説明

原稿読取装置

【課題】 ポジフィルムとネガフィルムの両方を同じ光学条件で読み取るフィルムスキャナにおいて、光源の色温度や原稿濃度の違いによるCCD出力信号の低下をアナログゲインで補う場合に、アナログゲインによって増幅されるランダムノイズの影響を受けずに正しいデジタル黒補正を行う。
【解決手段】 低ゲインに設定して取得されるデジタル信号を基本デジタル黒補正値として記憶することを特徴とし、読取時に設定する前記増幅手段の増幅率を前記基本デジタル黒補正値に乗算したものを実際の読取用のデジタル黒補正値として適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過型原稿読取装置における取得画像の品質向上、安定化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿をCCDセンサなど光電変換素子で読み取る方式のスキャナでは、原稿を高S/Nで読み取るために、CCDの光電変換レンジをできるだけ広く利用できるように光源光量を設計する。しかしながら、実際にはCCD感度や光源輝度の製造ばらつき、さらには光源の経時変化などにより、CCD出力レベルは必ずしも一定ではない。これらを合わせるとCCD出力信号の変化域は2倍にも達する。そこで、光源に調光機能を装備して上述した素子のばらつきに関わらず、CCDの光電変換範囲を十分に利用でき、かつCCDが飽和しない所定のレベルになるように光源輝度を調整する手法がある。この場合、光源としては比較的調光が容易な冷陰極管を用いる。特に、高速フィルムスキャナのように短い蓄積時間の間にCCDにおいて十分電荷を蓄えねばならない場合には十分な光量が必要となるため、LEDなどではなく高い輝度が得られる冷陰極管のほうが好ましい。キセノンランプでも高輝度が得られるが調光範囲が狭く、上述した素子のばらつき問題に対応するのは難しい。
【0003】
さらに、ポジフィルムの読み取りに適した色温度を持つ光源を用いてポジフィルムとネガフィルムの両方を読み取る場合には、光源の色温度のばらつきやネガフィルムのネガベース濃度に起因するRGBの出力差が生じる。特に、ネガベースによる透過光量の低下、RGBバランスの変動は大きい。これに対し、原稿をコマ間などのネガベースが存在する位置まで給送し、ネガベースからの透過光に対して調光を行う方法もある。しかしながら、光源に冷陰極管を用いた場合には調光後の輝度の安定までに要する時間が長いので、原稿挿入後の調光制御はスループットの低下を招き好ましくない。しかも、調光だけでは冷陰極管の色温度はコントロールできないのでネガベース色の補正はできない。ネガベース色を補正するために光学フィルタを用いる方法もあるがコストアップを招き制御も複雑になる。
【0004】
そこで、光源の色温度やネガベースによる信号低下に対して、光源輝度をポジフィルムの読取条件に固定した上で、光電変換後の電気信号をゲインコントロールアンプで増幅することで画像信号をA/D変換器の入力ダイナミックレンジに合わせるという手法が取られていた。これにより光源の色温度やネガベース色の補正およびCCD到達光量の調整が可能である。しかし、この手法ではゲインコントロールアンプがCCDに含まれるノイズも増幅してしまうので以下のような問題があった。
【0005】
装置毎のS/Nに差が出る
ポジフィルムに比べてネガフィルムでS/Nが極端に悪化する
チャネル毎のS/Nに差が出るため、ネガの一部の画像では粒状感が増す
また、ゲインコントロールアンプで増幅することの別の問題は、デジタル補正の精度が悪化することである。ゲインコントロールアンプによって増幅された信号にはランダムノイズが多く含まれるためである。
【0006】
そこでシェーディング補正などのデジタル補正のために信号を取得するときにはノイズ除去処理を行うのが普通である。ラインCCDの場合は複数ライン分を読み取って平均化したり、読み取ったCCD信号を移動平均処理したりといった方法がある。理論的にはアナログゲインの大きさに応じてノイズ除去能力も上げればよい。例えばCCD1ラインのノイズ量がアナログゲイン1倍のときに比べてn倍となったら、ライン信号をn2回読み取って平均化すればアナログゲインの大きさに関わらずノイズレベルをアナログゲイン1倍のときのレベルに抑えることが可能である。しかしながら、実際にハードで構成可能なメモリー容量には限界があり、また処理時間にも実用上の限度がある。よって、ある値以上のアナログゲインでは正しい補正値を計算できなくなり、そのようにして取得した補正値では誤補正を行ってしまう。特に、ネガフィルムの場合にはネガベース濃度の分だけ使用するアナログゲインが確実に大きくなるためこのような状況が発生しやすく、この場合には誤補正に対する回避策が必要である。