説明

反強磁性物質層と弱い交換結合を有する磁気装置

【課題】スピントルク発振器において使われることができる磁気装置を提供する。
【解決手段】自由層10に弱い交換で結合した少なくとも一つの反強磁性層8から成る磁気装置6を含むスピントルク発振器(STO)4から成るシステム2において、磁気装置6は、磁気異方性を有する自由層10から成る。磁気異方性は、少なくとも部分的に不均一である。磁気装置は、自由層10に隣接して反強磁性層8が設けられ、弱い交換結合が自由層10の磁気異方性の不均一を減らす弱い交換結合するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 開示は、スピントルク発振器において使われることができる磁気装置のような磁気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] いくつかのスピントルク発振器(STOs)は、磁場のスピントルクによって、自由層において誘発されるSTOの磁気振動の変化のために、磁場の存在および強さを検出することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003] ある実施形態では、磁気異方性を有する自由層から成る磁気装置は提供され、磁気異方性は少なくとも部分的に不均一である。磁気装置は、自由層と隣接して弱い交換結合をする反強磁性層が更に設けられ、弱い交換結合が、自由層の磁気異方性の不均一を減らす。
【0004】
[0004] 他の例では、磁気装置を製造する方法が提供される。方法は、少なくとも部分的に不均一の磁気異方性を有する自由層を形成し、自由層に隣接して反強磁性層を形成することを含むことができ、反強磁性層は磁気異方性の不均一を減らす。
【0005】
[0005] 他の実施形態によれば、回路および回路に結合されるスピントルク発振器からなるがシステムが設けられる。スピントルク発振器は、少なくとも部分的に不均一の磁気異方性を有する自由層から成ることができる。スピントルク発振器は、弱い交換が自由層に結合した少なくとも一つの反強磁性層から更に成ることができ、弱い交換結合は反強磁性層に磁気異方性の不均一を減らさせる。電流は、自由層の磁場を誘導することができ、スピントルク発振器は回路に磁場に関連した信号を出力する。
【0006】
[0006] 開示の一つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の説明に記載される。他の特徴、目的および開示の効果は、説明および図面から、そして、請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[0007] 図1は、自由層に弱い交換で結合した少なくとも一つの反強磁性層から成る磁気装置を含むスピントルク発振器から成る装置の1つの実施形態を例示しているブロック図である。
【図2A】[0008] 図2Aは、自由層に弱い交換が結合した少なくとも一つの反強磁性層を含む例示の磁気装置を図示するブロック図である。
【図2B】図2Bは、自由層に弱い交換が結合した少なくとも一つの反強磁性層を含む例示の磁気装置を図示するブロック図である。
【図2C】図2Cは、自由層に弱い交換が結合した少なくとも一つの反強磁性層を含む例示の磁気装置を図示するブロック図である。
【図2D】図2Dは、自由層に弱い交換が結合した少なくとも一つの反強磁性層を含む例示の磁気装置を図示するブロック図である。
【図3】[0009] 図3は、自由層に弱い交換が結合した少なくとも一つの反強磁性層を含んでいる磁気装置を製造する例示の方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0010] 一般的なプラクティスによれば、さまざまな記載されている特徴は、一定の比率で描かれておらず、本開示に関連する特徴を強調するために描かれている。同じ参照番号は、図面及びテキストを通して同じエレメントを示す。
【0009】
