説明

反射防止膜及びその製造方法

【課題】優れた光の反射防止性能や優れた光の透過性能を有する反射防止膜に要求される表面形状と物性を見出し、かかる特定の表面形状と物性を有する反射防止膜とその反射防止膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム材料の表面を、機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後、該アルミニウム材料の表面に、陽極酸化と陽極酸化被膜のエッチングとの組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製し、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって得られ、その表面に平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在し、かつヘイズが15%以下であることを特徴とする反射防止膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面形状と物性とを有する反射防止膜に関するものであり、詳細には、光の反射を防止し、光の透過を改良した反射防止膜に関するものであり、更に詳細には、ディスプレイ等に良好な視認性を付与する反射防止膜、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略記する)等は、その視認性確保のために、反射防止膜の装着は必須である。かかる反射防止膜としては、(1)一般にドライ法と言われているもの、すなわち、誘電体多層膜を気相プロセスで作製し、光学干渉効果で低反射率を実現したもの、(2)一般にウエット法と言われているもの、すなわち、低屈折率材料を基板フィルム上にコーティングしたもの等が使用されてきた。また、これらとは原理的に全く異なる技術として、(3)表面に微細構造を付与することにより、低反射率を発現させることができることが知られている(特許文献1〜特許文献10)。
【0003】
上記(3)の微細構造を付与し、反射防止膜の性能を向上させる方法として、種々検討されており、例えば、アルミニウムを陽極酸化による陽極酸化被膜の形成と、その陽極酸化被膜のエッチングとを組み合わせたものを型として、その形状を反射防止膜に転写する方法等がある(特許文献11〜特許文献13)。
【0004】
しかしながら、これらの反射防止膜については、光の反射防止性能のみならず、特に光の透過性能が十分ではなく、更なる向上が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−070040号公報
【特許文献2】特開平9−193332号公報
【特許文献3】特開2003−162205号公報
【特許文献4】特開2003−215314号公報
【特許文献5】特開2003−240903号公報
【特許文献6】特開2004−004515号公報
【特許文献7】特開2004−059820号公報
【特許文献8】特開2004−059822号公報
【特許文献9】特開2005−010231号公報
【特許文献10】特開2005−092099号公報
【特許文献11】特開2003−043203号公報
【特許文献12】特開2005−156695号公報
【特許文献13】特開2007−086283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、優れた光の反射防止性能や優れた光の透過性能を有する反射防止膜に要求される表面形状と物性を見出し、かかる特定の表面形状と物性を有する反射防止膜とその反射防止膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アルミニウムに圧延加工を施す際に生じる加工応力や加工自体に基づく表面の不均一性、製造過程における環境からの影響、例えば、加工時に混入するダストや汚染物質に起因する表面の不均一性等が、かかるアルミニウム材料から得られた型を転写して得られた反射防止膜の性能の低下をもたらすことを見出した。そして、それを解決するために、アルミニウム材料の表面をあらかじめ加工仕上げすることにより、所望の性能を持った、特に、優れた透過性を持った反射防止膜が得られることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、アルミニウム材料の表面を、機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後、該アルミニウム材料の表面に、陽極酸化と陽極酸化被膜のエッチングとの組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製し、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって得られ、その表面に平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在し、かつヘイズが15%以下であることを特徴とする反射防止膜を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記反射防止膜形成用のテーパー形状の細孔を有する型であって、シュウ酸濃度0.01M以上0.5M以下、印加電圧20V以上120V以下、かつ液温0℃以上50℃以下で行う陽極酸化と、リン酸濃度1重量%以上20重量%以下、液温30℃以上90℃以下、かつ1回の処理時間1分以上60分以下で行うエッチングとの組み合わせにより作製されたものであることを特徴とするテーパー形状の細孔を有する型を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光の反射防止性能、光の透過性能等に優れた反射防止膜を提供することができる。具体的には、例えば、FPD等の表面層等の反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等として、特に光の透過性能に優れた反射防止膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[型の作製]
本発明の反射防止膜は、アルミニウム材料の表面を、機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後、該アルミニウム材料の表面に、陽極酸化と陽極酸化被膜のエッチングとの組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製し、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって得られる。
【0012】
ここで、本発明におけるアルミニウム材料とは、主成分がアルミニウムである材料であればよく、純アルミニウム(1000系)、アルミニウム合金の何れでもよい。本発明における純アルミニウムとは、純度99.00%以上のアルミニウムであり、好ましくは純度99.50%以上、より好ましくは純度99.85%以上である。アルミニウム合金は特に限定はないが、例えば、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Mg系合金(5000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)等が挙げられる。これらの中でも、純アルミニウム(1000系);Mgの添加量が比較的少ないために加工性、耐食性に優れている点、良好な「テーパー形状の細孔」が得られる点で、アルミニウム合金5005;アルミニウム合金5005の改良合金(例えば、日本軽金属製58D5)等が好ましい。
【0013】
本発明におけるアルミニウム材料の種類は特に限定はないが、工業的に圧延されたままのアルミニウム板、押出管、引き抜き管等を用いることが、本発明においてはアルミニウム材料に後述する研摩を行うので、コスト低減や工程簡略化のために好ましい。
【0014】
上記アルミニウム材料の表面を研摩する方法としては、機械研摩、化学研摩、電解研摩の何れか1つでもよく、又はこれらを任意に組み合わせてもよい。アルミニウム材料の表面を研摩することによって、アルミニウム材料の表面が均一になり、それを加工して得られた表面を型として用いて得られた反射防止膜は、ヘイズ等の光の透過性能が著しく向上する。特に、この研摩によって初めてヘイズが15%以下の反射防止膜が得られる。
