説明

反射防止フィルム

【課題】製造を容易に行うことができ、反射防止フィルムの最表面層に耐擦傷性・耐候性等のハード性能を与え、透明プラスチック基材フィルムの変形に対しても最表面層におけるクラックの発生を防止することができる反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム1上に、直接又は他の層を介して、粒径5nm以上50nm以下、屈折率1.35以上1.45以下である超微粒子を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物を主体とする低屈折率層3が形成されて表面層をなしている反射防止フィルムであって、該低屈折率層3は直接接する下層の屈折率よりも低い屈折率であり、且つ該低屈折率層3は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、前記超微粒子が30重量部以上300重量部以下含有されている反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワープロ、コンピュータ、テレビ、プラズマディスプレイパネル等の各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板の表面、透明プラスチック類サングラスレンズ、度付メガネレンズ、カメラ用ファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラス等の表面の反射防止に優れた反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーブミラー、バックミラー、ゴーグル、窓ガラス、パソコン・ワープロ・プラズマディスプレイ等のディスプレイ、その他種々の商業ディスプレイ等には、ガラスやプラスチック等の透明基板が用いられており、これらの透明基板を通して物体や文字、図形の視覚情報を観察する場合、あるいはミラーでは透明基板を通して反射層からの像を観察する場合に、これらの透明基板の表面が光で反射して内部の視覚情報が見えにくいという問題があった。
【0003】
この様な透明基板の反射を防止する方法としては、従来、ガラスやプラスチックの表面に反射防止塗料を塗布する方法、ガラス・プラスチック基材等の透明基板の表面に膜厚0.1μm程度のMgF2 やSiO2 等の薄膜を蒸着やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法があった。
【0004】
前記ガラス上に形成された膜厚0.1μm程度のMgF2 の薄膜を例にして更に説明する。入射光が薄膜に垂直に入射する場合に、特定の波長をλ0 とし、この波長に対する反射防止膜の屈折率をn0 、反射防止膜の厚みをh、および基板の屈折率をng とすると、反射防止膜が光の反射を100%防止し、光を100%透過するための条件は、次の式(1)および式(2)の関係を満たすことが必要であることは既に知られている(サイエンスライブラリ 物理学=9「光学」70〜72頁、昭和55年,株式会社サイエンス社発行)。
【0005】
【数1】

【0006】
【数2】

【0007】
ここでガラスの屈折率ng =約1.5であり、MgF2 膜の屈折率n0 =1.38、入射光の波長λ0 =5500Å(基準)と既に知られているので、これらの値を前記式(2)に代入すると、反射防止膜の厚みhは約0.1μmが最適であると計算される。
【0008】
前記式(1)によれば、光の反射を100%防止するためには、上層塗膜の屈折率がその下層塗膜の屈折率の約平方根の値になるような材料を選択すればよいことが分かる。このような原理を利用して、上層塗膜の屈折率をその下層塗膜の屈折率よりも若干低い値となるようにして、光の反射防止を行うことが従来行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガラス・プラスチック基材等の透明基板の表面に膜厚0.1μm程度のMgF2 やSiO2 等の薄膜を蒸着、スパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する前記従来の方法、プラスチックレンズ等のプラスチック製品表面に電離放射線硬化型樹脂を塗工してハードコート層とし、得られたハードコート層上にMgF2 やSiO2 等の薄膜を形成する従来の方法等によって得られる反射防止フィルムにおいては、その製造に関して、複雑なプロセス、大掛かりな装置等が必要であり、生産性が悪いという欠点があった。また、得られた反射防止フィルムにおける最表面の耐摩耗性・耐候性等に欠けるという欠点があった。
【0010】
また、表面に防汚性を付与するためには膜の表面エネルギーを下げる必要があるため、気相法で最表面の薄膜を形成した場合には、形成された薄膜に対してフッ素系等のガスを用いて再度、真空内で表面処理を行う必要があった。
【0011】
更に、熱や湿気が上記従来の反射防止フィルムにかかった場合、透明基板がプラスチックである場合は特に、プラスチックの変形に最表面の薄膜が追随できず、クラックが入ってしまうという問題があった。
【0012】
