説明

反応容器プレート及び反応処理方法

【課題】反応容器プレートの外部からの異物の進入や、外部への環境汚染を防ぐ。
【解決手段】反応容器プレート1本体(プレート)は、反応容器5、反応容器5に接続された各流路13,15,17,19、サンプル容器35に接続されるサンプル容器流路35a、及び各流路13,15,17,19、35aに繋がる流路ポート配置部を備え、それらは密閉系を形成し、ロータリー式切替えバルブ87が装着されている。ロータリー式切替えバルブ87は液体又は気体の吸引・吐出を行なうシリンジを内部に備え、シリンジに繋がるシリンジポートが設けられたシリンジポート配置部を反応容器プレート1の流路ポート配置部に対向する位置に備えている。ロータリー式切替えバルブ87はローターキャップ89やバックアップリング91からなるローター固定部材によって、シリンジポート配置部が流路ポート配置部側に押し付けられた状態で回転可能に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的分析、生化学的分析、又は化学分析一般の分野において、医療や化学の現場において各種の解析や分析を行なうのに適する反応容器プレート及びその反応容器プレートを処理するための反応処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学的分析や通常の化学分析に使用する小型の反応装置としては、マイクロマルチチャンバ装置が使用されている。そのような装置としては、例えば平板状の基板表面に複数のウエルを形成したマイクロタイタープレートなどのマイクロウエル反応容器プレートが用いられている(例えば特許文献1を参照。)。
また、微量の液体を定量的に扱うことができる微量液体秤取構造として、第1流路及び第2流路と、上記第1流路の流路壁に開口する第3流路と、第2流路の流路壁に開口して第3流路の一端と第2流路を連結し第3流路よりも相対的に毛管引力が働きにくい性質を第4流路とを有する構造を備えたものがある(例えば特許文献2,3を参照。)。その微量液体秤取構造によれば、第1流路に導入された液体が第3流路内に引き込まれた後、第1流路に残存する上記液体を取り除き、第3流路の容積に応じた体積の液体を第2流路に秤取することができる。
【特許文献1】特開2005−177749号公報
【特許文献2】特開2004−163104号公報
【特許文献3】特開2005−114430号公報
【特許文献4】特許第3452717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のマイクロウエル反応容器プレートは、使用時には反応容器プレートの上面は大気に開放された状態となる。そのため、サンプルに外部から異物が進入する恐れがあるし、逆に反応生成物が外部の環境を汚染することもありうる。
また、特許文献2,3に開示された微量液体秤取構造では、第1流路の両端及び第2流路の両端に液体導入用のポートが形成されているが、それらのポートは大気に開放されており、それらのポートを介して反応生成物が外部の環境を汚染することもありうる。
そこで本発明は、反応容器プレートの外部からの異物の進入や、外部への環境汚染を防ぐことができる反応容器プレート及びその反応容器プレートを用いた反応処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる反応容器プレートは、反応容器、反応容器に接続された反応容器流路、反応容器とは別途設けられた封止容器、封止容器に接続される封止容器流路、及び前記反応容器流路、封止容器流路に繋がる各流路ポートが配置された流路ポート配置部を備えたプレートと、プレートに回転可能に装着され、内部でプランジャを摺動させて液体又は気体の吸引・吐出を行なうシリンジを備えるとともにそのシリンジに繋がるシリンジポートが配置されたシリンジポート配置部を流路ポート配置部に対向する面に備え、シリンジポート配置部が流路ポート配置部に接してシリンジポートを反応容器流路に繋がるポート又は封止容器流路に繋がるポートに選択的に接続することができるロータリー式切替えバルブと、プレートとロータリー式切替えバルブに同時に係合してプレートとロータリー式切替えバルブを固定するとともに流路ポート配置部とシリンジポート配置部とを押し付けるローター固定部材と、を備え、反応容器、反応容器流路、封止容器及び封止容器流路が密閉系を形成するものである。
【0005】
上記の反応容器プレートによれば、密閉系を形成する反応容器、反応容器流路、封止容器、封止容器流路及び反応容器流路、封止容器流路に繋がる流路ポートが配置された流路ポート配置部を備えたプレートに、液体又は気体の吸引・吐出を行なうシリンジを備えてそのシリンジに繋がるシリンジポートを各流路ポートに選択的に接続することができるロータリー式切替えバルブが回転可能に装着されているので、反応容器流路及び封止容器流路を反応容器プレートの外部へ引き出すことなく反応容器流路及び封止容器流路を介した液体の送液を行なうことができ、反応容器プレート内部への異物の進入を防止するとともに、反応容器プレート内部から外部への液体の飛散による環境汚染も防止できる。
【0006】
ところで、本発明の反応容器プレートの構成においては、シリンジポート配置部と流路ポート配置部との接触部におけるシール性が重要であり、シリンジを用いて液体を流通させようとするときにこの部分のシール性が悪いと液漏れが発生して正確な送液を行なうことができない。そこで、プレートとロータリー式切替えバルブに同時に係合してプレートとロータリー式切替えバルブを固定するとともに流路ポート配置部とシリンジポート配置部とを押し付けるローター固定部材が設けられており、流路ポート配置部とシリンジポート配置部との接触面のシール性を向上させている。
【0007】
本発明の反応容器プレートの構成として、プレートの流路ポート配置部の周囲にプレート表面から突出した固定部材係合部が設けられており、固定部材係合部の内側には、ロータリー式切替えバルブのシリンジポート配置部とは反対側の面の周縁部に接するとともに固定部材係合部と係合し、シリンジポート配置部を流路ポート配置部に押し付けるリング状の下面側固定部材がローター固定部材として取り付けられている例を挙げることができる。
【0008】
上記の例では、ロータリー式切替えバルブのシリンジポート配置部とは反対側の面の周縁部を押さえてシリンジポート配置部を流路ポート配置部に押し付けることにより、流路ポート配置部とシリンジポート配置部との接触面のシール性を向上させている。
【0009】
なお、以下において、ロータリー式切替えバルブのシリンジポート配置面とは反対側の面を「下面」とし、その反対側の面、すなわちシリンジポート配置面側の面を「上面」とする。同様に、プレートその他の部材についてもロータリー式切替えバルブの「下面」と同じ側の面を「下面」とし、その反対側の面を「上面」とする。
【0010】
下面側固定部材の取付け方法としては、ロータリー式切替えバルブの下面側から固定部材係合部の内側に下面側固定部材を押し込んで取り付ける方法が考えられる。そのような場合には、下面側固定部材は樹脂からなるとともにその外径は固定部材係合部の内径と略同径であり、下面側固定部材の外周面と固定部材係合部の内周面の対応する位置に互いに係合する第1係合構造部が設けられ、その第1係合構造部は、下面側固定部材の外周面側表面又は固定部材係合部の内周面側表面のいずれかがプレート側に閉じる方向に傾斜していることが好ましい。そうすれば、下面側固定部材を固定部材係合部の内側に押し込んだときに固定部材係合部が第1係合構造部の傾斜に沿って勝手に弾性変形するため、下面側固定部材を容易に取り付けることができる。なお、「下面側固定部材の外径が固定部材係合部の内径と略同径である」とは、下面側固定部材の外径が固定部材係合部の内径と同一である場合のほか、下面側固定部材の外径が固定部材係合部の内径よりも少し小さい場合も含む。また、ここでの「傾斜」とは、直線的な傾斜している場合のほか、湾曲しながら傾斜している場合も含み、以下の「傾斜」においても同意である。
【0011】
また、プレートのロータリー式切替えバルブを装着する位置に貫通穴が設けられ、ロータリー式切替えバルブは、プレート側に伸びて貫通穴に先端から挿入される挿入部と、挿入部よりも大きい径をもって挿入部の基端部に設けられ、貫通穴に挿入されずにプレートの下面に接する非挿入部とからなり、プレート下面の貫通穴の周囲に流路ポート配置部が設けられているとともに、非挿入部上面の挿入部基端部の周囲にシリンジポート配置部が設けられており、挿入部先端は貫通穴を貫通してさらにプレートの上面から突出した突出部となっており、突出部の外周面に、プレート上面に接触しながら突出部外周面にも係合し、ロータリー式切替えバルブを係止するとともに挿入部を貫通方向に引張する先端側固定部材がローター固定部材として取り付けられている構成にすることもできる。
【0012】
上記の構成によれば、先端側固定部材によってロータリー式切替えバルブの挿入部が貫通方向に引張されるため、それに伴なって非挿入部上面の挿入部基端部の周囲に設けられたシリンジポート配置部が流路ポート配置部側に押し付けられ、シール性が高まる。
この例が上記の下面側固定部材を取り付けた例と異なる点は、下面側固定部材を取り付けた場合にはシリンジポート配置部の周縁部側が流路ポート配置部側に押し付けられるのに対し、先端側固定部材を取り付けた場合にはシリンジポート配置部の中央部側が周縁部側に押し付けられる点である。したがって、ロータリー式切替えバルブの固定は下面側固定部材、先端側固定部材のいずれか一方のみによっても可能であるが、これら両方の固定部材を取り付けることにより、シリンジポート配置部の周縁部側と中央部側とを同時に流路ポート配置部側に押し付けることができるので、シリンジポート配置部に加わる力が面内でより均一になり、シール性をさらに向上させることができる。
【0013】
なお、先端側固定部材としては、ロータリー式切替えバルブの挿入部先端から嵌め込む方式のリング状又はキャップ状の部材が考えられる。そのような場合は、先端側固定部材は樹脂からなるとともにその内径は突出部の外形と略同径であり、先端側固定部材の内周面と突出部の外周面の対応する位置に互いに係合する第2係合構造部が設けられ、第2係合構造部は、先端側固定部材の内周面側表面又は突出部の外周面側表面が突出部先端側へ閉じる方向に傾斜していることが好ましい。そうすれば、リング状又はキャップ状の先端側固定部材をロータリー式切替えバルブの挿入部先端に嵌めて基端部側へ押し込んでいくだけで、第2係合構造部の傾斜に沿って先端側固定部材が勝手に弾性変形して所定の位置で互いに係合するため、先端側固定部材を容易に取り付けることができる。なお、「先端側固定部材の内径が突出部の外径と略同径である」とは、先端側固定部材の内径が突出部の外径と同一である場合のほか、先端側固定部材の内径が突出部の外径よりも少し大きい場合も含む。
【0014】
