説明

収束されたレーザビームを測定するための測定器

収束されたレーザビームを測定するための測定器は、一実施例によれば、レーザビームのビーム経路に互いに前後に配置した、レンズの焦点が一致した少なくとも2つのレンズ(10,12)と、拡大レンズ系の後方に、最後のレンズ(12)の焦点に配置された画像カメラ(74)とを有し、画像カメラ(74)は拡大されたレーザビームから電子画像を生成する電子画像センサ(14)を備える。レンズ(10,12)は、画像カメラ(74)と共にビーム経路に沿って測定器の基準点(46)に対して調整可能であり、これにより、レーザビームのビームウエストを見つけ、レーザビームの直径プロファイルを検出することができる。さらに測定器は、ビーム経路を取り囲み、レーザビームを供給するレーザ装置に測定器を結合するためのアダプタ(42)を有する。アダプタ(42)は、レーザビームの光軸(16)に関して軸線方向に向いた、レーザ装置のための当接面(46)を形成し、レーザ装置の設置場所における測定器の連結を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収束されたレーザビームを測定するための測定器に関する。測定すべきレーザビームは、特に眼科のレーザ外科手術で、例えば角膜または水晶体の光屈折治療において使用される。勿論、これは単なる一例に過ぎず、基本的には、本発明は測定レーザビームの用途に関して制限されていない。一般に多くのレーザ用途において、所定のビームパラメータに関する正確な知識が必要であり、ここでは、眼のレーザ外科手術に加えて多数ある他の例から2つの例として、半導体技術におけるフォトリソグラフィならびに光学データ担体のレーザ走査またはレーザ書き込みを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
レーザビームの重要なビームパラメータは、特に、ビーム拡がり角に加えて、ビームのウエスト領域のビーム直径である場合が多いが、他のパラメータとして、回折指数(通常Mとして示される)または照射方向に対して横方向の強度プロファイルなども重要なビームパラメータである。
【0003】
レーザビームを測定するためには、いわゆるナイフエッジ法またはスリット法が知られている。これらの方法では、ブレードまたは十分に狭いスリットをビーム中を横切らせ、検出器によって、ブレードまたはスリットの位置に応じた透過出力を測定する。このようにして得られた透過曲線の微分により、次いで強度プロファイルを算出することができ、この強度プロファイルに基づきビーム直径を決定することができる。
【0004】
ビームの「走査」に基いた上述の透過測定法の代替案として、例えば米国特許第4917489号により、単一の拡大レンズによってレーザビームを拡大するとともに、このようにして拡大したレーザビームを適宜な強度減衰後に撮像器(画像センサ)に向けることが知られている。このようにして生成したレーザビームの画像から、レンズの拡大係数を考慮して物体側のレンズ焦点におけるビーム直径を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4917489号明細書
【発明の概要】
【0006】
これに対して、本発明による収束されたレーザビームを測定するための測定器は、レーザビームのビーム経路に互いに前後に配置した少なくとも2つのレンズを有する拡大レンズ系であって、該拡大レンズ系の連続するレンズでなす各対がそれぞれ一致した焦点をもった拡大レンズ系と、拡大レンズ系の後方でその焦点に配置され、拡大されたレーザビームの画像を撮影するための電子画像センサと、前記ビーム経路を取り囲み、レーザビームを供給するレーザ装置に測定器を連結するアダプタであって、レーザビームの光軸に対して軸線方向に向いた、レーザ装置のための当接面を形成するアダプタと、前記アダプタに設けた測定器の基準点に対して、ビーム経路に沿って拡大レンズ系のレンズおよび画像センサを共に調整可能とする長手方向調整手段と、を備えるものである。
【0007】
本発明による測定器の好ましい形態が従属請求項に記載されている。
【0008】
