双方向絶縁型DC−DCコンバータ
【課題】 降圧時における循環電流の低減と昇降圧時におけるサージ電圧の発生を防止し高効率で低ノイズ、かつ小型化できる双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】 DC−DCコンバータは、第1の直流電源10と第2の直流電源90に各々DC/AC相互間に電力変換可能な第1、第2のスイッチング回路を接続し、それらの交流端子間に変圧器40を備えている。ここで、第2のスイッチング回路の交流端子と直流電源90の負極端子との間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子21,23とクランプコンデンサ71の直列体で構成した電圧クランプ回路70を接続した。
【解決手段】 DC−DCコンバータは、第1の直流電源10と第2の直流電源90に各々DC/AC相互間に電力変換可能な第1、第2のスイッチング回路を接続し、それらの交流端子間に変圧器40を備えている。ここで、第2のスイッチング回路の交流端子と直流電源90の負極端子との間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子21,23とクランプコンデンサ71の直列体で構成した電圧クランプ回路70を接続した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向絶縁型DC−DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧の異なる2つの直流電源間で電力の授受を行うためには、両電源間に降圧及び昇圧機能を備えた双方向のDC−DCコンバータが必要となる。例えば、ハイブリッド自動車の電源システムは、高圧側と低圧側にバッテリを備え、高圧側バッテリからインバータを介して駆動用モータに給電し、低圧側バッテリは、車両制御用電子機器に給電する。これら両バッテリは、DC−DCコンバータを介して接続し、互いに電力の授受を可能としており、DC−DCコンバータは、高圧側から低圧側への電力供給時に降圧動作を行い、逆の場合には昇圧動作を行うことになる。
【0003】
このように、高低圧直流間で双方向の電力変換機能を有するDC−DCコンバータは、例えば、特許文献1に開示されている。このコンバータは、高圧側と低圧側を変圧器を介して接続しており、高圧側及び低圧側の両方に、直流/交流双方向に電力変換が可能なスイッチング回路を備えている。直流/交流双方向に電力変換が可能な電力変換装置は、コンバータ、インバータ、その他、種々の呼び名があるが、ここでは、スイッチング回路と呼ぶことにする。さて、特許文献1では、まず、高圧側のスイッチング回路として、スイッチング素子をフルブリッジ(Hブリッジ)接続した単相電力変換回路と平滑回路を有する。一方、低圧側のスイッチング回路として、スイッチング整流部と、チョークコイル及び平滑コンデンサで構成された電流形の単相電力変換回路を備えている。そして、降圧時には、高圧側のスイッチング回路を位相シフト制御することにより変圧器の一次側に矩形波の交流電圧を印加し、変圧器で降圧し、低圧側のスイッチング回路によって全波整流し、チョークコイル及び平滑コンデンサで平滑している。低圧側のスイッチング回路を高圧側のスイッチング動作に同期させて整流動作させることにより高効率の電力変換を行うことができる。
【0004】
一方、昇圧時には、低圧側のスイッチング回路の2つのスイッチを交互にオフすることにより、チョークコイルのエネルギー蓄積機能を利用して変圧器の二次側に電流を流し、変圧器のコアに磁束変化を与える。この磁束変化に比例した交流の電圧成分が一次側に発生し、高圧側のスイッチング回路のフリーホイルダイオードにより全波整流し、平滑コンデンサで平滑している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−165448号公報(全体)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来技術においては、降圧時に、循環電流による損失が発生し効率の低下を招くほか、昇降圧時に、低圧側でサージ電圧が発生し、その分、スイッチング素子の耐圧を大きくする必要があり、いずれも装置の大型化を招く。
【0007】
本発明の目的は、損失及びサージ電圧の発生を抑制し、高効率で装置の小型化が可能な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一面において、変圧器を挟む高低圧両側に、それぞれ直流/交流相互間に電力変換を行う第1,第2のスイッチング回路と第1,第2の直流電源とを備え、電圧の異なる2つの直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、第2のスイッチング回路の交流端子と第2の直流電源の一端間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【0009】
本発明は他の一面において、第2のスイッチング回路はカレントダブラ同期整流回路であり、このカレントダブラ同期整流回路の交流両端子と第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む2つの電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【0010】
本発明はさらに他の一面において、変圧器の二次巻線はセンタタップを有し、第2のスイッチング回路は、二次巻線のセンタタップと二次巻線両端にリアクトルを介して接続された全波整流回路を形成する主スイッチング素子を備え、センタタップと第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の望ましい実施態様によれば、双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、降圧時に循環電流による損失を低減することができる。
【0012】
また、本発明の望ましい実施態様によれば、降圧及び昇圧時の両モードにおいて、低圧側におけるサージ電圧の発生を防止することができ、高効率で小型化が可能な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することができる。
【0013】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の説明で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施形態1:
図1は、本発明の第1の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図において、高圧側の直流電源10には、平滑コンデンサ20と負荷(図示せず)と、直列接続したスイッチング素子1、2からなる第1のスイッチングアームと、直列接続したスイッチング素子3、4からなる第2のスイッチングアームとが並列に接続されている。スイッチング素子1〜4には、それぞれフリーホイルダイオード11〜14が逆並列に接続されており、スイッチング素子1〜4がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用できる。第1、第2のスイッチングアームは直流電源10に並列に接続されているため電圧形スイッチング回路の構成となっており、スイッチング回路の交流端子間には、補助リアクトル30を介して変圧器40の1次巻線41が接続されている。補助リアクトル30は、スイッチング回路に流れる電流の極性が反転する際に、電流の傾きを調整する役割を果たす。ここで、補助リアクトル30は、変圧器40の漏れインダクタンスで代替することも可能であり、その場合は、補助リアクトル30を削除することができる。
【0015】
次に、低圧側の構成について説明する。この実施形態においては、低圧側には、カレントダブラ同期整流回路を採用している。カレントダブラ同期整流回路は、例えば、特開2003−199339号公報に開示されているように良く知られている。低圧側の直流電源90には、平滑コンデンサ80と図示しない負荷が接続されている。また、直流電源90には、直列接続したリアクトル50とスイッチング素子24からなる第1のスイッチングアームと、直列接続したリアクトル60とスイッチング素子22からなる第2のスイッチングアームとが並列に接続されている。スイッチング素子22と24にはそれぞれフリーホイルダイオード32、34が逆並列に接続されており、スイッチング素子22、24がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用することができる。スイッチング素子24、22は、各々リアクトル50、60を介して直流電源90に接続されているため、低圧側のスイッチング回路は電流形である。この電流形スイッチング回路の交流端子間には、変圧器40のニ次巻線42が接続されている。
【0016】
低圧側の電流形スイッチング回路の交流端子と、直流電源90の一端(この場合は負極)間には、電圧クランプ回路70が接続されている。電圧クランプ回路70はスイッチング素子21、23とクランプコンデンサ71から成り、クランプコンデンサ71にスイッチング素子21、23が各々直列に接続されている。スイッチング素子21と23にはそれぞれフリーホイルダイオード31、33が逆並列に接続されており、スイッチング素子21、23がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用すればよい。これらのスイッチング素子21、23は、電圧クランプ回路制御装置72によってスイッチング制御される。
【0017】
この双方向絶縁型DC−DCコンバータの動作を説明する前に、その適用例であるハイブリッド自動車の電源システムについて説明する。
【0018】
図2は、ハイブリッド自動車の電源システムの概略構成図である。高圧側と低圧側にそれぞれ電圧の異なる直流電源10、90を備えており、高圧側には、インバータ200を介して車両駆動用モータ300が接続され、低圧側には負荷として電子機器400が接続され、両電源間にはDC−DCコンバータ100が接続されている。高圧側から低圧側への電力供給時、DC−DCコンバータ100は降圧動作を行い、逆に低圧側から高圧側への電力供給時は、昇圧動作を行うことになる。
【0019】
図1に戻って、降圧時の動作から説明する。最初に、電圧クランプ回路70を利用しない場合の基本回路動作について説明する。
【0020】
図3は、電圧クランプ回路70を利用しない場合の降圧時の動作波形を示している。図3において、Vg(1)〜Vg(4)は高圧側のスイッチング素子1〜4のゲート駆動電圧、Vg(22)、Vg(24)は低圧側のスイッチング素子22、24のゲート駆動電圧である。また、I(1)、I(3)、I(22)はスイッチング素子1、3、22の電流、I(11)、I(13)、I(32)はダイオード11、13、32の電流、V(1)、V(3)、V(22)はスイッチング素子1、3、22の電圧、V(41)、I(41)は変圧器40の一次巻線41の電圧、電流である。