[0011] いくつかの磁気装置では、装置に電流を流すことにより、自由層の磁気モーメントを後退させ、その結果、自由層の磁化は発振する。磁気モーメントのこの反転は、スピン歳差と称してもよい。自由層のスピン歳差は、力を生成することができ、例えば比較的高いバンド幅無線通信を支えるために、さまざまな目的のために使われることができる。自由層の一様でない歳差は、磁気装置のパワー出力を減らす。本願明細書において記載されている例示の磁気装置は、自由層の歳差の均一性を改良するのを助けることができる少なくとも一つの反強磁性自由層を含み、それは磁気装置のパワー出力を増やすのを助けることができる。反強磁性層は、下の自由層(例えば上記)に隣接してまたは自由層の外側の周辺部に沿って配置されることができて、下記のように、自由層に結合する弱い交換である。反強磁性層の存在は、自由層の磁化の均一性を改良することができ、それはより同一の歳差を支持する。このような方法で、反強磁性層は、より平らで磁気装置が弱い交換を含まない実施形態と比較して安定している自由層のスピン歳差に被結合反強磁性層を生じさせることができる。
【0010】
[0012] スピントルク発振器は、誘導され所望のスピン歳差反応に関して、タイミング・ジッターおよび位相ノイズを含むエラーにあうことがある。これらのエラーは、STOの自由層のエッジピン留め効果から生じることがある。タイミング・ジッターは、サイクルの間(cycle-to-cycle)の時間のずれおよび磁化の振動の変わりやすさを示す。この変動は、所望の振動パフォーマンスおよび力の転送特性を低下させる。これらのエラーおよび不統一は、STOの信頼性および精度を低下させる。
【0011】
[0013] 磁気装置のパワー出力を減少させることに加えて、自由層のスピン歳差の均一性の改良は、位相ノイズを減らすことができる。位相ノイズは、同期から磁気モーメントをスピンさせている自由層の異なる原子から生じ得る。例えば、自由層のいくつかの原子は磁気モーメントのスピンを導くことができ、その一方で、他の原子は遅れる(ラグが生じる)。自由層に結合する弱い交換である少なくとも一つの反強磁性物質層の導入は、自由層の原子が同期でスピンするのを助け、そうすると、自由層の歳差のレートはより一定である。加えて、自由層のスピン歳差の均一性を増やすことはまた、タイミング・ジッターを減らすことができる。いくつかの実施形態では、タイミング・ジッターおよび位相ノイズの減少は、単一の、支配的な磁化-反転および歳差運動のモードを支えるために磁気装置のジオメトリおよび材料構造を画定することによって成し遂げられることができる。
【0012】
[0014] いくつかの実施形態では、自由層の歳差の均一性は、自由層においてカント磁化容易軸(easy-axis canting)の定義を通じて改良される。例えば、バイアス(カント磁化容易軸)は、平面の構造のために、または、磁気装置の垂直な構造(例えば自由層)のために画定される。このカント磁化容易軸は、磁気装置よりも均一な異方性および反強磁性層に弱い交換で自由層を結合した構造の磁化揺動およびコヒーレント歳差を改善するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、磁気装置は、円、楕円または円筒状を含み、それは消磁を減らすことができる。加えて、いくつかの実施形態では、磁気装置が、装置の外周辺部に配置されたペリメーター層を包含し、第2の歳差モードの強度または可能性を低減するように、デバイスの周辺部でピン留めおよびカップリングを減らすのを助ける。
【0013】
[0015] 図1は、自由層10に弱い交換で結合した少なくとも一つの反強磁性層8から成る磁気装置6を含むスピントルク発振器(STO)4から成るシステム2の1つの実施形態を例示するブロック図である。システム2は、第1の回路12、第2の回路14、一つ以上のプロセッサ16および電流源18を更に含む。いくつかの実施形態では、システム2は一つ以上の装置であってもよい。システム2の実施形態は、いかなるコンピュータデバイス(例えば、デスクトップ・パソコン(PC)、モバイルデバイス、タブレットPCなど)、無線デバイス(例えば、携帯電話、ラジオなど)、衛星通信装置、レーダー装置、並びに、STO4が利用されることができる他のいかなる装置またはシステムも同様に含むことが出来る。
【0014】
[0016] スピントルク発振器4は、磁気装置6を介して磁場の存在を検出することができる。磁気装置6は、自由層10の磁化の歳差運動の発振周波数の変化による磁場を感知することができる。いくつかの実施形態では、磁気装置6は磁気抵抗センサであってもよく、巨大磁気抵抗(GMR)装置またはトンネル磁気抵抗(TMR)装置のうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態では、磁気装置6は、磁気装置またはセンサの他のいかなるタイプでもあってもよい。
【0015】
