説明

反射防止フィルム、それを用いた偏光板、並びにそれらを用いた画像表示装置、反射防止フィルムの製造方法

【課題】反射率が低く、ギラツキが押さえられ、耐擦傷性・防汚性・耐久性に優れた反射防止フィルム、並びにそのような反射防止フィルムを用いた偏光版及び画像表示装置を提供すること。
【解決手段】透明支持体上に少なくとも低屈折率層形成用組成物の塗設により形成された低屈折率層を含む反射防止膜が設けられた反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層形成用組成物が、下記一般式(1)で示される有機シリル化合物の加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかを含有し、且つ反射防止フィルムの最表面の中心線表面粗さRaが0.005〜0.20μmであることを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):R11mSi(X11n
(式中、X11は−OH、ハロゲン原子、−OR12基、又は−OCOR12基を表す。R11はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R12はアルキル基を表す。m+nは4であり、m及びnはそれぞれ正の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率が低くギラツキが押さえられ、耐擦傷性・防汚性・耐久性に優れた反射防止フィルム、それを用いた偏光板、並びにそれらを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の写りこみを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する目的で使用される。またギラツキの少ない表示性能を得るために、表面を凹凸にして反射光を散乱させる防眩層を付与したり、またバインダーと屈折率の異なる粒子を導入することで画像表示装置内部からの光を拡散させて視野角の向上を計るなどの検討がなされている。
【0003】
画像表示装置は様々な環境で長期間に渡り使用されるため、耐久性が求められる。特に、光学干渉を用いて反射率を低下させている場合には、光学干渉層が劣化することにより反射率の抑制効果が失われる。また光学薄膜が不均一に劣化するとムラの発生が起こり目立ち易い欠陥となる。さらに反射防止フィルムは最表面に用いられることから、画像表示装置の保護膜としての機能が期待され、汚れやほこりが付着しにくいことや、耐擦傷性が強いことが求められる。
【0004】
耐擦傷性の高い保護膜として、アルコキシシランの加水分解縮合物のゾルゲル膜を用いることが知られている。例えば特許文献1にはゾルゲル膜を用いた3層光干渉型の反射防止フィルム、特許文献2にはプラスチック基板上にゾルゲル膜を塗設して反射率を低下させる方法、特許文献3にはアルコキシシランと低屈折率無機微粒子を含有するゾルゲル膜、特許文献4には含エチレン性不飽和基含有有機シリル化合物のゾルゲル膜、特許文献5にはゾルゲル膜と防汚層とを組み合わせること、特許文献6にはフッ素含オルガノシランからなる低屈折率コーティング剤、の記載がある。
【0005】
しかしながら、一般にゾルゲル膜は、初期強度は強いものの、膜が脆く、汚れがつきやすいという欠点があった。また、特に高湿度下や温度変化の激しい保存条件や含オゾン大気下での耐久性の点で不十分であり、改良が求められていた。また、フッ素系の有機シリル化合物を併用すると防汚性は改良されるものの膜強度が低下したり、帯電性が大きくなってほこりの付着が増加してしまったりするなどの問題を有していた。
【特許文献1】特開平10−728号公報
【特許文献2】特開昭63−21601号公報
【特許文献3】特開平8−211202号公報
【特許文献4】特開2002−275403号公報
【特許文献5】特開2002−277604号公報
【特許文献6】特開2002−265866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、従来提案されている反射防止フィルムは、ギラツキの少ない優れた表示性能と耐擦傷性や耐汚性との両立の点で不十分であり、それらの両者を十分に満足させることができる反射防止フィルムの開発が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、反射率が低くギラツキが押さえられ、耐擦傷性・防汚性・耐久性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。更には、そのような反射防止フィルムを用いた偏光版や画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを用いて低屈折率層を構成し、更に、その際の最表面の中心線表面粗さを特定の範囲に制御することで、上記目的を達成しうることを知見した。
すなわち、本発明は、以下の構成により上記目的を達成したものである。
【0009】
(1)透明支持体上に少なくとも低屈折率層形成用組成物の塗設により形成された低屈折率層を含む反射防止膜が設けられた反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層形成用組成物が、下記一般式(1)で示される有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有し、且つ反射防止フィルムの最表面の中心線表面粗さRaが0.005〜0.20μmであることを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):R11mSi(X11n
(式中、X11は−OH、ハロゲン原子、−OR12基、又は−OCOR12基を表す。R11はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R12はアルキル基を表す。m+nは4であり、m及びnはそれぞれ正の整数である。)
【0010】
(2)低屈折率層が、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.17〜1.40の無機微粒子を含有する上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(3)最表面の表面自由エネルギーが26mJ/m2以下である上記(1)又は(2)に記載の反射防止フィルム。
【0011】
(4)反射防止フィルムが、更に、ハードコート層を具備する多層構造フィルムであり、反射防止膜の構成層の少なくとも1層が、平均粒子径0.1〜5μmの透光性粒子を少なくとも1種、透光性樹脂に分散してなる光拡散層であり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光拡散層全固形分中に3〜30質量%含有されている上記(1)〜(3)に記載の反射防止フィルム。
【0012】
(5)反射防止フィルムが、更に、導電材料を有する透明帯電防止層を有し、該反射防止フィルムの表面抵抗値logSRが12以下である上記(1)〜(4)に記載の反射防止フィルム。
(6)ハードコート層が、前記一般式(1)で示される有機シリル化合物、その加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有するハードコート層形成用組成物を塗設して形成された上記(4)に記載の反射防止フィルム。
【0013】
(7)ハードコート層形成用組成物が、多官能のイソシアネート化合物を含有する上記(4)又は(6)に記載の反射防止フィルム。
(8)ハードコート層の中心線表面粗さRaが0.005〜0.20μmである上記(4)、(6)又は(7)に記載の反射防止フィルム。
【0014】
(9)反射防止フィルムの構成層のうち少なくとも1層がチキソトロピー剤を含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(10)低屈折率層の上層に防汚層を有する上記(1)〜(9)に記載の反射防止フィルム。
(11)低屈折率層がアルカリ処理された面に設けられている上記(1)〜(9)に記載の反射防止フィルム。
【0015】
(12)10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする上記(1)〜(11)の何れかに記載の反射防止フィルム。
【0016】
(13)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板。
(14)偏光板を構成する少なくとも1つのフィルムのReレターデーション値が、20以上70nm以下であり、且つRthレターデーション値が70以上400nm以下である上記(13)に記載の偏光板。
【0017】
(15)10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする上記(13)又は(14)に記載の偏光板。
【0018】
(16)上記(1)〜(12)のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は上記(13)〜(15)のいずれかに記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
【0019】
(17)10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする上記(16)に記載の表示装置。
【0020】
(18)バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を具備し、
前記塗布工程において、塗布液の塗布は、前記スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、前記ウェブの進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、少なくとも前記低屈折率層の塗布液が塗布されることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0021】
(19)上記(18)に記載の反射防止フィルムの製造方法において、乾膜の膜厚が200nm以下となる層を前記塗布工程を用いて製造する反射防止フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の反射防止フィルムは、十分な反射防止性を有し、ギラツキが少なく、しかも、耐擦傷性、防汚性、耐久性に優れている。更に、本発明の反射防止フィルムを備えた画像表示装置及び本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映りこみが少なく、かつ視野角が広く、極めて視認性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
なお、本願明細書において、特性値、物性値等を表す「(数値A)〜(数値B)」という記載は「(数値A)以上(数値B)以下」の意味を表す。
【0024】
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に少なくとも低屈折率層形成用組成物の塗設により形成された低屈折率層を含む反射防止膜が設けられてなるものであり、該低屈折率層形成用組成物が、特定の有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有し、反射防止フィルムの最表面の中心線表面粗さRaが特定範囲であることを特徴とする。
以下、まず、低屈折率層について説明した後、他の層や支持体について説明する。
【0025】
<反射防止フィルム>
〔低屈折率層〕
本発明の反射防止フィルムの反射防止膜を構成する上記低屈折率層形成用組成物は、特定の有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有する。
【0026】
[有機シリル化合物]
本発明における低屈折率層形成用組成物に用いられる特定の有機シリル化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1):R11mSi(X11n
(式中、X11は−OH、ハロゲン原子、−OR12基、又は−OCOR12基を表す。R11はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R12はアルキル基を表す。m+nは4であり、m及びnはそれぞれ正の整数である。)
【0027】
詳しくは、R11は炭素数1〜10の、置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基)、炭素数2〜10の、置換もしくは無置換のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテン−1−イル基)、又は炭素数6〜10の、置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)を表し、R12はR11で表されるアルキル基と同じ意味の基を表す。R11又はR12で表される基が置換基を有する場合の好ましい置換基は、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、プロピル基、t−ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族ヘテロ環基(例えば、フリル基、ピラゾリル基、ピリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−メチル−N−オクチルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基等)等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(1)の化合物は、加水分解し相互に縮合する、所謂ゾル−ゲル法によってマトリックスを形成する。一般式(1)の化合物は、以下の4つの一般式で表される。
一般式(1a):Si(X114
一般式(1b):R11Si(X113
一般式(1c):R112Si(X112
一般式(1d):R113SiX11
【0029】
先ず、一般式(1a)の成分について具体的に説明する。
一般式(1a)で表される具体的化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−s−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等が挙げられる。特にテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0030】
次に一般式(1b)の成分について説明する。一般式(1b)の成分において、R11は一般式(1)におけるR11と同じ意味の基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、CF3CH2CH2CH2−、C25CH2CH2CH2−、C37CH2CH2CH2−、C25CH2CH2−、CF3OCH2CH2CH2−、C25OCH2CH2CH2−、C37OCH2CH2CH2−、(CF32CHOCH2CH2CH2−、C49CH2OCH2CH2CH2−、3−(ペルフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル基、H(CF24CH2OCH2CH2CH2−、H(CF24CH2CH2CH2−、3−グリシドキシプロピル基、3−アクリルオキシプロピル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。
【0031】
また、X11は、−OH、ハロゲン原子、−OR12基、又は−OCOR12基を表す。R12は、一般式(1)におけるR12と同じ意味の基を表す。好ましくは、炭素数1〜5のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアシルオキシ基であり、例えば、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、アセチルオキシ基などが挙げられる。
【0032】
これらの一般式(1b)の成分の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2CH2Si(OCH33−、C25CH2CH2CH2Si(OCH33−、C25CH2CH2Si(OCH33−、C37CH2CH2CH2Si(OCH33−、C25OCH2CH2CH2Si(OCH33−、C37OCH2CH2CH2Si(OC253−、(CF32CHOCH2CH2CH2Si(OCH33−、C49CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33−、H(CF24CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33−、3−(ペルフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルシラン等を挙げることができる。
【0033】
このうち、フッ素原子を有する有機シリル化合物が好ましい。また、R11としてフッ素原子を有さない有機シリル化合物を用いる場合、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシランを用いることが好ましい。上記の有機シリル化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0034】
次に一般式(1c)の成分について説明する。一般式(1c)の成分は、一般式R112Si(X112{式中、R11及びX11は前記一般式(1b)の成分に使用される有機シリル化合物で定義された、R11及びX11と同じである}で表される有機シリル化合物である。ただし、複数あるR11は、お互いに同じ基でなくてもよい。本発明の組成物中では加水分解、縮合して得られる加水分解物及び/又は部分縮合物となり、組成物中における結合剤としての働きをするとともに、塗膜を柔軟化し耐アルカリ性を向上させるものである。
【0035】
これらの有機シリル化合物の具体例は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH22Si(OCH32、(CF3CH2CH2CH22Si(OCH32、(C37OCH2CH2CH22Si(OCH32、[H(CF26CH2OCH2CH2CH22Si(OCH32、(C25OCH2CH22Si(OCH32などを挙げることができ、好ましくはフッ素原子を有する有機シリル化合物である。またR11としてフッ素原子を有さない有機シリル化合物を用いる場合には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。また一般式(1c)の成分で表される有機シリル化合物は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用することもできる。
【0036】
次に一般式(1d)の成分について説明する。一般式(1d)の成分は、一般式R113SiX11{式中、R11及びX11は前記一般式(1b)の成分に使用される有機シリル化合物で定義されたR11及びX11と同じである}で表される有機シリル化合物である。ただし、複数あるR11はお互いに同じ基でなくてもよい。本発明の組成物中では膜を疎水的にする働きをするとともに、塗膜の耐アルカリ性を向上させるものである。
【0037】
これらの有機シリル化合物の具体例は、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プピルエトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
本発明において、前記一般式(1a)〜(1d)の各成分は、それぞれ単独で用いることもできるが、混合して用いてもよく、その際の配合割合は、(1a)成分を100質量部とした場合、(1b)成分は0〜100質量部、好ましくは1〜60質量部、さらに好ましくは1〜40質量部である。(1c)成分は(1a)成分を100質量部とした場合、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。(1d)成分は(1a)成分を100質量部とした場合に、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。(1a)〜(1d)の各成分のうち、(1a)成分の割合は全有機シリル化合物100質量%中30質量%以上とするのが好ましい。(1a)成分の割合が30質量%以上であれば、得られる塗膜の密着性、硬化性が低下するなどの不具合が生じないので好ましい。
【0039】
[重合性モノマー]
本発明においては、前記有機シリル化合物に加えて、重合性のモノマーを併用することが好ましい。特に、フッ素原子を含むモノマー(以下、含フッ素モノマーということがある)は、得られる低屈折率層皮膜の屈折率を低くすることができるという点から好ましく用いられる。含フッ素モノマーは、モノマーがフッ素原子を含有しているものであれば特に制限はないが、フッ素原子をペルフルオロアルキル基として有するものがフッ素含量の点で特に好ましい。
【0040】
重合性モノマーの具体例としては、例えばアクリル酸又はメタクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルケトン類等である。重合性モノマーの配合量は、低屈折率層の全固形分中1〜50質量%とするのが好ましい。
【0041】
[無機微粒子]
また、低屈折率層には、無機微粒子を用いるのが好ましい。