一方、透明プラスチックフィルム上の最表面に反射防止層を形成した前記従来の反射防止フィルムは、前記したプラスチック製品の場合と同様に低屈折率層の厚みが約0.1μm前後と薄いため、形成された反射防止フィルムはハード性能に劣り、傷つきやすいという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の第一番目の目的は、製造を容易に行うことができ、反射防止フィルムの最表面層に耐擦傷性・耐候性等のハード性能を与え、透明プラスチック基材フィルムの変形に対しても最表面層におけるクラックの発生を防止することができる反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明の第二番目の目的は、前記第一番目の目的に加えて、表面に真空処理せずに防汚処理を施すことができる反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した第一番目の目的を達成することができる、本発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上に、直接又は他の層を介して、粒径5nm以上50nm以下、屈折率1.35以上1.45以下である超微粒子を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物を主体とする低屈折率層が形成されて表面層をなしている反射防止フィルムであって、該低屈折率層は直接接する下層の屈折率よりも低い屈折率であり、且つ該低屈折率層は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、前記超微粒子が30重量部以上300重量部以下含有されていることを特徴とする。
【0016】
低屈折率層を構成する電離放射線硬化型樹脂に含有させる超微粒子の粒径が5nm未満だと超微粒子の作製上困難となるので好ましくはなく、50nmを越えると、塗膜の透明性が損なわれ白化現象が起こるので好ましくない。また該超微粒子の屈折率が1.35未満だと超微粒子の材料として適切なものがなく、また1.46を越えると、低屈折率層の直下の層の屈折率よりも屈折率を低く維持することが困難なので好ましくない。
【0017】
前記低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、超微粒子が30重量未満であると効果が発現しなく、300重量部を越えると塗膜の強度が低下するので好ましくない。
【0018】
低屈折率層における樹脂成分中、電離放射線硬化型樹脂の割合は少なくとも25重量%以上であることが好ましい。
【0019】
前記した第二番目の目的を達成することができる、本発明の反射防止フィルムは、前記第一番目の目的を達成することができる反射防止フィルムの構成に加えて、最表面層である低屈折率層に更に界面活性剤が添加されてなることを特徴とする。界面活性剤を最表面層である低屈折率層に含有させることにより、反射防止フィルムの最表面の膜の自由エネルギーを下げることができ、そのため防汚効果が生ずる。
【0020】
前記した特徴を有する本発明の反射防止フィルムの層構成を達成する手段は、種々の方法で達成できるが、代表的には、例えば、次のタイプI〜タイプIII の三つのタイプを例示することができる。しかしながら、本発明の反射防止フィルムはこれらの代表例に限定されない。なお、後記する各タイプI〜III の反射防止フィルムの最表面に形成されている低屈折率層は、各タイプ共、前記した屈折率の超微粒子、前記した組成の電離放射線硬化型樹脂のとおりとなっており、且つ該低屈折率層は、該低屈折率層が直接接する下層の屈折率よりも低い屈折率層を有している。
【0021】
本発明のタイプIの反射防止フィルムは、低屈折率層を、他の層(例えば、接着剤層)を介して、透明基材フィルムにラミネートすることによって得ることができる。該タイプIの反射防止フィルムの製造方法を離型フィルムを用いた製造方法により説明すれば、例えば、離型フィルム上に、後記する他の層の屈折率より低い屈折率の低屈折率層を形成し、離型フィルム上に形成された層に対して他の層を介して透明基材フィルムとラミネートし、得られたラミネート物を硬化させた後、前記離型フィルムを剥離する方法によって行うことができる。
【0022】
本発明のタイプIIの反射防止フィルムは、後記する接着剤層の屈折率以上の屈折率を有する高屈折率層と該高屈折率層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層からなる積層体を形成し、この積層体を、接着剤層を介して、前記高屈折率層を内側にして透明基材フィルムにラミネートすることによって得ることができる。該タイプIIの反射防止フィルムの製造方法を離型フィルムを用いた製造方法により説明すれば、例えば、離型フィルム上に、後記する高屈折率層の屈折率より低い屈折率の低屈折率層を形成し、得られた低屈折率層上に、後記する接着剤層の屈折率以上の屈折率を有する高屈折率層を形成し、離型フィルム上に形成された層に対して接着剤層を介して透明基材フィルムとラミネートし、得られたラミネート物を硬化させた後、前記離型フィルムを剥離する方法によって行うことができる。
【0023】
本発明のタイプIIの反射防止フィルムの別の製造方法は、離型フィルム上に、後記する接着剤層の屈折率以上の屈折率を有する高屈折率層を形成し、離型フィルム上に形成された層に対して、接着剤層を介して透明基材フィルムとラミネートし、得られたラミネート物を硬化させた後、前記離型フィルムを剥離し、前記透明基材フィルム上の高屈折率層上に、該高屈折率層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を形成する方法によって行うことができる。
【0024】
本発明のタイプIII の反射防止フィルムは、ハードコート層と、該ハードコート層上に設けられた該ハードコート層の屈折率より高い屈折率の高屈折率層と、該高屈折率層上に設けられた該高屈折率層の屈折率より低い屈折率の前記組成的特徴を有する低屈折率層とからなる積層体を形成し、この積層体を、接着剤層を介して、前記ハードコート層側を内側にして透明基材フィルムにラミネートすることによって得ることができる。該タイプIII の反射防止フィルムの製造方法を離型フィルムを用いた製造方法により説明すれば、例えば、離型フィルム上に、後記する接着剤層の屈折率より低い屈折率の低屈折率層を形成し、得られた低屈折率層上に、接着剤層の屈折率よりも高い屈折率の高屈折率層を形成し、得られた高屈折率層上に、ハードコート層を形成し、離型フィルム上に形成された層に対して接着剤層を介して透明基材フィルムとラミネートし、得られたラミネート物を硬化させた後、前記離型フィルムを剥離する方法によって行うことができる。