[0017] ある実施形態では、磁気装置6の反強磁性(AFM)層8は、自由層10と隣接している。ここで使用しているように、隣接層は少なくとも部分的に2つの層に関連することができ、各々に隣接して直接互いに、例えばほぼ物理的に接触する。AFM層8は、反強磁性材料から成ることができる。反強磁性物質材は、原子、イオンまたは材料の分子の磁気モーメントが印加磁場がない場合、順序づけられたアレンジメントを装う傾向がある材料である。いくつかの実施形態では、反強磁性物質層8は、弱い反強磁性物質層であってもよい。
【0016】
[0018] いくつかの実施形態では、自由層10が、低い保磁度を有する材料から成り、自由層10は、外部の磁場に反応する容易にスピン可能であり又は(例えば方向変える)可動磁気モーメントを有する。いくつかの実施形態では、自由層10は、軟磁性を有する強磁性材料から成ることができる。
【0017】
[0019] 自由層10は、磁気異方性を有する磁気自由層であってもよい。磁気異方性を有する材料は、方向性がある(directionally dependent)磁気特性を有することができる。ある実施形態では、磁気異方性は、自由層10のバイアス方向に対してほぼ垂直である。バイアス方向は、特定の方位に沿って磁気モーメントを整列配置することができる。他の実施形態では、自由層10の磁気異方性が、バイアス方向に関して他の角度であってもよい。いくつかの実施形態では、自由層10の磁気異方性は、少なくとも部分的に非均一である。例えば、自由層10の磁気異方性におけるローカル変化が、部分的に不均一の磁気異方性のためにあってもよい。この種の実施形態では、磁気異方性の不統一は、自由層10に他の材料の近くのために起こることができる。例えば、自由層10に隣接したピン留め層によって自由層10のエッジピン留め効果が生じることができ、それはピン留め層に近位の表面に沿って自由層10の磁気異方性をゆがめることができる。
【0018】
[0020] ある実施形態では、反強磁性物質層8は、自由層10に結合する弱い交換である。反強磁性材料の硬磁化によって強磁性材料の軟磁性のシフトが生じるとき、交換結合が結果として生じることができる。例えば、自由層10に対する交換結合反強磁性物質層8は、反強磁性物質層8および自由層10の間の界面に沿って、自由層10の磁化のシフトを結果として生じさせる。ある実施形態では、自由層10に対する弱い交換結合反強磁性物質層8は、例えば自由層10の磁化の分散効果を減らすことによって、自由層10の異方性の不統一を減らす。反強磁性物質層8と自由層10と間の交換結合は比較的弱いのが選ばれ、その結果、自由層10の異方性は維持される。他の例では、自由層10に対する弱い交換結合反強磁性物質層8は、自由層10の異方性の不統一を改良する。本願明細書において結合される弱い交換であると評されるいかなる2つの層も、反強磁性物質層8および自由層10に対する類似の弱い交換被結合である。
【0019】
[0021] 弱い交換結合のための弱い交換バイアスは、反強磁性物質層8と自由層10との間の界面に存在してもよい。例えば、自由層10の磁気異方性の不統一は、いくつかのローカルバリエーション、非線形性または非対称を有する自由層10のヒステリシスループに結果としてなることができる。かかる実施形態では、弱い交換結合は、磁気異方性の不統一を減らすことができ、ヒステリシスループを著しくシフトすることなく、より滑らかなヒステリシスループに結果としてなる。他の例では、弱い交換バイアスは、自由層10の磁気異方性に影響を及ぼすことができる。ある実施形態では、弱い交換結合は、異方性/又は、自由層10のヒステリシススイッチングで熱エネルギーの効果を著しく減らさない。他の例では、弱い交換結合は、自由層10の磁気異方性を誘発しない。更なる実施形態では、AFM層8と自由層10との間の弱い交換結合は、実質的に自由層10の異方性を変えることができない。AFM層8の反強磁性特性は、弱い交換結合のこれらの結果のいずれかを達成するのに選ばれることができる。
【0020】
[0022] ある実施形態では、自由層10のスイッチングフィールドのヒステリシスループは、弱い交換結合によって著しく変えられることができない。ある実施形態では、弱い交換結合は、おおよそ-1ないし1エルステッド(Oe)の間のどこにでも反強磁性交換フィールド(Hex)をシフトすることができる。他の例では、弱い交換結合は、おおよそ-5ないし5Oeの間のどこにでもHexをシフトすることができる。他の例では、ヒステリシスループは、ほぼ0(Oe)に集中する。他の実施形態では、ヒステリシスループは他の磁場の強度値に集中する。ある実施形態では、反強磁性物質層8と自由層10との間の弱い交換結合は、自由層10のいかなる界面スピンをもピンでとめることに結果としてならない。いくつかの実施形態では、カント角度(canting angle)は、磁化を切替えずに、できるだけ大きくてもよい。