ところで、試薬や希釈水などの液体や試薬などの粉末状の固体を予め封入しておく場合、封止容器を封止容器流路に接続した状態にしておくと反応容器の未使用時でもその液体や固体が封止容器流路に入り込んでしまう虞がある。そこで本発明の反応容器プレートにおいては、使用時にのみ封止容器流路が封止容器に接続されるようにすることができる。そのような構造の一例は、封止容器の底面には外部から押圧して貫通することができる貫通部が設けられており、封止容器流路の一端が上向きに突出しており、使用時に封止容器流路の一端が貫通部を貫通することにより封止容器流路が封止容器に接続されるものである。この構造により、封止容器と封止容器流路を分離した状態で反応容器プレートを保存することができるので、封止容器に予め液体を封入しておいても、保存時に封止容器流路を介しての封止容器内の液体の蒸発を防止することができる。そして、封止容器に予め封入されている液体が試薬である場合は、その試薬の濃縮を防止することができる。
【0015】
上記の場合、封止容器は、未使用時は第1貫通部が封止容器流路の一端に対向するように保持され、使用時は封止容器流路の一端が第1貫通部を貫通した状態で保持されるそうすれば、封止容器を下降させるだけで封止容器と封止容器流路とを接続した状態で維持して使用することができる。
【0016】
さらに、封止容器の、内部に収容された液体に触れない位置に、外部から押圧して貫通することができる第2貫通部が設けられており、プレート本体は、一端が上向きに突出し、その一端が封止容器の使用時に第2貫通部を押圧して貫通する封止容器エアー抜き流路をさらに備えていてもよい。そうすれば、封止容器への液体の注入や封止容器からの液体の吸引の際に、封止容器と封止容器エアー抜き流路の間で気体を流通させることができる。これにより、封止容器への液体の注入及び封止容器からの液体の吸引を円滑に行なうことができる。
【0017】
上記封止容器は、サンプル液を収容するためのサンプル容器として用いることができる。そうすれば、サンプルを収容するための容器を別途準備する必要がなくなる。
【0018】
封止容器をサンプル容器として用いる場合、サンプル容器の1つの面は、尖端部をもつ部材で貫通できるとともに貫通した部材の引抜き後にそこにできた穴を弾性力によって修復できる弾性部材からなる封止部材で封止されていることが好ましい。そうすれば、尖端部をもつ注入器具で封止部材を介してサンプル容器内にサンプル液を注入することができる上、注入器具の引抜き後にサンプル液がサンプル容器外から漏れることを防止できる。
【0019】
また、封止容器に予めサンプル前処理液又は試薬が収容されていてもよい。そうすれば、サンプル容器にサンプル前処理液又は試薬を分注する必要がなくなる。
【0020】
また、封止容器は遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器としても用いることもできる。そうすれば、測定対象の遺伝子を微量にしか含んでいないサンプル液でもPCR法やLAMP法など遺伝子増幅反応によって反応容器プレート上で遺伝子を増幅して分析精度を高めることができるようになる。その場合の遺伝子増幅容器は所定の温度サイクルで温度制御するのに適した形状になっていることが好ましい。なお、反応容器を遺伝子増幅部とすることもできる。
【0021】
本発明の反応容器プレートの具体的な流路構成例として、反応容器に接続された反応容器エアー抜き流路をさらに備え、上記反応容器流路は、貼り合わされた2枚の部材の接合面に形成された溝、又は上記溝及び上記基板に形成された貫通孔からなり、かつ、上記シリンジに接続される主流路と、上記主流路から分岐した所定容量の計量流路と、一端が上記計量流路に接続され他端が上記反応容器に接続された注入流路を備え、上記主流路及び上記反応容器エアー抜き流路は密閉可能になっており、上記注入流路は上記計量流路よりも細く形成されて上記主流路及び上記計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに上記主流路内の上記液体がパージされるときのパージ圧力状態では上記液体を通さず、それらよりも加圧状態で上記液体を通すものを挙げることができる。
ここで、「注入流路は計量流路よりも細く形成されている」とは、注入流路が複数の流路により構成されている場合には、注入流路を構成する複数の流路がそれぞれ計量流路よりも細く形成されていることを意味する。
【0022】
本発明にかかる反応容器プレートを用いた反応処理方法は、上記流路構成例の本発明の反応容器プレートを用いた反応処理方法であって、上記導入圧力で上記主流路及び上記計量流路に液体を充填し、上記主流路に気体を流して上記計量流路内に上記液体を残存させつつ上記主流路内の上記液体を排出し、上記主流路内を上記導入圧力よりも大きく陽圧に若しくは上記反応容器内を陰圧に又は上記陽圧及び上記陰圧の両方にすることにより上記注入流路を介して上記計量流路内の上記液体を上記反応容器に注入する。
【0023】
上記流路構成例において、上記注入流路の水滴に対する接触角は90度以上であり、上記注入流路と上記計量流路の境界の面積は1〜10000000μm2(平方マイクロメートル)であることが好ましい。そうすれば、主流路及び計量流路に液体が導入されるときに液体が注入流路に浸入しにくくなり、主流路及び計量流路に液体を導入するときの導入圧力を大きくすることができる。
ここで、注入流路が複数の流路により構成されている場合には、上記面積は注入流路を構成する複数の流路のそれぞれの上記計量流路との境界の面積を意味する。
【0024】
複数の上記反応容器を備え、それらの反応容器ごとに上記計量流路及び上記注入流路を備え、上記主流路に複数の上記計量流路が接続されているようにしてもよい。そうすれば、複数の計量流路に液体を順次導入することができ、その後、注入流路を介して複数の反応容器に液体を同時に注入することができる。
【0025】
上記注入流路の上記他端は上記反応容器の内側上面に突出して形成された凸部の先端に配置されており、上記凸部は先端部が基端部に比べて細くなっていることが好ましい。そうすれば、注入流路を通って反応容器に注入される液体が反応容器に滴下しやすくなる。
【0026】
本発明の反応容器プレートを、遺伝子を含んだサンプルを測定するための反応容器プレートとする場合には、予め遺伝子増幅反応を行なったサンプルをこの反応容器プレートに導入してもよく、又はこの反応容器プレートの反応容器が遺伝子増幅反応を行なうことができるように、予め遺伝子増幅試薬が収容されるか、遺伝子増幅試薬を分注するように構成することができる。
遺伝子増幅反応にはPCR法やLAMP法などを含む。DNAを増幅するPCR法に着目すれば、前処理なしで血液などのサンプルから直接PCR反応を行なわせる方法も提案されている。そこでは、遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法において、遺伝子を含むサンプル中の遺伝子包含体もしくは遺伝子を含むサンプルそのものを遺伝子増幅反応液に添加して、添加後の該反応液のpHが8.5−9.5(25℃)で遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する(特許文献4参照。)。
【0027】
上記反応容器はその底部又は上方から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されているようにしてもよい。そうすれば、反応容器内の液体を他の容器へ移動させることなく光学的に測定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の反応容器プレートでは、密閉系を形成する反応容器、反応容器流路、封止容器及び封止容器流路を備えたプレートに、液体又は気体の吸引・吐出を行なうシリンジを備えて反応容器流路及び封止容器流路をそのシリンジに選択的に接続するロータリー式切替えバルブを構成するロータリー式切替えバルブが回転可能に装着されているので、反応容器流路及び封止容器流路を反応容器プレートの外部へ引き出すことなく反応容器流路及び封止容器流路を介した液体の送液を行なうことができ、流路外部から反応容器プレート内部への異物の進入を防止するとともに、反応容器プレート内部から外部への液体の飛散をなくして環境汚染を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は反応容器プレートの一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面に計量流路15、注入流路17、反応容器エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図である。図2(A)は同実施例の反応容器プレートのロータリー式切替えバルブ87を示す断面図であり、(B)はローターキャップ89の斜視図、(C)はバックアップリング91の斜視図である。
図3はこの実施例の1つの反応容器近傍を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。図4はサンプル容器収容部とサンプル容器を拡大して示した図であり(A)はサンプル容器収容部の平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図、(C)はサンプル容器の平面図、(D)は(C)のC−C位置での断面図、(E)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。図5は試薬容器収容部と試薬容器を拡大して示した図であり(A)は試薬容器収容部の平面図、(B)は(A)のD−D位置での断面図、(C)は試薬容器の平面図、(D)は(C)のE−E位置での断面図、(E)は試薬容器を試薬容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)は試薬容器を試薬容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。図6はエアー吸引用容器収容部とエアー吸引用容器を拡大して示した図であり(A)はエアー吸引用容器収容部の平面図、(B)は(A)のF−F位置での断面図、(C)はエアー吸引用容器の平面図、(D)は(C)のG−G位置での断面図、(E)はエアー吸引用容器をエアー吸引用容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)はエアー吸引用容器をエアー吸引用容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。
図1から図6を参照して反応容器プレートの一実施例について説明する。
【0030】
反応容器プレート1は容器ベース3の一表面に開口部をもつ複数の反応容器5を備えている。この実施例では6×6個の反応容器5が千鳥状に配列されている。反応容器5内に試薬7及びワックス9が収容されている。
【0031】
反応容器5を含む容器ベース3の材質は特に限定されるものではないが、反応容器プレート1を使い捨て可能として用いる場合には、安価に入手可能な素材があることが好ましい。そのような素材として、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材が好ましい。反応容器5内の物質の検出を吸光度、蛍光、化学発光又は生物発光などにより行なう場合には、底面側から光学的な検出ができるようにするために光透過性の樹脂で形成されていることが好ましい。特に蛍光検出を行なう場合には、容器ベース3の材質として低自蛍光性(それ自身からの蛍光発生が少ない性質のこと)で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートなどの素材で形成されていることが好ましい。容器ベース3の厚さは0.2〜4.0mm(ミリメートル)、好ましくは1.0〜2.0mmである。蛍光検出用の低自蛍光性の観点からは容器ベース3の厚さは薄い方が好ましい。
