説明

収穫機

【課題】圃場の作物の性状又は収穫作物の性状等に適応した最適な回転数で搬送手段を作動でき、収穫作業性を向上できるようにした収穫機を提供するものである。
【解決手段】走行部2を備えた走行機体と、収穫作物を搬送する複数の搬送手段6,223,224,234とを備えてなる収穫機において、前記複数の搬送手段6,223,224,234毎に、それら搬送手段6,223,224,234を作動する複数の電動モータ90,92,93,94を備え、各電動モータ90,92,93,94によって各搬送手段6,223,224,234を個別にそれぞれ作動するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバイン、又は大根やキャベツ等を収穫する野菜収穫機等の収穫機に係り、より詳しくは、穀稈又は大根又はキャベツ等の収穫作物を搬送するための搬送手段を電動モータにて作動するようにした収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫機の一例としてのコンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀し、穀粒を収集するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来のコンバインにおいては、エンジンからの駆動力によって、刈取装置の穀稈引起装置及び刈刃装置及び穀稈搬送装置(フィードチェン等)をそれぞれ駆動するように構成されている。また、電動モータによって刈刃装置を駆動する構成(例えば、特許文献2参照)や、電動モータによって穀稈搬送装置(スクレーパ)を駆動する構成(例えば、特許文献3参照)も公知である。
【特許文献1】特開2004−97038号公報
【特許文献2】特開昭63−258510号公報
【特許文献3】特開平7−177813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、刈取装置の刈取搬送機構がエンジンにて駆動されることによって、刈取装置の刈取搬送を複数のユニットに分割して構成しても、その各ユニットを個別に回転制御できないから、圃場の未刈り穀稈の性状又は刈取穀稈の性状等に適応した回転数で刈取装置の各部(穀稈引起装置及び刈刃装置及び穀稈搬送装置)を駆動できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、圃場の作物(未刈り穀稈)の性状又は収穫作物(刈取穀稈)の性状等に適応した最適な回転数で複数の搬送手段(刈取装置の各部)を作動でき、収穫作業性を向上できるようにした収穫機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の収穫機は、走行部を備えた走行機体と、収穫作物を搬送する複数の搬送手段とを備えてなる収穫機において、前記複数の搬送手段毎に、それら搬送手段を作動する複数の電動モータを備え、各電動モータによって各搬送手段を個別にそれぞれ作動するように構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の収穫機において、前記走行機体に搭載したエンジンによって駆動する発電機に、前記各電動モータのドライバをそれぞれ接続させるように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の収穫機において、前記走行機体に配置して穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置によって刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、前記刈取装置は、圃場の未刈り穀稈を引起す穀稈引起装置と、前記穀稈引起装置によって引起された未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって切断された刈取穀稈を前記脱穀装置に供給する穀稈搬送装置とを有してなる構造であって、前記穀稈引起装置を駆動する引起駆動用電動モータと、前記刈刃装置を駆動する刈刃駆動用電動モータと、前記穀稈搬送装置を駆動する搬送駆動用電動モータとを備えたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の収穫機において、前記刈取装置を始動する操作によって、穀稈搬送下流側の前記搬送駆動用電動モータが起動されてから、前記刈刃駆動用電動モータが起動され、次いで前記引起駆動用電動モータが起動されるように構成したものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の収穫機において、前記刈取装置を停止する操作によって、穀稈搬送上流側の前記引起駆動用電動モータが停止されてから、前記刈刃駆動用電動モータが停止され、次いで前記搬送駆動用電動モータが停止されるように構成したものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の収穫機において、前記の各電動モータのいずれかが回転しない場合には、穀稈搬送上流側の前記電動モータを停止してから、穀稈搬送下流側の電動モータを停止するように構成したものである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項3又は6に記載の収穫機において、刈取穀稈又は排藁の搬送経路中に搬送駆動用の複数の電動モータを備え、前記各電動モータの制御コントローラに、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所を記録して、その刈取穀稈又は排藁の詰りデータに基づき、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所の電動モータと、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータとを逆回転させるように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータを順方向に作動するように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が複数箇所の場合には、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータを停止維持するように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、走行部を備えた走行機体と、収穫作物を搬送する複数の搬送手段とを備えてなる収穫機において、前記複数の搬送手段毎に、それら搬送手段を作動する複数の電動モータを備え、各電動モータによって各搬送手段を個別にそれぞれ作動するように構成したものであるから、前記複数の電動モータによって前記複数の搬送手段を個別にそれぞれ回転制御でき、収穫作物の性状等に適応した最適な回転数で前記複数の搬送手段をそれぞれ作動でき、収穫作業性を向上できるものである。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記走行機体に搭載したエンジンによって駆動する発電機に、前記各電動モータのドライバをそれぞれ接続させるように構成したものである。例えば一定回転数で常に駆動して脱穀・選別性能を維持する必要がある脱穀装置等の作業部を備えた構造、換言すると、エンジンからの一定回転数の出力が作業部に伝達される伝動構造において、最高出力状態で略一定回転数を維持するようにエンジンが運転される。したがって、そのエンジンからの出力によって発電機を最適な回転数で駆動できる。即ち、前記各電動モータの作動に必要な発電機の適正出力が確実に維持されることによって、前記各電動モータが常に適正一定回転数で作動して、最適な回転数で前記複数の搬送手段をそれぞれ作動できるものである。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記走行機体に配置して穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置によって刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、前記刈取装置は、圃場の未刈り穀稈を引起す穀稈引起装置と、前記穀稈引起装置によって引起された未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって切断された刈取穀稈を前記脱穀装置に供給する穀稈搬送装置とを有してなる構造であって、前記穀稈引起装置を駆動する引起駆動用電動モータと、前記刈刃装置を駆動する刈刃駆動用電動モータと、前記穀稈搬送装置を駆動する搬送駆動用電動モータとを備えたものであるから、刈取搬送を複数のユニットに分割して複数の電動モータによって各ユニットを個別に回転制御でき、圃場の未刈り穀稈の性状又は刈取穀稈の性状等に適応した最適な回転数で前記穀稈引起装置及び前記刈刃装置及び前記穀稈搬送装置を駆動でき、刈取作業性を向上できるものである。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記刈取装置を始動する操作によって、穀稈搬送下流側の前記搬送駆動用電動モータが起動されてから、前記刈刃駆動用電動モータが起動され、次いで前記引起駆動用電動モータが起動されるように構成したものであるから、複数の電動モータの同時起動を防ぐことによって、電源電圧を低下させることなく前記の各電動モータを起動でき、前記の各電動モータの電源(発電機又はバッテリ)の電気的及び機械的な負荷変動を低減でき、小容量の電源(発電機又はバッテリ)によって前記の各電動モータを駆動できる。また、複数の電動モータによって前記刈取装置の穀稈搬送下流側から作動させることによって、穀稈の刈取搬送をスムーズに開始できる。穀稈搬送下流側に前回作業の穀稈が残っていても、その前回作業の穀稈を先に搬送してから、穀稈搬送上流側の電動モータを作動するから、穀稈の刈取搬送負荷の増大を防止して、穀稈の刈取搬送をスムーズに再開できるものである。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記刈取装置を停止する操作によって、穀稈搬送上流側の前記引起駆動用電動モータが停止されてから、前記刈刃駆動用電動モータが停止され、次いで前記搬送駆動用電動モータが停止されるように構成したものであるから、複数の電動モータの同時停止を防ぐことによって、電源電圧が過電圧になることなく前記の各電動モータを停止でき、前記の各電動モータの電源(発電機又はバッテリ)が過電圧異常になるのを防止できる。また、刈取搬送経路の途中に穀稈を残すことなく前記刈取装置を簡単に停止できるものである。