説明

反応装置及び電子機器

【課題】反応領域の熱容量が増大することを抑制しつつ昇温速度が速くされた反応装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】断熱容器100は、反応物の反応を起こす反応器(例えば、燃料電池200)を収容する第一の容器1と、第一の容器1を収容する第二の容器2と、を備え、反応器と第一の容器1との間の空間13に気体16が充填され且つ密封され、第一の容器1と第二の容器2との間の空間23の気圧は大気圧よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応物の反応を起こす反応器を収容する反応装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応の技術分野では、種々の混合物質を流路に供給し、電熱ヒータなどで温度管理された流路内に設けられた触媒による化学反応を起こさせて、所望の反応物質を生成する化学反応装置あるいは電力を発生する電力発生器が知られている。このような化学反応装置には、例えば、水素原子を含む有機化合物をもとに水素を主成分とするガスを生成する改質器や、水素と酸素から電力を発生する燃料電池がある。
ここで、所望の化学反応を持続させるためには、高温の反応領域を必要とする。例えば、メタノールを水蒸気改質反応によって水素に改質する場合には約300℃、固体酸化物燃料電池によって水素と酸素から電力を得る場合には約800℃に、反応領域の温度を保持しなければならない。これらの温度への昇温あるいは温度維持に必要な熱量は、抵抗発熱体への電力供給による発熱や、触媒燃焼反応の燃焼熱などによって供給される。システムの熱効率を良くするためには、反応温度への昇温及び温度維持に必要な熱量をできる限り抑制する必要がある。反応領域から周囲環境への熱の散逸を抑えるために、例えば、高温領域である改質器を容器内殻に収容し、さらに容器内殻を容器外殻に収容し、容器内殻及び容器外殻の間に位置する間隙層を大気圧よりも低く真空圧にする方法が知られている(特許文献参照)。
【特許文献1】特開2006−156011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、化学反応装置において装置の起動時間を短縮することが好ましい。起動時間の短縮を実現するために、昇温速度を上げることとなるが、その手段として、反応領域の熱容量を削減することが考えられる。そのためには、反応領域の体積を小さくするとよいが、体積が小さくなると、特に平板型の反応装置の場合、反応領域の内部と外部を仕切る壁が薄くなるため、強度が弱くなってしまう。
一方、昇温速度を上げる手段として、熱量が供給される反応領域を断熱して、反応領域から周囲環境への熱の散逸を抑制することが考えられる。そのためには、反応領域の周囲を例えば10Pa以下となるように減圧するとよいが、この場合、上述の反応領域を画定する壁を挟んだ反応ガスの圧力と減圧された反応領域の周囲の圧力との圧力差に起因する応力が増大する。さらに、昇温速度を上げることにより、反応領域を画定する壁に温度分布が生じやすくなり、このためにも、熱ひずみに起因する応力が増大する。そして、これらの増大した応力が反応領域を画定する壁に加わることとなる。
従って、従来昇温速度を速くするため真空圧にすることにより断熱を行うと、壁に加えられる応力が増大するため、壁の厚みをある程度厚くする必要があり、これにより壁の熱容量が増大してしまい、これに伴い昇温速度も遅くなってしまうというジレンマがあった。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、反応領域の熱容量が増大することを抑制しつつ昇温速度を速くすることができる反応装置及び電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1の発明の反応装置は、
反応物の反応を起こす反応器と、
前記反応器を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、を備え、
前記反応器と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載の反応装置において、
前記反応器は、反応物が流通する流路を有し、
前記気体は、前記反応物の圧力と前記気体の圧力との差によって前記流路を構成する壁に生じる応力が前記壁の破壊応力以下となるように前記気体の圧力が調整されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の反応装置において、
前記気体は、空気より熱伝導率が小さいことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載の反応装置において、
前記気体は、Ar、Kr、Xe、Rn、二酸化炭素、フレオンガスのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
請求項5の発明の反応装置は、
反応物の反応を起こす反応器と、
前記反応器を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、を備え、
前記反応器は、前記反応物が流通する流路を有し、
前記反応器の流路は、前記反応器と前記第一の容器との間の空間に連通しており、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の圧力が、10Pa以下であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記第一の容器の内壁面の一部と、前記第一の容器の外壁面の一部と、前記第二の容器の内壁面の一部と、のうちいずれか少なくとも一つが、前記第二の容器の外壁面よりも輻射率が低いことを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載の反応装置において、
前記第二の容器の外壁面よりも輻射率の低い領域には、Au、Ag、Cu、Rh、Pt、Alを含む低輻射率層が形成されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記第一の容器の内壁面の一部と、前記第一の容器の外壁面の一部と、前記第二の容器の内壁面の一部と、のうちいずれか少なくとも一つが、鏡面加工されていることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記反応器に供給する反応物が流通する供給管を更に備え、
前記供給管は前記流路に接続していることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項5に記載の反応装置において、