【0015】
研摩によって得られたアルミニウム材料の表面のRa、Ryは、結果として反射防止膜のヘイズを15%以下にできれば特に限定はないが、研摩によって得られたアルミニウム材料の表面のRaは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.03μm以下、特に好ましくは0.02μm以下である。また、Ryは、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.35μm以下である。ここで、Ra及びRyは、JIS B0601(1994)により求めた値であり、Raは「算術平均粗さ」であり、Ryは「最大高さ」である。このような、Ra及び/又はRyのときに、ヘイズが15%以下になり易く、また本発明の前記効果を奏し易い。
【0016】
得られた反射防止膜のヘイズ等の光の透過性能をより向上させる点等から、電解研摩単独、機械研摩単独、電解研摩と化学研摩の組合せ、機械研摩と化学研摩の組合せ、電解研摩と機械研摩の組合せ、電解研摩と機械研摩と化学研摩の組合せが好ましく、その中でも、電解研摩単独又は電解研摩を含んだ組合せがより好ましい。更にその中でも、その前記した効果が大きく、また処理の容易な点で、機械研摩をした後に電解研磨する方法が特に好ましい。以下、各研摩方法について詳細に説明する。
【0017】
<1−1.機械研摩>
機械研摩としては、特に制限はなく常法に従って行えばよいが、具体的には例えば、バフ研摩法、グラインダーバフ研摩法、リューター研摩法、ベルトサンダー研摩法、ブラッシ研摩法、スチールウール研摩法、サンドブラスト研摩法、液体ホーニング研摩法、型付け研摩法、旋盤研摩法、バレル研摩法、ラッピング研摩法等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、当該用途のアルミニウム材表面を効率良く加工でき、且つ、研摩面が優れ、結果としてヘイズの小さい反射防止膜を与える点で、バフ研摩法、旋盤研摩法、ラッピング研摩法かつバフ研摩法等が好ましく、片面平面バフ、ボールバフ、バイアスバフ等のバフ研摩法;精密旋盤研摩法;が特に好ましい。
【0018】
用いる研摩材は、特に制限はなく、通常使用されている研摩材を用いればよい。具体的には、例えば、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、コランダム、酸化セリウム等、用いる研摩法や目的の形状に合わせて適宜選択すればよい。これらの最適化により、得られた反射防止膜のヘイズ等の光の透過性能を向上させることが可能となる。アルミニウム材料の表面をより均一にする点で、アルミニウム材との相性の良いコランダム(アルミナ系)を研摩材として用いたバフ研摩法、コロイダルシリカを研摩材として用いたボールバフ、無水ケイ酸系の油脂研摩材として用いたバイアスバフ、ダイヤモンドバイトを用いた精密旋盤研摩法が好ましい。これらの研摩条件の最適化により、得られた反射防止膜のヘイズを15%以下にすることが可能となる。
【0019】
ラッピングにおいては、必要に応じて研削液を用いるが、通常知られている水溶性、油溶性の研削液を用いればよい。スクラッチ等の傷が入りにくい、クーラント液として浸透性が良い、加工抵抗が低い、アルミニウム表面への影響を低減できる、洗浄が簡易である等の点で、水溶性研削液が好ましい。
【0020】
機械研摩の後、アルミニウム材料の表面に付着した研摩材を取り除く為に、スクラブ洗浄をするのが好ましい。アルミニウム材料の表面を傷つけない方法であれば特に制限はない。洗浄工程で用いる装置としては、具体的には、例えば、超音波洗浄機、ブラシスクラブ洗浄機、純水スピン洗浄乾燥機、RCA洗浄機、機能水洗浄機等が挙げられる。
【0021】
<1−2.化学研摩>
本発明における化学研摩とは、研摩液を作用させて化学反応を起こさせることでアルミニウム材料の表面を研摩する方法であり、特に制限はなく常法に従って行えばよい。具体的には、例えば、リン酸−硝酸法、Kaiser法、Alupol I、IV、V法、General Motor法、リン酸−酢酸−銅塩法、リン酸−硝酸−酢酸法、Alcoa R5法等が挙げられる。用いる化学研摩法に応じて、研摩液、温度、時間等を適宜選択することによって、ヘイズが15%以下の反射防止膜を得ることが可能となる。これらの中でも、浴管理、実績、研摩面の仕上がり等の点で、リン酸−硝酸法、リン酸−酢酸−銅塩法が好ましい。
【0022】
リン酸−硝酸法における好ましい処理温度は、70℃〜120℃、より好ましくは80℃〜100℃であり、好ましい研摩時間は30秒〜20分、更に好ましくは1分〜15分である。また用いる研摩液の組成は、40〜80体積%リン酸、2〜10体積%硝酸、残量水の混合液である。
【0023】
<1−3.電解研摩>
本発明における電解研摩とは、電解液中で電解によってアルミニウムの表面を研摩するものであり、特に限定はなく常法に従って行うことができる。酸性溶液等の水分が少ないためにアルミニウム材料が溶解しにくい状態になっている溶液の中で、アルミニウムを陽極として直流電流を通じることによって、表面を研摩する。具体的には例えば、Kaiser法、リン酸法、Erftwerk法、Aluflex法等が挙げられる。用いる電解液、電流値、処理温度、時間等によって、研摩された表面は異なり、これらを適宜選択することによって、ヘイズが15%以下の反射防止膜を得ることが可能となる。
【0024】
これらの中でも、リン酸法、リン酸−硫酸法が一般的であり、浴管理、仕上がり、得られる表面特性の点で好ましい。好ましいリン酸法の電解条件としては、温度は通常40℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃であり、電流密度は、20〜80A/dmが好ましく、30〜60A/dmがより好ましい。また用いる電解液としては、85〜100体積%リン酸が好ましい。また、電解研摩処理後に、酸化膜を除去するために、硝酸浴中に浸漬してもよい。
【0025】
<1−4.脱脂処理>
上記した、機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩をする前には、必要に応じて脱脂処理を行うことも好ましい。脱脂処理方法としては、例えば、有機溶剤法、界面活性剤法、硫酸法、電解脱脂法、アルカリ脱脂法、乳化脱脂法、リン酸塩法等が挙げられる。アルミニウム材表面を必要以上に荒らさない点から、非侵食性の脱脂処理を行うことが好ましい。
【0026】
<2−1.陽極酸化>
本発明における陽極酸化とは、酸溶液中で、アルミニウム材料を陽極として電流を流し、水が電気分解して発生する酸素とアルミニウムを反応させ、表面に細孔を有する酸化アルミニウムの被膜を形成させるものである。
【0027】
電解液としては、酸溶液であれば特に制限はなく、例えば、硫酸系、シュウ酸系、リン酸系又はクロム酸系の何れでもよいが、型としての被膜強度が優れている点、所望の細孔寸法が得られる点でシュウ酸系の電解液が好ましい。
【0028】
陽極酸化の条件は、前記した目的の形状の型ができるものであれば特に限定はないが、電解液としてシュウ酸を用いる場合の条件は以下の通りである。すなわち、濃度は0.01〜0.5Mが好ましく、0.02〜0.3Mがより好ましく、0.03〜0.1Mが特に好ましい。印加電圧は20〜120Vが好ましく、40〜110Vがより好ましく、60〜105Vが特に好ましく、80〜100Vが更に好ましい。液温は0〜50℃が好ましく、1〜30℃がより好ましく、2〜10℃が特に好ましい。1回の処理時間は5〜500秒が好ましく、10〜250秒がより好ましく、15〜200秒が特に好ましく、20〜100秒が更に好ましい。かかる範囲の条件で陽極酸化を行えば、下記するエッチング条件と組み合わせて、前記した形状の反射防止膜形成用の「テーパー形状の細孔を有する型」が製造できる。なお、他の酸でも上記とほぼ同じ条件が好ましい。
【0029】
