説明

反応性官能基を含有するテレケリックポリマー

同じ重合体鎖末端に2個の反応性基を有するテレケリックポリマーを開示する。これらの重合体は、シクロボラン開始剤と、少なくとも1個のフリーラジカル重合性単量体と、酸素とを結合することによって、シクロボラン開始剤から得られる重合体セグメントの一端にボラン残基を有する重合体セグメントを形成することで製造することができ、該ボラン残基を、少なくとも2個の官能基に変換して、テレケリックポリマーを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許出願第 号、 出願、発明の名称「官能性フッ素重合体およびその製法」、代理人整理番号59516−056と類似の主題を含む。
【0002】
開示の分野
本発明は、反応性基を有するテレケリックポリマーおよびその製造に関する。特に本発明は、シクロボラン開始剤により、重合体の1末端に2個の官能基を有する重合体を製造することに関する。本明細書で開示する方法は、調整された共重合体組成および狭い分子量分布を持つテレケリックブロック重合体の製造に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
背景技術
重合体鎖末端(複数も含む)に位置する反応性基(複数も含む)を有するテレケリックポリマーは、高分子材料の重要な分野である。該重合体は、それらの官能基の反応によって、充分特化された特性を持つ最終製品に使用されるプレポリマーとしての適用が見出されている。そのようなテレケリックポリマーの商業的用途の初期の例の1つとして、ヒドロキシル末端プレポリマーとジイソシアネートとの間のカップリング反応によって製造することのできる、ポリウレタンの形成における使用がある。この例によって、重合体の分子構造を制御することによって、多様な物性を持つ材料を作り出す、新しい展望が持ち込まれた。
【0004】
本来、テレケリックポリマーは、各末端に1個の、2個の反応末端基を含む重合体であると考えられていた。そのような材料の用途が増えるにしたがって、テレケリックポリマーとして分類される材料の定義が広がっていった。テレケリックポリマーの現在の広い定義では、それ自体または他の分子中の他の官能基と化学反応する、1個以上の反応末端基を含む全ての重合体を含む。今では、反応性末端基を1個だけ持つ重合体は、「モノテレケリック」と言われ、2個の対向反応性末端基を有する本来のテレケリックは、一般的に、「ジテレケリック」と呼ばれている。2個を超える反応性末端基を有するテレケリックポリマーは、トリテレケリック、テトラテレケリックまたはポリテレケリックと称される。最も重要な市販のテレケリックポリマーは、間違いなく、モノテレケリックおよびジテレケリックポリマーである。これらの材料は、それぞれ、明確に決定されたグラフト共重合体およびマルチブロック共重合体を製造するためのプレポリマーとして働く。より高い官能度(2を超える)を持つテレケリックポリマーは、普通、重合体網目構造を有する材料となる。テレケリックポリマーの用途における重要な考慮事項は、それらの平均官能度、すなわち、モノテレケリックポリマーの平均官能度は1.0とすべきであり、ジテレケリックポリマーの平均官能度は2.0とすべきであるということである。典型的な末端基結合反応は、正確な末端基化学量論的組成に非常に敏感である。テレケリックを使用するグラフト共重合体およびマルチブロック共重合体の質は、それらの官能度、それぞれ、1.0および2.0の正確さに依存する。
【0005】
ほとんどのモノテレケリックビニル重合体は、リビング重合体を適切な試薬で停止させることによって製造される。実際には、アニオン性、カチオン性、遊離基、メタセシス、およびチーグラー−ナッターを含む全てのビニル重合のメカニズムは、鎖末端で所望の官能基に変換することのできる、安定な成長活性部位を伴うリビング重合を示してきた。
【0006】
多くの点で、フリーラジカル重合は、ビニル重合体の最も重要な商業的な製造方法であ
る。しかし、簡単にラジカル結合反応を起こす、および不均衡な反応では、成長部位の制御が殆どまたは全くできない。リビングフリーラジカル重合を実現する初期の試みには、N,N−ジエチルジチオカーバメート誘導体のようなイニファータによる重合体鎖の成長の可逆的停止反応の概念が含まれていた(大津ら、Macromol chem, Rapid Commun,3,133,1982,Eur.Polym. J.,25,643,1989)。第1の強力なリビングラジカル重合は、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ(TEMPO)のような安定なニトロキシルラジカルを含む反応中で観察され、これは、単量体とは反応しないが可逆性末端基でキャップされた成長鎖末端を形成する(ジョルジュら、米国特許第5,322,912号明細書および第5,401,804号明細書参照)。形成された共有結合は、遊離基鎖末端の総濃度を下げ、望ましくないカップリング反応および不均化停止反応の発生を減少させる。効果的な重合のためには、反応は高温(>100℃)で実施しなければならない。共有結合の開裂においては、単量体挿入のために充分な濃度の成長ラジカルを保つ、比較的高いエネルギーが必要である。しかし、このリビングラジカル重合は、スチレン系単量体に関してだけ効果的であるようだ。
【0007】
引き続いて、いくつかの研究グループでは、いわゆる原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれる、カップリング剤として安定なニトロキシラジカルを遷移金属種に置き換え、様々な銅、ニッケル、鉄、コバルトおよびルチニウム介在リビング遊離基系を得ている(マチャゼフスキーら、マクロモレキュールズ,28,7901,1995,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,117,5614,1995参照)。これらの系の全ては、明らかな中心課題、すなわち、高温で活性な鎖末端と休眠鎖末端との間の平衡状態を介する可逆的停止反応があり、これは、金属イオンを含むレドックス反応によって調整される。この反応の主な長所は、金属化合物の正しい選択によって、広いスペクトルの単量体で操作することができるということである。しかし、重大な欠点は、所望の着色されていない最終製品を得るために大規模な精製工程を必要とする、濃く着色された反応混合物を形成することである。
【0008】