前記反応器に供給する反応物が流通する供給管を更に備え、
前記供給管は前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に連通していることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記反応物は、酸素を含むことを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記反応物は、水素を含むことを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記反応器は燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池であることを特徴とする。
請求項15の発明の電子機器は、
請求項14に記載の反応装置と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項15に記載の電子機器において、
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、を更に備え、
前記改質器及び前記触媒燃焼器は、前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に配置されていることを特徴とする。
請求項17の発明の電子機器は、
燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低く、
前記改質器及び前記触媒燃焼器は、前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に配置されていることを特徴とする。
請求項18の発明は、請求項17に記載の電子機器において、
前記燃料電池は、燃料又は酸素が流通する流路を有し、
前記気体は、前記反応物の圧力と前記気体の圧力との差によって前記流路を構成する壁に生じる応力が前記壁の破壊応力以下となるように前記気体の圧力が調整されていることを特徴とする。
請求項19の発明の電子機器は、
燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池は、前記燃料又は酸素が流通する流路を有し、
前記燃料電池の流路は、前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に連通しており、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反応領域の熱容量が増大することを抑制しつつ昇温速度が速くされた反応装置及び電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0008】
[第一の実施の形態]
図1は、断熱容器100内に燃料電池(反応器)200が収容された反応装置300の内部構造を示す縦断面図、図2(a)は、切断線II(a)−II(a)に沿って切断した際の矢視断面図、図2(b)は、切断線II(b)−II(b)に沿って切断した際の矢視断面図である。
反応装置300は、断熱容器100と、断熱容器100内に収容された燃料電池200と、を備える。
【0009】
燃料電池200は、固体酸化物型燃料電池であり、固体酸化物電解質201の両面に燃料極(アノード)202及び酸素極(カソード)203が形成された単電池204を備え、燃料極202に改質ガスを供給する燃料供給流路205が設けられた燃料極セパレータ206と、酸素極203に酸素を供給する酸素供給流路207が設けられた酸素極セパレータ208と、が積層され、外周部が封止材(図示しない)により封止されて各流路205,207内の気密性を保持している。
燃料供給流路205内には、絶縁膜209が形成され、絶縁膜209の表面に薄膜ヒータ兼温度センサ210が形成されている。また。酸素供給流路207内にも、絶縁膜211が形成され、絶縁膜211の表面に薄膜ヒータ兼温度センサ212が形成されている。
薄膜ヒータ兼温度センサ210,212は燃料電池200の動作温度である600〜800℃まで燃料電池200を加熱する。絶縁膜209,211は、各セパレータ206,208と薄膜ヒータ兼温度センサ210,212との電気的絶縁をしており、例えばSiO2等を用いることができ、薄膜ヒータ兼温度センサ210,212には、例えば、Au、Pt、W等を使用することができる。また、薄膜ヒータ兼温度センサ210,212に、外部から電力を供給するための薄膜ヒータ用電極251,252が接続されている。
【0010】
固体酸化物電解質201には、ジルコニア系の(Zr1-xx)O2-x/2(YSZ)、ランタンガレード系の(La1-xSrx)(Ga1-y-zMgyCoz)O3や、その他、セリア系の電解質を用いることができる。燃料極202にはLa0.84Sr0.16MnO3、La(Ni,Bi)O3、(La,Sr)MnO3、In23+SnO2、LaCoO3等を、酸素極203にはNi、Ni+YSZ等を用いることができる。また、燃料極セパレータ206及び酸素極セパレータ208にはランタンクロマイト系のLaCr(Mg)O3、(La,Sr)CrO3等、ニッケル系合金のNiAl+Al23等、その他、フェライト系合金、クロム系合金、チタネート系等をそれぞれ用いることができる。これらの構成材料は、固体酸化物型燃料電池200の熱容量を削減し、かつ、反応領域の温度を均一にするために薄く作られる。なお、図1では、単セルを例として示しているが、この構造を複数積層して多層セルとしても良い。
【0011】
そして、燃料電池200の最上面及び最下面に、輻射によって燃料電池200から熱量が散逸することを抑えるために、第一の容器1の外壁面よりも輻射率の低い低輻射率層213,214が形成されている。低輻射率層213,214には、赤外領域において輻射率が数%程度と小さい金属膜を用いることが好ましく、例えば、Au、Cu、Rh、Pt等を用いることができる。特に、Auは赤外領域で輻射率が約2%程度と金属の中でも非常に小さく低輻射率層213,214に最適である。また、この赤外線反射膜の密着強度を高めるために、成膜する面と赤外線反射膜との間に密着層(図示しない)を形成しても良い。密着層としては、例えば、W、Mo、Ta等を用いることができる。
なお、低輻射率層213,214として形成する金属膜は、燃料電池200の最上面及び最下面の全面のうち少なくとも一部に形成すれば良い。さらに、低輻射率層213,214として、金属膜以外に鏡面加工を施すなどして輻射率を低減しても良い。
【0012】
また、燃料供給流路205には、改質器(図示しない)に連結されて改質器で生成された改質ガス(水素)が供給される燃料供給管215と、発電に使用されなかった未反応の改質ガス(水素)を排出する燃料排出管216とが連結されている。また、酸素供給流路207には、酸素を供給する酸素供給管217と、発電に使用されなかった未反応の酸素を排出する酸素排出管218とが連結されている。