さらに、デジタル黒補正における誤補正は、ネガフィルムの場合には出力画像の明部において発生するため認識されやすい。また、AD変換後の信号を8bit画像に変換するLUT形状が信号の黒側で急峻であることも影響度を大きくする要因である。本来、デジタル黒補正はCCDの暗時出力の不均一性を補正することが目的である。これを正しく補正できればランダムノイズだけが残るが、誤った補正を行うと副走査方向に固定の補正エラーが連続して現れ、ランダムノイズがあってもその規則性はスジ状ノイズとして人間の目に認識されやすい。以上から、デジタル黒補正の誤補正はネガフィルムにおいて一層問題となりやすい。
【0007】
以上述べたような問題に対し、電子シャッタ機能を持ったCCDを選び、チャネル毎に蓄積時間を変更することでCCDの感度ばらつきも含めてアナログゲインを用いずにRGB信号のばらつき吸収しCCDに含まれるノイズの増大を回避する手法がある。(例えば、特許文献1参照。)また、調光範囲を広く設計し、補正値算出時には読取時に設定するアナログゲインの1/2とし、代わりに光源輝度を2倍として同じCCD信号レベルとした上でCCD値を取得することによってノイズの影響を回避する手法がある。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2001-223847号公報
【特許文献2】特開平7-298046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で示した従来法では、RGBチャネル別に蓄積時間を変更可能なCCDを装備し、光源の色温度やネガベース濃度に応じてチャネル別に蓄積時間を変更している。つまりチャネル別に感度を変更できるので、CCD出力信号でのRGBのバランスを常に均一に調整でき、低いアナログゲインを維持したままほとんど変更する必要がない。よって、AD変換後の信号に含まれるノイズ量にチャネル間の差が生じないので、上述したような問題は起きない。しかしながら、CCDの駆動方法や原稿の給送速度などの条件に制約ができ設計の柔軟性が失われる。また、その都度CCDの蓄積時間を最適化しなければならず制御が複雑となる。さらに、部品選定に制限ができてしまうといったデメリットもある。
【0009】
一方、特許文献2で示した従来法では、実際に想定される素子ばらつきや原稿濃度に応じた調光範囲よりも、さらに広く調光範囲を設計している。そして、原稿読取時に設定するアナログゲインに対し、補正値算出時にはアナログゲインを1/2とし、代わりに光源輝度を2倍とすることで同じCCD信号レベルを得た上でCCD値を取得している。この結果、ノイズの少ないCCD信号を取得できるので、計算誤差の少ない正しい補正を行える。しかし、この場合に必要となる調光範囲は非常に広くなり、輝度安定の問題も考慮すると冷陰極管を正確に調光するのは困難である。さらに、この手法は白補正については有効であるが、黒補正を正しく行うことはできない。
【0010】
したがって、ポジフィルムとネガフィルムの両方を同じ光源光量で読み取り、信号の低下分をアナログゲインで補う構成をとった場合においても正しくデジタル黒補正を行うためにはその他の方法が必要である。
【0011】
又、他の従来技術では、アナログゲインの増加に応じてノイズ除去能力も上げることで同じ問題を解決している。しかし、メモリー容量などハード上の制限によって十分なノイズ除去が達成できなかった場合には誤補正の影響を回避するためにさらに別の手段が必要であり根本解決は望めない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した問題を解決するために本発明の原稿読取装置は、
ラインCCDの信号をチャネル別に電気的に増幅する手段と、前記増幅手段によって増幅された信号をAD変換する手段と、AD変換後のデジタル信号をCCDの画素単位で出力補正するデジタル補正手段と、CCDを遮光するためのシャッタを具備し、前記シャッタを閉じた状態で前記増幅手段の増幅率を低ゲインに設定して取得されるデジタル信号を基本デジタル黒補正値として記憶することを特徴とし、挿入された原稿濃度に依存して決定される増幅率を前記基本デジタル黒補正値に乗算したものを実際の読取時におけるデジタル黒補正値として適用することを特徴とする。
【0013】