ガウスビームの光学のための専門文献(例えばKuehlke, Dietrich: “Optik, Grundlagen und Anwendungen”, Harri Deutsch Verlag, 1. Auflage, 1998を参照のこと)では、単一の拡大レンズの拡大係数と測定すべきレーザビームのレーザ直径との関係が説明されている。拡大されたビームのウエスト直径と拡大されていないビームのウエスト直径との指数を拡大係数とした場合、特に小さいウエスト直径のための単一の拡大レンズの拡大係数は、大きいウエスト直径のためのそれよりも著しく大きくなる。異なったウエスト直径の焦点の測定に単一の拡大レンズを使用した場合、拡大倍率を一定と仮定すると著しい測定エラーが生じる恐れがある。
【0009】
発明者は、複数レンズシステムによって、連続するそれぞれのレンズ対がそれぞれ一致した焦点を有する場合に、倍率とビーム直径との関係性を取り除くことができることを認識した。この場合、測定すべきビームのウエスト直径の大きさとは無関係に、常に一定の拡大倍率と仮定することができる。これにより、測定すべきレーザビームの実際のウエスト直径を極めて正確に決定することが可能となる。
【0010】
本発明による測定器の長手方向調整手段により、測定器固有の基準点に対してビーム経路に沿ってレンズおよび画像センサを全体として限定的に調整することが可能となる。「測定器固有の」とは、基準点が測定器に位置しているか、または測定器の内部に位置しており、ひいては測定器全体に対して定置であることを意味する。レンズおよび画像センサをビーム経路に沿って統一性をもって調整可能とすることにより、測定すべきレーザビームのレーザウエストを正確に位置させることができ、次いで測定器の正確な調整を行うことができるのでレーザビームの焦点を拡大レンズ系の第1レンズの焦点に一致させることが可能となる。かかる状況は、画像センサによって検出されたビームの横断面が最小となった場合にもたらされる。なぜなら、レンズおよび画像センサの独自の相互配置では、ビームウエストは第1のレンズの焦点内に位置する場合に画像センサのセンサ面に結像されるからである。この位置は、ビーム焦点に対してレンズと画像センサとを統一的に長手方向に調整することにより、容易に見つけることができる。
【0011】
レンズおよび画像センサを長手方向に調整可能とすることは、代替的または付加的に、レーザビームに沿った異なる位置でビーム直径を決定するのに、換言すれば、レーザビームの直径プロファイルを検出するのに役立つ。このような直径プロファイルは、例えばビームの発散度および回折指数に関する情報の入手を可能にする。言うまでもなく、これらのおよび他のビームパラメータを決定するために、適切にプログラムされた電子評価ユニットが設けられており、この電子評価ユニットは、画像センサにより供給され、場合によってはメモリに記憶された電気的な画像信号を評価し、解釈する。
【0012】
レンズと画像センサとからなるシステムのための長手方向調整手段によってもたらされる調整範囲は、有利には、レーザビームのレイリー長さの少なくも3倍にわたる。
【0013】
所望であれば、長手方向調整手段は、付加的に、例えば、較正目的で、または構成部材許容差および組付け許容差を補償することができるように、レンズ相互の長手方向調整または/および画像センサに対してレンズの長手方向調整を可能にする。
【0014】
測定器の特に小型化を可能にする実施形態によれば、拡大レンズ系は全部で2つのレンズを有している。十分な倍率のために、第1レンズの比較的小さい焦点距離が必要であり、したがって、第1レンズは全体として比較的小さく構成するべきである。取扱いおよび組込みが容易となる大きいレンズは、拡大レンズ系が全部で4つのレンズを有している場合に可能である。この場合、拡大能力は、それぞれ1対のレンズからなる2つの拡大段階に分けることができ、したがって、全体の倍率が等しい状況にて、各レンズ対の倍率は、全体で2つのレンズをもつ実施形態における単一のレンズ対の倍率に比べて小さくなる。
【0015】
拡大レンズ系の全てのレンズは、それぞれ収束レンズとして構成されていてよい。代替的には、拡大レンズ系は少なくとも1つの拡散レンズを有しており、ただし少なくとも最後のレンズは収束レンズとして構成することが可能である。拡散レンズを使用した場合、その負の焦点距離により、収束レンズと比較して構成空間を縮小することが可能となる。このことは、特に3つ以上のレンズを有する実施形態において、第1レンズの焦点距離をより大きく選択することができるので、拡散レンズを使用することによって、全部で2つのレンズしか有しておらず第1レンズの焦点距離が比較的短い解決手法の場合と比べて、構成空間への利点が大きくなる。何れの場合においても、画像センサはレーザビームの実像を必要とするので、最後のレンズを収束レンズとして構成すべきである。