これら燃料供給管215、燃料排出管216、酸素供給管217及び酸素排出管218は、後述の第一の容器1及び第二の容器2を貫通して外部に突出している。
【0013】
上述のように構成された燃料電池200は、酸素極203には空気が酸素供給流路207を介して送られる。酸素極203では空気中の酸素とカソード出力電極254より供給される電子により、次式(1)に示すように酸素イオンが生成される。
+4e-→2O-・・・(1)
燃料極202には燃料供給流路205を介して、改質器から送出された改質ガスが送られる。酸素極207では固体酸化物電解質201を透過した酸素イオンと、改質ガスとの次式(2)、(3)のような反応が起こる。
+O-→HO+2e-・・・(2)
CO+O-→CO+2e-・・・(3)
【0014】
このように、固体酸化物型燃料電池200では、動作温度が600〜800℃と高いために、一酸化炭素をも燃料として用いることができ、発電効率を向上させることができる。なお、発生した電子はアノード出力電極253より外部回路を通ってカソード出力電極254より酸素極203に供給される。
燃料供給流路205を通過した改質ガス(オフガス)は外部に排出される。
【0015】
断熱容器100は、燃料電池200を収容する第一の容器1と、第一の容器1を収容する第二の容器2と、を備える。第一の容器1は、上面が開口した箱状の容器本体11と、容器本体11の開口を塞ぐ蓋部12と、を備え、容器本体11の開口を蓋部12で塞ぐことによって内部に燃料電池200を収容する空間13が形成される。第二の容器2も、上面が開口した箱状の容器本体21と、容器本体21の開口を塞ぐ蓋部22と、を備え、容器本体21の開口を蓋部22で塞ぐことによって内部に第一の容器1を収容する空間23が形成される。また、第一の容器1及び第二の容器2は、ステンレス(SUS304、SUS316、SUS316L)やコバール合金等の金属板や、ガラス基板、セラミックス等により形成されている。
第一の容器1の内壁面(容器本体11の内壁面及び蓋部12の下面)には、燃料電池200からの輻射伝熱を抑えるために、低輻射率層14が形成されている。この低輻射率層14は、上述の低輻射率層213,214と同様の構成及び材料である。
さらに、第一の容器1の外壁面及び第二の容器2の内壁面にも、燃料電池200からの輻射伝熱を抑えるために、低輻射率層15,24が形成されている。これら低輻射率層15,24は、上述の低輻射率層213,214と同様の構成であり、材料は上述の材料に加えてAl,Agを使用することができる。
また、低輻射率層14,15,24は、第一の容器1の内壁面、外壁面や第二の容器2の内壁面の少なくとも一部に形成すれば良く、また、金属膜以外に鏡面加工を施すことによって輻射率を低減させても良い。
【0016】
また、第一の容器1の空間13には気体16が充填され且つ密封されている。気体16は、空気より分子量の大きい希ガスであることが好ましく、特にキセノンがより好ましい。そして、燃料電池200の燃料供給流路205や酸素供給流路207内を流通する流体の圧力と、第一の容器1の空間13に充填される気体16の圧力との差によって生じる各流路205,207を形成する壁面205a,206a,207aおよび208aに生じる応力が破壊応力以下となるように、気体16の圧力が調整されている。
具体的に図3を用いて説明すると、流路の破壊限界圧力差をΔ(atm)とする。また、流路の出口における圧力をp、流路で入口と出口における流体の圧力差、すなわち、流路の圧力損失をpLoss(atm)とする。流路の内壁にかかる圧力は、pからp+pLossの間で分布している。また、燃料電池の動作温度をT(K)、室温をT(K)、またこれらの比T/Tをα(<1)とする。第一の容器内に室温Tにおいて圧力Pのガスを封入した場合、第一の容器内の気体の圧力は室温TからTまでの間にPから(1/α)Pまで変化する。図3において圧力Pの温度変化は一点鎖線で示されている。流路の内外の差圧を破壊限界以内にするためには、圧力Pの温度変化(一点鎖線)が、TからTの温度範囲内で網掛けの中に入っていれば良い。すなわち、
+pLoss−P<Δ、かつ、(1/α)P−p<Δ・・・(4)
であれば良い。例えば、温度Tにおいて気体を封入する場合には、両矢印の範囲で示された圧力の気体を封入することができる。式では以下のように表すことができる。
+pLoss−Δ<P<α(p+Δ)・・・(5)
流路に生じる圧力差を最小にする封入気体の圧力は、室温において、
α(2p+pLoss)/(1+α)・・・(6)
となり、このとき生じる最大圧力差は、
{(1−α)p+pLoss}/(1+α)・・・(7)
である。
封入する気体には、燃料電池から気体を介して断熱容器へと伝熱する熱量を抑えるため、空気と比較して熱伝導率の小さい気体を用いる。例えば、二酸化炭素、フレオンガスなどを用いることができる。また、Ar、Kr、Xe、Rnなどの空気より分子量の大きい希ガスを用いることができる。特にXeは熱伝導率が小さく、例えば1000℃において1.9×10−2(W/K・m)であり、空気の100℃における熱伝導率が7.6×10−2(W/K・m)と比較すると1/4である。
さらに、第一の容器内で気体の自然対流が生じることによって反応領域に温度分布が生じないようにするために、気体の層はできるだけ薄くすることが好ましい。例えば、第一の容器内の気体のレイリー数Raが、自然対流発生の指標である臨界レイリー数Ra(=1708)よりも十分小さくなるようにすることができる。レイリー数Raは次式(8)で表される。
Ra=gβρCΔTd/vk・・・(8)
ここで、gは重力加速度9.8m/s、βはガスの熱膨張率(1/K)(これはほぼ1/T)、ρはガスの密度(kg/m)、ΔTは気体の層の反応近傍と第一の容器の近傍の温度差(K)、dはガス層の厚さ(m)、vはガスの動粘性係数(m/s)、kは気体の熱伝導率(J/kgK)である。気体の層の厚さは、
d<<{(1708)vk/[gρC(ΔT/T)]}1/3
を満たすような厚みにすることができる。
【0017】
以下に、本発明の効果を示すために、環境温度(室温)TL=25 ℃、燃料電池動作温度TH=800 ℃、流路入口での流体圧力がp0=1.05 atm、流路出口での流体圧力が1.25 atm、すなわち圧力損失pLoss=0.2 atmである場合を例にとって説明する。流路に生じる圧力差を最小にするためには、式(6)に上記温度、圧力を代入して得られる圧力0.5 atmの気体を封入すればよい。このとき、流路に生じる圧力差の最大値は、式(7)により0.75 atmとなる。これは、第一の容器内部を大気圧よりも低く、例えば、10Pa以下(即ち、9.87×10-5atm以下)といった真空とした場合に流路に生じる圧力差の最大値1.25 atmと比較すると、約40%もの応力軽減となっている。
