記温度検出器の信号を内気温度として受信し、前記C型フレームの内気を循環・強制対流させ、前記C型ベースの周囲温度を一定に制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特殊な金属を使用することなく、距離検出器間の設定距離の変動による測定誤差を軽減することが可能な高精度な厚さ測定装置を提供するが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による実施例を図1乃至図3を参照して説明する。本発明の厚さ測定装置の構成を、図1を参照して説明する。図1は、C型フレームの空間部をz軸方向に走行する被測定物8の厚さtを測定する厚さ測定装置の斜視透視図である。
【0016】
厚さ測定装置は、被測定物8を挟み、対向する位置でx-y平面上で距離を測定する一対の距離検出器3a、3bを備える検出部10と、検出部10のC型フレーム1の内気温度を一定に制御する空調器7と、距離検出器3a及び距離検出器3bの出力から厚さを求める図示しない厚さ演算部とから成る。
【0017】
三角測量方式の測定原理に基づいて測定する一対の距離検出器3a及び距離検出器3bは、予め、所定の設定距離Ldで設定されているので、夫々の距離検出器の出力La及び出力Lbから、Ld-(La+Ld)なる演算を厚さ演算部で行って厚さtを求める。
【0018】
次に、各部の構造について説明する。検出部10は、一対の距離検出器3a、3bをその腕部に固定するC型ベース2と、C型ベース2を囲むように設けられ、断熱材を内面に内張りしたC型フレーム1と、C型ベース2をC型フレーム1に固定する固定部材6と、C型ベース2の腕部の先端部から内気を排出する一対のダクト4a、4bとC型フレーム1の先端部の内気温度を検出する温度検出器5とを備える。
【0019】
また、C型フレーム1の詳細構造について、同じく図1を参照して説明する。C型フレーム1の腕部を連結する支柱の後部面Rには、C型ベース2の夫々の腕部の空間に送風する送風口1及び送風口1Bと、C型ベース2の夫々の腕部の先端部の空間の内気を排出する排出口1C及び排出口1Dとを備える。
【0020】
また、C型フレーム1には、距離検出器3a及び距離検出器3bから照射される光ビームの光路を確保するため、ガラス製の投受光窓1E及び投受光窓1Fを備える。
【0021】
そして、空調器7は、温度検出器5の検出温度が所定の値になるように送風口1A及び送風口1Bから送風される空気の温度を制御するとともに、排気口1C及び排気口1Dから排出される空気を一対のダクト4a及びダクト4bを介して循環させる。このC型フレーム1C内の空気の流れと内気温度の制御については後述する。
【0022】
また、C型ベース2は、距離検出器3a及び距離検出器3bをその腕部で支持するための所定の機械的強度を備えた所定厚さ以上の1枚の金属板で成形し、複数の固定箇所のいずれか一つを嵌合構造し、C型フレーム1の底部に絶縁して固定する固定部材6を備える。また、距離検出器3a及距離検出器3bは、複数の固定箇所のいずれか一つを嵌合構造とする固定座3cで、C型ベース2に絶縁して固定する。
【0023】
次に、空調器7について図2及び図3を参照して説明する。空調器7は、C型フレーム1の内気を強制対流させ、C型ベース2の周囲温度を高精度で均一に一定の温度に制御するものである。
【0024】
図2(a)は、この空調器7から送風する空気による検出部10の対流伝熱を説明するためのモデル図で、図2(b)は、この温度制御系のブロック図である。
【0025】
図2(b)に示すように、空調器7は、一般的にはエアーコンディショナーとも称され、制御対象のC型フレーム1の内気温度Tidが、目標温度Ttとなるように送風する空気Qiの温度を変えて制御する。この、内気温度Tidは、距離検出器3aまたは距離検出器3bのいずれか一方の近傍に設けられる半導体温度センサ等の温度検出器5で検出される。
【0026】
空調器7は、外気温度Tedの変化に対して内気温度の変化を制御できる風量Qim/minと、温度制御分解能(Δt)を備えた応答性のものであれば良く、外気温度Tedが内気温度Tidの比べて高いときは、冷気を、逆の場合は、温気を送風する。
【0027】
通常、外気温の時間変化率は、10℃/8hと比較的ゆっくりと変化し、また、内部の発熱量はほぼ一定とみなされるので、図2(a)に示すように、C型フレーム1の内面をポリウレタン等の低熱伝導率の材料で断熱し、外乱となる外気温の変化の影響を軽減しておくことで、空調器7から送風する対流伝熱による内気の温度制御を高精度で行えるようにしておく。
【0028】
また、循環させる空気量は、送風量Qi>排出量Qoとして、外気が内部に入らない程度に内圧を高めておく。
【0029】
さらに、C型ベース2を固定する固定部材6aは、ベーク等の低熱伝導率の絶縁物を使用し、この固定箇所のいずれか一箇所を嵌め合い構造としてC型フレーム1の底面に断熱して固定する。
【0030】
同様に、距離検出器3a及び3bの固定座3cは、ベーク等の低熱伝導率の絶縁物を使用し、この固定箇所のいずれか一箇所を嵌め合い構造としてC型ベース1に断熱して固定する。
【0031】
このような構造とすることで、距離検出器3a及び距離検出器3bを支持するC型ベース2を外気と断熱し、固定箇所の一つを嵌合構造として、C型ベース2の固定箇所での熱歪を軽減して固定し、距離検出器3a及び3b間の設定距離の変動による測定誤差を軽減することが可能となる。