【0021】
ゲート駆動電圧Vg(1)〜Vg(4)により、高圧側のスイッチング回路は位相シフト制御を行っている。Vg(1)とVg(4)のオン状態が重なっている期間(a)及びVg(2)とVg(3)のオン状態が重なっている期間(c)に、変圧器40の一次巻線41にそれぞれ正及び負の電圧が印加される。その他の期間では、一次巻線41の両端を短絡している。
【0022】
一方、低圧側のスイッチング素子22、24は、Vg(22)、Vg(24)のような駆動電圧で制御することにより、同期整流が行われる。
【0023】
図3において、高圧側の短絡期間(b)、つまり電力供給が行われない期間、低圧側のリアクトル50は電流を流し続けようとするため、リアクトル50→平滑コンデンサ80→スイッチング素子22→変圧器40の二次巻線42→リアクトル50の経路で電流が流れる。二次巻線42に電流が流れるため、変圧器40の一次巻線41にも電流が流れ、一次巻線41→ダイオード13→スイッチング素子1→補助リアクトル30→一次巻線41の経路で循環電流が流れる。同様に、期間(d)においても、一次巻線41→補助リアクトル30→スイッチング素子2→ダイオード14→一次巻線41の経路で循環電流が流れる。
【0024】
次に、期間(b)から期間(c)へ動作が切り替わった際の動作について説明する。低圧側では、リアクトル50→平滑コンデンサ80→ダイオード32→二次巻線42→リアクトル50の経路、及びリアクトル60→平滑コンデンサ80→ダイオード32→リアクトル60の経路で電流が流れている。この期間に高圧側のスイッチング素子2がターンオンし、二次巻線42に発生する電圧の極性が変わるため、ダイオード32には逆電圧が印加される。ダイオード32が導通状態の時に逆電圧が印加されるため、二次巻線42→ダイオード32→スイッチング素子24→二次巻線42の経路でリカバリ電流が流れ、ダイオードがオフ状態になった瞬間にサージ電圧が発生する。従って、スイッチング素子22には、V(22)に示すようにサ−ジ電圧が印加される。同様に、期間(d)から期間(a)へ切り替わった際も、ダイオード34がリカバリ動作となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子24にもサ−ジ電圧が印加される。このように、電圧クランプ回路70を利用しない場合は、循環電流が流れて効率の低下を招くとともに、サージ電圧が発生するため、スイッチング素子の耐圧を大きくしたり、フィルタを用いたノイズ対策が必要となる。
【0025】
次に、電圧クランプ回路70を利用した場合の動作について説明する。
【0026】
図4は、電圧クランプ回路を利用した場合の降圧時の動作波形を示している。図3と同一部分については同一符号を付しており説明は省略する。図4において、Vg(21)、Vg(23)は電圧クランプ回路制御装置72から電圧クランプ回路70内のスイッチング素子21、23へ与えるゲート駆動電圧を示している。これらのゲート駆動電圧は、電圧クランプ回路制御装置72によって、高圧側及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子の制御信号や変圧器40の巻線電流検出値によって、そのタイミングが決定される。このため、制御装置72は、高圧側スイッチング回路のスイッチング素子3,4のゲート駆動電圧Vg(3),Vg(4)及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子22,24のゲート駆動電圧Vg(22),Vg(24)並びに変圧器40の巻線電流I(42)を入力している。I(21)、I(23)はスイッチング素子21、23の電流、I(31)、I(33)はダイオード31、33の電流である。
【0027】
図4において、期間(a)の電力供給期間から期間(b)へ切り替わる際、同期整流のために導通状態にしているスイッチング素子22を一旦オフ状態にし、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23をオンさせる。すなわち、第1のスイッチング回路から変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、電圧クランプ回路70内のスイッチング素子21,23をオンさせている。これにより、リアクトル50にはクランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して電流が供給されるため、リアクトル50→平滑コンデンサ80→ダイオード32→二次巻線42→リアクトル50の経路で流れる電流は低減される。従って、変圧器40の一次巻線41に流れる電流はI(41)に示すように低減し、一次巻線41→ダイオード13→スイッチング素子1→補助リアクトル30→一次巻線41の経路で流れる循環電流を低減することができる。
【0028】
ここで、スイッチング素子23のオン期間が長くなると、クランプコンデンサ71→スイッチング素子23→二次巻線42→リアクトル60→平滑コンデンサ80→クランプコンデンサ71の経路で逆に電流が流れ、高圧側のスイッチング回路には逆方向の循環電流が流れることになる。従って、スイッチング素子23は、変圧器40の一次巻線41又は二次巻線42の電流I(42)を検出し、これがほぼゼロになったときにオフすることが望ましい。又は、補助リアクトル30、変圧器40の巻数比、直流電源10及び90、電力から予めスイッチング素子23のオン期間を算出し、制御することが望ましい。
【0029】
期間(c)から期間(d)へ切り替わる際も、前記同様にスイッチング素子24を一旦オフ状態にし、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21をオンさせる。これにより、クランプコンデンサ71からリアクトル60に電流が供給され、二次巻線42を流れる電流が減り、循環電流を低減することができる。スイッチング素子21のオン期間についても、前記スイッチング素子23と同じように制御することが望ましい。
【0030】
次に、期間(b)から期間(c)へ切り替わる際の動作について説明する。前述の電圧クランプ回路70を利用しない場合は、サージ電圧が発生し、スイッチング素子22にサージ電圧が印加された。これに対し、電圧クランプ回路70を利用することにより、サージ電圧の発生を防止することができる。すなわち、二次巻線42→ダイオード31→クランプコンデンサ71→スイッチング素子24→二次巻線42の経路でI(31)に示す電流が流れ、スイッチング素子22の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされるのである。
【0031】
同様に、期間(d)から期間(a)へ切り替わる際も、二次巻線42→ダイオード33→クランプコンデンサ71→スイッチング素子22→二次巻線42の経路でI(33)に示す電流が流れる。したがって、スイッチング素子24の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生を防止することができる。
【0032】
この実施形態1のように、電圧クランプ回路70を利用することにより、循環電流を低減するとともにサージ電圧の発生を防止することができるため、高効率で低ノイズな降圧動作を実現することができる。
【0033】
この実施形態における低圧側のスイッチング回路には、カレントダブラ整流回路を採用しており、ダイオードブリッジ全波整流回路に比べ、整流部を直流端子の負側に接続できるため、同期整流用スイッチング素子の駆動がやり易くなる。さらに、エネルギー蓄積用リアクトルが2つあるため、出力電流の1/2をそれぞれ受け持ち、一方のリアクトルのエネルギーが整流部を介して出力側に放出され電流が減少する時に、他方はトランスからリアクトルを介して出力側に電流が増加する方向に流れる。このため、結果的に、出力側のリプル電流はキャンセルされ、リプル電流を低減できる利点がある。
【0034】
次に、昇圧時の動作について説明する。前述の降圧時と同様、最初に図1の電圧クランプ回路70を利用しない基本回路の動作について説明する。
【0035】
図5は、電圧クランプ回路を利用しない場合の昇圧時の動作波形を示している。図5において、Vg(22)、Vg(24)は低圧側のスイッチング素子22、24のゲート駆動電圧、I(22)、I(24)はスイッチング素子22、24の電流である。また、V(22)、V(24)はスイッチング素子22、24の電圧、V(42)、I(42)は変圧器40の二次巻線42の電圧、電流である。図5において、期間(a)及び期間(c)は、低圧側のスイッチング素子22、24を、Vg(22)、Vg(24)に示すように、両方オン状態にしてリアクトル50、60に磁気エネルギーを蓄積する。期間(b)及び期間(d)は、スイッチング素子24又は22をオフ状態にして、リアクトル50,60の蓄積エネルギーを利用して変圧器40の二次巻線42に電流を流し、低圧側から高圧側に電力を供給する。期間(b)において、スイッチング素子24がオフすると、リアクトル50は蓄積エネルギーによって電流を流し続けようとするため、リアクトル50→二次巻線42→スイッチング素子22→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で電流が流れる。二次巻線42に電流が流れ変圧器40に磁束変化が生じるため、変圧器40の一次巻線41には磁束変化に比例した電流が流れようとする。しかしながら、一次巻線41と平滑コンデンサ20の間には補助リアクトル30があり電流変化が妨げられる。このため、リアクトル50の蓄積エネルギーによる電流経路が遮断された状態となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子24にはV(24)に示すようにサージ電圧が印加される。同様に、期間(d)においても、スイッチング素子22がオフすると、リアクトル60の蓄積エネルギーによる電流経路が遮断された状態となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子22にはV(22)に示すようにサージ電圧が印加される。このように、電圧クランプ回路70を利用しない場合は、降圧時と同様にサージ電圧が発生するため、スイッチング素子の耐圧を大きくしたり、フィルタを用いたノイズ対策が必要となる。
【0036】
次に、電圧クランプ回路70を利用した場合の動作について説明する。
【0037】
図6は、電圧クランプ回路を利用した場合の昇圧時の動作波形を示している。図5と同一部分については同一符号を付しており説明は省略する。図6において、Vg(21)、Vg(23)は電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23のゲート駆動電圧である。I(21)、I(23)はスイッチング素子21、23の電流、I(31)〜I(34)はダイオード31〜34の電流、V(21)、V(23)はスイッチング素子21、23の電圧である。
【0038】
