説明

原料保持容器搬送用吊り具および同原料保持容器

【課題】高融点金属の電子ビーム溶解炉へ原料を供給する原料保持容器の搬送用吊り具およびこれに用いる原料保持容器であって、原料保持容器を効率良くかつ安全に搬送することができる装置構造を提供する。
【解決手段】クレーン係合フックと、原料保持容器および原料保持容器搬送用吊り具全体を支持する支持フレームと、原料保持容器を支持する本体フレームと、支持フレームを本体フレームに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、本体フレームおよび原料保持容器搬送用吊り具を位置決めする位置決め手段とから構成されている原料保持容器搬送用吊り具。また、この搬送用吊り具を用いて搬送される原料保持容器であって、原料保持容器の外壁部および/または両端部のフランジに、搬送用吊り具との位置決め手段である位置決めバーを挿入する嵌合孔および溝および/または吊りピンを挿入する貫通孔が形成されている原料保持容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の電子ビーム溶解装置に原料を供給する原料保持容器および同原料保持容器の搬送に使用する吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンは、最近の需要の多様化や高純度化の要求に伴って、真空アーク溶解炉に加えて、電子ビーム溶解炉を用いたインゴットの製造も盛んに行われている。
【0003】
電子ビーム溶解炉は、真空アーク溶解炉とは異なり、チタン原料をコンパクトに成形することなく顆粒状のスポンジチタン等のチタン原料をそのまま溶解することができるという特徴を有している。そのため、前記の顆粒状原料は、電子ビーム溶解炉に併設された原料保持容器から炉内のハースに対して連続的に供給されている。
【0004】
前記原料保持容器は、例えば特許文献1に開示されているようなアルキメデス缶と呼ばれている脱着可能な原料保持容器が使用されている。前記アルキメデス缶は、内部にらせん状の通路が形成されていて、一端が解放可能な円筒形状の容器であって、内部にスポンジチタン等の溶解用原料が装填された前記アルキメデス缶を水平方向に回転させることにより、溶解用原料は、らせん状の通路を移動し、アルキメデス缶の一端に設けた排出口から排出される。前記アルキメデス缶から排出された溶解用原料は、振動フィーダーにより、連続的にハースに供給される。
【0005】
前記アルキメデス缶に装填された溶解用原料が全量排出された後は、空のアルキメデス缶を電子ビーム溶解炉から脱着して炉外に移動した後、前記アルキメデス缶に溶解用原料を再度装填する。溶解用原料が装填されたアルキメデス缶は、電子ビーム溶解炉に移動して、再度電子ビーム溶解に供される。
【0006】
前記したように電子ビーム溶解炉にアルキメデス缶の装脱着を繰り返すことになり、前記作業は、アルキメデス缶へのワイヤー掛けと、アルキメデス缶を炉外へ移動させるクレーン操作とからなり人手を介して行われるが、この操作は効率が悪く改善が求められている。また、アルキメデス缶へのワイヤー掛け操作には、移送時にアルキメデス缶が安定して懸架されるための重心位置を探すことに時間を要するものであった。
【0007】
このような点については、鋼管の吊り荷作業において、前記鋼管を懸吊したフレームに設けた把持爪を水平方向に移動させて重心位置を確定することにより効率よく長尺鋼管を移動させることができることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されている技術は、長尺鋼管に把持された冶具を移動させる方法であるために、鋼管を把持する把持爪と、前記把持爪を鋼管に沿って移動させる両方の機構を組み込む必要があり装置構成が複雑になる。また前記装置重量も嵩みクレーンの吊荷加重も減少するという課題もある。
【0009】
さらに、長尺重量物の吊り荷作業において、前記重量物を懸吊した主吊具に設けた玉掛用のフックブロックを懸吊する荷重計により重心位置を計測し、主吊具に設けた天秤を水平方向に移動させて平衡状態として効率良く長尺重量物を移動させることができることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
しかしながら、特許文献3に開示されている技術は、荷重計の計測値に基づいて天秤をを移動させる方法であるために、装置構成が複雑になる。また吊上げ、着地時の衝撃を受けるとその耐用性が減少するという課題もある。
【0011】
このように、アルキメデス缶を確実、且つ、効率よく安全に移動あるいは操作できるような吊り具が望まれている。
