説明

原稿読み取り装置

【課題】光源の光量変動や発熱によるセンサー出力変動に拘わらず、より適正にシェーディング補正を行なう。
【解決手段】ADFによる原稿の読み取りが指示された場合に、原稿読み取り前に予め白基準板27を読み取って黒基準データBshと白基準データWshと設定しておき、ADF挿入口26にセットされている原稿を一枚ずつADF読み取り領域34に搬送して原稿をスキャンし、得られたイメージデータDxを黒基準データBshと白基準データWshとによりシェーディング補正するものにおいて、連続スキャン回数Nが所定値Nref以上となる度に(S160)、光源ユニット71をオフとしてADF読み取り領域34をスキャンし(S170)、得られたADF黒基準データBadfと黒基準データBshとの偏差(黒基準偏差ΔBsh)が閾値Brefを超える場合には黒基準データBshを補正する(S210,S220)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を光学的に読み取る原稿読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の原稿読み取り装置としては、自動原稿搬送(ADF)機能付きの原稿読み取り装置において、シェーディング補正のためのシェーディングデータの生成に用いる第1の白基準板の他に、ADF読み取り時の原稿読み取り位置に第2の白基準板を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、ADF原稿読み取り時には、第2の白基準板から光源の変動分を含む白基準データを得ることにより、予め第1の白基準板を読み取ることにより生成したシェーディングデータを第2の白基準板の白基準データで補正するものとしており、これにより、ADF読み取り時に読み取り光学系を移動させることなく、読み取り画像データの濃度変動を無くすことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−37717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した手法では、二つの白基準板を配置するためのスペースが必要となるため、装置が大型化してしまう。このため、白基準板の設置を最小限としつつ、原稿読み取り中の画像データの濃度変動を少なくさせる手法が求められている。
【0005】
本発明の原稿読み取り装置は、装置を小型化しつつ、原稿の読み取り中に光源の変動や受光感度の変動が生じるものとしても、読み取り画像データの濃度変動をより少なくすることを主目的とする。
【0006】
本発明の原稿読み取り装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の原稿読み取り装置は、
原稿を光学的に読み取る原稿読み取り装置であって、
読み取り領域に発光する発光部と、反射光を受光する複数の受光素子が主走査方向に配列された受光部と、を有する読み取り手段と、
セットされている原稿を一枚ずつ前記読み取り領域に自動搬送する自動搬送手段と、
前記読み取り手段を副走査方向に移動させる移動手段と、
前記読み取り手段が読み取り可能な位置に配置された一つの基準板と、
自動搬送を伴って原稿の読み取りが指示された場合、原稿の読み取り前に前記基準板に前記読み取り手段を移動させ前記受光部の各受光素子で該基準板を読み取って基準データを取得し、前記読み取り手段を前記読み取り領域に移動させ、セットされている原稿を前記読み取り領域に自動搬送しながら前記受光部の各受光素子で原稿を読み取って原稿データを取得すると共に所定の間隔で前記発光部をオフとして前記読み取り手段により光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する読み取り制御手段と、
前記基準データと前記光学的黒データとに基づいて前記原稿データに対してシェーディング補正を行なうシェーディング補正手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の原稿読み取り装置では、自動搬送を伴って原稿の読み取りが指示された場合、原稿の読み取り前に基準板に読み取り手段を移動させ受光部の各受光素子で基準板を読み取って基準データを取得し、読み取り手段を読み取り領域に移動させ、セットされている原稿を読み取り領域に自動搬送しながら受光部の各受光素子で原稿を読み取って原稿データを取得すると共に所定の間隔で発光部をオフとして読み取り手段により光学的黒を読み取って光学的黒データを取得し、基準データと光学的黒データとに基づいて原稿データに対してシェーディング補正を行なう。これにより、光源の光量変動や発熱によるセンサー出力変動に拘わらず、より適正にシェーディング補正を行なうことができると共に二つ以上の基準板を設けるものに比して装置をコンパクトにすることができる。