【0021】
[0023] 電流源18は、STO4に電流を提供することができる。電流源18は、電池または他のいかなる電流源でもあってもよい。ある実施形態では、磁気装置6に適用される電流は、スピン分極化電流19である。STO4は、磁気抵抗および磁気抵抗電流効果を用いてスピン分極化電流19によって誘発された磁気を検出する。ある実施形態では、電流源18からの電流が磁気装置6の層に印加されるまで、スピン分極化電流19はスピン分極化しない。ある実施形態では、スピン分極化電流19は、自由層10の磁化の歳差を駆動することができる。スピン分極化電流19の量は、歳差において失われるエネルギーを補償するように選ばれることができる。他の例では、スピン分極化電流19の方向は、自由層10の磁化の歳差の方向に影響するように選ばれることができる。
【0022】
[0024] 自由層10を有するAFM層8を結合する弱い交換の効果は、分極化電流19の存在において自由層10の磁化の改良した歳差となり、かかる実装におけるその後の通信を改善することができる。ある実施形態では、STO4は、例えば、第1の回路12と第2の回路14との間でシステム2のチップ間(chip-to-chip)通信を援助することができる。ここで使用しているように、「チップ間(chip-to-chip)」は、装置内の多くのデバイスまたはコンポーネントが一緒に電気的に結合されるいかなる実装でも参照することができる。装置の実施形態は、第1の回路12および第2の回路14、チップ、メモリ、プロセッサ、マイクロコントローラ、ビデオカード等のようないかなる回路も含むことができる。いくつかの実施形態では、システム2が、例えば、ギガ・ヘルツ(GHz)以上において計量される作動周波数を備えた少なくとも一つの高レートデバイスを採用する。
【0023】
[0025] STO4は、第1の回路12のためのローカル発振器であってもよい。ある実施形態では、STO4は、検出磁場に関連した信号を第1の回路12に出力することができる。ある実施形態では、検出磁場に関連した信号は、クロック信号11である。第1の回路12は、信号13を第2の回路14へ移すことができ、クロック信号11が、信号13のためのキャリア周波数として使われる。ある実施形態では、反強磁性物質層8と自由層10との間の弱い交換結合は、クロック信号11の整合性および信頼性を改善する。ある実施形態では、クロック信号11は狭帯域幅、低いジッターおよび良い位相ノイズ特性を有することができる。いくつかの実施形態では、クロック信号11は、ほぼ100メガヘルツ(MHz)までのバンド幅を有することができる。ある実施形態では、クロック信号11は、約100キロヘルツ(kHz)と約100MHzとの間のバンド幅を有する。刻時のためにSTO4を使用することは、第1の回路12に結合されたローカル発振器(LO)回路を有する必要性を除去することができる。
【0024】
[0026] 他の実施形態では、システム2は追加的な回路を含むことができる。例えば、システム2は複数のスピントルク発振器4を含むことができる。例えば、システム2は、第2の回路14に結合して、キャリア周波数を復号化するために用いる第2のSTOを含むことができる。いくつかの実施形態では、STO4はスピントルク・ナノ発振器(STnO)である。図1に示されるシステム2の実施形態は、自由層10に弱い交換結合したAFM層8を含む磁気装置6を含むことができるシステムの単なる一例である。例えば、磁気装置6を含むシステムの他の実施形態で、電流源18は、システム2の外部に位置する。
【0025】
[0027] 図2A-2Dは、自由層に弱い交換結合した少なくとも一つの反強磁性層を含む例示の磁気装置が図示するブロック図である。磁気装置の概略断面図は、図2A-2Dにおいて表される。磁気装置は、いかなる適切な形状も有することができる。図2Aは、8、10の間の界面23に沿って、自由層10に弱い交換結合した反強磁性層8から成ることができる磁気装置20の1つの実施形態を表す。反強磁性物質層8が自由層10に結合する弱い交換であってもよいので、自由層10の磁気異方性は、AFM層8または自由層10に弱い交換結合したAFM層8を含まない磁気装置と比較してより均一である。ある実施形態では、自由層10のエッジピン留め効果は、AFM層8と結合する弱い交換のために、界面23に沿って減少する。自由層10のエッジピン留め効果の減少は、自由層10をより自由に歳差運動可能にすることができ、自由層10の歳差の均一性を増やすのを助けることができる。