【0012】
【特許文献1】特開2004−149820号公報
【特許文献2】実公昭63−015265号公報
【特許文献3】特開平08−101088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電子ビーム溶解炉に用いる原料保持容器搬送用吊り具およびこれに用いる原料保持容器に係る装置構造であって、前記原料保持容器を効率よくまた、安全に搬送できるような原料保持容器搬送用吊り具および同吊り具に好適な原料保持容器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めてきたところ、原料を装填した原料保持容器の吊り具を構成する支持フレームが、原料保持容器(以降、「アルキメデス缶」と呼ぶ場合がある。)を支持する本体フレーム上を移動することができるように構成することにより、前記課題を効果的に解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本願発明の原料保持容器搬送用吊り具は、高融点金属の電子ビーム溶解炉へ原料を供給する原料保持容器搬送用吊り具であって、クレーン係合フックと、原料保持容器および原料保持容器搬送用吊り具全体を支持する支持フレームと、原料保持容器を支持する本体フレームと、支持フレームを本体フレームに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、原料保持容器を懸架する容器懸架脚と、原料保持容器に載架させる支持脚とから構成されていることを特徴としている。
【0016】
前記水平移動手段は、支持フレームを本体フレームに対して水平方向に移動させる水平移動用ネジと、この水平移動用ネジを駆動させる駆動用モーターとからなることを好ましい態様としており、また、水平移動用ネジを駆動させる駆動用モーターが遠隔操作可能なように制御装置が併設されていることや、駆動用ネジが台形ネジまたは角ネジであることをさらに好ましい態様としている。
【0017】
上記指示フレームの下端には、水平位置指示針が配設され、本体フレームには上記水平位置指示針の位置を示す水平位置スケールが配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0018】
上記支持フレームの上端には、傾動位置指示針が傾動自在に配設され、前記傾動位置指示針の先端部に対応した支持フレーム上には、傾動位置スケールが配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0019】
上記本体フレームに配設された容器懸架脚には、原料保持容器吊りピンおよび前記吊りピン駆動装置が装着されていることを好ましい態様とするものである。
【0020】
上記本体フレームに配設された支持脚には、原料保持容器と当接させる当接部材が配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0021】
上記本体フレームには、原料保持容器搬送用吊り具の水平方向の位置決め手段である第一位置決めバーおよび第二位置決めバーが配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0022】
また、本願発明の原料保持容器は、上述の原料保持容器搬送用吊り具を用いて搬送される原料保持容器であって、原料保持容器の側壁部には、第一位置決めバーを挿入する嵌合孔が形成された第一位置決めバー嵌合部材が配設されていることを好ましい態様とするものである。
【0023】
また、上部原料保持容器の側壁部には、第二位置決めバーを受ける嵌合溝が形成されていることを好ましい態様とするものである。
【0024】
さらに、本願発明の原料保持容器は、上述の原料保持容器搬送用吊り具を用いて搬送される原料保持容器であって、原料保持容器の両端部に、原料保持容器搬送用吊り具との懸架手段である吊りピンを挿入する貫通孔が形成されていることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本願発明の原料保持容器搬送用吊り具および同原料保持容器を使用することで、溶解用原料を充填した原料保持容器を効率よく、また、安全に電子ビーム溶解炉に搬送し、装着することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の最良の実施形態について図面を用いて以下に説明する。
図1は、本願発明の原料保持容器搬送用吊り具Mおよび原料保持容器Nの好ましい態様の一例を表している。