電圧が大き過ぎる場合には、形成される細孔の平均間隔が大き過ぎるようになり、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって、得られた反射防止膜の表面に形成された凸部又は凹部の平均周期が大きくなり過ぎる場合がある。一方、電圧が小さ過ぎる場合には、細孔の平均間隔が小さ過ぎるようになり、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって、得られた反射防止膜の表面に形成された凸部又は凹部の平均周期が小さくなり過ぎる場合がある。本発明の反射防止膜は、その表面に存在する凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在することが必須であるので、電圧はこの範囲に入るように調整される。
【0030】
処理時間が長過ぎる場合は、反射防止膜の凹凸部の高さが高くなり過ぎる場合があり、短過ぎる場合は、反射防止膜の凹凸部の高さが低くなりすぎ、期待する反射防止効果で低下する場合がある。また、処理操作上、陽極酸化と後述するエッチングを交互に繰り返すことが好ましい。
【0031】
<2−2.エッチング>
エッチングは主に陽極酸化被膜の孔径拡大と所望の形状の型を得るために行われる。上記の陽極酸化とエッチングとを組み合わせることで、アルミニウム材料表面上の陽極酸化被膜に形成された、テーパー形状を形成する細孔の孔径、該テーパー形状、細孔の凹凸部の高さ及び深さ等を調整することができる。
【0032】
エッチングの方法は通常知られている方法であれば特に制限なく用いることができる。例えば、エッチング液としては、リン酸、硝酸、酢酸、硫酸、クロム酸等の酸溶液、又はこれらの混合液を用いることができる。好ましくは、リン酸又は硝酸であり、必要な溶解速度が得られる点、より均一な面が得られる点で、特に好ましくはリン酸である。
【0033】
エッチング液の濃度や浸漬時間、温度等は、所望の形状が得られるように適宜調節すればよいが、リン酸の場合の条件は以下の通りである。すなわち、エッチング溶液の濃度は、1〜20重量%が好ましく、1.2〜10重量%がより好ましく、1.5〜2.5重量%が特に好ましい。液温は、30〜90℃が好ましく、35〜80℃がより好ましく、40〜60℃が特に好ましい。1回の処理時間(浸漬時間)は1〜60分が好ましく、2〜40分がより好ましく、3〜20分が特に好ましく、5〜10分が更に好ましい。かかる範囲の条件でエッチングを行えば、上記した陽極酸化条件との組み合わせで、前記した形状の反射防止膜形成用の「テーパー形状の細孔を有する型」が製造できる。なお、他の酸でも上記とほぼ同じ条件が好ましい。
【0034】
上記陽極酸化とエッチングは組み合わせて、所望の「テーパー形状の細孔を有する型」を得ることができる。「組み合わせる」とは、先に陽極酸化をして交互に処理を繰り返すことをいう。各処理の間には水洗をすることも好ましい。陽極酸化とエッチングの回数は所望の形状が得られるように適宜調節すればよいが、組み合わせの回数として、1〜10回が好ましく、2〜8回がより好ましく、3〜6回が特に好ましい。
【0035】
本発明の反射防止膜において、転写させる「テーバー形状を有する型」を得る場合、特に好ましい組み合わせは、シュウ酸水溶液で陽極酸化をし、リン酸水溶液でエッチングをすることである。全体の好ましい条件は上記の各好ましい条件の組み合わせである。
【0036】
[反射防止膜表面の形状]
また、本発明の反射防止膜は、少なくともその一の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、かつ反射防止膜のヘイズが15%以下であることが必須である。ここで凸部とは、基準となる面より出っ張った部分をいい、凹部とは、基準となる面より凹んだ部分をいう。本発明の反射防止膜は、その表面に凸部を有していても、凹部を有していてもよい。また、凸部と凹部の両方を有していてもよく、更に、それらが連結して波打った構造を有していてもよい。
【0037】
凸部又は凹部は、反射防止膜の両面に有していてもよいが、少なくとも一方の表面に有していることが必須である。中でも、空気と接している最表面に有していることが好ましい。空気は本発明の反射防止膜とは屈折率が大きく異なり、互いに屈折率の異なる物質の界面が、本発明の特定の構造になっていることによって、反射防止性能や透過改良性能が良好に発揮されるからである。
【0038】
凸部又は凹部は、反射防止膜の表面全体に均一に存在していることが、上記効果を奏するために好ましい。凸部の場合には、基準となる面からのその平均高さが、100nm以上1000nm以下、かつ反射防止膜のヘイズが15%以下であることが必須であり、凹部の場合にも、基準となる面からのその平均深さが、100nm以上1000nm以下、かつ反射防止膜のヘイズが15%以下であることが必須である。高さ又は深さは一定でなくてもよく、その平均値が上記範囲に入っていればよいが、実質的にほぼ一定の高さ又は一定の深さを有していることが好ましい。
【0039】
凸部の場合でも、凹部の場合でも、その平均高さ又は平均深さは、150nm以上であることが好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。また、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。平均高さ又は平均深さが、小さ過ぎると、良好な光学特性が発現されない場合があり、大き過ぎると、製造が困難になる等の場合がある。凸部と凹部が連結して波打った構造を有している場合では、最高部(凸部の上)と最深部(凹部の下)の平均長さは、100nm以上1000nm以下であることが同様の理由から好ましい。
【0040】
本発明の反射防止膜は、その表面に、上記凸部又は凹部が、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが必須である。凸部又は凹部は、ランダムに配置されていてもよいし、規則性を持って配置されていてもよい。また、何れの場合でも、上記凸部又は凹部は、反射防止膜の表面全体に実質的に均一に配置されていることが反射防止性や透過改良性の点で好ましい。また、少なくとも、ある一の方向について、平均周期が、50nm以上400nm以下となるように配置されていればよく、全ての方向に、その平均周期が50nm以上400nm以下となっている必要はない。
【0041】
凸部又は凹部が、規則性を持って配置されている場合、上記のように、少なくともある一の方向の平均周期が、50nm以上400nm以下となるように配置されていればよいが、最も周期が短い方向(以下「x軸方向」という)への周期が、50nm以上400nm以下となるように配置されていることが好ましい。すなわち、ある一の方向として、最も周期が短い方向をとったときに、周期が上記範囲内になっていることが好ましい。更にその際、x軸方向に垂直なy軸方向についても、その周期が50nm以上400nm以下となるように配置されていることが特に好ましい。
【0042】
上記平均周期(凸部又は凹部の配置場所に規則性がある場合は「周期」)は、80nm以上が好ましく、150nm以上が特に好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下が特に好ましい。平均周期が短すぎても長すぎても、反射防止効果が充分に得られない場合がある。
【0043】
本発明の反射防止膜は、表面に上記構造を有することが必須であるが、更に、一般に「モスアイ構造(蛾の眼構造)」と呼ばれる構造を有していることが、良好な反射防止性能を有している点で好ましい。また、特許文献1ないし特許文献10の何れかの文献に記載の表面構造を有していることが、同じく良好な反射防止性能の点で好ましい。
【0044】
高さ又は深さを平均周期で割った値であるアスペクト比は特に限定はないが、1以上が光学特性の点で好ましく、1.5以上が特に好ましく、2以上が更に好ましい。また、5以下が反射防止膜製造プロセス上好ましく、3以下が特に好ましい。
【0045】
本発明の反射防止膜は、表面に上記構造を付与することにより光の反射率を低減させたり、光の透過性を向上させたりするが、更に、前述の研摩を行うことによって、光の透過性を更に向上させることが可能となる。この場合の「光」は、少なくとも可視光領域の波長の光を含む光である。
【0046】
[反射防止膜のヘイズ]