【0025】
本発明のタイプIII の反射防止フィルムの別の製造方法は、離型フィルム上に、後記する接着剤層の屈折率よりも高い屈折率の高屈折率層を形成し、得られた高屈折率層上に、ハードコート層を形成し、離型フィルム上に形成された層に対して接着剤層を介して透明基材フィルムとラミネートし、得られたラミネート物を硬化させた後、前記離型フィルムを剥離し、前記透明基材フィルム上の高屈折率層上に、該高屈折率層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を形成する方法によって行うことができる。なお、タイプIII の反射防止フィルムにおいてはハードコート層は、低屈折率層と基材フィルム間にある任意の層に設けることができる。
【0026】
前記本発明の反射防止フィルムの製造方法において、低屈折率層を離型フィルム側から透明基材フィルム側に転写させる場合、その低屈折率層に含有される電離放射線硬化型樹脂の硬化のタイミングは、透明基材フィルムとのラミネート前、或いは後の何れでも行うことができる。表面に微細な凹凸を有する離型シートを用いて上記各転写処理を行った場合には、得られた低屈折率層の表面に微細な凹凸が付与されることになり、反射防止フィルムにさらに防眩効果も付与することができる。
【0027】
本発明の反射防止フィルムにおける前記高屈折率層は、それ自身がハード性能を有してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の反射防止フィルムは、最表面層である低屈折率層に耐擦傷性・耐候性等のハード性能が与えられているので、反射防止フィルム全体として耐擦傷性、耐候性に優れたものとなる。
【0029】
本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層が無機物のみから製造されたものではなく、電離放射線硬化型樹脂組成物の塗布により形成されているので、透明基材フィルムの変形に対して、最表面層におけるクラックの発生を防止することができる。
【0030】
本発明の反射防止フィルムは、その形成方法が塗布により得られるので、スパッタリング、蒸着、プラズマCVD法等の真空法に比べて、反射防止フィルムの製造を容易に行うことができる。
【0031】
本発明の反射防止フィルムは、前記各効果に加えて、表面に真空処理を行わない比較的簡単な手段により、防汚機能を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
【0033】
反射防止フィルム
図1は本発明のタイプIの反射防止フィルムを示し、1は透明基材フィルムであり、この透明基材フィルム1上に接着剤層2を介して、低屈折率層3が形成されている。図2は本発明のタイプIIの反射防止フィルムを示し、タイプIの反射防止フィルムにおける接着剤層2と低屈折率層3との間に、さらに高屈折率層4が設けられている。図3は本発明のタイプIII の反射防止フィルムを示し、タイプIIの反射防止フィルムにおける接着剤層2と高屈折率層4との間に、さらにハードコート層5が設けられている。
【0034】
反射防止フィルムの製造方法
(1)タイプIの反射防止フィルムの製造方法
図4は本発明のタイプIの反射防止フィルムの製造方法の一例を示すプロセス図である。
【0035】
図4(a)は、離型フィルム6上に、低屈折率層3を形成した状態を示す。低屈折率層3の形成は、粒径5nm以上50nm以下、屈折率1.35以上1.45以下の超微粒子が含有されている電離放射線硬化型樹脂組成物であって、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して超微粒子が30重量部以上300重量部以下含有された電離放射線硬化型樹脂組成物を用いて塗布して形成する。
【0036】
図4(b)は、前記低屈折率層3を接着剤からなる接着剤層2を介して透明基材フィルム1とラミネートしようとする状態を示す。この接着剤層2の形成は接着剤を透明基材フィルム1側或いは低屈折率層3側に塗布により形成することができる。接着剤はそのままで、又は溶媒に溶解或いは分散させて使用する。
【0037】
図4(c)は、ラミネート物から離型フィルム6を剥離して、離型フィルム6上の塗膜を透明基材フィルム1側に転写している状態を示し、転写されたフィルムが本発明のタイプIの反射防止フィルムとなる。
【0038】
(2)タイプIIの反射防止フィルムの製造方法
図5は本発明のタイプIIの反射防止フィルムの一番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。図5(a)は、離型フィルム6上に、前記タイプIの反射防止フィルムの製造方法で用いたものと同じ電離放射線硬化型樹脂組成物を塗布して低屈折率層3を形成し、さらに得られた低屈折率層3上に高屈折率層4を形成した状態を示す。
【0039】
図5(b)は、離型フィルム6上に前記工程で形成された各層を接着剤からなる接着剤層2を介して透明基材フィルム1とラミネートしようとする状態を示す。この接着剤層2の形成は接着剤を透明基材フィルム1側或いは高屈折率層4側に塗布して形成することができる。接着剤はそのまま或いは溶媒に溶解、分散させて使用する。
【0040】
図5(c)は、ラミネート物から離型フィルム6を剥離して離型フィルム6上の塗膜を透明基材フィルム1側に転写している状態を示し、転写されたフィルムが本発明のタイプIIの反射防止フィルムとなる。
【0041】
図6は本発明のタイプIIの反射防止フィルムの二番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。図6(a)は、離型フィルム6上に、高屈折率層4を形成した状態を示す。
【0042】