他のグループは、他のタイプのリビングラジカル開始剤に着目してきており、それは、リビングラジカル重合を室温で開始し、白色の重合体生成物を形成することができる。この化学反応は、リビングラジカル開始剤として、トリアルキルボランのモノ酸化付加物に基づいていた。研究目的は、先ずボラン基を重合体鎖に導入し、これを次いで酸素によって選択的に酸化しモノ酸化ボラン部分を形成し、これが遊離基グラフト形成重合を室温で開始し、ポリオレフィングラフトおよびブロック共重合体を製造することによる、ポリオレフィンの官能化を中心としていた(チャンら、米国特許第5,286,800号明細書および第5,401,805号明細書、マクロモレキュールズ,26,3467,1993、マクロモレキュールズ,31,5943,1998、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,121,6763(1999)参照)。数年前、数種の比較的安定なラジカル開始剤が発見され、それらは、重合体分子量と、単量体変換と、単量体順次添加により製造されたブロック共重合体との間に直線的関係を持つリビングラジカル重合の特徴を示した(チャンら、米国特許第6,420,502号明細書および第6,515,088明細書、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,118,705,1996参照)。
【0009】
高分子量のポリプロピレン(PP)のメタロセン重合または熱分解によって製造することができる、鎖末端不飽和PPの化学的修飾によるモノテレケリックポリプロピレンを製造する比較的新しい方法が報告された(チャンら、マクロモレキュールズ,32,2525,1999;ポリマー,38,1495,1997;ミュロップら、ポリマーズ・フォー・アドバンスト・テクノロジーズ,4,439,1993;および塩野ら、マクロモレキュールズ,25,3356,1992;マクロモレキュールズ,26,2085,19
93、マクロモレキュールズ,30,5997,1997参照)。また近年、チャンらは、反応性基(OH、COOH、NH、その他)を含むモノテレケリックポリオレフィン類を製造する、簡便な経路を報告している。該化学作用は、ジアルキルボラン(RB−H)およびスチレン系分子/Hを含む2個の反応性連鎖移動(CT)剤を使用し、それぞれ反応性アルキルボランおよびスチレン系末端基を含有するポリオレフィンを形成するメタロセン介在オレフィン重合中の連鎖移動反応それ自体が中心である。(チャンら、米国特許第6,248,837号明細書および第6,479,600号明細書、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,121,6763,1999、マクロモレキュールズ,32,8689,1999,マクロモレキュールズ,34,8040,2001,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,123,4871,2001およびマクロモレキュールズ,35,1622,2002参照)メタロセン触媒の適切な選択に関して、形成されたモノテレケリックポリオレフィンは、狭い分子量分布(M/Mが2)を示し、重合体の分子量は(CT剤)/(α−オレフィン)のモル比に対して逆比例している。
【0010】
一般に、両方の鎖末端に反応性基を持つテレケリックポリマー、すなわち官能度が2である「ジテレケリック」重合体の合成は、特に、ビニル重合体の製造において、より多く望まれている。2個の対抗する末端酸基または末端アルコール基を持つ脂肪族ポリエステル類、および2個の対抗する末端アルコール基を持つポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイドのような、市販のジテレケリックポリマーのほとんどは、適切な開始剤を使用して、ポリ縮合反応および開環重合によってそれぞれ製造される。テレケリックビニル重合体の製造は、普通、リビング重合と2官能性開始剤または官能性置換開始剤との結合を必要とする。この方法論は、実際、アニオン性、カチオン性、遊離基、メタセシスおよびチーグラー−ナッターを含む全てのビニル重合技術に適応されており、これは、鎖末端で所望の官能基に変換することができる、安定な成長活性部位を持つリビング重合の証拠となる。(アニオン性リビング重合の例として、たとえば、米国特許第3,265,765号明細書、およびD.E.バーグブライターら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,109,1987を参照、カチオン性リビング重合の例として、たとえば、米国特許第4,946,899号明細書を参照、遊離基リビング重合の例として、ジョルジュら、米国特許第5,322,912号明細書および第5,401,804号明細書、マチャゼフスキーら、マクロモレキュールズ,28,7901,1995およびジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,117,5614,1995参照、メタセシスリビング重合の例として、たとえば、R.H.グラブスら、マクロモレキュールズ,22,1558,1989を参照、および遷移金属リビング重合の例として、たとえば、Y.土井ら、マクロモル・ケム.,188.1273,1987およびK.安田ら、マクロモレキュールズ,25,5115,1992参照)
また、重合体主鎖中にある不飽和単位を含む重合体を分解することによる、数種のジテレケリックビニル重合体の製造を記載した報告がある。しかし、同じ重合体鎖末端に複数の反応性基を含むジテレケリックポリマーを製造する報告は、どれもないと考えられる。したがって、様々な化学的性質を有するテレケリックポリマーを合成する簡便な方法に関する必要性は続いている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の概要
本発明の有利な特徴は、新種のテレケリックポリマーおよびその製造である。
【0012】
本発明の付加的な有利な特徴および他の特徴を、以下に続く記載で説明する。また、部分的には、以下に記載の試験を行うことによって当業者に明らかになり、または本明細書の記載の実施から学ぶこともできる。該特徴は特に添付の請求の範囲の指摘によって、理
解され、得られるであろう。
【0013】
本発明によれば、一つには、重合体の1末端に2個の反応性基を含むテレケリックポリマーを製造する方法によって、前記および他の有利な特徴を達成する。該方法は、シクロボラン開始剤と、少なくとも1個のフリーラジカル重合性単量体および酸素とを結合することを含む。開始剤が単量体の重合を開始し、1末端にボラン残基を有する重合体セグメントを形成する。該残基は、シクロボラン開始剤の結果物である。重合は、単量体全てが重合体セグメントに組み込まれるまで、あるいは反応が停止されるまで続く。末端ボラン残基を、少なくとも2個の官能基に変換し、同じ鎖末端に少なくとも2個の官能基を有するテレケリックポリマーを形成することができる。
【0014】
本発明の他の有利な特徴は、フリーラジカル重合性単量体から誘導される重合体セグメントを含み、同じ鎖末端に2個の官能基を有するテレケリックポリマーである。
【0015】
