説明

収縮期雑音強度の傾向付け

音響センサによって僧帽弁逆流など、収縮期雑音の強度及び/又は持続時間の変化を監視するように構成された埋込可能装置が記述される。そのような変化は、患者の心不全の状況の変化を表すと解釈される。患者の心不全の状況の悪化を検出すると、装置は、患者管理ネットワーク上で臨床担当者に警告する、及び/又はペーシング治療に対して適切な調整を行うようにプログラムされる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(関連出願)
本出願は、内容が参照によって本明細書に組み込まれている2005年5月5日に出願された米国特許出願番号11/122749の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ペースメーカなどの心臓装置や心臓機能不全を監視し処理するための他のタイプの装置に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全(HF)は、身体の要求を満たすのに十分な血液を心臓がポンピングすることができない状態を指す。これは、通常、心筋梗塞又は心臓発作からなど、心臓自体に対するある損傷による。急性の心不全が起きるとき、自律神経循環反射が活動化され、身体が血圧の低下に対して防御しようとする際、心臓の収縮を増大させ、かつ脈管構造を狭窄する。静脈の狭窄や静脈システムと肺システムから外部に血液をポンピングする心臓の能力の低下(いわゆる後方障害)により、心室の拡張期充満圧力が増大する。前負荷(すなわち、心室が拡張期の終了時に心室の血液容積によって伸張される程度)のこの増大により、収縮期中の1回心拍出量が増大する。これはフランク・スターリング原理として知られる現象である。心不全が過度に深刻ではない場合、この代償は、患者を低下した活動レベルにおいて維持するのに十分である。中程度の心不全が続くとき、心不全の慢性段階を特徴付ける他の代償機構が役割を果たすようになる。これらのうち最も重要なのは、腎臓機能に対する低心拍出量の抑制効果である。腎臓によって保持される流体が増大することにより、血液容量が増大し、心臓への静脈環流がさらに増大する。心臓のポンピング能力が損なわれている間でさえ、拡張期充満圧力を増大させる因子が、心拍出量を通常レベルに維持することができるとき、代償性心不全の状態となる。
【0004】
しかし、代償性心不全は、不安定な状態である。心臓機能が悪化する場合、あるいは増大した心拍出量が、増大した活動又は疾患のために必要である場合、代償は、通常の腎臓機能を維持するのに十分なレベルに心拍出量を維持することができない可能性がある。その場合、流体は保持され続け、顕性うっ血性心不全を特徴付ける進行性の末梢神経及び肺の浮腫を生じる。拡張期充満圧力はさらに上昇し、これにより心臓は拡張し浮腫状となり、心臓のポンピング機能はよりいっそう悪化する。心不全が悪化し続けるこの状態は、非代償性心不全である。これは、主に結果として起きる肺のうっ血と呼吸困難から、臨床的に検出することができ、すべての臨床医は、適切な治療が行われない限り、迅速に死に至ることがあることを認識している。
【特許文献1】米国特許出願番号11/122749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書において、埋込可能心臓装置が患者の心不全の状況を監視する方法が記述される。方法は、装置に組み込まれた音響センサで収縮期雑音の強度を測定することを含む。雑音の強度の増大を検出すると、装置は、患者管理ネットワーク上で警告メッセージを送信するように構成される。他の実施形態では、装置は、雑音強度の増大を検出すると、警告及び/又は開始されるペーシング治療を施すように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
房室弁又はAV弁とも呼ばれる3尖弁及び僧帽弁は、それぞれ、心臓の右側と左側において心房と心室を分離する。房室弁の機能は、心室拡張期中と心房収縮期中に心房と心室の間で血液が流れるようにし、心室収縮期中に血液の逆流を防止することである。僧帽弁は、左心房と左心室の間に位置する僧帽環と呼ばれる繊維性環、前尖と後尖、腱索、乳頭筋からなる。小葉は、僧帽環から延び、左心室に添付される乳頭筋に腱索によってつながれる。乳頭筋の機能は、心室収縮期に収縮し、小葉性弁膜が左心房に向かって後方に進行するのを制限する。小葉性弁膜が心室収縮期中に心房の中に後方に膨らむと、これは脱出と呼ばれ、弁を経て血液が漏れることがある。3尖弁の構造と動作は同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