【0027】
本願発明に係る原料保持容器搬送用吊り具Mは、クレーンフックに直接係合されるクレーン係合フック1と、前記クレーン係合フック1により吊り荷である原料保持容器Nおよび搬送用吊り具M全体を支える支持フレーム2と、原料保持容器Nを支持する本体フレーム6と、前記支持フレーム2を本体フレーム6に対して水平方向に移動させる駆動用ネジ3と、前記駆動用ネジ3と本体フレーム6とを接続する駆動用ネジ支持部16と、本体フレーム6を水平方向に移動させるために前記駆動用ネジ3を回転させる駆動用モーター4とから主に構成されている。
【0028】
前記本体フレーム6には、吊り荷である原料保持容器Nを係合して支持する4組の吊りピン7を配設した容器懸架脚20、原料保持容器Nに対して、本体フレーム6の水平方向の位置決めをする第一位置決めバー5、および第二位置決めバー23が配設されている。
【0029】
図2は、図1に示した原料保持容器Nのフランジ13に設けた貫通孔14に前記吊りピン7が装入されている様子を表している。前記したようにフランジ13には2組の貫通孔14が形成されており、それぞれの貫通孔14には1組の吊りピン7が貫通して装着されている。
【0030】
前記の構造が原料保持容器Nの両端のフランジ部に形成されているので計4組の吊りピン7にて原料保持容器Nが係合されている。
【0031】
また、前記本体フレーム6には支持脚10を配設し、その下端部には当接部材19を配設しておくことが好ましい。前記支持脚10に配設した当接部材19と原料保持容器Nの両端部に配設しフランジ13の端面に載架させることにより、本体フレーム6と原料保持容器Nの鉛直方向の相対位置を確定させることができる。
【0032】
前記当接部材19は、たとえば、ローラーを内装した車輪構造とすることにより、円滑にフランジ13に当接して載架させることができる。
【0033】
本願発明に係る本体フレーム6には、図1に示すように原料保持容器Nの水平方向の位置を決める第一位置決めバー5と第二位置決めバー23を配設しておくことが好ましい。前記第一位置決めバー5は、本体フレーム6に形成された第一位置決めバー貫通孔15を貫通して配置されている。
【0034】
前記第一位置決めバー5は、鉛直方向に自在に摺動して昇降可能なように配設されている。
【0035】
また、第一位置決めバー5の先端部と第一位置決めバー嵌合部材12に形成した嵌合孔はテーパー状に成形しており、適正な水平位置決め力が得られるように、第一位置決めバー5の重量は最適化されている。
【0036】
よって、本体フレーム6を原料保持容器Nに位置決めする場合には、第一位置決めバー5が第一位置決めバー嵌合部材12のほぼ真上にくるように原料保持容器搬送用吊具Mを移動させて、本体フレーム6を降下することにより、第一位置決めバー5を第一位置決めバー嵌合部材12の内部に形成した嵌合孔に嵌合させることにより正確な位置決めを行うことができる。
【0037】
また、前記第一位置決めバー5は、別途自動昇降装置を装着することで、遠隔操作にて昇降させるように構成することもできる。
【0038】
本願発明においては、また、本体フレーム6には、図4に示すように第二位置決めバー23を貫通して配置しておくことが好ましい。一方、原料保持容器Nの側壁部表面には、前記第二位置決めバー23を受ける第二位置決めバー用嵌合溝24を形成しておくことが好ましい。
【0039】
また、第二位置決めバー23の先端部と第二位置決めバー用嵌合溝24は、テーパー状に成形しており、適正な水平位置決め力が得られるように、第二位置決めバー23の重量は最適化されている。
【0040】
前記のような構造としておくことで、原料保持容器搬送用吊り具Mの長手方向における水平面方向の揺動も効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、前記第二位置決めバー23と第二位置決めバー用嵌合溝24に代えて、前記した第一位置決めバー5と第二位置決めバー嵌合部材12との同様の装置構成を配置しても良い。
【0042】
前記駆動用ネジ3は、歯型断面が台形または角型のネジを使用することが好ましい。駆動用ネジ3として前記した台形または角型のネジで構成することで、原料保持容器Nの搬送時における指示フレーム2と本体フレーム6の相対移動を効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
【0043】
本願発明に係る原料保持容器搬送用吊り具Mを構成する支持フレーム2の下端部には、その上方側端部を軸支した指示板8を付設しておくことが好ましい。
【0044】