無機微粒子の塗設量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。無機微粒子の量が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が減少するなどの不具合が生じないので好ましく、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので好ましい。該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
【0042】
(シリカ微粒子)
以下、無機微粒子を代表してシリカ微粒子について詳述する。
シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
【0043】
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなる場合があり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので上記範囲内の粒径のシリカ微粒子を用いることが好ましい。シリカ微粒子は、結晶質又は非晶質のいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0044】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするためには、中空のシリカ微粒子(以下、中空粒子ということがある)を用いることが好ましく、このような中空粒子は、屈折率が好ましくは1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30であるのがよい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとすると、空隙率xは下記数式(1)で表される。
数式(1):x=(ri/ro3×100(%)
【0045】
上記中空粒子の空隙率は、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空粒子を上述の範囲より低屈折率に、空隙率を上述の範囲より大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなるため、中空シリカ粒子の強度及び低屈折率層の耐擦傷性の観点から、中空粒子の屈折率は1.17以上であることが好ましい。
なお、これら中空粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0046】
また低屈折率層には、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(以下、小サイズ微粒子ということがある)の少なくとも1種を、上記の好ましい平均粒径の範囲内のシリカ微粒子(以下、大サイズ微粒子ということがある)と併用することが好ましい。
【0047】
シリカ微粒子は、分散液中又は低屈折率層形成用組成物中で、分散安定化を図るために、あるいはマトリックス成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
【0048】
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機微粒子の表面処理剤として、低屈折率層形成用組成物調製以前に予め表面処理を施すために用いられるが、低屈折率層形成用組成物調製時に、さらに添加剤として添加して該低屈折率層に含有させることが好ましい。シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0049】
以上、シリカ微粒子について述べたことは、他の無機粒子についても適用される。すなわち、前記低屈折率層は、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.17〜1.40である無機微粒子を含有するのが好ましい。
【0050】
本発明における低屈折率層に好ましく用いることのできる無機微粒子は、予め分散されていることが好ましい。分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。特に水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0051】
無機微粒子の分散物における無機微粒子の濃度は、3〜300g/Lとするのが好ましい。
【0052】
[触媒]
本発明における低屈折率層形成用組成物には、前記一般式(1)で表される有機シリル化合物の加水分解/部分縮合反応を促進する目的で、種々の触媒化合物を好ましく用いることができる。用いられる触媒は特に制限はなく、使用されるゾル液の構成成分に応じて、適量を使用すればよい。一般に有効である触媒は、下記(c1)〜(c5)の化合物であり、これらの中から好ましい化合物を必要量添加することができる。また、これらの群の中2種以上をお互いの促進効果が阻害されない範囲内で適宜選択して併用することができる。
【0053】
(c1)有機又は無機の酸
無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸、ヘテロポリ酸(例えば、燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)など;有機酸化合物としてはカルボン酸類(例えば、蟻酸、蓚酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2−クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、燐酸部分エステル・ホスホン酸類(例えば、燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)を挙げることができる。
【0054】
(c2)有機又は無機の塩基
無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど;有機塩基化合物としてはアミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)、金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなど)を挙げることができる。
【0055】
(c3)金属キレート化合物
一般式R01OH(式中、R01は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるアルコールと、R02COCH2COR03(式中、R02は炭素数1〜6のアルキル基、R03は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜16のアルコキシ基を示す)で表されるジケトンを配位子とした、金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用してもよい。本発明の金属キレート化合物として特に好ましいものは、中心金属にAl、Ti、Zrを有するものであり、下記一般式:
Zr(R01p1(R02COCHCOR03p2
Ti(OR01q1(R02COCHCOR03q2、及び
Al(OR01r1(R02COCHCOR03r2
で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記(1a)〜(1d)成分の縮合反応を促進する作用をなす。
【0056】
金属キレート化合物中のR01及びR02は、同一又は異なってもよく、炭素数1〜6のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R03は、R01及びR02と同様の炭素数1〜6のアルキル基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基などである。また、金属キレート化合物中のp1,p2,q1,q2,r1,r2は、4又は6座配位となる様に決定される整数を表す。
【0057】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0058】
(c4)有機金属化合物
好ましい有機金属化合物としては、特に制限はないが、有機遷移金属が活性が高く、好ましい。中でもスズの化合物は安定性と活性がよく特に好ましい。これらの具体的化合物例としては、(C492Sn(OCOC11232、(C492Sn(OCOCH=CHCOOCH32、(C492Sn(OCOCH=CHCOOC492、(C8172Sn(OCOC11232、(C8172Sn(OCOCH=CHCOOCH32、(C8172Sn(OCOCH=CHCOOC492、(C8172Sn(OCOCH=CHCOOC8172 などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C492Sn(SCH2COOC8172、(C8172Sn(SCH2COOC8172、(C8172Sn(SCH2CH2COOC8172、(C8172Sn(SCH2COOC872、(C8172Sn(SCH2COOC12252などのメルカプチド型有機スズ化合物;又は(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキシドと、珪酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などを挙げることができる。
【0059】
(c5)金属塩類
金属塩類としては、有機酸のアルカリ金属塩(例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなど)が好ましく用いられる。
【0060】
これら触媒の、低屈折率層形成用組成物中の割合は、前記有機シリル化合物100質量部に対し、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜50質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
【0061】
[キレート配位化合物]
触媒として前記の金属キレート化合物を用いる場合、硬化反応速度の調節や液安定性向上の観点で、キレート配位能のある化合物を用いることも好ましい。好ましく用いられるものとしては、一般式R01COCH2COR02で表されるβ−ジケトン類及び/又はβ−ケトエステル類であり、低屈折率層形成用組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、該低屈折率層形成用組成物中に存在する金属キレート化合物(好ましくはジルコニウム、チタニウム及び/又はアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物による(1a)〜(1d)成分の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる膜の硬化速度をコントロールするものと考えられる。R01及びR02は、前記金属キレート化合物を構成するR01及びR02と同義であるが、使用に際して同一構造である必要はない。
【0062】
このβ−ジケトン類及び/又はβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−s−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、5−メチルヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類及び/又はβ−ケトエステル類は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。かかるβ−ジケトン類及び/又はβ−ケトエステル類の使用量は、金属キレート化合物1モルに対し2モル以上、好ましくは3〜20モルである。2モル以上用いることにより、組成物の保存安定性が向上する。
【0063】
[低屈折率層形成用組成物の調製]
低屈折率層形成用組成物は、低屈折率層を形成するためのものであり、塗設可能な液状物である。
すなわち、本発明で用いられる低屈折率層形成用組成物は、前記有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかと、溶媒、更に必要に応じて前記重合性モノマー、前記無機微粒子、後述する含フッ素化合物やポリシロキサンを有していればよい。
【0064】
この際用いることができる溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−ブタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が挙げられる。
【0065】
また、本発明においては、低屈折率層用組成物に、前記一般式(1a)〜(1d)の成分である有機シリル化合物の加水分解・縮合反応用として水を添加することが好ましい。水の使用量は、(1a)〜(1d)成分1モルに対し、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル程度である。
【0066】
さらに前記低屈折率層形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは1〜40質量%である。全固形分濃度が50質量%以下であれば、組成物の保存安定性が悪化するなどの不具合が生じないので好ましい。
【0067】
低屈折率層形成用組成物を調製する際には、予め有機シリル化合物を水と触媒の存在下で反応させ、部分的に加水分解後縮重合させることが好ましい。シロキサンオリゴマーのGPCによるエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算の相対分子量は700〜1500が好ましく、更に好ましくは900〜1000である。反応温度は5〜50℃が好ましく、更に好ましくは10〜40℃、最も好ましくは15〜30℃である。
【0068】
[低屈折率層の膜厚]
本発明における低屈折率層の膜厚は、50〜200nmが好ましく、更に好ましくは60〜150nm、最も好ましくは70〜120nmである。膜厚が該上限値以下であれば優れた強度と共に、層が脆くなるような不具合を生じることがなく、また膜厚が該下限値以上であれば膜強度が低下するなどの問題も生じないので、低屈折率層の膜厚は上述の範囲とするのが好ましい。
【0069】
[表面自由エネルギー]
本発明においては、防汚性向上の観点から、反射防止フィルム表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有する化合物などの、表面自由エネルギー低下用化合物を最表面に存在させることにより達成できる。表面自由エネルギーは、26mJ/m2以下が好ましく、更に好ましくは24mJ/m2以下であり、最も好ましくは22mJ/m2以下である。
【0070】
含フッ素化合物は、例えば、前記一般式(1)の有機シリル化合物のなかで、フッ素原子を有する化合物が好ましく挙げられる。
【0071】
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン(例えば、“KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164B”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−1667B”,“X−22−161AS”{以上、信越化学工業(株)製};“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”{以上、東亜合成(株)製};「サイラプレーンFM0725」、「サイラプレーンFM0721」{以上、チッソ(株)製}等を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
【0072】
低屈折率層が本発明の反射防止フィルムの最外表面の層である場合には、これらの表面自由エネルギー低下用化合物は、低屈折率層形成用組成物全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0073】
〔防汚層〕
前記の表面自由エネルギー低下用化合物は、低屈折率層が最外表面の層である場合には、前記有機シリル化合物と予め混合して縮合させておいてもよく、また乾燥硬化時に縮合させることもできる。さらに低屈折率層を形成した後その層の上に、前記表面自由エネルギー低下用化合物を含む組成物を塗設して防汚層を形成することにより、上述の好ましい表面自由エネルギーの範囲とすることもできる。
【0074】
防汚層を形成する場合に好ましく用いることのできる化合物は、以下の一般式(2)で表されるペルフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤である。
【0075】
一般式(2):Rf−(OC36s1−O−(CF2s2−(CH2s3−O−(CH2s4−Si(OR213
【0076】
上記一般式(2)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状ペルフルオロアルキル基であり、特に、CF3−、C25−、C37−が好ましい。R21は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、特に、−CH3、−C25が好ましい。また、s1は1〜50の整数、s2は0〜3の整数、s3は0〜3の整数、s4は0〜6の整数、但し、6≧s2+s3>0である。
【0077】
塗布方法は、均一に塗布される方法であればいかなる方法でも構わない。例えば各種のウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、エアードクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)又は真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の方法がある。
【0078】
防汚層の成膜後必要ならば、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行ってもよい。
【0079】
防汚層の膜厚は特に限定されるものではないが、防汚性、耐擦傷性、及び光学部材の光学性能の点から1〜50nmが好ましい。
【0080】
〔反射防止フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体と低屈折率層とを必須の層とし、更に必要に応じて、後述のハードコート層や、光学干渉によって反射率が減少するように、屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して種々の層を積層することができる。最も単純な構成は、透明支持体上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止膜を、透明支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明支持体よりも屈折率の低い低屈折率層とを組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、透明支持体側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明支持体又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの層を積層した反射防止膜も提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、透明支持体上にハードコート層を設置し、その上に中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布された反射防止フィルムが好ましい。
【0081】
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。なお、以下の例示においては、防汚層を設ける場合の記載を省略する。
透明支持体/低屈折率層、
透明支持体/防眩層/低屈折率層、
透明支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0082】
本発明の反射防止フィルムの層構成としては、光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。
また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、SnO2、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
以下、本発明において採用することができる各層や透明支持体について説明する。
【0083】
〔ハードコート層〕
本発明において用いられるハードコート層について以下に説明する。
ハードコート層は、バインダー、防眩性又は内部散乱性を付与するためのマット粒子、及び屈折率調節、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラー、から選ばれる構成要素を任意に組み合わせて形成することができる。
【0084】
本発明においては、バインダーとして透光性樹脂を用い、マット粒子として透光性粒子を用いてなる、光拡散層として機能するハードコート層が好ましく採用される。すなわち、本発明におけるハードコート層とは、膜の硬度を上昇させる機能を有する層という狭義のハードコート層ではなく、上記の構成要素を任意に組み合わせて機能を発現できる層を指す。従って組み合わせる構成要素によっては、狭義のハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、防眩層、光拡散層、内部散乱層となり得る。
【0085】
[バインダー]
ハードコート層のバインダーとして用いられる上記透光性樹脂としては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0086】