僧帽弁閉鎖不全又は僧帽弁閉鎖不全症とも呼ばれる僧帽弁逆流(MR)は、心室収縮期中の左心室から左心房への血流の異常な逆流によって特徴付けられる。これは、左心室が収縮する際に僧帽弁の小葉が適切に閉じることができないときに起き、それにより、血液が左心房内に逆流することが可能になる。3尖弁逆流(TR)は、同様の方式で起きる。MRとTRは、破裂した腱索、小葉の穿孔、又は乳頭筋の機能不全など、様々な構造上の原因によることがある。機能上のMRとTRはまた、環状拡張又は心筋機能不全により心不全の患者において起きる可能性もあり、両方とも、小葉性弁膜が適切に接合するのを妨害する可能性がある。
【0008】
特定の患者では、MRの深刻さは、心不全の悪化と共に増大することが知られている。HF代償不全に至る事象では、容積及び/又は圧力の過負荷の存在と心室の拡張により、たとえば、乳頭筋と腱索に対する過剰な張力や僧帽環のゆがみのために、弁閉鎖不全症が進行する。左心室収縮期機能の悪化はまた、MRの深刻さを増大させる平均左心室圧力の上昇をも示唆する。
【0009】
本明細書において、長期移動性方式で雑音の強度と持続時間の変化を監視するために使用される雑音を感知する能力を有する、埋込可能心臓装置の中に埋め込まれることが可能であるシステムが記述される。埋込可能装置が、ネットワーク上でメッセージを送信することが可能な家庭内又は携帯式の患者監視システムと共同で、収縮期雑音(MRなど)の深刻さの変化を、心臓疾患、特に非代償性心不全の悪化を医師や介護者に警告するために使用されることが可能である。MRの深刻さの変化を監視することは、右側圧力、肺の流体状況、呼吸率などの他の尺度に依存しない心不全の深刻さを監視する実現可能な手段である。
【0010】
雑音を感知するシステムは、少なくとも中程度のレベルの収縮期僧帽弁機能不全症を検出するのに十分な帯域幅(たとえば、1Khz)を有する音響センサ(たとえば、マイクロフォン又は他のタイプの圧力センサ)を含む。異なる実施形態では、音響センサは、ペーシング・リードと統合された圧力センサ、リードのない又はリードを有する専用圧力センサ、あるいは埋込可能装置ハウジングの表面上に取り付けられたマイクロフォンである。埋込可能装置の感知チャネルによって提供されるエレクトログラムが、心臓周期の収縮期段階を識別するために使用され、信号処理技法が、雑音の属性を検出かつ測定するために使用される。これらの属性は、1日を通して繰り返して測定して、傾向を形成するために使用される。雑音の基準は、患者の疾患の状況が安定していることが既知である期間中に確立される。基準からの著しい変化を、警告メッセージを生成するために使用することができ、又は他のセンサからの情報と組み合わせて、混合センサ決定を作成することができる。
【0011】
例示的な実施形態では、200Hzと最高で1Khzの間の帯域における広帯域音響エネルギーの包絡線検出が、雑音強度を測定するために使用される。高調波心音成分(たとえば、S1、S2)が、ろ過して取り除かれる、又は無視される。心臓周期の収縮期段階に関して雑音の強度、持続時間、タイミングの測定が行われ、複数回繰り返される。複数回測定は、統計的に組み合わせて、複合的な毎日の測定を生成することができる。雑音の著しい変化を検出するアルゴリズムはまた、確立された基準とは異なる測定を宣言するために、統計の有意性の試験を使用することによって、毎日の測定のばらつきを考慮することも可能であり、それにより、感度と特異性の調整の手段を提供する。
【0012】
以下で、収縮期雑音強度を監視するシステムが組み込まれることが可能である例示的な埋込可能装置が記述される。装置は、心臓ペーシングなどの他の機能を含む、又は含まないことが可能である。しかし、説明されるように、ペーシング機能を有する装置では、収縮期雑音強度の変化はまた、ペーシング治療において代償性変化をトリガするために使用されることも可能である。
【0013】
1.例示的な装置の記述
図1に示されたように、ペーシング治療を施すための埋込可能心臓装置100(たとえば、ペースメーカ)は、通常、患者の胸において皮下又は筋肉下に配置され、リード200が、心房及び/又は心室を感知しペーシングするために使用される電極300に装置を接続するように、静脈内から心臓に通される。電極はまた、様々な手段によって心外膜の上に配置されることもある。プログラム可能電子コントローラにより、ペーシング・パルスが、経過した時間間隔及び感知された電気活動(すなわち、ペーシング・パルスの結果としてではない固有心臓拍動)に応答して出力される。装置は、感知される室の付近に配置された内部電極を組み込む感知チャネルを経て、固有心臓の電気活動を感知する。装置によって検出される心房又は心室の固有収縮に関連付けられる脱分極波は、それぞれ心房感知又は心室感知と呼ばれる。固有拍動がない状態でそのような収縮を生じさせるために、あるしきい値より上のエネルギーを有するペーシング・パルスが、感知される室の付近に配置された内部電極を組み込むペーシング・チャネルを経て室に送られる。
【0014】