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、前記の各電動モータのいずれかが回転しない場合には、穀稈搬送上流側の前記電動モータを停止してから、穀稈搬送下流側の電動モータを停止するように構成したものであるから、前記の各電動モータのいずれかが起動しなかったり、刈取作業中に故障等によって回転しなくなっても、穀稈が詰る等の二次トラブルの発生を防止でき、不具合を簡単に解消して速やかに刈取作業を開始又は再開できるものである。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、刈取穀稈又は排藁の搬送経路中に搬送駆動用の複数の電動モータを備え、前記各電動モータの制御コントローラに、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所を記録して、その刈取穀稈又は排藁の詰りデータに基づき、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所の電動モータと、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータとを逆回転させるように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータを順方向に作動するように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が複数箇所の場合には、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータを停止維持するように構成したものである。刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータとを逆回転させるから、詰り穀稈を除去するための電動モータの逆回転等に余分な動力を必要とせず、且つ故障部位への穀稈の供給を防止できる。また、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータを順方向に作動するから、刈取穀稈又は排藁の搬送作業を再開したときに、処理途中の穀稈又は排藁が大量に排出されるのを防止できる。また、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータを停止維持するから、複数箇所で稈詰りが発生しても、稈詰り箇所(故障部位)への穀稈の供給を防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3は刈取装置の側面説明図、図4は刈取装置の平面説明図、図5はコンバインの駆動系統図、図6は刈取装置の制御手段の機能ブロック図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0021】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0022】
運転キャビン10内に操縦ハンドル11及び運転座席12を配置している。なお、図示しないが、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドルを設けたハンドルコラムと、運転座席12の左側方のレバーコラムに設けた主変速レバー、及び副変速レバー、及び脱穀クラッチレバー、及び刈取クラッチレバーとが、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
【0023】
図1乃至図4に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持することになる。
【0024】
刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取ることになる。
【0025】
次に、図3及び図4を参照して刈取装置3の構造を説明する。図3及び図4に示すように、刈取装置3の刈取フレーム221には、走行機体1の前端側の軸受台15に回動可能に支持した刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16から前方に向けて延長する縦伝動ケース18と、縦伝動ケース18の前端側で左右方向に向けて延長する横伝動ケース19と、横伝動ケース19に連結する6条分の分草フレーム20と、分草フレーム20の前端側に支持する6条分の分草体225とが配置されている。刈取入力ケース40、縦伝動ケース18、横伝動ケース19、分草フレーム20によって刈取装置3のメインフレームが形成されている。機体左右方向に水平に横架した刈取入力ケース16内には、エンジン14からの動力を伝達するための刈取り穀稈用の搬送入力軸17が組み込まれている。
【0026】
穀稈引起装置223は、分草板225によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン28を有する6条分の引起ケース29を有する。穀稈搬送装置224は、右側2条分の引起ケース29から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の右スターホイル30R及び左右の右掻込ベルト31Rと、左側2つの引起ケース29から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の左スターホイル30L及び左右の左掻込ベルト31Lと、中央2つの引起ケース29から導入される中央2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の中央スターホイル30C及び左右の中央掻込ベルト31Cとを有する。
【0027】
刈刃装置222は、右スターホイル30R及び左右の右掻込ベルト31R、左スターホイル30L及び左右の左掻込ベルト31L、中央スターホイル30C及び左右の中央掻込ベルト31Cによって掻込まれた6条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃32を有する。
【0028】
また、穀稈搬送装置224は、右側2条分のスターホイル30R及び掻込ベルト31Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン33Rと、左側2条分のスターホイル30L及び掻込ベルト31Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン33Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン33Lと、中央2条分のスターホイル30C及び掻込ベルト31Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送して右株元搬送チェン33Rの搬送途中に合流させる中央株元搬送チェン33Cとを有する。左右及び中央の株元搬送チェン33R,33L,33Cによって、右株元搬送チェン33Rの搬送終端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を合流させることになる。
【0029】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン33Rから6条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ縦搬送チェン34と、縦搬送チェン34の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助株元搬送チェン35,36とを有する。縦搬送チェン34から、補助株元搬送チェン35,36を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を搬送することになる。
【0030】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン33Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン37Rと、左株元搬送チェン33Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン37Lと、中央株元搬送チェン33Cにて搬送される中央2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する中央穂先搬送タイン37Cと、縦搬送チェン34にて搬送される6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する後穂先搬送タイン38とを有する。脱穀装置5の扱胴226室内に、刈取装置3で刈取った6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送することになる。
【0031】
次に、図5を参照して刈取装置3の駆動構造を説明する。図5に示すように、穀稈引起装置223を駆動する引起駆動用電動モータ90と、刈刃装置222を駆動する左右の刈刃駆動用電動モータ91と、穀稈搬送装置224を正逆回転切換可能に駆動する搬送駆動用電動モータ92とを備え、穀稈引起装置223と刈刃装置222と穀稈搬送装置224とをその各々の電動モータによって駆動することになる。引起駆動用電動モータ90の出力軸に引起横伝動軸48を連結する。引起横伝動軸48は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸45にそれぞれ連結している。分草体225の後方で分草フレーム20の上方に引起ケース29が立設され、引起ケース29の上端側の背面から引起タイン駆動軸45を突出している。複数の引起タイン28を設けた引起タインチェン28aが、引起タイン駆動軸45及び引起横伝動軸48を介して、引起駆動用電動モータ90によって駆動されることになる。
【0032】
図5に示すように、左右の刈刃駆動用電動モータ91に左右のクランク軸52a,52bを介して左右の刈刃32を連結する。左右の刈刃駆動用電動モータ91によって左右の刈刃32を同期させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃32を形成し、左右の刈刃32を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃32の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0033】