【0026】
[0028] ある実施形態では、平面方向または垂直な磁化に関して均一な磁化およびコヒーレント反転および歳差をサポートするために傾けられる磁化容易軸が定められる。ある実施形態では、自由層10の磁化は、平面の外か自由層10の平面においてスピンするか、または間の角度で傾けられる。他の例では、傾けられた磁化容易軸は、ピン留め層において定められることができる。ある実施形態では、弱いAFM結合は、磁化のいかなる方位にも適用されることができる。
【0027】
[0029] ある実施形態では、自由層10はパーマロイであってもよく、すなわち、少なくとも部分的にニッケル鉄(NiFe)から成る。例えば、自由層10は、ほぼ80%のNiおよび20%のFeであってもよい。自由層10の追加的な実施形態は、他のNiFe組成物でまたは他の適切な材料で成ることができる。ある実施形態では、自由層10は、厚さ1乃至5ナノメートル(nm)であってもよい。他の実施形態では、自由層10は他の厚さであってもよい。
【0028】
[0030] 反強磁性物質層8の実施形態は、マンガン(Mn)、白金・マンガン(PtMn)、イリジウム・マンガン(IrMn)、ニッケル・マンガン(NiMn)、鉄・マンガン(FeMn)、パラジウム・白金・マンガン(PdPtMn)またはそれらの組合せから成ることができる。他の実施形態では、AFM層8は、他の材料から成ることができる。いくつかの実施形態では、AFM層8は、厚さ1乃至5ナノメートルであってもよい。他の実施形態では、AFM層8は、他の厚さであってもよい。
【0029】
[0031] 磁気装置20は、ピン留め層22から更に成ることができる。ピン留め層22は、ほぼ固定された磁気モーメントを有するリファレンス層であってもよい。ピン留め層22の実施形態は、少なくとも一つのニッケル鉄(NiFe)、ニッケル鉄合金、鉄のコバルト(FeCo)、ニッケル鉄コバルト(NiFeCo)またはそれらの組合せから成ることができる。他の適切な材料が、また、ピン留め層22のために使われることができる。いくつかの実施形態では、自由層10の磁化は、ピン留め層22の固定された磁場に関してバイアスされる。自由層10を磁気的バイアスすることにより、自由層10の磁化をスピントルク発振のために歳差運動させることができる。ピン留め層22は、いくつかの実施形態の自由層10より大きな厚みを有することができる。ある実施形態では、ピン留め層22は、厚さ約3乃至20ナノメートルような、厚さ約1乃至20ナノメートルであってもよい。他の実施形態では、ピン留め層22は他の厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、ピン留め層22の厚さは、スイッチングフィールドの強さのために選ばれることができ;より厚いピン留め層22は、より大きなスイッチングフィールドに至る。
【0030】
[0032] 図2Aの実施形態では、自由層10は、反強磁性物質層8とピン留め層22との間に位置する。すなわち、反強磁性層8は、自由層10の第1の側に置かれることができ、ピン留め層22は第1の側の反対側に自由層10の第2の側に配置され得る。ある実施形態では、例えば、反強磁性物質層8がピン留め層22に結合するという可能性を減らすのを助けるために、反強磁性物質層8は、自由層10と関連して磁気装置20内でピン留め層22から比較的遠く保たれることができる。ある実施形態では、ピン留め層22の固定された磁気モーメントは、他の反強磁性層によって更に安定する。
【0031】
[0033] いくつかの実施形態では、磁気装置20はまた、ピン留め層22の上に形成されるスペーサ層24から成ることができる。スペーサ層24の1つの実施形態は、非磁性スペーサ層であってもよい。磁気システム20が、巨大磁気抵抗(GMR)センサであるとき、非磁性スペーサ層24の1つの実施形態は電気伝導スペーサ層であってもよい。別の例として、磁気システム20の磁気抵抗のソースが、トンネル磁気抵抗(TMR)効果に基づくとき、スペーサ層24は、非磁性、電気的に絶縁バリア層であってもよい。ある実施形態では、スペーサ層24の厚さは、ほぼ1ナノメートルであってもよい。他の実施形態では、スペーサ層24は他の厚さであってもよい。