本発明の付加的な有利な特徴は、限定ではない単なる例示を用いることによって、本発明の好ましい実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかになるであろう。明確に理解されるように、本発明は、他のおよび相違する実施形態も可能であり、そのいくつかの細部では、本発明の精神から逸脱しない限り、種々の自明な点において修正変更も可能である。したがって、図面および説明は、事実上、説明するためのものであり、限定ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
開示の詳細な説明
本発明は、ビニル単量体と開始剤を含むボロンとの重合によって、重合体の1末端にボロン残基を有する重合体を製造し、これは複数の官能基に変換することができるという発見に由来する。正確な官能度と分子量とを持つ特定のテレケリックポリマーの合成は、そのような重合体、すなわちプレポリマーまたはマクロマーを出発物質として用い、通常の物性を持つ生成物を製造することが要望されることから、重合体科学においては重要な主題である。好ましいビニル重合体の工業的製造法であるため、該主題は、特にフリーラジカル重合における関心事である。
【0017】
さらに、フリーラジカル開始剤は、極性基を含有する単量体を始めとする広い範囲のビニル単量体に有用である。本明細書で使用するビニル単量体は、少なくとも1種の不飽和炭素−炭素二重結合を有する、重合されやすい化合物を意味する。フリーラジカル重合性単量体は、それ自体と、あるいは他の単量体とフリーラジカル重合しやすい化合物であり、ビニル単量体が挙げられる。
【0018】
本発明の実践的なある実施形態では、1個以上のフリーラジカル重合性単量体に由来する重合体セグメントを含み、同じ鎖末端に2個の官能基を有するテレケリックポリマーを得ることができる。本発明の実施形態の1つでは、以下の式:
(X”)(X’)R”−R’−PS (I)
(式中、PSは重合体セグメントを示し、R’は、エーテル結合、または置換または非置換の直鎖または分岐状アルキルまたはアルキルエーテル結合であり、R”は、置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基であり、X’およびX”は第一または第二官能基でもよい)で表されるテレケリックポリマーを得ることができる。
【0019】
本発明の実践的な実施形態では、重合体セグメントは1以上のフリーラジカル重合性単量体に由来し、すなわち、重合体セグメントは単量体の重合生成物である。重合体セグメントは、ボランが介在するビニル単量体のリビングラジカル重合によって製造されるホモポリマーまたは共重合体であってもよい。そのような単量体として、直鎖、分岐状または
環状構造を有するC〜C18単量体が挙げられる。用語「共重合体」は、ランダム、ジブロックおよび複数ブロック微細構造を持つ2個以上の単量体に由来する基または単位を含む重合体を含むことを意図する。したがって、本明細書で使用する用語「共重合体」は、共重合体、三元重合体、四元重合体などを含むことを意図する。重合体セグメントの平均分子量(すなわち数平均分子量)は、通常300g/モルを超える。重合体セグメントの好ましい数平均分子量は、約500〜約1,000,000g/モルであり、最も好ましくは、約1,000〜約300,000g/モルである。重合体セグメントおよび結果的に得られるテレケリックポリマーは、比較的狭い分子量分布を持つのが好ましく、たとえば5以下、好ましくは3未満である。
【0020】
本発明で使用が意図されるフリーラジカル重合性単量体として、たとえば、ビニルハロゲン化合物、ビニルアルコール類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルピロリドン類、ビニルアルキル類、たとえばスチレンのようなビニル芳香族類、アクリレート類、アクリル酸、アクリロニトリルおよびこれらの環状形状のもののようなビニル単量体およびジエン類が挙げられる。該単量体を、1個以上のハロゲン、アルキルまたは極性基で置換することができる。そのような単量体の例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタアシレート、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸、マレイン酸無水物、ビニルアセテート、アクリロニトリル、アクリルアミド、塩化ビニル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロクチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレ
ート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、フッ化ビニル、二フッ化ビニリデン、1−フルオロ−1−クロロ−エチレン、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロメチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、置換スチレン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのラジカル重合性単量体は、単独でも、順番に用いても、あるいは2個以上の単量体を組み合わせて同時に用いてもよい。
【0021】
本発明の実践的な実施形態では、フリーラジカル重合性単量体の重合を開始することによって、テレケリックポリマーを製造する。開始剤としては、以下に示すような、3つのC−B結合が全て環状構造の一部を構成するシクロボラン開始剤が好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
上記式において、R、RおよびRは独立して、炭素数2〜約15個、好ましくは2〜10個の直鎖または分岐状のアルキル基である。R、R、およびRの各ペアはそれぞれ、該2個のアルキル基に共有されている結合基とともに一緒になって化学的に架橋し、ボロン原子を含む環状構造を形成することができる。
【0024】
シクロボラン開始剤の特に好ましいものとして、以下に示す、8−ボラインダン(IV)、9−ボラデカリン(V)、1−ボラアダマンタン(VI)およびペルヒドロ−9b−ボラフェナレン(VII)が挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
これらの化合物、および他のボロン含有化合物の製造は、ブラウンら、テトラヒドロン,33,2331,1977によって報告されているように、当該技術分野で公知である。
【0027】
本発明の実施にあたって、シクロボラン開始剤として、ラジカル重合性単量体と酸素との組合せの1またはそれ以上の種類のものがある。本発明の1実施形態では、開始剤および単量体を、先ず、酸素のない大気中で結合する。しかし、所望の成分組成が達成されるまで、酸素雰囲気中および調整された量の酸素中で成分を結合することができることも想定される。シクロボラン開始剤と1以上のフリーラジカル重合性単量体とを溶媒中または