本発明における反射防止膜は、上記凹凸部の形状を有し、かつ、ヘイズ15%以下が必須である。ヘイズは全光透過率に対する拡散透過率の百分率であり、本発明におけるヘイズは実施例に記載の方法に従い測定したものとして定義される。ヘイズが大き過ぎると、FPDの視認性確保が不十分になる場合がある。型となるアルミニウム材料の表面を研摩することによって、それを用いて得られた反射防止膜は、ヘイズを15%以下にすることが可能になり、光の透過性能が著しく向上する。特に、陽極酸化に先立つ前述した研摩を加えることによって初めてヘイズが15%以下の反射防止膜が得られるようになった。ヘイズは15%以下が必須であるが、好ましくは12%以下、より好ましくは8%以下、特に好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0047】
[反射防止膜の構成、形成方法]
本発明の反射防止膜は、前記の型と膜形成材料を用いて作製される。膜形成材料としては、上記の反射防止膜の表面形状を形成でき、ヘイズを15%以下とできるものであれば、特に制限はなく、硬化性組成物と熱可塑性組成物の何れでも好適に使用し得る。本発明の反射防止膜は、その表面に平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は凹部を有し、それが少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在するという極めて微細な表面構造を有しているので、かかる微細構造に適した機械的強度を与えるため、また、型となる陽極酸化被膜からの剥離性等の点から硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0048】
<1.硬化性組成物>
硬化性組成物とは、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化する組成物である。中でも、光照射又は電子線照射により硬化する硬化性組成物が、上記した点から好ましい。
【0049】
<1−1.光照射又は電子線照射により硬化する硬化性組成物>
「光照射又は電子線照射により硬化する硬化性組成物」(以下、「光硬化性組成物」と略記する)としては特に限定はなく、アクリル系重合性組成物又はメタクリル系重合性組成物(以下、「(メタ)アクリル系重合性組成物」と略記する)、光酸触媒で架橋し得る組成物等、何れも使用できるが、(メタ)アクリル系重合性組成物が、本発明の微細構造に適した機械的強度を与えるため、型となる陽極酸化被膜からの剥離性、化合物群が豊富なため種々の物性の反射防止膜を調製できる点等から(メタ)アクリル系重合性組成物が好ましい。
【0050】
<1−2.熱硬化性組成物>
本発明における熱硬化性組成物とは、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる組成物であれば特に制限はないが、例えば、フェノール系重合性組成物、キシレン系重合性組成物、エポキシ系重合性組成物、メラミン系重合性組成物、グアナミン系重合性組成物、ジアリルフタレート系重合性組成物、尿素系重合性組成物(ユリア系重合性組成物)、不飽和ポリエステル系重合性組成物、アルキド系重合性組成物、ポリウレタン系重合性組成物、ポリイミド系重合性組成物、フラン系重合性組成物、ポリオキシベンゾイル系重合性組成物、マレイン酸系重合性組成物、メラミン系重合性組成物、(メタ)アクリル系重合性組成物等が挙げられる。フェノール系重合性組成物としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂等である。エポキシ系重合性組成物としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、多官能性エポキシ等である。不飽和ポリエステル系重合性組成物としては、例えば、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、アジピン酸系、ヘット酸系、ジアリルフタレート系等である。中でも、熱硬化性組成物としては、(メタ)アクリル系重合組成物が好ましい。
【0051】
<1−3.(メタ)アクリル系重合性組成物>
すなわち、本発明の反射防止膜は、(メタ)アクリル系重合性組成物の(メタ)アクリル基の炭素−炭素間二重結合が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって反応してなるものであることが好ましい。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0052】
本発明の反射防止膜は、(メタ)アクリル基の炭素−炭素二重結合が反応してなるものであることが好ましく、その反応率は特に限定はないが、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。ここで「反応率」とは、露光前後の(メタ)アクリル系重合性組成物を赤外線分光法(IR)、具体的にはフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One D(perkin Elmer社製)全反射法(ATR法)で測定されるエステル結合の炭素−酸素結合に帰属される1720cm−1の吸光度と、炭素−炭素結合に帰属される811cm−1の吸光度の比率から求めたものである。反応率が低過ぎると、機械的強度の低下や耐薬品性の低下をまねく場合がある。
【0053】
(メタ)アクリル系重合性組成物としては、上記微細構造が形成でき、ヘイズが15%以下にできるものであれば特に限定はないが、ウレタン(メタ)アクリレート及びエステル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。また、「エステル(メタ)アクリレート」とは、分子中に、酸基(酸無水物や酸クロライドを含む)と水酸基との反応で得られたエステル結合を有し、ウレタン結合もシロキサン結合も有さないものをいう。
【0054】
本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物は、更に、エポキシ(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ基に(メタ)アクリル酸が反応して得られる構造を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。
【0055】
更に、本発明の反射防止膜は、変性シリコーンオイルを含有する組成物が重合したものであることも好ましい。「変性シリコーンオイル」とは、分子中にシロキサン結合を有し、ケイ素原子(Si)にメチル基以外の有機基も結合している化合物をいう。「変性シリコーンオイル」には、シリコーン(メタ)アクリレートが含まれる。従って、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物は、シリコーン(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。「シリコーン(メタ)アクリレート」とは、分子中にシロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。
【0056】
[1]ウレタン(メタ)アクリレートについて
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは特に限定はなく、例えば、ウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基の位置や個数は特に限定はない。
【0057】
本発明における膜形成材料に用いられるウレタン(メタ)アクリレートの好ましい化学構造としては、(A)分子中に(好ましくは複数個の)イソシアネート基を有する化合物に対して、分子中に水酸基と(好ましくは複数個の)(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつもの、(B)複数個の水酸基を有する化合物にジイソシアネート化合物やトリイソシアネート化合物を反応させ、得られた化合物の未反応イソシアネート基に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のように分子中に水酸基と(メタ)アクリル基を有する化合物を反応させて得られるような構造をもつものが挙げられる。