【0032】
[0034] 図2Bは、トンネル磁気抵抗(TMR)装置30の1つの実施形態を表す。TMR装置30は、自由層10に弱い交換結合した反強磁性層8およびトンネルバリア層36から成ることができる。TMR装置30は、ピン留め層22に加えて第2のピン留め層32を更に含むことができる。トンネルバリア層36は、TMR装置30にTMR機能性を提供することができる。ある実施形態では、トンネルバリア層36は、酸化アルミニウム(AlOx)または酸化マグネシウム(MgOx)のうちの1つまたは他のいかなる適切な材料でもあってもよい。
【0033】
[0035] ある実施形態では、ピン留め層22および第2のピン留め層32は、対向する磁化を有することができ、所望の極性のスピン分極化する電流を供給するために自由層10の対向側に配置される。実質的に対向する磁化を有する2つのピン留め層の包含は、自由層10の歳差方向を制御するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、ピン留め層22および第2のピン留め層32は、TMR装置30からある程度の距離にあり、または、隣接するというどちらにでも位置することができる、
[0036] 図2Cは、巨大磁気抵抗(GMR)装置40の1つの実施形態のブロック図である。この例では、GMR装置40は、第1の反強磁性物質層26および第2の反強磁性物質層44を有することができる。第1の反強磁性層26は、自由層10の第1の側25に結合する弱い交換であってもよい。第2の反強磁性層44は、自由層10の第2の側27に結合する弱い交換であってもよい。この例では、第1の側25は、第2の側27に対向する。反強磁性物質層26および44の両者は、自由層10の磁気異方性の均一性を改良する。自由層10の頂部又は底部のAFM層26または44を位置決めすることにより、それぞれ、水平表面25または27を介して交換結合する結果となる。弱いAFM交換結合層26および44の自由層10への追加は、自由層10の磁化に対する分散効果を下げることができる。スピンが、側25および27を含む自由層10を通過するので、いかなる歳差も自由層10の側に沿ってスピンの欠陥によって影響され得る。自由層10の両側25および27上に反強磁性層26または44を有することは、その均一性を改良するために歳差を更に調整する。
【0034】
[0037] GMR装置40は、スペーサ層として非磁性層46を含むことができる。いくつかの実施形態では、非磁性層46は銅(Cu)等でできていてもよい。非磁性層46の他の実施形態は、非磁性、電気的絶縁バリア層であってもよい。非磁性層46は、GMR装置40に巨大磁気抵抗機能性を提供することができる。
【0035】
[0038] GMR装置40はまた、ピン留め層として合成反強磁性(SyAF)バイレイヤー43を含むことができる。ある実施形態では、電流はSyAFバイレイヤー43に印加される。ある実施形態では、SyAFバイレイヤー43の電流は、スピン分極化する。GMR装置40は、GMR装置40のセンサ・スタックを通じて形成されるおキャップ層であってもよいメタライゼーション層48を更に含むことができる。メタライゼーション層48の1つの実施形態は、タンタル(Ta)であってもよいが、キャッピングに適しているいかなる材料も使われることができる。
【0036】
[0039] 図2Dは、磁気センサ50の実施形態のブロック図である。本願明細書において記載されているように、磁気センサ50は、周辺部層52の追加で、磁気装置20(図2A)と同じ構造を有する。周辺部層52は、エッジピン留め効果を抑制するために少なくとも一つの自由層10またはピン留め層22に隣接して配置される。図2Dに示される実施形態において、周辺部層52は、自由層10の外側の周辺部54に沿って、少なくとも部分的に形成される。磁気センサ50が楕円であるか円形の装置として形づくられる実施形態において、層8、10、22および24は、図2Dに示されるイメージの平面と、実質的に直角をなす平面にほぼ楕円であるか円断面形状を有する層であってもよい。周辺部層52は、いくつかの又は全部の層8、10、22および24周辺で形成されることができる。ある実施形態では、周辺部層52は、自由層10の外側の周辺部54だけ周辺で形成される。周辺部層52は、自由層10の磁化の歳差の均一性を更に改良する。
【0037】