【0018】
さらに、第一の容器1と第二の容器2との間の空間23の気圧は大気圧よりも低くされている。この気圧が低くされた空間23の圧力は、10Pa以下であり、さらに1Pa以下であることがより好ましい。また、第一の容器1の外壁面と第二の容器2の内壁面との間の距離は、気体分子の平均自由工程と比較して極端に近づけなければ伝熱が増大することなく、例えば数ミリメートルにすることができる。このように第一の容器1の外壁面と第二の容器2の内壁面との間の距離を数ミリメートルとすることにより、第一の容器1から第二の容器2への間隙気体を介した熱伝導を最小限に抑えることができる。
【0019】
次に、断熱容器100内に燃料電池200を収容する手順について説明する。図4(a)〜(g)は、断熱容器100内に燃料電池200を収容する手順を示した図である。なお、以下の説明では、第一の容器1及び第二の容器2が金属の場合を例に挙げて説明する。
まず、燃料電池200の最上面及び最下面に低輻射率層213,214を形成する(図4(a)参照)。低輻射率層213,214として形成する金属膜は、蒸着あるいはスパッタ等の手法で形成することができる。また、必要に応じて、低輻射率層213,214の密着強度を確保するために密着層を、さらには密着層が低輻射率層213,214に拡散することを防ぐため拡散防止層を形成し、多層膜構造としても良い。
次に、第一の容器1の内壁面(容器本体11の内壁面及び蓋部12の下面)に蒸着あるいはスパッタ等の手法で低輻射率層14として金属膜を形成する(図4(b)参照)。容器本体11には複数の貫通孔255が形成されていて、金属膜はこの貫通孔255以外の部分に形成する。そして、燃料電池200を容器本体11に収容するとともに、カソード出力電極254、アノード出力電極253、燃料供給管215、燃料排出管216、酸素供給管217及び酸素排出管218を容器本体11の複数の貫通孔255を貫通させて取り付ける(図4(c)参照)。第一の容器1と各管215〜218とは絶縁材、例えば、ガラス材やセラミック材で気密封止する。その後、蓋部12で容器本体11の開口を塞ぎ、真空チャンバ内に入れて真空排気する。このとき表面吸着ガスを脱離するために例えば800℃でアニールしても良い、その後、真空チャンバ内に気体16を導入する。気体16としては、例えば、0.27気圧のキセノンガスを用いることができる。あるいは、燃料電池200の動作温度、例えば800℃において1気圧のキセノンガスを充填しても良い。その後、真空チャンバ内において、例えばレーザビーム溶接、アーク溶接などを用いて容器本体11と蓋部12とを気密溶接する(図4(d)参照)。
【0020】
続いて、気密溶接された第一の容器1の外壁面と第二の容器2(容器本体11の内壁面及び蓋部12の下面)の内壁面に、蒸着あるいはスパッタ等の手法により低輻射率層15,24として金属膜を形成する(図4(e)、(f)参照)。容器本体21には複数の貫通孔256形成されていて、金属膜はこの貫通孔256以外の部分に形成する。外壁面に低輻射率層15を形成した第一の容器1は、第二の容器2の容器本体21に収容するとともに、燃料供給管215、燃料排出管216、酸素供給管217及び酸素排出管218を容器本体21の複数の貫通孔256を貫通させて、第二の容器2と各管215〜218とは絶縁材、例えば、ガラス材やセラミック材で気密封止する。また、このとき薄膜ヒータ用電極251,252も貫通孔256を貫通させておく。その後、蓋部22で容器本体21の開口を塞ぎ、真空チャンバ内に入れて真空排気する。このとき表面吸着ガスを脱離するために例えば800℃でアニールしても良い。その後、例えばレーザビーム溶接、電子ビーム溶接などを用いて容器本体21と蓋部22とを気密溶接する(図4(g)参照)。
【0021】
次に、燃料電池200を備えた反応装置300の動作について図1及び図2に基づいて説明する。
まず、薄膜ヒータ兼温度センサ210,212に接続された薄膜ヒータ用電極251,252に電圧を印加して薄膜ヒータ兼温度センサ210,212を発熱させることにより燃料電池200を600〜800℃程度に加熱した状態で、改質ガスを燃料供給管215から燃料供給流路205に供給し、図示しない空気ポンプを駆動して、酸素を含む空気を酸素供給管217から酸素供給流路207に供給する。このようにして燃料電池200に供給された改質ガス及び空気による化学反応式(1)〜(3)の電気化学反応により電力が取り出される。なお、電気化学反応で使用されなかった改質ガスや酸素を含む空気は、それぞれ燃料排出管216や酸素排出管218から断熱容器100の外部に排出される。
【0022】
以上のように、燃料電池200を収容する第一の容器1と、第一の容器1を収容する第二の容器2とを備え、第一の容器1と燃料電池200との間の空間13に気体16が充填され且つ密封され、第一の容器1と第二の容器2との間の空間23の気圧は大気圧よりも低くされているので、燃料電池200の燃料供給流路205及び酸素供給流路207の壁面205a,206a,207aおよび208aに加わる圧力と、第一の容器1の空間13内の圧力との差圧による応力の軽減を図ることができるので、壁面205a,206a,207aおよび208aを薄くすることができる。その結果、燃料電池200全体の薄型化を図ることができるとともに、燃料電池200の熱容量を削減することができる。同時に、燃料電池200を内包する第一の容器1の周囲の気圧を大気圧よりも低くすることにより断熱しているので、反応領域から周辺環境への熱の散逸を抑制することができ、ひいては、反応領域の昇温速度を速くすることができる。
特に、燃料電池200の各流路205,207の壁面205a,206a,207aおよび208aに生じる応力が、破壊応力以下となるように気体16の圧力が調整されているので、各流路205,207が破壊されることを防止しながら、薄型化を図ることができる。
また、第一の容器1の空間13内に封入する気体16をキセノンとすることにより、燃料電池200から気体16を介した第一の容器1への熱量の移動を抑制することができるので、反応領域から周囲環境への熱の散逸を抑制し、ひいては、反応領域の昇温速度を速くすることができる。
さらに、第一の容器1の内壁面、外壁面及び第二の容器2の内壁面に、低輻射率層14,15,24がそれぞれ形成されているので、燃料電池200からの輻射伝熱を抑えることができる。そして、第一の容器1及び第二の容器2の内部を大気圧よりも低くすることによる断熱と低輻射率層14,15,24による輻射断熱を組み合わせた高い断熱性能によっても、燃料電池200の昇温速度を速くすることができる。