【0058】
上記(メタ)アクリレート化合物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することによって、得られた反射防止膜の硬化性、反応率が上がり、貯蔵弾性率が大きくなると共に柔軟性が優れたものになる。
【0059】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、4官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含有するものであることが特に好ましい。すなわち、分子中に(メタ)アクリル基を4個以上有する化合物を含有することが好ましい。この場合のウレタン結合の位置や個数、(メタ)アクリル基が分子末端にあるか否か等は特に限定はない。分子中に(メタ)アクリル基を6個以上有する化合物が特に好ましく、10個以上有する化合物が更に好ましい。また、分子中の(メタ)アクリル基の個数の上限は特に限定はないが、15個以下が特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が少なすぎると、得られた構造体の硬化性、反応率が低下し、耐傷性、機械的強度が小さくなる場合がある。一方、ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリル基の数が多すぎると、重合による(メタ)アクリル基の炭素間二重結合消費率、すなわち反応率が十分に上がらない場合がある。
【0060】
[2]エステル(メタ)アクリレートについて
本発明の反射防止膜を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、ウレタン(メタ)アクリレートに加え、エステル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このエステル(メタ)アクリレートを含有させることによって、反射防止膜が軟らかくなり、本発明における特殊な構造を有する表面の機械的強度が良好になる。また、硬化性等を向上させるために使用したウレタン(メタ)アクリレートにより反射防止膜の柔軟性が悪化するのを防ぐことが可能となる。このエステル(メタ)アクリレートを含有せず、ウレタン(メタ)アクリレートの含有のみでは、反射防止膜が軟らかくなりすぎ、機械的強度が劣る場合がある。
【0061】
エステル(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましいものとして挙げられる。2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、3価以上のアルコールの部分(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノール系ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。2官能エステル(メタ)アクリレートを含有すると、硬化性が上がり、機械的強度向上等の点で好ましい。2官能(メタ)アクリレートの中でも、アルキレングリコール鎖を有し、分子の両末端にそれぞれ1個ずつの(メタ)アクリル基を有する2官能エステル(メタ)アクリレートを含有することが、更に硬化性を上げるために好ましい。
【0062】
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネート等が挙げられる。
【0063】
4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
[3]エポキシ(メタ)アクリレートについて
本発明の反射防止膜を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、エポキシ(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。このエポキシ(メタ)アクリレートを含有させることによって、反射防止膜が更に強靭になり、本発明における特殊な構造を有する表面の耐傷性等の機械的強度が更に良好になる。
【0065】
上記「エポキシ(メタ)アクリレート」としては特に限定はないが、具体的には例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコ−ルのジグリシジルエーテル類;グリセリンジグリシジルエーテル等のグリセリングリシジルエーテル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのPO変性ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリジルエーテル等のビスフェノール系化合物のジグリシジルエーテル類等に、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。また、縮重合されたエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するものが挙げられる。更に、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の縮重合物に、例えばエピクロロヒドリン等を反応させて得られた構造を有するエポキシ樹脂に対して、(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するもの等が挙げられる。
【0066】
[4]変性シリコーンオイルについて
本発明の反射防止膜を形成させるための(メタ)アクリル系重合体は、変性シリコーンオイルを含有することも好ましい。(メタ)アクリレート化合物が、変性シリコーンオイルを含有することによって、得られた反射防止膜の貯蔵弾性率が大きくなると共に、上記特殊な表面形状に対し、耐傷性等の機械的強度が優れたものになる。なお、本発明の反射防止膜形成においては、硬化させた反射防止膜を型から剥離する工程を有するので、そのとき賦型性が重要になる。しかしながら、本発明においては、該変性シリコーンオイルの使用は、この賦型性の改良よりはむしろ表面耐傷性の改良に効果的である。
【0067】
変性シリコーンオイルの数平均分子量としては、400〜20000が好ましく、1000〜15000が特に好ましい。数平均分子量が大き過ぎるときには、他成分との相溶性が悪化する場合があり、一方、数平均分子量が小さ過ぎるときには、表面耐傷性が劣る場合がある。
【0068】
[5](メタ)アクリル系重合性組成物の組成
(メタ)アクリレート系重合性組成物中の、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び変性シリコーンオイルの含有比率は特に限定はないが、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エステル(メタ)アクリレート10重量部以上が好ましく、20重量部以上が特に好ましい。また、上限は、400重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下が特に好ましく、100重量部以下が最も好ましい。
【0069】
また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、エポキシ(メタ)アクリレート0〜50重量部が好ましく、0〜20重量部が特に好ましく、1〜10重量部が更に好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、変性シリコーンオイル0〜10重量部が好ましく、0.02〜5重量部が特に好ましく、0.05〜2重量部が更に好ましい。変性シリコーンオイルが多過ぎると、反射防止膜中で分離し不透明な反射防止膜を形成し、ヘイズが15%以下にできない場合があり、一方、少な過ぎると、表面の耐傷性が劣る場合がある。
【0070】
本発明の(メタ)アクリル系重合性化合物には、上記したもの以外に、その他の(メタ)アクリレート、重合開始剤等を含有させることができる。
【0071】