塊状で結合した後、所定量の酸素を該混合物から抜き取りまたは導入し、モノ酸化ボラン化合物を形成する。この酸化ボランは、それ自体、リビングラジカル重合を開始し、ホモポリマーおよび共重合体を含むビニル重合体を製造すると考えられる。以下のスキームは、酸化そのもの、および酸素の存在下でのシクロボラン開始剤とアクリル系単量体とを含む重合プロセスの考えられるメカニズムを示す。
【0028】
【化3】

【0029】
上記の例は、テレケリックポリメチルメタクリレート(PMMA)であって、PMMAセグメントを有し、式中、nは繰返し単位の数であり、重合体鎖の開始位置に2個の末端OH基を有するメタクリレートの製造を示す。該スキームは、8−ボラインダン(IV)開始剤を使用した、重合体セグメントの重合を示す。
【0030】
先に公表された刊行物に開示されるように、トリアルキルボラン(BR)は、室温で、化学量論量の酸素に曝された場合、最初に3つのB−Cのうち1個が酸化され、過酸化物化合物、すなわち、RB−O−O−Cが製造されると考えられる。米国特許第5,286,800号明細書、第5,401,805号明細書、および第6,420,502号明細書、ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティー,118,705(1996);ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,121,6763(1999)を参照のこと。いかなる理論に拘泥するものではないが、適切な単量体の存在下、上記B−O−O−C種は、室温でさらに分解し、アルコキシルラジカル(C−O)とボリネートラジカル(B−O)とを形成すると考えられる。アルコキシルラジカルは、単量体の重合を開始するのに活性であると考えられる。一方、ボリネートラジカル(B−O)は、ボロンの空のp軌道への電子の逆供与により、安定すぎて重合を開始できないと考えられる。しかし、この「休眠」ボリネートラジカルは、成長している鎖末端でラジカルと可逆的結合を形成し、成長ラジカルの寿命を延ばしているのかもしれない。
【0031】
この8−ボラインダン(IV)の場合、(上記スキームで示される)、3つの環状B−C結合のうち1つが酸化され、ラジカルMMA重合を開始し、重合体鎖が連続して成長するにも係わらず、部分的に酸化されたシクロボラン残基が重合体鎖の開始位置と結合した形で残る。リビング重合が停止された後、ボラン残基中の2個の未反応環状B−C結合を、NaOH/H試薬によって、完全に2個のOH基のような官能基に相互変換することができる。得られたPMMA重合体は、重合体鎖の開始位置にある2個のOH基と、制御された分子量および狭い分子量分布とを有する。該化学作用は、フルオロモノマーを
含む多くの単量体に適用しうる。この新しい種類のジオールマクロモノマーは、ポリウレタンおよびポリエステルのような、縮合プロセスによって造られる材料に付加的な物性を導入するために、使用することができる。
【0032】
シクロボラン開始剤、単量体および酸素の結合は、同じ重合体鎖末端に2個の反応性末端官能基を含むホモポリマーおよびランダム共重合体を製造するのに有用である。また、たとえば、リビング重合技術において、連続的単量体添加の方法によりブロック共重合体構造を有するテレケリックに、類似のテレケリックポリマー鎖末端構造を持つものを製造する場合にも有用である。すなわち、第1単量体の重合を所望の程度完了して第1重合体「ブロック」を形成した後、第2単量体を反応塊状物に導入し、第2単量体の重合を起こし、第1ブロックの末端に結合する第2重合体「ブロック」を形成する。リビング重合を停止した後、重合体鎖の開始位置にある、部分的に酸化されたボラン残基を完全に2個の反応性基に相互変換することができる。この逐次添加方法を使用すると、以下の重合体セグメント式で表される、広範囲のジブロック、トリブロック共重合体などを製造することができる。
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、M、MおよびMは、フリーラジカル重合性単量体から選択される同じまたは異なる単量体単位である。)上記重合体セグメントは、少なくとも2個の官能基を重合体鎖の末端に有することが理解される。これらのラジカル重合性単量体は、単独または、2個以上の単量体の混合物として使用することができる。数字x、yおよびzは、各重合体ブロック中の繰返し単量体単位の数を表し、通常、x、yおよびzは独立して、約10〜約100,000である。好ましくは、x、yおよびzは、独立して、約20〜約30,000、最も好ましくは、約30〜約10,000である。基本的に、類似のリビングラジカル重合反応は、先ず第1単量体(または単量体混合物)、次いで第2単量体(または単量体混合物)、次いで第3単量体(または単量体混合物)というように、順次反応が起こり、ジブロック、トリブロックなどが形成される。図3に示すように、テレケリックポリ(メチルメタクリレート−b−ポリ(トリフルオロエチルアクリレート)ジブロック共重合体(グラフb)は、狭い分子量分布を変更することなく、ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマー(グラフa)の分子量のほぼ2倍を示した。該共重合体組成は、基本的に単量体の供給比によって調整した。
【0035】
本発明の実施形態を実施する場合、重合体鎖に位置するボラン残基を完全に2個の反応性基に変換することができる。式Iにおいて、R’およびR”は、どのような形にせよ、ボラン開始剤の断片である。開始反応の間、炭素−ボロン結合の1つが破壊され、最終的に、炭素原子が重合体鎖末端の一部を形成すると考えられる。ボロン残基の変換後、開始剤の残った炭素断片が重合体鎖に留まると考えられる。式(IV)〜(VII)で示されるシクロボラン開始剤を前提として、たとえば、R’はOまたは−CHO−であり、R”はCアルキル基または官能基に結合するメチレン基を持つあるいは持たないCアルキル環であってもよい。したがって、上記式(I)中のR’およびR”は、式(II)および(III)の開始剤のR、RおよびR基の組合せであってもよく、R’およびR”はそのような基を含むものである。本発明の1実施形態において、R’は、エーテル結合、または置換または非置換の直鎖または分岐状アルキルまたはアルキルエーテル結合であり、R”は、C1−15置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基のよ
うな、置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基である。好ましくは、R”は、C2−10置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基である。また、R’およびR”は、互いに化学的結合して長い直鎖構造を形成することもでき、あるいは2個のアルキル基の間にある直接化学結合と一緒になって、環状構造を形成することもできる。