【0016】
拡大レンズ系による波面変形を小さく抑えるためには、拡大レンズ系の少なくとも1つのレンズの一方のレンズ面を平坦に構成し、湾曲したレンズ面を発散度が小さいビーム部分に向けて配置することが好都合であるとの知見が得られた。したがって、拡大レンズ系は、平凸レンズまたは平凹レンズのみを有し、両面が湾曲したレンズとしないことが好ましい。なお、勿論このことは必須ではない。
【0017】
構成部材許容差および組付け許容差は、測定器の光学構成部材の少なくとも一部がレーザビームに対してビーム経路の横方向に正確に配向されない原因となり得る。したがって、測定器に、拡大レンズ系の少なくとも第1レンズを、ビーム経路に対して横方向に、特に垂直方向に、測定器の上記基準店に対して調整可能とする横方向調整手段を設けることが好ましい。拡大レンズ系の第1レンズの、ビーム経路に対する横方向への配列の狂いは、他のレンズの配列の狂いよりも、画像センサへの像位置の配置、波面変形および画像歪みに関して特に大きい影響が生じることがわかった。それゆえ、少なくとも第1レンズは横方向調整可能とすることが好ましい。一変形態様にあっては、少なくとも第1レンズは横方向にのみ調整可能、すなわち、他のレンズおよび画像センサからは独立して調節可能としてもよい。別の変形態様にあっては、第1レンズは拡大レンズ系の少なくとも1つの別のレンズと共に、特に拡大レンズ系の全てのレンズと共に、有利には画像センサと共に一つのユニットとして横方向に調整可能となっていてもよい。
【0018】
横方向調整手段は、拡大レンズ系の少なくとも第1レンズを互いに直交する2つの横方向に適宜に独立して調整可能とする。
【0019】
測定器の好ましい構成では、拡大レンズ系のレンズの少なくとも一部、特に全てのレンズは、長手方向調整手段によってバレル軸線の方向に基準点に対して調整可能なレンズバレル内にビーム経路に沿って前後に(直列に)組み込まれている。この場合、レンズバレルは、レンズバレルとガイドボディとの間で作用する長手方向調整手段によって、特にチューブ状に構成したガイドボディのガイド受容穴内で、軸線方向に変位可能に、しかしながら回転不能に案内されることが好ましい。
【0020】
レンズバレルは、軸線方向一端でガイドボディから突出しており、突出した端部領域は、画像センサを含むカメラとの機械的な連結のために構成されていてもよい。
【0021】
レンズバレルとガイドボディとの間の遊びを補償するために、レンズバレルとガイドボディとの間に弾性的な付勢手段を作用させることが好ましく、付勢手段は、ガイドボディに対してレンズバレルを軸線方向に付勢するものである。
【0022】
測定器の好ましい形態では、ガイドボディはアダプタを搭載している。この場合、アダプタは、ガイドボディとは別個の構成部材とするとともに、該ガイドボディとは交換可能に連結したものであることが好ましい。これによれば、測定器をモジュラ構造とすることが可能となり、異なったレーザ装置に連結するために選択的に利用可能な多数の異なるアダプタを測定器のために用いることができる。
【0023】
上述した横方向調整手段は、アダプタとガイドボディとの間で作用させてもよい。
【0024】
アダプタは、レーザ装置のためにレーザビームの光軸に関して軸線方向に向いた当接面を適宜に形成している。この当接面は、測定器の光学構成部材の長手方向調整、場合によっては横方向調整のための基準点としての役割を果たすものであってもよい。
【0025】
次に本発明を添付の図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】レーザビームの拡大画像を撮影するための画像センサと1つのレンズ対との相対配置を示す概略図である。
【図2】レーザビームの拡大画像を撮影するための画像センサと2つのレンズ対との相対配置を示す概略図である。
【図3】本発明による測定器の長手方向断面図である。
【図4】図3の測定器の拡大図である。