本発明の反射防止膜が、(メタ)アクリル系重合性化合物の光照射によって形成される場合には、その材料となる(メタ)アクリル系重合性化合物中の光重合開始剤の有無は特に限定はないが、光重合開始剤が含有されることが好ましい。光重合開始剤としては特に限定はないが、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のもの、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等のアリールケトン系光重合開始剤;スルフィド類、チオキサントン類等の含硫黄系光重合開始剤;アシルジアリールホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;アントラキノン類等が挙げられる。また、光増感剤を併用させることもできる。
【0072】
前記光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、通常0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部の範囲で選ばれる。
【0073】
本発明の反射防止膜が、(メタ)アクリル系重合性化合物の熱重合によって形成される場合には、熱重合開始剤が含有されることが好ましい。熱重合開始剤としては、ラジカル重合に対して従来用いられている公知のものが使用可能であるが、例えば、過酸化物、ジアゾ化合物等が挙げられる。
【0074】
<2.熱可塑性組成物>
熱可塑性組成物としては、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなるものであれば特に制限はないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン系重合体組成物、アクリロニトリル−スチレン系重合体組成物、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン系重合体組成物、スチレン−(メタ)アクリレート系重合体組成物、ブダジエン−スチレン系重合体組成物等のスチレン系重合体組成物;塩化ビニル系重合体組成物、エチレン−塩化ビニル系重合体組成物、エチレン−酢酸ビニル系重合体組成物、プロピレン系重合体組成物、プロピレン−塩化ビニル系重合体組成物、プロピレン−酢酸ビニル系重合体組成物、塩素化ポリエチレン系組成物、塩素化ポリプロピレン系組成物等のポリオレフィン系組成物;ケトン系重合体組成物;ポリアセタール系組成物;ポリエステル系組成物;ポリカーボネート系組成物;ポリ酢酸ビニル系組成物、ポリビニル系組成物、ポリブタジエン系組成物、ポリ(メタ)アクリレート系組成物等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の(メタ)アクリル系重合性組成物には、更に、バインダーポリマー、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、離型剤、潤滑剤、レベリング剤等を配合することもできる。これらは、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0076】
[反射防止膜の製造方法]
本発明の反射防止膜の製造方法は、例えば下記の方法が好ましい。すなわち、上記反射防止膜形成材料を基材上に採取、バーコーター若しくはアプリケーター等の塗工機又はスペーサーを用いて、均一膜厚になるように塗布する。ここで、「基材」としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)、トリアセチルセルロース等のフィルムが好適である。そして、前記表面構造をもった型を貼り合わせる。貼り合わせた後、硬化性組成物の場合には、該フィルム面から紫外線照射若しくは電子線照射及び/又は熱により硬化させる。あるいは、前記表面構造をもった型の上に、直接反射防止膜形成材料を採取、塗工機やスペーサー等で均一膜厚の塗布膜を作製してもよい。その後、得られた反射防止膜を該型から剥離させて本発明の反射防止膜を作製する。
【0077】
この製造方法を、更に図1を用いて具体的に説明するが、本発明は図1の具体的態様に限定されるものではない。すなわち、型(2)に反射防止膜形成材料(1)を適量供給又は塗布し(図1(a))、ローラー部側を支点に基材(3)を斜めから貼り合せる(図1(b))。型(2)と反射防止膜形成材料(1)と基材(3)が一体となった貼合体を、ローラー(4)へと移動し(図1(c))、ローラー圧着させることにより、型(2)が有する特定の構造を反射防止膜形成材料(1)に転写、賦型させる(図1(d))。これを硬化させた後、型(2)から剥離することにより(図1(e))、本発明の目的とする反射防止膜(5)を得る。
【0078】
図2は、連続的に反射防止膜を製造する装置の一例の模式図であるが、本発明はこの模式図に限定されるものではない。すなわち、型(2)に反射防止膜形成材料(1)を付着させ、ローラー(4)により力を加え、基材(3)を型に対して斜めの方向から貼り合せて、型(2)が有する特定の構造を反射防止膜形成材料(1)に転写させる。これを、硬化装置(6)を用いて硬化させた後、型(2)から剥離することにより、本発明の目的とする反射防止膜(5)を得る。支持ローラー(7)は、反射防止膜(5)を上部に引き上げるためのものである。
【0079】
ローラー(4)を用いて、斜めから貼り合わせることによって、気泡が入らず欠陥のない反射防止膜(5)が得られる。また、ローラーを用いれば線圧を加えることになるため圧力を大きくでき、そのため大面積の反射防止膜の製造が可能になり、また、圧の調節も容易になる。また、基材と一体となった均一な膜厚と、所定の光学物性を有する反射防止膜の製造が可能になり、更に、連続的に製造できるため生産性に優れたものになる。
【0080】
本発明の反射防止膜は、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって重合したものであることが好ましいが、光照射の場合の光の波長については特に限定はない。可視光線及び/又は紫外線を含有する光であることが、要すれば光重合開始剤の存在下で良好に(メタ)アクリル基の炭素間二重結合を重合させる点で好ましい。特に好ましくは紫外線を含有する光である。光源は特に限定はなく、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、各種レーザー等公知のものが用いられ得る。電子線の照射の場合、電子線の強度や波長には特に限定はなく、公知の方法が用いられ得る。
【0081】
熱によって重合させる場合は、その温度は特に限定はないが、80℃以上が好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、200℃以下が好ましく、180℃以下が特に好ましい。重合温度が低過ぎる場合は重合が充分に進行しない場合があり、高過ぎる場合は重合が不均一になったり、基材の劣化が起こったりする場合がある。加熱時間も特に限定はないが、5秒以上が好ましく、10秒以上が特に好ましい。また、10分以下が好ましく、2分以下が特に好ましく、30秒以下が更に好ましい。
【0082】
[作用・原理]
本発明の反射防止膜は優れた光透過性能を有するが、それは型となるアルミニウム材料の表面を研摩したためと考えられる。従来から、型となるアルミニウム材料の表面は陽極酸化されるので、それに先立って表面を研摩することは必要ないと考えられていたと思われる。また、特定の表面構造によって反射が防止できるので、ヘイズに関してはそれで十分と考えられていたために、更なる光透過性能を求めることをしなかったと考えられる。また、従来は、反射防止膜形成材料として満足のいくものがなく、とりあえず反射防止膜を作ることにのみ重点が置かれ、ヘイズを極めて低く、具体的には15%以下にしようとするだけの技術水準に材料的に至っておらず、そのため、型の表面を研摩しようとは考えつかなかったものと考えられる。上記したような硬化性組成物等の開発により、ヘイズを更に改良するだけのレベルに達したため、型の表面を研摩しようと考えついた。
【0083】