また、本体フレーム6には、スケール9が表示されている。前記スケール9上の水平位置指示板8の下方側の位置により、原料の装入されていない空の原料保持容器を吊り上げた際の原料保持容器搬送用吊り具Mの重心位置に支持フレーム2を目視にて短時間のうちに移動させることができるという効果を奏するものである。
【0045】
更には、原料が装入された原料保持容器Nの予想される重心位置に支持フレーム2を目視にて短時間に移動させることができるという効果を奏するものである。
【0046】
本願発明に係る原料保持容器搬送用吊具Mの上端部には、傾動位置指示針21が傾動自在に配設することを好ましい態様とされる。また、前記傾動指示針21の先端部には、傾動位置スケール22が支持フレーム2上に配設しておくことが好ましい。
【0047】
前記したような傾動指示針21と傾動位置スケール22を配設することで、原料保持容器Nを本体フレーム6に吊りピン7を介して載架した場合に発生する本体フレーム6の水平方向の傾きを的確に視認することができるという効果を奏するものである。
【0048】
前記した原料保持容器搬送用吊り具Mは、炭素鋼で構成することが好ましいが、更に強度のある工具鋼で構成することもできる。また、アルキメデス缶11も炭素鋼で構成することが好ましいが、アルキメデス缶11の内面はチタン材で構成してもよく、それにより、アルキメデス缶内に保持されたチタン原料の汚染を抑制し、品質を高いレベルに維持することができるという効果を奏する。
【0049】
図3は、図1において原料保持容器Nを紙面右(あるいは左)方向から見た図である。図3に示すように、アルキメデス缶11の両端部に設けたフランジ13の外周域には、フランジ13に設けた2個の貫通孔14を底辺とする二等辺三角形の頂点を含むような切欠き17を設けることが好ましい。前記のような切欠き17を設けることで、原料保持容器Nを水平面上に待機させた場合に、アルキメデス缶11が転動することがないために前記2個の貫通孔14の位置を再現性よく水平線上に配置させることができるという効果を奏するものである。
【0050】
次に、前記原料保持容器搬送用吊り具Mを用いた原料保持容器Nの搬送方法について以下に説明する。まずは、空の状態の原料保持容器Nを架台の上で水平方向から鉛直方向に配置しなおした後、原料保持容器Nの両端に設けた原料排出口18の上方側を開放することにより、前記原料保持容器Nに溶解用原料を装填し、溶解用原料の装填が完了後は、架台の上で原料保持容器Nを水平方向に戻して待機させる。
【0051】
前記水平方向に待機させている原料保持容器Nの上に、クレーンフック1に係合された原料保持容器搬送用吊り具Mを移動させた後、搬送用吊り具Mを下降させて本体フレーム6に係合した第一位置決めバー5をアルキメデス缶11の表面に配設した第一位置決めバー嵌合部材12の上に移動する。次いで、水平面内にクレーンフックを適宜移動させた後、第一位置決めバー5の先端部を下降させて第一位置決めバー嵌合部材12の内部に形成した嵌合孔に嵌合させる。
【0052】
次いで第二位置決めバー23を嵌合溝に係合させることで原料保持容器搬送用吊り具Mの水平方向の位置を確定することができる。
【0053】
更に、本体フレーム6を降下させて支持脚10の下端の配設した当接部材19を原料保持容器Nの両端の配設したフランジ13の上に載架させる。
【0054】
以上の操作により、原料保持容器Nの水平および鉛直方向の位置決めを完了させることができる。
【0055】
前記嵌合操作完了後、本体フレーム6の中心部に向かって予め退避させておいた吊りピン7を容器懸架脚20に内装されたシリンダー駆動装置により前記吊りピン7を原料保持容器Nのフランジ13に設けた貫通孔14に貫通させる。以上のような操作を行うことで搬送用吊り具Mと原料保持容器Nを係合することができる。
【0056】
次に、水平位置指示針8を所定の位置に移動させた後、原料保持容器Nを係合した原料保持容器搬送用吊り具Mを接地面より僅かに引き上げて、本体フレーム6に装着した傾動位置指示針21と傾動位置スケール22により搬送用吊り具Mの水平バランスを確認することができる。
【0057】
原料保持容器Nには、溶解用原料が毎回所定量だけ充填されるが、現場操業においては、どうしても前記充填量および充填材の安息角などにバラツキがあるため水平バランスがとれない場合がある。
【0058】
前記水平バランスがとれない場合には、原料保持容器Nを原料保持容器搬送用吊り具Mにより吊り上げたままの状態で、駆動用モーター4を作動させて支持フレーム2を本体フレーム6に対して水平方向に適宜移動させることにより、原料保持容器Nを係合した原料保持容器搬送用容器吊り具Mの水平バランスをとることができるという効果を奏する。