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。高屈折率にするには、これらのモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを用いることが好ましい。
【0087】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、ジビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)及び(メタ)アクリルアミドの誘導体{例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド)などが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0088】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0089】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、透光性粒子及び無機フィラーを含有するハードコート層形成用組成物の塗液を調製し、該塗液を、ハードコート層を設置しようとする面に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0090】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0091】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0092】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0093】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0094】
「最新UV硬化技術」{159頁、発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行}にも種々の例が記載されており本発明に有用である。市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の「イルガキュア」(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
【0095】
光重合開始剤は、上述したモノマーの総量100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0096】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0097】
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビスプロピオニトリル、2−アゾビスシクロヘキサンジニトリル等;ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0098】
ポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、透光性粒子及び無機フィラーを含有するハードコート層形成用組成物の塗液を調製し、該塗液を、ハードコート層を設置しようとする面に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0099】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0100】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0101】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0102】
本発明において、反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置の耐久性向上のためには、ハードコート層は、前記一般式(1)で示される有機シリル化合物、その加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれか、或いは多官能のイソシアネート化合物を含有するハードコート層形成用組成物を塗設して形成されたものであることが好ましい。
【0103】
有機シリル系化合物を使用する場合には、有機シリル系化合物の添加量は、ハードコート層の該化合物を除く固形分(バインダーや粒子等)に対して、0.1質量%以上120質量%以下が好ましく、0.5質量%以上60%以下が更に好ましく、最も好ましくは1.0質量%以上40質量%以下である。該有機シリル系化合物は、加水分解されていない状態でハードコート層形成用組成物の塗布液に添加してもよいし、部分的又は完全に加水分解して添加してもよい。また、特に温度変化の激しい保存条件や含オゾン大気下での耐久性向上の観点で、該有機シリル系化合物は2量体から15量体程度の縮合体で該ハードコート層に添加することが好ましい。縮合度はガスパーミエーションクロマトグラフィーにより算出することができる。また、該ハードコート層が無機フィラーを含有する場合においては、該有機シリル化合物は、無機フィラーの表面に水素結合及び/又は共有結合させた状態で用いることも好ましい。無機フィラーとしては、特に後述の導電性を有する酸化スズ、酸化インジウムに使用することが好ましい。
【0104】
好ましい有機シリル系化合物としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン。
【0105】
また、縮合物として好ましい有機シリル系化合物は、テトラエトキシシランと3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランの1対9(質量比)縮合物(5〜10量体)、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランの2〜10量体、テトラエトキシシランと3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの1対9(質量比)縮合物(5〜10量体)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの2〜10量体、等を挙げることができる。
【0106】
ハードコート層に使用することのできる多官能のイソシアネート化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
一般式(3):R31−(NCO)m
一般式(3)中、R31はm価の任意の基を表し、mは2以上の整数を表す。
【0107】
上記一般式(3)で表わされる化合物としては、公知の化合物を使用することができる。これらは、2官能、3官能又はそれ以上の多官能イソシアネート化合物である。一般式(3)において、R31は、特に限定されるものではないが、炭素数2〜30の脂肪族基、炭素数6〜30の芳香族基、又は炭素数3〜30の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基、及びこれらの基を組み合わせて得られるm価の基を表す。mは2〜5が好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0108】
一般式(3)で表される化合物は、常法により製造することができる。一般式(3)で表される化合物としては、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0109】
前記一般式(3)で表される2官能イソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族2官能イソシアネート;1,3−トリメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、水添p−キシリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ジ(イソシアナトメチル)ノルボルナン等の脂肪族2官能イソシアネート;又はこれら2官能イソシアネートとエチレングリコール、ビスフェノール類等の2官能アルコール、フェノールとの付加反応物が挙げられる。
【0110】
前記一般式(3)で表される3官能以上のイソシアネートとしては、例えば前述の2官能イソシアネートを主原料とし、これらの3量体(ビウレットもしくはイソシアヌレート)、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールとの付加物、フロログリシン等の3官能フェノールとの付加物、又はベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物(例えばポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
【0111】
前記一般式(3)で表わされる化合物として、特に好ましくは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ジ(イソシアナトメチル)ノルボルナン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種の化合物及びこれらの混合物が挙げられる。
【0112】
[透光性粒子]
ハードコート層には、防眩性及び/又は内部散乱性付与の目的で、無機フィラーより大きく、平均粒径が好ましくは0.1〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmの透光性粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有されることが好ましい。透光性粒子と透光性樹脂間の屈折率の差は、0.02〜0.20の範囲であることが好ましく、0.04〜0.10の範囲であることが特に好ましい。屈折率の差が該上限値以下であれば、フィルムが白濁するなどの不都合が生じないので好ましく、該下限値以上であれば、十分な光拡散効果を与えることができるので好ましい。
【0113】
透光性粒子の添加量は、ハードコート層の全固形分中3〜30質量%含有されていることが好ましく、5〜20質量%含有されていることが特に好ましい。透光性粒子の添加量が該上限値以下であれば、フィルムが白濁するなどの不都合が生じないので好ましく、該下限値以上であれば、十分な光拡散効果を与えることができるので好ましい。透光性粒子の添加量を、形成された光拡散層としてのハードコート層中の透光性粒子量で表すと、好ましくは10〜3000mg/m2、より好ましくは90〜2000mg/m2となる。
【0114】
上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、真球、不定形のいずれも使用できる。
【0115】
本発明におけるハードコート層では、異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。2種類以上の透光性粒子を用いる場合には、両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために、最も屈折率の高い粒子と最も屈折率の低い粒子との屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することも可能である。例えば、133ppi以上の高精細画像表示装置に反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0116】
さらに、上記透光性粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ透光性粒子は、通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の粒子を得ることができる。
【0117】
透光性粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0118】
[無機フィラー]
ハードコート層には、層の屈折率を高めるため、及び硬化収縮を低減するために、上記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0119】
また、ハードコート層と透光性粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率透光性粒子を用いたハードコート層では、層としての屈折率を低目に保つために珪素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
【0120】
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO、SiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0121】
これらの無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0122】
なお、このような無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0123】
本発明におけるハードコート層の、バインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を該範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0124】
透光性粒子及び無機フィラーは、分散物の状態でハードコート層に添加するのが好ましい。分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0125】
透光性粒子及び無機フィラーなどの粒子は、分散機を用いて媒体中に分散できる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例えば、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
【0126】
ハードコート層の厚さは、0.05〜10μmが好ましく、0.10〜7μmがより好ましく、更に好ましくは3μm〜5μmである。
【0127】
[チキソトロピー剤]
また、本発明の反射防止フィルムにおいては、いずれかの層にチキソトロピー剤が含有されるのが好ましい。特に、ハードコート層の樹脂皮膜の形成に際して、前記の粒子と共にチキソトロピー剤が併用されることが好ましい。チキソトロピー剤は、分散液を薄膜展開する際、高剪断力が作用するときには低い粘度特性を示して良好な塗工性を示し、薄膜展開後の静止状態では高い粘度特性を示して微粒子が沈降しにくい特性を付与することを目的とする。これにより、前記塗工層を硬化処理するまでの間における含有粒子の沈降を抑制でき、表面部に多数の粒子が残存して高密度に分布し、微細性に優れて小画素からの表示光に対し充分に小さい凹凸構造を形成することができる。
【0128】
従ってチキソトロピー剤としては、透明で塗布液の増粘等により含有粒子の沈降を抑制しうるものを適宜用いることができ、公知のチキソトロピー剤のいずれも用いうる。因みにその例としては、エアロジルや層状有機粘土、ポリアクリル酸やエチルセルロースなどがあげられる。
【0129】
チキソトロピー剤の配合量は、分散液の粘度特性などに応じて適宜に決定しうるが、一般には塗工性と微粒子沈降の抑制性の両立性などの点より、前記バインダー100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.05〜8質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0130】
[帯電防止層]
本発明においては、帯電防止層を設けることがフィルム表面での静電気防止の点で好ましい。帯電防止層を形成する方法は、例えば、導電性微粒子と反応性硬化樹脂を含む導電性層形成用組成物の塗布液を塗工する方法、又は透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法等の従来公知の方法を挙げることができる。
【0131】
帯電防止層は、透明支持体に直接又は透明支持体との接着を強固にするプライマー層を介して形成することができる。また、帯電防止層を反射防止フィルムの構成の中で、最表層から近い層で使用する場合には、膜の厚さが薄くても十分に帯電防止性を得ることができる。塗工方法は、特に限定されず、塗布液の特性や塗布量に応じて、例えば、ロールコート、グラビアコート、バーコート、押出しコート等の公知の方法より最適な方法を選択して行えばよい。
【0132】
帯電防止層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmであることがより好ましく、0.05〜5μmであることがさらに好ましい。
【0133】
帯電防止層の表面抵抗は、105〜1012Ω/□であることが好ましく、105〜109Ω/□であることがさらに好ましく、105〜108Ω/□であることが最も好ましい。また、帯電防止層を設けることにより、反射防止フィルムの表面抵抗値logSRは12以下となることが、反射防止フィルム表面への埃付着防止の点で好ましく、logSRが10以下となるのが更に好ましい。帯電防止層の表面抵抗は、25℃、湿度60%RH下で、超絶縁抵抗/微小電流計“TR8601”{(株)アドバンテスト製}を用いて測定することができる。
【0134】
帯電防止層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、帯電防止層のヘイズは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。また波長550nmの光の透過率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0135】
帯電防止層はまた、硬度が高いことが好ましく、具体的な帯電防止層の硬度は、1kg荷重の鉛筆硬度(JIS K−5400の規定)で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
【0136】
[帯電防止層の導電性微粒子]
導電性微粒子は、金属の酸化物又は窒化物から形成される無機粒子であることが好ましい。金属の酸化物又は窒化物の例には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛及び窒化チタンが含まれる。酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。
【0137】
導電性微粒子は、これらの金属の酸化物又は窒化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S、B、Nb、In、V及びハロゲン原子が含まれる。酸化錫及び酸化インジウムの導電性を高めるために、Sb、P、B、Nb、In、V及びハロゲン原子を添加することが好ましい。Sbを含有する酸化錫(ATO)及びSnを含有する酸化インジウム(ITO)が特に好ましい。ATO中のSbの割合は、3〜20質量%であることが好ましい。ITO中のSnの割合は、5〜20質量%であることが好ましい。
【0138】
帯電防止層に用いられる導電性微粒子の一次粒子の平均粒子径は、1〜150nmであることが好ましく、5〜100nmであることがさらに好ましく、5〜70nmであることが最も好ましい。形成される帯電防止層中の導電性微粒子の平均粒子径は、1〜200nmであり、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。導電性微粒子の平均粒子径は、粒子の質量を重みとした平均径であり、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
【0139】
導電性無機微粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0140】
導電性微粒子は表面処理されていてもよい。表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、アルミナ及びシリカが含まれる。シリカ処理が特に好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。2種類以上の表面処理を組み合わせて実施してもよい。
【0141】
導電性微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましい。二種類以上の導電性微粒子を帯電防止層内で併用してもよい。
【0142】
帯電防止層中の導電性微粒子の割合は、20〜90質量%であることが好ましく、25〜85質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0143】
導電性微粒子は、分散物の状態で帯電防止層の形成に使用する。好ましい分散媒体は、前述の[無機フィラー]の記載において分散媒体として挙げたものを用いることができる。
【0144】
[反射防止フィルムの製造]
本発明の反射防止フィルムの各層は、各層形成用組成物を後述の塗布用分散媒に溶解して塗布液として、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等の塗布方法により形成することができ、ダイコート法で塗布することが好ましく、更には塗布工程において後述するダイコーターを用いて塗布工程を行うことがより好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載の方法を特に制限無く用いて行うことができる。
【0145】