【図5】図3の測定器の別の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2には、本発明による測定器で使用するための拡大レンズ系の2つの異なる例示的な構成が示されている。図1の変化態様では、拡大レンズ系は全部で2つの光学的に薄いレンズ10,12を備え、これらのレンズ10,12はいずれも平凸型収束レンズとして形成されている。測定すべきレーザビームはまずレンズ10に入射し、次いでレンズ12に入射し、拡大された画像が電子画像センサ14によって捕捉される。この画像センサは、例えばCCD画像センサまたはCMOS画像センサであってよい。拡大レンズ系の光軸を参照番号16により示す。光学的な結像エラーを防止するために、レーザビームのビーム軸と光軸16とを一致させることが好ましい。構成部材許容差または取付け許容差によって生じる、測定器の光学構成部材の、レーザビームのビーム方向に対する横方向への配列の狂いを完全には回避することはできないとの事実から、本発明による測定器の好ましい構成では、適宜な横方向調整手段が設けられており、これらの横方向調整手段によって拡大レンズ系のレンズ、場合によっては画像センサをも、ビーム方向に対して横方向に調節可能であり、これにより、光軸16をビーム軸と実質的に正確に一致させることができる。
【0028】
図1のレンズ10は焦点距離fを有している。レンズ10の2つの焦点(物体側と像側)を参照番号18または20により示す。
【0029】
レンズ12は焦点距離fを有している。レンズ12は、物体側の焦点が第1のレンズ10の像側の焦点20と一致するように配置されている。レンズ12は、像側に焦点22を有している。画像センサ14のセンサ平面は上記焦点22と一致する。
【0030】
レンズ10,12と画像センサ14とがこのように相互配置されており、測定すべきレーザビームのビームウエストが焦点18に位置している場合、ビームウエストはウエスト直径には依存しない倍率にて画像センサ14に結像される。画像センサ14は、電子評価手段(詳述しない)に接続され、電子評価手段はセンサ14の像信号を受け、場合によってはそれらをデジタル形式に変換し、そこから実際のウエスト直径(拡大されていない)に加えて拡大されたウエスト直径決定する。レーザビームの強度を減衰するために、ビーム経路内に1つ以上の中間密度フィルタ(灰色フィルタ)を配置してもよい。特に図1の例示的な構成では、レンズ12と画像センサ14との間にこのような灰色フィルタを設けてもよい。灰色フィルタの光学的厚さは、画像センサ14を位置決めする際に考慮すべき焦点22の微小変位をもたらす。
【0031】
レンズ10,12の湾曲した側は、発散度がより小さいビーム部分に指向されていることがわかる。第1のレンズ10によって誘起されるウエスト直径の拡大に伴ってビームの平行化が生じ、したがって、レーザビームは、レンズ10の像側では物体側におけるよりも弱い発散度を有する。これに対して、レンズ12では、レーザビームは像側で再びより強い発散度を有する。これにより、湾曲した面が互いに向かい合った図1に示すレンズの配置が生じる。発散度の強いビーム部分を平坦なレンズ面に向け、発散度の弱いビーム部分を湾曲したレンズ面に向けるという措置により、レンズ10,12によって誘起される波面変形を小さく抑え、これにより、画像歪みを最小限に減じることが可能となる。
【0032】
数値例を挙げれば、倍率は約20であり(すなわち、画像センサ14におけるウエスト直径は拡大されていないウエスト直径よりも20倍大きい)、これにより、レンズ10のためには、例えば約3mmの焦点距離を選択し、レンズ12のためには、例えば約60mmの焦点距離を選択することができる。このような焦点距離により、全体として比較的縮小化された測定器の構成を得ることができる。もちろん上述の数値は純粋に例示的なものである。特に倍率について別の値を設定することもでき、これらの値は対応してレンズ10,12の異なる焦点距離を必要とする。
【0033】
図2の変化態様では、拡大レンズ系は、ここでも光学的に薄い、全部で4つのレンズを備える。これらのレンズに参照番号24,26,28,30を付す。さらに画像センサを参照番号14により、光軸を参照番号16により示す。ビームの伝搬方向で見て第2のレンズ26および第4のレンズ30は、それぞれ平凸型の収束レンズとして構成されており、第1のレンズ24および第3のレンズ26は、それぞれ平凹型の拡散レンズとして構成されている。レンズ対24,26は、拡大レンズ系の第1の拡大段階を形成し、第2のレンズ対28,30は、第2の拡大段階を形成する。両方の拡大段階の拡大係数は等しくてもよいし、異なっていてもよい。全体の倍率は、両方の拡大段階の拡大係数の積から生じる。
【0034】
両方の収束レンズ26,30は、図示の実施例ではそれぞれ等しい焦点距離を有している。収束レンズ26の2つの焦点に参照符号32,34を付し、収束レンズ30の2つの焦点に参照符号36,38を付す。それらの負の焦点距離のために、拡散レンズ24,28がそれぞれ次の収束レンズの焦点の後方に位置しているが、しかしながら、拡散レンズ24,28の(実際の)焦点はそれぞれ次の収束レンズの焦点と一致する。すなわち、焦点32は同時にレンズ24の(実際の)焦点であり、焦点34,36は、拡散レンズ28の同様にそれぞれ1つの(実際の)焦点と一致する。