【0059】
なお、安全の確保および設備能力の制約上、原料保持容器Nを原料保持容器搬送用吊り具Mにより吊り上げた状態で、支持フレーム2を本体フレーム6に対して水平方向に移動させることができる本体フレーム6の傾きには制限を設けており、その許容傾き範囲は、傾動位置スケール22に明示している。
【0060】
前記操作において、支持フレーム2の水平位置を間違えたり、充填材を入れた原料保持容器Nの重心位置が予定位置と大きく異なっていたなどの理由により、本体フレーム6の水平バランスが悪く大きく傾き、傾動位置指示針21が傾動位置スケール22に明示した前記許容傾き範囲外を指す場合には、一旦原料保持容器Nをフローアーに下ろして支持フレーム2の水平位置を調整した後、再度、前記原料保持容器Nを吊り上げて水平バランスを確認する。
【0061】
このように、本願発明に係る原料保持容器Nと原料保持容器搬送用吊り具Mを用いることにより、原料保持容器が保持する原料の偏りに応じて原料保持容器Nの傾きを修正でき、従来のワイヤー操作に比べて短時間で、また安全に原料保持容器Nの搬送作業を進めることができ、機械的手段による係合動作であるから玉掛作業時の衝撃にも強いという効果を奏するものである。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
1.試験条件
1)原料保持容器:アルキメデス缶
サイズ:φ1200×L4000(mm)
装填物:スポンジチタン
2)原料保持容器搬送用吊り具
図1に示したものを使用
3)溶解炉
ハース式電子ビーム溶解炉を用いて、前記アルキメデス缶に装填されたスポンジチタンを、前記ハースに供給してチタンインゴットを溶製した。
【0063】
2.試験結果
前記したチタンインゴットの溶製において、その途中にアルキメデス缶の装着および脱着を5回繰り返して、装着および脱着に要する時間を測定した。
【0064】
[比較例1]
実施例1において、図1に係る原料保持容器搬送用吊り具Mを用いずに、アルキメデス缶に直接ワイヤーを巻き付けて、クレーンで前記アルキメデス缶を搬送し、搬送作業に要する時間を測定した。
【0065】
表1には、実施例1で行った第1回目の搬送作業を100とした場合の搬送時間を表している。同表に示すように、実施例1においては、いずれの搬送時も、内容物の偏りに応じて速やかに重心を特定して位置の修正を行うことができたため、比較例に比べて、合計5回の搬送時間はいずれも短縮され、約15%の搬送時間が短縮されることが確認された。また、各々の搬送時間のバラツキの小さいことも確認された。
【0066】
一方、比較例では、アルキメデス缶の水平バランスがとれるように、ワイヤーの位置を修正しつつ、アルキメデス缶が脱落しないように安全確認を行いながら移送した。このため、そのため、実施例に比べて搬送時間が長くなるのみならず、各々の搬送時間のバラツキも大きくなった。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の原料保持容器搬送用吊り具および同原料保持容器によれば、原料供給の際の原料保持容器の装脱着を安全にかつスムーズに行うことができ、結果として、電子ビーム溶解炉によるチタンインゴット製造における効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本願発明の原料保持容器およびその搬送用吊り具を示す側面図である。
【図2】図1における原料保持容器および搬送用吊り具の接続部分を右方向から見た図である。
【図3】図1における原料保持容器を左右方向から見た図である。
【図4】第2位置決めバーと嵌合溝との接続を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…クレーン係合フック、2…支持フレーム、3…駆動用ネジ、4…駆動用モーター、5…第一位置決めバー、6…本体フレーム、7…吊りピン、8…水平位置指示針、9…水平位置スケール、11…アルキメデス缶本体、12…第一位置決めバー嵌合部材、13…フランジ、14…貫通孔、15…第一位置決めバー貫通孔、16…駆動用ネジ支持部、17…切り欠き部、18…原料排出口、19…当接部材、20…容器懸架脚、21…傾動位置指示針、22…傾動位置スケール、23…第二位置決めバー、24…第二位置決めバー用嵌合溝、M…原料保持容器搬送用吊り具、N…原料保持容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点金属の電子ビーム溶解炉へ原料を供給する原料保持容器搬送用吊り具であって、