本発明の反射防止フィルムにおいては、少なくとも低屈折率層を積層するので、ゴミ、ほこり等の異物が存在したとき、輝点欠陥が目立ちやすい。本発明における輝点欠陥とは、目視により、塗膜上の反射で見える欠陥のことで、塗布後の反射防止フィルムの裏面を黒塗りする等の操作により目視で検出できる。目視により見える輝点欠陥は、一般的に50μm以上である。
本発明の反射防止フィルムは、輝点欠陥の数が1平方メートル当たり好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下である。上記の範囲内であれば、製造時の得率の観点から好ましく、大面積の反射防止フィルムの製造にも問題なく使用することができ、好ましい。
【0146】
本発明の反射防止フィルムを連続的に製造するために、ロール状の透明支持体フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布する工程、乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する支持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
ロール状の支持体フィルムから、支持体フィルムがクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、支持体フィルムに帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続き支持体フィルム上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液が支持体フィルム上に塗布され、塗布された支持体フィルムは乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有する支持体フィルムは乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有される硬化型樹脂が重合して硬化する。さらに、放射線により硬化した層を有する支持体フィルムは熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させ、硬化が完結した層を有する支持体フィルムは巻き取られてロール状となる。
【0147】
上記各工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能であるが、生産性の観点から各層の形成を連続的に行う事が好ましい。
図1に示す本発明において好ましく用いられる製造装置の1実施形態を参照して具体的に説明する。
ここで、図1は本発明において用いられる製造装置の1実施形態を示す概略図である。
図1に示す製造装置は、上記の連続的に送り出す工程を行うためのウェブWおよびそのロール1並びに複数設けられたガイドローラー(図示せず)と、上記の巻き取る工程を行うための巻き取りロール2と、上記の塗布する工程、乾燥する工程及び塗膜を硬化する工程を行うための、製膜ユニット100,200,300,400を適宜必要な数だけ設置したものである。本実施形態においては、製膜ユニット100は、ハードコート層形成用であり、製膜ユニット200は、中屈折率層形成用であり、製膜ユニット300は、高屈折率層形成用であり、製膜ユニット400は、低屈折率層形成用である。
各製膜ユニットは、同様の構造であるので、製膜ユニット100について説明する。製膜ユニット100は、上記の塗布液を塗布する工程を行うための塗布部101、及び上記の塗布された液を乾燥する工程を行うための乾燥部102と、上記の乾燥された塗布液を硬化する工程を行うための硬化装置103とからなる。
なお、図1で示される装置は4層を巻き取ることなく連続的に塗布する際の構成の一例だが、層構成に合わせて製膜ユニット数を変化させることはもちろん可能である。
製膜ユニットが3つ設置された装置を用いて、前記ハードコート層を塗設したロール状の支持体フィルムを連続的に送り出し、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事がより好ましく、製膜ユニットが4つ設置された、図1に示す装置を用いて、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出し、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事が更に好ましい。
【0148】
上記の塗布方法の中でも、マイクログラビア法が一般的に好ましく用いられる。本発明の高屈折率層や低屈折率層もマイクログラビア法で製造することができる。幅方向の塗布量分布や各種の面状故障に対しても良好な面状が得られ、長手方向の塗布量分布も掻き落しに用いる金属ブレードの素材、形状等の最適化により、満足な性能が得られる。
一方、より高い生産速度の観点では、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。ダイコート法は、生産性と塗布ムラのない面状を高次元で両立できるため、好ましく用いられる。
本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた以下の本発明の製造方法が好ましい。
すなわち、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有し、該塗布工程は、スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、スロットダイを塗布位置にセットしたときに、ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下(以下、この数値限定については「オーバーバイト長さ」と称する)大きくなるように設置した塗布装置を用いて、少なくとも低屈折率層形成用組成物を塗布する反射防止フィルムの製造方法が好ましい。さらには、この塗布装置を用いて、乾膜の膜厚が200nm以下となる層を形成することが好ましい。ここでいう乾膜とは、乾燥、硬化後の乾いた膜のことを言う。
特に、本発明の製造方法において好ましく用いることができるダイコーターについて、以下に図面を参照して説明する。該ダイコーターは、ウエット塗布量が少ない場合(20ml/m2以下)に用いることができ、好ましい。
【0149】
<ダイコーターの構成>
図2は本発明を好適に実施できるスロットダイを用いたコーター(塗布装置)の断面図である。
コーター10は、バックアップロール11とスロットダイ13とからなり、バックアップロール11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ13から塗布液14がビード形状14aで吐出されて塗布されることにより、ウェブW上に塗膜14bを形成する。
【0150】
スロットダイ13の内部には、ポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向(ここで、スロットダイ13の幅方向とは、図2の記載された図面に向かって手前方向又は奥側の方向を指す。)にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている(図示せず)。
【0151】
スロット16は、ポケット15からウェブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さになるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブW走行方向の接線とのなす角度は、30°以上90°以下が好ましい。
【0152】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブWの進行方向の上流側(進行方向すなわち図中の矢印方向とは逆側)を上流側リップランド18a、下流側(進行方向側)を下流側リップランド18bと称する。
上流側リップランド18aとウェブWとの隙間は、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間よりも上述の範囲で大きい。また、下流側リップランドランド18bの長さは、上述の範囲である。
図3(A)を参照して上述した数値限定に関する部位について説明すると、ウェブの進行方向側のランド長さは、図3(A)のILOで示される部分であり、上記オーバーバイト長さは、図3のLOで示される部分である。
【0153】
次に図3を参照して本発明の反射防止フィルムの製造方法の実施に用いられる塗布装置と従来の塗布装置とを比較して説明する。ここで、図3は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明のスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。
従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
【0154】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは上述のように、30μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上80μm以下、最も好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μm以上であれば、先端リップのエッジあるいはランドが欠けにくく、塗膜へのスジの発生を抑えることができ好ましい。また、下流側の濡れ線位置の設定がしやすい。さらには、塗布液の下流側における広がりを抑えることができ、好ましい。下流側における塗布液の濡れによる広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながる。一方、下流側リップのランド長さILOが100μm以下であれば、ビード14aを形成することができる。塗布液がビード14aを形成することにより、薄層塗布を行うことができる。
【0155】
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成14aが可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブWの隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブWの隙間を示す。
【0156】
次に、図4を参照して上記塗布工程全般について説明する。
図4は、本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。スロットダイ13に対しウェブWの進行方向側とは反対側(すなわちビード14aより上流側)に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブWの間には隙間GB 、サイドプレート40bとウェブWの間には隙間GS が存在する。
減圧チャンバー40とウェブWとの関係について図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
サイドプレート40bとバックプレート40aは図5のようにチャンバー40本体と一体のものであってもよいし、例えば、図6のように適宜隙間GBを変えられるようにバックプレート40aをチャンバー40にネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB 、GS と定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GB とは、減圧チャンバー40を図4のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0157】
バックプレート40aとウェブWとの隙間GB をスロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GL(図3参照)よりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GL が30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GB は100μm以上500μm以下が好ましい。
【0158】
<材質、精度>
前記ウェブの進行方向側の先端リップのウェブ走行方向における長さ(図3(A)に示す下流側リップランド長さlLO)は、前述の範囲内とすることが好ましく、また、lLOのスロットダイ幅方向における変動幅を20μm以内とすることが好ましい。この範囲内であれば、かすかな外乱によってもビードが不安定になることがなく、好ましい。
スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまうため、好ましくない。ステンレス鋼などの場合、下流側リップランド長さlLOを前記の30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足することが困難である。高い加工精度を維持するには、特許第2817053号明細書に記載されているような超硬材質のものを用いることが好ましい。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
高精度な塗布の実現には、前記下流側リップランド長さlLOが重要であり、さらに隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を制御することが望ましい。前記バックアップロール11と前記先端リップ17とは、隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を制御できる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップロール11の真直度とすることである。
【0159】
輝点欠陥が上述の範囲である輝点欠陥の少ない反射防止フィルムを作成するためには、低屈折率層形成用塗布物中の無機微粒子の分散を精密に制御すること、および塗布液の精密濾過操作を行えばよい。これと同時に、反射防止層を形成する各層は上記の塗布部における塗布工程および乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、かつ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程および乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましく、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0160】
塗布が行われる前工程としての除塵工程に用いられる除塵方法として、特開昭59−150571号公報に記載のフィルム表面に不織布や、ブレード等を押しつける方法、特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法、特開平7−333613号公報に記載される超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引する方法(伸興社製、ニューウルトラクリーナー等)等の乾式除塵法が挙げられる。
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法、特公昭49−13020号公報に記載されているフィルムに洗浄液を供給したあと、高速空気の吹き付け、吸い込みを行なう方法、特開2001−38306号公報に記載のように、ウェブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄する方法等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
【0161】
また、このような除塵工程を行う前に、支持体フィルム上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いることができる。除塵、塗布前後の支持体フィルムの帯電圧は、1000V以下が望ましく、好ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
【0162】
[塗布用分散媒]
上記塗布液に用いられる塗布用分散媒としては、特に限定されず、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素の混合物等が該当する。これら溶媒の中でもケトン類の単独あるいは2種以上の混合により作成される塗布用分散媒が特に好ましい。ダイコート法で塗布する場合には、塗布用分散媒は、各層形成用組成物の固形成分に対し、下記の液物性となるよう、用いることが好ましい。
【0163】
[塗布液物性]
本発明の製造方法における塗布方式は、塗布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御することが好ましい。液物性を制御することで、塗布可能な上限の速度を上げることができ、好ましい。
前記塗布液の塗布時における粘度は2.0[mPa・sec]以下であるのが好ましく、更に好ましくは1.5[mPa・sec]以下、最も好ましくは1.0[mPa・sec]以下である。塗布液によってはせん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布される瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が高くなって、乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
【0164】
表面張力については、15〜36[mN/m]の範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、乾燥時のムラが抑止されるため好ましい。さらに好ましくは17[mN/m]〜32[mN/m]の範囲であり、19[mN/m]〜26[mN/m]の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、塗布可能な上限の速度を落とすことがなく好ましい。表面張力はレベリング剤を添加するなどして制御することができる。
また、本発明の製造方法においては、前記塗布液を、連続走行するウェブの表面に25[m/min]以上の速度で塗設するのが好ましい。
【0165】
[濾過]
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.1〜5μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は好ましくは1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下、更には0.2MPa以下で濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
【0166】
乾燥、硬化条件は特には制限がないが、50℃〜150℃、好ましくは70〜120℃の低温において、100時間以下、更には0.5時間〜10時間で行うことができる。
【0167】
〔反射防止フィルム全体の物性〕
[ヘイズ値及び平均反射率]
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が好ましくは0.3〜70%、より好ましくは0.5〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。本発明の反射防止フィルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴わずに良好な防眩性又は内部散乱性及び反射防止性が得られ、好ましい。
【0168】
[反射防止フィルムの中心線平均粗さ(Ra)]
本発明において、視認性を向上させる観点及び、膜の強度を向上させる観点から、本発明に係る反射防止フィルムの最表面は、制御された微細な凹凸を有する必要がある。このような最表面の凹凸の範囲は、JIS B−0601で規定される中心線平均表面粗さRaが0.005〜0.20μmの範囲であることが必要であり、0.01〜0.15μmの範囲であることが好ましい。
【0169】
反射防止フィルムの中心線平均粗さ(Ra)をこの範囲に調整するためには、大別して2つの手段がある。一つは、前述の透光性粒子の種類、粒子サイズ、量、ハードコート層の膜厚を制御することで調節することである。別の方法は、塗布液の乾燥速度や粘度、塗布液の温度を制御することで調整する方法であり、ゲル化剤(ポリアクリルアミド類、セルロース誘導体、多糖類等)やチキソトロピー剤を添加することも好ましい。この方法では、ハードコート層に透光性粒子を含有してもしなくてもよい。
【0170】
[ハードコート層の中心線平均粗さ(Ra)]
本発明において、得られる反射防止フィルムの耐久性を向上させる観点及び膜の強度を向上させる観点から、低屈折率層が塗設されるハードコート層の表面は、微細な凹凸を有することが好ましい。
【0171】
高湿下や温度変化の激しい条件で保存した後の耐久性向上の点からは、好ましい凹凸としては、JIS B−0601で規定される中心線平均表面粗さRaが0.005〜0.20μmの範囲であり、更に好ましくは、0.07〜0.15μmの範囲であり、最も好ましくは0.09〜0.15μmである。
【0172】
また、含オゾン大気下で保存した後の耐久性向上の点からは、好ましい中心線平均表面粗さRaは0.009〜0.20μmの範囲である。この範囲に調整するためには上記の様に主として2つの手段があり、どの方法でも効果があるが、帯電防止無機微粒子を含有するハードコート層は表面の凹凸の制御が容易で特に好ましい。
【0173】
[反射防止フィルムの耐擦傷性]
本発明の反射防止フィルムは、10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることが好ましい。より好ましくは500g以上、更に好ましくは600g以上である。