【0035】
収束レンズの代わりに拡散レンズを使用することにより、測定器の構成サイズの縮小化が可能となり、しかもこの効果は図2の4枚レンズの構成の方が図1の2枚レンズの構成よりも大きい。
【0036】
新たに数値例を挙げれば、拡大レンズ系の倍率は再び約20であり、したがって、収束レンズ26,30はそれぞれ約42mmの焦点距離を有することができ、拡散レンズについてはそれぞれ約−9mmの焦点距離を選択することができる。これも当然ながら例示的でしかなく、特に拡大レンズ系の異なる倍率を得たい場合に、いつでも異なる倍率を選択することができる。
【0037】
具体的な構成例を説明するために、図3〜図5を参照すると、これらの図面に示す測定器には全般に参照番号40が付されている。これは既存のレーザ装置に連結することができる手持ち式機器であり、このために、レーザ装置を別の測定場所に搬送する必要はない。したがって、この測定器40により、レーザ装置の設置場所で直接に測定を行うことが可能となる。
【0038】
測定器40は、光軸16をスリーブ状に取り囲むアダプタ主要部44を有する。図3の左側の軸線方向端部の領域には、レーザビームを供給するレーザ装置に連結するためのアダプタ42が形成されている。このために設けられた連結手段は、軸線方向に向いた環状当接面46を備え、環状当接面46は、レーザ装置に対して測定器40を軸線方向に当接させ、ひいては軸線方向に位置決めするための役割を果たす。さらに前述の連結手段は、有利にはアダプタ主要部44と一体的に構成された環状のクランプ部分48を備え、このクランプ部分48は、対物レンズ縁部またはレーザ装置の別の構成部分を半径方向にクランプする。クランプ部分48には、半径方向のクランプねじ(図示しない)が挿入される複数のねじ山付き孔50が周方向に配設されている。
【0039】
別の軸線方向端部の領域で、アダプタ主要部44は調整ブロック52に除去可能に連結されている。調整ブロック52は、チューブ状のガイドバレル56のための受容穴54を形成している。調整ブロック52は、詳述しない固定ねじが挿入されるねじ山付き孔58を有しており、これにより、アダプタ42を調整ブロック52に固定することができる。ガイドバレル56は、調整ブロック52の受容穴54に軸線方向に不動に保持されているが、調整ブロック52の詳述しない調整ねじによって、半径方向平面で調整ブロック52に対して調整可能である。このために、調整ブロック52は詳述しない方法でガイドバレル56を半径方向にクランプする内側スリーブを有し、この内側スリーブは、調整ブロック52のハウジング内で横方向に調節可能に保持されている。適切な調整ブロックは市販されている。これについて、例えば、有限会社OWISの製品名「XY調整収容プレートOH40」を示すことができ、場合によってはわずかな変更を加えて調整ブロック52のためのこれを使用することができる。調整ブロック52により、ガイドバレル56を半径方向に沿う互いに直角な二方向に独立して調整することが可能となる。したがって全体としてガイドバレルを軸線に垂直な平面で任意の方向に調整することができる。
【0040】
調整ブロック52に対するガイドバレル56の軸線方向固定は、図示の実施例ではガイドバレル56の外周の軸ショルダ60、およびガイドバレル56にねじ込まれたねじ込みリング62によって保証されている。調整ブロック52は、軸ショルダ60とねじ込みリング62との間で軸線方向に保持されている。
【0041】
ガイドバレル56は、レンズバレル68のための軸線方向のガイド受容穴66を形成している。レンズバレル68は、拡大レンズ系のレンズと共に1つの構造ユニットとして予備組付けが可能であり、このような予備組付け可能な構造ユニットとしてガイドバレル56に挿入可能である。拡大レンズ系は、この実施例では図1の態様に相当するものであり、それゆえ、図3〜図5の測定器では唯一の2つのレンズに同様の参照番号10および12を付す。しかしながら、別のレンズ構成、例えば図2と同様のレンズ構成を同様にレンズバレル68に組み込むこともできることは理解されよう。
【0042】