図6(b)は、前記高屈折率層4に対して接着剤からなる接着剤層2を介して透明基材フィルム1とラミネートしようとする状態を示す。この接着剤層2の形成は接着剤を透明基材フィルム1側或いは高屈折率層4側に塗布により形成することができる。接着剤はそのまま或いは溶媒に溶解、分散させて使用する。
【0043】
図6(c)は、ラミネート物から離型フィルム6を剥離して、離型フィルム6上の塗膜を透明基材フィルム1側に転写している状態を示す。
【0044】
図6(d)は、露出された高屈折率層4上に、前記タイプIの反射防止フィルムの製造方法で用いたものと同じ電離放射線硬化型樹脂組成物を塗布して低屈折率層3を形成した状態を示し、本発明のタイプIIの反射防止フィルムとなる。
【0045】
(3)タイプIII の反射防止フィルムの製造方法
図7は本発明のタイプIII の反射防止フィルムの一番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。図7(a)は、離型フィルム6上に、前記タイプIの反射防止フィルムの製造方法で用いたものと同じ電離放射線硬化型樹脂組成物を塗布して低屈折率層3を形成し、さらに得られた低屈折率層3上に高屈折率層4を形成し、さらにその上にハードコート層5を形成した状態を示す。
【0046】
図7(b)は、離型フィルム6上に前記工程で形成された各層を接着剤からなる接着剤層2を介して透明基材フィルム1とラミネートしようとする状態を示す。この接着剤層2の形成は接着剤を透明基材フィルム1側或いはハードコート層5側に塗布して形成することができる。接着剤はそのまま或いは溶媒に溶解、分散させて使用する。
【0047】
図7(c)は、ラミネート物から離型フィルム6を剥離して離型フィルム6上の塗膜を透明基材フィルム1側に転写している状態を示し、転写されたフィルムが本発明のタイプIII の反射防止フィルムとなる。
【0048】
図8は本発明のタイプIII の反射防止フィルムの二番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。図8(a)は、離型フィルム6上に、高屈折率層4を形成し、さらにその上にハードコート層5を形成した状態を示す。
【0049】
図8(b)は、離型フィルム6上に前記工程で形成された各層を接着剤からなる接着剤層2を介して透明基材フィルム1とラミネートしようとする状態を示す。この接着剤層2の形成は接着剤を透明基材フィルム1側或いはハードコート層5側に塗布により形成することができる。接着剤はそのまま或いは溶媒に溶解、分散させて使用する。
【0050】
図8(c)は、ラミネート物から離型フィルム6を剥離して、離型フィルム6上の塗膜を透明基材フィルム1側に転写している状態を示す。図8(d)は、露出された高屈折率層4上に、前記タイプIの反射防止フィルムの製造方法で用いたものと同じ電離放射線硬化型樹脂組成物を塗布して低屈折率層3を形成した状態を示し、本発明のタイプIII の反射防止フィルムとなる。
【0051】
上記の本発明の反射防止フィルムの各製造方法において、接着剤としてウレタン系の接着剤を用いた場合、ウレタン系接着剤は溶液状態で塗工し、溶媒を除去した後、ラミネーションを行う時点では粘着性を示しているため、ラミネート直後でもある程度の接着強度を有するが、ラミネーションを行うロールを40〜80℃に加温することによってラミネート直後の接着強度をより向上させることができるので好ましい。また、反射防止フィルムの透明基材フィルムとハードコート層間を十分な接着強度とするには、接着剤層は乾燥厚みで0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmであることが必要である。
【0052】
離型フィルム
一般的にシート上にシリコン、フッ素、アクリル−メラミンなど離型処理を施したもの、または、未処理のものが使用される。その表面は凹凸を有していてもよく、この場合、最終製品の表面に凹凸が形成されるので、得られる反射防止フィルムに更に防眩効果を付与することができる。
【0053】
透明基材フィルム
反射防止フィルムに適した透明基材フィルムには、透明性のあるフィルムであればよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリルフィルム等が使用できるが、特に、トリアセチルセルロースフィルム、及び一軸延伸ポリエステルが透明性に優れ、光学的に異方性が無い点で好適に用いられる。その厚みは、通常は8μm〜1000μm程度のものが好適に用いられる。
【0054】
低屈折率層
低屈折率層は、少なくとも低屈折率層に直接接する下層(タイプI では接着剤層、タイプIIとタイプIII では高屈折率層)の屈折率よりも低いことが必要である。低屈折率層は粒径5nm以上50nm以下、屈折率1.35以上1.45以下である超微粒子が含有されている電離放射線硬化型樹脂層からなり、該超微粒子が添加された電離放射線硬化型樹脂を主体とする樹脂組成物の塗布により形成される。
【0055】
低屈折率層の厚みは、反射防止効果を発揮させるためには約0.1μm前後の薄膜で形成する必要がある。その理由は、低屈折率層の屈折率は前記式(1)又は式(2)に示した関係を有することが反射防止効果を高める上で望ましいからである。
【0056】
前記屈折率及び粒径の超微粒子としては、例えば、LiF(屈折率1.4)、MgF2 (屈折率1.4)、3NaF・AlF3 (屈折率1.4)、AlF3 (屈折率1.4)、Na3 AlF6 (氷晶石、屈折率1.33)、SiOX (x:1.50≦x≦2.00)(屈折率1.35〜1.48)等の超微粒子が使用される。前記屈折率及び粒径の超微粒子を用いた低屈折率層の形成方法は、該超微粒子を電離放射線硬化型樹脂を主体とする樹脂に添加したものを塗布し単層又は多層の塗膜を形成して行うことができる。
【0057】