水綿棒擦り試験での限界荷重は以下のようにして求める。
各試料を偏光板に加工後、オゾン10ppm、30℃、60%RHの環境下に192時間(8日)保管した後に、大気中に取り出す。ラビングテスターのこすり先端部に綿棒((株)トーヨー衛材株式会社製 ヘルスリフレ(商品名))を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に荷重をかけて20往復擦り試験を行う。
こすり距離(片道):1cm、こすり速度:約2往復/秒擦り後の試料の表面の水を乾燥させた後に、膜がはがれているかを目視で観察する。同じ試料で10回試験を行い、5回以上膜はがれが起きるまで、初期荷重100gからスタートし荷重を50gずつ上げて試験を行う。膜はがれが10回の試験中5回未満であった荷重を限界荷重と定義する。膜はがれは、目視で表面の反射状態が変わっているかで判断を行う。反射状態が変わっている膜は、その切片を電子顕微鏡で観察すると、最上層の膜厚が5%以上薄くなっているか、または最上層やその他構成層が剥離していることが観察される。
【0174】
〔透明支持体〕
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フィルム(株)製「フジタックTAC−TD80U」、「フジタックTD80UF」など)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0175】
トリアセチルセルロースなどのセルロースアシレートは、単層又は複数の層からなる。単層のセルロースアシレートは、特開平7−11055号公報等で開示されている、ドラム流延又はバンド流延等により作製され、後者の複数の層からなるセルロースアシレートは、公開特許公報の特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作製することがきる。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶媒にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(以下ドープと称することがある)を、水平式のエンドレスの金属ベルト又は回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(以下ダイと称することがある)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0176】
上記のような、セルロースアシレートを溶解するための溶媒としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶媒はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。
ジクロロメタン等を実質的に含まない溶媒を用いてセルロースアシレートのドープを調製する場合には、後述するような特殊な溶解法が必須となる。
【0177】
第一の溶解法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。
まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと溶媒の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶媒中にセルロースアシレートが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
【0178】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。
まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。本発明のセルロースアシレート溶液は、各種溶媒を含有する混合溶媒中にセルロースアシレートを添加し、予め膨潤させることが好ましい。本法において、セルロースアシレートの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶媒混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶媒の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はセルロースアシレート溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム及びその製造法については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す。)に記載されている方法が挙げられる。
【0179】
〔反射防止フィルムの液晶表示装置での利用〕
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等して画像表示装置の最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることがコストの上でも好ましい。
【0180】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを画像表示装置の最表面に配置したり、そのまま偏光板用の保護フィルムとして使用したりする場合には、接着性を向上させるために、該反射防止フィルムの反射防止膜が設けられた側とは反対側の表面(以下、反射防止フィルムの背面ということがある)をアルカリ処理により親水化することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬することにより実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。
【0181】
反射防止フィルムの背面の透明支持体の親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏向膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏向膜と接着させる際に偏向膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0182】
鹸化処理は、反射防止フィルムの背面の透明支持体表面の、水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0183】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)〜(4)の4つの手段から選択することができる。これらのうち、汎用のセルロースアシレートフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜表面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。これに対し、(2)の方法では、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層と下層との密着性をも向上させることができ、好ましい。
【0184】
(1)透明支持体上に反射防止膜の低屈折率層まで形成した後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、反射防止フィルムの表面及び裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に低屈折率層が形成される前に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、低屈折率層形成前に形成された層を有する透明支持体の表面及び裏面を鹸化処理する。この方法では、低屈折率層が設けられる面もアルカリ処理される。
(3)透明支持体上に反射防止膜の低屈折率層まで形成した後に、低屈折率層側の面をラミネートで保護し、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、反射防止フィルムの裏面を鹸化処理する。
(4)透明支持体上に反射防止膜を構成する層を形成する前又は後に、アルカリ液を、該透明支持体の反射防止膜を形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、反射防止フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0185】
すなわち、本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層が設けられる面が予めアルカリ処理されていることが好ましい。
【0186】
そして、前記透明支持体に上述のように各層を形成することにより、本発明の反射防止フィルムが得られる。
【0187】
[偏光板]
本発明の偏光板は、上述の本発明の反射防止フィルムを有することを特徴とするものである。
【0188】
また本発明の偏光板は、偏光板を構成するフィルムの、少なくとも1つのフィルムのReレターデーション値が20以上70nm以下であり、Rthレターデーション値が70以上400nm以下であるのが好ましい。
【0189】
本明細書において、Reレターデーション値及びRthレターデーション値は、それぞれ、下記数式(2)及び(3)で定義される。
数式(2):Re=(nx−ny)×d
数式(3):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
【0190】
数式(2)及び(3)において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率である。dは、単位をnmとするフィルムの厚さである。
【0191】
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0192】
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
【0193】
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコールなどのポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルムの進行方向を、フィルム両端を保持した状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0194】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0195】
[表示装置、液晶モード]
本発明の表示装置は、上述の本発明の反射防止フィルムを有することを特徴とする。
すなわち、本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0196】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0197】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97, Digest of Tech. Papers”(予稿集)28集(1997年)845頁記載)、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{「日本液晶討論会」の予稿集58〜59頁(1998年)記載}及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)
が含まれる。
【0198】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0199】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで、実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0200】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」{東レリサーチセンター発行(2001年)}などに記載されている。
【0201】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムのうちの、本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0202】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特別の断りのない限り「部」及び「%」は質量基準である。
【0203】
[各層形成用組成物塗布液の調製]
{ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)の調製}
ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートの混合物“KAYARAD PET−30”{日本化薬(株)製}45g、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}5gを、トルエン23.5g、シクロヘキサノン15.0gで希釈した。更に、重合開始剤「イルガキュア184」と「イルガキュア907」{共にチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}の1:1質量比混合物を2g添加し、混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
得られた混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)を調製した。
【0204】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(A−2)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)に対して、さらにポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子“SX−350”{屈折率1.61、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液1.7g、及び平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子{屈折率1.55、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液13.3gを加え、最後に、下記化学式(4)で表されるフッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}10gを加えた。
得られた混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用組成物塗布液(A−2)を調製した。
【0205】
【化1】

【0206】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(A−3)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)に対して、更に平均粒径3.0μmの分級強化架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子“MXS−300”{架橋剤エチレングリコールジメタクリレート、架橋剤量30%、屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液を、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した分散液35gを加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子「シーホスターKE−P150」{屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%トルエン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分間分散した分散液90gを加えて混合攪拌した。
得られた混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用組成物塗布液(A−3)を調製した。
【0207】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(A−4)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−3)において、平均粒径1.5μmのシリカ粒子の代わりに、平均粒径1.5μmの分級強化高架橋PMMA粒子“MXS−150H”{架橋剤エチレングリコールジメタクリレート、架橋剤量30%、屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液130gを用いた以外は、添加量も含め上記塗布液(A−3)と同様にして、ハードコート形成用組成物塗布液(A−4)を作成した。
【0208】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(A−5)の調製}
上記ハードコート層用塗布液(A−2)において、平均粒径3.5μmのポリスチレン粒子の代わりに、平均粒径3.0μmの分級強化高架橋PMMA粒子“MXS−300”{架橋剤エチレングリコールジメタクリレート、架橋剤量30%、屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%メチルイソブチルケトン分散液20gを用いた以外は、添加量も含め上記塗布液(A−2)と同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(A−5)を作成した。
【0209】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(B−1)の調製}
市販のジルコニア含有UV硬化型ハードコート液「デソライトZ7404」{JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー及び重合開始剤含有}285g、ジペンタエリトリトールペンタアクリレートとジペンタエリトリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}85gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}28gを混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
【0210】
さらにこの溶液に、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子“SX−350”{屈折率1.61、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液1.7g及び、平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子{屈折率1.55、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液13.3gを加え、最後に、前記化学式(4)のフッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g及びシランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}10gを加えた。
得られた混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層形成用組成物塗布液(B−1)を調製した。
【0211】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(C−1)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−2)において、塗布液(A−2)の固形分100部に対して、有機粘土を1部添加した以外は全く同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(C−1)を調製した。
【0212】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(C−2)の調製}
上記ハードコート形成用組成物塗布液(A−3)において、塗布液(A−3)の固形分100部に対して、微粒子シリカ“AEROSIL 200”{平均一次粒子12nm、屈折率1.46、日本アエロジル(株)製}を0.5部添加した以外は全く同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(C−2)を調製した。
【0213】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(C−3)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−3)において、塗布液(A−3)の固形分100部に対して、微粒子シリカ“AEROSIL 200”{平均一次粒子12nm、屈折率1.46、日本アエロジル(株)製}を0.5部添加し、更に「ブライト20GNR4.6−EH」{ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物球状粉体にニッケル及び金をメッキしたもの、日本化学工業(株)製}を0.1部添加した以外は全く同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(C−3)を調製した。
【0214】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−1)の調製}