【0036】
末端官能基(X’およびX”)は、第1または第2官能基である。これらの基として、ヒドロキシル、アミノ、アルデヒド、無水物、ハロゲン、カルボン酸などの末端基が挙げられる。該官能基は、重合体セグメントの末端にあるボラン残基を変換することによって形成される。そのようなボラン相互変換反応は、たとえば、H.C.ブラウン、「ボランを介する有機合成」、ワイリー・インターサイエンスによって開示されるもののように、当該技術分野で公知である。たとえば、OH末端基を含むテレケリックポリマーは、ボラン残基をNaOHおよび過酸化物の混合物と酸化することによって製造することができる。同様に、末端アミノ官能基を含むテレケリックポリマーは、ボラン停止性重合体とNHOSORとの反応によって製造してもよく、アルデヒド官能基を含む重合体は、ボラン停止性重合体と、COおよびK(i−CO)BHの混合物との反応により製造してもよく、ヨウ素官能基を含む重合体は、ボラン停止性重合体と、NaI/クロルアミン−T−水和物溶液との反応によって製造してもよい。本発明の1実施形態では、Xは、OH、NH、COH、COOH、Br、Iおよびコハク酸無水物からなる群から選択される。ボランから誘導されうる任意の官能基が想定され、ここに含まれる。
【0037】
試験例
以下の実施例は本発明のある好ましい実施形態をさらに説明するためにあるものであり、これに限定されるものではない。当業者であれば、常法による実験以上のものを用いることなく、数多くの本明細書に記載の特定の物質および手順と等価のものを理解し、確認するであろう。
【実施例】
【0038】
実施例1
1,3,7−オクタトリエンの合成
Pd触媒の存在下、フェノールを用いたブタジエンの二量化によって、1,3,7−オクタトリエンを合成した。アルゴン(Ar)雰囲気下、磁気撹拌器付きの1lフラスコに、100g(1.06モル)のフェノール、4.64g(0.004モル)のナトリウムフェノキシド、0.25gのπ−アリルパラジウム塩化および400mlのクロロホルムを加えた。フラスコを−80℃に冷却した後、150gのブタジエンを充填した。溶液を1時間以内で室温まで徐々に温め、一晩、撹拌し続けた。次いで、室温で真空下、クロロホルムを完全に除去し、淡色の懸濁物を得た。この懸濁物に8.0g(0.03モル)のトリフェニルホスフィンを加え、100℃で1時間撹拌した。次いで、約76gの1,3,7−オクタトリエンを、約120℃〜125℃で分別蒸留によって混合物から注意深く蒸留した。
【0039】
実施例2
8−ボラインダンの合成
Ar雰囲気下、0℃で、21.6g(0.2モル)の1,3,7−オクタトリエンの50ml、THF溶液に、200ml(1.0M)のボランTHF複合体のTHF溶液を滴下した。滴下が完了した後、0℃で1時間撹拌を続けた。次いで、混合物を1時間還流し、その後、THFを室温で真空下完全に除去した。得られた白色個体を210℃で3時間加熱し、次いで、9.6gの9−ボラインダン(収率:41%)を約50℃〜60℃(0.3mmHg)で混合物から蒸留した。スペクトルデータは以下の通りである。1H−NMR(25℃ in CDCl3)δ.08〜1.6ppm(m);11B−NMR(2
5℃ in CDCl3)δ91.14ppm(s);13C−NMR(25℃ in CDCl3)δ21.9ppm(b,CH2−B),δ25.6ppm(s,CH2),δ26.3ppm(s,CH2),δ27.4ppm(b,CH2−B),δ28.4ppm(s,CH2),δ31.6ppm(s,CH2),δ34.4ppm(s,CH2),δ42.4ppm(b,CH−B)
実施例3
1−ボラアダマンタンTHF複合体の合成
Ar雰囲気下で激しく撹拌しながら、ジエチルエーテル中の100ml(1.0M)のアリルマグネシウムブロマイドに、4.8gのボロントリフルオライドジエチルエーテルを滴下した。30分還流した後、混合物を一晩放置した。溶液層をAr下で別のフラスコに移した。ジエチルエーテルを60℃常圧で留去した。混合物を減圧下で蒸留し、収量2.7g(60%)のトリアリルボランを得た。130℃に予備加熱した100mlのフラスコに2.7gのトリアリルボランを加えた。5分間撹拌した後、1.4gのメチルプロパギルエーテルを加えた。混合物を1時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。混合物に0.7mlのメタノールを加え、プロペンガスが完全に抜けた後、15分間撹拌した。残留油状物に20ml(1.0M)のボランTHF複合体のTHF溶液を加えた。混合物を80℃で2時間還流した。次いで、室温、真空下でTHFを除去した。真空下、白色固体を昇華させて、精製1−ボラアダマンタンTHF複合物を2.0g(収率:52%)得た。スペクトルデータは以下の通りである。1H−NMR(25℃ in CDCl3)δ3.4ppm(t,4H,THF CH2−O),δ2.7ppm(m,3H,CH),δ1.9ppm(t,4H,THF CH2),δ1.1ppm(m,CH2).11B−NMR(25℃ in CDCl3)δ12.58ppm(s);13C−NMR(25℃ in CDCl3)δ24.1ppm(s,THF CH2),δ30.4ppm(b,CH2−B),δ34.9ppm(s,CH),δ40.8ppm(s,CH2),δ68.2ppm(s,THF CH2−O)
実施例4
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用したMMAの塊状重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
火炎乾燥された100mlフラスコ中に、10.0ml(100ミリモル)のMMA(CaH上で蒸留することにより精製)と140mg(1.2ミリモル)の8−ボラ−インダンをアルゴン下で導入した。10mlのO(0.8ミリモル)を注入した後、溶液を約5分間激しく振盪することによって混合した。次いで、系を室温でさらに60分放置し、その後、20mlのアセトンを加え溶液粘度を下げた。次いで、溶液を、200mlのよく撹拌されたメタノールに注ぎ入れ、重合を停止し、PMMA重合体を析出させた。全ボラン部分の完全な酸化を確保するために、単離したPMMA重合体を、次いで、20mlのTHFに再溶解し、0.2ml(6N)NaOH溶液を加え、その後0.4mlの33%Hを0℃で滴下した。得られた混合物を1時間で50℃に加熱し、酸化反応を完了した。室温に冷却した後、溶液を200mlのよく撹拌されたメタノールへ注ぎ入れた。析出したテレケリックPMMA重合体を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥した。重合体の総収率は、約80%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重合体の分子量は、Mn=20,300g/モル、およびMw=68,500g/モルであった。末端OH基は、Hおよび13C NMR−DEPT135スペクトルによって試験した。