【0032】
図1及び図3を参照して説明すると、容器ベース3上に反応容器5の配列領域を覆って流路ベース11が配置されている。流路ベース11は例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)やシリコーンゴムからなる。流路ベース11の厚みは例えば1.0〜5.0mmである。流路ベース11は容器ベース3との接合面に溝を備えている。その溝と容器ベース3の表面によって、主流路13、計量流路15、注入流路17、反応容器エアー抜き流路19,21、ドレイン空間エアー抜き流路23,25が形成されている。主流路13、計量流路15及び注入流路17は反応容器流路を構成する。流路ベース11の容器ベース3との接合面には、反応容器5上に配置された凹部27も形成されている。図1(A)及び図3(A),(B)では流路ベース11について溝及び凹部のみを図示している。
【0033】
主流路13は1本の流路からなり、すべての反応容器5の近傍を通るように折れ曲がって形成されている。主流路13の一端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路13aに接続されている。流路13aは後述するロータリー式切替えバルブ87のポートに接続されている。主流路13の他端は容器ベース3に形成された液体ドレイン空間29に接続されている。主流路13を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm(マイクロメートル)、幅が500μmである。また、主流路13は、計量流路15が接続されている位置の下流側の所定長さ部分、例えば250μmの部分は幅が他の部分に比べて細く形成されており、例えばその幅は250μmである。
【0034】
計量流路15は主流路13から分岐して反応容器5ごとに設けられている。計量流路15の主流路13とは反対側の端部は反応容器5の近傍に配置されている。計量流路15を構成する溝の深さは例えば400μmである。計量流路15は内部容量が所定容量、例えば2.5μL(マイクロリットル)に形成されている。計量流路15の主流路13に接続されている部分の幅寸法は、上述の主流路13の細くなっている部分よりも太く、例えば500μmに形成されている。これにより、主流路13の一端から流れてくる液体に対して、計量流路15が分岐している部分では主流路13の方が計量流路15よりも流路抵抗が大きくなっている。主流路13の一端から流れてくる液体は、まず計量流路15に流れ込み、計量流路15が液体で充填された後、主流路13の細くなっている部分を介して下流側へ流れるようになっている。
【0035】
注入流路17も反応容器5ごとに設けられている。注入流路17の一端は計量流路15に接続されている。注入流路17の他端は反応容器5上に配置された凹部27に接続されて反応容器5上に導かれている。注入流路17は、反応容器5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応容器5内の液密を保つ寸法で形成されている。この実施例では、注入流路17は複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。ここでは、注入流路17を構成する溝と計量流路15の境界の面積、すなわち注入流路17を構成する溝の断面積は200μm2である。また、凹部27は深さが例えば400μmであり、平面形状は反応容器5よりも小さい円形である。
【0036】
反応容器エアー抜き流路19は反応容器5ごとに設けられている。反応容器エアー抜き流路19の一端は反応容器5上に配置された凹部27に注入流路17とは異なる位置で接続されて反応容器5上に配置されている。反応容器エアー抜き流路19は、反応容器5内と反応容器エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応容器5内の液密を保つ寸法で形成されている。反応容器エアー抜き流路19の他端は反応容器エアー抜き流路21に接続されている。この実施例では、反応容器エアー抜き流路19は複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。
【0037】
反応容器エアー抜き流路21はこの実施例では複数本設けられている。それぞれの反応容器エアー抜き流路21には複数の反応容器エアー抜き流路19が接続されている。反応容器エアー抜き流路21は反応容器エアー抜き流路19を容器ベース3に形成されたエアードレイン空間31に接続するためのものである。反応容器エアー抜き流路21を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0038】
ドレイン空間エアー抜き流路23は液体ドレイン空間29を後述するロータリー式切替えバルブ87のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路23の一端は液体ドレイン空間29上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路23の他端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路23aに接続されている。流路23aは後述するロータリー式切替えバルブ87のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路23を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0039】
ドレイン空間エアー抜き流路25はエアードレイン空間31を後述するロータリー式切替えバルブ87のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路25の一端はエアードレイン空間31上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路25の他端は容器ベース3に設けられた貫通孔からなる流路25aに接続されている。流路25aは後述するロータリー式切替えバルブ87のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路25を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
【0040】
流路ベース11上に流路カバー33(図1(A)での図示は省略している。)が配置されている。流路カバー33は流路ベース11を容器ベース3に固定するためのものである。流路カバー33には反応容器5上の位置に貫通孔が形成されている。
【0041】
図1及び図4〜図6を参照して説明すると、反応容器5の配列領域及びドレイン空間29,31とは異なる位置で容器ベース3にサンプル容器収容部36、試薬容器収容部38及びエアー吸引用容器収容部40が形成されている。サンプル容器収容部36にはサンプル容器35が収容され、試薬容器収容部38には試薬容器37が収容され、エアー吸引用容器収容部40にはエアー吸引用39が収容される。サンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39は本発明の反応容器プレートの封止容器を構成する。
【0042】
図4に示すように、サンプル容器収容部36近傍の容器ベース3に、サンプル容器収容部36の底部から裏面に貫通しているサンプル流路35aと表面から裏面に貫通しているサンプル容器エアー抜き流路35bが形成されている。サンプル容器収容部36の開口部周囲の容器ベース3表面に、サンプル容器35を保持するための係止ツメ35cが3本配置されている。
【0043】
サンプル容器収容部36の底部に、サンプル容器収容部36の開口部側に向かって突出して設けられた突起状の突起流路35dが形成されている。突起流路35dの基端側の端部はサンプル流路35aと接続されている。突起流路35dの先端面は突起流路35dの突出方向に対して傾斜している。
【0044】
サンプル容器収容部36近傍の容器ベース3の表面に、上方に向かって突出して設けられた突起状の第2突起流路35eが形成されている。第2突起流路35eの基端側の端部はサンプル容器エアー抜き流路35bと接続されている。第2突起流路35eの先端面は第2突起流路35eの突出方向に対して傾斜している。
【0045】
突起流路35dの基端部の外周側面及び第2突起流路35eの基端部の外周側面に環状のパッキン35fが設けられている。例えばシリコーンゴムやPDMSなどの弾性材料によって形成されている。
【0046】
サンプル容器収容部36内に配置されるサンプル容器35は、サンプル容器主空間35gとサンプル容器エアー抜き流路35hとサンプル容器エアー抜き空間35iを備えている。
【0047】
サンプル容器主空間35gは、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材によって形成されたサンプル容器本体の上面から下面に貫通して設けられている。サンプル容器主空間35gの下面側の開口は、サンプル容器本体の下面に貼り付けられた、例えばアルミニウムからなるフィルム35j(貫通可能部)によって封止されている。サンプル容器主空間35gの上面側の開口は、サンプル容器本体の上面に貼り付けられた、例えばアルミニウムからなるフィルム35kによって封止されている。
【0048】
サンプル容器エアー抜き流路35hはサンプル容器本体の上面に形成された溝がフィルム35kで覆われることによって形成されている。サンプル容器エアー抜き流路35hを形成するための溝は例えば幅5〜200μm、深さ5〜200μmの寸法の1本又は複数本の細孔によって形成されており、サンプル容器主空間35g内とサンプル容器エアー抜き空間35i内で圧力差がない状態でサンプル容器主空間35gの液密を保つためのものである。
【0049】
サンプル容器エアー抜き空間35iは、サンプル容器本体の上部側面に設けられた挿入部分に形成されており、その挿入部分の上面から下面に貫通して設けられている。サンプル容器エアー抜き空間35iの下面側の開口は、挿入部分の下面に貼り付けられた、例えばアルミニウムからなるフィルム35l(第2貫通可能部)によって封止されている。サンプル容器エアー抜き空間35iの上面側の開口は、フィルム35kによって封止されている。
【0050】
フィルム35k上に弾性部材であるセプタム41が形成されている。セプタム41は例えばシリコーンゴムやPDMSなどの弾性材料によって形成されており、尖端が鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることができる。セプタム41上にセプタム41を固定するためのセプタムストッパ43が配置されている。セプタムストッパ43はサンプル容器35上に開口部をもつ。この実施例ではサンプル容器主空間35g内に予め試薬45が収容されている。なお、図4ではセプタムストッパ43はセプタムストッパ43に設けられた係止ツメによりサンプル容器本体に固定されているが、セプタムストッパ43に設ける係止ツメの本数は任意である。また、セプタムストッパ43をサンプル容器本体に固定する方法はどのような方法であってもよく、例えば接着剤によってセプタムストッパ43をサンプル容器本体に固定してもよい。