ポジフィルムとネガフィルムの両方を同じ光学条件で読み取るフィルムスキャナにおいて、光源の色温度や原稿濃度の違いによるCCD出力信号の低下をアナログゲインで補う場合に、アナログゲインが増大することによって同時に増幅されたランダムノイズの影響を受けずに常に安定したシェーディング補正値を取得することが可能となる。つまり、原稿濃度別に決定されるアナログゲインによるノイズ増大の影響を受けないので、常に安定したシェーディング補正が可能である。特に、補正誤差が出力画像の明部で目立つネガフィルム読み取り時のデジタル黒補正における誤補正を回避できる。アナログゲインによる増幅後のデータに含まれるランダムノイズをライン平均で十分に除去するには大容量のメモリーが必要となりコストアップを招く。本提案はそのようなコストアップを回避しながらも安定したシェーディング補正を可能とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ポジフィルムとネガフィルムの両方を同じ光学条件で読み取るフィルムスキャナにおいて、光源の色温度や原稿濃度の違いによるCCD出力信号の低下をアナログゲインで補う場合に、アナログゲインが増大することによってランダムノイズも同時に増幅されることによる影響を受けずに正しいシェーディング補正値を取得することが可能となる。アナログゲインが1倍のときにCCD出力信号に含まれるノイズレベルを十分に除去することができる条件でハードを設計すれば、アナログゲインが1倍のときのデータを元にその他のアナログゲインが設定された場合のシェーディング補正値を計算によって取得するので、ノイズの増大によって間違った補正値を取得することがない。つまり、原稿濃度別に決定されるアナログゲインによるノイズ増大の影響を受けないので常に安定したシェーディング補正が可能である。特に、補正誤差が画像の明部で目立つネガフィルム読み取り時のデジタル黒補正において誤補正を回避できる。アナログゲインによる増幅後のデータに含まれるランダムノイズをライン平均処理で十分に除去するには大容量のメモリーが必要となりコストアップを招くが、本提案はそのようなコストアップを回避しながらも正しいシェーディング補正を可能とする。
【0015】
また、本発明によればポジフィルムとネガフィルムで光量条件を変更しないので、広い調光範囲を得るために冷陰極管を用いても、原稿読取中の光量変動によって画像に濃度むらが生じるなどの問題は起きない。また、色補正や調光のための光学フィルタを必要としないのでコストも抑えられる。
【0016】
さらに、原稿濃度に合わせたRGB別に蓄積時間変更を行わないので制御が簡単である。また、補正後の読取時間が原稿濃度によって遅くなりスループットが低下するといった問題は起きない。デジタル補正に要する時間もアナログゲインに関係なく同じなので、原稿濃度によってスループットが変わることがない高速フィルムスキャナの設計が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態を示す装置の構成図である。1.は光源であり、冷陰極管である。2.は原稿であり、3.は1.光源の原稿を通過した透過光を集光するレンズである。4.は3.レンズからの透過光を電気信号に変換するラインCCDである。5.は入力信号のオフセットを調整する機能を持つゲインコントロールアンプ(以下、GCA)であり、4.ラインCCDの出力信号に対してオフセットを調整した後に電気的な増幅を行う。6.はAD変換器(以下、ADC)であり、5.GCAで増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。7.はCPUであり、4.ラインCCDの制御信号を出力し、5.GCAの増幅率を制御する。8.はインバータ回路であり、7.CPUから電圧調光信号を制御することによって1.光源の光量を変化させることが可能である。9.は原稿搬送装置であり、2.原稿を4.ラインCCDに対して垂直方向に移動させるためのローラー、モータなどの装置一式を含むものとする。10.は1.光源からの光からCCDを遮光するためのシャッタであり、11.は1.光源の光が通過するスリットである。また、12.はCCD出力信号を記憶するためのラインメモリである。13.は原稿が挿入される側に配置された位置検知センサ1であり、14.は11.スリットを挟んで13.原稿位置検知センサ1とは反対側に配置された原稿位置検知センサ2である。
【0019】
次に、全体の処理の流れについて図1、図2、図3、図4、図5を用いて説明する。ただし、以下の説明では次の条件を前提とする。
【0020】
条件(1):電圧調光信号は、7.CPU内に含まれる8bitのDA変換器によって決定され、8.インバータ回路の入力電圧最大値に対して50%〜100%の間を等間隔で設定可能である。(図5参照)また、8.インバータ回路の入力電圧と光源輝度はその変化率が一致している。
【0021】