[0040] ある実施形態では、周辺部層52は、反強磁性材料であってもよい。AFM周辺部層52は、少なくとも自由な層10に結合して、弱い交換であってよい。この種の実施形態では、AFM周辺部層52は、自由層10の周辺部54に沿ってエッジピン留め効果を減らす。
【0038】
[0041] 他の例では、周辺部層52は、柔らかい層であってもよい。柔らかい周辺部層52は、高浸透性の材料であってもよい。自由層10の磁化が傾けられるとき、磁化は、磁化歳差として自由層10のエッジに形成される磁極によって影響されることができる。自由層10の周辺部54に沿った磁極によって、不均一の消磁フィールドが生じることがありえる。柔らかい周辺部層52は、柔らかい層の透過性を原因として生じるので、これらの表面の極からいかなる磁化も描くことができる。同様に、柔らかい周辺部層52は、ストレイ磁場を発することができない。それがより均一であるように、これによって材料特性が磁化の歳差を支配することができることができる。
【0039】
[0042] 他の例では、周辺部層52は、分断しているか非ピン留め層であってもよい。分断または非ピン留め層は、それと接触して材料の化学量論(化学組成)により多くの均一性を作ることができる。例えば、堆積の間、堆積する材料の組成は、材料のエッジとバルクとの間で異なってもよい。分断または非ピン留め層は、材料の化学組成を均質にすることによってこれらの層の均一性を改良することができる。例えば、分断または非ピン留め層周辺部層52は、周辺部54に沿って自由層10の化学量論を均質にすることができる。
【0040】
[0043] (例えば、ピン留め層22のような)図2A-2Dに関して本願明細書において記載する、どんな層でも、一層または多数の層よりも多い単一の層または構造であってよい。さらに、層のいずれかまたは図2A-2Dの実施形態のいずれかに記載されている特徴は、追加的な実施形態のために互いに組み合わせられることができる。磁気装置20、30、40または50はまた、追加的な層または構造を備えることができる。例えば、磁気装置20、30、40または50のいずれもが、磁気シールド層を含むことができる。かかる実施形態では、磁気シールド層は、ニッケル鉄(NiFe)のような電気伝導、磁気材料であってもよい。更なる実施形態において、装置20、30、40および50の層が、例えば、多結晶、単結晶、アモルファスなどいかなるタイプの構造であってもよい。
【0041】
[0044] 図3は、弱い交換が自由層に結合した少なくとも一つの反強磁性層から成る磁気装置を製造する例示の方法60を図示しているフローチャートである。方法60は、少なくとも部分的に不均一の磁気異方性(62)を有している自由層(例えば自由層10)を形成することを含むことができる。方法60は、自由層(64)と隣接している第1の反強磁性物質層(例えば反強磁性物質層8、反強磁性物質層26、反強磁性物質層34または反強磁性物質層44)を形成することを更に含むことができる。この種の実施形態において、第1のAFM層は、自由層の磁気異方性の少なくとも部分的に不均一性を減らすことができる。
【0042】
[0045] 方法60は、第1のAFM層を自由層(66)に結合している弱い交換を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のAFM層は少なくとも第1のAFM層の材料特性に基づいて、自由層に結合する弱い交換であってもよく、自由層に隣接して第1のAFM層を形成すると、即座に、第1のAFM層は自由層に結合する弱い交換である。他の実施形態では、AFM層の堆積の後、熱処理アニールの実行を通して、第1のAFM層は、自由層に結合する弱い交換であってもよい。熱処理アニールの温度または継続期間は、交換結合の所望の強さを成し遂げるように選ぶことができる。熱処理アニールの温度および継続期間のいくつかの実施形態は、温度は約100乃至約500℃の間であり、継続時間は約0.1時間乃至5時間である。ある例では、熱処理アニールは、ほぼ250℃で約1時間実行される。他の実施形態では、堆積プロセスに対する変更または磁気装置の構成は、所望の強さの弱い交換結合を成し遂げるためになされることができる。
【0043】
[0046] ある実施形態では、方法60は、自由層に隣接して第2の反強磁性物質層を形成することを含み、第2の反強磁性物質層は、第1の反強磁性物質層の反対側で自由層の側にある。他の実施形態では、方法60は、自由層周辺で少なくとも部分的に周辺部層を形成することを更に含むことができ、周辺部層は、自由層の磁気異方性の不均一を更に減らす。さらに別の実施形態では、方法60は、ピン留め層を形成することを含むことができ、自由層は第1の反強磁性層とピン留め層との間に位置する。