図5に示すように、搬送駆動用電動モータ92の出力軸に刈取り穀稈用の搬送入力軸17を連結し、その搬送入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸40の一端側を連結する。縦伝動軸40の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸41の一端側を連結する。縦伝動軸40及び横伝動軸41から穀稈搬送装置224の各駆動部に搬送駆動用電動モータ92の回転力を伝えることになる。
【0034】
即ち、縦伝動軸40には、後搬送駆動軸54と、右搬送駆動軸62とを連結している。搬送駆動用電動モータ92によって、縦伝動軸40及び後搬送駆動軸54を介して、補助搬送チェン35,36及び後穂先搬送タイン38を駆動するように構成している。また、搬送駆動用電動モータ92によって、右搬送駆動軸62を介して、右株元搬送チェン33R及び右穂先搬送タイン37Rと、右スターホイル30R及び右掻込ベルト31Rとを駆動するように構成している。また、右搬送駆動軸62に縦搬送伝動軸63を連結し、搬送駆動用電動モータ92によって、右搬送駆動軸62及び縦搬送伝動軸63を介して、縦搬送チェン34を駆動するように構成している。
【0035】
図5に示すように、横伝動軸41の左端側に左搬送駆動軸69を連結している。搬送駆動用電動モータ92によって、左搬送駆動軸69を介して、左株元搬送チェン33L及び左穂先搬送タイン37Lと、左スターホイル30L及び左掻込ベルト31Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸41に中央搬送駆動軸75を連結し、搬送駆動用電動モータ92によって、中央搬送駆動軸75をを介して、中央株元搬送チェン33C及び中央穂先搬送タイン37Cと、中央スターホイル30C及び中央掻込ベルト31Cとを駆動するように構成している。
【0036】
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀されることになる。
【0037】
揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0038】
揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
【0039】
また、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0040】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0041】
次に、図5を参照しながら、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235の駆動構造について説明する。図5に示されるように、エンジン14の前側及び後側にその出力軸70を突出する。エンジン14の前側の出力軸70に自在継手を介してミッションケース71の入力軸を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸70からミッションケース71に伝達されて変速された後、左右の車軸72を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14からの回転駆動力によって駆動されるように構成している。
【0042】
図5に示されるように、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン73と、上述した電動モータ90,91,92,93,94,95等を作動させるための電源を供給する発電機89とを備える。エンジン14の後側の出力軸70に、冷却ファン73を軸支したファン駆動軸88が連結されている。ファン駆動軸88には、発電機89の入力軸が連結されている。エンジン14の回転駆動力によって、冷却ファン73及び発電機89が駆動されるように構成している。また、エンジン14の後側の出力軸70に排出オーガ駆動軸76を連結し、エンジン21からの回転駆動力によって排出オーガ駆動軸76を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
【0043】
また、扱胴226及び処理胴230にエンジン14からの回転駆動力を伝える脱穀駆動軸77を備える。エンジン14の後側の出力軸70には、テンションローラ形脱穀クラッチ78及び脱穀駆動ベルト79を介して、脱穀駆動軸77が連結されている。脱穀駆動軸77には、扱胴226を軸支した扱胴軸80と、処理胴230を軸支した処理胴軸81とが連結されている。エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、扱胴226及び処理胴230が略一定速度で駆動されるように構成している。また、脱穀駆動軸77に選別入力軸82が連結されている。エンジン14からの回転駆動力(一定回転力)によって、選別入力軸82を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定速度で駆動されるように構成している。
【0044】
図5に示されるように、フィードチェン6を正逆回転切換可能に駆動するフィードチェン駆動用電動モータ93と、排藁チェン234を正逆回転切換可能に駆動する排藁チェン駆動用電動モータ94と、排藁カッタ235を正逆回転切換可能に駆動する排藁カッタ駆動用電動モータ95とを備えている。フィードチェン6と、排藁チェン234と、排藁カッタ235とが、それぞれ独立したその各々の電動モータによって、正回転又は逆回転方向に駆動されるように構成している。
【0045】
次に、本実施形態のコンバインの収穫制御(刈取装置3及び脱穀装置5における穀稈の搬送制御)について説明する。図6は、コンバインの収穫制御手段の機能ブロック図であり、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有するマイクロコンピュータ等の作業コントローラ282を備えている。図6に示されるように、マイクロコンピュータで構成する作業コントローラ282の入力側には、脱穀装置5を駆動するための脱穀クラッチレバー(図示省略)の操作を検出する脱穀スイッチ272と、刈取装置3の各部及びフィードチェン6及び排藁チェン234及び排藁カッタ235を駆動する作業スイッチ273と、オペレータ(変速レバー)の後進切換操作を検出する後進センサ276と、オペレータの流し込みペダル(図示省略)の足踏み操作を検出する流し込みスイッチ278と、副変速切換(低速または高速)を行う副変速スイッチ279と、刈取装置3を自動的に上昇操作又は下降操作するオートリフトスイッチ280と、走行クローラ2の駆動回転数(車速)を検出する車速センサ285と、刈取装置3の搬送穀稈(刈取穀稈)の有無を検出する作物センサ287とを、接続している。作物センサ287は、オフデレー(切り遅延)機能を有するタイマ286を介して作業コントローラ282の入力側に接続する。
【0046】
また、作業コントローラ282の入力側には、引起駆動用電動モータ90の出力回転数(駆動速度)を無段階に調節する引起速度設定器261と、刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数(駆動速度)を無段階に調節する刈刃速度設定器262と、搬送駆動用電動モータ92(フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95)の出力回転数(駆動速度)を無段階に調節する搬送速度設定器263と、フィードチェン駆動用電動モータ93(排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95)を作動操作及び停止操作する手扱スイッチ264と、搬送駆動用電動モータ92(フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95)を逆回転操作操作する逆回転スイッチ265とを、接続している。
【0047】
図6に示されるように、作業コントローラ282の出力側には、引起駆動用電動モータ90を作動する引起ドライバ301と、左右の刈刃駆動用電動モータ91を作動する左右の刈刃ドライバ302と、搬送駆動用電動モータ92を作動する搬送ドライバ303と、フィードチェン駆動用電動モータ93を作動するフィードチェンドライバ304と、排藁チェン駆動用電動モータ94を作動する排藁ドライバ305と、排藁カッタ駆動用電動モータ95を作動するカッタドライバ306とを、接続している。
【0048】
また、作業コントローラ282の出力側には、引起駆動用電動モータ90の出力回転数を検出する回転センサ311と、刈刃駆動用電動モータ91の出力回転数を検出する回転センサ312と、搬送駆動用電動モータ92の出力回転数を検出する回転センサ313と、フィードチェン駆動用電動モータ93の出力回転数を検出する回転センサ314と、排藁チェン駆動用電動モータ94の出力回転数を検出する回転センサ315と、排藁カッタ駆動用電動モータ95の出力回転数を検出するカッタ回転センサ316とを、接続している。
【0049】
図6に示されるように、エンジン14によって駆動する発電機89に、引起駆動用電動モータ90及び引起ドライバ301と、左右の刈刃駆動用電動モータ91及び左右の刈刃ドライバ302と、搬送駆動用電動モータ92及び搬送ドライバ303と、フィードチェン駆動用電動モータ93及びフィードチェンドライバ304と、排藁チェン駆動用電動モータ94及び排藁ドライバ305と、排藁カッタ駆動用電動モータ95及びカッタドライバ306とを、接続している。発電機89を電源として、引起駆動用電動モータ90、左右の刈刃駆動用電動モータ91、搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95をそれぞれ作動可能に構成している。
【0050】
したがって、一定回転数で常に駆動して脱穀・選別性能を維持する必要がある脱穀装置5を備えた構造、換言すると、エンジン14からの一定回転数の出力が脱穀装置5に伝達される伝動構造において、最高出力状態で略一定回転数を維持するようにエンジン14が運転される。したがって、そのエンジン14からの出力によって発電機89を最適な回転数で駆動できる。即ち、前記各電動モータ90,91,92,93,94,95の作動に必要な発電機89の適正出力が確実に維持されることによって、前記各電動モータ90,91,92,93,94,95が常に適正一定回転数で作動することになる。なお、図5に示す如く、発電機89は、ファン駆動軸88を介して駆動されるが、選別入力軸82を介して駆動してもよく、脱穀装置5(扱胴226)を作動中だけ、即ち、オペレータが脱穀クラッチ78を入り操作した状態下でのみ、発電機89が作動するように形成することも行える。
【0051】