【0023】
(変形例1)
図5は断熱容器100A内に燃料電池(反応器)200A、改質器(反応器)400A、触媒燃焼器(反応器)500Aが収容された反応装置300Aを搭載した携帯用の電子機器1000Aを示すブロック図であり、図6は、電子機器1000Aに搭載された反応装置300Aの内部構造を示す概略断面図である。この電子機器1000Aは、例えばノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、レジスタ及びプロジェクタ等といった携帯型の電子機器である。
【0024】
電子機器1000Aは、電子機器本体901A、DC/DCコンバータ902A、二次電池903A等と、後述の反応装置300Aとを備える。電子機器本体901AはDC/DCコンバータ902Aまたは二次電池903Aにより供給される電力により駆動する。DC/DCコンバータ902Aは反応装置300Aにより生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体901Aに供給する。また、DC/DCコンバータ902Aは反応装置300Aにより生成された電気エネルギーを二次電池903Aに充電し、反応装置300Aが動作していない時に、二次電池903Aに蓄電された電気エネルギーを電子機器本体901Aに供給する。
【0025】
変形例1では、燃料電池200Aは、固体酸化物型燃料電池であり、断熱容器100Aは、固体酸化物型燃料電池200Aを収容する第一の容器1aAと、改質器400A及び触媒燃焼器500Aを収容する第一の容器1bAと、を備え、これら二つの第一の容器1aA,1bAが第二の容器2Aに収容されている。第一の容器1aAと固体酸化物型燃料電池200Aとの間の空間13aAに気体16aAが充填され且つ密封され、第一の容器1bAと改質器400A及び触媒燃焼器500Aとの間の空間13bAに気体16bAが充填され且つ密封され、二つの第一の容器1aA,1bAと第二の容器2Aとの間の空間23Aの気圧は大気圧よりも低くされている。改質器400Aと燃料電池200Aとは燃料供給管215Aにより連結され、触媒燃焼器500Aと燃料電池200Aとは燃料排出管216A及び酸素排出管218Aにより連結されている。また、燃料電池200Aは、空気ポンプ(図示しない)に接続された酸素供給管217Aが連結され、改質器400Aには混合気供給管401Aが連結され、触媒燃焼器500Aにはオフガス排出管501Aが接続されている。
固体酸化物型燃料電池200A、第一の容器1aA,1bA及び第二の容器2Aの構成は、上述した第一の実施の形態の固体酸化物型燃料電池200、第一の容器1及び第二の容器2と同様のため、同様の構成部分については同様の数字に英字A、又は第一の容器1aA,1bAにおいてはaA,bAを付してその説明を省略する。
【0026】
改質器400Aは、燃料容器600A(図5参照)に貯蔵されている燃料が、ポンプ700Aによって気化器800Aに供給され、気化器800Aで気化された後、気化した混合気が混合気供給管401Aを介して送り込まれる。ここで、燃料とは、化学燃料単体、あるいは化学燃料(原燃料)と水との混合物であり、化学燃料としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類やガソリンといった水素元素を含む化合物を使用することができる。なお、化学燃料と水とを別々の容器に貯蔵しても良い。
改質器400Aは、図示しないが、内部の流路の壁面に触媒が担持されており、また、薄膜ヒータ兼温度センサが設けられている。そして、気化器から送られてきた混合気を、薄膜ヒータ兼温度センサの熱により約300〜400℃程度に加熱し、流路内の触媒により化学反応式(9)に示すように改質反応が起こり、化学反応式(9)についで逐次的に化学反応式(10)が起こる。その結果、水素、二酸化炭素及び副生成物である微量な一酸化炭素等の改質ガスが生成される。生成された改質ガスは、燃料供給管215Aを介して燃料電池200Aに送り込まれる。
CHOH+HO→3H+CO・・・(9)
+CO→HO+CO・・・(10)
【0027】
燃料電池200Aの燃料極では次の電気化学反応式(11)、(12)に示す反応、酸素極では次の電気化学反応式(13)に示す反応が起こる。また、生成した電子はアノード出力電極に供給され、生成した酸素イオンは電解質を通過して燃料極に供給される。
2+O2-→H2O+2e- …(11)
CO+O2-→CO2+2e- …(12)
1/2O2+2e-→O2- …(13)
【0028】
触媒燃焼器500Aは改質器400Aを加熱して化学反応式(9)の反応を良好に行うために必要な温度に設定する。また、燃料電池200Aの燃料排出管216Aから排出されたオフガスである反応に使用されなかった水素及び反応により生成された水蒸気や二酸化炭素と、酸素排出管218Aから排出されたオフガスである発電によって酸素濃度が低減された空気とが、触媒燃焼器500Aに送り込まれて再び燃焼し、このときの燃焼熱によって改質器400Aを加熱している。また、燃焼に使用されなかった水素、二酸化炭素、酸素を含む空気等のオフガスや燃焼によって生成された水等は、排出物としてオフガス排出管501Aを介して断熱容器100Aの外部に排出される。
【0029】
なお、気化器も改質器400Aと同様に薄膜ヒータ兼温度センサ(図示しない)が設けられており、これら薄膜ヒータ兼温度センサの電気抵抗値は温度に依存するので、薄膜ヒータ兼温度センサが気化器、改質器400Aの温度を測定する温度センサとしても機能する。
【0030】
(変形例2)
図7は、断熱容器100D内に燃料電池(反応器)200D、改質器(反応器)400D、触媒燃焼器(反応器)500Dが収容された反応装置300Dを搭載した携帯用の電子機器1000Dを示すブロック図であり、図8は、電子機器1000Dに搭載された反応装置300Dの内部構造を示す概略断面図である。
変形例2と上述の変形例1との違いは、改質器400D及び触媒燃焼器500Dを収容する第一の容器を備えない点である。図7及び図8における各構成に関しては、それぞれ図5及び図6において対応する構成の各符号の末尾「A」を「D」に変更したものを付してその説明を省略する。
【0031】
図7及び図8に示すように、変形例2の反応装置300Dは、固体酸化物型燃料電池200Dを収容する第一の容器1Dと、第一の容器1D、改質器400D及び触媒燃焼器500Dを収容する第二の容器2Dとを備え、第一の容器1D、改質器400D及び触媒燃焼器500Dと、第二の容器2Dとの間の空間23Dの気圧は大気圧よりも低くされている。改質器400Dと燃料電池200Dとは燃料供給管215Dにより連結され、触媒燃焼器500Dと燃料電池200Dとは燃料排出管216D及び酸素排出管218Dにより連結されている。また、空気ポンプ(図示しない)に接続されて燃料電池200Dに酸素を含む空気を供給する酸素供給管217Dは燃料電池200Dの酸素供給流路207D(図示しない)に接続され、ポンプ700Dに接続されて燃料電池200Dに改質ガスを供給する燃料供給管215Dは燃料電池200Dの燃料供給流路205D(図示しない)に接続されている。