【0009】
こうした本発明の原稿読み取り装置において、前記シェーディング補正手段は、前記基準データと前記光学的黒データとを比較し、両データが所定程度以上乖離している場合に、前記光学的黒データにより前記基準データを補正する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より適正に基準データを設定することができる。
【0010】
また、本発明の原稿読み取り装置において、前記読み取り制御手段は、前記所定の間隔として所定枚数連続して原稿を読み取る度に前記光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する手段であるものとすることもできるし、前記読み取り制御手段は、前記所定の間隔として一枚の原稿を読み取る度に前記光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する手段であるものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明の原稿読み取り装置において、前記光源ユニットは、LED(Light Emitting Diode)により構成されてなるものとすることもできる。こうすれば、原稿読み取り中の光量変動を比較的少なくすることができるため、シェーディング補正を適正に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マルチファンクションプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】筐体カバー22を開けた状態のプリンター20の外観図。
【図3】スキャナーユニット40の構成の概略を示す構成図。
【図4】ADF原稿読み取り処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】黒基準データの補正の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるマルチファンクションプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、筐体カバー22を開けた状態のマルチファンクションプリンター20の外観図であり、図3は、スキャナーユニット40の構成の概略を示す構成図である。
【0014】
本実施形態のマルチファンクションプリンター20は、筐体21と、筐体21の上面を開閉可能な筐体カバー22とにより構成されており、原稿を光学的に読み取ってイメージデータを生成するスキャナーユニット40と、カセット23内にセットされてる用紙を給紙し印刷して排紙トレイ24に排紙するプリンターユニット42と、ユーザーによる各種操作が可能な操作パネル46と、メモリーカードスロット49aに挿入されたメモリーカードMCとの間でデータの入出力を司るメモリーカードコントローラー49と、装置全体の制御を司るメインコントローラー80と、を備える。筐体21の上面には、ガラス台32が配設されており(図2参照)、ガラス台32に載置された原稿をスキャナーユニット40で光学的に読み取ることができるようになっている(以下、この動作モードを原稿固定読み取りモードと呼ぶ)。また、筐体カバー22には、オートドキュメントフィーダーユニット61(以下、ADFユニットと呼ぶ)が内蔵されており(図3参照)、原稿ガイド29によりガイドされADF挿入口26にセットされている原稿を連続的に自動搬送しながらスキャナーユニット40で光学的に読み取ることができるようになっている(以下、この動作モードをADF読み取りモードと呼ぶ)。
【0015】
スキャナーユニット40は、スキャナーASIC50と、スキャナーエンジン60とを備える。スキャナーASIC50は、スキャナーエンジン60を制御する集積回路であり、メインコントローラー80からのスキャン指令を受けると、原稿固定読み取りモードかADF読み取りモードかのいずれかのモードで原稿をイメージデータとして読み取るようスキャナーエンジン60を制御する。なお、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。
【0016】