電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23は、それぞれスイッチング素子22、24と交互にオンオフを繰り返し、相補駆動を行う。すなわち、主スイッチング素子22、24のオフ期間内において、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23は、それぞれオンさせられる。期間(b)において、スイッチング素子24がオフすると、リアクトル50の蓄積エネルギーによって電流が流れ続けようとするが、前述のように、高圧側には補助リアクトル30が接続されているため電流変化が抑えられる。しかしながら、リアクトル50の蓄積エネルギーのうち補助リアクトル30によって抑制された分の電流は、I(33)に示すように、リアクトル50→ダイオード33→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で流れることができる。このため、スイッチング素子24の電圧はクランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル50の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子23はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは、低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0039】
同様に期間(d)においても、スイッチング素子22がオフしたとき、スイッチング素子22の電圧はクランプコンデンサ71の電圧にクランプされる。すなわち、リアクトル60の電流の一部は、リアクトル60→ダイオード31→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル60の経路で流れ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル60の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子21はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子21を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0040】
このように、電圧クランプ回路70を設けることによりサージ電圧の発生を防止することができるため、低損失で、低ノイズの昇圧動作を実現することができる。
【0041】
ここで、本実施形態において、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23とクランプコンデンサ71の間に、インダクタンスが存在すると、降圧及び昇圧動作においてサージ電圧の抑制効果が減少する。このインダクタンスは、コンデンサの内部インダクタンス及び配線インダクタンス等が考えられ、低インダクタンスなコンデンサとしてチップ形積層セラミックコンデンサ等を選択することが望ましい。又、配線インダクタンスを小さくする為に、次のような実装を採用することが望ましい。
【0042】
図7は、本発明の第1の実施形態における電圧クランプ回路の部品実装図である。逆並列ダイオード付スイッチング素子21、23を並べて配置し、クランプコンデンサ71を形成する複数の単位コンデンサも並べて配置する。そして、両並列体を近接して対向配置し、それらの全体幅をカバーする幅をもつ配線パターン73により、電気的に接続している。これにより、電圧クランプ回路の配線インダクタンスを極小に抑えている。
【0043】
図7では、スイッチング素子21、23共にそれぞれ2個並列とし、クランプコンデンサ71は8個並列にして使用している。スイッチング素子21、23は、ソース端子s、ドレイン端子d、及びゲート端子gを備えており、これらのドレイン端子dの端子面が直線状となるように、平面基板上に並べて配置する。一方、電圧クランプ回路70内のクランプコンデンサ71は、複数のチップ形積層セラミック単位コンデンサを備え、これら単位コンデンサの一端子面が直線状となるように、平面基板上に並べて配置する。これら両者の全幅をカバーする配線パターン73により両者を電気的に接続するので、両者間の配線インダクタンスを極めて小さく抑制し、電圧クランプ作用を最大限に発揮させることができる。
【0044】
実施形態2:
図8は、本発明の第2の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。図8において、基本回路上において図1と異なる点は、変圧器40の二次巻線42にセンタタップを設け、センタタップと直流電源90の正極間にリアクトル50を接続し、リアクトル60を取り除いた点である。これにより、電圧クランプ回路70も、逆並列ダイオード33付スイッチング素子23とクランプコンデンサ71の直列体一組だけで済み、部品数の削減が可能となる。このスイッチング素子23は、電圧クランプ回路制御装置74によって駆動されスイッチング制御される。
【0045】
図9は、本発明の第2の実施形態における降圧時の各スイッチング素子の駆動電圧波形図である。図において、Vg(23)は電圧クランプ回路制御装置74から電圧クランプ回路70内のスイッチング素子23へ与えるゲート駆動電圧を示している。このゲート駆動電圧は、電圧クランプ回路制御装置74によって、高圧側及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子の制御信号や変圧器40の巻線電流検出値によって、そのタイミングが決定される。このため、制御装置74は、高圧側スイッチング回路のスイッチング素子3,4のゲート駆動電圧Vg(3),Vg(4)及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子22,24のゲート駆動電圧Vg(22),Vg(24)並びに変圧器40の巻線電流I(42)を入力している。前述の実施形態1と異なる点は、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23を、高圧側のスイッチング素子3及び4のオフタイミングに同期してオンさせる点であり、実施形態1におけるスイッチング素子21の働きをスイッチング素子23が兼務する。
【0046】
この実施形態におけるスイッチング素子3又は4のオフタイミングとは、第1のスイッチング回路から変圧器一次巻線に電圧を印加した状態(a)又は(c)から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路で短絡(b)又は(c)に切換えるタイミングである。スイッチング素子23のオン期間は、前述の実施形態のように、一次巻線41又は二次巻線42の電流がほぼゼロになったことを検知してオフすることができる。しかし、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に流れる経路は存在せず、スイッチング素子23のオン期間が延びたとしても問題はない。したがって、補助リアクトル30、変圧器40の巻数比、直流電源10及び90、電力から算出したオン期間を予め設定し、このタイミングで制御した方が容易である。従って、本実施形態では、所定の短時間だけスイッチング素子23をオンさせれば十分であり、オフさせるタイミングに気を使う必要が無い分、電圧クランプ回路制御装置74における降圧時の制御性が実施形態1より優れている。降圧時には、第1のスイッチング回路から変圧器の一次巻線に電圧を印加した状態(a)又は(c)から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路で短絡(b)又は(d)に切換えるタイミングで、スイッチング素子23を適当な短時間だけオンさせれば良い。
【0047】
このように、この実施形態においても、降圧時に、循環電流による損失を低減すると同時に、サージ電圧の発生を防止し、高効率で低ノイズな降圧動作を実現できる。
【0048】
図10は、本発明の第2の実施形態における昇圧時の各スイッチング素子の駆動電圧波形図である。前述の実施形態1と異なる点は、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23を低圧側のスイッチング素子22及び24がオフしている期間にオン状態にする点であり、実施形態1におけるスイッチング素子21の働きをスイッチング素子23が兼務する。
【0049】
実施形態1と同様に、低圧側のスイッチング素子22、24をVg(22)、Vg(24)のように両方オン状態にしてリアクトル50に磁気エネルギーを蓄積するが、このとき、本実施形態では、二次巻線42にも電流が流れる。しかしながら、二次巻線42は、センタタップを挟んで巻数が等しい一対の巻線構造となっており、それぞれの巻線に逆方向の電流が流れるため、変圧器40の磁束はゼロとなり、この期間に一次巻線41に電圧が誘導されることはない。
【0050】
次いで、スイッチング素子24又は22をオフ状態にすることにより、リアクトル50の蓄積エネルギーによって変圧器40の二次巻線42に電流を流し、低圧側から高圧側に電力を供給する。このとき、実施形態1と同様に、高圧側の補助リアクトル30によって電流変化が抑えられる。しかしながら、リアクトル50の蓄積エネルギーのうち補助リアクトル30によって抑制された分の電流は、リアクトル50→ダイオード33→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で流れることができる。このため、スイッチング素子24の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル50の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子23はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0051】
この実施形態における低圧側のスイッチング回路には、センタタップ整流回路を採用し、いわゆるアクティブクランプである電圧クランプ回路74を、変圧器40のセンタタップと第2の直流電源の一端との間に接続した。これにより、低圧側にはリアクトルが1つしかないのでクランプ回路のスイッチング素子は1つで済む利点がある。整流部に関しては、前述のカレントダブラと同様に、直流端子の負側に接続できるため、同期整流用スイッチング素子のドライブがやり易くなる。
【0052】
以上、この実施形態2においてもサージ電圧の発生を防止し、低ノイズな昇圧動作を実現することができる。
【0053】
実施形態3:
本発明による双方向絶縁型DC−DCコンバータは、例えば、自動車用の電源システムに使用される場合、限られたスペースに実装する必要があるため、小型化の要求が強くなるとともに、高温環境下での安定動作が必要となる。従って、コンバータとしては、高周波化による変圧器及びリアクトルの小型化を図ると同時に、スイッチング素子のオン損失及びスイッチング素子の低減、冷却方法の改善が必要となる。
【0054】