レンズバレル68は、ガイドバレル56のガイド受容穴66で軸線方向に可動に、しかしながら回動不能に案内されている。2つのバレルの相互の回動を防止するために、レンズバレル68は、外周面に形成された軸線方向に長い凹所70を有しており、この凹所70には、ガイドバレル56のねじ山付き孔72にねじ込み可能な詳述しない回動防止ねじが係合する。
【0043】
レンズバレル68およびガイドバレル56は共にアダプタ42のスリーブ状の主要部44内に、特に実質的に同じ進入深さをもって延び、レンズバレル68は、軸線方向の別の端部の領域でガイドバレル56から突出していることがわかる。突出した端部の領域で、レンズバレル68は、図1および2の画像センサのような画像センサ(図3〜5では詳細は示さない)が組み込まれたデジタル画像カメラ74に連結されている。レンズバレル68の軸線方向の自由端における軸線方向の当接面76は、レンズバレル68に対して、ひいてはレンズバレル68に組み込まれたレンズ10,12に対して画像カメラ74の軸線方向の位置決めを可能とする。画像カメラ74とレンズバレル68との連結は、例えばねじ山による連結または半径方向クランプによる連結であってもよい。レンズバレル68に解除できるように連結可能な画像カメラ74を備える測定器40の構成により、市販のカメラモデルの使用が可能となる。
【0044】
レンズバレル68を、レンズバレル68に挿入した構成部材と共に構造ユニットの形で予備組付け可能であることは既に述べた。これらの構成部材は、2つのレンズ10,12の他に取付けリング78を備え、取付けリング78は、予備組み付けする場合に第1構成部材としてレンズバレル68に押し込まれ、レンズ12の平坦な面に対して平坦な当接面を提供する。取付けリング78は、内側バレル開口の大径部分と小径部分との間の移行部に形成した軸ショルダ80に接触している。レンズ12に続いて、スペーサチューブ82がレンズバレル68内に押し込まれる。スペーサチューブ82の後には、レンズ10を有し、先と同様に予備組立てされた構造ユニットであるレンズアセンブリ84が続く。レンズアセンブリ84は、底部にレーザビームのための中央貫通孔を有するほぼカップ状のレンズマウント86を備えている。レンズ10はこの孔の上部に位置し、平坦なレンズ面によりレンズマウント86のカップ底部で支持されている。センタリングディスク88が、レンズマウント86でレンズ10を半径方向にセンタリングするための役割を果たす。レンズマウント86はカップ状周面の内側にねじ山を有し、ねじ山には、レンズクランプねじ90ならびにその後方に位置するねじ山付きディスク92がねじ込まれている。レンズ10を損傷させないように、レンズクランプねじ90はレンズ10に対しては締め付けられておらず、ねじ山付きディスク92によって固定されている。
【0045】
このように予備組付けされたレンズアセンブリ84は、レンズマウント86がスペーサチューブ82に当接するまでレンズバレル68内に押し込まれる。レンズバレル68は、アダプタ側端部の領域に雌ねじ山を備え、この雌ねじ山には2つのねじ山付きディスク94,96がねじ込み可能である。これらのねじ山付きディスク94,96は、残りの構成部材をレンズバレル68内に固定するための役割を果たす。ここでも2つのねじ山付きディスク94,96は、有利には、レンズマウント86およびスペーサチューブ82によって軸線方向の締付け力がレンズ12に伝達されないように互いにロックされている。
【0046】
既に詳述したように、レンズバレル68はガイドバレル56に対して軸線方向に可動にガイド受容穴66内で案内されている。レンズバレル68とガイドバレル56との間では長手方向調整手段が作用し、長手方向調整手段はガイドバレル56に対してレンズバレル68の所定の長手方向調整を可能にする。長手方向調整手段は、ガイドバレル56とねじ山係合している調節部材98を備え、調節部材98は同時にレンズバレル68に軸線方向に支持係合している。図示の実施例では、調節部材はねじ山付きスリーブとして形成されており、このねじ山付きスリーブはガイドバレル56に位置し、カメラに近い側の端部の領域に形成された、レンズバレル68の支持カラー100に半径方向に係合する。ねじ山付きスリーブ98は雌ねじ山を備え、この雌ねじ山により、ガイドバレル56の相補的な雄ねじ山にねじ込まれている。ねじ山付きスリーブ98とレンズバレル68との間には環状空間102が形成されており、この環状空間102には、コイル状圧縮ばねとして形成した付勢ばね104が格納されている。付勢ばね104は、軸線方向の一端をもってレンズバレル68の支持カラー100を支持しており、軸線方向の他端をもってガイドバレル56を支持しており、2つのバレル56,58が離間するよう付勢力を加える。