屈折率1.43の熱架橋性含フッ素ポリマー“JTA113”{固形分濃度6%、主溶媒メチルエチルケトン、JSR(株)製}18gに、メチルエチルケトン2g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、比較例用の低屈折率層形成用組成物塗布液(D−1)を調製した。
【0215】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−2)の調製}
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン100g、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン200g、テトラエトキシシラン1700g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層形成用組成物塗布液(D−2)を調製した。
【0216】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−3)の調製}
上記の低屈折率層形成用組成物塗布液(D−2)調製工程において、最終段階でシリコーン系レベリング剤“L−9000(CS100)”{直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー、日本ユニカー(株)製}30gを添加したこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物塗布液(D−3)を調製した。
【0217】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−4)の調製}
上記の低屈折率層形成用組成物塗布液(D−3)調製工程において、0.25モル/Lの酢酸水を滴下する前に、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}50gを加えたこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物塗布液(D−4)を調製した。
【0218】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−5)の調製}
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン1000g、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン400g、テトラエトキシシラン500g、イソブタノール200gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25mol/Lの酢酸水419gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。次にアルミニウムアセチルアセトナート6gを加え、更に撹拌を3時間行った。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層形成用組成物塗布液(D−5)を調製した。
【0219】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−6)の調製}
上記の低屈折率層形成用組成物塗布液(D−5)調製工程において、最終段階でシリコーン系レベリング剤“X−22−163C”{末端エポキシ変性シリコーン、信越シリコーン社製}30gを添加したこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物塗布液(D−6)を調製した。
【0220】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(D−7)の調製}
上記の低屈折率層形成用組成物塗布液(D−6)調製工程において、0.25Nの酢酸水を滴下する前に、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}50gを加えたこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物塗布液(D−7)を調製した。
【0221】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(E−1)の調製}
上記低屈折率層形成用組成物塗布液(D−4)の100gに対して、中空シリカ分散物{粒子サイズ約40〜50nm、シエル厚6〜8nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、特開2002−79616の調製例4に準じて粒子サイズを変更して作製}を97g添加し、攪拌の後、孔径30μm、10μm、1μmのポリプロピレン製フィルターで多段濾過して、低屈折率層形成用組成物塗布液(E−1)を調製した。
【0222】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(E−2)の調製}
上記低屈折率層形成用組成物塗布液(D−4)の100gに対して、更に、中空シリカ分散物“CS60−IPA”{粒子サイズ60nm、シエル厚10nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、触媒化成工業(株)製}を147g添加し、攪拌の後、孔径30μm、10μm、1μmのポリプロピレン製フィルターで多段濾過して、低屈折率層形成用組成物塗布液(E−2)を調製した。
【0223】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(E−3)の調製}
上記低屈折率層形成用組成物塗布液(D−7)の100gに対して、更に、中空シリカ分散物“CS60−IPA”{粒子サイズ60nm、シエル厚10nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、触媒化成工業(株)製}を97g添加し、攪拌の後、孔径30μm、10μm、1μmのポリプロピレン製フィルターで多段濾過して、低屈折率層形成用組成物塗布液(E−3)を調製した。
【0224】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−1)の調製}
日本ペルノックス(株)製のATO分散ハードコート剤「ペルトロンC−4456−S7」(固形分45%)の100gにシクロヘキサノン30g、メチルエチルケトン10g、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5gを添加し、攪拌の後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−1)を調製した。
【0225】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−2)の調製}
JSR(株)の「デソライトKZ6805」(固形分5%ハードコート剤、固形分中無機含率80%、アクリレート系バインダー使用、無機物の主成分は1次粒子サイズ径約15nmのアンチモンドープ酸化スズ粒子)の固形分あたり、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1%を添加し、攪拌の後、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−2)を調製した。
【0226】
〔反射防止フィルムの作製〕
比較例1−1
[反射防止フィルム試料101の作製]
(1)ハードコート層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}をロール形態で巻き出して、前記ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度35m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4.6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
【0227】
(2)低屈折率層の塗設
前記低屈折率層形成用組成物塗布液(D−1)の固形分(揮発性有機溶媒が蒸発した後の残分)に対して、1質量%のイソホロンジイソシアネートを、該塗布液(D−1)に塗布直前に混合し、押し出しコーターで、上記で形成したハードコート層の上に塗布した。80℃で5分間乾燥の後、更に120℃で20分硬化させた。その後、窒素パージ下で240W/cm2の空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量200mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成させ巻き取った。このようにして、得られた反射防止フィルム試料を試料101とする。なお試料101以外の反射防止フィルムの作製においても、各低屈折率層形成用組成物塗布液の固形分に対して1質量%のイソホロンジイソシアネートを添加した。
【0228】
〔反射防止フィルムの評価〕
得られた反射防止フィルムについて、以下の項目の評価を行った。
【0229】
(1)試料の保存・強制劣化条件
(1−1)基準条件
上記工程にて作製した反射防止フィルム試料を25℃、60%RHのもとで7日保存する。
【0230】
(1−2)高湿度保存条件
各試料を60℃、90%RHのもとに2日又は7日保存した。
【0231】
(2)碁盤目密着性評価
上記条件で保存した各試料について、JIS K−5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には、各試料の反射防止膜側の面に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個作り、この上にセロハン粘着テープを貼り付け、90°で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数をカウントした。この数が90以上のものが実用可である。
【0232】
(3)表面粗さ
上記基準条件で保存した各試料について、JIS B−0601規定の方法により表面の中心線平均表面粗さRaを求めた。
【0233】
(4)表面自由エネルギーの測定
各試料を25℃60%RHで2時間調湿した後に、水とヨウ化メチレンに対する接触角を測定し、それらの値より表面自由エネルギー(mJ/m2)を算出した。
【0234】
実施例1−1〜1−10及び比較例1−2
[反射防止フィルム試料102〜112の作製]
比較例1−1の反射防止フィルム試料101の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)及び低屈折率層形成用組成物塗布液(D−1)を用いる代わりに、表1に記載のハードコート層形成用組成物塗布液及び低屈折率層形成用組成物塗布液を用いた以外は比較例1−1と同様にして、反射防止フィルム試料102〜112を作製した。使用したハードコート層形成用組成物塗布液及び低屈折率層形成用組成物塗布液、並びに得られた反射防止フィルム試料102〜112の評価結果を表1に合わせて示す。
【0235】
【表1】

【0236】
表1に示される結果より、以下のことが明らかである。
本発明の要件を満たす低屈折率層を用い、ハードコート層に特定の粒子を用いることで本発明の表面粗さを満たす反射防止フィルム試料は、高湿条件での保管の後にも碁盤目密着性に優れている{試料101,102(比較例1−1,1−2)と103(実施例1−1)の比較等}。
【0237】
低屈折率層に、シリコーン系化合物などを使用し表面自由エネルギーを本発明の好ましい範囲にした反射防止フィルム試料は、高湿条件で保管の後の碁盤密着が改良される{試料110(実施例1−8)(表面自由エネルギー範囲外)と103(実施例1−1)(範囲内)、試料112(実施例1−10)(範囲外)と111(実施例1−9)(範囲内)の比較}。
【0238】
またハードコート層に、チキソトロピー剤を添加した反射防止フィルム試料は、高湿条件で保管の後の碁盤密着が改良される{試料103(実施例1−1)(添加なし)と108(実施例1−6)(添加)、試料104(実施例1−2)(添加なし)と109(実施例1−7)(添加)の比較}。
【0239】
比較例2−1
[反射防止フィルム試料201の作製]
(1)帯電性防止層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}をロール形態で巻き出して、上記の帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−1)を線数360本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度35m/分の条件で塗布し、80℃で120秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cm2の空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度200mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ1.0μmの帯電防止層を形成し、巻き取った。
【0240】
上記帯電防止層の上に、実施例1に準じて、ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)及び低屈折率層形成用組成物{(D−1)の固形分に対して1質量%に1質量%のイソホロンジイソシアネートを添加}を順次塗設・光硬化させて反射防止フィルム試料201を作製した。光硬化後のハードコート層の厚みは4.3μm、低屈折率層の厚みは95nmになるよう調整した。なお試料201以外の反射防止フィルム試料の作製においても、各低屈折率層用塗布液の固形分に対して1質量%のイソホロンジイソシアネートを添加した。
【0241】
実施例2−1〜2−20及び比較例2−2〜4
[反射防止フィルム試料202〜224の作製]
比較例2−1の反射防止フィルム試料201の作製において、帯電防止層形成用組成物塗布液、ハードコート層形成用組成物塗布液及び低屈折率層形成用組成物塗布液を表2記載のように変更した以外は試料201と同様にして、反射防止フィルム試料201〜224を作製した。
【0242】
反射防止フィルム試料216〜224は、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}に帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−1)を塗布することなく、ハードコート層形成用組成物塗布液の塗布以降の工程を実施した。試料215は、塗設順序を支持体側から順番にハードコート層、帯電防止層、低屈折率層にし、帯電防止層の厚さを100nmになるよう調製した。
【0243】
得られた反射防止フィルムについて、表面粗さを実施例1と同様に測定した。また、以下の試験を行った。使用した各層形成用組成物塗布液、及び得られた反射防止フィルム試料201〜224の評価結果を表2に合わせて示す。
【0244】
(1)試料の保存・強制劣化条件
(1−1)基準条件
実施例1及び比較例1と同じ条件とした。
【0245】
(1−3)ヒートサイクル条件
各試料について、−40℃と+90℃の間での昇温降温のサイクルを、1サイクル30分の条件で100回又は200回繰り返した。
【0246】
(5)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール“No.0000”{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
【0247】
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0248】
(6)logSR(表面抵抗)の測定
25℃、60%RHで2時間調湿した後に、表面抵抗値(SR)を円電極法で測定した。SRの常用対数をとりlogSRを算出した。
【0249】
【表2】

【0250】
表2に示される結果より、以下のことが明らかである。
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層を用い、ハードコート層に特定の粒子を用いることで本発明の表面粗さを満たす試料は、ヒートサイクル後も含めスチールウール擦り耐性に優れている{試料201、202(比較例2−1〜2−2)と203〜209(実施例2−1〜2−7)の比較、216、217(比較例2−3〜2−4)と218〜224(実施例2−14〜2−20)の比較}。
【0251】
特に、低屈折率層に中空構造の粒子を含む試料は、ヒートサイクル後のスチールウール擦り耐性に優れている{試料219(実施例2−15)(中空構造粒子なし)と220,221(実施例2−16〜2−17)(中空構造粒子含有)の比較、223(実施例2−19)(なし)と224(実施例2−20)(含有)の比較、204(実施例2−2)(なし)と205,206(実施例2−3〜2−4)(含有)の比較、208(実施例2−6)と209(実施例2−7)の比較}。
【0252】
また、帯電防止層を塗設した試料はフイルムの表面抵抗が低下しており、帯電性に優れることが分かる。特に、ハードコート層に金ニッケルメッキ粒子を含有する試料214(実施例2−12)及び、低屈折率層の直下に帯電防止層を有する試料215(実施例2−13)は表面抵抗の低下が大きい。
【0253】
実施例3
{低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)の調製}
テトラエトキシシラン2000g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)を調製した。
【0254】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(F−2)の調製}
37−(OC3624−O−(CF22−C24−O−CH2Si(OCH33からなるペルフルオロポリエーテル基含有シラン化合物160g、テトラエトキシシラン1840g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して低屈折率層形成用組成物塗布液(F−2)を調製した。
【0255】
{防汚層形成用組成物塗布液(G−1)の調製}
37−(OC3624−O−(CF22−C24−O−CH2Si(OCH33からなるペルフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を、ペルフルオロヘキサンで9.5質量%に希釈した塗布液を調製した。
【0256】
{防汚層形成用組成物塗布液(G−2)の調製}
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールで6.0%に希釈した塗布液を調製した。
【0257】
実施例3−1
[反射防止フィルム試料301の作製]
前記比較例1−1の反射防止フィルム試料101の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)及び低屈折率層形成用組成物塗布液(D−1)を用いる代わりに、ハードコート層形成用組成物塗布液(A−3)及び低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)を用いた以外はまったく同様にして、試料301を作製した。
【0258】
実施例3−2
[反射防止フィルム試料302の作製]
上記で作製された反射防止フィルム試料301の低屈折率層の上に、防汚層形成用組成物塗布液(G−1)を塗布し、120℃で1乾燥して、厚さ8nmの防汚層を作製し、反射防止フィルム試料302を作製した。
【0259】
実施例3−3
[反射防止フィルム試料303の作製]
また反射防止フィルム試料302において、防汚層形成用組成物塗布液(G−1)を用いる代わりに、防汚層形成用組成物塗布液(G−2)を用いる以外は試料302と同様にして、反射防止フィルム試料303を作製した。
【0260】
実施例3−4
[反射防止フィルム試料304の作製]
さらに反射防止フィルム試料301において、低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)を用いる代わりに、低屈折率層形成用組成物塗布液(F−2)を用いる以外は同様にして、試料304を作製した。
【0261】
得られた反射防止フィルム試料301〜304について、高湿保管前後での碁盤目密着テストを評価した。結果を表3に示す。
【0262】
【表3】

【0263】
本発明の実施例3の反射防止フィルムにおいて、防汚層を塗設した試料は膜強度の耐久性に更に優れていることが分かる。
【0264】
実施例4
実施例1の反射防止フィルム試料108と同じハードコート層形成用組成物塗布液(C−1)と低屈折率層形成用組成物の塗布液(D−4)を用いて、以下の反射防止フィルム試料401から403を作製した。
【0265】
実施例4−1
[反射防止フィルム試料401の作製]
ハードコート層及び低屈折率層を共に塗布し光硬化終了した試料を、以下の(1)に従って鹸化処理を行った。
(1)1.5モル/LのNaOH水溶液中に、55℃で120秒浸漬した後に、0.05モル/LのH2SO4水溶液に30℃で20秒浸漬して中和し、次いで水洗を20秒行った後120℃で2分乾燥した。
【0266】
実施例4−2
[反射防止フィルム試料402の作製]
ハードコート層を形成した試料について、以下の(2)の鹸化処理を行った後、低屈折率層形成用組成物の塗布を行った。
(2)1.5モル/LのNaOH水溶液中に55℃で120秒浸漬した後に、0.05モル/LのH2SO4水溶液に30℃で20秒浸漬して中和し、次いで水洗20秒行い120℃で2分乾燥した。その後、低屈折率層を塗設した。
【0267】
実施例4−3