図11は、本発明の第3の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図1の実施形態1と異なる点は、シリコンカーバイド(SiC)組成材を使用した静電誘導トランジスタ(SIT)及びSiC形ダイオードを用いている点である。SiC−SITは、シリコン(Si)組成材を使用したスイッチング素子に比べ、オン抵抗及びスイッチング速度、温度特性の面で優れた特性を示す。
【0055】
図において、第1、第2のスイッチング回路と電圧クランプ回路70の各スイッチング素子1〜4、21〜24及びダイオード11〜14、31〜34は、SiC組成材からなり、Tj=160〜300[℃]以下のジャンクション温度特性を有している。また、これらのスイッチング素子は、SiC組成材を用いた静電誘導型トランジスタ(SIT)であり、オン抵抗は、SITの耐電圧が(1)600[V]で0.1〜1[mΩ・cm2]、(2)2000[V]で0.2〜15[mΩ・cm2]の2点を結ぶ直線上にあるものとする。
【0056】
図12は、本発明の第3の実施形態において採用するSiC−SITの定格電圧VCE(コレクタ・エミッタ間の定格電圧)に対するオン抵抗特性を示す図である。縦軸はオン抵抗[mΩ・cm2]を、横軸は定格電圧VCE[V]を示しており、SiC−SITのオン抵抗特性と、Si−IGBT、SiC−MOSFETのオン抵抗特性とを比較している。図12において、SiC−SITは、定格電圧VCEの広い範囲でオン抵抗が小さく、Siよりも2桁小さいオン抵抗となる。温度特性は、SiがTj=155[℃]以下に対し、SiCはTj=160〜300[℃]のジャンクション温度を有する。例えば、耐熱絶縁許容温度が最大220[℃]以下の回転電機に、回転電機用スイッチング回路と本実施形態のDC−DCコンバータを一体として内蔵することができる。この場合、本実施形態のスイッチング素子を回転電機に熱的に接触させて実装することにより、回転電機の温度でスイッチング素子を冷却することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電圧が異なる2つのバッテリを備えた車両用電源系をはじめ、一般・産業用の分散電源間における電力の授受に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1による双方向絶縁型DC−DCコンバータ回路構成図。
【図2】本発明を適用できるハイブリッド自動車の電源システムの概略構成図。
【図3】図1において電圧クランプ回路を利用しない場合の降圧時の動作波形図。
【図4】図1において電圧クランプ回路を利用した場合の降圧時の動作波形図。
【図5】図1において電圧クランプ回路を利用しない場合の昇圧時の動作波形図。
【図6】図1において電圧クランプ回路を利用した場合の昇圧時の動作波形図。
【図7】本発明の第1の実施形態における電圧クランプ回路の部品実装図。
【図8】本発明の実施形態2による双方向絶縁型DC−DCコンバータ回路構成図。
【図9】図8における降圧時の動作波形図。
【図10】図8における昇圧時の動作波形図。
【図11】本発明の実施形態3の双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図。
【図12】図11に用いたSiC−SITのオン抵抗特性図。
【符号の説明】
【0059】
1〜4,21〜24…スイッチング素子、11〜14,31〜34…ダイオード、20,80…平滑コンデンサ、10,90…直流電源、30,50,60…リアクトル、40…変圧器、41…変圧器一次巻線、42…変圧器二次巻線、70…電圧クランプ回路、71…クランプコンデンサ、72,74…電圧クランプ回路制御装置、100…双方向絶縁型DC−DCコンバータ、200…インバータ、300…自動車駆動用モータ、400…自動車制御装置用電子機器、73…配線パターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向絶縁型DC−DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧の異なる2つの直流電源間で電力の授受を行うためには、両電源間に降圧及び昇圧機能を備えた双方向のDC−DCコンバータが必要となる。例えば、ハイブリッド自動車の電源システムは、高圧側と低圧側にバッテリを備え、高圧側バッテリからインバータを介して駆動用モータに給電し、低圧側バッテリは、車両制御用電子機器に給電する。これら両バッテリは、DC−DCコンバータを介して接続し、互いに電力の授受を可能としており、DC−DCコンバータは、高圧側から低圧側への電力供給時に降圧動作を行い、逆の場合には昇圧動作を行うことになる。
【0003】
このように、高低圧直流間で双方向の電力変換機能を有するDC−DCコンバータは、例えば、特許文献1に開示されている。このコンバータは、高圧側と低圧側を変圧器を介して接続しており、高圧側及び低圧側の両方に、直流/交流双方向に電力変換が可能なスイッチング回路を備えている。直流/交流双方向に電力変換が可能な電力変換装置は、コンバータ、インバータ、その他、種々の呼び名があるが、ここでは、スイッチング回路と呼ぶことにする。さて、特許文献1では、まず、高圧側のスイッチング回路として、スイッチング素子をフルブリッジ(Hブリッジ)接続した単相電力変換回路と平滑回路を有する。一方、低圧側のスイッチング回路として、スイッチング整流部と、チョークコイル及び平滑コンデンサで構成された電流形の単相電力変換回路を備えている。そして、降圧時には、高圧側のスイッチング回路を位相シフト制御することにより変圧器の一次側に矩形波の交流電圧を印加し、変圧器で降圧し、低圧側のスイッチング回路によって全波整流し、チョークコイル及び平滑コンデンサで平滑している。低圧側のスイッチング回路を高圧側のスイッチング動作に同期させて整流動作させることにより高効率の電力変換を行うことができる。
【0004】
一方、昇圧時には、低圧側のスイッチング回路の2つのスイッチを交互にオフすることにより、チョークコイルのエネルギー蓄積機能を利用して変圧器の二次側に電流を流し、変圧器のコアに磁束変化を与える。この磁束変化に比例した交流の電圧成分が一次側に発生し、高圧側のスイッチング回路のフリーホイルダイオードにより全波整流し、平滑コンデンサで平滑している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−165448号公報(全体)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来技術においては、降圧時に、循環電流による損失が発生し効率の低下を招くほか、昇降圧時に、低圧側でサージ電圧が発生し、その分、スイッチング素子の耐圧を大きくする必要があり、いずれも装置の大型化を招く。
【0007】
本発明の目的は、損失及びサージ電圧の発生を抑制し、高効率で装置の小型化が可能な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一面において、変圧器を挟む高低圧両側に、それぞれ直流/交流相互間に電力変換を行う第1,第2のスイッチング回路と第1,第2の直流電源とを備え、電圧の異なる2つの直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、第2のスイッチング回路の交流端子と第2の直流電源の一端間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【0009】
本発明は他の一面において、第2のスイッチング回路はカレントダブラ同期整流回路であり、このカレントダブラ同期整流回路の交流両端子と第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む2つの電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【0010】
本発明はさらに他の一面において、変圧器の二次巻線はセンタタップを有し、第2のスイッチング回路は、二次巻線のセンタタップと二次巻線両端にリアクトルを介して接続された全波整流回路を形成する主スイッチング素子を備え、センタタップと第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の望ましい実施態様によれば、双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、降圧時に循環電流による損失を低減することができる。
【0012】
また、本発明の望ましい実施態様によれば、降圧及び昇圧時の両モードにおいて、低圧側におけるサージ電圧の発生を防止することができ、高効率で小型化が可能な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することができる。
【0013】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の説明で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施形態1:
図1は、本発明の第1の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図において、高圧側の直流電源10には、平滑コンデンサ20と負荷(図示せず)と、直列接続したスイッチング素子1、2からなる第1のスイッチングアームと、直列接続したスイッチング素子3、4からなる第2のスイッチングアームとが並列に接続されている。スイッチング素子1〜4には、それぞれフリーホイルダイオード11〜14が逆並列に接続されており、スイッチング素子1〜4がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用できる。第1、第2のスイッチングアームは直流電源10に並列に接続されているため電圧形スイッチング回路の構成となっており、スイッチング回路の交流端子間には、補助リアクトル30を介して変圧器40の1次巻線41が接続されている。補助リアクトル30は、スイッチング回路に流れる電流の極性が反転する際に、電流の傾きを調整する役割を果たす。ここで、補助リアクトル30は、変圧器40の漏れインダクタンスで代替することも可能であり、その場合は、補助リアクトル30を削除することができる。
【0015】
次に、低圧側の構成について説明する。この実施形態においては、低圧側には、カレントダブラ同期整流回路を採用している。カレントダブラ同期整流回路は、例えば、特開2003−199339号公報に開示されているように良く知られている。低圧側の直流電源90には、平滑コンデンサ80と図示しない負荷が接続されている。また、直流電源90には、直列接続したリアクトル50とスイッチング素子24からなる第1のスイッチングアームと、直列接続したリアクトル60とスイッチング素子22からなる第2のスイッチングアームとが並列に接続されている。スイッチング素子22と24にはそれぞれフリーホイルダイオード32、34が逆並列に接続されており、スイッチング素子22、24がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用することができる。スイッチング素子24、22は、各々リアクトル50、60を介して直流電源90に接続されているため、低圧側のスイッチング回路は電流形である。この電流形スイッチング回路の交流端子間には、変圧器40のニ次巻線42が接続されている。