複数の感知チャネルとページング・チャネルを有する埋込可能複数部位ペースメーカのブロック図が、図2に示されている。ペースメーカのコントローラは、双方向データ・バスを介してメモリ12と通信するマイクロプロセッサ10からなり、メモリ12は、通常、プログラムを記憶するROM(読取り専用メモリ)とデータを記憶するRAM(ランダム・アクセス・メモリ)を備える。コントローラは、いくつかのプログラム・モードにおいてペースメーカを動作させることができ、この場合、プログラム・モードは、ペーシング・パルスが、感知された事象と時間間隔の満了に応答してどのように出力されるかを確定する。遠隔測定トランシーバ80が、外部プログラマなどの外部装置300と通信するために設けられる。外部プログラマは、ペースメーカに問合せ、記憶されたデータを受信し、ペースメーカの動作パラメータを直接調整することができる、関連付けられたディスプレイと入力手段を有するコンピュータ化装置である。遠隔測定トランシーバ80により、コントローラは、無線遠隔測定リンクを介して外部装置300と通信することが可能になる。外部装置300は、埋込可能装置をプログラムし、かつ埋込可能装置からデータを受信するために使用することができる外部プログラマであり、又は遠隔監視ユニットでもよい。外部装置300はまた、患者管理ネットワーク91にインタフェースされ、それにより、埋込可能装置は、データと警告メッセージをネットワーク上で臨床担当者に送信し、かつ遠隔的にプログラムされることが可能になる。外部装置300と患者管理ネットワーク91の間のネットワーク接続は、たとえば、インターネット接続によって、電話線上で、又はセルラ無線リンクを介して実施される。
【0015】
図2に示された実施形態は、複数の感知/ペーシング・チャネルを有し、この場合、ペーシング・チャネルは、電極に接続されたパルス生成器からなり、一方、感知チャネルは、電極に接続された感知増幅器からなる。マイクロプロセッサによって制御されるMOS切替えネットワーク70が、感知増幅器の入力からパルス生成器の出力に電極を切り替えるために使用される。コントローラによって、切替えネットワーク70は、感知チャネルとページング・チャネルを、利用可能な電極の異なる組合わせに構成することが可能である。従来の心室単一部位ペーシング、両心室ペーシング、又は単一心室の複数部位ペーシングを装置が施すのを可能にする心房チャネル又は心室チャネルとして、チャネルを構成することが可能であり、この場合、心室ペーシングは、心房の追跡を有して又は有さずに施される。例示的な構成において、3つの代表的な感知/ペーシング・チャネルが示されている。右心房感知/ペーシング・チャネルは、双極リード43cのリング電極43aとチップ電極43b、感知増幅器41、パルス生成器42、チャネル・インタフェース40を含む。右心室感知/ペーシング・チャネルは、双極リード23cのリング電極23aとチップ電極23b、感知増幅器21、パルス生成器22、チャネル・インタフェース20を含み、左心室感知/ペーシング・チャネルは、双極リード33cのリング電極33aとチップ電極33b、感知増幅器31、パルス生成器32、チャネル・インタフェース30を含む。チャネル・インタフェースは、マイクロプロセッサ10のポートと双方向に通信し、感知増幅器からの感知信号入力をデジタル化するアナログ・デジタル変換器、感知増幅器の利得としきい値を調整するために書き込むことができるレジスタ、さらにはペーシング・パルスの出力を制御する及び/又はペーシング・パルス振幅を変化させるためのレジスタを含む。この実施形態では、装置は、ペーシング・パルスを出力する及び/又は固有活動を感知するために使用される2つの電極を含む双極リードを装備する。他の実施形態は、感知とペーシングのための単一の電極を有する単極リードを使用することが可能である。切替えネットワーク70は、装置ハウジングすなわちカン60を有する単極リード又は双極リードの電極を参照することによって、単極感知又はペーシングのチャネルを構成することが可能である。
【0016】
コントローラは、本明細書において記述されるように、メモリに記憶されているプログラムされた命令に従って装置の動作全体を制御し、収縮期雑音監視機能を実施する。コントローラは、感知チャネルからのエレクトログラム信号を解釈し、指定間隔についてタイマを実施し、ペーシング・モードに従ってペースの実施を制御する。ペースメーカの感知回路は、特定のチャネルの電極によって感知された電圧から心房と心室のエレクトログラム信号を生成する。エレクトログラムは、固有拍動中又はペーシング拍動中に起きる心臓の脱分極と再分極の時間過程及び振幅を示す。心房又は心室の感知チャネルのエレクトログラム信号が指定しきい値を超えるとき、コントローラは、それぞれ、心房感知又は心室感知を検出し、ペーシング・アルゴリズムは、ペーシングをトリガ又は阻止するために心房感知又は心室感知を使用する。インピーダンス・センサ95も、経胸郭インピーダンスを測定するためにコントローラにインタフェースされる。経胸郭インピーダンス測定は、率適合ペーシング・モードの呼吸分時換気、又は以下で記述されるように心不全状況を監視するための心臓の1回の心拍出量を導出するために使用されることが可能である。
【0017】