【0040】
実施例5〜13
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用したMMAの塊状重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
一連の実施例で、反応時間をそれぞれ10分から20分、40分、60分および90分に体系的に増やした以外は、実施例4と類似の反応条件で実施し、様々な分子量を有するテレケリックPMMA重合体を製造した。また、重合体は全てNaOHおよびH
処理し、ボラン部分の酸化完了を確実にした。得られた、2個の末端OH基を有するテレケリックPMMA重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。図1は、それぞれ、テレケリックPMMA試料(実施例9、11および13)のGPC曲線、およびモル比が1/3の重合体分子量対(酸素)/(ボラン)を使用した単量体変換率(実施例9〜13)のプロットを示す。該一連の実施例の試験条件および結果の全てを表1にまとめる。表中、Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を、そしてPDIは、多分散指数を表す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例14〜28
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用したMMAの塊状重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
別の比較のための一連の実施例では、重合変数として、単量体および酸素量を体系的に変化させた以外は、実施例4と同様の実験手順を用い、室温で90分、70mg(0.6ミリモル)の8−ボラ−インダン開始剤を用いることによって、テレケリックPMMA重合体を製造した。重合後、重合体は全てNaOHおよびHで処理し、ボラン部分の酸化完了を確実にした。得られた、2個の末端OH基を有するテレケリックPMMA重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。該一連の実施例の実験条件および結果の一部を表2にまとめる。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例29〜34
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用したMMAの溶液重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
火炎乾燥された150mlフラスコに、50mlのTHF、5.0ml(50ミリモル)のMMA、および70mg(0.6ミリモル)の8−ボラ−インダンをアルゴン下で導入した。5mlのO(0.2ミリモル)を注入した後、約5分間、フラスコを激しく振盪することによって溶液を混合した。溶液を室温で種々の時間(0.5時間、1.0時間、2.0時間、5.0時間、10.0時間、15.0時間、20時間)放置し、10mlのアセトンを加え、溶液粘度を下げた。次いで、溶液をよく撹拌されたメタノール200mlに注ぎ入れ、重合を停止し、PMMA重合体を析出させた。次いで、全ボラン部分の完全な酸化を確保するために、単離したPMMA重合体を、20mlのTHFに再溶解し、0.1ml(6N)NaOH溶液を加え、その後、0.2mlの33%Hを0℃で滴下した。得られた混合物を1時間で50℃に加熱し、酸化反応を完了した。室温に冷却した後、溶液を200mlのよく撹拌されたメタノールへ注ぎ入れた。析出したテレケリックPMMA重合体を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥した。得られた、2個の末端OH基を有するテレケリックPMMA重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。該一連の実施例の試験結果の一部を表3にまとめる。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例35〜39
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用したMMAの溶液重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
一連の実施例で、反応で使用されたベンゼンの量(0.5ml、5ml、15ml、35ml、55ml)以外、ベンゼン溶剤中で実施例29〜34と同様の溶液重合を行い、テレケリックPMMA重合体を製造した。各MMA濃度(M=モル/リットル)下での重合中に形成したテレケリックPMMA重合体の収率を表4にまとめる。
【0047】
【表4】

【0048】
実施例40
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用した塊状プロセスによる、2個の末端OH基を持つテレケリックポリ(t−ブチルアクリレート)の合成
火炎乾燥された100mlフラスコに、10.0mlのt−ブチルアクリレート(CaH上で蒸留することによって精製)および140mgの8−ボラ−インダンをアルゴン下で導入した。10mlのOを注入した後、約5分間、フラスコを激しく振盪することによって溶液を混合し、重合反応を開始した。次いで、反応をさらに10分間室温で続け、空気に曝し、重合を停止し、ボラン部分を酸化した。固体重合体を60mlのTHF溶剤に溶解し、200mlのよく撹拌したメタノールに注ぎ入れ、重合体を析出させた。析出したテレケリックポリ(t−ブチルアクリレート)を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥した。重合体の総収率は、約90%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重合体の分子量は、Mn=31,000g/モル、およびMw=145,000g/モルであった。末端OH基は、Hおよび13C NMR−DEPT135スペクトルによって試験した。
【0049】
実施例41
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用した塊状プロセスによる、2個の末端OH基を
持つテレケリックポリ(トリフルオロエチルアクリレート)の合成