【0016】
低圧側の電流形スイッチング回路の交流端子と、直流電源90の一端(この場合は負極)間には、電圧クランプ回路70が接続されている。電圧クランプ回路70はスイッチング素子21、23とクランプコンデンサ71から成り、クランプコンデンサ71にスイッチング素子21、23が各々直列に接続されている。スイッチング素子21と23にはそれぞれフリーホイルダイオード31、33が逆並列に接続されており、スイッチング素子21、23がMOSFETの場合、ボディダイオードを利用すればよい。これらのスイッチング素子21、23は、電圧クランプ回路制御装置72によってスイッチング制御される。
【0017】
この双方向絶縁型DC−DCコンバータの動作を説明する前に、その適用例であるハイブリッド自動車の電源システムについて説明する。
【0018】
図2は、ハイブリッド自動車の電源システムの概略構成図である。高圧側と低圧側にそれぞれ電圧の異なる直流電源10、90を備えており、高圧側には、インバータ200を介して車両駆動用モータ300が接続され、低圧側には負荷として電子機器400が接続され、両電源間にはDC−DCコンバータ100が接続されている。高圧側から低圧側への電力供給時、DC−DCコンバータ100は降圧動作を行い、逆に低圧側から高圧側への電力供給時は、昇圧動作を行うことになる。
【0019】
図1に戻って、降圧時の動作から説明する。最初に、電圧クランプ回路70を利用しない場合の基本回路動作について説明する。
【0020】
図3は、電圧クランプ回路70を利用しない場合の降圧時の動作波形を示している。図3において、Vg(1)〜Vg(4)は高圧側のスイッチング素子1〜4のゲート駆動電圧、Vg(22)、Vg(24)は低圧側のスイッチング素子22、24のゲート駆動電圧である。また、I(1)、I(3)、I(22)はスイッチング素子1、3、22の電流、I(11)、I(13)、I(32)はダイオード11、13、32の電流、V(1)、V(3)、V(22)はスイッチング素子1、3、22の電圧、V(41)、I(41)は変圧器40の一次巻線41の電圧、電流である。
【0021】
ゲート駆動電圧Vg(1)〜Vg(4)により、高圧側のスイッチング回路は位相シフト制御を行っている。Vg(1)とVg(4)のオン状態が重なっている期間(a)及びVg(2)とVg(3)のオン状態が重なっている期間(c)に、変圧器40の一次巻線41にそれぞれ正及び負の電圧が印加される。その他の期間では、一次巻線41の両端を短絡している。
【0022】
一方、低圧側のスイッチング素子22、24は、Vg(22)、Vg(24)のような駆動電圧で制御することにより、同期整流が行われる。
【0023】
図3において、高圧側の短絡期間(b)、つまり電力供給が行われない期間、低圧側のリアクトル50は電流を流し続けようとするため、リアクトル50→平滑コンデンサ80→スイッチング素子22→変圧器40の二次巻線42→リアクトル50の経路で電流が流れる。二次巻線42に電流が流れるため、変圧器40の一次巻線41にも電流が流れ、一次巻線41→ダイオード13→スイッチング素子1→補助リアクトル30→一次巻線41の経路で循環電流が流れる。同様に、期間(d)においても、一次巻線41→補助リアクトル30→スイッチング素子2→ダイオード14→一次巻線41の経路で循環電流が流れる。
【0024】
次に、期間(b)から期間(c)へ動作が切り替わった際の動作について説明する。低圧側では、リアクトル50→平滑コンデンサ80→ダイオード32→二次巻線42→リアクトル50の経路、及びリアクトル60→平滑コンデンサ80→ダイオード32→リアクトル60の経路で電流が流れている。この期間に高圧側のスイッチング素子2がターンオンし、二次巻線42に発生する電圧の極性が変わるため、ダイオード32には逆電圧が印加される。ダイオード32が導通状態の時に逆電圧が印加されるため、二次巻線42→ダイオード32→スイッチング素子24→二次巻線42の経路でリカバリ電流が流れ、ダイオードがオフ状態になった瞬間にサージ電圧が発生する。従って、スイッチング素子22には、V(22)に示すようにサ−ジ電圧が印加される。同様に、期間(d)から期間(a)へ切り替わった際も、ダイオード34がリカバリ動作となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子24にもサ−ジ電圧が印加される。このように、電圧クランプ回路70を利用しない場合は、循環電流が流れて効率の低下を招くとともに、サージ電圧が発生するため、スイッチング素子の耐圧を大きくしたり、フィルタを用いたノイズ対策が必要となる。
【0025】
次に、電圧クランプ回路70を利用した場合の動作について説明する。
【0026】
図4は、電圧クランプ回路を利用した場合の降圧時の動作波形を示している。図3と同一部分については同一符号を付しており説明は省略する。図4において、Vg(21)、Vg(23)は電圧クランプ回路制御装置72から電圧クランプ回路70内のスイッチング素子21、23へ与えるゲート駆動電圧を示している。これらのゲート駆動電圧は、電圧クランプ回路制御装置72によって、高圧側及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子の制御信号や変圧器40の巻線電流検出値によって、そのタイミングが決定される。このため、制御装置72は、高圧側スイッチング回路のスイッチング素子3,4のゲート駆動電圧Vg(3),Vg(4)及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子22,24のゲート駆動電圧Vg(22),Vg(24)並びに変圧器40の巻線電流I(42)を入力している。I(21)、I(23)はスイッチング素子21、23の電流、I(31)、I(33)はダイオード31、33の電流である。
【0027】
図4において、期間(a)の電力供給期間から期間(b)へ切り替わる際、同期整流のために導通状態にしているスイッチング素子22を一旦オフ状態にし、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23をオンさせる。すなわち、第1のスイッチング回路から変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、電圧クランプ回路70内のスイッチング素子21,23をオンさせている。これにより、リアクトル50にはクランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して電流が供給されるため、リアクトル50→平滑コンデンサ80→ダイオード32→二次巻線42→リアクトル50の経路で流れる電流は低減される。従って、変圧器40の一次巻線41に流れる電流はI(41)に示すように低減し、一次巻線41→ダイオード13→スイッチング素子1→補助リアクトル30→一次巻線41の経路で流れる循環電流を低減することができる。
【0028】
ここで、スイッチング素子23のオン期間が長くなると、クランプコンデンサ71→スイッチング素子23→二次巻線42→リアクトル60→平滑コンデンサ80→クランプコンデンサ71の経路で逆に電流が流れ、高圧側のスイッチング回路には逆方向の循環電流が流れることになる。従って、スイッチング素子23は、変圧器40の一次巻線41又は二次巻線42の電流I(42)を検出し、これがほぼゼロになったときにオフすることが望ましい。又は、補助リアクトル30、変圧器40の巻数比、直流電源10及び90、電力から予めスイッチング素子23のオン期間を算出し、制御することが望ましい。
【0029】
期間(c)から期間(d)へ切り替わる際も、前記同様にスイッチング素子24を一旦オフ状態にし、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21をオンさせる。これにより、クランプコンデンサ71からリアクトル60に電流が供給され、二次巻線42を流れる電流が減り、循環電流を低減することができる。スイッチング素子21のオン期間についても、前記スイッチング素子23と同じように制御することが望ましい。
【0030】
次に、期間(b)から期間(c)へ切り替わる際の動作について説明する。前述の電圧クランプ回路70を利用しない場合は、サージ電圧が発生し、スイッチング素子22にサージ電圧が印加された。これに対し、電圧クランプ回路70を利用することにより、サージ電圧の発生を防止することができる。すなわち、二次巻線42→ダイオード31→クランプコンデンサ71→スイッチング素子24→二次巻線42の経路でI(31)に示す電流が流れ、スイッチング素子22の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされるのである。
【0031】
同様に、期間(d)から期間(a)へ切り替わる際も、二次巻線42→ダイオード33→クランプコンデンサ71→スイッチング素子22→二次巻線42の経路でI(33)に示す電流が流れる。したがって、スイッチング素子24の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生を防止することができる。
【0032】
この実施形態1のように、電圧クランプ回路70を利用することにより、循環電流を低減するとともにサージ電圧の発生を防止することができるため、高効率で低ノイズな降圧動作を実現することができる。
【0033】
この実施形態における低圧側のスイッチング回路には、カレントダブラ整流回路を採用しており、ダイオードブリッジ全波整流回路に比べ、整流部を直流端子の負側に接続できるため、同期整流用スイッチング素子の駆動がやり易くなる。さらに、エネルギー蓄積用リアクトルが2つあるため、出力電流の1/2をそれぞれ受け持ち、一方のリアクトルのエネルギーが整流部を介して出力側に放出され電流が減少する時に、他方はトランスからリアクトルを介して出力側に電流が増加する方向に流れる。このため、結果的に、出力側のリプル電流はキャンセルされ、リプル電流を低減できる利点がある。
【0034】
次に、昇圧時の動作について説明する。前述の降圧時と同様、最初に図1の電圧クランプ回路70を利用しない基本回路の動作について説明する。
【0035】