【0032】
ここで、固体酸化物型燃料電池200Dは、改質器400D及び触媒燃焼器500Dと比べてより高温で動作するため、動作温度まで昇温するのにより多く時間がかかる。従って、反応装置300D並びに電子機器1000Dの起動時間を早くするためには、固体酸化物型燃料電池200Dの昇温時間を速くするとよい。
変形例2は、昇温時間がより短いより低温の反応装置を収容する第一の容器を備えずに、昇温時間がより長いより高温の反応装置を収容する第一の容器を備えるようにしたので、上述の変形例1と同様、反応領域の熱容量が増大することを抑制しつつ昇温速度を速くすることができることに加えて、改質器400D及び触媒燃焼器500Dを収容する第一の容器を備えないので、部品点数を減らすことができ、ひいては、歩留まりを低減することができる。
【0033】
[第二の実施の形態]
図9は、断熱容器100B内に燃料電池(反応器)200Bが収容された反応装置300Bの内部構造を示す縦断面図、図10(a)は、切断線X(a)−X(a)に沿って切断した際の矢視断面図、図10(b)は、切断線X(b)−X(b)に沿って切断した際の矢視断面図である。
第二の実施の形態では、第一の実施の形態と異なり、第一の容器1B内に収容された燃料電池200Bの酸素供給流路207Bが、第一の容器1Bと燃料電池200Bとの間の空間13Bに連通している。そして、酸素供給管217Bは、酸素供給流路207Bに直接、連結しておらず、第一の容器1Bの空間13B内に連通している。その他は、第一の実施の形態と同様の構成であるので、同様の構成部分には同様の数字に英字Bを付してその説明を省略する。
【0034】
なお、第一の容器1Bの容器本体11Bと蓋部12Bとを溶接する場合は、第一の実施の形態と同様に真空中で行うことができるが、不活性ガス雰囲気中で行っても良い。溶接方法としては、電子ビーム溶接、レーザー溶接、アーク溶接等が挙げられる。
【0035】
以上のように、燃料電池200Bを収容する第一の容器1Bと、第一の容器1Bを収容する第二の容器2Bとを備え、燃料電池200Bの酸素供給流路207Bが、燃料電池200Bと第一の容器1Bとの間の空間13Bに連通し、第一の容器1Bと第二の容器2Bとの間の空間23Bの気圧は大気圧よりも低くされているので、第一の容器1Bの空間13B内に酸素を含む空気を送ることで、酸素極203Bへ酸素を含む空気が送られるため、酸素供給流路207Bを形成する壁面207aB,208aBへの内外の圧力は常にほぼ同じにすることができ、圧力差による応力を第一の実施の形態と比べて大きく低減し、ほぼゼロにすることができる。また、燃料極202B側の燃料供給流路205Bの壁面205aB,206aBへの内外の圧力も、第一の容器1Bの空間13Bに充填された酸素を含むガスの圧力と、燃料供給流路205B内を流通する改質ガスの圧力とがほぼ同じであるので、その圧力差による応力をほぼゼロにすることができる。したがって、この場合も、燃料電池200Bの各流路205B,207Bの壁面205aB,206aB,207aBおよび208aBに加わる圧力と、第一の容器1Bの空間13B内の圧力との差圧による応力の軽減を図ることができるので、壁面205aB,206aB,207aBおよび208aBを薄くすることができる。
したがって、燃料電池200B全体の薄型化を図ることができるとともに、燃料電池200Bの熱容量を削減することができる。同時に、燃料電池200Bを内包する第一の容器1の周囲を大気圧よりも低くすることにより断熱しているので、反応領域から周辺環境への熱の散逸を抑制することができ、ひいては、反応領域の昇温速度を速くすることができる。そして、第一の容器1及び第二の容器2の内部を大気圧よりも低くすることによる断熱と低輻射率層14B,15B,24Bによる輻射断熱を組み合わせた高い断熱性能によっても、燃料電池200Bの昇温速度を速くすることができる。
【0036】
(変形例3)
図11は、断熱容器100C内に燃料電池(反応器)200C、改質器(反応器)400C、触媒燃焼器(反応器)500Cが収容された反応装置300Cを搭載した携帯用の電子機器1000Cを示すブロック図であり、図12は、電子機器1000Cに搭載された反応装置300Cの内部構造を示す概略断面図である。
変形例3では、燃料電池200Cは、固体酸化物型燃料電池であり、断熱容器100Cは、固体酸化物型燃料電池200Cを収容する第一の容器1aCと、改質器400C及び触媒燃焼器500Cを収容する第一の容器1bCと、を備え、これら二つの第一の容器1aC,1bCが第二の容器2Cに収容されている。二つの第一の容器1aC,1bCと第二の容器2Cとの間の空間23Cの気圧は大気圧よりも低くされている。改質器400Cと燃料電池200Cとは燃料供給管215Cにより連結され、触媒燃焼器500Cと燃料電池200Cとは燃料排出管216C及び酸素排出管218Cにより連結されている。また、空気ポンプ(図示しない)に接続されて燃料電池200Cに酸素を含む空気を供給する酸素供給管217C及び酸素供給流路(図示しない)は、第二の実施の形態と同様に、第一の容器1Cと燃料電池200Cとの間の空間13Cに連通し、酸素供給管217C及び酸素供給流路と、空間13C内とで空気が共有されている。
その他、固体酸化物型燃料電池200C、第一の容器1C及び第二の容器2Cの構成は、上述した第一の実施の形態の固体酸化物型燃料電池200、第一の容器1及び第二の容器2と同様であり、改質器400Cや触媒燃焼器500Cは変形例1の改質器400Aや触媒燃焼器500Aと同様のため、同様の数字に英字C、又は第一の容器1aC,1bCにおいてはaC,bCを付してその説明を省略する。
【0037】
(変形例4)
図13は、断熱容器100E内に燃料電池(反応器)200E、改質器(反応器)400E、触媒燃焼器(反応器)500Eが収容された反応装置300Eを搭載した携帯用の電子機器1000Eを示すブロック図であり、図14は、電子機器1000Eに搭載された反応装置300Eの内部構造を示す概略断面図である。
変形例4と上述の変形例3との違いは、改質器400C及び触媒燃焼器500Cを収容する第一の容器を備えない点である。図13及び図14における各構成に関しては、それぞれ図11及び図12において対応する構成の各符号の末尾「C」を「E」に変更したものを付してその説明を省略する。
【0038】
