説明

双極型電池

【課題】双極型電池の発熱を防止するとともに、双極型電池の放熱性を向上させる。
【解決手段】導電性を有する樹脂層を含む第一の集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる第一の双極型電極と、前記第一の集電体より熱伝導性が高い第二の集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる第二の双極型電極と、を含み、電解質層を介して隣り合うように積層される少なくとも一対の前記第一の双極型電極と前記第二の双極型電極とを含む、双極型電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型電池、これを用いた組電池および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池の開発が鋭意行われている。自動車用途の電池としては、双極型電池に注目が集まっている。双極型電池は、集電体を介して縦方向(電極の積層方向)に電流が流れるため、電子の伝導パスを短くでき、高出力になる。これにより、電池電圧の高い電池が構成できる。
【0003】
双極型電池は、正極活物質層および負極活物質層が各面に形成される集電体を構成部材として含む。この集電体の軽量化を目的として、特許文献1では、樹脂を含む集電体を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−190649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂を含む集電体は、集電体面方向の体積抵抗率が大きいため、内部短絡等が発生した場合でも、短絡部位に電流集中が起きにくく、短絡等による発熱を防止する点で有利である。
【0006】
しかし、樹脂は熱伝導性が低いために、熱の放熱性が低い。したがって、集電体の面内で熱分布が生じ、集電体が局所的に熱膨張し電池の劣化が進む可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、双極型電池の発熱を防止するとともに、双極型電池の放熱性を向上させ、双極型電池の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、導電性を有する樹脂層を含む集電体を有する電極と、該集電体よりも熱伝導性が高い集電体を有する電極とを、電解質層を介して隣り合うように配置した構成を電池が含むことによって、上記目的が達成されることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
導電性を有する樹脂層を含む集電体(以下、単に樹脂集電体とも称する)は面方向の体積抵抗率が高い。このため、双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合、樹脂集電体が短絡電流を抑制することにより、双極型電池の発熱を防止できる。また、熱伝導性が高い集電体は放熱性が高いため、樹脂集電体の面内の熱分布が均一化され、樹脂集電体の面内の熱膨張を均一にできる。その結果、双極型電池の劣化を更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す断面概略図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す断面概略図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す断面概略図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示す断面概略図である。
【図6】本発明の双極型電池の外観を表した斜視図である。
【図7】本発明の組電池の外観図である。
【図8】本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
【図9】樹脂集電体での面方向での熱移動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の好ましい実施形態である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の双極型電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0013】
同様に双極型電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0014】
また、電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合にも、特に制限されず、公知のいずれの電極材料等にも適用されうる。例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池などが挙げられ、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。これは、リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。
【0015】
したがって、以下の説明では、代表的な実施形態として本発明の電池が双極型リチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
【0016】
図1は、第1実施形態である、積層型の双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0017】
第1実施形態の双極型リチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素(電池要素;積層体)21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0018】
第一の双極型電極14は、導電性を有する樹脂層を含む第一の集電体(以下、単に第一集電体とも称する)11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、第一集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成されてなる。また、第二の双極型電極16は、第一集電体より熱伝導性が高い第二の集電体(以下、単に第二集電体とも称する)12の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、第二集電体12の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成されてなる。本実施形態では、第二集電体は金属箔からなるが、第二集電体が第一集電体よりも熱伝導性が高い限り、これに限定されるものではない。以下、第一の双極型電極を単に第一電極と、第二の双極型電極を単に第二電極とも称する。
【0019】