【0051】
サンプル容器本体の側面に係止用溝35m,35nが形成されている。係止用溝35m,35nは、サンプル容器35が係止ツメ35cによってサンプル容器収容部36内に第1保持位置又は第2保持位置で保持されるようにするためのものである。係止用溝35mは係止用溝35nよりも下方側に形成されており、サンプル容器35を第1保持位置((E)参照)で保持するためのものである。係止用溝35nはサンプル容器35を第2保持位置((F)参照)で保持するためのものである。係止ツメ35c及び係止用溝35m,35nは本発明の反応容器プレートの封止容器保持機構を構成する。ただし、封止容器保持機構は係止ツメ35c及び係止用溝35m,35nからなるものに限定されるものではなく、サンプル容器35(封止容器)を第1保持位置及び第2保持位置で保持することができる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0052】
第1保持位置では、(E)に示すように、フィルム35jと突起流路35dが対向して配置され、かつ、フィルム35lと第2突起流路35eが対向して配置される。第1保持位置の状態から、サンプル容器35を容器ベース3側に押し込むことにより、サンプル容器35を第2保持位置へ移動させることができる。
【0053】
第2保持位置では、(F)に示すように、突起流路35dの先端がフィルム35jを貫通してサンプル容器主空間35g内に挿入され、かつ、第2突起流路35eの先端がフィルム35lを貫通してサンプル容器エアー抜き空間35i内に挿入される。第2保持位置の状態で、サンプル容器主空間35gとサンプル容器流路35aが突起流路35dを介して接続され、サンプル容器エアー抜き空間35iとサンプル容器エアー抜き流路35bが突起流路35eを介して接続される。このとき、サンプル容器35のサンプル容器本体の下面がパッキン35f,35fに押し付けられる。これにより、サンプル容器主空間35gとサンプル容器流路35a、及びサンプル容器エアー抜き空間35iとサンプル容器エアー抜き流路35bは、高い気密性をもって接続される。これにより、液漏れ及びエアー漏れを防止することができる。ただし、液漏れ及びエアー漏れを防止する方法はパッキン35f,35fを設けることに限定されるものではなく、気密性をもってサンプル容器35と流路35a,35bを接続することができる方法であれば、どのような方法であってもよい。
【0054】
サンプル容器35を第1保持位置に配置しておけば、サンプル容器35とサンプル容器流路35aを分離した状態で反応容器プレートを保存することができるので、サンプル容器主空間35gに試薬45や希釈水などの液体や試薬などの粉末状の固体を予め封入して保存しておいても、保存時にその液体や固体がサンプル容器流路35aに入り込むことはない。
【0055】
さらに、第1保持位置では、サンプル容器主空間35g及びサンプル容器エアー抜き空間35iは密閉されているので、試薬45や希釈水などの液体をサンプル容器主空間35gに予め封入しておいても、その液体が蒸発するのを防止できる。
【0056】
次に、図5を参照して試薬容器37及び試薬容器収容部38について説明する。
試薬容器収容部38は図4を参照して説明したサンプル容器収容部36と同様の構造をもつ。すなわち、試薬流路37a、試薬容器エアー抜き流路37b、係止ツメ37c、突起流路37d、第2突起流路37e及びパッキン37f,37fを備えている。
【0057】
試薬容器37は図4を参照して説明したサンプル容器35と同様の構造をもつ。ただし、試薬容器37は、サンプル容器35と比較して、セプタム41を備えておらず、セプタムストッパ43に替えてカバー47を備えている。すなわち、試薬容器37は、試薬容器主空間37g、試薬容器エアー抜き流路37h、試薬容器エアー抜き空間37i、フィルム37j,37k,37l、係止用溝37m,37n、及びカバー47を備えている。カバー47は、試薬容器本体の上面に貼り付けられたフィルム37kが破損するのを防止するためのものである。試薬容器主空間37g内に希釈水49が収容されている。なお、図5ではカバー47はカバー47に設けられた係止ツメにより試薬容器本体に固定されているが、カバー47に設ける係止ツメの本数は任意である。また、カバー47を試薬容器本体に固定する方法はどのような方法であってもよく、例えば接着剤によってカバー47を試薬容器本体に固定してもよい。
【0058】
試薬容器37も、サンプル容器35と同様に、試薬容器収容部38に第1保持位置((E)参照)と第2保持位置((F)参照)で配置される。試薬容器37と試薬容器流路37a及び試薬容器エアー抜き流路37bの接続は、図4を参照して説明したサンプル容器35とサンプル容器流路35a及び試薬容器エアー抜き流路35bの接続と同様である。
【0059】
試薬容器37を第1保持位置に配置しておけば、試薬容器37と試薬容器流路37aを分離した状態で反応容器プレートを保存することができるので、試薬容器主空間37gに試薬や希釈水49などの液体や試薬などの粉末状の固体を予め封入して保存しておいても、保存時にその液体や固体が試薬容器流路37aに入り込むことはない。
【0060】
さらに、第1保持位置では、試薬容器主空間37g及び試薬容器エアー抜き空間37iは密閉されているので、試薬や希釈水49などの液体を試薬容器主空間37gに予め封入しておいても、その液体が蒸発するのを防止できる。
【0061】
次に、図6を参照してエアー吸引用容器39及びエアー吸引用容器収容部40について説明する。
エアー吸引用容器収容部40は図5を参照して説明した試薬容器収容部38と同様の構造をもつ。すなわち、エアー吸引用流路39a、エアー吸引用容器エアー抜き流路39b、係止ツメ39c、突起流路39d、第2突起流路39e及びパッキン39f,39fを備えている。
【0062】
エアー吸引用容器39は図5を参照して説明した試薬容器37と同様の構造をもつ。すなわち、エアー吸引用容器39は、エアー吸引用容器主空間39g、エアー吸引用容器エアー抜き流路39h、エアー吸引用容器エアー抜き空間39i、フィルム39j,39k,39l、係止用溝39m,39n、及びカバー47を備えている。エアー吸引用容器主空間39g内には液体及び固体は収容されておらず、エアーが充満している。
【0063】
エアー吸引用容器39も、サンプル容器35及び試薬容器37と同様に、エアー吸引用容器収容部40に第1保持位置((E)参照)と第2保持位置((F)参照)で配置される。エアー吸引用容器39とエアー吸引用容器流路39a及びエアー吸引用容器エアー抜き流路39bの接続は、図4を参照して説明したサンプル容器35とサンプル容器流路35a及び試薬容器エアー抜き流路35bの接続と同様である。
【0064】
図1及び図2を参照しながら説明を続けると、反応容器プレート1には、内部にシリンジを備え、そのシリンジとこの反応容器プレート1に設けられた各流路とを選択的に接続することができるロータリー式切替えバルブ87が装着されている。ロータリー式切替えバルブ87は、反応容器5の配列領域、ドレイン空間29,31及び容器収容部36,38,40とは異なる位置に容器ベース3の面内方向に回転可能な状態で装着されている。
【0065】
ロータリー式切替えバルブ87はシリンジ部とフランジ部とからなる。シリンジ部はロータリー式切替えバルブ87の上部でかつ回転中心に位置し、上端面が開口したシリンダ87a、シリンダ87a内に収容されたプランジャ87c及びカバー体87dを備えてシリンジを構成している。プランジャ87cはシリンダ87a内をロータリー式切替えバルブ87の回転方向に対して垂直方向に摺動できるようにカバー体87dによって支持されている。フランジ部はシリンジ部よりも大きい径をもってシリンジ部下端部に設けられている。シリンジ部とフランジ部は一体をなしている。「シリンジ部」は特許請求の範囲における「挿入部」に相当し、「フランジ部」は特許請求の範囲における「非挿入部」に相当する。なお、図1(B)ではシリンダ87a内に設けられているプランジャ87c及びカバー体87dやシリンジエアー抜き流路87hの図示を省略し、図2(A)ではロータリー式切替えバルブ87を見やすくするために、便宜上、サンプル容器35やサンプル容器流路35a、サンプル容器エアー抜き流路35bの図示を省略している。シリンジの詳細については後述する。
【0066】
反応容器5の配列領域とは異なる位置で容器ベース3の下面に容器ボトム55が取り付けられている。容器ベース3及び容器ボトム55には内径がロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部と略同径の貫通穴92,93がそれぞれ設けられている。貫通穴92,93にはロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部が容器ボトム55の下面側から挿入されており、その先端部が容器ベース3の上面側に突出している。この容器ベース3の上面側に突出したシリンジ部先端部を、特許請求の範囲では「突出部」と呼んでいる。ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部内部にシリンジに繋がるシリンジ流路87bが設けられている。フランジ部の上面には、シリンジ流路87に繋がるシリンジポート87jや後述するエアー抜き流路87hに繋がる円弧状流路ポート87iが設けられている。フランジ部上面は、特許請求の範囲におけるシリンジポート配置部を構成している。
【0067】
容器ボトム55下面のフランジ部上面と対向する領域に流路13a,23a,25a,35a,35b,37a,37b,39a,39bに繋がる複数の流路ポートが配置されている。この領域は、特許請求の範囲における流路ポート配置部を構成している。この流路ポート配置部とシリンジポート配置部(フランジ部上面)はシール板88を介して接している。
上記の構成により、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて円弧状流路ポート87i又はシリンジポート87jを容器ボトム55の下面のいずれかの流路ポートに接続できる。
【0068】
シール板88は容器ボトム55の下面とロータリー式切替えバルブ87の上面との間の密着性を高める目的で両者の間に挟み込まれており、ロータリー式切替えバルブ87と一緒に回転しないように容器ボトム55側に固定されている。シール板88は、容器ボトム55とロータリー式切替えバルブ87との間のシール性を高められるように一定の弾力性を有するとともに、回転するロータリー式切替えバルブ87との接触面が一定の摺動性を有するものである。
【0069】
容器ベース3の反応容器5の配列領域、ドレイン空間29,31、容器35,37,39とは異なる位置にベローズ53が設けられている。ベローズ53は内部空間が封止されており、伸縮することにより内部容量が受動的に可変なものであり、例えば容器ベース3に設けられた貫通孔53a内に配置されている。容器ボトム55はベローズ53に連通するエアー抜き流路53bを備えている。エアー抜き流路53bは、ロータリー式切替えバルブ87の円弧状流路ポート87≡に接続されうる容器ボトム55の下面の流路ポートに繋がっている。