また、電離放射線硬化型樹脂を主体とする樹脂の屈折率を調整する目的で、電離放射線硬化型樹脂に対して、低屈折率熱可塑性ポリマー等の低屈折率有機物が添加されてもよい。このような低屈折率熱可塑性ポリマーには、フッ素原子の導入されたフッ素系ポリマーがその屈折率が1.45以下と低いので好ましい。主鎖がフッ素変性されたポリマーには、例えば、PTFE、PVDF、PVFなどが挙げられ、またフッ素を有するモノマーには、例えば、CF2 =CF2 、CH2 =CF2 、CF2 =CHFなどが挙げられ、またこれらモノマーを重合したもの、これらをブロックポリマー化したものも使用できる。
【0058】
側鎖がフッ素変性されたポリマーについては、溶剤可溶な主鎖に対してグラフトポリマー化したものが挙げられるが、特に、溶剤が使用できる樹脂としてその取扱いが容易であることからポリフッ化ビニリデン(屈折率n=1.40)が好ましい低屈折率熱可塑性ポリマーの例として挙げられる。低屈折率熱可塑性ポリマーとしてこのポリフッ化ビニリデンを用いた場合には、低屈折率層の屈折率はほぼ1.40程度となるが、さらに低屈折率層の屈折率を低くするためにはトリフルオロエチルアクリレート(屈折率n=1.32)のような低屈折率アクリレートを、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して10重量部から300重量部、好ましくは100重量部から200重量部添加してもよい。
【0059】
なお、このトリフルオロエチルアクリレートは単官能型であり、そのため低屈折率層の膜強度が十分ではない場合があるので、さらに多官能アクリレート、例えば、電離放射線硬化型樹脂であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(略号:DPHA,4官能型)を添加することにより強度が上がる。このDPHAによる膜強度は添加量が多いほど高いが、低屈折率層の屈折率を低くする観点からはその添加量は少ない方がよく、1〜50重量部、好ましくは5〜20重量部添加することが推奨される。
【0060】
前記低屈折率層に使用される電離放射線硬化型樹脂には、次のものが挙げられる。好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0061】
特に好適には、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートの混合物が用いられる。その理由は、ポリエステルアクリレートは塗膜が非常に硬くてハードコートを得るのに適しているが、ポリエステルアクリレート単独ではその塗膜は衝撃性が低く、脆くなるので、塗膜に耐衝撃性及び柔軟性を与えるためにポリウレタンアクリレートを併用する。ポリエステルアクリレート100重量部に対するポリウレタンアクリレートの配合割合は30重量部以下とする。この値を越えると塗膜が柔らかすぎてハード性がなくなってしまうからである。
【0062】
さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、この中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0063】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の硬化には、通常の電離放射線硬化型樹脂の硬化方法、即ち、電子線または紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合にはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0064】
高屈折率層
さらに反射防止性能を向上させるため、低屈折率層の屈折率よりも高い屈折率の高屈折率層を低屈折率層の下層に形成することが好ましい。高屈折率層の厚みは約0.1μm前後の薄膜で形成すると反射防止効果におてい有利である。高屈折率層の形成方法には、例えば、後記する高屈折率を有する材料の薄膜を真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD法等の薄膜形成方法により形成してもよく、或いは、高屈折率層を形成するためのバインダー樹脂中に、高屈折率の金属や金属酸化物を添加した樹脂組成物を塗布することにより、高屈折率層を容易に形成することができる。前記塗布による成膜にはバインダー樹脂中に、下記に列挙する高屈折率を有する微粒子を分散して用いてもよい。或いは、前記高屈折率層に使用されるバインダー樹脂自体に高屈折率成分の分子や原子を含んだ樹脂を用いてもよい。即ち、
1)高屈折率層用のバインダー樹脂に、高屈折率を有する微粒子を分散させたものを用いる。
2)高屈折率層用のバインダー樹脂を構成する分子或いは原子として、屈折率の高い成分を多く導入した原子を含んだ屈折率の高い樹脂を用いる。
【0065】
前記高屈折率を有する材料としては、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO2 (屈折率2.3〜2.7)、CeO2 (屈折率1.95)、Sb2 5 (屈折率1.71)、SnO2 、ITO(屈折率1.95)、Y2 3 (屈折率1.87)、La2 3 (屈折率1.95)、ZrO2 (屈折率2.05)、Al2 3 (屈折率1.63)等が挙げられる。
【0066】
また、前記屈折率を向上させる成分の分子及び原子としては、芳香族環、F以外のハロゲン原子、S、N、Pの原子等が挙げられる。
【0067】
ハードコート層
本明細書において、「ハードコート層」或いは「ハード性を有する」とは、JIS K5400で示される鉛筆硬度試験で、H以上の硬度を示すものをいう。ハードコート層を構成する材料は、無機材料、有機材料問わず何でも用いることができる。無機材料をハードコート層材料とする場合には、例えば、ゾル−ゲル法によって複合酸化物の膜を形成してもよい。ハードコート層材料が有機材料の場合には、バインダー樹脂には、透明性のあるものであればどのような樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂等)でも使用することができる。ハード性能を付与するためには、ハードコート層の厚みは0.5μm以上、好ましくは、3μm以上とすることにより、硬度を維持することができ、反射防止フィルムにハード性能を付与することができる。