図13及び図14に示すように、変形例2の反応装置300Eは、固体酸化物型燃料電池200Eを収容する第一の容器1Eと、第一の容器1E、改質器400E及び触媒燃焼器500Eを収容する第二の容器2Eとを備え、第一の容器1E、改質器400E及び触媒燃焼器500Eと、第二の容器2Eとの間の空間23Eの気圧は大気圧よりも低くされている。改質器400Eと固体酸化物型燃料電池200Eとは燃料供給管215Eにより連結され、触媒燃焼器500Eと固体酸化物型燃料電池200Eとは燃料排出管216E及び酸素排出管218Eにより連結されている。また、空気ポンプ(図示しない)に接続されて固体酸化物型燃料電池200Eに酸素を含む空気を供給する酸素供給管217E及び燃料電池200Eの酸素供給流路207E(図示しない)は、第一の容器1Eと固体酸化物型燃料電池200Eとの間の空間に連通され、ポンプ700Eに接続されて燃料電池200Eに改質ガスを供給する燃料供給管215Eは燃料電池200Eの燃料供給流路205E(図示しない)に接続されている。
【0039】
変形例4の反応装置300E並びに電子機器1000Eは、上述の変形例2と同様の利点を有する。即ち、変形例4の反応装置300E並びに電子機器1000Eは、昇温時間がより短いより低温の反応装置を収容する第一の容器を備えずに、昇温時間がより長いより高温の反応装置を収容する第一の容器を備えるようにしたので、上述の変形例1と同様、反応領域の熱容量が増大することを抑制しつつ昇温速度を速くすることができることに加えて、改質器400E及び触媒燃焼器500Eを収容する第一の容器を備えないので、部品点数を減らすことができ、ひいては、歩留まりを低減することができる。
【0040】
なお、上述の第二の実施の形態及び変形例3,変形例4では、第一の容器1B,1C,1E内に収容された燃料電池200B,200C,200Eの酸素供給流路207B,207C,207E及び酸素供給管217B,217C,217Eが、第一の容器1B,1C,1Eと燃料電池200B,200C,200Eとの間の空間13B,13C,13Eに連通するようにしたが、これに限るものではない。例えば、図15及び図16に示すように、第一の容器1F内に収容された燃料電池200Fの燃料供給流路205F(図示しない)が、第一の容器1Fと燃料電池200Fとの間の空間13Fに連通して、燃料供給管215Fが、燃料供給流路205Fに直接連結せずに第一の容器1Fの空間13F内に連通して、酸素供給管217Fと酸素供給流路207F(図示しない)とが直接連結するようにしてもよい。
【0041】
また、上述の変形例1及び変形例3では、一方の第一の容器1aA,1Dに燃料電池200A,200Dを収容し、他方の第一の容器1bA,1bDに改質器400A,400D及び触媒燃焼器500A,500Dを収容し、これら二つの第一の容器1aA,1bA又は1D,1bDを第二の容器2A,2Dにそれぞれ収容するとしたが、これに限らず、一つの第一の容器に複数の反応器を収容し、この第一の容器を第二の容器に収容してもよく、また、反応器及び第一の容器の個数は適宜変更してよい。さらに、収容する反応器は異なる機能を有するものに限らず、同じ機能を有するものであってもよい。また、上述の変形例2及び変形例4においても、同様に適宜変更してよい。
さらに、上述の第一の実施の形態、第二の実施の形態、変形例1乃至4においては、燃料電池はいずれも固体酸化物型であるとして説明したが、本発明は、固体酸化物型燃料電池に限らず、固体高分子型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】断熱容器100内に燃料電池200が収容された反応装置300の内部構造を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1の切断線II(a)−II(a)に沿って切断した際の矢視断面図、(b)は、切断線II(b)−II(b)に沿って切断した際の矢視断面図である。
【図3】第一の容器1の空間13に充填する気体の圧力範囲を示したグラフである。
【図4】(a)〜(g)は、断熱容器100内に燃料電池200を収容する手順を示した図である。
【図5】断熱容器100A内に燃料電池200A、改質器400A、触媒燃焼器500Aが収容された反応装置300Aを搭載した携帯用の電子機器1000Aを示すブロック図である
【図6】電子機器1000Aに搭載された反応装置300Aの内部構造を示す概略断面図である。
【図7】断熱容器100D内に燃料電池200D、改質器400D、触媒燃焼器500Dが収容された反応装置300Dを搭載した携帯用の電子機器1000Dを示すブロック図である
【図8】電子機器1000Dに搭載された反応装置300Dの内部構造を示す概略断面図である。
【図9】断熱容器100B内に燃料電池200Bが収容された反応装置300Bの内部構造を示す縦断面図である。
【図10】(a)は、図9の切断線X(a)−X(a)に沿って切断した際の矢視断面図、(b)は、切断線X(b)−X(b)に沿って切断した際の矢視断面図である。
【図11】断熱容器100C内に燃料電池200C、改質器400C、触媒燃焼器500Cが収容された反応装置300Cを搭載した携帯用の電子機器1000Cを示すブロック図である。
【図12】電子機器1000Cに搭載された反応装置300Cの内部構造を示す概略断面図である。
【図13】断熱容器100E内に燃料電池200E、改質器400E、触媒燃焼器500Eが収容された反応装置300Eを搭載した携帯用の電子機器1000Eを示すブロック図である。
【図14】電子機器1000Eに搭載された反応装置300Eの内部構造を示す概略断面図である。
【図15】断熱容器100F内に燃料電池200F、改質器400F、触媒燃焼器500Fが収容された反応装置300Fを搭載した携帯用の電子機器1000Fを示すブロック図である。
【図16】電子機器1000Fに搭載された反応装置300Fの内部構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1aA,1bA,1B,1aC,1bC,1D,1E,1F 第一の容器
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F 第二の容器
13,13aA,13bA,13B,13aC,13bC,13D,13E,13F 空間
14,14aA,14bA,14B,14aC,14bC,14D,14E,14F 低輻射率層
15,15aA,15bA,15B,15aC,15bC,15D,15E,15F 低輻射率層
23,23A,23B,23C,23D,23E,23F 空間
24,24A,24B,24C,24D,24E,24F 低輻射率層
16,16aA,16bA,16B,16aC,16bC,16D,16E,16F 気体
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F 断熱容器