次に、図7はコンバインの収穫作業制御のフローチャートである。図7を参照して、引起駆動用電動モータ90、左右の刈刃駆動用電動モータ91、搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95をそれぞれ作動する収穫作業制御を説明する。脱穀スイッチ272をオンにし(S1yes)、作業スイッチ272をオンにすると(S2yes)、排藁カッタ駆動用電動モータ95を作動するカッタモータ作動制御が行われる(S3)。このカッタモータ作動制御では、排藁カッタ駆動用電動モータ95によって、搬送速度設定器263の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、排藁カッタ235が駆動される。なお、搬送速度設定器263の設定値又は車速センサ285の検出値に関係なく、排藁カッタ駆動用電動モータ95を略一定の駆動速度で作動させ、常に略一定の駆動速度で排藁カッタ235を駆動してもよい。
【0052】
カッタモータ作動制御が実行されて排藁カッタ駆動用電動モータ95が起動すると(S4yes)、該モータ95の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、排藁チェン駆動用電動モータ94を作動する排藁モータ作動制御が行われる(S5)。この排藁モータ作動制御では、排藁チェン駆動用電動モータ94によって、搬送速度設定器263の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、排藁チェン234が駆動される。
【0053】
排藁モータ作動制御が実行されて排藁チェン駆動用電動モータ94が起動すると(S6yes)、該モータ94の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、フィードチェン駆動用電動モータ93を作動するF.Cモータ作動制御が行われる(S7)。このF.Cモータ作動制御では、フィードチェン駆動用電動モータ93によって、搬送速度設定器263の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、フィードチェン6が駆動される。
【0054】
F.Cモータ作動制御が実行されてフィードチェン駆動用電動モータ93が起動すると(S8yes)、該モータ93の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、搬送駆動用電動モータ92を作動する作動制御が行われる(S9)。この搬送モータ作動制御では、搬送駆動用電動モータ92によって、搬送速度設定器263の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、穀稈搬送装置224が駆動される。
【0055】
搬送モータ作動制御が実行されて搬送駆動用電動モータ92が起動すると(S10yes)、該モータ92の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、刈刃駆動用電動モータ91を作動する刈刃モータ作動制御が行われる(S11)。この刈刃モータ作動制御では、左右の刈刃駆動用電動モータ91によって、刈刃速度設定器262の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、左右の刈刃32が駆動される。
【0056】
刈刃モータ作動制御が実行されて刈刃駆動用電動モータ91が起動すると(S12yes)、該モータ91の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、引起駆動用電動モータ90を作動する引起モータ作動制御が行われる(S13)。この引起モータ作動制御が実行されて引起駆動用電動モータ90が起動すると(S14yes)、引起駆動用電動モータ90によって、引起速度設定器261の設定値と車速センサ285の検出値とから演算された車速同調速度で、6条分の穀稈引起装置223が駆動される。
【0057】
上述したように、穀稈の搬送下流側の排藁カッタ駆動用電動モータ95から順番に、排藁チェン駆動用電動モータ94、フィードチェン駆動用電動モータ93、搬送駆動用電動モータ92、刈刃駆動用電動モータ91、引起駆動用電動モータ90を始動することによって、起動時に電源電圧が低下するのを低減でき、且つ発電機89の負荷を軽減でき、小容量の発電機89で各モータを作動できる。
【0058】
また、脱穀スイッチ272をオンにし(S1yes)、作業スイッチ272をオンにした状態で(S2yes)、排藁カッタ駆動用電動モータ95が起動しない場合(S4no)、又は排藁チェン駆動用電動モータ94が起動しない場合(S6no)、又はF.Cモータ作動制御が実行されてフィードチェン駆動用電動モータ93が起動しない場合(S8no)、又は搬送駆動用電動モータ92が起動しない場合(S10no)、又は刈刃駆動用電動モータ91が起動しない場合(S12no)、又は引起駆動用電動モータ90が起動しない場合(S14no)、排藁カッタ駆動用電動モータ95、排藁チェン駆動用電動モータ94、フィードチェン駆動用電動モータ93、搬送駆動用電動モータ92、刈刃駆動用電動モータ91、引起駆動用電動モータ90を停止維持する停止制御が実行される(S15)。穀稈の搬送下流側から順番に各モータを起動している場合、起動しない異常なモータよりも穀稈の搬送上流側のモータの起動を中止し、起動しない異常なモータより搬送上流側で穀稈が詰るのを未然に防止する。また、全てのモータが作動中、いずれかのモータが故障した場合、例えば過負荷(穀稈詰り等)によって各モータ90〜95のいずれかの回転が低下(過電流)したことを各回転センサ311〜316のいずれかが検出した場合、先ず、故障した過電流のモータと、それよりも穀稈の搬送上流側のモータとを同時に停止し、前記故障から一定時間経過後に、故障した過電流のモータよりも穀稈の搬送下流側のモータを搬送上流側から順番に停止し、未処理の穀稈(作物)が搬送途中に残るのを防止する。
【0059】
一方、作業スイッチ272をオンからオフに切換えると、穀稈の搬送上流側の引起駆動用電動モータ90から順番に、刈刃駆動用電動モータ91、搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95が、一定時間経過毎にそれぞれ停止する。各モータがタイミングをずらせて停止することによって、各モータが停止時に発生する回生電流を低減して、電源電圧が異常に過電圧になるのを低減でき、且つ穀稈の搬送経路中に穀稈が残存するのを防止し、穀稈(作物)の処理を完了してからすべてのモータを停止できる。また、作物センサ287によって穀稈を検出しなくなって一定時間が経過した場合、前記作業スイッチ272のオフ操作と同様に、タイミングをずらせて各モータを停止させる。
【0060】
次に、図8は刈取装置3の速度制御のフローチャート、図9は刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)の刈取回転数KVx(刈取装置3の駆動速度)と、車速SVとの関係を示す線図である。図8及び図9を参照して、穀稈搬送装置224の駆動速度を切換える制御を説明する。作業スイッチ273をオンにし(S16yes)、オートリフトスイッチ280をオンにして刈取装置3を穀稈刈取高さに下降すると(S17yes)、搬送駆動用電動モータ92の刈取回転数KVxを低速一定速度回転Vqにする低速一定速度制御が行われる(S18)。搬送駆動用電動モータ92によって穀稈搬送装置224が低速一定速度回転Vqにて駆動されることになる。
【0061】
一方、低速一定速度制御(S18)が行われているときに、オペレータにて車速SVを速くするように移動速度が変更操作されて、収穫作業が開始されると、車速センサ285から入力された車速SVが下位復帰点Dt2に対応した車速qHに増速された場合(S19yes)、車速同調速度制御が行われる(S20)。この車速同調速度制御では、搬送駆動用電動モータ92の穀稈搬送装置224の駆動速度を、車速SVと同調しかつ車速SVの増大に比例して増大する車速同調パターンに沿う車速同調速度に切換えることになる。
【0062】
前記車速同調速度制御(S20)が行われているときに、オペレータにて車速SVを遅くするように移動速度が変更操作されて、車速センサ285から入力された車速SVが下位転位点Dtに対応した車速tHに減速された場合(S21yes)、搬送駆動用電動モータ92の回転数KVxを低速一定速度回転Vqにする低速一定速度制御が行われる(S22)。下位転位点Dtに対応した車速tHが、車速同調区間Dにおける車速SVの下限になる。下位転位点Dtに対応した搬送駆動用電動モータ92の回転数Vtを、下位復帰点Dt2と略同一の下位定速点Dt1に対応した低速一定速度回転Vqに切換えることになる。
【0063】
前記低速一定速度制御(S22)が行われているときに、刈取装置3にて刈取った穀稈が脱穀装置5に搬出されて、作物センサ287が検出する穀稈が刈取装置3からなくなると(S23no)、穀稈搬送装置224を含む刈取装置3の全てを停止する停止制御が行われる(S24)。
【0064】
前記車速同調速度制御(S20)が行われているときに、オペレータにて車速SVを速くするように移動速度が変更操作されて、車速センサ285から入力された車速SVが上位転位点Drに対応した車速rHに増速された場合(S25yes)、搬送駆動用電動モータ92の刈取回転数KVxを高速一定速度回転Vrxにする高速一定速度制御が行われる(S26)。上位転位点Drに対応した刈取装置3の速度回転Vrが、第1上位定速点Dr1に対応した高速一定速度回転Vrxに切換わり、穀稈搬送装置224を含む刈取装置3の全てが高速一定速度回転Vrxにて駆動されることになる。上位転位点Drに対応した車速rHが、車速同調区間Dにおける車速SVの上限になる。
【0065】
一方、高速一定速度制御(S26)が行われているときに、オペレータにて車速SVを遅くするように移動速度が変更操作されて、車速センサ285から入力された車速SVが上位復帰点Dr3に対応した車速pHに減速された場合(S27yes)、車速同調速度制御が行われる(S5)。穀稈搬送装置224を含む刈取装置3の全てにおける各部の駆動速度を、第2上位定速点Dr2に対応した高速一定速度回転Vrxから上位復帰点Dr3に対応した車速同調速度回転Vryに切換えて、車速SVと同調しかつ車速SVの増大に比例して増大する車速同調パターンに沿う車速同調速度に切換えることになる。
【0066】
なお、図9及び図10に示されるように、搬送駆動用電動モータ92の車速同調区間Dと、搬送駆動用電動モータ92の車速同調区間Eとを形成する。各車速同調区間D,Eにおける車速同調速度は、車速SVの上限及び下限が相違する。一方、各車速同調区間D,Eにおける車速SVに対応した車速同調速度の範囲(Vr〜Vt)、及び刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)の低速一定速度Vq、及び刈取装置3の高速一定速度Vrxは、同じ値を採用している。