【0068】
また、ハードコート層の硬度をより向上させるために、ハードコート層に使用するバインダー樹脂には、反応硬化型樹脂、即ち、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。生産性、エネルギー効率、離型フィルムの熱ダメージ等を考慮すると、電離放射線硬化型樹脂をハードコート層のバインダー樹脂に用いることが最適である。前記電離放射線硬化型樹脂には、前記低屈折率層に使用した場合と同様な電離放射線硬化型樹脂を用いることができる。
【0069】
前記熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が使用され、これらの樹脂に必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えて使用する。
【0070】
ハードコート層に、特に、屈曲性を付与するためには、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し溶剤乾燥型樹脂を1重量部以上100重量部以下含ませてもよい。前記溶剤乾燥型樹脂には、主として熱可塑性樹脂が用いられる。電離放射線硬化型樹脂に添加する溶剤乾燥型熱可塑性樹脂の種類は通常用いられるものが使用されるが、特に、電離放射線硬化型樹脂にポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートの混合物を使用した場合には、使用する溶剤乾燥型樹脂にはポリメタクリル酸メチルアクリレート又はポリメタクリル酸ブチルアクリレートが塗膜の硬度を高く保つことができる。しかも、この場合、主たる電離放射線硬化型樹脂との屈折率が近いので塗膜の透明性を損なわず、透明性、特に、低ヘイズ値、高透過率、また相溶性の点において有利である。
【0071】
ハードコート層にバインダー樹脂として電離放射線硬化型樹脂が使用される場合には、その硬化方法は、前記の低屈折率層の硬化方法と同様に行うことができる。
【0072】
反射防止性能の向上のためには、透明基材フィルムよりもハードコート層の屈折率が高いことが好ましい。ハードコート層を高屈折率とするためには、前記高屈折率層で述べた手法により行うことができる。また、各層間の界面の反射を防止するためには、高屈折率層の屈折率をハードコート層の屈折率よりも高い屈折率とすることが好ましい。
【0073】
接着剤層
低屈折率層と透明基材フィルムの間に強固な着強を形成し、かつ、反射防止フィルムの十分な硬度や耐久性を付与するためには、接着剤の架橋密度を上げ、層間の密着性を高め、硬度の高い接着剤層とすることが重要であり、そのためには、硬化後のガラス転移温度が20℃以上となる接着剤を用いることが望ましい。このようなガラス転移温度を持つ接着剤は、ウレタン系接着剤を挙げることができ、特に、ウレタン系接着剤中にイソシアネート基を有する化合物を10%以上含有させるか、或いは接着剤中に電離放射線硬化型樹脂を含有させることによって調製することができる。接着剤中に電離放射線硬化型樹脂を含有させる場合には、その電離放射線硬化型樹脂の添加量は、ラミネート時に要する初期タックが失われない範囲とすることが重要である。
【0074】
このようにするためには、接着剤に含有される電離放射線硬化型樹脂の量が全体の10〜90%であることが望ましく、さらに望ましくは30〜70%である。その理由は、電離放射線硬化型樹脂の量が10%未満であると、架橋密度を十分に上げられず、耐久性が付与できず、硬化後のガラス転移温度も20℃以上にならないからである。また、その量が90%を越えるとラミネート時のTAC性(粘性)が失われ、貼り合わせが不可となるからであり、さらに基材との層間密着性も悪くなり、所望の接着性が得られなくなるからである。
【0075】
接着剤層に使用される接着剤として、特に、ウレタン系接着剤、例えば、湿気硬化型(1液型)、熱硬化型(2液型)等の反応硬化型ウレタン系接着剤を用いることが好ましい。即ち、湿気硬化型では、ポリイソシアネート化合物のオリゴマー、プレポリマー、熱硬化型では、ポリイソシアネート化合物のモノマー、オリゴマー、プレポリマーと、ポリオール化合物のオリゴマー、プレポリマーを混合して用いることができる。これらの反応硬化型ウレタン系接着剤を用いる場合、ラミネートの後に、室温から80℃程度の温度下でエージング処理を施すことが、反射防止フィルムに熱的影響を与えないために望ましい。
【0076】
透明基材フィルムにOH基が含まれている場合、例えば、アルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルム等の場合、ウレタン系接着剤中のイソシアネート基が透明基材フィルム等とのOH基と反応し、強固な接着となる。
【0077】
本発明において接着剤に含有させることができるイソシアネート基を有する化合物には、トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’−トリレン−4,4’−イソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタンp,p' ,p" −トリイソシアネート(T.M)、2,4−トリレンダイマー(TT)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオホスフェート、クルード(MDI)、TDI三量体、ジシクロヘキサメタン4,4’−ジイソシアネート(HMDI)、水素添加TDI(HTDI)、メタキシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサヒドロメタキシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルプロパン−1−メチル−2−イソシアノ−4−カババメート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、3,3' −ジメトキシ4,4’−ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルエーテル2,4,1’−トリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート(MXDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PAPI)等が挙げられる。