【0070】
反応容器プレート1本体(プレート)へのロータリー式切替えバルブ87の固定はローターキャップ89(先端側固定部材)及びバックアップリング91(下面側固定部材)からなるローター固定部材によってなされている。なお、「反応容器プレート1本体」とは、容器ベース3の下面に容器ボトム55が取り付けられた状態のものを意味し、特許請求の範囲において「プレート」と呼ばれているものである。
【0071】
容器ボトム55の下面に、ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部の周囲を囲うように垂直下向きに突出した固定部材係合部55aが設けられている。固定部材係合部55aはロータリー式切替えバルブ87をその内側で回転可能に保持するとともに、バックアップリング91の爪部91aと係合する係合穴55bを備えてロータリー式切替えバルブ87の下面側から挿入されたバックアップリング91を保持するものである。バックアップリング91はロータリー式切替えバルブ87のフランジ部の外径と略同径のリング状部材であり、その外側周面の複数の均等な位置、例えば4箇所に固定部材係合部55aの係合穴55bに係合する爪部91aが設けられている。ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部の下面側周縁部はバックアップリング91を嵌め込むために窪んでおり、その窪みにバックアップリング91が嵌め込まれ、爪部91aが固定部材係合部55aの係合穴55bと係合することによりバックアップリング91が固定される。このとき、固定部材係合部55aに固定されたバックアップリング91の上面91bがロータリー式切替えバルブ87の下面側周縁部の窪みの底面に当接してロータリー式切替えバルブ87を支持固定する。ロータリー式切替えバルブ87の基端部の窪みの深さ、バックアップリング91の爪部91aの位置、及び固定部材係合部55aの係合穴55bの位置は、固定部材係合部55aに固定されたバックアップリング91の上面91bがロータリー式切替えバルブ87の下面側の窪みの底面を容器ボトム55側へさらに押し付けるように設定されている。これにより、ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部上面周縁部が容器ボトム55側に押し付けられ、フランジ部上面に設けられた円弧状流路ポート87i及びシリンジポート87jと各流路ポートとの接続部のシール性が向上する。
【0072】
係合穴55aと爪部91aは特許請求の範囲における「第1係合構造部」を構成するものであり、係合穴55aは第1係合構造部の固定部材係合部55側の構造を構成し、爪部91aは第1係合構造部のバックアップリング91側の構造を構成している。爪部91aの外側表面はバックアップリング91の上面91b側へ収束するように傾斜している。これにより、バックアップリング91をロータリー式切替えバルブ87の下面側に嵌め込む際に、バックアップリング91を奥に押し込んでいくと、固定部材係合部55aは容器ボトム55と樹脂による一体成型で形成されているために爪部91aの外側表面の傾斜に沿って弾性変形して広がり、爪部91aが係合穴55bの位置に達したときに元の状態に戻ることにより爪部91aと係合穴55bが係合する。したがって、バックアップリング91を所定の位置まで押し込むだけで自動的に爪部91aと係合穴55bが係合するので、バックアップリング91の取付けが容易である。なお、この第1係合構造部の構造は一例である。第1係合構造部は、固定部材係合部55a側の構造の内側表面又はバックアップリング91側の構造の外側表面の少なくともいずれか一方がバックアップリング91の上面91b側(容器ボトム55側)へ閉じる方向に傾斜していればよい。
【0073】
次に、ローターキャップ89は容器ベース3の上面から突出したロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部の先端側に嵌められて取り付けられている。ローターキャップ89は樹脂による一体成型で形成されたものである。図2(B)に示されているように、ローターキャップ89は上面中央部の貫通穴89aと周囲から内側に突出した爪部89bとを備えている。貫通穴89aはプランジャ87cを駆動するための機構をシリンジ部の上端面からシリンダ87a内に導くためのものである。ロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部の周面に凸部87eと凹部87fからなる引掛り構造が設けられており、ローターキャップ89の爪部89bが凹部87fに入り込んで凸部87eと係合すると同時にローターキャップ89の下面が容器ベース3の上面に接することにより、ロータリー式切替えバルブ87が貫通穴92,93から抜け落ちるのを防止している。ロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部周面の凸部87e,凹部87fとローターキャップ87の爪部89bの位置や寸法は、ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部上面がローターキャップ89によって上方向に引張されるように設定されている。これにより、ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部上面中央部が上方向に引張されて容器ボトム55側に押し付けられ、フランジ部上面のシリンジポート87j及び円弧状流路ポート87iと容器ボトム55下面の各流路ポートとの接続のシール性が向上する。
【0074】
凸部87e、凹部87f及び爪部89bは特許請求の範囲における「第2係合構造部」を構成するものである。この実施例では、特に凸部87eは第2係合構造部のシリンジ部側の構造を構成し、爪部89bは第2係合構造部のローターキャップ87側の構造を構成している。凸部87eの外側表面はシリンジ部先端側へ収束するように傾斜しており、爪部89bの内側表面はローターキャップ87の下面側へ収束するように傾斜している。これにより、ローターキャップ87をシリンジ部先端から嵌めていったときに、爪部89bの内側表面が凸部87eの外側表面に沿って樹脂からなるローターキャップ87が弾性的に広がり、爪部89bが凹部89bの位置に到達したときにローターキャップ89の内径が元の状態に戻って爪部89bが凹部87fに挿入され、凸部87eと爪部87eとが係合する。したがって、ローターキャップ87をシリンジ部先端に嵌めて所定の位置まで押し込んでいくだけで自動的に凸部87eと爪部87eとが係合するので、ローターキャップ87の装着が容易である。なお、この第2係合構造部の構造は一例である。第2係合構造部はローターキャップ87側の構造の内側表面又はシリンジ部側の構造の外側表面の少なくともいずれか一方がシリンジ部先端側へ閉じる方向に傾斜していればよい。
【0075】
ロータリー式切替えバルブ87の反応容器プレート1本体への固定は、ローターキャップ89又はバックアップリング91のいずれか一方のみでも可能である。しかし、ロータリー式切替えバルブ87は部品点数を減らしてコストの低減を図るという目的から、その大部分が樹脂による一体成型で形成されている。そのため、フランジ部の中央部又は周縁部のいずれかだけを容器ボトム55側へ押し付けた場合、フランジ部が弾性変形することによってフランジ部上面を容器ボトム55側へ押し付ける力が不均一となり、シール不良となる虞がある。ローターキャップ89及びバックアップリング91の両方を装着すれば、ロータリー式切替えバルブ87のフランジ部上面を中央部と周縁部の両方で容器ボトム55側に押し付けることができるので、フランジ部上面を容器ボトム55側へ押し付ける力が均一となり、高いシール性能を得ることができる。
【0076】
なお、後述するが、この実施例においてローターキャップ89は、シリンジを構成するカバー体87dの上端部をロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部上端面との間で挟み込んで支持する役割も担っている。ロータリー式切替えバルブ87のシリンジ部と容器ベース3の上面に同時に係合してロータリー式切替えバルブ87を固定する先端側固定部材としては、ローターキャップ89のようなキャップ状の部材である必要はなく、リング状の部材であってもよい。
【0077】
ところで、ロータリー式切替えバルブ87内のシリンジは、上述のように、シリンダ87a、プランジャ87c及びカバー体87dからなる。カバー体87dは一端がシリンダ87aの上端に接続され、他端がプランジャ87cに接続され、プランジャ87cの摺動方向に可撓性をもっている。カバー体87dは、シリンダ87aの内壁のプランジャ87cが接触する部分をシリンダ87a外の雰囲気とは気密性を保って遮断するためのものである。したがって、シリンダ87a、プランジャ87c及びカバー体87dで囲まれた空間87gは密閉されている。カバー体87dの一端はローターキャップ89によって固定されており、他端は接着剤でプランジャ87cの上面に気密性を確保しながら接着されている。ただし、カバー体87dをシリンダ87a、プランジャ87cに接続する方法及び位置はこれに限定されるものではない。
【0078】
このように、カバー体87dは、シリンダ87aとプランジャ87cに接続されてシリンダ87aとプランジャ87cとカバー体87dで囲まれた密閉空間87gを形成しているので、シリンダ87aとプランジャ87cの間を介しての、外部からの異物の進入や、液体の外部への環境汚染が防ぐことができる。なお、カバー体87dはプランジャ87cの摺動方向に可撓性をもつので、プランジャ87cの摺動動作は可能である。
【0079】
ロータリー式切替えバルブ87の内部には、一端が密閉空間87gに接続され、他端はフランジ部上面の円弧状流路ポート87iに接続されたシリンジエアー抜き流路87hも設けられている。シリンジエアー抜き流路87hが設けられていることにより、密閉空間87gを外部から独立させるとともに、プランジャ87cが摺動するときの密閉空間87gの内部容量の変化にともなう密閉空間87g内部の圧力変化を緩和して、プランジャ87cを円滑に摺動させることができる。なお、図1(A)ではシリンジエアー抜き流路87hの図示は省略している。
【0080】
この実施例ではプランジャ87cとカバー体87dは別々の部材により形成されているが、プランジャとカバー体は一体成形されたものであってもよい。一体成形されたプランジャとカバー体の材料として例えばシリコーンゴムを挙げることができる。
【0081】
ロータリー式切替えバルブ87の回転により、シリンダ87aはシリンジ流路87b、シリンジポート87jを介して流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続されるのと同時に、エアー抜き流路53bが流路23a,25a,35b,37b,39bのうちの少なくともいずれかに接続される。
【0082】