t−ブチルアクリレートの代わりに2’,2’,2’−トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)単量体を用いた以外は、実施例36の手順を繰り返した。テレケリックポリ(トリフルオロエチルアクリレート)の収率は、10分の重合時間で約95%であった。GPCによって、重合体分子量がMn=23,000g/モルおよびMw=58,000g/モルであることが示された。得られた、2個の末端OH基を有するテレケリックポリ(トリフルオロエチルアクリレート)のHおよび13C NMR−DEPT135スペクトルを図2に示す。
【0050】
実施例42〜46
8−ボラ−インダン/O開始剤を使用した溶液プロセスによる、2個の末端OH基を持つテレケリックポリ(トリフルオロエチルアクリレート)の合成
火炎乾燥された150mlフラスコに、40mlのTHF、5mlの2’,2’,2’−トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)単量体、および70mgの8−ボラ−インダンをアルゴン下で導入した。5mlのOを注入した後、約5分間、フラスコを激しく振盪することによって溶液を混合した。次いで、溶液を室温で種々の時間(それぞれ、2時間、4時間、6時間、8時間および10時間)放置し、その後、該溶液を空気に曝し、重合を停止し、ボラン部分を酸化した。重合体溶液を200mlのよく撹拌したメタノールに注ぎ入れ、重合体を析出させた。析出したテレケリックポリ(トリフルオロエチルアクリレート)を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。該一連の実施例の試験結果を全て、表5にまとめる。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例47〜60
1−ボラアダマンタン/O開始剤を使用したMMAの塊状重合による、2個の末端OH基を持つテレケリックPMMAの合成
一連の実施例で、50mlのMMA(CaH上で蒸留することにより精製)、および350mgの1−ボラアダマンタン/THF複合体を、アルゴン雰囲気下、ドライボックス中の火炎乾燥された150mlフラスコ中で混合した。混合溶液を、数本の試験管に注入し、隔膜で覆った。各試験管には6mlの溶液が入った。次いで、試験管をドライボックスから取り出し、各試験管に1.2mlのOを注入した。各試験管を激しく振盪した後、溶液を、ある温度である時間(表6に示す)保ち、その後、溶液を50mlのメタノールに注ぎ入れることによって重合を停止し、PMMA重合体を析出させた。次いで、全ボラン部分の完全な酸化を確保するために、単離したPMMA重合体を20mlのTHFに再溶解し、その後0.5ml(6N)NaOH溶液を加え、次いで1mlの33%Hを0℃で滴下した。得られた混合物を1時間で50℃に加熱し、酸化反応を完了した。室温に冷却した後、溶液を200mlのよく撹拌されたメタノールへ注ぎ入れた。析出したテレケリックPMMA重合体を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥した。得られた、2個の末端OH基を有するテレケリックPMMA重合体を、ゲルパーミエーションク
ロマトグラフィー(GPC)、およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。該一連の実施例の試験条件と結果を表6にまとめる。
【0053】
【表6】

【0054】
実施例61
PMMA鎖の開始位置に2個の末端OH基を有するポリ(メチルメタクリレート−b−トリフルオロエチルアクリレート)ジブロック共重合体の合成
火炎乾燥された50mlフラスコ中で、5.0ml(50ミリモル)のMMAおよび70mg(0.6ミリモル)の9−ボラ−インダンをアルゴン下で混合した。この混合物に5.0mlのO(0.2ミリモル)を注入し、次いで、激しく振盪し、確実に完全混合した。次いで、系を室温で20分間保ち、真空蒸留で、全揮発分を除去した。引き続き、約5.0mlの2’,2’,2’−トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)を系内に注入した。混合物を激しく振盪し、できるだけ固体を溶解した。完全に溶解した後、溶液を室温で1時間保ち、その後10mlのアセトンを加えて粘度を減らし、次いで、系を空中に開放し、ボランを全て酸化した。次いで、溶液を200mlのよく撹拌したメタノールに注ぎ入れた。析出したテレケリックジブロック重合体を集め、洗浄し、60℃で2日間真空乾燥した。得られたテレケリックポリ(メチルメタクリレート−b−トリフルオロエチルアクリレート)ジブロック共重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、およびHおよび13C NMR−DEPT測定によって特徴付けた。図3で、両化合物ともPMMA鎖の最初に2個の末端OH基を有する、PMMA(Mn=12,400およびMw=24,000g/mol)と、PMMA−b−PTFEAジブロック共重合体(Mn=32,800およびMw=58,000g/mol)との間の
NMRスペクトルおよびGPC曲線を比較する。
【0055】
実施例62
PTFEA鎖の最初に2個の末端OH基を有するポリ(トリフルオロエチルアクリレート−b−メチルメタクリレート)ジブロック共重合体の合成
単量体添加の順番として、メタクリル酸メチルの代わりに2’,2’,2’−トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)単量体を最初に加えたこと以外は、実施例61の手順を繰り返した。得られた、PTFEA鎖の最初に2個の末端OH基を有するテレケリッ
クポリ(トリフルオロエチルアクリレート−b−メチルメタクリレート)ジブロック共重合体を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、およびHおよび13
NMR−DEPT測定によって特徴付けた。表7に、第1PTFEAブロックと得られたPTFEA−b−PMMAジブロック共重合体の分子量を比較する。
【0056】
【表7】

【0057】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態およびその可能性のある実施例のみを示し、説明している。本発明は、種々の他の組合せおよび使用環境が可能であり、本明細書で記載されるような本発明の概念の範囲内で変更および修正が可能であることが理解される。従って、たとえば、当業者であれば、常法による実験以上のものを用いることなく、数多くの、本明細書に記載の特定の物質および手順と等価のものを理解し、確認するであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であり、以下の請求の範囲に含まれているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、テレケリックPMMA試料(実施例9、11および13)のGPC曲線(上部)を表し、重合体分子量対[酸素]/[ボラン]=1/3開始剤システムを使用した単量体転化率(試験例1〜5)のプロット(下部)を示す。