双極型リチウムイオン二次電池10の発電要素21は、複数の第一電極および第二電極を有する。第1実施形態では、第一電極14と第二電極16とが電解質層17を介して交互に積層される。各電極は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータに電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0020】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)19を構成する。したがって、双極型リチウムイオン二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部には絶縁部材31が配置されている。この絶縁部材31は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁部材31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型リチウムイオン二次電池10が提供されうる。
【0021】
なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体12aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体12bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体12aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体12bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。さらに、本実施形態では最外層が第二集電体であるが、最外層が第一集電体であってもよい。好適には、電流の取り出しやすさの点から、最外層集電体は第二集電体である。
【0022】
図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10では、正極側最外層集電体12aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体12bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートシート29から導出している。
【0023】
なお、集電板に代えて、最外層集電体12aおよび12bを、そのまま正極タブおよび負極タブに電気的に接続してもよい。この際、最外層集電体(12a、12b)とタブとの間を正極端子リード、負極端子リードを介して電気的に接続してもよい。また、集電板に代えて、最外層集電体12aおよび12bを厚くして、そのままラミネートシート29の外に延長して負極タブおよび正極タブとしてもよい。
【0024】
単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型リチウムイオン二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。
【0025】
使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートシート29に減圧封入し、正極集電板25及び負極集電板27をラミネートシート29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0026】
双極型電池では、電池中央部が相対的にジュール熱により高温になることが考えられる。樹脂を含む第一集電体は、樹脂の放熱性が低く、熱移動が抑制されるため、集電体上の面方向の温度分布が大きくなる。つまり、熱発生部位で温度が上昇した場合に、熱の移動が起きにくいため、熱発生部位では温度の低下が進行しにくい。逆に、熱発生部位から面方向に遠ざかるにつれ、集電体の温度は低くなる。したがって、第一集電体のみから双極型電池が構成される場合、面方向での温度分布が著しく均一化されない場合がある(図9左図)。これに対し、第二集電体は、第一集電体よりも熱伝導性が高いため、発熱箇所とこれと遠い箇所との温度差があまり生じず、面方向の温度分布は第一集電体よりも均一となる。第一電極と第二電極とが電池内で隣り合って存在することにより、第一電極のみから構成される双極型電池と比較して、面方向への温度分布が均一になりやすく(放熱性が高く)、発熱箇所での温度上昇が抑制される(図9右図)。樹脂集電体での温度上昇は、集電体の熱膨張を引き起こすが、温度が高い部位での熱膨張は他の部位に比べて大きくなるため、温度分布が不均一であると集電体の熱膨張が面方向で不均一に起こる。温度が高い部位で熱膨張が集中して起こることにより局所的に電池の劣化が進行する場合がある。よって、集電体の面方向での温度分布を均一化することは、電池の劣化を抑制するという点で非常に重要な事項である。
【0027】
一方、短絡時には、樹脂集電体は、面方向の体積抵抗率が高いので、面内電流を抑制することができる。このため、本実施形態では、面方向に流れる電流は第一集電体で律速となる。例えば、金属集電体から構成される電池では、面方向に流れる電流が大きいため、隣り合う金属集電体同士で電極間短絡が起き、熱が発生する場合がある。第一集電体を配置することにより、面方向に流れる電流は第一集電体で律速となり、熱の発生が抑制される。
【0028】
(第一集電体)
第一集電体は導電性を有する樹脂層を含む。好適には、第一集電体は、導電性を有する樹脂層からなる。樹脂層は、導電性を有し、必須に樹脂を含み、集電体の役割を果たす。樹脂層が導電性を有するには、具体的な形態として、1)樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態、2)樹脂層が樹脂および導電性フィラー(導電材)を含む形態が挙げられる。
【0029】
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、がより好ましい。
【0030】
上記2)の形態に用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
【0031】
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0032】
また、導電性フィラー(導電材)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
【0033】
カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン粒子を導電性粒子として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
【0034】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0035】
また、樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、樹脂層を形成する樹脂は、上記導電性フィラーに加えて、当該導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料を含んでいてもよい。樹脂層の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0036】
高分子材料の例としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
【0037】
樹脂層における、導電性フィラーの比率は、特に限定されないが、好ましくは、高分子材料および導電性フィラーの合計に対して、1〜30質量%の導電性フィラーが存在する。十分な量の導電性フィラーを存在させることにより、樹脂層における導電性を十分に確保できる。