反応容器プレート1では、注入流路17は反応容器5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応容器5の液密を保つように形成されている。反応容器エアー抜き流路19も反応容器5内と反応容器エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応容器5の液密を保つように形成されている。反応容器流路の主流路13と、主流路13が接続された液体ドレイン空間29及びドレイン空間エアー抜き流路23はロータリー式切替えバルブ87の回転により密閉可能になっている。容器35,37,39はセプタム41又はフィルム47で封止されている。容器35,37,39に接続された流路35a,35b,37a,37b,39a,39bはロータリー式切替えバルブ87の切替えにより密閉可能になっている。エアー抜き流路53bの一端はベローズ53に接続されて密閉されている。このように、反応容器プレート1内部の容器及び流路は密閉系で形成されている。なお、ベローズ53を備えていない構成であってエアー抜き流路53bが反応容器プレート1外部の雰囲気と接続されている場合であっても、ロータリー式切替えバルブ87の切替えによりエアー抜き流路53bを反応容器プレート1内部の容器及びエアー抜き流路53b以外の流路とは遮断できるので、液体が収容される又は液体が流される容器及び流路を密閉系にすることができる。
【0083】
図7は図1に示した反応容器プレート1を処理するための反応処理装置を反応容器プレート1とともに示す断面図である。反応容器プレート1の構造は図1と同じなのでその説明は省略する。
反応処理装置は反応容器5の温度調整をするための温調機構67と、シリンジを駆動するためのシリンジ駆動ユニット69と、ロータリー式切替えバルブ87を切り替えるための切替えバルブ駆動ユニット71を備えている。
【0084】
図8から図14は、サンプル容器35からサンプル液を反応容器5に導入する動作を説明するための平面図である。図1,図2及び図8から図14を参照してこの動作を説明する。
【0085】
サンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39が第1保持位置で保持されている状態で、図示しない尖端が鋭利な分注器具を用い、サンプル容器35上のセプタム41を貫通して例えば5μLのサンプル液をサンプル容器35内に分注する。サンプル液を分注後、分注器具を引き抜く。分注器具を引き抜いたときのセプタム41の貫通孔はセプタム41の弾性により閉じられる。
【0086】
第1保持位置で保持されているサンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39を容器ベース3側に押し込んで第2保持位置へ移動させる(図4〜図6を参照。)。
【0087】
シリンジ駆動ユニット69をシリンジのプランジャ87cに接続し、切替えバルブ駆動ユニット71をロータリー式切替えバルブ87に接続する。
図8に示すように、図1(A)の状態からロータリー式切替えバルブ87を回転させてサンプル流路35aとシリンジポート87jを接続し、サンプル容器エアー抜き流路35bをエアー抜き流路53bに接続する。このとき、エアー抜き流路37b,39bもエアー抜き流路53bに接続される。サンプル容器35には例えば45μLの試薬45が収容されている。
【0088】
シリンジのプランジャ87cを摺動させてサンプル容器35内のサンプル液及び試薬45を混合させる。その後、サンプル容器35内の混合液を例えば10μLだけ吸引する。このとき、サンプル容器35はエアー抜き流路35b、円弧状流路ポート87i、エアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、サンプル容器35内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。また、プランジャ87cの摺動により、カバー体87dが変形して密閉空間87g(図1(C)参照。)の内部容量が変化する。密閉空間87gはシリンジエアー抜き流路87h、円弧状流路ポート87≡及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、密閉空間87gの内部容量の変化によってもベローズ53が伸縮する。以下に説明する動作工程でも、プランジャ87cの摺動による密閉空間87gの内部容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
【0089】
図9に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて試薬流路37aとシリンジ流路87bを接続し、試薬容器エアー抜き流路37bをエアー抜き流路53bに接続する。試薬容器37には例えば190μLの希釈水49が収容されている。図8の工程でシリンジに吸引した混合液を試薬容器37内に注入し、プランジャ87cを上下に往復運動させて混合液と希釈水49と混合する。その希釈混合液をシリンジで例えば全部、すなわち200μL吸引する。このとき、試薬容器37はエアー抜き流路37b、円弧状流路ポート87i及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、試薬容器37内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
【0090】
図10に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて、主流路13の一端13aに繋がる流路ポートにシリンジポート87jを接続し、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31を円弧状流路ポート87iを介してベローズ53に接続する。プランジャ87cを押出し方向に駆動することにより、図9の工程でシリンジを用いて吸引した希釈混合液を主流路13に送る。流路13a側から主流路13に注入された希釈混合液は、シボ及び矢印によって示すように、流路13a側から順に計量流路15を満たし、液体ドレイン空間29に到達する。希釈混合液が主流路13及び計量流路15に導入されるときの導入圧力状態では、注入流路17は、気体は通すが希釈混合液を通さない。計量流路15への希釈混合液の充填にともなって計量流路15の気体は注入流路17を介して反応容器5内へ移動する。この気体の移動にともない、反応容器5内の気体の一部は反応容器エアー抜き流路19,21へ移動する。さらに反応容器エアー抜き流路19からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
【0091】
図11に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させてシリンジポート87jをエアー吸引用流路39aに繋がる流路ポートに接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bを円弧状流路ポート87iを介してベローズ53に接続する。プランジャ87cを吸引側に駆動させることにより、エアー吸引用容器39内の気体を吸引する。このとき、エアー吸引用容器39内の減圧にともなってベローズ53が収縮する(白抜き矢印参照)。
【0092】
図12に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて図10と同じ状態、すなわち、主流路13の一端13aに繋がる流路ポートにシリンジポート87jを接続し、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31を円弧状流路ポート87iを介してベローズ53に接続する。プランジャ87cを押出し方向に駆動することにより、図11の工程で吸引した気体を主流路13に送って主流路13内の希釈混合液をパージする(白抜き矢印参照)。このときのパージ圧力状態では注入流路17は希釈混合液を通さないので、計量流路15内には希釈混合液が残存している(シボ参照。)。パージされた希釈混合液は液体ドレイン空間29内に収容される。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動し、ベローズ53が膨張する(白抜き矢印参照)。
【0093】
図13に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて、図11と同じ状態、すなわち、シリンジポート87jをエアー吸引用流路39aに繋がるポートに接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bを円弧状流路ポート87iを介してベローズ53に接続する。プランジャ87cを吸引側に駆動することにより、エアー吸引用容器39内の気体を吸引する。
【0094】
図14に示すように、ロータリー式切替えバルブ87を回転させて、シリンジポート87jを主流路13の一端13aに繋がるポートに接続し、エアードレイン空間31を円弧状流路ポート87iを介してベローズ53に接続するが、図10及び図12の場合とは異なり、液体ドレイン空間29は円弧状流路ポート87iには接続しない。この状態でプランジャ87cを押出し方向に駆動する。主流路13の下流端はベローズ53には接続されていないので、主流路13内が液体導入圧力及びパージ導入圧力よりも大きく加圧される。これにより、計量流路15内の希釈混合液が注入流路17を通って反応容器5内に注入される。希釈混合液が反応容器5内に注入された後は主流路13内の気体の一部は計量流路15及び注入流路17を介して反応容器5内に流れ込む。このとき、反応容器5−ベローズ53間の気体は順次ベローズ53側へ移動し、ベローズ53が膨張する(白抜き矢印参照)。
【0095】
ロータリー式切替えバルブ87を図1の接続状態にして反応容器プレート1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉した後、温調機構67により反応容器5を加熱してワックス9を融解させる。これにより、反応容器5に注入された希釈混合液はワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。このように、反応容器プレート1によれば反応処理を密閉系で行なうことができる。
また、希釈混合液を反応容器5内に注入する前に、温調機構67により反応容器5を加熱してワックス9を融解させておき、反応容器5内への希釈混合液の注入時にワックス9が融解しているようにしてもよい。この場合、反応容器5に注入された希釈混合液は直ちにワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。ロータリー式切替えバルブ87の接続状態が図14の状態であっても、ベローズ53により密閉系は確保されている。希釈混合液の注入後にロータリー式切替えバルブ87を図1の接続状態にすれば、反応容器プレート1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉することができる。ここでロータリー式切替えバルブ87を図1の接続状態に切り替えるタイミングは、希釈混合液の注入直後から希釈混合液と試薬7の反応終了までのいずれのタイミングであってもよいし、希釈混合液と試薬7の反応終了後であってもよい。
このように、反応容器プレート1によれば、反応処理を密閉系で行なうことができ、反応処理前及び反応処理後も密閉系にすることができる。