条件(2):ラインCCDは飽和電圧まで光電変換の線形性を保つものとし、5.GCAのアナログゲインが1倍のときにこの線形レンジはAD変換器の入力ダイナミックレンジと一致するように回路は構成されている。また画素数は1ラインあたり5000画素である。
【0022】
条件(3):冷陰極管の色温度とCCDのカラーフィルタの分光特性で決定されるCCDのRGB出力は、B信号の出力が常に最大となる。
【0023】
条件(4):電圧調光レベル100%の輝度では必ずCCDは飽和する。つまり、調光は光源輝度を下げる方向に行われる。
【0024】
条件(5):挿入された原稿種別は、CCDで読み取ったフィルムのコマ間の濃度から確実に判定できる。
【0025】
条件(6):原稿が挿入されたことは13.位置検出センサ1で検知され、14.位置検出センサ2とともに原稿のパーフォレーション部を異なる位置で検知することにより、原稿のCCDに対する相対位置は常に正しく把握される。
【0026】
条件(7):CCD到達光量に関わらず、CCDの遮光画素のレベルは変わらない。
【0027】
図2の全体の処理の流れを示すフローチャートにおいて、
まず、装置の電源をONする。光源の初期点灯を行った後、オフセット調整を行う。初期点灯は、管電流が許容管電流範囲の最大値となる条件で行う。本実施例では電圧調光レベル100%を設定した状態で一定時間点灯する。
【0028】
オフセット調整時には10.シャッタを開け、5.GCAの増幅率は1倍に設定する。
【0029】
まず、CCDの遮光画素の最小値をRGB各チャネルについて4回取得し、それらの平均値がある所定値V_offsetとなるように5.GCA内のオフセットを調整する。V_offsetの値はCCDのアナログ信号の黒レベルが認識できる範囲であれば任意であるが、値が大きくなると信号のダイナミックレンジを狭くしてしまうので適度な値とすべきである。本実施例においてはV_offset = 0とする。
【0030】
次に、調光ステップについて説明する前に光量目標値と白補正目標値の関係について図7を用いて説明する。
【0031】
光量目標値は、CCDの光電変換範囲をできるだけ広く使え、かつCCDが飽和しない光量であり、6.ADCの出力値に対して用いる。本実施例ではCCDの飽和電圧に対して95%の出力が得られる光量を光量目標値として設定する。上述の条件(2)に従えば、AD変換器のビット数が10bitの場合、光量目標値は972となり1023はCCDの飽和電圧に一致する。このように設定した光量目標値よりも大きな値を白補正目標値として設定する。ここで、調光は光量目標値に対してある幅を持って行うので、白補正目標値には調光後の信号レベルの方が必ず小さくなるような値を設定する。例えば、調光を光量目標値に対して±10カウントの精度で行うとすれば、白補正目標値には982以上の値を設定する。本実施例では白補正目標値を982とする。
【0032】
図4の調光ステップの流れを示すフローチャートにおいて、
はじめに、7.CPUでは4.ラインCCDのBチャネル1ライン分の信号を複数回取得し、取得した各ライン信号の最大値を平均してそのときの輝度レベルとして記憶する。なお、以下の説明では「輝度レベル」とは、このようにBチャネルのライン信号の最大値を複数回取得したときの平均値を指すものとし、Lave.と表す。ここでBチャネルの信号を用いた理由は上記条件(3)に依る。
【0033】
次に、取得した輝度レベルLave.と光量目標値Ltargetとの差分ΔLを式(1)に基づいて計算し、閾値Thとの比較を行う。ΔLが条件式(2)を満たさない場合は電圧調光レベルを一定量変更する。
【0034】
ΔL=|Ltarget−Lave.| ・・・(1)
ΔL<Th ・・・(2)
一定時間待機後、再び輝度レベルを取得してΔLの算出と閾値Thとの比較を行う。同様の作業をΔLが閾値Th未満になるか、電圧調光レベルが50%になるまで繰り返す。7.CPUは、最後に設定された電圧調光レベルを記憶する。
【0035】
仮に、電圧調光レベルが最小値50%となってもΔLが閾値Th未満にならない場合には、光源輝度とCCD感度のばらつきが設計予想値を越えていると判断し、装置をエラー状態として動作を終了する。このエラー表示は、スキャナ本体に設けたLEDで示してもよいし、あるいはスキャナと接続されたホストコンピュータのモニタ画面に表示することも可能である。
【0036】
調光ステップ終了後、決定された電圧調光レベルは原稿読取用の点灯条件として7.CPUで記憶され、原稿が挿入されるまで同じ条件を維持する。
【0037】