2.収縮期雑音を監視する例示的なシステム
図2にはまた、コントローラにインタフェースされ、かつ装置が、MRなどの収縮期雑音の強度又は持続時間の変化について監視する圧力センサ100も示されている。図3は、埋込可能装置に埋め込まれることが可能である収縮期雑音を感知するシステムの特定の実施形態を示す。圧力センサ100は、収縮期雑音によって生成される音響振動を感知するように配置されるように適合され(たとえば、肺動脈に配置される)、血管内リード又はリードなしタイプのリンク(たとえば、超音波もしくはRFリンク)によって埋込可能装置に接続される。アナログ・デジタル変換器101によってデジタル化した後、圧力センサ100からの信号は、装置コントローラによって実行されるコードで実装される帯域通過フィルタ102によってろ過される。この例では、フィルタの通過帯域は、MRによる雑音の周波数成分にかなり特異的な帯域を表す100Hzから500Hzである。患者の特定の雑音についてろ過を適応させるために、他の通過帯域を使用することができる。ろ過された圧力信号は、次に、やはりコントローラによって実行されるコードで実装される信号エネルギー検出器103に渡され、これは、雑音の強度を表すと解釈されることが可能であるろ過された圧力信号の信号エネルギーを測定する。R波検出器(すなわち、装置による心室感知の検出)104により、エネルギー検出器は、心臓周期の収縮期段階中に雑音の強度を測定することが可能になる。コントローラはまた、収縮期段階中の雑音の持続時間を測定することも可能である。基準値からの雑音の強度又は持続時間の変化を、患者の心不全状況の変化のインジケータとして使用することができる。
【0018】
図4は、本発明が適宜開始されることが可能であるように、収縮期雑音の変化を監視し、そのような変化を臨床担当者に報告するために、コントローラによって実行される例示的なアルゴリズムを示す。ステップA1において、患者の基準雑音強度が記録される。ステップA2において、患者の現行雑音強度が測定され、この場合、現行雑音強度は、無意味な変化を平均するために、ある時間期間にわたって行われた強度測定の平均とする。ステップA3において、現行雑音強度は、強度が指定しきい値量だけ増大しているかを判定するために、基準値と比較される。そうでない場合、ステップA2とA3が、連続的又は周期的に繰り返される。雑音強度が指定しきい値量だけ増大している場合、警告フラグが設定され、警告メッセージが、ステップA4において遠隔測定を介して患者管理ネットワークで送信される。装置がペーシング治療を施すように構成される場合、そのような治療はまた、雑音強度の変化に応答してステップA5において調整されてもよい。以下で説明されるように、そのようなペーシング治療の調整は、心臓再同期ペーシングを含む。
【0019】
装置はまた、傾向が存在するかを判定するために、雑音強度測定を記録する。たとえば、装置が、患者の雑音強度が指定しきい値を超える率で増大していると判定する場合、雑音強度が基準値より指定しきい値量を超えていない場合でも、警告フラグを設定して、患者管理ネットワーク上で警告メッセージを送信する。また、検出された傾向に応答して、ペーシング治療に対する自動調整を行うこともできる。図5は、例示的なアルゴリズムを示す。ステップB1において、複数の強度測定が、1日(又は他の確定された時間期間)の間行われ、記憶される。ステップB2において、記憶された強度測定は、統計的に組み合わされ(たとえば、平均され)、その日の複合強度測定を生成する。ステップB3において、ある時間期間(たとえば、1週間又は1月)にわたる連続する毎日の複合強度測定間の正又は負の差を計算し、合計して、その時間期間にわたる強度の正味の増大又は減少を得、それによって雑音の強度の傾向を表す。次いで、この傾向は、ステップB4において指定しきい値と比較される。傾向が正で、しきい値より大きい場合、警告フラグが設定され、ステップB5において、警告メッセージが、遠隔測定を介して患者管理ネットワーク上で送信される。
【0020】
図4、5を参照して上記で議論されたアルゴリズムは、心不全状況のインジケータとして雑音強度の変化を監視する。収縮期雑音の持続時間の変化は、心不全状況の変化によることもあるので、同じステップを雑音持続時間に関して実施する。また、装置は、雑音強度と持続時間の他に、MR又は心不全の悪化を表すことが可能である他のパラメータの変化を監視するために、他の感知様式を使用することが可能である。その場合、これらの追加のパラメータの変化は、心不全状況の変化が起きたかをより具体的に検出するために、装置によって使用される。たとえば、圧力センサが肺動脈に配置される場合、装置は、MRの深刻さが増大する際に増大する平均左心房圧力の評価として肺の圧力を測定する。その場合、装置は、最中の左心房圧力も他の指定しきい値量を超える場合のみ、現行雑音強度が基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するようにプログラムする。僧帽弁逆流及び/又は心不全の状況の程度を監視する、ある他の方式は、心臓周期中の心臓容積を反映する経胸郭インピーダンス測定を介する。僧帽弁逆流が左心房と左心室の両方について容積過負荷を生成する際、たとえば、指定しきい値を超える拡張終期左心室容積の増大を、患者のMR又は心不全が悪化した表示として使用する。