【0067】
即ち、刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)における駆動速度KVxを、車速SVと同調しかつ車速SVの増大に比例して増大する車速同調パターンに沿う車速同調速度、または車速SVの増減にかかわらず予め設定された略一定の回転数Vq,Vrxのいずれかに切換えて、刈取装置3を駆動する。車速同調区間Dにおける車速SVが下位転位点Dtまで減速したとき、刈取装置3の駆動速度KVxを低速一定速度Vqに切換える一方、車速SVが上位転位点Drまで増速したとき、刈取装置3の駆動速度KVxを高速一定速度Vrxに切換えるように制御する。
【0068】
従って、車速同調区間Dにおける車速SVが下位転位点Dtまで減速したとき、刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxを低速一定速度Vqに切換えるものであるから、刈取装置3を低速一定速度Vqよりも遅い車速同調速度にて駆動可能に、下位転位点Dtの車速tHを決定することにより、前記低速一定速度制御での低速走行収穫作業における刈取装置3の穀稈引起し作業にて穀稈の穂先が扱かれて脱粒するのを防止できる。
【0069】
一方、車速SVが上位転位点Drまで増速したとき、刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxを高速一定速度Vrxに切換えるように制御するものであるから、刈取装置3を車速同調速度よりも速い高速一定速度Vrxにて駆動可能に、前記上位転位点Drの車速rHを決定することにより、前記高速一定速度制御での高速走行収穫作業において過負荷になるのを防止できる。
【0070】
従って、低速走行収穫作業または高速走行収穫作業の何れのときにも、前記刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)を、低速一定速度Vqまたは高速一定速度Vrxにて適正に駆動でき、低速走行収穫作業の刈取作業性を向上し、かつ高速走行収穫作業の作業効率を向上できる。
【0071】
前記低速一定速度Vqは、前記車速SVが前記下位転位点Dtであるときに対応する前記刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxよりも、高く設定されているものであるから、刈取装置3を車速同調パターンに沿う車速同調速度にて駆動している場合、刈取装置3の駆動速度KVxが低速一定速度Vqよりも低くなるように、車速同調区間の車速が下位転位点Dtの近くまで一時的に減速されても、刈取装置3の駆動速度KVxが車速同調パターンに沿う車速同調速度に保たれ、穀稈の穂先が、刈取部の引起し作業にて扱かれて脱粒するのを防止できる。
【0072】
前記車速SVが前記下位転位点Dtよりも適宜値だけ増速したとき、一旦前記低速一定速度Vqになった刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxが、前記車速同調パターン上の下位復帰点Dt2に復帰した後には、作業コントローラ282は駆動速度KVxとして車速同調パターン上の車速同調速度を採用するように切換えるものであるから、下位復帰点Dt2の車速qHを、下位転位点Dtの車速tHよりも速くすることにより、刈取装置3の駆動速度KVxを、低速一定速度Vqから前記車速同調パターンに沿う車速同調速度にスムーズに切換えることができる。
【0073】
前記高速一定速度Vrxは、車速同調区間Dにおける車速SVが上位転位点Drであるときに対応する刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxより高く設定されているものであるから、エンジン14の出力に余裕を持たせて、刈取装置3の駆動速度KVxを、前記車速同調パターンに沿う車速同調速度から高速一定速度Vrxに切換えることができる。刈取装置3を車速同調パターンに沿う車速同調速度にて駆動している場合、刈取装置3を前記高速一定速度Vrxにて駆動する高速走行収穫作業にスムーズに移行でき、高速走行収穫作業における作業能率を向上できる。
【0074】
車速SVが前記上位転位点Drよりも適宜値だけ減速したとき、一旦高速一定速度Vrxになった刈取装置3(穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxが、前記車速同調パターン上の上位復帰点Dr3に復帰した後には、作業コントローラ282は駆動速度KVxとして車速同調パターン上の車速同調速度を採用するように切換えるものであるから、上位復帰点Dr3の車速pHを、上位転位点Drの車速rHよりも遅くすることにより、刈取装置3の駆動速度KVxを、前記車速同調パターンに沿う車速同調速度から前記高速一定速度にスムーズに切換えることができる。
【0075】
前記作業コントローラ282は、後進するときに、刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)の駆動速度KVxを、車速同調速度から低速一定速度Vqに切換えるように制御する。後進のときには、刈取装置3は停止状態であるから、刈取装置3を停止している状態から駆動しても、刈取装置3の駆動が低速一定速度Vqにて開始されることにより、刈取装置3の駆動を開始するときの衝撃荷重を抑えることができる。
【0076】
図11のフローチャートと、図12の出力線図に示されるように、刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)を車速同調速度よりも高速度にて一定回転させる高速カット制御を説明する。車速同調制御中の場合(S28yes)、車速SVが車速a以上のときは(S29yes)、刈取装置3を車速同調速度よりも高速度にて一定回転させる高速一定回転制御を行う(S30)。一方、車速SVが車速a以上ではないときは(S29no)、車速同調制御する(S31)。他方、車速同調制御中ではない場合(S28no)、車速SVが車速b未満のときは(S32yes)、車速同調制御を行う(S31)。一方、車速SVが車速b未満ではないときは(S32no)、刈取装置3を車速同調速度よりも高速度にて一定回転させる高速一定回転制御する(S30)。
【0077】
なお、図12に示されるように、刈取装置3を低速或いは高速にて定速駆動する場合、高速で定速駆動する高速カットに切換えるときの作業速度と、この切換えを解除するときの作業速度とを異ならせる。刈取作業(高速または低速)状態で、作業速度が車速a(または車速b)以上の高速になった場合、刈取装置3の駆動を高速カット(高速で定速駆動)に切換える。また、刈取クイック操作の解除時には、刈取駆動速度の高速カットより一定値小さい高速カット解除値の作業速度が、車速c(または車速d)となるまで作業速度を減速させる場合、高速カットを維持する。作業速度が、車速c(または車速d)になった場合、刈取装置3の駆動を通常の速度に復帰させる。
【0078】
図13のフローチャートと、図14の出力線図に示されるように、刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、稈搬送装置224)を一定回転させる刈取クイック制御を説明する。刈り取りクイックペダルである流し込みペダルの足踏み操作が行われて流し込みスイッチ278がオンになると(S33yes)、前進していて(S34yes)、刈取変速が高速であって、車速SVが車速a以上のときには(S35yes)、刈取装置3の駆動速度を車速同調速度の高速側かそれ以上の高速度にて一定回転駆動する刈取クイック「高」回転制御する(S36)。一方、車速SVが車速a以上ではないときには(S35no)、刈取装置3の駆動速度を車速同調速度の低速側かそれ以下の低速度にて一定回転駆動する刈取クイック「低」回転制御する(S37)。
【0079】
なお、前進していないときには(S34no)、刈取装置3を車速同調速度の低速側かそれ以下の低速度にて一定回転駆動する刈取クイック「低」回転制御する(S38)。また、流し込みスイッチ278がオフの場合、車速同調制御する。
【0080】
したがって、図14に示されるように、刈取装置3(穀稈引起穀装置223、刈刃装置222、穀稈搬送装置224)の駆動速度を、低速一定速度、または車速同調速度、または高速一定速度のいずれかに切換えるから、低速走行収穫作業における刈取装置3の穀稈引起し作業にて穀稈の穂先が扱かれて脱粒するのを防止できる。一方、高速走行収穫作業において過負荷になるのを防止できる。低速走行収穫作業または高速走行収穫作業の何れのときにも、刈取装置3を、刈取クイック「低」回転制御(低速一定速度)又は刈取クイック「高」回転制御(高速一定速度)にて適正に駆動でき、低速走行収穫作業の刈取作業性を向上し、かつ高速走行収穫作業の作業効率を向上できる。
【0081】
図14に示されるように、前記刈取クイック「低」回転制御(低速一定速度)は、車速同調区間における前記車速が、刈取装置3の駆動速度を低速一定速度に切換える下位転位点であるときに対応する刈取装置3の駆動速度よりも、高く設定されているから、刈取装置3を車速同調パターンに沿う車速同調速度にて駆動している場合、刈取装置3の駆動速度が前記刈取クイック「低」回転制御よりも低くなるように、車速同調区間の車速が下位転位点の近くまで一時的に減速されても、刈取装置3の駆動速度が車速同調パターンに沿う車速同調速度に保たれ、穀稈の穂先が、刈取装置3の引起し作業にて扱かれて脱粒するのを防止できる。
【0082】
図14に示されるように、前記刈取クイック「高」回転制御(高速一定速度)は、車速同調区間における前記車速が、刈取装置3の駆動速度を高速一定速度に切換える上位転位点であるときに対応する刈取装置3の駆動速度よりも、高く設定されているから、エンジン14の出力に余裕を持たせて、刈取装置3の駆動速度を、前記車速同調パターンに沿う車速同調速度から前記刈取クイック「高」回転制御に切換えることができる。刈取装置3を車速同調パターンに沿う車速同調速度にて駆動している場合、刈取装置3を刈取クイック「高」回転制御にて駆動する高速走行収穫作業にスムーズに移行でき、高速走行収穫作業における作業能率を向上できる。
【0083】