上記原料保持容器搬送用吊り具は、
クレーン係合フックと、
上記原料保持容器および上記原料保持容器搬送用吊り具全体を支持する支持フレームと、
上記原料保持容器を支持する本体フレームと、
上記支持フレームを
上記本体フレームに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、
上記原料保持容器を懸架する容器懸架脚と、
上記原料保持容器に載架させる支持脚と
からなることを特徴とする原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項2】
前記水平移動手段は、
前記支持フレームを前記本体フレームに対して水平方向に移動させる水平移動用ネジと、
この水平移動用ネジを
駆動させる駆動用モーターとからなることを特徴とする請求項1に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項3】
前記水平移動用ネジを
駆動させる駆動用モーターが遠隔操作可能なように制御装置が併設されていることを特徴とする請求項2に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項4】
前記支持フレームの下端には水平位置指示針が配設され、
前記本体フレームには上記水平位置指示針の位置を示す水平位置スケールが配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項5】
前記支持フレームの上端には、傾動位置指示針が傾動自在に配設され、
前記傾動位置指示針の先端部に対応した支持フレーム上には、傾動位置スケールが
配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項6】
前記本体フレームに配設された容器懸架脚には、原料保持容器の吊りピンおよび前記吊りピン駆動装置が装着されていることを特徴とする請求項1に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項7】
前記本体フレームに配設された支持脚には、原料保持容器載架用の当接部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項8】
前記本体フレームには、原料保持容器の第一位置決めバーおよび第二位置決めバーが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項9】
前記吊りピン駆動装置には遠隔操作可能なような制御装置が併設されていることを特徴とする請求項6に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項10】
前記水平移動用ネジが、台形ネジまたは角ネジであることを特徴とする請求項2に記載の原料保持容器搬送用吊り具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の原料保持容器搬送用吊り具を用いて搬送される原料保持容器であって、上記原料保持容器の側壁部に、上記原料保持容器搬送用吊り具との位置決め手段である第一位置決めバー挿入用の嵌合孔が内部に形成された嵌合部材が配設されていることを特徴とする原料保持容器。
【請求項12】
上記原料保持容器の側壁部には、上記原料保持容器搬送用吊り具との位置決め手段である第二位置決めバーを受ける嵌合溝が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の原料保持容器。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の原料保持容器搬送用吊り具を用いて搬送される原料保持容器であって、上記原料保持容器の両端部に形成したフランジに、上記原料保持容器搬送用吊り具との懸架手段である吊りピンを挿入する貫通孔が形成されていることを特徴とする原料保持容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−151368(P2010−151368A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329444(P2008−329444)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【出願人】(000159618)吉川工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】