続いて10.シャッタを閉じて基本デジタル黒補正値を算出する。CCDのライン信号を複数回取得して各画素について平均値を算出する。このときの取得回数は、ハードが持つノイズ量に合わせて適当な値を設定すればよいが実際の設計においてはメモリー容量などにも限度がある。そこで本実施例では4ライン分のデータを取得するものとする。各画素について4ライン分の平均値を計算し、これを基本デジタル黒補正値Rdark0_n、Gdark0_n、Bdark0_n (n=1〜5000)としてRGB別に12.ラインメモリに記憶する。
【0038】
次に、10.シャッタを開けて白補正を行う。
【0039】
図6(a)に本実施例における冷陰極管の色温度とCCDのカラーフィルタの分光特性で決定されるCCD出力信号のRGBバランスを示す。図6は5.GCAのアナログゲインが1倍のときの6.ADCの出力値を示している。白補正では、このRGB出力のアンバランスをライン信号の最大値として取得し、5.GCAでのアナログゲインを調整することによって6.ADC入力部において均一化する。
【0040】
まず、RGB各チャネルの1ライン分のデータを4回取得し、4ライン分のデータを画素毎に平均することにより各チャネルの出力値を取得する。さらに各チャネルの出力値から最大値を探索し信号レベルとして記憶する。7.CPUは、RGBの各信号レベルが上述した白補正目標値と同一となるようなアナログゲインを計算し、白補正ゲインとして7.CPUにてその値を記憶し、かつ5.GCAに設定する。図6(a)に示した例の場合、決定される白補正ゲインはRGBそれぞれについて以下のようになる。
【0041】
【表1】

【0042】
白補正終了後、再度オフセット調整を行う。最初のオフセット調整と同様にCCDの遮光画素の最小値を4回取得し、その平均値がV_offsetと一致するように5.GCA内のオフセットレベルを調整する。
【0043】
次に、各チャネルの白出力値を取得する。白出力値は原稿がない素抜けの状態でのCCD出力である。白出力値には光源両端での輝度低下やレンズの周辺光量落ちなどに起因する信号レベル低下(シェーディング;図7参照)があり、これをデジタル信号として取得する。CCD4ライン分のデータを取得し、それらを各画素について平均したものを白出力値Rn、Gn、Bn (n=1〜5000)として取得する。その後、原稿が挿入されるまで待機する。
【0044】
続いて、原稿種類別の原稿読取とデジタル黒補正値の計算方法について図3を用いて説明する。
【0045】
原稿が挿入された後、ネガポジ判定を行う。原稿を13.位置検出センサ1および14.位置検出センサ2の出力を見ながらコマ間が読み取れる位置まで給送する。ポジフィルムであればコマ間は透過率がほぼ0%であるが、ネガフィルムであればコマ間はネガベースであるためネガベース濃度に相当するRGB出力バランスが得られる。原稿がポジフィルムと判定された場合には、上記白補正ゲインをポジフィルム読取用アナログゲインPgain_r、Pgain_g、Pgain_bとして設定する。そして、上記基本デジタル黒補正値に対し、RGB別に前記ポジフィルム読取用アナログゲインを乗算したものをポジ用デジタル黒補正値PRdark_n、PGdark_n、PBdark_n(n=1〜5000)として12.ラインメモリに記憶する。
【0046】
【数1】

【0047】
このように計算したデジタル黒補正値とデジタル白補正目標値W_digitalおよび白出力値Rn、Gn、Bn (n=1〜5000)とから各画素におけるポジ用シェーディング補正値Psh_Rn、Psh_Gn、Psh_Bn (n=1〜5000)を下式に従って計算する。
【0048】
【数2】

【0049】
ここで、上述した白補正目標値をW_analogとすると、デジタル白補正目標値W_digitalとは以下の関係にある。この場合、シェーディング補正値は必ず1.0以上の値となる。
【0050】
W_analog<W_digital ・・・(5)
次に、原稿を給送しながらフィルムを読み取り、取得された各画素から式(3)で得たデジタル黒補正値を減算した値に、式(4)で計算されたシェーディング補正値を乗算したものを出力データとする。
【0051】
挿入された原稿がネガフィルムと判定された場合は、5.GCAのアナログゲインを1倍に設定する。このときネガベースを読み取ったときのRGB出力が図6(b)に示すような出力だった場合、ネガフィルム読取用アナログゲインNgain_r、Ngain_g、Ngain_bは以下のように計算される。
【0052】
【表2】

【0053】
計算されたネガフィルム読取用アナログゲインは7.CPUに記憶し、かつ5.GCAにこれらのアナログゲインを設定する。
アナログゲイン設定後、再度オフセット調整を行う。オフセット調整は上述した方法と同じであり、ここでは省略する。