軸線方向の付勢力は、レンズバレル68から支持カラー100を介して、ねじ山付きスリーブ98のカメラに近い端部に形成された、半径方向内側に突出した環状ウェブ106に伝達される。レンズバレル68とねじ山付きスリーブ98との間の摩擦を減じるために滑動に適した材料からなる滑動リング108が支持カラー100と環状ウェブ106との間でレンズバレル68に載置されている。付勢ばね104は、測定器40を普通に取り扱った状況下にて、レンズバレル68とガイドバレル56との間の動きに起因する意図的でない遊びを抑制するために十分な強度を有している。
【0047】
ねじ山付きスリーブ98は、ガイドバレル56に対して、ひいてはアダプタ42の、基準点をもたらす当接面46に対して、レンズ10、12およびカメラを含むシステムの長手方向の位置調整を可能とする。比較的大きい(例えば、マイクロメートルのねじと比べて大きい)ねじ山直径によれば、レンズバレル68の極めて微細な長手方向の調整が可能である。このようにして、特に軸線方向にわずか数マイクロメートルの調節精度を達成することができる。例えば、約34mmのねじ山付きスリーブ98の直径を仮定した場合、(さらに人の手でねじ山付きスリーブ98の0.5〜1mmの最小回動が可能であると仮定して)約0.5mmのねじ山ピッチにより、このような高精度の調節精度を得ることができる。軸線方向のレンズバレル68の最大調整距離は、例えば数ミリメートルの範囲であってよい。この最大調整距離は、3倍のレイリー長さだけレンズバレル68の長手方向の調整可能性を必要とするM測定を通常のビーム直径で行うために十分である。
【0048】
レーザビームの強度を減衰するために、レンズバレル68にはさらに灰色フィルタ110が組み込まれており、灰色フィルタ110は、レンズバレル68のカメラに近い端部からレンズバレル68に押し込まれ、レンズバレル68の内部で弾性リング114を間に嵌め込んだ状態でクランプスリーブ112によって固定されている。このようにして灰色フィルタ110は交換可能であり、これにより、異なるビーム強度のために異なる厚さの灰色フィルタを使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収束されたレーザビームを測定するための測定器において、
レーザビームのビーム経路に互いに前後に配置した少なくとも2つのレンズ(10,12)を有する拡大レンズ系であって、該拡大レンズ系の連続するレンズでなす各対がそれぞれ一致した焦点をもった拡大レンズ系と、
前記拡大レンズ系の後方でその焦点に配置され、拡大されたレーザビームの画像を撮影するための電子画像センサ(14)と、
前記ビーム経路を取り囲み、レーザビームを供給するレーザ装置に前記測定器を結合するアダプタ(42)であって、レーザビームの光軸(16)に対して軸線方向に向いた、レーザ装置のための当接面(46)を形成するアダプタ(42)と、
前記アダプタに設けられた前記測定器の基準点(46)に対して、ビーム経路に沿って前記拡大レンズ系のレンズ(10,12)および前記画像センサ(14)を共に調整可能とする長手方向調整手段(98)と、を備えることを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記拡大レンズ系のレンズの少なくとも一部、特に全てのレンズ(10,12)は、ビーム経路の方向において前後にレンズバレル(68)に組み込まれてなり、
前記レンズバレル(68)は、ガイドボディ(56)のガイド受容穴(66)内を、前記レンズバレルの軸線方向に沿って移動可能に、好ましくは回転不能にガイドされ、前記アダプタ(42)が前記ガイドボディに連結されてなる測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器において、
前記アダプタ(42)が、前記ガイドボディ(56)とは別個の構成部材であり、有利にはガイドボディに交換可能に連結されてなる測定器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の測定器において、