図5は、電圧クランプ回路を利用しない場合の昇圧時の動作波形を示している。図5において、Vg(22)、Vg(24)は低圧側のスイッチング素子22、24のゲート駆動電圧、I(22)、I(24)はスイッチング素子22、24の電流である。また、V(22)、V(24)はスイッチング素子22、24の電圧、V(42)、I(42)は変圧器40の二次巻線42の電圧、電流である。図5において、期間(a)及び期間(c)は、低圧側のスイッチング素子22、24を、Vg(22)、Vg(24)に示すように、両方オン状態にしてリアクトル50、60に磁気エネルギーを蓄積する。期間(b)及び期間(d)は、スイッチング素子24又は22をオフ状態にして、リアクトル50,60の蓄積エネルギーを利用して変圧器40の二次巻線42に電流を流し、低圧側から高圧側に電力を供給する。期間(b)において、スイッチング素子24がオフすると、リアクトル50は蓄積エネルギーによって電流を流し続けようとするため、リアクトル50→二次巻線42→スイッチング素子22→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で電流が流れる。二次巻線42に電流が流れ変圧器40に磁束変化が生じるため、変圧器40の一次巻線41には磁束変化に比例した電流が流れようとする。しかしながら、一次巻線41と平滑コンデンサ20の間には補助リアクトル30があり電流変化が妨げられる。このため、リアクトル50の蓄積エネルギーによる電流経路が遮断された状態となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子24にはV(24)に示すようにサージ電圧が印加される。同様に、期間(d)においても、スイッチング素子22がオフすると、リアクトル60の蓄積エネルギーによる電流経路が遮断された状態となりサージ電圧が発生し、スイッチング素子22にはV(22)に示すようにサージ電圧が印加される。このように、電圧クランプ回路70を利用しない場合は、降圧時と同様にサージ電圧が発生するため、スイッチング素子の耐圧を大きくしたり、フィルタを用いたノイズ対策が必要となる。
【0036】
次に、電圧クランプ回路70を利用した場合の動作について説明する。
【0037】
図6は、電圧クランプ回路を利用した場合の昇圧時の動作波形を示している。図5と同一部分については同一符号を付しており説明は省略する。図6において、Vg(21)、Vg(23)は電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23のゲート駆動電圧である。I(21)、I(23)はスイッチング素子21、23の電流、I(31)〜I(34)はダイオード31〜34の電流、V(21)、V(23)はスイッチング素子21、23の電圧である。
【0038】
電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23は、それぞれスイッチング素子22、24と交互にオンオフを繰り返し、相補駆動を行う。すなわち、主スイッチング素子22、24のオフ期間内において、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23は、それぞれオンさせられる。期間(b)において、スイッチング素子24がオフすると、リアクトル50の蓄積エネルギーによって電流が流れ続けようとするが、前述のように、高圧側には補助リアクトル30が接続されているため電流変化が抑えられる。しかしながら、リアクトル50の蓄積エネルギーのうち補助リアクトル30によって抑制された分の電流は、I(33)に示すように、リアクトル50→ダイオード33→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で流れることができる。このため、スイッチング素子24の電圧はクランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル50の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子23はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは、低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0039】
同様に期間(d)においても、スイッチング素子22がオフしたとき、スイッチング素子22の電圧はクランプコンデンサ71の電圧にクランプされる。すなわち、リアクトル60の電流の一部は、リアクトル60→ダイオード31→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル60の経路で流れ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル60の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子21はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子21を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0040】
このように、電圧クランプ回路70を設けることによりサージ電圧の発生を防止することができるため、低損失で、低ノイズの昇圧動作を実現することができる。
【0041】
ここで、本実施形態において、電圧クランプ回路70のスイッチング素子21、23とクランプコンデンサ71の間に、インダクタンスが存在すると、降圧及び昇圧動作においてサージ電圧の抑制効果が減少する。このインダクタンスは、コンデンサの内部インダクタンス及び配線インダクタンス等が考えられ、低インダクタンスなコンデンサとしてチップ形積層セラミックコンデンサ等を選択することが望ましい。又、配線インダクタンスを小さくする為に、次のような実装を採用することが望ましい。
【0042】
図7は、本発明の第1の実施形態における電圧クランプ回路の部品実装図である。逆並列ダイオード付スイッチング素子21、23を並べて配置し、クランプコンデンサ71を形成する複数の単位コンデンサも並べて配置する。そして、両並列体を近接して対向配置し、それらの全体幅をカバーする幅をもつ配線パターン73により、電気的に接続している。これにより、電圧クランプ回路の配線インダクタンスを極小に抑えている。
【0043】
図7では、スイッチング素子21、23共にそれぞれ2個並列とし、クランプコンデンサ71は8個並列にして使用している。スイッチング素子21、23は、ソース端子s、ドレイン端子d、及びゲート端子gを備えており、これらのドレイン端子dの端子面が直線状となるように、平面基板上に並べて配置する。一方、電圧クランプ回路70内のクランプコンデンサ71は、複数のチップ形積層セラミック単位コンデンサを備え、これら単位コンデンサの一端子面が直線状となるように、平面基板上に並べて配置する。これら両者の全幅をカバーする配線パターン73により両者を電気的に接続するので、両者間の配線インダクタンスを極めて小さく抑制し、電圧クランプ作用を最大限に発揮させることができる。
【0044】
実施形態2:
図8は、本発明の第2の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。図8において、基本回路上において図1と異なる点は、変圧器40の二次巻線42にセンタタップを設け、センタタップと直流電源90の正極間にリアクトル50を接続し、リアクトル60を取り除いた点である。これにより、電圧クランプ回路70も、逆並列ダイオード33付スイッチング素子23とクランプコンデンサ71の直列体一組だけで済み、部品数の削減が可能となる。このスイッチング素子23は、電圧クランプ回路制御装置74によって駆動されスイッチング制御される。
【0045】
図9は、本発明の第2の実施形態における降圧時の各スイッチング素子の駆動電圧波形図である。図において、Vg(23)は電圧クランプ回路制御装置74から電圧クランプ回路70内のスイッチング素子23へ与えるゲート駆動電圧を示している。このゲート駆動電圧は、電圧クランプ回路制御装置74によって、高圧側及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子の制御信号や変圧器40の巻線電流検出値によって、そのタイミングが決定される。このため、制御装置74は、高圧側スイッチング回路のスイッチング素子3,4のゲート駆動電圧Vg(3),Vg(4)及び低圧側スイッチング回路のスイッチング素子22,24のゲート駆動電圧Vg(22),Vg(24)並びに変圧器40の巻線電流I(42)を入力している。前述の実施形態1と異なる点は、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23を、高圧側のスイッチング素子3及び4のオフタイミングに同期してオンさせる点であり、実施形態1におけるスイッチング素子21の働きをスイッチング素子23が兼務する。
【0046】
この実施形態におけるスイッチング素子3又は4のオフタイミングとは、第1のスイッチング回路から変圧器一次巻線に電圧を印加した状態(a)又は(c)から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路で短絡(b)又は(c)に切換えるタイミングである。スイッチング素子23のオン期間は、前述の実施形態のように、一次巻線41又は二次巻線42の電流がほぼゼロになったことを検知してオフすることができる。しかし、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に流れる経路は存在せず、スイッチング素子23のオン期間が延びたとしても問題はない。したがって、補助リアクトル30、変圧器40の巻数比、直流電源10及び90、電力から算出したオン期間を予め設定し、このタイミングで制御した方が容易である。従って、本実施形態では、所定の短時間だけスイッチング素子23をオンさせれば十分であり、オフさせるタイミングに気を使う必要が無い分、電圧クランプ回路制御装置74における降圧時の制御性が実施形態1より優れている。降圧時には、第1のスイッチング回路から変圧器の一次巻線に電圧を印加した状態(a)又は(c)から、この一次巻線の両端間を第1のスイッチング回路で短絡(b)又は(d)に切換えるタイミングで、スイッチング素子23を適当な短時間だけオンさせれば良い。
【0047】
このように、この実施形態においても、降圧時に、循環電流による損失を低減すると同時に、サージ電圧の発生を防止し、高効率で低ノイズな降圧動作を実現できる。
【0048】
図10は、本発明の第2の実施形態における昇圧時の各スイッチング素子の駆動電圧波形図である。前述の実施形態1と異なる点は、電圧クランプ回路70のスイッチング素子23を低圧側のスイッチング素子22及び24がオフしている期間にオン状態にする点であり、実施形態1におけるスイッチング素子21の働きをスイッチング素子23が兼務する。
【0049】
実施形態1と同様に、低圧側のスイッチング素子22、24をVg(22)、Vg(24)のように両方オン状態にしてリアクトル50に磁気エネルギーを蓄積するが、このとき、本実施形態では、二次巻線42にも電流が流れる。しかしながら、二次巻線42は、センタタップを挟んで巻数が等しい一対の巻線構造となっており、それぞれの巻線に逆方向の電流が流れるため、変圧器40の磁束はゼロとなり、この期間に一次巻線41に電圧が誘導されることはない。
【0050】