【0096】
この実施例では流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は流路ベース11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝を容器ベース3表面に形成してもよい。
【0097】
図15は反応容器プレートの他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。この実施例は、容器ベースと流路ベースの間に流路スペーサを配置した以外の構成は図1から図14を参照して説明した上記実施例と同じである。
【0098】
容器ベース3上に反応容器5の配列領域を覆って流路スペーサ73が配置され、さらにその上に流路ベース11、流路カバー33がその順に配置されている。流路スペーサ73は例えばPDMSやシリコーンゴムからなる。流路スペーサ73の厚みは例えば0.5〜5.0mmである。流路スペーサ73は反応容器5内に突出している凸部75を反応容器5ごとに備えている。凸部75は断面が略台形に形成されており、例えば基端部の幅は1.0〜2.8mm、先端部の幅は0.2〜0.5mmであり、先端部が基端部に比べて細くなっている。また、凸部75の表面には超撥水処理が施されている。ただし、凸部75の表面に必ずしも撥水処理が施されていなくてもよい。
【0099】
さらに、流路スペーサ73は凸部75の先端部から反対側の面に貫通している貫通孔からなる注入流路77を凸部75の形成位置ごとに備えている。注入流路77の内径は例えば500μmである。注入流路77の流路ベース11側の開口は流路ベース11の注入流路17に接続されている。なお、この実施例では図1から図14を参照して説明した上記実施例と比較して流路ベース11に凹部27を備えていない。
さらに、流路スペーサ73は流路ベース11の反応容器エアー抜き流路19と反応容器5を連通させるための貫通孔からなる反応容器エアー抜き流路79も備えている。
【0100】
また、図示は省略するが、流路スペーサ73は、主流路13の両端部、反応容器エアー抜き流路21のエアードレイン空間31側の端部、及びドレイン空間エアー抜き流路23,25の両端部に貫通孔を備え、それらの流路13,21,23,25を容器ベース3に設けられた容器29,31又は流路23a,25bに接続している。
【0101】
この実施例では、注入流路77の注入流路15とは反対側の端部(注入流路の他端)は反応容器5の内側上面に突出して形成された凸部75の先端に配置されているので、注入流路15,77を通って反応容器5に注入される液体が反応容器5に滴下しやすくなる。
【0102】
さらに、液体が注入流路77を通って凸部75の先端から吐出される際に凸部75の先端に形成される液滴が反応容器5の側壁に接触するように凸部75の先端を反応容器5の側壁近傍に配置すれば、反応容器5の側壁を伝って液体を反応容器5内に注入することができ、より確実に反応容器5内に液体を注入することができる。ただし、凸部75の形成位置は、凸部75の先端に形成される液滴が反応容器5の側壁には接触しない位置であってもよい。
【0103】
図16は反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図15を参照して説明した実施例と比べて、反応容器5の内部に挿入部81をさらに備えている。挿入部81の先端は凸部75の先端の下方に配置されている。これにより、凸部75の先端に形成される液滴を反応容器5内に導きやすくなる。特に、挿入部81の少なくとも先端の表面に親水性処理を施しておけば、特に有効である。
【0104】
図17は反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図16を参照して説明した実施例と比べて、反応容器5の側壁に形成された段差部83と、反応容器5の上面とは間隔をもって段差部83の上面に形成された凸条部85をさらに備えている。段差部83及び凸条部85は上方から見て環状に形成されている。凸条部85の先端は反応容器5の側壁とは間隔をもって配置されている。
凸条部85の先端が反応容器5の上面及び側面とは間隔をもって配置されていることにより、反応容器5の内部に収容された液体が反応容器の側壁を伝って反応容器5の上面に到達するのを防止することができる。この効果は凸条部85の少なくとも先端部分に撥水処理を施しておくと特に有効である。
【0105】
図17に示した段差部83及び凸条部85を備えた構成は図15に示した実施例にも適用することができる。
また、図15、図16又は図17を参照して説明した各実施例では、流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は流路ベース11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝は、流路スペーサ73の流路ベース11側表面、流路スペーサ73の容器ベース3側表面、容器ベース3表面のいずれに形成されていてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、形状、材料、配置、個数、寸法、流路構成などは一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0107】
例えば、エアー抜き流路53bに接続されたベローズ53は内部容量が受動的に可変な容量可変部材であれば他の構造であってもよい。そのような構造として例えば可撓材料からなる袋状のものや、シリンジ状のものなどを挙げることができる。
また、ベローズ53等の容量可変部材は必ずしも備えていなくてもよい。
また、容器35,37,39に試薬等の液体を予め収容しないのであれば、エアー抜き流路の一部分に細孔からなる流路35e,37e,39eを必ずしも備えている必要はない。
【0108】
また、上記実施例では容器ベース3は1つの部品により形成されているが、容器ベースは複数の部品によって形成されていてもよい。
また、反応容器5内の試薬は乾燥試薬でもよい。
また、サンプル容器35内や反応容器5内に予め試薬は収容されていなくてもよい。
また、上記実施例では試薬容器37に希釈水49が収容されているが、希釈水49に変えて試薬を収容するようにしてもよい。
【0109】
また、容器ベース3に遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器を備えているようにしてもよい。例えば、試薬容器37を空の状態にしておけば、遺伝子増幅容器として用いることができる。
【0110】
また、反応容器5内に遺伝子増幅反応を行なうための試薬を収容しておけば、反応容器5内で遺伝子増幅反応を行なうことができる。
また、主流路13に導入される液体に遺伝子が含まれている場合、反応容器5内にその遺伝子と反応するプローブを備えているようにしてもよい。
【0111】
また、上記実施例では、計量流路15に充填された液体を注入流路17を介して反応容器5に注入する際に、エアーパージ後の主流路13内を加圧して液体を反応容器5に注入しているが、本発明の反応処理方法はこれに限定されるものではない。例えば、シリンジを用いて反応容器エアー抜き流路21内を陰圧にできるように流路構成を変更し、反応容器エアー抜き流路21内、ひいては反応容器5内を陰圧にすることによって計量流路15に充填された液体を注入流路17を介して反応容器5に注入するようにしてもよい。また、別途シリンジを用意して、主流路13内を陽圧にし、かつ反応容器5内を陰圧にして、反応容器5に液体を注入するようにしてもよい。
【0112】
また、上記実施例において、封止容器の貫通可能部及び第2貫通可能部は、例えばアルミニウムからなるフィルム35j,35l,37j,37l,39j,39lによって形成されているが、貫通可能部及び第2貫通可能部は、これに限定されるものではなく、他の材料のフィルムであってもよいし、容器本体と同じ材料によって形成されていてもよい。例えば容器本体がポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材によって形成されている場合、貫通可能部及び第2貫通可能部における樹脂材料の厚みを突起流路及び第2突起流路で貫通可能な程度の厚みにすれば、貫通可能部及び第2貫通可能部を容器本体と一体成形によって形成することができる。ここで、貫通可能部、第2貫通可能部を容器本体と一体成形によって形成した場合の貫通可能部、第2貫通可能部の厚みは、例えば0.01〜0.5mmである。
【0113】
また、上記実施例では、1本の主流路13を備え、すべての計量流路15が主流路13に接続されているが、流路構成はこれに限定されるものではない。例えば、複数本の主流路を設け、各主流路に1つ又は複数の計量流路を接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は種々の化学反応や生物化学反応の測定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】反応容器プレートの一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面にベローズ、ドレイン空間、計量流路、注入流路及びサンプル容器エアー抜き流路の断面を加えた概略的な断面図である。
【図2】(A)は同実施例の反応容器プレートのロータリー式切替えバルブ87を示す断面図であり、(B)はローターキャップ89の斜視図、(C)はバックアップリング91の斜視図である。
【図3】同実施例の1つの反応容器近傍を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。
【図4】同実施例のサンプル容器収容部とサンプル容器を拡大して示した図であり(A)はサンプル容器収容部の平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図、(C)はサンプル容器の平面図、(D)は(C)のC−C位置での断面図、(E)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)はサンプル容器をサンプル容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。
【図5】同実施例の試薬容器収容部と試薬容器を拡大して示した図であり(A)は試薬容器収容部の平面図、(B)は(A)のD−D位置での断面図、(C)は試薬容器の平面図、(D)は(C)のE−E位置での断面図、(E)は試薬容器を試薬容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)は試薬容器を試薬容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。
【図6】同実施例のエアー吸引用容器収容部とエアー吸引用容器を拡大して示した図であり(A)はエアー吸引用容器収容部の平面図、(B)は(A)のF−F位置での断面図、(C)はエアー吸引用容器の平面図、(D)は(C)のG−G位置での断面図、(E)はエアー吸引用容器をエアー吸引用容器収容部に第1保持位置で配置した断面図、(F)はエアー吸引用容器をエアー吸引用容器収容部に第2保持位置で配置した断面図である。