スキャナーエンジン60は、図3に示すように、ADF挿入口26にセットされた原稿をADF読み取り領域34に自動搬送するADFユニット61と、ガラス台32あるいはADF読み取り領域34に光を照射する光源ユニット71と、原稿からの反射光を受光して電荷として蓄えることにより原稿を読み取るCIS74と、光源ユニット71とCIS74とを搭載しキャリッジモーター78aと従動ローラー78bとに架け渡されたベルト79をキャリッジモーター78aで駆動することにより往復動するキャリッジ76と、を備える。ADFユニット61は、ADF挿入口26付近に配置されたピックアップローラー63と、搬送経路62に配置された複数の搬送ローラー64と、ADF排紙トレイ28付近に配置された排紙ローラー65とを備えており、各ローラー63,64,65を搬送モーター66で回転駆動させることにより、ADF挿入口26にセットされた原稿を一枚ずつ取り込んで搬送経路62上に自動搬送する。光源ユニット71は、赤色光を点灯する赤LED72Rと、緑色光を点灯する緑LED72Gと、青色光を点灯する青LED72Bの3色の光源を有しており、光源からの光を導光体73を介してガラス台32或いはADF読み取り領域34に照射する。CIS74は、一ライン分の複数の受光素子(CMOSイメージセンサー)75が主走査方向に配列されたものとして構成されており、各色のLED72R,72G,72Bの点灯を順次切り替えながら反射光を一色ずつ読み取ることによりカラーイメージデータを生成する。
【0017】
スキャナーASIC50は、各デバイスの制御を司る制御回路52と、LED72R,72G,72Bを個別にオンオフするLED駆動回路54と、CIS74で生じたアナログ信号を図示しない増幅器を介して入力してデジタル信号に変換するA/D変換器56と、制御回路52からの制御信号を受けてキャリッジモーター78aや搬送モーター66aを駆動するモーター駆動回路58と、を備える。
【0018】
ガラス台32の副走査方向の端部には、白基準板36が設けられている。この白基準板36は、光源ユニット71の発光のバラツキや受光素子75の素子毎の感度特性のバラツキなどに起因して画素毎に生じる濃度ムラを除去(シェーディング補正)するためのものである。シェーディング補正は、「Dx」をシェーディング補正前のイメージデータ,「Dx*」をシェーディング補正後のイメージデータ,「Bsh」を黒基準データ,「Wsh」を白基準データ,「k」を補正係数,「n」をAD変換器56の量子化ビット数としたときに、次式(1)の演算式を用いて行なうことができる。ここで、黒基準データBshは、原稿の読み取り前に、キャリッジ76を白基準板36に対向する位置まで移動させた状態で、全てのLED72R、72G、72Bをオフとしてスキャンしたときに受光素子75で得られる出力電圧であり、白基準データWshは、同じくキャリッジ76を白基準板36に対向する位置まで移動させた状態で、現在設定されている原稿読み取り条件をもって各色のLED72R、72G、72Bをオンとしてスキャンしたときに受光素子75で得られる出力電圧(白基準原稿読み取りデータWsc)から黒基準データBshを減算したものである。
【0019】
Dx*=(Dx-Bsh)*(2n-1)/(k・Wsh) (1)
【0020】
プリンターユニット42は、プリンターASIC44とプリンターエンジン45とを備える。プリンターASIC44は、プリンターエンジン45を制御する集積回路であり、メインコントローラー80から印刷指令を受けると、印刷指令の対象となる画像ファイルに基づいて記録紙に画像を印刷するようプリンターエンジン45を制御する。プリンターエンジン45は、印刷ヘッドから用紙へインクを吐出することにより印刷を行なう周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。なお、プリンターユニット42は、本発明の要旨をなさないから、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0021】
操作パネル46は、中央に配置された表示部47と、この表示部47の左隣に配置された電源ボタン48と、を備える。表示部47は、タッチパネル式の液晶ディスプレイとして構成されており、モードを選択するモードボタンや、ディスプレイ上に表示される案内に従ってタッチすることによりメニューや項目を選択する選択/設定ボタン,コピーや印刷を開始するスタートボタンなどを表示してタッチ操作を受け付ける。ここで、モード選択ボタンにより選択可能なモードとしては、ガラス台32に載置された原稿をスキャンしてコピーするコピーモードやメモリーカードMCに記憶された画像を用いて印刷したり原稿をスキャンしてデータ化してメモリーカードMCに保存するメモリーカードモード,写真フィルムをスキャンして印刷したりデータをメモリーカードMCに保存したりするフィルムモードなどがある。
【0022】