アルミニウム表面を研摩することによってヘイズが15%以下にできる作用・原理については明らかではなく、また本発明は以下の作用・原理によっては限定されないが、以下のように考えられる。すなわち、本発明の反射防止膜の特定の表面形状よりもオーダー的に大きいサイズの若しくは長いピッチの凹凸又は不均一性がヘイズには影響するので、そのような凹凸又は不均一性を研磨によって除いたためにヘイズが低下したものと考えられる。陽極酸化によってはかかるオーダー的に大きい凹凸又は不均一性等は完全にはなくならず、そのようなものの上に微細構造が形成されても、ヘイズの向上には限界があったものと思われる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0085】
実施例1
<型の作製>
アルミニウム材料として、99.85%のアルミニウム圧延板(2mm厚)を片面平面バフ研摩盤(Speedfam社製)により、アルミナ系の研摩材(フジミ研磨材社製)を用いて、10分間研摩して鏡面を得た。研摩面をスクラブ洗浄後、非浸食性の脱脂処理を行った。
【0086】
更に、以下に示す陽極酸化条件と、形成された陽極酸化被膜の以下に示すエッチング(孔径拡大)処理条件との組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製した。
<陽極酸化の条件>
使用液:0.05Mシュウ酸
電圧 :80Vの直流電圧
温度 :5℃
時間 :50秒
【0087】
<エッチングの条件>
使用液:2重量%リン酸
温度 :50℃
時間 :5分
【0088】
陽極酸化とエッチング(孔径拡大)を交互に5回繰り返すことで、周期200nm、細孔径開口部160nm、底部50nm、細孔深さ500nmのテーパー形状の細孔を有する陽極酸化被膜表面を得た。
【0089】
<反射防止膜の作製>
反射防止膜形成材料である下記に示す光硬化性組成物(a)をPETフィルム上に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布した。その後、上記で得られた型を貼り合わせ、細孔内に光硬化性組成物が充填されたことを確認して、紫外線を照射して重合硬化させた。硬化後、膜を型から剥離することで、表面に、平均高さ500nmの凸部が平均周期200nmで存在する反射防止膜を得た。
【0090】
<光硬化性組成物の調製>
下記式(1)で示される化合物(1)11.8重量部、下記化合物(2)23.0重量部、テトラエチレングリコールジアクリレート45.2重量部、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート20.0重量部及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0重量部により、光硬化性組成物(a)を得た。
【0091】
上記化合物(1)は、下記の式(1)で示される化合物である。
【化1】

[式(1)中、Xは、ジペンタエリスリトール(6個の水酸基を有する)残基を示す。]
【0092】
上記化合物(2)は、
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとの重量平均分子量3500の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。ここで、「2HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「−−」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
−NCO + HO− → −NHCOO−
【0093】
実施例2
実施例1において、アルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、ボールバフにより、コロイダルシリカ(フジミ研磨材社製)を主成分とする研摩材を用いて研摩した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0094】
実施例3
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、バイアスバフ(光陽社製)により、無水ケイ酸系の油脂研摩材(イチグチ社製)を用いて研摩した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0095】
実施例4
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、正面精密旋盤に真空チャックにより固定し、天然ダイヤモンドバイトを用いて、鏡面切削する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0096】
実施例5
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、95℃、60体積%リン酸と5体積%硝酸の混合で得られる研摩液中で、3分間振動させながら処理する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0097】
実施例6
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、70℃、90体積%リン酸浴中において、アルミ材をプラス極として40A/dmの電流密度で5分間振動しながら電解し、その後、20℃の硝酸浴(市販の約68%硝酸を2倍に希釈)中に10分間浸漬して表面の酸化膜を溶解除去した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0098】
実施例7
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、バイアスバフ(光陽社製)により、無水ケイ酸系の油脂研摩材(イチグチ社製)を用いて研摩し、引き続き、95℃、60体積%リン酸と5体積%硝酸の混合で得られる研摩液中で3分間振動しながら処理する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0099】
実施例8
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、ボールバフにより、コロイダルシリカを主成分とする研摩材を用いて研摩し、研摩面をスクラブ洗浄後、脱脂処理を行った後、70℃、90体積%リン酸浴中において、アルミニウム材をプラス極として40A/dmの電流密度で5分間振動しながら電解し、その後、20℃の硝酸浴(市販の約68%硝酸を2倍に希釈)中に10分間浸漬して表面の酸化膜を溶解除去する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0100】
実施例9
実施例1においてアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、片面平面ラップ盤により、水溶性の研削液(ケメット・ジャパン製)を併用しながら準鏡面を研摩し、研摩面をスクラブ洗浄後、脱脂処理を行った後、70℃、90体積%リン酸浴中において、アルミ材をプラス極として40A/dmの電流密度で5分間振動しながら電解し、その後、20℃の硝酸浴(市販の硝酸を2倍に希釈)中に10分間浸漬して表面の酸化膜を溶解除去する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0101】
実施例10
実施例1において、99.85%のアルミニウム圧延板(2mm厚)をアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、アルミニウム合金5005押出管(外径30mm)を精密旋盤(エグロ社製)と単結晶ダイヤモンドバイト(東京ダイヤモンド社製)を用いて、灯油を潤滑剤として高速回転で旋盤加工を施した以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0102】
実施例11
実施例1において、99.85%のアルミニウム圧延板(2mm厚)をアルミナ系の研摩材を用いて研摩する代わりに、アルミニウム合金5005の改良合金の引き抜き管(外径30mm)を精密旋盤とコンパックスダイヤモンドバイトを用いて、灯油を潤滑剤として高速回転で旋盤加工を施し、引き続き、70℃、90体積%リン酸浴中において、アルミ材をプラス極として40A/dmの電流密度で5分間振動しながら電解し、その後、20℃の硝酸浴(市販の約68%硝酸を2倍に希釈)中に10分間浸漬して表面の酸化膜を溶解除去する以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0103】