【図2】図2は、0℃ベンゼン中で8−ボラ−インダン/Oによって製造されたポリ(トリフルオロエチルアクリレート)のH NMR(上部)および13C NMR(下部)−DEPT135 スペクトルを表す。
【図3】図3は、(a)PMMAと(b)8−ボラ−インダン/O開始剤を使用する、モノマーの連続付加によって製造されたPMMA−b−PTFEAジブロック共重合体との間のGPCの比較(上部)およびH NMRスペクトルの比較(下部)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1末端に2個の反応性基を含むテレケリックポリマーを製造する方法であって、シクロボラン開始剤、少なくとも1個のフリーラジカル重合性単量体および酸素を組み合せて、重合体セグメントの1末端にシクロボラン開始剤から生ずるボラン残基を有する重合体セグメントを形成することと、
ボラン残基を少なくとも2個の官能基に変換し、同じ鎖末端に少なくとも2個の官能基を有するテレケリックポリマーを形成すること、とを含む方法。
【請求項2】
テレケリックポリマーが、以下の式:
(X”)(X’)R”−R’−PS
(式中、PSは重合体セグメントを表し、R’は、エーテル結合または置換または非置換の直鎖または分岐状アルキルまたはアルキルエーテルであり、R”は、置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基であり、X’およびX”は第1または第2官能基である)で表される請求項1記載の方法。
【請求項3】
シクロボラン開始剤が、以下に記載される構造体:
【化1】

(式中、R、RおよびRは、独立して、直鎖または分岐状のC1−15アルキルである)から選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
シクロボラン開始剤が、構造体IIである請求項3記載の方法。
【請求項5】
シクロボラン開始剤が、8−ボラインダン、9−ボラデカリン、1−ボラアダマンタンおよびペルヒドロ−9b−ボラフェナレンからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
フリーラジカル重合性単量体が、非置換またはハロゲン、アルキルまたは極性基の1以上で置換された、ビニルハロゲン化合物、ビニルアルコール類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルピロリドン類、ビニルアルキル類、ビニル芳香族類、アクリレート、アクリル酸およびアクリロニトリルからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2フリーラジカル重合性単量体を、ボラン残基を有する重合体セグメントに加え、ブロック重合体セグメントを形成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
ボラン残基を、ヒドロキシル、アミノ、アルデヒド、無水物、ハロゲンおよびカルホン酸からなる群から選択される少なくとも2個の官能基に変換することを含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の、1末端にボラン残基を有する重合体セグメント。
【請求項10】
請求項1記載のテレケリックポリマー。
【請求項11】
フリーラジカル重合性単量体に由来する重合体セグメントを含み、同じ鎖末端に2個の官能基を有するテレケリックポリマー。
【請求項12】
以下の式:
(X”)(X’)R”−R’−PS
(式中、PSは数平均分子量が約500g/モルを超える重合体セグメントを表し、R’は、エーテル結合、または置換または非置換の直鎖または分岐状アルキルまたはアルキルエーテル結合であり、R”は、置換または非置換の直鎖、分岐状または環状アルキル基であり、X’およびX”は第1または第2官能基である)で表される請求項11記載のテレケリックポリマー。
【請求項13】
X’およびX”が、ヒドロキシル、アミノ、アルデヒド、無水物、ハロゲン、カルホン酸、Br、Iおよびコハク酸無水物からなる群から選択される請求項11記載のテレケリックポリマー。
【請求項14】
PSが、1種以上のアクリル系およびメタクリル系単量体またはそのフッ素化誘導体、フッ化ビニル、二フッ化ビニリデン、1−フルオロ−1−クロロ−エチレン、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンまたはパーフルオロメチルビニルエーテルに由来する請求項11記載のテレケリックポリマー。
【請求項15】
PSが、ランダム、ジブロックまたは複数ブロック微細構造を持つ2種以上の単量体に由来する請求項11記載のテレケリックポリマー。
【請求項16】
PSが、約1,000〜約1,000,000g/モルの分子量を有する請求項12記載のテレケリックポリマー。
【請求項17】
PSが、約1,000〜約300,000g/モルの分子量を有する請求項12記載のテレケリックポリマー。
【請求項18】
PSが、非置換またはハロゲン、アルキルまたは極性基の1以上で置換された、ビニルハロゲン化合物、ビニルアルコール類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルピロリドン類、ビニルアルキル類、ビニル芳香族類、アクリレート、アクリル酸およびアクリロニトリルからなる群から選択される請求項12記載のテレケリックポリマー。
【請求項19】
請求項11のテレケリックポリマーから製造される材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522333(P2007−522333A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554066(P2006−554066)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/004584
【国際公開番号】WO2005/085297
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(500430110)ペン ステート リサーチ ファウンデイション (3)
【出願人】(506280823)ダイキン・インスティチュート・オブ・アドバンスト・ケミストリー・アンド・テクノロジー・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN INSTITUTE OF ADVANCED CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, INC.
【Fターム(参考)】