また、車速と同調させて刈取速度を変化させる車速同調駆動又は刈取速度を略一定に保つ一定速度の流し込み駆動速度にて刈取装置3を駆動する一方、前記一定速度の流し込み駆動速度を高速と低速とに2段に切換えて、刈取装置3を高速または低速の前記一定速度の流し込み駆動速度にて駆動するから、低速走行収穫作業または高速走行収穫作業の何れのときにも、刈取装置3を、前記刈取クイック「低」回転制御又は刈取クイック「高」回転制御にて適正に駆動でき、低速走行収穫作業の刈取作業性を向上し、かつ高速走行収穫作業の作業効率を向上できる。また、刈取装置3の車速同調速度を、低速側の一定速度の流し込み駆動速度よりも低くすることによって、刈取装置3の車速同調速度の全域において、オペレータの切換操作にて刈取装置3の駆動速度が速くなり、オペレータが違和感なく運転操作できる。
【0084】
図15のフローチャートを参照して、搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95をそれぞれ逆回転作動し、搬送途中に詰った穀稈を取り除く逆回転制御を説明する。脱穀スイッチ272がオフの状態で(S39no)、逆回転スイッチ265をオンにすると(S40yes)、搬送駆動用電動モータ92を逆回転作動する搬送モータ逆転制御が行われる(S41)。この搬送モータ逆転制御では、刈取穀稈の搬送方向とは逆の方向に穀稈搬送装置224が逆回転駆動される。
【0085】
搬送モータ逆転制御が実行されて搬送駆動用電動モータ92が起動すると(S42yes)、該モータ92の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、フィードチェン駆動用電動モータ93を逆回転作動するF.Cモータ逆転制御が行われる(S43)。このF.Cモータ逆転制御では、フィードチェン駆動用電動モータ93によって、刈取穀稈の搬送方向とは逆の方向にフィードチェン6が逆回転駆動される。
【0086】
F.Cモータ逆転制御が実行されてフィードチェン駆動用電動モータ93が起動すると(S44yes)、該モータ93の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、排藁チェン駆動用電動モータ94を逆回転作動する排藁モータ逆転制御が行われる(S45)。この排藁モータ逆転制御では、排藁チェン駆動用電動モータ94によって、排藁(刈取穀稈)の搬送方向とは逆の方向に排藁チェン234が逆回転駆動される。
【0087】
排藁モータ逆転制御が実行されて排藁チェン駆動用電動モータ94が起動すると(S46yes)、該モータ94の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、排藁カッタ駆動用電動モータ95を逆回転作動するカッタモータ逆転制御が行われる(S3)。このカッタモータ逆転制御では、排藁カッタ駆動用電動モータ95によって、排藁(刈取穀稈)の切断方向とは逆の方向に排藁カッタ235が逆回転駆動される。
【0088】
カッタモータ作動制御が実行されて排藁カッタ駆動用電動モータ95が起動すると(S48yes)、搬送途中に詰った穀稈又は排藁の噛み込みが解除される一定時間(例えば約5〜10秒)経過後に、停止制御が実行され(S50)、各モータ92,93,94,95を穀稈の搬送上流側から順番に停止させる。各モータ92,93,94,95が停止した状態で、搬送途中に詰った穀稈又は排藁を、オペレータによって取り除くことができる。特に、右株元搬送チェン33R、左株元搬送チェン33L、中央株元搬送チェン33C、縦搬送チェン34、補助搬送チェン35,36等に穀稈が詰っても、その穀稈を無理に引き抜く必要がなく、その穀稈を詰った部分で切断する必要もなく、詰った穀稈を簡単に除去できる。
【0089】
上述した実施形態では、逆回転スイッチ265の操作によって、各モータ92,93,94,95を相互に関連させて逆回転させたが、各モータ92,93,94,95を個別に逆回転させる複数又は単一の逆回転スイッチ265を設けて、複数又は単一の逆回転スイッチ265によって各モータ92,93,94,95のいずれか1つ又は複数を選択して逆回転させてもよい。また、各モータ92,93,94,95と同様に、刈刃駆動用電動モータ91又は引起駆動用電動モータ90を逆回転させてもよい。
【0090】
図16のフローチャートを参照して、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95をそれぞれ作動し、フィードチェン6の搬送始端側にオペレータが刈取穀稈を供給する手扱き作業によって、刈取穀稈を脱穀する手扱制御を説明する。脱穀スイッチ272がオンの状態で(S51yes)、逆回転スイッチ265をオンにすると(S52yes)、排藁カッタ駆動用電動モータ95を作動するカッタモータ作動制御が行われる(S53)。このカッタモータ作動制御では、排藁カッタ駆動用電動モータ95によって、略一定の駆動速度で、排藁カッタ235が駆動される。
【0091】
カッタモータ作動制御が実行されて排藁カッタ駆動用電動モータ95が起動すると(S54yes)、該モータ95の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、排藁チェン駆動用電動モータ94を作動する排藁モータ作動制御が行われる(S55)。この排藁モータ作動制御では、排藁チェン駆動用電動モータ94によって、搬送速度設定器263の設定値から演算された手扱き作業速度で、排藁チェン234が駆動される。
【0092】
排藁モータ作動制御が実行されて排藁チェン駆動用電動モータ94が起動すると(S56yes)、該モータ94の動作が安定する一定時間(例えば約1〜3秒)経過後に、フィードチェン駆動用電動モータ93を作動するF.Cモータ作動制御が行われる(S57)。このF.Cモータ作動制御では、フィードチェン駆動用電動モータ93によって、搬送速度設定器263の設定値から演算された手扱き作業速度で、フィードチェン6が駆動される。
【0093】
上述したように、穀稈の搬送下流側の排藁カッタ駆動用電動モータ95から順番に、排藁チェン駆動用電動モータ94、フィードチェン駆動用電動モータ93を始動し、手扱き作業を実行する。逆回転スイッチ265をオフにすると(S58yes)、停止制御が実行され(S57)、穀稈の搬送上流側のフィードチェン駆動用電動モータ93から順番に、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95を停止し、手扱き作業を完了する。
【0094】
図17のフローチャートを参照して、第2実施形態の逆回転制御を説明する。刈取穀稈又は排藁の搬送経路中に搬送駆動用の複数の電動モータとして搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95を備える。また、穀稈搬送装置224又はフィードチェン6又は排藁チェン234又は排藁カッタ235に刈取穀稈又は排藁が詰り、搬送駆動用電動モータ92、フィードチェン駆動用電動モータ93、排藁チェン駆動用電動モータ94、排藁カッタ駆動用電動モータ95が停止した場合、前記各電動モータ92,93,94,95を制御する作業コントローラ282の不揮発性メモリに、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が記録される。そして、その刈取穀稈又は排藁の詰りデータに基づき、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所の電動モータ92,93,94,95と、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータ92,93,94,95とを、一定時間(距離)だけ逆回転させるように構成している。脱穀スイッチ272がオフの状態で(S60no)、逆回転スイッチ265をオンにすると(S61yes)、作業コントローラ282に記録された刈取穀稈又は排藁の詰りデータが読み込まれる(S62)。
【0095】
例えば、穀稈搬送装置224に刈取穀稈が詰っている場合(S63yes)、図15と同様に搬送駆動用電動モータ92を逆回転させる(S64)。また、図7と同様に刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータ93,94,95を順方向に作動する(S65、S66、S67)。
【0096】
一方、フィードチェン6に刈取穀稈が詰っている場合(S68yes)、図15と同様に搬送駆動用電動モータ92と、フィードチェン駆動用電動モータ93とを逆回転させる(S69、S70)。また、図7と同様に刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータ94,95を順方向に作動する(S71、S72)。さらに、排藁チェンに刈取穀稈が詰っている場合(S73yes)、図15と同様に搬送駆動用電動モータ92と、フィードチェン駆動用電動モータ93と、排藁チェン駆動用電動モータ94とを逆回転させる(S74、S75、S76)。また、図7と同様に刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータ94,95を順方向に作動する(S72)。
【0097】
他方、排藁カッタ235に刈取穀稈が詰っている場合(S78yes)、図15と同様に搬送駆動用電動モータ92と、フィードチェン駆動用電動モータ93と、排藁チェン駆動用電動モータ94と、排藁カッタ駆動用電動モータ95とを逆回転させる(S79、S80、S81、S82)。また、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が複数箇所の場合には、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータ92,93,94,95を停止維持する。
【0098】
上述したように、本実施形態のコンバインは、エンジン14を搭載した走行機体1と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置3と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置5とを備え、刈取装置3は、圃場の未刈り穀稈を引起す穀稈引起装置223と、穀稈引起装置223によって引起された未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置222と、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224とを有する。また、穀稈引起装置223を駆動する引起駆動用電動モータ90と、刈刃装置222を駆動する刈刃駆動用電動モータ91と、穀稈搬送装置224を駆動する搬送駆動用電動モータ92とを備え、穀稈引起装置223と刈刃装置222と穀稈搬送装置224とをその各々の電動モータ90,91,92によって駆動するように構成している。穀稈搬送装置224によって搬送中の穀稈の搬送姿勢が乱れるのを防止しながら、穀稈搬送装置224の駆動速度を変更できる。即ち、穀稈引起装置223及び刈刃装置222及び穀稈搬送装置224での穀稈の搬送速度の急激な変化を低減して、穀稈の搬送姿勢の乱れを防止できる。低速で移動しても、きれいな刈り跡になるように穀稈を刈取ることができる。また、穀稈引起装置223及び刈刃装置222及び穀稈搬送装置224の各駆動速度をそれぞれ任意に設定できるから、低速での前進移動又は部分的な倒伏稈の刈取において、穀稈引起装置223の穀稈引起速度だけを簡単に速くすることができる。後進移動において、穀稈引起装置223及び刈刃装置222を停止して、穀稈搬送装置224だけを簡単に駆動できる。