【0054】
上記基本デジタル黒補正値に対し、RGB別に上記ネガフィルム読取用アナログゲインを乗算したものをネガ用デジタル黒補正値NRdark_n、NGdark_n、NBdark_n(n=1〜5000)として決定する。
【0055】
【数3】

【0056】
このように計算したデジタル黒補正値とデジタル白補正目標値W_digitalおよび白出力値Rn、Gn、Bn(n=1〜5000)とから各画素におけるネガ用シェーディング補正値Nsh_Rn、Nsh_Gn、Nsh_Bn(n=1〜5000)を下式に従って計算する。
【0057】
【数4】

【0058】
次に、原稿を給送しながらフィルムを読み取り、取得された各画素のデータから式(6)で得たデジタル黒補正値を減算した値に、式(7)で得たネガ用シェーディング補正値を乗算したものを出力データとする。
【0059】
原稿の読み取り終了後、次の原稿挿入を待つ。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例に係る装置全体のブロック図である。
【図2】実施例における全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例における原稿読み取りの流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例における調光ステップの流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例におけるDA設定値と電圧調光レベルの例である。
【図6】実施例におけるアナログゲイン1倍時における素抜けとネガベースでのAD変換後のRGBバランスの例である。
【図7】実施例における光量目標値、白補正目標値、デジタル白補正目標値との関係およびCCDのシェーディング波形の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 冷陰極管(FL)
2 原稿
3 レンズ
4 ラインCCD
5 ゲインコントロールアンプ(GCA)
6 AD変換器(ADC)
7 CPU
8 インバータ回路
9 原稿搬送装置
10 シャッタ
11 スリット
12 ラインメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過原稿をラインCCDで読み取る原稿読取装置において、
前記ラインCCDの信号を色チャネル別に電気的に増幅する手段と、
前記増幅手段によって増幅された信号をAD変換する手段と、AD変換後のデジタル信号をCCDの画素単位で出力補正するデジタル補正手段と、CCDを遮光するためのシャッタを備えると共に、
前記シャッタを閉じた状態で前記増幅手段の増幅率を低ゲインに設定して取得されるデジタル信号を基本デジタル黒補正値として記憶し、読取時に設定する前記増幅手段の増幅率を前記基本デジタル黒補正値に乗算したものを実際の読取用のデジタル黒補正値として適用することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記基本デジタル黒補正値は、前記ラインCCDのライン信号を複数回取得して平均した値から決定することを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記基本デジタル黒補正値は、前記ラインCCDのライン信号を複数回取得して平均し、さらに隣接画素間で移動平均した値から決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記増幅手段の増幅率は原稿の最小濃度に依存して決定されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記増幅手段に設定した読取用の増幅率に対して、装置の持つ限度内で十分なノイズ除去ができる場合には、同じ増幅率でデジタル黒補正値を取り直したものを実際の読取用のデジタル黒補正値として適用し、装置の持つ限度内で十分なノイズ除去ができない場合にのみ上記基本デジタル黒補正値に上記読取用の増幅率を乗算して実際の読取用のデジタル黒補正値として適用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−296351(P2009−296351A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148249(P2008−148249)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】