200,200A,200B,200C,200D,200E,200F 燃料電池(反応器)
205,205A,205B,205C,205D,205E,205F 燃料供給流路
207,207A,207B,207C,207D,207E,207F 酸素供給流路
300,300A,300B,300C,300D,300E,300F 反応装置
400A,400C,400D,400E,400F 改質器(反応器)
500A,500C,500D,500E,500F 触媒燃焼器(反応器)
901A,901C,901D,901E,901F 電子機器本体
1000A,1000C,1000D,1000E,1000F 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物の反応を起こす反応器と、
前記反応器を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、を備え、
前記反応器と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記反応器は、反応物が流通する流路を有し、
前記気体は、前記反応物の圧力と前記気体の圧力との差によって前記流路を構成する壁に生じる応力が前記壁の破壊応力以下となるように前記気体の圧力が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記気体は、空気より熱伝導率が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記気体は、Ar、Kr、Xe、Rn、二酸化炭素、フレオンガスのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の反応装置。
【請求項5】
反応物の反応を起こす反応器と、
前記反応器を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、を備え、
前記反応器は、前記反応物が流通する流路を有し、
前記反応器の流路は、前記反応器と前記第一の容器との間の空間に連通しており、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする反応装置。
【請求項6】
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の圧力が、10Pa以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記第一の容器の内壁面の一部と、前記第一の容器の外壁面の一部と、前記第二の容器の内壁面の一部と、のうちいずれか少なくとも一つが、前記第二の容器の外壁面よりも輻射率が低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記第二の容器の外壁面よりも輻射率の低い領域には、Au、Ag、Cu、Rh、Pt、Alを含む低輻射率層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の反応装置。
【請求項9】
前記第一の容器の内壁面の一部と、前記第一の容器の外壁面の一部と、前記第二の容器の内壁面の一部と、のうちいずれか少なくとも一つが、鏡面加工されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記反応器に供給する反応物が流通する供給管を更に備え、
前記供給管は前記流路に接続していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記反応器に供給する反応物が流通する供給管を更に備え、
前記供給管は前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に連通していることを特徴とする請求項5に記載の反応装置。
【請求項12】
前記反応物は、酸素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記反応物は、水素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
前記反応器は燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項15】
請求項14に記載の反応装置と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする電子機器。
【請求項16】
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、を更に備え、
前記改質器及び前記触媒燃焼器は、前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に配置されていることを特徴とする請求項15に記載の電子機器。
【請求項17】
燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に気体が充填され且つ密封され、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低く、
前記改質器及び前記触媒燃焼器は、前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項18】
前記燃料電池は、燃料又は酸素が流通する流路を有し、
前記気体は、前記反応物の圧力と前記気体の圧力との差によって前記流路を構成する壁に生じる応力が前記壁の破壊応力以下となるように前記気体の圧力が調整されていることを特徴とする請求項17に記載の電子機器。
【請求項19】
燃料と酸素の電気化学反応により電力を生成する燃料電池を収容する第一の容器と、
前記第一の容器を収容する第二の容器と、
前記燃料のもとなる原燃料から改質ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する触媒燃焼器と、
前記燃料電池により生成された電力により動作する電子機器本体と、を備え、
前記燃料電池は、前記燃料又は酸素が流通する流路を有し、
前記燃料電池の流路は、前記燃料電池と前記第一の容器との間の空間に連通しており、
前記第一の容器と前記第二の容器との間の空間の気圧は大気圧よりも低いことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−142778(P2009−142778A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324645(P2007−324645)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】