【0038】
上記樹脂層には、導電性フィラーおよび樹脂の他、他の添加剤を含んでいてもよいが、好ましくは、導電性フィラーおよび樹脂からなる。
【0039】
樹脂層は、従来公知の手法により製造できる。例えば、スプレー法またはコーティング法を用いることにより製造可能である。具体的には、高分子材料を含むスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。スラリーの調製に用いられる高分子材料の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。前記スラリーに含まれる他の成分としては、導電性フィラーが挙げられる。導電性粒子の具体例については上述の通りであるために、ここでは説明を省略する。あるいは、高分子材料および導電性粒子、その他の添加剤を従来公知の混合方法にて混合し、得られた混合物をフィルム状に成形することで得られる。また、例えば、特開2006−190649号に記載の方法のように、インクジェット方式により樹脂層を作製してもよい。
【0040】
第一集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型電池においては、正極および負極の間に存在する樹脂集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、第一集電体の厚さは、0.1〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
【0041】
(第二集電体)
第二集電体12は、第一集電体11よりも熱伝導性が高い。第二集電体の熱伝導性が高いため、双極型電池の放熱性能が向上する。
【0042】
このような第二集電体の具体的な形態としては、特に限定されるものではないが、好適には、第二集電体に第一集電体よりも熱伝導率の高い材料を用いることが挙げられる。熱伝導率の高い材料を用いることで、第二集電体の熱伝導性が向上し、放熱性が向上する。具体的には、第二集電体が、1)金属材料を主成分として含む形態、2)第一集電体よりも熱伝導率の高い、樹脂および導電性フィラーを含む樹脂層からなる形態が挙げられる。中でも、熱伝導率が高く、より放熱が促進され、電池劣化が抑制できることから、第二集電体が金属材料を主成分として含む形態であることが好ましく、金属材料からなる形態(金属箔)であることがより好ましい。ここで、主成分とは、集電体100質量%に対して、金属材料が85質量%以上であることを指し、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。なお、樹脂層からなる形態の場合、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法や熱線法により、集電体を構成する材料のサンプル片から測定した熱伝導率を比較することによってその高低を決定することができる。この際、第一集電体および第二集電体の熱伝導率の測定は、測定装置、測定条件を同一で行う。
【0043】
金属材料としては、特に限定されないが、具体的な例としては、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料が挙げられる。より好ましくはアルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料などが挙げられる。これらは単層構造(例えば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(例えば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。
【0044】
第二集電体が、樹脂および導電性粒子を含む樹脂層からなる形態は、上述した第一集電体の樹脂層と同様であり、上述した樹脂層の欄において詳述したため、ここでは説明を割愛する。該形態の場合、熱伝導率が第一集電体に較べて、5倍以上高いことが好ましく、10倍以上高いことが好ましい。
【0045】
第二集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型電池においては、正極および負極の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、第二集電体の厚さは、0.1〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。第二集電体の厚さは、第一集電体と同じ厚さであってもよく、放熱性の観点から第二集電体よりも薄くしてもよい。
【0046】
以上説明した第1実施形態は、以下の効果を有する。
【0047】
第1実施形態は、第一電極に含まれる集電体の熱伝導性よりも、第二電極に含まれる集電体の熱伝導性が高く、積層体平面方向の伝熱速度が向上するため、電池全体の放熱性能が向上する。放熱性の向上により、第一集電体の面内の熱分布が均一化され、第一集電体の面内の熱膨張を均一にでき、電池の劣化を抑制することができる。
【0048】
また、第一集電体は、樹脂を含むため、例えば金属から構成される集電体と比較して、面方向の体積抵抗率が高く、積層体面方向への電流が流れにくい。このため、双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合にも、電流集中を抑制でき、電池の発熱を抑制することができる。したがって、双極型電池の信頼性が向上する。
【0049】
さらに、第1実施形態は、第一電極と第二電極とが電解質層を介して相互に積層される(第一電極と第二電極とが電解質層を介して全て隣り合って形成される)ため、短絡時の発熱がより抑制され、また電池の放熱性により優れている。
【0050】
第1実施形態の変形例として、第二集電体12が、外周部に放熱部を有する形態も、本発明の好適な実施形態である。放熱部とは、放熱を促進するために、第二集電体に設けられる部分を指す。放熱部は第二集電体と同一部材であってもよいし、他の部材を集電体に接続して放熱部を設けてもよい。第二集電体が放熱部を有することで放熱がさらに促進され、電池の劣化をより抑制することができる。以下、第二集電体が放熱部を有する形態について具体的実施形態を挙げて説明する。
【0051】
図2は、第二集電体が放熱部を有する形態の一実施形態を示す、積層型の双極型リチウムイオン二次電池20の全体構造を模式的に表した断面概略図である(第2実施形態)。
【0052】
第2実施形態の双極型リチウムイオン二次電池20は、第二集電体の外周部に放熱部を有する。具体的には、第二集電体12の垂直(積層体)方向からの投影面積が第一集電体11の投影面積よりも大きくなっている。そのため、図2において、第二集電体の端部は第一集電体の端部よりも外側に突出している。このように、第二集電体を第一集電体よりも外部に突出させて、第二集電体の伝熱面積を増加させる。熱流束の小さい箇所の伝熱面積を増加させることによって、所望の温度分布を得ることができる。
【0053】
第2実施形態は、伝熱面積を増加させることにより、電池内部で発生した熱を、効果的に放熱させることができるため、電池の冷却効果が向上し、電池内部の温度上昇が抑制され、電池の劣化を防止することができるという効果を有する。
【0054】