次いで、スイッチング素子24又は22をオフ状態にすることにより、リアクトル50の蓄積エネルギーによって変圧器40の二次巻線42に電流を流し、低圧側から高圧側に電力を供給する。このとき、実施形態1と同様に、高圧側の補助リアクトル30によって電流変化が抑えられる。しかしながら、リアクトル50の蓄積エネルギーのうち補助リアクトル30によって抑制された分の電流は、リアクトル50→ダイオード33→クランプコンデンサ71→平滑コンデンサ80→リアクトル50の経路で流れることができる。このため、スイッチング素子24の電圧は、クランプコンデンサ71の電圧にクランプされ、サージ電圧の発生は防止される。リアクトル50の電流が減少し、二次巻線42の電流が増えていくと、スイッチング素子23はオン状態になっているため、クランプコンデンサ71からスイッチング素子23を介して二次巻線42に電流が供給される。従って、クランプコンデンサ71のエネルギーは低圧側から高圧側への電力供給期間に有効に利用される。
【0051】
この実施形態における低圧側のスイッチング回路には、センタタップ整流回路を採用し、いわゆるアクティブクランプである電圧クランプ回路74を、変圧器40のセンタタップと第2の直流電源の一端との間に接続した。これにより、低圧側にはリアクトルが1つしかないのでクランプ回路のスイッチング素子は1つで済む利点がある。整流部に関しては、前述のカレントダブラと同様に、直流端子の負側に接続できるため、同期整流用スイッチング素子のドライブがやり易くなる。
【0052】
以上、この実施形態2においてもサージ電圧の発生を防止し、低ノイズな昇圧動作を実現することができる。
【0053】
実施形態3:
本発明による双方向絶縁型DC−DCコンバータは、例えば、自動車用の電源システムに使用される場合、限られたスペースに実装する必要があるため、小型化の要求が強くなるとともに、高温環境下での安定動作が必要となる。従って、コンバータとしては、高周波化による変圧器及びリアクトルの小型化を図ると同時に、スイッチング素子のオン損失及びスイッチング素子の低減、冷却方法の改善が必要となる。
【0054】
図11は、本発明の第3の実施形態による双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図である。図1の実施形態1と異なる点は、シリコンカーバイド(SiC)組成材を使用した静電誘導トランジスタ(SIT)及びSiC形ダイオードを用いている点である。SiC−SITは、シリコン(Si)組成材を使用したスイッチング素子に比べ、オン抵抗及びスイッチング速度、温度特性の面で優れた特性を示す。
【0055】
図において、第1、第2のスイッチング回路と電圧クランプ回路70の各スイッチング素子1〜4、21〜24及びダイオード11〜14、31〜34は、SiC組成材からなり、Tj=160〜300[℃]以下のジャンクション温度特性を有している。また、これらのスイッチング素子は、SiC組成材を用いた静電誘導型トランジスタ(SIT)であり、オン抵抗は、SITの耐電圧が(1)600[V]で0.1〜1[mΩ・cm2]、(2)2000[V]で0.2〜15[mΩ・cm2]の2点を結ぶ直線上にあるものとする。
【0056】
図12は、本発明の第3の実施形態において採用するSiC−SITの定格電圧VCE(コレクタ・エミッタ間の定格電圧)に対するオン抵抗特性を示す図である。縦軸はオン抵抗[mΩ・cm2]を、横軸は定格電圧VCE[V]を示しており、SiC−SITのオン抵抗特性と、Si−IGBT、SiC−MOSFETのオン抵抗特性とを比較している。図12において、SiC−SITは、定格電圧VCEの広い範囲でオン抵抗が小さく、Siよりも2桁小さいオン抵抗となる。温度特性は、SiがTj=155[℃]以下に対し、SiCはTj=160〜300[℃]のジャンクション温度を有する。例えば、耐熱絶縁許容温度が最大220[℃]以下の回転電機に、回転電機用スイッチング回路と本実施形態のDC−DCコンバータを一体として内蔵することができる。この場合、本実施形態のスイッチング素子を回転電機に熱的に接触させて実装することにより、回転電機の温度でスイッチング素子を冷却することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電圧が異なる2つのバッテリを備えた車両用電源系をはじめ、一般・産業用の分散電源間における電力の授受に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1による双方向絶縁型DC−DCコンバータ回路構成図。
【図2】本発明を適用できるハイブリッド自動車の電源システムの概略構成図。
【図3】図1において電圧クランプ回路を利用しない場合の降圧時の動作波形図。
【図4】図1において電圧クランプ回路を利用した場合の降圧時の動作波形図。
【図5】図1において電圧クランプ回路を利用しない場合の昇圧時の動作波形図。
【図6】図1において電圧クランプ回路を利用した場合の昇圧時の動作波形図。
【図7】本発明の第1の実施形態における電圧クランプ回路の部品実装図。
【図8】本発明の実施形態2による双方向絶縁型DC−DCコンバータ回路構成図。
【図9】図8における降圧時の動作波形図。
【図10】図8における昇圧時の動作波形図。
【図11】本発明の実施形態3の双方向絶縁型DC−DCコンバータの回路構成図。
【図12】図11に用いたSiC−SITのオン抵抗特性図。
【符号の説明】
【0059】
1〜4,21〜24…スイッチング素子、11〜14,31〜34…ダイオード、20,80…平滑コンデンサ、10,90…直流電源、30,50,60…リアクトル、40…変圧器、41…変圧器一次巻線、42…変圧器二次巻線、70…電圧クランプ回路、71…クランプコンデンサ、72,74…電圧クランプ回路制御装置、100…双方向絶縁型DC−DCコンバータ、200…インバータ、300…自動車駆動用モータ、400…自動車制御装置用電子機器、73…配線パターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記第2のスイッチング回路の交流端子と前記第2の直流電源の一端間に接続され、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1において、前記第2のスイッチング回路は、前記第2の直流電源と前記第2のスイッチング回路を形成するスイッチング素子との間に直列接続されたリアクトルを備え、昇降圧可能な電流形スイッチング回路であることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記一次巻線又は二次巻線の電流の所定の減少に応じてオフさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内において、それぞれの電圧クランプ回路と並列接続状態にある主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項5】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路は、電圧形のスイッチング回路であることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項6】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路は、2つの逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した2組のスイッチングアームを備え、これら2組のスイッチングアームを前記第1の直流電源に並列接続し、これら2組のスイッチングアーム内の直列接続点間に前記変圧器の一次巻線を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項7】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路の交流端子と前記変圧器の一次巻線端子との間に接続されたリアクトルを備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1において、前記電圧クランプ回路内の前記コンデンサは複数のチップ形積層セラミックコンデンサを備え、平面基板上にこれら複数のチップ形積層セラミックコンデンサを並列に配置し、前記逆並列ダイオードを内蔵した複数の前記スイッチング素子のドレイン端子が、前記チップ形積層セラミックコンデンサに対向して近接するように複数の前記スイッチング素子を並べて配置し、これら両並列体の幅以上の広さを持つ配線パターンにより、複数の前記スイッチング素子の前記ドレイン端子と複数の前記チップ形積層セラミックコンデンサの一端とを電気的に接続して実装したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項9】
請求項1において、前記第1、第2のスイッチング回路と前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子及びダイオードは、シリコンカーバイド(SiC)組成材からなり、Tj=160〜300[℃]のジャンクション温度特性を有しており、前記スイッチング素子はSiC組成材を用いた静電誘導型トランジスタ(SIT)からなり、オン抵抗は、SITの耐電圧が(1)600[V]で0.1〜1[mΩ・cm2]、(2)2000[V]で0.2〜15[mΩ・cm2]の2点を結ぶ直線上にあることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項10】
請求項1において、前記第1、第2のスイッチング回路と前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子及びダイオードを、回転電機に熱的に接触配置したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項11】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記第2のスイッチング回路はカレントダブラ同期整流回路であり、このカレントダブラ同期整流回路の交流両端子と前記第2の直流電源の一端子間に接続され、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む2つの電圧クランプ回路を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項12】
請求項11において、前記カレントダブラ同期整流回路は、逆並列ダイオード付スイッチング素子とリアクトルとが直列接続された2組のスイッチングアームが前記第2の直流電源に並列に接続され、これら2組のスイッチングアーム内の直列接続点間に前記変圧器の二次巻線が接続され、2つの前記電圧クランプ回路は、2つの前記逆並列ダイオード付スイッチング素子の両端間にそれぞれ接続されたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項13】