【図7】反応容器プレートを処理するための反応処理装置を反応容器プレートとともに示した概略的な断面図である。
【図8】サンプル容器からサンプル液を反応容器に導入する動作を説明するための平面図である。
【図9】図8に続く動作を説明するための平面図である。
【図10】図9に続く動作を説明するための平面図である。
【図11】図10に続く動作を説明するための平面図である。
【図12】図11に続く動作を説明するための平面図である。
【図13】図12に続く動作を説明するための平面図である。
【図14】図13に続く動作を説明するための平面図である。
【図15】反応容器プレートの他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図16】反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【図17】反応容器プレートのさらに他の実施例の反応容器近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 反応容器プレート
3 容器ベース
5 反応容器
11 流路ベース
13 主流路
15 計量流路
17 注入流路
19,21 反応容器エアー抜き流路
35 サンプル容器(封止容器)
35a サンプル容器流路(封止容器流路)
35b サンプル容器エアー抜き流路
35c 係止ツメ(封止容器保持機構)
35d 突起流路
35e 第2突起流路
35j フィルム(貫通可能部)
35l フィルム(第2貫通可能部)
35m,35n 係止用溝(封止容器保持機構)
37 試薬容器(封止容器)
37a 試薬容器流路(封止容器流路)
37b 試薬容器エアー抜き流路
37c 係止ツメ(封止容器保持機構)
37d 突起流路
37e 第2突起流路
37j フィルム(貫通可能部)
37l フィルム(第2貫通可能部)
37m,37n 係止用溝(封止容器保持機構)
39 エアー吸引用容器(封止容器)
39a エアー吸引用容器流路(封止容器流路)
39b エアー吸引用容器エアー抜き流路
39c 係止ツメ(封止容器保持機構)
39d 突起流路
39e 第2突起流路
39j フィルム(貫通可能部)
39l フィルム(第2貫通可能部)
39m,39n 係止用溝(封止容器保持機構)
41 セプタム(弾性部材)
53 ベローズ(容量可変部)
55 容器ボトム
55a フランジ
73 流路スペーサ
75 凸部
77 注入流路
79 反応容器エアー抜き流路
87 ロータリー式切替えバルブ
87a シリンダ
87b シリンジ流路
87c プランジャ
87d カバー体
87g 密閉空間
87h シリンジエアー抜き流路
87i 円弧状流路ポート
87j シリンジポート
88 シール板
89 ローターキャップ
91 バックアップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器、反応容器に接続された反応容器流路、反応容器とは別途設けられた封止容器、封止容器に接続される封止容器流路、及び前記反応容器流路、封止容器流路に繋がる各流路ポートが配置された流路ポート配置部を備えたプレートと、
前記プレートに回転可能に装着され、内部でプランジャを摺動させて液体又は気体の吸引・吐出を行なうシリンジを備えるとともに前記シリンジに繋がるシリンジポートが配置されたシリンジポート配置部を前記流路ポート配置部に対向する面に備え、前記シリンジポート配置部が流路ポート配置部に接して前記シリンジポートを前記反応容器流路に繋がるポート又は封止容器流路に繋がるポートに選択的に接続することができるロータリー式切替えバルブと、
前記プレートと前記ロータリー式切替えバルブに同時に係合して前記プレートと前記ロータリー式切替えバルブを固定するとともに前記流路ポート配置部と前記シリンジポート配置部とを押し付けるローター固定部材と、を備え、
前記反応容器、反応容器流路、封止容器及び封止容器流路は密閉系を形成するものである反応容器プレート。
【請求項2】
前記プレートの前記流路ポート配置部の周囲に前記プレート表面から突出した固定部材係合部が設けられており、
前記固定部材係合部の内側には、前記ロータリー式切替えバルブの前記シリンジポート配置部とは反対側の面の周縁部に接するとともに前記固定部材係合部と係合し、前記シリンジポート配置部を前記流路ポート配置部に押し付けるリング状の下面側固定部材が前記ローター固定部材として取り付けられている請求項1に記載の反応容器プレート。
【請求項3】
前記下面側固定部材は樹脂からなるとともにその外径は固定部材係合部の内径と略同径であり、
前記下面側固定部材の外周面と固定部材係合部の内周面の対応する位置に互いに係合する第1係合構造部が設けられ、
前記第1係合構造部は、前記下面側固定部材の外周面側表面又は固定部材係合部の内周面側表面が前記プレート側に閉じる方向に傾斜している請求項2に記載の反応容器プレート。
【請求項4】
前記プレートの前記ロータリー式切替えバルブを装着する位置に貫通穴が設けられ、
前記ロータリー式切替えバルブは、前記プレート側に伸びて前記貫通穴に先端から挿入される挿入部と、前記挿入部よりも大きい径をもって前記挿入部の基端部に設けられ、前記貫通穴に挿入されずに前記貫通穴の周囲のプレート表面に接する非挿入部とからなり、
前記プレートの前記貫通穴の周囲に前記流路ポート配置部が設けられているとともに、前記非挿入部の前記挿入部の基端部の周囲に前記シリンジポート配置部が設けられており、
前記ロータリー式切替えバルブの前記挿入部先端は前記貫通穴を貫通してさらに前記プレートの反対側へ突出した突出部となっており、
前記突出部の外周面に、前記貫通穴周囲の前記プレート表面に接触しながら前記突出部外周面にも係合し、前記ロータリー式切替えバルブを係止するとともに前記挿入部を貫通方向に引張する先端側固定部材が前記ローター固定部材として嵌められている請求項1から3のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項5】
前記先端側固定部材は樹脂からなるとともにその内径は前記突出部の外形と略同径であり、
前記先端側固定部材の内周面と前記突出部の外周面の対応する位置に互いに係合する第2係合構造部が設けられ、
前記第2係合構造部は、前記先端側固定部材の内周面側表面又は前記突出部の外周面側表面が前記突出部先端側へ閉じる方向に傾斜している請求項4に記載の反応容器プレート。
【請求項6】
前記封止容器の底面に外部から押圧して貫通することができる第1貫通部が設けられており、
前記封止容器流路の一端は上向きに突出しており、使用時に前記封止容器流路の前記一端が前記第1貫通部を貫通することにより前記封止容器流路が前記封止容器に接続される請求項1から5のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項7】
前記封止容器は、未使用時は前記第1貫通部が封止容器流路の前記一端に対向するように保持され、使用時は封止容器流路の前記一端が前記第1貫通部を貫通した状態で保持される請求項6に記載の反応容器プレート。
【請求項8】
前記封止容器の、内部に収容された液体に触れない位置に、外部から押圧して貫通することができる第2貫通部が設けられており、
前記プレート本体は、一端が上向きに突出し、その一端が前記封止容器の使用時に前記第2貫通部を押圧して貫通する封止容器エアー抜き流路をさらに備えている請求項6又は7に記載の反応容器プレート。
【請求項9】
前記封止容器はサンプル液を収容するためのサンプル容器を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項10】
前記サンプル容器の1つの面は、尖端部をもつ部材で貫通できるとともに前記部材の引抜き後に貫通による穴を弾性力によって修復できる弾性部材からなる封止部材で封止されている請求項9に記載の反応容器プレート。
【請求項11】
前記封止容器に予めサンプル前処理液又は試薬が収容されている請求項1から10のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項12】
前記封止容器は遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器も含む請求項1から11のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項13】
前記反応容器に接続された反応容器エアー抜き流路をさらに備え、
前記反応容器流路は、貼り合わされた2枚の部材の接合面に形成された溝、又は前記溝及び前記基板に形成された貫通孔からなり、かつ、前記シリンジに接続される主流路と、前記主流路から分岐した所定容量の計量流路と、一端が前記計量流路に接続され他端が前記反応容器に接続された注入流路を備え、
前記主流路及び前記反応容器エアー抜き流路は密閉可能になっており、
前記注入流路は前記計量流路よりも細く形成されて前記主流路及び前記計量流路に液体が導入されるときの液体導入圧力状態並びに前記主流路内の前記液体がパージされるときのパージ圧力状態では前記液体を通さず、それらよりも加圧状態で前記液体を通すものである請求項1から12のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項14】
前記注入流路の水滴に対する接触角は90度以上であり、前記注入流路と前記計量流路の境界の面積は1〜10000000μm2である請求項13に記載の反応容器プレート。
【請求項15】
複数の前記反応容器を備え、それらの反応容器ごとに前記計量流路及び前記注入流路を備え、前記主流路に複数の前記計量流路が接続されている請求項13又は14に記載の反応容器プレート。
【請求項16】
前記注入流路の前記他端は前記反応容器の内側上面に突出して形成された凸部の先端に配置されており、前記凸部は先端部が基端部に比べて細くなっている請求項13から15のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項17】
前記反応容器はその底部又は上方から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されている請求項1から16のいずれか一項に記載の反応容器プレート。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一項に記載の前記反応容器プレートを用いた反応処理方法であって、
前記導入圧力で前記主流路及び前記計量流路に液体を充填し、
前記主流路に気体を流して前記計量流路内に前記液体を残存させつつ前記主流路内の前記液体を排出し、
前記主流路内を前記導入圧力よりも大きく陽圧に若しくは前記反応容器内を陰圧に又は前記陽圧及び前記陰圧の両方にすることより前記注入流路を介して前記計量流路内の前記液体を前記反応容器に注入することを特徴とする反応処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−281954(P2009−281954A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136246(P2008−136246)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】