図3は、第二集電体が放熱部を有する形態の他の実施形態を示す、積層型の双極型リチウムイオン二次電池30の全体構造を模式的に表した断面概略図である(第3実施形態)。第3実施形態では、第二集電体12の外周部が波型として凹凸を構成している。第二集電体をかような形状とすることで、第一集電体よりも表面積を大きくすることができる。したがって、熱流束の小さい箇所での伝熱面積を増加させることができ、面方向の熱流束を大きくすることが可能となる。
【0055】
第二集電体の外周部を波型として凹凸にする方法としては、特に限定されるものではないが、プレス成型や冷間ロールプレス成型などを用いることができる。
【0056】
第3実施形態も、第2実施形態と同様、伝熱面積を増加させることにより、電池内部で発生した熱を、効果的に放熱させることができるため、電池の冷却効果が向上し、電池内部の温度上昇が抑制され、電池の劣化を防止することができるという効果を有する。
【0057】
第2および第3実施形態では、第二集電体の伝熱面積を増加させることにより、第二集電体における放熱を促進させ、電池の劣化をより抑制することができる。したがって、上記では、具体的な実施形態を挙げて説明したが、第二集電体の伝熱面積を第一集電体よりも増加させる形態であれば、放熱部として機能しうる。例えば、他の形態としては、比表面積を増加させうる方法として、陽極酸化法による多孔質酸化被膜を第二集電体の外周部に形成させる形態が挙げられる。
【0058】
放熱部を有する形態としては、上記実施形態に限定されず、放熱を促進する機能を有する部材であれば、いかなる形態であっても本願に包含される。
【0059】
図4は、第4実施形態である、積層型の双極型リチウムイオン二次電池40の全体構造を模式的に表した断面概略図である。第4実施形態は、第1実施形態と異なり、第一集電体と第二集電体とが交互に積層されている構造ではなく、積層体の一部が第一集電体と第二集電体とが隣り合う構造である。第4実施形態では、第二集電体が1つ存在する他は、最外層集電体を除いて、全て第一集電体である。
【0060】
樹脂を含む第一集電体は、樹脂の放熱性が低く、熱移動が抑制されるため、集電体の温度分布が大きくなる。一方、第一集電体よりも伝熱性が高い第二集電体は、放熱性が高いため、面方向の温度分布はほぼ均一となる。したがって、一部にでも第一集電体と第二集電体とが隣り合って存在することにより、樹脂集電体のみから構成される電池と比較して、放熱性が向上するため、面方向への温度分布が均一になりやすい。
【0061】
一方、短絡時には、樹脂集電体は、面内電流を抑制することができる。このため、流れる電流は第一集電体で律速となる。例えば、金属集電体から構成される電池では、隣り合う金属集電体同士で電極間短絡が起き、熱が発生する場合があるが、一部にでも第一集電体と第二集電体とが隣り合って存在することにより、金属集電体のみから構成される電池と比較して、熱の発生が抑制される。
【0062】
したがって、第4実施形態のように、少なくとも一部に第一電極および第二電極が隣り合って存在する形態も本願の実施形態である。換言すれば、少なくとも一対の第一電極と第二電極とが電解質層を介して隣り合うように積層されていれば、あらゆる積層構造が本願に包含される。
【0063】
第4実施形態は、第一電極に含まれる集電体の熱伝導性よりも、第二電極に含まれる集電体の熱伝導性が高く、積層体平面方向の伝熱速度が向上するため、電池全体の放熱性能が向上する。放熱性の向上により、第一集電体の面内の熱分布が均一化され、第一集電体の面内の熱膨張を均一にでき、電池の劣化を抑制することができる。
【0064】
また、第一集電体は、樹脂を含むため、例えば金属から構成される集電体と比較して、面方向の体積抵抗率が高く、積層体面方向への電流が流れにくい。このため、双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合にも、電流集中を抑制でき、電池の発熱を抑制することができる。したがって、双極型電池の信頼性が向上する。
【0065】
図5は、第5実施形態である、積層型の双極型リチウムイオン二次電池50の全体構造を模式的に表した断面概略図である。第5実施形態では、第2実施形態の電池において、絶縁部31がさらに第一集電体11の外周部を完全に覆うように形成されてなる。絶縁部は、第二の集電体同士の外周部の間に配置される。絶縁部材31は、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する。また、絶縁部材31は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。
【0066】
本実施形態では、第二集電体が絶縁部よりも突出した形態となっているが、かような形態に限定されるものではなく、第一集電体が絶縁部で覆われている限り、第二集電体と絶縁部との配置・位置関係は特に限定されない。例えば、上記第1、第3および第4実施形態において、第一集電体11の外周部を絶縁部が完全に覆うような形態であってもよい。ここで、外周部とは、積層方向から見て平面視での第一集電体の外周部を指す。
【0067】
絶縁部31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁部31の構成材料として好ましく用いられる。
【0068】
第5実施形態は、熱膨張する第一集電体の外周部を絶縁部で覆うことにより、第一集電体の機械強度を向上させることができるため、電池の劣化をより抑制することができるという効果を有する。
【0069】
上記実施形態の双極型電池は、上述したように、集電体の組み合わせに特徴を有するが、以下、簡単にその他の主要な構成部材について説明する。
【0070】
(活物質層)
[正極(正極活物質層)及び負極(負極活物質層)]
活物質層13または15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0071】
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0072】
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0073】
各活物質層13、15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
【0074】
正極活物質層13および負極活物質層15は、バインダを含む。
【0075】
活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
【0076】
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0077】
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0078】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0079】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0080】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0081】
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0082】
(電解質層)