請求項11において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記一次巻線又は二次巻線の電流の所定の減少に応じてオフさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項14】
請求項11において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内において、電圧クランプ回路のそれぞれのスイッチング素子と並列接続状態にある主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項15】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記変圧器の二次巻線はセンタタップを有し、前記第2のスイッチング回路は、前記二次巻線のセンタタップと二次巻線両端にリアクトルを介して接続された全波整流回路を形成する主スイッチング素子を備え、前記センタタップと前記第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項16】
請求項15において、前記第2のスイッチング回路は、前記センタタップを介した一方の二次巻線と逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した第1のスイッチングアームと、前記センタタップを介した他方の二次巻線と逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した第2のスイッチングアームと、これら第1,第2のスイッチングアームの並列回路に対して、前記第2の直流電源を接続するリアクトルとを備え、前記第1,第2のスイッチングアームの並列回路の両端間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項17】
請求項15において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項18】
請求項15において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内の主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項1】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記第2のスイッチング回路の交流端子と前記第2の直流電源の一端間に接続され、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1において、前記第2のスイッチング回路は、前記第2の直流電源と前記第2のスイッチング回路を形成するスイッチング素子との間に直列接続されたリアクトルを備え、昇降圧可能な電流形スイッチング回路であることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記一次巻線又は二次巻線の電流の所定の減少に応じてオフさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内において、それぞれの電圧クランプ回路と並列接続状態にある主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項5】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路は、電圧形のスイッチング回路であることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項6】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路は、2つの逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した2組のスイッチングアームを備え、これら2組のスイッチングアームを前記第1の直流電源に並列接続し、これら2組のスイッチングアーム内の直列接続点間に前記変圧器の一次巻線を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項7】
請求項1において、前記第1のスイッチング回路の交流端子と前記変圧器の一次巻線端子との間に接続されたリアクトルを備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1において、前記電圧クランプ回路内の前記コンデンサは複数のチップ形積層セラミックコンデンサを備え、平面基板上にこれら複数のチップ形積層セラミックコンデンサを並列に配置し、前記逆並列ダイオードを内蔵した複数の前記スイッチング素子のドレイン端子が、前記チップ形積層セラミックコンデンサに対向して近接するように複数の前記スイッチング素子を並べて配置し、これら両並列体の幅以上の広さを持つ配線パターンにより、複数の前記スイッチング素子の前記ドレイン端子と複数の前記チップ形積層セラミックコンデンサの一端とを電気的に接続して実装したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項9】
請求項1において、前記第1、第2のスイッチング回路と前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子及びダイオードは、シリコンカーバイド(SiC)組成材からなり、Tj=160〜300[℃]のジャンクション温度特性を有しており、前記スイッチング素子はSiC組成材を用いた静電誘導型トランジスタ(SIT)からなり、オン抵抗は、SITの耐電圧が(1)600[V]で0.1〜1[mΩ・cm2]、(2)2000[V]で0.2〜15[mΩ・cm2]の2点を結ぶ直線上にあることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項10】
請求項1において、前記第1、第2のスイッチング回路と前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子及びダイオードを、回転電機に熱的に接触配置したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項11】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記第2のスイッチング回路はカレントダブラ同期整流回路であり、このカレントダブラ同期整流回路の交流両端子と前記第2の直流電源の一端子間に接続され、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む2つの電圧クランプ回路を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項12】
請求項11において、前記カレントダブラ同期整流回路は、逆並列ダイオード付スイッチング素子とリアクトルとが直列接続された2組のスイッチングアームが前記第2の直流電源に並列に接続され、これら2組のスイッチングアーム内の直列接続点間に前記変圧器の二次巻線が接続され、2つの前記電圧クランプ回路は、2つの前記逆並列ダイオード付スイッチング素子の両端間にそれぞれ接続されたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項13】
請求項11において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせるとともに、前記一次巻線又は二次巻線の電流の所定の減少に応じてオフさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項14】
請求項11において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内において、電圧クランプ回路のそれぞれのスイッチング素子と並列接続状態にある主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路の各スイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項15】
第1の直流電源と、この第1の直流電源と変圧器の一次巻線との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第1のスイッチング回路と、前記変圧器の二次巻線と第2の直流電源との間に接続され直流/交流相互間に電力変換を行う第2のスイッチング回路とを備え、電圧の異なる前記第1、第2の直流電源間で電力授受を行う双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、前記変圧器の二次巻線はセンタタップを有し、前記第2のスイッチング回路は、前記二次巻線のセンタタップと二次巻線両端にリアクトルを介して接続された全波整流回路を形成する主スイッチング素子を備え、前記センタタップと前記第2の直流電源の一端子間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項16】
請求項15において、前記第2のスイッチング回路は、前記センタタップを介した一方の二次巻線と逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した第1のスイッチングアームと、前記センタタップを介した他方の二次巻線と逆並列ダイオード付スイッチング素子を直列接続した第2のスイッチングアームと、これら第1,第2のスイッチングアームの並列回路に対して、前記第2の直流電源を接続するリアクトルとを備え、前記第1,第2のスイッチングアームの並列回路の両端間に、逆並列ダイオード付スイッチング素子とコンデンサの直列体を含む電圧クランプ回路を接続したことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項17】
請求項15において、降圧時に、前記第1のスイッチング回路から前記変圧器の一次巻線に電圧を印加していた状態から、この一次巻線の両端間を前記第1のスイッチング回路による短絡に切換えるタイミングで、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項18】
請求項15において、昇圧時に、前記第2のスイッチング回路内の主スイッチング素子のオフ期間内において、前記電圧クランプ回路のスイッチング素子をオンさせる制御装置を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−187147(P2006−187147A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379478(P2004−379478)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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