【0032】
次に、図3を参照して、C型ベース2の周囲を一定の温度になるように制御する空調器7から送風される空気の流れについて説明する。
【0033】
図3(b)及び図3(c)は、夫々、図3(a)の矢印A及び矢印B方向から見た図で、C型フレーム1の支柱部の後面Rの送風口1A及び送風口1Bから送風された空気は、図3(b)の破線矢印し示すように、C型ベース2の夫々の腕部表面に沿って流れ、その先端部分の空間に設けられるダクト4a(4b)から排出される。
【0034】
この時の内気流は、C型フレーム1の腕部の上下は対称な構造で、C型フレーム1内は、内圧が加わるようにダクト4a及びダクト4bによって夫々排出抵抗が加減され、C型フレーム1の中央部に設けられるC型ベース2の腕部の周囲には乱流のない緩やかな流速となり、一方の腕部の温度検出器5で、両腕部の空間温度を制御する。
【0035】
温度検出器5は、夫々の腕部に設け、夫々の温度を監視して、両腕部の空間温度を個別に制御することも可能である。
【0036】
このような構造の厚さ測定装置は、C型ベース2の周囲が、外気と断熱され、一様な温度で制御されるので、発明者らの実験では目標温度に対して±0.1℃制御が可能であった。
【0037】
したがって、例えば、薄板の厚さ測定の場合、厚板の場合に比べて狭い空間で許容できることから設定距離Ld(=200mm)とし、設定距離Ldを支持する鉄の線膨張係数αを10×10−6/℃とすると、前述したように、この時の設定距離の変動ΔLdは、下記式で示されるから、
ΔLd=α・Ld・Δt=0.2×10−6(m)
となり、要求される設定距離の精度が可能となる。
【0038】
本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、1枚のC型ベースの周囲を断熱し、その周囲を高精度で一様に空調できる構造のものであれば良く、距離検出器の構造とその要求精度によって、そのC型ベースの構造及びその周囲の断熱構造は適宜変えても良く、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の厚さ測定装置の構成図。
【図2】本発明の原理説明図。
【図3】本発明の空調制御の説明図。
【図4】従来の厚さ測定装置の説明図。
【符号の説明】
【0040】
1、11 C型フレーム
1a 断熱材
1A、1B 送風口
1C、1D 排出口
1E、1F ガラス窓
2 C型ベース
3(3a、3b) 距離検出器
3c 固定座
4a、4b ダクト
5 温度センサ
6 固定部材
6a 固定座
7 空調器
8 被測定物
10 検出部
17 厚さ演算部
30 距離検出器
32 光源部
33 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被測定物との間の距離を求め、厚さを測定する厚さ測定装置であって、
前記厚さ測定装置は、前記被測定物を挟み、対向する位置で距離を測定する一対の距離検出器を備える検出部と、前記検出部の内気温度を一定に制御する空調器と、夫々の前記距離検出器の出力から厚さを求める厚さ演算部とから成り、
前記検出部は、一対の前記距離検出器をその腕部に固定するC型ベースと、
前記C型ベースを囲むように設けられる、断熱材を内張りしたC型フレームと、
前記C型ベースを前記C型フレームに固定する固定部材と、
前記C型ベースの腕部の先端部から内気を排出する一対のダクトと
前記C型フレームの先端部の内気温度を検出する温度検出器と
を備え、
前記空調器は、前記温度検出器の信号を内気温度として受信し、前記C型フレームの内気を循環・強制対流させ、前記C型ベースの周囲温度を一定に制御するようにしたことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項2】
前記固定部材は、該固定箇所のいずれか一つを嵌合構造とし、前記C型フレームの底部に絶縁して固定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定装置。
【請求項3】
前記距離検出器は、固定箇所のいずれか一つを嵌合構造とし、前記C型ベースに絶縁して固定する固定座を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記C型フレームの腕部を連結する後部面には、前記C型ベースの夫々の腕部の周囲に送風する送風口と、前記C型ベースの夫々の腕部の先端部の空間の内気を排出する排出口とを備え、
前記空調器は、前記温度検出器の検出温度が予め設定される目標温度になるように送風口から送風される空気の温度を制御するとともに、前記排気口から排出される空気を一対の前記ダクトを介して循環させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。
【請求項5】
前記C型ベースは、1枚の金属板で成形したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の厚さ測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−128322(P2009−128322A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306532(P2007−306532)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】