実施例12
実施例1において、光硬化性組成物(a)を用いる代わりに表1記載の光硬化性組成物(b)〜(g)を用いる以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0104】
【表1】

【0105】
表1中、「TegoRad2200N」は、デグサ社製の側鎖メタクリルポリエーテル変性シリコーンオイルであり、「X−24−8201」及び「X−22−2426」は、信越シリコーン社製片末端メタクリルアルキル変性シリコーンオイルであり、「FL100−100st」及び「FL100−450st」は、信越シリコーン社製側鎖フルオロアルキル変性シリコーンオイルである。
【0106】
比較例1
実施例1において、アルミナ系の研摩材を用いて研摩しない以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。
【0107】
比較例2
実施例5において、リン酸と硝酸の研摩液中で処理しない以外は、実施例5と同様にして反射防止膜を得た。
【0108】
比較例3
実施例6において、リン酸浴中で電解しない以外は、実施例6と同様にして反射防止膜を得た。
【0109】
<評価>
[Ra、Ry]
実施例1〜11で得られた「機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後のアルミニウム材料」の表面のRa及びRyの値を、比較例の「アルミニウム材料」の表面のRa及びRyの値と共に以下に示す。Ra及びRyは、JIS B0601(1994)に従って測定した。
NO. Ra(μm) Ry(μm)
実施例1 0.035 0.45
実施例2 0.035 0.45
実施例3 0.034 0.45
実施例4 0.035 0.44
実施例5 0.034 0.45
実施例6 0.032 0.38
実施例7 0.033 0.27
実施例8 0.029 0.27
実施例9 0.018 0.19
実施例10 0.035 0.45
実施例11 0.022 0.19
比較例1 0.50 2.00
比較例2 0.50 2.00
比較例3 0.50 2.00
【0110】
上記実施例1ないし実施例11、比較例1ないし比較例3で得られた反射防止膜のヘイズ、透明性、反射率を以下のように測定した。結果を表2に示す。
【0111】
[ヘイズ]
スガ試験機社製、ヘイズメーター「HGM−2DP」を用いて、可視光線のヘイズを測定した。
【0112】
[透明性]
反射防止膜の透明性は、以下の基準により目視で評価判定した。
◎:透明性が極めて良好
○:透明性が良好
△:やや透明性が低いが合格レベル
×:透明性が不良
【0113】
[反射率]
島津製作所社製、自記分光光度計「UV−3150」を用い、裏面に黒色テープを貼り付け、5°入射絶対反射率を測定した。
【0114】
【表2】

【0115】
表2より、本発明の反射防止膜である実施例1ないし実施例11は何れもヘイズが15%以下であり、また、目視による「透明性」にも優れていた。すなわち、本発明の反射防止膜は良好な光の反射防止性能と光の透過性能を有していた。一方、比較例1ないし比較例3で得られた反射防止膜は、何れもヘイズが大きく、透明性にも欠けるものであった。また、実施例12において、光硬化性組成物(b)〜(g)を用いても、実施例1ないし実施例11の全ての研摩方法において、ヘイズは15%以下であり、目視による「透明性」にも優れていた。
【0116】
更に、これらの反射防止膜は、「耐摩耗性」、「防汚性」にも優れていた。また、(メタ)アクリル系重合性組成物を熱硬化させても電子線硬化させても、得られた反射防止膜の反射防止性能や透過性能は同様である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の反射防止膜は、光の反射防止性能、光の透過性能等に優れているので、良好な視認性を付与するので、液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL(OEL)、CRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等の用途に広く好適に利用されるものである。また、より一般に、反射防止膜、透過性改良膜、表面保護膜等としても、広く好適に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の反射防止膜の製造方法の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の反射防止膜の製造方法を説明するための連続製造装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0119】
1 反射防止膜形成材料
2 型
3 基材
4 ローラー
5 反射防止膜
6 硬化装置
7 支持ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材料の表面を、機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後、該アルミニウム材料の表面に、陽極酸化と陽極酸化被膜のエッチングとの組み合わせによりテーパー形状の細孔を有する型を作製し、この型を反射防止膜形成材料に転写させることによって得られ、その表面に平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在し、かつヘイズが15%以下であることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
機械研摩、化学研摩及び/又は電解研摩により加工した後のアルミニウム材料の表面が、算術平均粗さRaとして0.1μm以下のものである請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】
上記陽極酸化が、シュウ酸濃度0.01M以上0.5M以下、印加電圧20V以上120V以下、かつ液温0℃以上50℃以下で行われるものである請求項1又は請求項2記載の反射防止膜。
【請求項4】
上記エッチングが、リン酸濃度1重量%以上20重量%以下、液温30℃以上90℃以下、かつ1回の処理時間1分以上60分以下で行われるものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の反射防止膜。
【請求項5】
上記反射防止膜形成材料が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化する硬化性組成物である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の反射防止膜。
【請求項6】
上記硬化性組成物が、アクリル系重合性組成物又はメタクリル系重合性組成物である請求項5に記載の反射防止膜。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6記載の反射防止膜形成用のテーパー形状の細孔を有する型であって、シュウ酸濃度0.01M以上0.5M以下、印加電圧20V以上120V以下、かつ液温0℃以上50℃以下で行う陽極酸化と、リン酸濃度1重量%以上20重量%以下、液温30℃以上90℃以下、かつ1回の処理時間1分以上60分以下で行うエッチングとの組み合わせにより作製されたものであることを特徴とするテーパー形状の細孔を有する型。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−288337(P2009−288337A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138444(P2008−138444)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【出願人】(391035304)日本伸管株式会社 (8)
【Fターム(参考)】