【0078】
本発明で使用される接着剤に含有させることができる電離放射線硬化型樹脂には、前記低屈折率層に使用されるような電離放射線硬化型樹脂が使用できる。
【0079】
界面活性剤
低屈折率層中に含有することができる界面活性剤には、表面層の防汚性を付与する目的には、フッ素系ポリマー、ケイ素化合物が挙げられるが、特に塗膜内部での安定性を考慮すると、フッ素系ポリマーが好ましい。
【0080】
偏光板及び液晶表示装置
本発明の反射防止フィルムの下面には、粘着剤が塗布されていてもよく、この反射防止フィルムは反射防止すべき対象物、例えば、偏光素子に貼着して偏光板とすることができる。
【0081】
この偏光素子には、よう素又は染料により染色し、延伸してなるポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を用いることができる。このラミネート処理にあたって接着性を増すため及び静電防止のために、反射防止フィルムの透明基材フィルムが例えば、トリアセチルセルロースフィルムである場合には、トリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を行う。このケン化処理はトリアセチルセルロースフィルムにハードコートを施す前または後のどちらでもよい。
【0082】
図9に本発明の反射防止フィルムが使用された偏光板の一例を示す。図中11は反射防止性を有する本発明の反射防止フィルムであり、トリアセチルセルロースフィルム(略:TACフィルム、本発明でいう透明基材フィルムに相当する)7/接着剤層2/高屈折率層4/低屈折率層3からなる層構成となっている。該反射防止フィルム11が偏光素子8上にラミネートされており、一方、偏光素子8の他面にはTACフィルム9がラミネートされている。また偏光素子8の両面に本発明の反射防止フィルム11がラミネートされてもよい。
【0083】
図10に本発明の反射防止フィルムが使用された液晶表示装置の一例を示す。液晶表示素子10上に、図9に示した偏光板、即ち、TACフィルム9/偏光素子8/反射防止フィルム11からなる層構成の偏光板がラミネートされており、また液晶表示素子10の他方の面には、TACフィルム9/偏光素子8/TACフィルム9からなる層構成の偏光板がラミネートされている。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入される。
【実施例】
【0084】
〔実施例1〕
低屈折率超微粒子として住友セメント(株)製のMgF2 超微粒子分散液(粒径20nm,屈折率1.38)を30重量部、日本合成ゴム(株)製のフッ素系ポリマー(主鎖フッ素変性ポリマー n=1.39、商品名:KZ5002)を70重量部、DPHA(日本化薬製)を30重量部、フッ素系高分子界面活性剤(日本油脂製モディパーF200:商品名)を10重量部を混合し、メチルイソブチルケトン溶剤で固型分5%に調整して低屈折率層用樹脂組成物とした。
【0085】
一方、住友セメント(株)製高屈折率超微粒子(ZrO2 :n=1.90)を40重量部、三菱油化製酸無水物変性アクリレート(HN)を10重量部混合した溶液をハードコート層用樹脂組成物とし、該ハードコート層用樹脂組成物を5μm/dryになるように80μのTAC(トリアセチルセルロース)フィルム上に形成し、塗膜に対して電子線を10Mrad照射し高屈折率のハードコート層とした。このハードコート層上に前記の低屈折率樹脂を膜厚100nm/dryになるように塗工し、得られた塗膜に対して電子線を5Mrad照射し樹脂を硬化させた。
【0086】
かくして得られた反射防止フィルムの全光線透過率は95%(TACフィルム自体は92%)、鉛筆硬度は2Hであり、反射防止効果及び高度とも優れていた。
【0087】
〔実施例2〕
離型フィルムとしてアクリル・メラミン処理を施した厚さ50μmのポリエステルフィルム(MC−19:商品名、麗光(株)製)を用意し、該離型フィルム上に、ZrO2 超微粒子トルエン分散液(住友大阪セメント(株)製,粒径20nm)200重量部と、ポリエステルアクリレート(HN−5A:商品名,三菱化学(株)製)100重量部を混合してなる高屈折率ハードコート層用樹脂を膜厚4μm/dryとなるように塗工した。得られた塗膜上に電子線を5Mrad照射し塗膜を硬化した。その塗膜上にウレタン系接着剤(L660:商品名,DIC社製)を膜厚5μm/dryとなるように塗工し、溶媒を乾燥した。
【0088】
得られた塗膜の形成された離型フィルムと、別に用意したケン化処理が施されたトリアセチルセルロースフィルム(FT−UV−80:商品名、富士写真フィルム(株)製、厚さ80μm)とを前記離型フィルム上の塗膜面を内側にしてラミネートし、40℃で3日間エージングした。その後、離型フィルムを剥離し、剥離した面へ、MgF2 超微粒子トルエン分散液(住友大阪セメント(株)製,粒径10nm)を100重量部とDPHA(東亜合成(株)製)100重量部を混合した溶液を膜厚100nm/dryとなるように塗工し、次いで得られた塗膜に電子線を5Mrad照射して本実施例2の反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムは鉛筆硬度2Hであり、その光学特性は、550nmの光に対する反射率が1.5%、ヘイズ0.4%であった。これに対して、上記の反射防止処理を行わない、未処理の前記ケン化処理済トリアセチルセルロースフィルムの反射率は4.0%であった。この結果を下記の表1に示す。