メモリーカードコントローラー49は、右下に配置されたメモリーカードスロット49aに挿入されたメモリーカードMCとの間でデータの入出力を行うものである。このメモリーカードコントローラー49は、メモリーカードスロット49aにメモリーカードMCが挿入されているときに、メモリーカードMCに保存されているファイルを読み出してメインコントローラー80に送信したりメインコントローラー80からの命令を入力し該命令に基づいてメモリーカードMCにデータを書き込んだりする。
【0023】
メインコントローラー80は、CPU82を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種テーブルなどを記憶したROM84と、一時的にスキャンデータや印刷データを記憶するRAM86と、操作パネル46との通信を可能とする内部通信インタフェース88と、を備える。メインコントローラー80は、プリンターユニット42やスキャナーユニット40からの各種動作信号や各種検出信号を入力したり、操作パネル46のタッチ操作に応じて発生する操作信号を入力したりする。また、メモリーカードMCから画像ファイルを読み出してメインコントローラー80へ出力する指令をメモリーカードコントローラー49に出力したり、画像データの印刷を実行するようプリンタユニット42に指令を出力したり、操作パネル46からのスキャン指令に基づいてガラス台32に載置された原稿を画像データとして読み取るようスキャナーユニット40に指令を出力したり、操作パネル46に表示部47の制御指令を出力したりする。
【0024】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンター20の動作、特に、ADF読み取りモードで原稿をスキャンする際の動作について説明する。図4はメインコントローラー80により実行されるADF原稿読み取り処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、モード選択ボタンによりコピーモード或いはメモリーカードモードなどが選択され、ADF挿入口26に原稿がセットされた状態でスタートボタンがタッチ操作されたときに実行される。
【0025】
原稿読み取り処理ルーチンが実行されると、キャリッジ76が白基準板32に対向する位置まで移動するようキャリッジモーター78aを駆動制御し(ステップS100)、光源ユニット71の各色LED72R,72G,72Bの全てをオフとしてLEDオフ以外の条件について現在設定されている原稿読み取り条件をもってスキャンし(ステップS110)、各受光素子75で得られた出力電圧を主走査方向の画素数分格納することにより黒基準データBshを画素毎に設定する(ステップS120)。ここで、黒基準データBshは、本実施形態では、スキャンを所定回数繰り返して所定回数分のデータを取り、これらの平均値として設定するものとした。続いて、キャリッジ76を白基準板32に対向させたままの状態で現在設定されている原稿読み取り条件をもって各色LED72R,72G,72Bをオンとしてスキャンし(ステップS130)、各受光素子75で得られた出力電圧を主走査方向の画素数分格納することにより白基準原稿読み取りデータWscを画素毎に設定すると共に設定した白基準原稿読み取りデータWscから黒基準データBshを減じたものを白基準データWshとして画素毎に設定する(ステップS140)。ここで、白基準データWshは、本実施形態では、スキャンを所定回数繰り返して所定回数分のデータを取り、これらの平均値として設定するものとした。
【0026】
こうして黒基準データBshと白基準データWshとを設定すると、キャリッジ76がADF読み取り領域34に対向する位置まで移動するようキャリッジモーター78aを駆動制御し(ステップS150)、連続スキャン回数Nが所定回数Nref(例えば、10回や15回,20回など)以上か否かを判定する(ステップS160)。ここで、連続スキャン回数Nは、例えば、スキャンする原稿のページ(シート)のカウント数であり、本実施形態では、所定ページ(所定回数Nref)をスキャンする毎に光源ユニット71をオフとした状態でADF読み取り領域34を読み取って後述するADF黒基準データBadfを新たに設定するためのものである。連続スキャン回数Nが所定回数Nref未満と判定された場合には、ADF挿入口26にセットされている原稿の自動搬送が開始されるよう搬送モーター66を駆動制御し(ステップS230)、現在設定されている原稿読み取り条件をもって各色LED72R,72G,72Bをオンとして原稿をスキャンし、受光素子75で得られた出力電圧を主走査方向の画素数分格納することによりイメージデータDxを取得し(ステップS240)、取得したイメージデータDxに対して基準データBshと白基準データWshとに基づいて前述した式(1)によりシェーディング補正を施すことにより補正後イメージデータDx*を生成する(ステップS250)。そして、連続スキャン回数Nを値1だけインクリメントし(ステップS260)、次の原稿がADF挿入口26にセットされているか否かを判定し(ステップS270)、次の原稿がセットされている場合には、ステップS160に戻ってステップS160〜S270の処理を繰り返す。