【0099】
また、引起し駆動用電動モータ90の回転速度と、刈刃駆動用電動モータ91の回転速度と、搬送駆動用電動モータ92の回転速度とを、速度設定器261,262,263の手動操作によってそれぞれ調整可能に構成している。したがって、刈取同調速度を無段階に選択できる。走行機体1の移動速度(車速)に関係なく、穀稈引起装置223及び刈刃装置222及び穀稈搬送装置224を、作物の性状に応じた適正速度で駆動できるから、脱穀負荷を低減でき、且つ扱き残し損失を低減できる。圃場の未刈り穀稈が部分的に倒伏している場合にも、走行機体1を停止させることなく、穀稈引起装置223の駆動速度を変更でき、悪い刈取条件の圃場でも作業能率を向上できる。
【0100】
図6から明らかなように、走行機体1の移動速度を検出する車速センサ285を備え、走行機体1の移動速度が一定範囲(標準作業速度)内のときに、走行機体1の移動速度と同調して、引起し駆動用電動モータ90及び刈刃駆動用電動モータ91及び搬送駆動用電動モータ92の各駆動速度が変更されるように構成し、走行機体1の移動速度が一定範囲外(標準作業速度より低い速度か高い速度)のときに、引起し駆動用電動モータ90及び刈刃駆動用電動モータ91及び搬送駆動用電動モータ92の各駆動速度が設定速度に維持されるように構成している。その結果、走行機体1の移動速度(車速)が低速のとき又は後進のときに、穀稈引起装置223及び刈刃装置222及び穀稈搬送装置224の各駆動速度を任意に設定できる。即ち、走行機体1の移動速度が低速のとき、穀稈引起装置223の駆動速度を高速側にオフセットしながら、刈刃装置222及び穀稈搬送装置224の各駆動速度を適正速度に任意に設定できる。後進のときには、走行機体1の移動速度に関係なく、穀稈搬送装置224の駆動速度を適正速度に維持しながら、穀稈引起装置223及び刈刃装置222を停止できる。
【0101】
一方、図1、図5、図6から明らかなように、走行部としての走行クローラ2を備えた走行機体1と、走行機体1に配置して穀稈を刈取る刈取装置3と、刈取装置3から刈取り穀稈を受継いで搬送するフィードチェン6と、フィードチェン6にて搬送する穀稈を脱穀する脱穀装置5と、フィードチェン6を駆動するフィードチェン用電動モータ93と、フィードチェン用電動モータ93の回転速度を可変設定するフィードチェン速度設定器としての搬送速度設定器263と、フィードチェン用電動モータ93を作動及び停止操作する手扱スイッチ264とを備えている。したがって、エンジン14又は他の駆動系の駆動速度に関係なく、フィードチェン6の駆動速度を独立して設定できるから、作業者の熟練度によって、作業者が希望する穀稈の搬送速度で、収穫作業を実行でき、収穫作業効率を向上できる。コンバインが移動中であっても、フィードチェン6の搬送速度を任意に変更できるから、刈取穀稈量の増減又は穀稈の脱穀状況等に対応して作業者が希望する搬送速度でフィードチェン6を作動できる。また、手扱作業を行う作業者の熟練度等に適した穀稈の搬送速度でフィードチェン6を駆動できる。
【0102】
図6から明らかなように、フィードチェン6が搬送する穀稈の有無を検出する作物センサ287を備え、作物センサ287の穀稈検出と略同時にフィードチェン用電動モータ93が作動するように構成し、作物センサ287が穀稈を検出しなくなってから一定時間が経過したときに、フィードチェン用電動モータ93が停止するように構成している。したがって、フィードチェン6に穀稈がない状態で、フィードチェン6を停止できる。したがって、枕地での方向転換等において、低騒音で、且つ低燃費で移動できる。手扱作業において、フィードチェン6の搬送始端側の穀稈供給部に刈取穀稈を簡単に供給できる。
【0103】
また、フィードチェン用電動モータ93の出力負荷を検出する負荷センサとしてのフィードチェン回転センサ314を備え、規定以上の出力負荷の検出によって、フィードチェン用電動モータ93を停止可能に構成している。したがって、フィードチェン6に搬送途中の穀稈が詰ることによって、フィードチェン用電動モータ93を速やかに停止できる。そのため、フィードチェン6に詰った穀稈を簡単に除去でき、収穫作業をスムーズに再開できる。なお、フィードチェン用電動モータ93の回転数を検出するフィードチェン回転センサ314に代え、負荷センサとしてコントローラ282内の電流センサを利用して、フィードチェンドライバ304の過負荷電流を検出し、その過負荷電流の検出によってフィードチェン用電動モータ93を停止してもよい。
【0104】
図6から明らかなように、走行部2を備えた走行機体1と、前記走行機体1に配置して穀稈を刈取る刈取装置3と、前記刈取装置3によって刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置5と、前記脱穀装置5から取出された排藁を切断する排藁カッタ235とを備えている。また、前記刈取装置3から前記排藁カッタ235に穀稈を搬送する複数の搬送手段としてのフィードチェン6及び排藁チェン234をそれぞれ駆動するフィードチェン用電動モータ93及び排藁チェン用電動モータ94を備え、フィードチェン6及び排藁チェン234の少なくともいずれか1つに穀稈が詰まることによって、前記複数の電動モータを逆転制御して、フィードチェン6及び排藁チェン234を一定時間だけ逆回転駆動するように構成している。したがって、フィードチェン6及び排藁チェン234に詰った穀稈を簡単に除去でき、収穫作業を速やかに再開できる。また、詰り穀稈によってフィードチェン6及び排藁チェン234が損傷するのを簡単に防止できる。フィードチェン6及び排藁チェン234に穀稈が詰っても、その穀稈を無理に引き抜く必要がなく、その穀稈を詰った部分で切断する必要もなく、詰った穀稈を簡単に除去できる。
【0105】
図6から明らかなように、フィードチェン用電動モータ93及び排藁チェン用電動モータ94を逆回転操作する手動用の逆回転スイッチ265を備え、フィードチェン6及び排藁チェン234に穀稈が詰まった状態で、逆回転スイッチ365の操作によってフィードチェン6及び排藁チェン234を一定時間だけ逆回転させるように構成している。したがって、フィードチェン6及び排藁チェン234に詰った穀稈を除去する作業者の意思で、フィードチェン6及び排藁チェン234を一定時間(一定移動距離)だけ逆回転できる。フィードチェン6及び排藁チェン234に詰った穀稈が除去できる範囲以上に不必要にフィードチェン6及び排藁チェン234が逆回転するのを防止できる。
【0106】
図6から明らかなように、フィードチェン6及び排藁チェン234を前記逆回転スイッチ265の操作によって逆回転させることによって、穀稈の搬送上流側のフィードチェン6から順番に、穀稈の搬送下流側の排藁チェン234をそれぞれ起動させるように構成している。したがって、フィードチェン用電動モータ93及び排藁チェン用電動モータ94を逆回転することによって、フィードチェン用電動モータ93及び排藁チェン用電動モータ94を起動時に電源電圧が低下するのを低減でき、且つ発電機89の負荷を軽減でき、小容量の発電機89でフィードチェン用電動モータ93及び排藁チェン用電動モータ94を作動できる。
【0107】
上記の記載及び図1、図5、図6から明らかなように、走行部としての走行クローラ2を備えた走行機体1と、収穫作物を搬送する複数の搬送手段としてのフィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234とを備えてなる収穫機において、フィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234毎に、それら搬送手段としてのフィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234をそれぞれ作動する複数の電動モータ90,92,93,94を備え、各電動モータ90,92,93,94によってフィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234を個別にそれぞれ作動するように構成したものであるから、複数の電動モータ90,92,93,94によって、フィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234を個別にそれぞれ回転制御でき、収穫作物の性状等に適応した最適な回転数でフィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234をそれぞれ作動でき、収穫作業性を向上できるものである。
【0108】
上記の記載及び図5、図6から明らかなように、走行機体1に搭載したエンジン14によって駆動する発電機89に、前記各電動モータ90,92,93,94のドライバ301,303,304,305をそれぞれ接続させるように構成したものである。例えば一定回転数で常に駆動して脱穀・選別性能を維持する必要がある脱穀装置5等の作業部を備えた構造、換言すると、エンジン14からの一定回転数の出力が作業部に伝達される伝動構造において、最高出力状態で略一定回転数を維持するようにエンジン14が運転される。したがって、そのエンジン14からの出力によって発電機89を最適な回転数で駆動できる。即ち、前記各電動モータ90,92,93,94の作動に必要な発電機89の適正出力が確実に維持されることによって、前記各電動モータ90,92,93,94が常に適正一定回転数で作動して、最適な回転数で前記複数の搬送手段としてのフィードチェン6、穀稈引起装置223、穀稈搬送装置224、排藁チェン234をそれぞれ作動できる。
【0109】