【0021】
上記で留意されたように、収縮期雑音監視によって検出される患者の心不全状況の変化は、装置によって施されるペーシング治療を調整するためにも使用できる。心室再同期治療は、左心室伝達異常によって起きる、又はそれに起因する左心室機能不全による心不全を有する患者の治療において最も一般的に適用される。そのような患者では、左心室又は左心室の一部は、収縮期中に通常より遅く収縮し、それによりポンピングの効率を損なう。そのような患者において心室の収縮を再同期するために、左心室又は左心室の一部が、固有収縮において脱分極するときに関して事前に興奮されるように、ペーシング治療が加えられる。所与の患者において伝達欠陥を処置するための最適な事前興奮を、両心室ペーシング又は左心室のみのペーシングで得することが可能である。装置が再同期治療を施すように構成される場合、そのような治療は、患者の心不全状況の悪化を検出すると開始することができる。代替として、治療によって施される事前興奮の量を増大させるために、ペーシング・パラメータを調整することができる。たとえば、心房追跡ペーシング・モードにおいて使用されるAV遅延を低減させることができ、又は、1つの心室(通常は左心室)を事前興奮するために使用される両心室オフセットを増大させることができる。
【0022】
本発明は、以上の特定の実施形態に関連して記述されたが、多くの代替、変更、及び修正が、当業者には明らかになるであろう。他のそのような代替、変更、及び修正は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】埋込可能心臓装置の物理的な配置を示す図である。
【図2】収縮期雑音を監視し、ならびにペーシング治療を施すための例示的な埋込可能装置を示す図である。
【図3】収縮期雑音強度を測定するシステムのブロック図である。
【図4】埋込可能装置で実装されることが可能である例示的なアルゴリズムを示す図である。
【図5】埋込可能装置で実装されることが可能である例示的なアルゴリズムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮期雑音によって生成された音響振動を感知するために配置されるように適合された圧力センサと、
前記圧力信号をろ過する帯域通過フィルタと、
雑音強度を表すために、前記ろ過された圧力信号の信号エネルギーに関係するパラメータを測定する信号エネルギー検出器と、
基準雑音強度を記録するようにプログラムされたコントローラと
を備え、
前記コントローラが、ある時間期間にわたって行われた強度測定の平均として現行雑音強度を測定し、前記現行雑音強度を前記基準雑音強度と比較し、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するようにさらにプログラムされる、埋込可能心臓装置。
【請求項2】
前記コントローラが、収縮期段階中に前記雑音の現行持続時間を測定し、前記現行雑音持続時間を基準雑音持続時間と比較し、前記現行雑音持続時間が、前記基準雑音持続時間を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するようにプログラムされる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号エネルギー検出器が心臓周期の収縮期段階中に前記雑音の前記強度を測定するR波検出器をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
遠隔測定トランシーバをさらに備え、前記コントローラが、前記雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、遠隔測定を介して患者管理ネットワーク上で警告メッセージを送信するようにプログラムされる請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラが、指定持続期間にわたって行われた前記現行雑音強度測定を記憶し、前記雑音強度の傾向を計算するようにさらにプログラムされる請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記傾向が、前記指定時間期間にわたる連続する現行雑音強度測定間の差を計算し、前記差を合計することによって計算される請求項5に記載の装置。
【請求項7】
肺の圧力を測定するように構成され、肺動脈に配置されるように適合された圧力センサをさらに備え、前記コントローラが、前記肺の圧力も他の指定しきい値量を超える場合のみ、前記雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するようにプログラムされる請求項1に記載の装置。