【0027】
ステップS160で連続スキャン回数Nが所定値Nref以上と判定された場合には、光源ユニット71の各色LED72R,72G,72Bの全てをオフとしてADF読み取り領域34をスキャンし(ステップS170)、得られた出力電圧を主走査方向の画素数分格納することによりADF黒基準データBadfを設定する(ステップS180)。続いて、ADF黒基準データBadfからステップS120で白基準板36を読み取ることにより得られた黒基準データBshを減じることにより黒基準偏差ΔBsh(=Badf−Bsh)を計算し(ステップS190)、連続スキャン回数Nを値0にリセットする(ステップS200)。そして、黒基準偏差ΔBshが閾値Brefを超えるか否かを判定し(ステップS210)、黒基準偏差ΔBshが閾値Brefを超える場合には、光源変動や発熱等によるセンサー出力変動により読み取り画像データに濃度ムラが生じていると判断し、黒基準データBshを補正して(ステップS220)、ステップS230に進む。図5は、黒基準データの補正の様子を示す説明図である。黒基準データBshの補正は、図5に示すように、ADFスキャン時の光学的黒データBadfが白基準板スキャン時の光学的黒データBshよりも大きく(明るく)なっている場合を考えているから、ステップS120で得られた黒基準データBshに黒基準偏差ΔBshを加えた次式(2)により行なうことができる。したがって、ステップS230以降で、次回以降に原稿をスキャンして得られたイメージデータDxは、補正した黒基準データBsh*に従ってシェーディング補正がなされるため、光源の光量変動や発熱によるセンサー出力変動に拘わらず、より適正にシェーディング補正を行なうことができる。なお、黒基準偏差ΔBshが閾値Brefを超えない場合には、上述した濃度ムラは生じていないと判断し、黒基準データBshの補正を行なわずに、ステップS230に進む。
【0028】
Bsh*=Bsh+ΔBsh (2)
【0029】
こうしてADF挿入口26に挿入されている全ての原稿が自動搬送されてスキャンされると、ステップS270で次の原稿がないと判定されるため、これで本ルーチンを終了する。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の光源ユニット71が本発明の「発光部」に相当し、ADFユニット61が「自動搬送手段」に相当し、CIS74が「受光部」に相当し、キャリッジモーター78aと従動ローラー78bとこれらに架け渡されたベルト79とが「移動手段」に相当し、図4のADF原稿読み取り処理ルーチンのステップS100〜S200,S230〜270の処理を実行するメインコントローラー80が「読み取り制御手段」に相当し、ステップS210,220の処理を実行するメインコントローラー80が「シェーディング補正手段」に相当する。
【0031】
以上説明した本実施形態のマルチファンクションプリンター20によれば、ADFによる原稿の読み取りが指示された場合に、原稿読み取り前に予め白基準板36を読み取って黒基準データBshと白基準データWshと設定しておき、ADF挿入口26にセットされている原稿を一枚ずつADF読み取り領域34に搬送して原稿をスキャンし、得られたイメージデータDxを黒基準データBshと白基準データWshとによりシェーディング補正するものにおいて、連続スキャン回数Nが所定値Nref以上となる度に光源ユニット71をオフとしてADF読み取り領域34をスキャンし、得られたADF黒基準データBadfと黒基準データBshとの偏差(黒基準偏差ΔBsh)が閾値Brefを超える場合には黒基準データBshを補正するから、光源の光量変動や発熱によるセンサー出力変動に拘わらず、より適正にシェーディング補正を行なうことができる。
【0032】
