説明

取付具

【課題】 構造が簡素で、成形時のスライド型数を削減することができる取付具を提供する。
【解決手段】 バンパクリップ10は、取付孔101を備えた車体パネル100に、係止孔114が形成された突片111を備えた被取付部材110を取り付ける。バンパクリップ10は、脚部14、フランジ部15、連結爪16を備えたパネル結合部材11と、貫通孔44および連結孔58が形成された胴部41、固定爪42を備えたバンパ結合部材12とを有する。連結爪は、貫通孔に挿入されて連結孔に係合する。脚部は取付孔に係合し、フランジ部は取付孔の周縁部に係合する。突片は、パネル結合部材とバンパ結合部材とが連結された状態で、貫通孔に挿入され、固定爪と係止孔とが係合する。このとき、突片は、連結爪に当接して連結爪の傾倒を阻止し、連結爪と連結孔との係合状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取付具に係り、詳しくは取付孔を備えた取付部材に、突出方向と略直交する向きの係止孔が形成された突片を備えた被取付部材を取り付ける取付具に関する。取付具は、例えば、取付部材としての車体パネルに、被取付部材としてのバンパを取り付けるために用いられる。
【背景技術】
【0002】
取付部材に形成された取付孔に係合するとともに、被取付部材に突設された突片に係合し、取付部材と被取付部材とを連結する取付具がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る取付具は、取付部材の取付孔に係合する第1部材(グロメット)と、被取付部材の突片に形成された係止孔に係合する第2部材(インナピース)とを備え、第1部材と第2部材とが互いに係合することによって取付部材と被取付部材とを連結する。第1部材は、取付孔に挿入されるとともに第2部材の一部を受容可能な筒状部を備え、筒状部の側壁部には貫通孔が形成されている。第2部材は、第1部材内に挿入された状態で、第1部材の貫通孔に係合する爪部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−68406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る取付具では、第1部材に貫通孔が形成されているため、取付具は取付孔を水密に封止することができないという問題がある。この問題に対して、貫通孔を有底孔とする、あるいは第1部材の筒状部に爪部を形成し、第2部材に当該爪部に係合する孔を設けるといった解決手法が考えられる。しかし、第1部材を樹脂材料から成形する場合において、これらの解決手法をとった場合には、第1部材の筒状部の内壁に、筒状部の軸線方向(深さ方向)と異なる方向に突出する凸部、または陥没した凹部が形成されることになり、筒状部の内部を成形するために必要なスライド型が増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、構造が簡素で、成形時のスライド型数を削減することができる取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明は、取付孔(101)を備えた取付部材(100)に、突出方向と略直交する向きの軸線を有する係止孔(114)が形成された突片(111)を備えた被取付部材(110)を取り付ける取付具(10)であって、基端部から先端部へと延びる脚部(14)と、前記脚部の前記基端部に設けられ前記脚部の外方へと突出するフランジ部(15)と、前記脚部の前記基端部から前記先端部側と相反する方向に突設された傾倒可能な連結爪(16)とを備えた第1部材(11)と、貫通孔(44)および当該貫通孔に近接して前記連結爪が係合する連結係合部(58)が形成された胴部(41)と、前記胴部に突設された固定爪(42)とを備えた第2部材(12)とを有し、前記連結爪は、前記貫通孔に挿入されて前記連結係合部に係合し、前記第1部材および前記第2部材を互いに連結し、前記脚部は、前記先端部から前記取付孔に挿入されて前記取付孔に係合し、前記フランジ部は、前記脚部が前記取付孔に挿入された状態で、前記取付孔の周縁部に係合し、前記突片は、前記第1部材と前記第2部材とが連結された状態で、前記貫通孔に挿入され、前記固定爪と前記係止孔とが係合することによって前記第2部材に連結されるとともに、前記連結爪に当接して前記連結爪の傾倒を阻止し、前記連結爪と前記連結係合部との係合状態を維持することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1部材と第2部材とを連結する連結爪が、第1部材の外部側に設けられるため、第1部材の成形するための成形型の構成が簡素になる。また、連結爪は、突片が貫通孔に挿入されることによって、突片に当接して傾倒が防止され、連結係合部との係合状態を維持することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記脚部は、前記第1部材と前記第2部材とが連結された状態で、前記貫通孔に対応する部分に前記突片を受容可能な受容孔(21)を有し、前記固定爪は、前記受容孔内へと延びていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、突片の取付具に対する挿入長さが増加し、突片と取付具との結合状態がより安定する。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記貫通孔は、前記突片が挿入された状態で、前記突片の挿入方向に直交する方向であり、かつ前記係止孔の軸線方向に直交する方向である所定のスライド方向に前記突片がスライド移動可能な大きさに形成されており、前記突片が前記スライド方向に移動するときに当接する前記固定爪の側部および前記係止孔の周縁部の一方には傾斜面部(57)が形成されており、前記突片が前記貫通孔に対して前記スライド方向に移動することによって、前記固定爪の側部および前記係止孔の周縁部の他方が前記傾斜面部に押圧され、前記固定爪が前記係止孔から離脱することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、突片を取付具に対して所定のスライド方向に移動させることによって、固定爪と係止孔との係合状態を解除することができる。これにより、突片を取付具から容易に抜去することができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記受容孔は、前記脚部の基端部のみに開口していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、受容孔を通って取付孔を通過する液体を防止することができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記フランジ部は、可撓性を有し、前記脚部が前記取付孔に挿入された状態で、前記取付孔の周縁部に密着し、前記取付孔を封止することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1部材で取付孔を水密に封止することができる。