【0089】
〔比較例1〜4〕
前記実施例2の反射防止フィルムの製造方法において、MgF2 の粒径及びその配合を下記の表1に示すものに変えた以外は同じようにして、比較例1〜4の反射防止フィルムを得た。また、得られた反射防止フィルムの、反射率、ヘイズ、鉛筆硬度を下記の表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1によれば、本発明により得られた反射防止フィルムは、比較例1〜4のものよりも硬度が高く、また反射防止効果に優れていることがわかる。
【0092】
〔実施例3〕
前記実施例2で用いたものと同じ離型フィルム上に、前記実施例2で用いたものと同じZrO2 超微粒子トルエン分散液45重量部と同じくポリエステルアクリレート1重量部を混合してなるハードコート層用樹脂を膜厚75nm/dryとなるように塗工し、次いで電子線を2Mrad照射した。その塗膜上にポリエステルアクリレート(EXG−12:商品名,大日精化(株)製)を4μm/dryとなるように塗工し、次いで得られた塗膜上に、前記実施例2で用いたものと同じウレタン系接着剤を膜厚5μ/dryとなるように塗工した。その後、前記実施例2と同じようにして、ケン化処理済フィルムとラミネートし、エージングし、離型フィルムを剥離した後、MgF2 超微粒子トルエン分散液を塗工し、電子線を照射して本実施例3の反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの光学特性は、550nmの光に対する反射率が0.2%であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の反射防止フィルムは、ワープロ、コンピュータ、テレビ、プラズマディスプレイパネル等の各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板の表面、透明プラスチック類サングラスレンズ、度付メガネレンズ、カメラ用ファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラス等の表面の反射防止に優れた反射防止フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のタイプIの反射防止フィルムを示す。
【図2】本発明のタイプIIの反射防止フィルムを示す。
【図3】本発明のタイプIII の反射防止フィルムを示す。
【図4】本発明のタイプIの反射防止フィルムの製造方法の一例を示プロセス図である。
【図5】本発明のタイプIIの反射防止フィルムの一番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。
【図6】本発明のタイプIIの反射防止フィルムの二番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。
【図7】本発明のタイプIII の反射防止フィルムの一番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。
【図8】本発明のタイプIII の反射防止フィルムの二番目の製造方法の一例を示すプロセス図である。
【図9】本発明の反射防止フィルムが使用された偏光板の一例を示す。
【図10】本発明の反射防止フィルムが使用された液晶表示装置の一例を示す。
【符号の説明】
【0095】
1 透明基材フィルム
2 接着剤層
3 低屈折率層
4 高屈折率層
5 ハードコート層
6 離型フィルム
7,9 TACフィルム
8 偏光素子
10 液晶表示素子
11 反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム上に、直接又は他の層を介して、粒径5nm以上50nm以下、屈折率1.35以上1.45以下である超微粒子を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物を主体とする低屈折率層が形成されて表面層をなしている反射防止フィルムであって、該低屈折率層は直接接する下層の屈折率よりも低い屈折率であり、且つ該低屈折率層は電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、前記超微粒子が30重量部以上300重量部以下含有されていることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層は、界面活性剤が添加されてなることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
該反射防止フィルムにおいて、表面が微細な凹凸を有することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
偏光素子に適用されるためのものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の反射防止フィルムが偏光素子に貼付されてなることを特徴とする偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−154837(P2006−154837A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359390(P2005−359390)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【分割の表示】特願平7−331052の分割
【原出願日】平成7年11月27日(1995.11.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】