上述した実施形態では、連続スキャン回数Nが所定回数Nrefを超える度に光源ユニット71をオフとした状態でADF読み取り領域34を読み取ってADF黒基準データBadfを新たに設定する(ADFスキャン)ものとしたが、これに限定されるものではなく、一回原稿を読み取る度にADFスキャンを実行するものとしてもよいし、ADF読み取り中に所定時間が経過する度にADFスキャンを実行するものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、光源ユニット71としてLED72R,72G,72Bの3色のLEDを用いるものとしたが、これに限定されるものではなく、光源ユニットとして白色LEDを用いるものとしたり、光源ユニットとして蛍光ランプを用いるものとしミラーやレンズにより光をセンサーに導くものとしてもよい。また、受光部も、CIS74に代えてCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサーを用いるものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、本発明をマルチファンクションプリンター20に適用して説明したが、プリンター機能のないスキャナーに適用するものとしてもよいし、FAX機器に適用するものとしてもよい。
【0035】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
20 マルチファンクションプリンター、21 筐体、22 筐体カバー、23 カセット、24 排紙トレイ、26 ADF挿入口、28 ADF排紙トレイ、29 原稿ガイド、32 ガラス台、34 ADF読み取り領域、36 白基準板、40 スキャナーユニット、42 プリンターユニット、44 プリンターASIC、45 プリンターエンジン、46 操作パネル、47 表示部、48 電源ボタン、49 メモリーカードコントローラー、49a メモリーカードスロット、50 スキャナーASIC、52 制御回路、54 LED駆動回路、56 A/D変換器、58 モーター駆動回路、60 スキャナーエンジン、61 オートドキュメントフィーダー(ADF)ユニット、62 搬送経路、63 ピックアップローラー、64 搬送ローラー、65 排紙ローラー、71 光源ユニット、72R,72G,72B LED、73 導光体、74 CIS、75 受光素子、76 キャリッジ、78a キャリッジモーター、78b 従動ローラー、79 ベルト、80 メインコントローラー、82 CPU、84 ROM、86 RAM、88 インターフェース(I/F)、MC メモリーカード、S 原稿。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を光学的に読み取る原稿読み取り装置であって、
読み取り領域に発光する発光部と、反射光を受光する複数の受光素子が主走査方向に配列された受光部と、を有する読み取り手段と、
セットされている原稿を一枚ずつ前記読み取り領域に自動搬送する自動搬送手段と、
前記読み取り手段を副走査方向に移動させる移動手段と、
前記読み取り手段が読み取り可能な位置に配置された一つの基準板と、
自動搬送を伴って原稿の読み取りが指示された場合、原稿の読み取り前に前記基準板に前記読み取り手段を移動させ前記受光部の各受光素子で該基準板を読み取って基準データを取得し、前記読み取り手段を前記読み取り領域に移動させ、セットされている原稿を前記読み取り領域に自動搬送しながら前記受光部の各受光素子で原稿を読み取って原稿データを取得すると共に所定の間隔で前記発光部をオフとして前記読み取り手段により光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する読み取り制御手段と、
前記基準データと前記光学的黒データとに基づいて前記原稿データに対してシェーディング補正を行なうシェーディング補正手段と、
を備える原稿読み取り装置。
【請求項2】
前記シェーディング補正手段は、前記基準データと前記光学的黒データとを比較し、両データが所定程度以上乖離している場合に、前記光学的黒データにより前記基準データを補正する手段である請求項1記載の原稿読み取り装置。
【請求項3】
前記読み取り制御手段は、前記所定の間隔として所定枚数連続して原稿を読み取る度に前記光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する手段である請求項1または2記載の原稿読み取り装置。
【請求項4】
前記読み取り制御手段は、前記所定の間隔として一枚の原稿を読み取る度に前記光学的黒を読み取って光学的黒データを取得する手段である請求項1または2記載の原稿読み取り装置。
【請求項5】
前記光源ユニットは、LED(Light Emitting Diode)により構成されてなる請求項1ないし4いずれか1項に記載の原稿読み取り装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−70097(P2012−70097A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211369(P2010−211369)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】