電解質層13を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0083】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0084】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0085】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0086】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0087】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0088】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0089】
(最外層集電体)
最外層集電体の材質としては、例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。電気の取り出しやすさの観点からは、好適には金属材料が用いられる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
【0090】
(タブおよびリード)
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0091】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0092】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0093】
(電池外装材)
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本発明では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0094】
なお、上記の実施形態の双極型電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0095】
<双極型電池の外観構成>
図6は、双極型電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0096】
図6に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図1〜図5に示す双極型のリチウムイオン二次電池10、20、30、40、50の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0097】
なお、上記リチウムイオン電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0098】
また、図6に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図6に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0099】
上記リチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0100】
<組電池>
組電池は、上記双極型電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0101】
また、図7は、組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図7Aは組電池の平面図であり、図7Bは組電池の正面図であり、図7Cは組電池の側面図である。
【0102】
図7に示すように、本実施形態の組電池300は、双極型電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図7Aは、組電池の平面図、図7Bは正面図、図7Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0103】
<車両>
本実施形態の車両は、上記双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明では、長期信頼性及び出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0104】
図8は、組電池を搭載した車両の概念図である。
【0105】
図8に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【符号の説明】
【0106】
10、20、30、40、50 双極型リチウムイオン二次電池、
11 第一集電体、
12 第二集電体、
12a 最外層正極集電体、
12b 最外層正極集電体、
13 正極活物質層、
14 第一電極、
15 負極活物質層、
16 第二電極、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 外装材(ラミネートシート)、
31 絶縁部材、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する樹脂層を含む第一の集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる第一の双極型電極と、
前記第一の集電体より熱伝導性が高い第二の集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる第二の双極型電極と、を含み、
電解質層を介して隣り合うように積層される少なくとも一対の前記第一の双極型電極と前記第二の双極型電極とを含む、双極型電池。
【請求項2】
前記第一の双極型電極と前記第二の双極型電極とが電解質層を介して交互に積層される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第二の集電体が金属材料からなる、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第二の集電体が、外周部に形成されてなる放熱部を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記第二の集電体同士の外周部の間に絶縁部材を配置し、前記絶縁部材は、前記第一の集電体の外周部を覆う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
リチウムイオン二次電池である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された電池が複数個接続された組電池。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された電池、または請求項7に記載の組電池を、モータ駆動用電源として搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−212093(P2010−212093A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57126(P2009−57126)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】