[反射防止フィルム試料403の作製]
ハードコート層、低屈折率層ともに塗布し光硬化終了した試料について、以下の(3)の鹸化処理を行った。
(3)試料の低屈折率層が塗設されている側を、保護用マスキングフィルム(微粘着層つきPET)でラミネートし、上記(1)と同様の条件で鹸化処理を行った。鹸化後、ラミネートしたフィルムをはがして下記評価を行った。
【0268】
実施例1に準じて、ヒートサイクル後での碁盤目密着評価を行った結果を表4に示す。
【0269】
【表4】

【0270】
表4によれば、低屈折率層を塗設する前にアルカリ鹸化処理することで、膜の層間密着がさらに改良されていることが分かる。アルカリ鹸化処理で層間の密着が改良される理由については、必ずしも明確ではないが、鹸化処理によりハードコート層の表面の極性が上がることにより、本発明の低屈折材料との密着性が改良されたものと推定している。
【0271】
実施例5
〔偏光板の作製〕
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}を、1.5モル/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬した後、中和、水洗して得たフィルムと、実施例1及び2の反射防止フィルム試料の裏面鹸化済みトリアセチルセルロースフィルムとを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面に接着し、保護して偏光板を作製した。
【0272】
〔液晶表示装置〕
このようにして作製した偏光板を、反射防止フィルム側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置{偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製“D−BEF”をバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0273】
実施例6
〔偏光板の作製〕
[トリアセチルセルロースフィルムの作製]
以下の支持体を使用して偏光板を作製した。
支持体1:特開2001−249223号公報の実施例1に準じて作製したトリアセチルセルロースフィルム。
支持体2:特開2001−249223号公報の実施例2に準じて作製したトリアセチルセルロースフィルム。
支持体3:特開2003−170492号公報の実施例2に準じて作製したトリアセチルセルロースフィルム。
支持体4:80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTD−80U」{富士写真フィルム(株)製}。
【0274】
それぞれのレターデーション値を以下に示す。
支持体1:Re=40nm,Rth=130nm。
支持体2:Re=50nm,Rth=240nm。
支持体3:Re=64nm,Rth=120nm。
支持体4:Re=4nm,Rth=45nm。
【0275】
実施例6−1〜6−8
[偏光板(P−1)の作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光膜(PF−1)を作製した。まず市販のトリアセチルセルロース(支持体4)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜(PF−1)の片側に貼り付けた。次いで上記支持体1にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜(PF−1)の反対側に貼り付けた。その際に、偏光膜(PF−1)の透過軸と支持体1の遅相軸とは平行になるように配置し、偏光膜(PF−1)の透過軸と市販のトリアセチルセルロースフィルム(支持体4)の遅相軸とは、直交するように配置して偏光板を作製した。このようにして得られた偏光板をP−1とした。
【0276】
[偏光板(P−2)の作製]
偏光板(P−1)において、支持体1の代わりに、支持体2を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−2)を作製した。
【0277】
[偏光板(P−3)の作製]
偏光板(P−1)において、支持体1の代わりに、支持体3を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−3)を作製した。
【0278】
[偏光板(P−4)の作製]
偏光板(P−1)において、支持体1の代わりに、支持体4を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−3)を作製した。
【0279】
[偏光板(P−1A)の作製]
偏光板(P−1)において、支持体4の代わりに、実施例2の反射防止フィルム試料214を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−1A)を作製した。
【0280】
[偏光板(P−2A)の作製]
偏光板(P−2)において、支持体4の代わりに、実施例2の反射防止フィルム試料214を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−2A)を作製した。
【0281】
[偏光板(P−3A)の作製]
偏光板(P−3)において、支持体4の代わりに、実施例2の反射防止フィルム試料214を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−1A)を作製した。
【0282】
[偏光板(P−4A)の作製]
偏光板(P−1A)において、支持体1の代わりに支持体4を用いた以外は全く同様にして偏光板(P−4A)を作製した。
【0283】
実施例7
〔液晶表示装置〕
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置“VL−1530S”{富士通(株)製}に設けられている、一対の偏光板及び一対の光学補償シートを剥がし、代わりに実施例6で作製した偏光板を、粘着剤を介して、表5に示すように、観察者側及びバックライト側に1枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。作製した液晶表示装置について、測定機“EZ−Contrast 160D”(ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。その結果を表5に示す。
【0284】
【表5】

【0285】
表5中、「偏光板組合せ型」の欄には、本発明の反射防止フィルムを有し、かつReレターデーション値が20以上70nm以下であると共に、Rthレターデーション値が70以上400nm以下であるトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光板であるものをY型、それ以外をZ型として示した。
【0286】
その結果、Reレターデーション値が20以上70nm以下であり、Rthレターデーション値が70以上400nm以下であるトリアセチルセルロースフィルムを用いた装置では、視野角の拡大が認められた(装置A〜FとG,Hの比較)。
【0287】
上記のレターデーション範囲のトリアセチルセルロースフィルムを用い、本発明の反射防止フィルムを組み合わせた表示装置(偏光板組合せY型)では、視野角の拡大が認められ、かつ外光や背景の写りこみが少なく極めて視認性が高いことが分かった(装置B,D,F)。
【0288】
実施例8
〔有機EL表示装置〕
実施例1及び2の反射防止フィルム試料を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
【0289】
実施例9
〔反射防止フィルムの作製〕
{低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)の調製}
上記低屈折率層形成用組成物(D−2)の100gに対して、更に、中空シリカ分散物“CS60−IPA”{粒子サイズ60nm、シエル厚10nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、触媒化成工業(株)製)}を147g添加し、攪拌し低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を調製した。
【0290】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(H−2)の調製}
上記低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)に対して、さらに該塗布液(H−1)の固形分質量当たり1.5質量%のイソホロンジイソシアネートを添加して低屈折率層形成用組成物塗布液(H−2)を調製した。
【0291】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(H−3)の調製}
上記の低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)において、更にシランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}5gを加えたこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物塗布液(H−3)を調製した。
【0292】
{低屈折率層形成用組成物塗布液(H−4)の調製}
実施例3の低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)の100gに対して、更に、中空シリカ分散物“CS60−IPA”{粒子サイズ60nm、シエル厚10nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、触媒化成工業(株)製}を147g添加し、更にシランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}5gを加え低屈折率層形成用組成物(H−4)を調製した。
【0293】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)の調製}
実施例1のハードコート層形成用組成物塗布液(A−1)95.5gに対して、平均粒径1.5μmのシリカ粒子「シーホスターKE−P150」{屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%トルエン分散液90gを、ポリトロン分散機にて10000rpmで30分間分散した後に加え、混合攪拌して、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)を得た。
【0294】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−2)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、有機粘土を1質量部添加した以外は全く同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−2)を調製した。
【0295】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−3)の調製}
上記ハードコート形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、微粒子シリカ“AEROSIL 200”{平均1次粒子12nm、屈折率1.46、日本アエロジル(株)製}を1.0質量部添加した以外は全く同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−3)を調製した。
【0296】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、アセチルプロピオニルセルロースを1.5質量部添加した以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)を調製した。
【0297】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−5)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、アセチルプロピオニルセルロースを2.5質量部添加した以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−5)を調製した。
【0298】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−6)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}15質量部を加えた以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−6)を調製した。
【0299】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−7)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100質量部に対して、下記のゾル液aを35質量部加えた以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−6)を調製した。
【0300】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン120質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート{「ケロープEP−12」ホープ製薬(株)製」3質量部を加えて混合し、次いでイオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させた後、室温まで冷却してゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量1000〜20000の成分が100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0301】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−8)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100gに対して、実施例3の低屈折率層形成用組成物塗布液(F−1)を20g加えた以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−8)を調製した。
【0302】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−9)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)において、該塗布液(J−1)の固形分100gに対して、シランカップリング剤“KBM−403”{3−グリシドキシキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}15gを加えた以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−9)を調製した。
【0303】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−10)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)において、該塗布液(J−4)の固形分100gに対して、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}15gを加えた以外は同様にして、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−10)を調製した。
【0304】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−11)の調製}
上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)において、該塗布液(J−4)の固形分100gに対して、1.5質量%のイソホロンジイソシアネートをを添加してハードコート層形成用組成物塗布液(J−11)を調製した。
【0305】
{ハードコート層形成用組成物塗布液(J−12)の調製}
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液「デソライトZ7404」{JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤含有}285g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}85gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学(株)製}28gを混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
【0306】
この液に対して、平均粒径1.5μmのシリカ粒子「シーホスターKE−P150」{屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%メチルエチルケトン分散液90gを、ポリトロン分散機にて10000rpmで30分間分散した後に加え、混合攪拌し、最後に、前記のフッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g加えた。得られた混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用組成物塗布液(J−12)を調製した。
【0307】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−3)の調製}
石原産業(株)製の“SNS−10M”(ATO 19.7質量%、分散剤10.7%、溶媒メチルエチルケトン)100質量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}を15.0質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5質量部、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}1.0質量部、メトキシプロパノールを30質量部加えて混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が10質量%となるように希釈し帯電防止層用塗布液(AS−3)とした。
【0308】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−4)の調製}
石原産業(株)製の“SNS−10M”(ATO 19.7質量%、分散剤10.7%、溶媒メチルエチルケトン)100質量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}を10.0質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5質量部、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}1.0質量部、メトキシプロパノールを30質量部加えて混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が10質量%となるように希釈し帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−4)とした。
【0309】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−5)の調製}
石原産業(株)製の“SNS−10M”(ATO 19.7質量%、分散剤10.7%、溶媒メチルエチルケトン)100質量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}を5.0質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5質量部、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}0.7質量部、メトキシプロパノールを30質量部加えて混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が10質量%となるように希釈し帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−5)とした。
【0310】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−6)の調製}
石原産業(株)製の“SNS−10M”(ATO 19.7質量%、分散剤10.7%、溶媒メチルエチルケトン)100質量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}を2.0質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5質量部、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}0.4質量部、メトキシプロパノールを30質量部加えて混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が10質量%となるように希釈し帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−6)とした。
【0311】
{帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−7)の調製}
石原産業(株)製の“SNS−10M”(ATO 19.7質量%、分散剤10.7%、溶媒メチルエチルケトン)100質量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}を1.0質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”{3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製}1.5質量部、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}0.4質量部、メトキシプロパノールを30質量部加えて混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度が10質量%となるように希釈し帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−7)とした。
【0312】
比較例9−1
[反射防止フィルム試料901の作製]
(1)ハードコート層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}をロール形態で巻き出して、上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)を、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度35m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量120mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ5.6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
【0313】
(2)低屈折率層の塗設
前記低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を押し出しコーターで、上記で塗設されたハードコート層上に塗布した。80℃で5分間乾燥の後、更に120℃で20分硬化させた。次ぎに、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量200mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成させ巻き取った。このようにして、得られた試料を反射防止フィルム試料901とする。
【0314】
実施例9−1〜14
[反射防止フィルム試料902〜915の作製]
比較例9−1の反射防止フィルム試料901の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)及び低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を用いる代わりに、表6に示すように、前記ハードコート層形成用組成物塗布液と低屈折率層形成用組成物塗布液を、第6表に示すように組み合わせて用いた以外は比較例9−1の試料901と同様にして、反射防止フィルム試料902〜915を作製した。
【0315】
実施例9−15
[反射防止フィルム試料916の作製]
比較例9−1の反射防止フィルム試料901の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)用いる代わりに、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−12)を用いた以外は比較例9−1の試料901と同様にして、ハードコート層を作製した。得られたハードコート層の上に、前記低屈折率層形成用組成物塗布液(H−4)を、押し出しコーターで塗布した。80℃で5分間乾燥の後、更に120℃で20分硬化させた。次ぎに、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量200mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成させ巻き取った。
【0316】
次ぎに、上記の低屈折率層の上に、実施例3で使用した防汚層形成用組成物塗布液(G−1)を塗布し、120℃で1分乾燥して、厚さ8nmの防汚層を作製し、反射防止フィルム試料916を作製した。
【0317】
実施例9−16
[反射防止フィルム試料917の作製]
比較例9−1の反射防止フィルム試料901の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−1)用いる代わりに、ハードコート層形成用組成物塗布液に(J−12)を用いた以外は比較例9−1の試料901と同様にして、ハードコート層を作製した。得られたハードコート層の上に、前記帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−3)を硬化後の膜厚が150nmになるように塗布し、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量120mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。得られた帯電防止層の上に、比較例9−1の試料901に準じて、低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を塗設硬化させ試料917を作製した。
【0318】
実施例9−17〜19、比較例9−2
[反射防止フィルム試料918〜921の作製]
実施例9−16の反射防止フィルム試料917の作製において、帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−3)を用いる代わりに、帯電防止層形成用組成物塗布液を表6に示す様に変更する以外は実施例9−16の試料917の作製と同様にして、反射防止フィルム試料918〜921を作製した。
【0319】
〔反射防止フィルムの評価〕
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。
【0320】
(1)ハードコート層の表面粗さ
低屈折率層を塗設する前のハードコート層のRaを、JIS B−0601に規定する方法により求めた。反射防止フィルム試料917〜921においては、帯電防止層は帯電防止能を有したハードコート層として扱った。
【0321】
(2)オゾン暴露後の水綿棒擦りでの限界荷重
各試料を偏光板に加工後、オゾン10ppm、30℃、60%RHの環境下に192時間(8日)保管した後に、大気中に取り出した。ラビングテスターのこすり先端部に綿棒((株)トーヨー衛材株式会社製 ヘルスリフレ(商品名))を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に荷重をかけて20往復擦り試験を行った。
こすり距離(片道):1cm、こすり速度:約2往復/秒
擦り後の試料の表面の水を乾燥させた後に、膜がはがれているかを目視で観察した。同じ試料で10回試験を行い、5回以上膜はがれが起きるまで、初期荷重100gからスタートし荷重を50gずつ上げて試験を行った。膜はがれが10回の試験中5回未満であった荷重を限界荷重と定義した。膜はがれは、目視で表面の反射状態が変わっているかで判断を行った。限界荷重が大きい方が耐擦傷性に優れることに対応する。
【0322】
反射防止フィルム試料901〜921について、それら試料の各層の形成に使用された各層形成用組成物塗布液、及び得られた反射防止フィルム試料の評価結果を第6表に合わせて示す。
【0323】
【表6】

【0324】
表6に示される結果より、以下のことが明らかである。
本発明において、低屈折率層が塗設されるハードコート層の表面粗さを902〜904のように大きくすることで、オゾン暴露後の耐擦傷性が改良されることが分かる{試料901(比較例9−1)と902〜904(実施例9−1〜9−3)の比較}。また、特に低屈折率層の直下に帯電防止粒子を含有する帯電防止層を有している試料で、本発明の範囲で表面粗さが大きくなるに従い、オゾン暴露後の耐擦傷性が顕著に改良される{試料917〜921(実施例9−16〜9−19)}。
【0325】
またハードコート層が有機シリル化合物及びその誘導体、又は多官能のイソシアネートを含む試料は、表面粗さを大きくすることなく、耐オゾン性の改良効果が著しいことが分かる{試料901(比較例9−1)と906〜916(実施例9−5〜9−15)}。
【0326】
実施例10
〔反射防止フィルムの作製〕
[反射防止フィルム試料1001の作製]
(1)ハードコート層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム「フジタックTAC−TD80U」{富士写真フィルム(株)製}をロール形態で巻き出して、実施例9で使用の上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)を、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度35m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量120mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ5.6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(2)低屈折率層の塗設
実施例9の上記低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を線数200本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で、上記で塗設されたハードコート層上に塗布した。80℃で5分間乾燥の後、更に120℃で20分硬化させた。次に、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量200mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成させ巻き取った。このようにして、得られた試料を反射防止フィルム試料1001とした。
【0327】
[反射防止フィルム試料1002の作製]
試料1001のハードコート層の上に実施例9の上記低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を下記ダイコーターを用いて搬送速度30m/分で塗設した。以後の乾燥条件及び硬化条件は試料1001と同様にした。
【0328】
(ダイコーターの構成)
ダイコーターとしては図2、図3(A)、図4及び図5に示す構成のものを用いた。スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで、スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さ(端部16aの幅)が150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間GL を50μmに設定した。また、減圧チャンバーのサイドプレートとウェブとの隙間、及びバックプレートとウェブとの隙間 はともに200μmとした。
【0329】
[反射防止フィルム試料1003の作製]
(1)ハードコート層の塗設
塗布液を実施例9で使用の上記ハードコート層形成用組成物塗布液(J−6)に変更した以外は試料1001と同様にしてハードコート層を塗設、硬化させた。
(2)低屈折率層の塗設
試料1001と同じ塗布液を試料1001と同一の条件でマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて塗設し、乾燥・硬化させた。
【0330】
[反射防止フィルム試料1004の作製]
試料1003のハードコート層の上に試料1002と同じ低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を、試料1002と同一の条件でダイコーターを用いて塗設し、乾燥・硬化させた。
【0331】
[反射防止フィルム試料1005の作製]
(1)ハードコート層の塗設
試料1001の作製において、ハードコート層形成用組成物塗布液(J−4)用いる代わりに、ハードコート層形成用組成物塗布液に(J−12)を用いた以外は試料1001と同様にして、ハードコート層を作製した。得られたハードコート層の上に、前記帯電防止層形成用組成物塗布液(AS−5)を硬化後の膜厚が150nmになるようにマイクログラビアで塗布し、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量120mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。
(2)低屈折率層の塗設
得られた帯電防止層の上に、試料1001に準じて、低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)をマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて塗設し、乾燥・硬化させ試料1005を作製した。
【0332】
[反射防止フィルム試料1006の作製]
試料1005のハードコート層と帯電防止層を塗り重ねた試料の上に、低屈折率層形成用組成物塗布液(H−1)を、試料1002と同一の条件でダイコーターを用いて塗設し、乾燥・硬化した。
【0333】
このようにしてして得られた試料1001〜1006は、実施例1および実施例2に準じて以下の評価を行った。
(3)表面粗さ
(5)スチールウール耐傷性評価
評価結果を表7に示す。
【0334】
【表7】

【0335】
表7に示される結果より、ダイコーターで塗設した1002、1004及び1006はマイクログラビアロールで塗設した試料に比べて、ヒートサイクル後のスチールウール擦り耐性に優れることが分かる。また、ダイコーターで塗設した試料は塗布面状に優れ、段ムラが少ないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0336】
【図1】本発明において用いられる塗布装置の1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明において好ましく用いられるダイコーターの1実施形態を示す概略断面図である。
【図3】(A)図2のダイコーターの拡大図である。(B)従来のスロットダイを示す概略断面図である。
【図4】本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図5】図4の減圧チャンバーとウェブとの関係を模式的に示す断面図である。
【図6】図4の減圧チャンバーとウェブとの関係を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0337】
W ウェブ
1 支持体フィルムのロール
2 巻き取りロール
100,200,300,400 製膜ユニット
101 塗布部
102 乾燥部
103 硬化装置
10 コーター
11 バックアップロール
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード形状
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a スロット開口部
17 先端リップ
18 ランド(平坦部)
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
UP 上流側リップランド18aのランド長さ
LO 下流側リップランド18bのランド長さ
LO オーバーバイト長さ
L 先端リップ17とウェブWの隙間
30 スロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
B バックプレート40aとウェブWの間の隙間
S サイドプレート40bとウェブWの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に少なくとも低屈折率層形成用組成物の塗設により形成された低屈折率層を含む反射防止膜が設けられた反射防止フィルムにおいて、該低屈折率層形成用組成物が、下記一般式(1)で示される有機シリル化合物の加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有し、且つ反射防止フィルムの最表面の中心線表面粗さRaが0.005〜0.20μmであることを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):R11mSi(X11n
(式中、X11は−OH、ハロゲン原子、−OR12基、又は−OCOR12基を表す。R11はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R12はアルキル基を表す。m+nは4であり、m及びnはそれぞれ正の整数である。)
【請求項2】
低屈折率層が、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.17〜1.40の無機微粒子を含有する請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
最表面の表面自由エネルギーが26mJ/m2以下である請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
反射防止フィルムが、更に、ハードコート層を具備する多層構造フィルムであり、反射防止膜の構成層の少なくとも1層が、平均粒子径0.1〜5μmの透光性粒子を少なくとも1種、透光性樹脂に分散してなる光拡散層であり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光拡散層全固形分中に3〜30質量%含有されている請求項1〜3に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
反射防止フィルムが、更に、導電材料を有する透明帯電防止層を有し、該反射防止フィルムの表面抵抗値logSRが12以下である請求項1〜4記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
ハードコート層が、前記一般式(1)で示される有機シリル化合物、その加水分解物及びその部分縮合物の少なくともいずれかを含有するハードコート層形成用組成物を塗設して形成された請求項4に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
ハードコート層形成用組成物が、多官能のイソシアネート化合物を含有する請求項4又は6に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
ハードコート層の中心線表面粗さRaが0.005〜0.20μmである請求項4、6又は7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
反射防止フィルムの構成層のうち少なくとも1層がチキソトロピー剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
低屈折率層の上層に防汚層を有する請求項1〜9に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
低屈折率層がアルカリ処理された面に設けられている請求項1〜9に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項14】
偏光板を構成する少なくとも1つのフィルムのReレターデーション値が、20以上70nm以下であり、且つRthレターデーション値が70以上400nm以下である請求項13に記載の偏光板。
【請求項15】
10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする請求項13又は14に記載の偏光板。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は請求項13〜15の何れかに記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
【請求項17】
10ppmのオゾンに192時間暴露後の反射防止フィルム表面の水綿棒擦り試験での限界荷重が400g以上であることを特徴とする請求項16に記載の表示装置。
【請求項18】
バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を具備し、
前記塗布工程において、塗布液の塗布は、前記スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、前記ウェブの進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、少なくとも前記低屈折率層の塗布液が塗布されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の反射防止フィルムの製造方法において、乾膜の膜厚が200nm以下となる層を前記塗布工程を用いて製造する反射防止フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−30740(P2006−30740A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211262(P2004−211262)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】