【請求項8】
プログラム・モードで心臓をペーシングする回路をさらに備え、前記コントローラが、前記雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、前記プログラム・モードを調整するように構成される請求項1に記載の装置。
【請求項9】
装置が、心房トリガ・モードにおいて前記心臓をペーシングするように構成され、前記コントローラが、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、プログラムされたAV遅延を調整するようにプログラムされる請求項8に記載の装置。
【請求項10】
装置が、両心室ペーシング・モードにおいて心臓をペーシングするように構成され、前記コントローラが、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、両心室オフセットを調整するようにプログラムされる請求項8に記載の装置。
【請求項11】
収縮期雑音によって生成された音響振動を感知するステップと、
圧力信号をろ過するステップと、
雑音強度を表すために、前記ろ過された圧力信号の信号エネルギーに関係するパラメータを測定するステップと、
基準雑音強度を記録するステップと、
ある時間期間にわたって行われた強度測定の平均として現行雑音強度を測定し、前記現行雑音強度を前記基準雑音強度と比較し、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するステップと
を備える方法。
【請求項12】
収縮期段階中に前記雑音の現行持続時間を測定するステップと、前記現行雑音持続時間を基準雑音持続時間と比較するステップと、前記現行雑音持続時間が前記基準雑音持続時間を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するステップとをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
心臓周期の前記収縮期段階中に前記雑音の前記強度を測定するために、R波を検出するステップをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、遠隔測定を介して患者管理ネットワーク上で警告メッセージを送信するステップをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項15】
指定時間期間にわたって行われた前記現行雑音強度測定を記憶するステップと、前記雑音強度の傾向を計算するステップとをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記傾向が、前記指定時間期間にわたる連続する現行雑音強度測定間の差を計算し、前記差を合計することによって計算される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
肺の圧力を測定するステップと、前記肺の圧力も他の指定しきい値量を超える場合のみ、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、警告フラグを設定するステップとをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項18】
心臓をプログラム・モードでペーシングするステップと、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、前記プログラム・モードを調整するステップとをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記心臓を心房トリガ・モードでペーシングするステップと、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、プログラムされたAV遅延を調整するステップとをさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記心臓を両心室ペーシング・モードでペーシングするステップと、前記現行雑音強度が前記基準雑音強度を指定しきい値量だけ超える場合、両心室オフセットを調整するステップとをさらに備える請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−539895(P2008−539895A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510250(P2008−510250)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017387
【国際公開番号】WO2006/121844
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】