【0044】
[0047] 現在公知であるかまたは後で開発される堆積または製造のいかなる方法もまた、方法60を実装するために用いることができる。例えば、磁気スパッタリングまたは分子線エピタクシ(MBE)は、層を堆積させるのに用いることができる。化学的または物理的な堆積方法が、使われることができる。いくつかの実施形態では、薄膜堆積技術は、方法60を実行するのに用いられる。
【0045】
[0048] 既存のいくつかのスピントルク発振器は、タイミング・ジッター、位相ノイズおよび最適下限または最大下限の歳差に従属する。反強磁性層を自由層に結合している弱い交換によって、これらの影響を減らし、歳差をより均一にすることができる。ある実施形態では、自由層の磁気の歳差は、増加する。他の例では、エッジピン留め効果は、一つ以上の反強磁性層を自由層に結合している弱い交換によって減少する。ある実施形態では、弱いAFM交換結合は、磁気装置6の温度変動のために、ノイズ効果を減らす。
【0046】
[0049] 本開示の実施形態は、システム2を走らせるために必要なパワーを減らすことができる。本開示の更なる実施形態は、磁気装置6による出力であるパワーを増やすことによってシステム2の全体的なサイズを減らすことができる。本開示の実施形態によれば、磁気装置は、低いジッター、低い位相ノイズおよび高い出力パワーを有するより高い周波数広帯域レンジ調整可能発振器を提供することができる。
【0047】
[0050] 明細書および特許請求の範囲において、2つの材料に関して用いられる用語「on」は、材料の間に少なくとも接触していることを意味し、一方、用語「over」は、材料が近くにあるが、1以上の介在する材料があってもよく、接触は必須ではない。「on」も「over」も、ここで用いられるようにいかなる指向性も暗示しない。用語「約」、「ほぼ」、「おおよそ」等は、例示の構造又はプロセスの不適合を生じない限り変更可能な範囲を示すものである。
【0048】
[0051] ウェーハまたは基板の方位に関係なく、この開示において用いられているように、相対的な位置の条件は、従来の平面またはウェーハまたは基板の加工面と平行な平面に基づいて定められる。この開示において用いられている用語「水平」または「横方向」は、ウェーハまたは基板の方位に関係なく、従来の平面またはウェーハまたは基板の加工面と平行な面として定義される。用語「垂直」は、水平に対して垂直な方向のことを称する。用語「上(on)」、「側」(「側壁」)、「より高い」、「より低い」、「わたって」、「頂部」、「下」は、ウェーハまたは基板の方位に関係なく、ウェーハまたは基板の従来の平面または加工面に関して定められる。
【0049】
[0052] 開示のさまざまな態様を、記載してきた。本願明細書において記載されている実施形態の態様または特徴は、他の実施形態に記載した態様または特徴が他のものと組み合わせられることができる。これらの、そしてまた他の、実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気異方性を有する自由層(10)であって、前記磁気異方性が少なくとも部分的に不均一であることを特徴とする自由層と、
前記自由層に隣接して、弱い交換結合された反強磁性層(8)であって、前記弱い交換結合が自由層の磁気異方性の不均一を減らすことを特徴とする反強磁性層と、
を有することを特徴とする磁気装置(2)。
【請求項2】
前記反強磁性層が、第1の反強磁性物質層(26)からなり、
前記磁気装置が、
前記自由層と隣接し、弱い交換結合された第2の反強磁性物質層(44)とを更に有し、
前記第2の反強磁性物質層の弱い交換結合が、自由層の磁気異方性の不均一を更に減らすことを特徴とする請求項1に記載の磁気装置。
【請求項3】
前記第2の反強磁性物質層が、前記自由層の外側の周辺部(54)周辺で、少なくとも部分的に形成されることを特徴とする請求項2に記載の磁気装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204837(P2012−204837A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−64758(P2012−64758)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】