上記の記載及び図1、図5、図6から明らかなように、走行クローラ2を備えた走行機体1と、走行機体1に配置して穀稈を刈取る刈取装置3と、刈取装置3によって刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置5とを備え、刈取装置3は、圃場の未刈り穀稈を引起す穀稈引起装置223と、穀稈引起装置223によって引起された未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置222と、刈刃装置222によって切断された刈取穀稈を脱穀装置5に供給する穀稈搬送装置224とを有してなるコンバイン等の収穫機の構造であって、穀稈引起装置223を駆動する引起駆動用電動モータ90と、刈刃装置222を駆動する刈刃駆動用電動モータ91と、穀稈搬送装置224を駆動する搬送駆動用電動モータ92とを備えたものであるから、刈取搬送を複数のユニットに分割して複数の電動モータ90,91,92によって各ユニットを個別に回転制御でき、圃場の未刈り穀稈の性状又は刈取穀稈の性状等に適応した最適な回転数で穀稈引起装置223及び刈刃装置222及び穀稈搬送装置224を駆動でき、刈取作業性を向上できる。
【0110】
上記の記載及び図5、図6から明らかなように、刈取装置3を始動する操作によって、穀稈搬送下流側の搬送駆動用電動モータ92が起動されてから、刈刃駆動用電動モータ91が起動され、次いで引起駆動用電動モータ90が起動されるように構成したものであるから、複数の電動モータ90,91,92の同時起動を防ぐことによって、電源電圧を低下させることなく各電動モータ90,91,92を起動でき、各電動モータ90,91,92の電源(発電機89又はバッテリ)の電気的及び機械的な負荷変動を低減でき、小容量の電源(発電機89又はバッテリ)によって各電動モータ90,91,92を駆動できる。また、複数の電動モータ90,91,92によって刈取装置3の穀稈搬送下流側から作動させることによって、穀稈の刈取搬送をスムーズに開始できる。穀稈搬送下流側に前回作業の穀稈が残っていても、その前回作業の穀稈を先に搬送してから、穀稈搬送上流側の電動モータ90,91,92を作動するから、穀稈の刈取搬送負荷の増大を防止して、穀稈の刈取搬送をスムーズに再開できる。
【0111】
上記の記載及び図5、図6から明らかなように、刈取装置3を停止する操作によって、穀稈搬送上流側の引起駆動用電動モータ90が停止されてから、刈刃駆動用電動モータ91が停止され、次いで搬送駆動用電動モータ92が停止されるように構成したものであるから、複数の電動モータ90,91,92の同時停止を防ぐことによって、電源電圧が過電圧になることなく各電動モータ90,91,92を停止でき、各電動モータ90,91,92の電源(発電機又はバッテリ)が過電圧異常になるのを防止できる。また、刈取搬送経路の途中に穀稈を残すことなく刈取装置3を簡単に停止できる。
【0112】
上記の記載及び図5、図6から明らかなように、各電動モータ90,91,92のいずれかが回転しない場合には、穀稈搬送上流側の電動モータ90,91,92を停止してから、穀稈搬送下流側の電動モータ90,91,92を停止するように構成したものであるから、各電動モータ90,91,92のいずれかが起動しなかったり、刈取作業中に故障等によって回転しなくなっても、穀稈が詰る等の二次トラブルの発生を防止でき、不具合を簡単に解消して速やかに刈取作業を開始又は再開できる。
【0113】
上記の記載及び図5、図6から明らかなように、刈取穀稈又は排藁の搬送経路中に搬送駆動用の複数の電動モータ92,93,94,95を備え、前記各電動モータ92,93,94,95の制御コントローラ282に、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所を記録して、その刈取穀稈又は排藁の詰りデータに基づき、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所の電動モータ92,93,94,95と、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータ92,93,94,95とを逆回転させるように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータ92,93,94,95を順方向に作動するように構成し、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が複数箇所の場合には、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータ92,93,94,95を停止維持するように構成している。即ち、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータ92,93,94,95とを逆回転させるから、詰り穀稈を除去するための電動モータ92,93,94,95の逆回転等に余分な動力を必要とせず、且つ故障部位(稈詰り箇所)への穀稈の供給を防止できる。また、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータ92,93,94,95を順方向に作動するから、刈取穀稈又は排藁の搬送作業を再開したときに、処理途中の穀稈又は排藁が大量に排出されるのを防止できる。また、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータ92,93,94,95を停止維持するから、複数箇所で稈詰りが発生しても、稈詰り箇所(故障部位)への穀稈の供給を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1実施形態の6条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】刈取装置の側面説明図である。
【図4】刈取装置の平面説明図である。
【図5】コンバインの駆動系統図である。
【図6】刈取装置の制御手段の機能ブロック図である。
【図7】収穫作業制御のフローチャートである。
【図8】刈取速度制御のフローチャートである。
【図9】刈取装置を駆動する刈取回転数KVxと、車速SVとの関係を示す線図である。
【図10】刈取装置の駆動速度が高速と低速のときの刈取回転数KVxと、車速SVとの関係を示す線図である。
【図11】高速カット制御のフローチャートである。
【図12】高速カット制御の出力線図である。
【図13】刈取クイック制御のフローチャートである。
【図14】刈取クイック制御の出力線図である。
【図15】第1実施形態の逆回転制御のフローチャートである。
【図16】手扱制御のフローチャートである。
【図17】第2実施形態の逆回転制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
3 刈取装置
5 脱穀装置
6 フィードチェン(搬送手段)
90 引起駆動用電動モータ
91 刈刃駆動用電動モータ
92 搬送駆動用電動モータ
93 フィードチェン用電動モータ
94 排藁チェン用電動モータ
222 刈刃装置
223 穀稈引起装置(搬送手段)
224 穀稈搬送装置(搬送手段)
234 排藁チェン(搬送手段)
301引起ドライバ
303搬送ドライバ
304フィードチェンドライバ
305排藁ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部を備えた走行機体と、収穫作物を搬送する複数の搬送手段とを備えてなる収穫機において、前記複数の搬送手段毎に、それら搬送手段を作動する複数の電動モータを備え、各電動モータによって各搬送手段を個別にそれぞれ作動するように構成したことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
前記走行機体に搭載したエンジンによって駆動する発電機に、前記各電動モータのドライバをそれぞれ接続させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記走行機体に配置して穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置によって刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、前記刈取装置は、圃場の未刈り穀稈を引起す穀稈引起装置と、前記穀稈引起装置によって引起された未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置と、前記刈刃装置によって切断された刈取穀稈を前記脱穀装置に供給する穀稈搬送装置とを有してなる構造であって、
前記穀稈引起装置を駆動する引起駆動用電動モータと、前記刈刃装置を駆動する刈刃駆動用電動モータと、前記穀稈搬送装置を駆動する搬送駆動用電動モータとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項4】
前記刈取装置を始動する操作によって、穀稈搬送下流側の前記搬送駆動用電動モータが起動されてから、前記刈刃駆動用電動モータが起動され、次いで前記引起駆動用電動モータが起動されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の収穫機。
【請求項5】
前記刈取装置を停止する操作によって、穀稈搬送上流側の前記引起駆動用電動モータが停止されてから、前記刈刃駆動用電動モータが停止され、次いで前記搬送駆動用電動モータが停止されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の収穫機。
【請求項6】
前記の各電動モータのいずれかが回転しない場合には、穀稈搬送上流側の前記電動モータを停止してから、穀稈搬送下流側の電動モータを停止するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の収穫機。
【請求項7】
刈取穀稈又は排藁の搬送経路中に搬送駆動用の複数の電動モータを備え、前記各電動モータの制御コントローラに、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所を記録して、その刈取穀稈又は排藁の詰りデータに基づき、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所の電動モータと、刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送上流側の電動モータとを逆回転させるように構成し、
刈取穀稈又は排藁の詰り箇所より穀稈搬送下流側の電動モータを順方向に作動するように構成し、
刈取穀稈又は排藁の詰り箇所が複数箇所の場合には、刈取穀稈又は排藁の複数の詰り箇所の間の電動モータを停止維持するように構成したことを特徴とする請求項3又は6に記載の収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−220326(P2008−220326A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66851(P2007−66851)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】