前記長手方向調整手段(98)が、前記レンズバレル(68)と前記ガイドボディ(56)との間で作用する測定器。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記アダプタ(42)と前記ガイドボディ(56)との間で作用するとともに、前記拡大レンズ系の少なくとも第1のレンズ(10)を、前記基準点(46)に対して横方向に、特に前記ビーム経路に対して垂直方向に調整可能とする横方向調整手段(52)が設けられてなる測定器。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記アダプタ(42)が、前記ビーム経路を取り囲むスリーブ状の主要部(44)を有し、該主要部の軸線方向の一端にはレーザ装置に連結するための連結手段が設けられている測定器。
【請求項7】
請求項6に記載の測定器において、
前記連結手段が、レーザ装置の構成部を半径方向にクランプするよう構成されている測定器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の測定器において、
前記アダプタ(42)の前記主要部(44)が、軸線方向の他端にて、ビーム経路に対して横方向に、前記拡大レンズ系の少なくとも前記第1のレンズ(10)を前記アダプタ(46)に対して調整可能とする調整ブロック(52)に連結された測定器。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記拡大レンズ系が、全部で2つのレンズ(10,12)または全部で4つのレンズ(24,26,28,30)を有している測定器。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記拡大レンズ系の全てのレンズ(10,12)が、それぞれ収束レンズとして構成されている測定器。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記拡大レンズ系が少なくとも1つの拡散レンズ(24,28)を有するとともに少なくとも最後のレンズ(30)が収束レンズとして構成されている測定器。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記拡大レンズ系の少なくとも1つのレンズ(10,12)が一つの平坦なレンズ面を有し、湾曲したレンズ面が発散角の小さいビーム部分に指向されている測定器。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記長手方向調整手段(98)が、前記拡大レンズ系および画像センサをレーザビームのレイリー長さの少なくとも3倍だけ調整可能である測定器。
【請求項14】
請求項2から13までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記ガイドボディ(56)が、チューブ状に構成されている測定器。
【請求項15】
請求項2から14までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記レンズバレル(68)は、軸線方向一端で前記ガイドボディ(56)から突出するとともに、その突出した端部領域が、前記画像センサを含むカメラ(74)との機械的な連結をもたらすよう構成されている測定器。
【請求項16】
請求項2から15までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記レンズバレル(68)と前記ガイドボディ(56)との間で作用し、該レンズバレルをガイドボディに対して軸方向に付勢する弾性的な付勢手段(104)が設けられている測定器。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の測定器において、
前記画像センサが、前記測定器に交換可能に連結されたカメラの一部である測定器。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の測定器において、
手持ち式に構成されている測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−539459(P2010−539459A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524407(P2010−524407)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007575
【国際公開番号】WO2009/036932
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509114077)ウェーブライト アーゲー (7)
【Fターム(参考)】