【0016】
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明において、前記連結係合部は、前記胴部の外面から前記貫通孔へと連通していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、連結係合部の形成が容易であり、第2部材の成形するための成形型の構成が簡素になる。
【0018】
第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記第1部材は、第1リング部(38)を備え、前記第2部材は、前記第1リング部に連鎖した第2リング部(66)を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1部材と第2部材とは分離することがないため、第1部材と第2部材との組み付けが容易になる。
【0020】
第8の発明は、第7の発明において、前記第1部材および前記第2部材は、所定の金型から同時に成形されることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第1部材および第2部材を成形型から分離したときから、第1部材および第2部材は一対の組を形成し、第1部材と第2部材との組み付けが容易になる。
【発明の効果】
【0022】
取付具の構造を簡素にし、成形時のスライド型数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】バンパクリップの分解状態を示す斜視図
【図2】バンパクリップの分解状態を示す平面図
【図3】図2のIII−III断面図
【図4】バンパクリップの組立形態を示す側面図
【図5】バンパクリップの組立形態を示す平面図
【図6】バンパクリップを用いて車体パネルにバンパを取り付ける手順を示す斜視図
【図7】バンパクリップを車体パネルに取り付けた状態を示す断面図
【図8】バンパクリップを介した車体パネルとバンパとの取付構造を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】図8のX−X断面図
【図11】図8のXI−XI断面図
【図12】図8のXII−XII断面図
【図13】バンパクリップを介した車体パネルとバンパとの取付構造において突片をスライド移動させた状態を示す断面図
【図14】図13のXIV−XIV断面図
【図15】図13のXV−XV断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を取付部材としての車体パネルに被取付部材としての自動車用バンパを取り付けるためのバンパクリップに適用した一実施形態を詳細に説明する。バンパクリップ10は、矩形状の取付孔101が貫通形成された板状の車体パネル100に、突片111が突設されたバンパ110を、突片111が取付孔101に突入した形で取り付ける取付具である(図6参照)。以下の説明では、各図に示す座標軸を基準として説明する。
【0025】
<取付具の構成>
図1〜図3に示すように、バンパクリップ10は、パネル結合部材(第1部材)11と、バンパ結合部材(第2部材)12とを備えている。パネル結合部材11およびバンパ結合部材12は、ともに樹脂材料から成形されたものである。パネル結合部材11は、上下方向に延びる脚部14と、脚部14の上端外側部に設けられたフランジ部15と、脚部14の上端部に上方へと向けて突設された4つの連結爪16と、脚部14の側部に突設された2つの係止爪17とを主要構成要素として備えている。
【0026】
脚部14は、上端面(基端面)を有する略直方体状に形成され、その上端面に上方に向けて開口する受容孔21が形成されている。受容孔21は、脚部14の上端部から下端(先端)近傍まで延びている。すなわち、脚部14は、上方に開口した有底の箱形状を呈する。図2に示すように、受容孔21は、横断面が前後方向に対して左右方向が長い略長方形状を呈し、左右方向における中間部に前後方向に拡幅された拡幅部22を備えている。図2および図3に示すように、受容孔21の底部には、2つのリブ23,23が形成されている。脚部14の下端部は、先細となるように面取りがなされている。
【0027】
フランジ部15は、脚部14の外側部から上下方向に直交する方向に放射状に延びる内側フランジ部24と、内側部分の外縁を囲むように設けられた外側フランジ部25とを備えている。外側フランジ部25は外縁部分が斜め下方へと延出し、フランジ部15は椀形状を呈している。外側フランジ部25は、内側フランジ部24よりも厚みが薄く形成され、可撓性を有している。
【0028】
図1および図3に示すように、2つの係止爪17は、脚部14の互いに相反する側部に設けられており、それぞれ、基部27と、爪部28とを備えている。基部27は、一端が脚部14の側部に連結するとともに、他端が内側フランジ部24の下面に連結し、中間部が脚部14の側部から離れる方向に凸となるように湾曲している。爪部28は、基部27の中間部に設けられている。基部27は、中間部が脚部14の側部側へと弾性変形可能になっている。これにより、爪部28は、左右方向に変位(出没)可能となっている。
【0029】
図1〜図3に示すように、4つの連結爪16のそれぞれは、脚部14の上端面における受容孔21の前縁部または後縁部に突設された柱状部31と、柱状部31の先端部から、平面視において受容孔21の外方へと突出する爪部32とを備えている。爪部32は、下方を向く逆止面と、逆止面の突出端から柱状部31の先端側へと延在する斜め上方向きの傾斜面とを備えている。柱状部31は、可撓性を有し、前後方向に傾倒可能となっている。柱状部31の爪部32が設けられた側と相反する側(背部)は、受容孔21の孔壁と面一に連続している。
【0030】
脚部14の上端面には、第1規制壁35および第2規制壁36がそれぞれ上方へと向けて突設されている。図2に示すように、第1規制壁35および第2規制壁36は、それぞれ平面視においてコ字状を呈し、開口端側が受容孔21を挟んで互いに相対している。第1規制壁35は、第2規制壁36よりも上方へと延びており、その先端には、半環状のリンク部37の一端が連結している。リンク部37は、その他端が内側フランジ部24の上面に連結し、第1規制壁35、脚部14、内側フランジ部24とともに、閉環状の第1リング部38を形成している。
【0031】
図1〜3に示すように、バンパ結合部材12は、胴部41と、胴部41に設けられた一対の固定爪42とを主要構成要素とする。胴部41は、略直方体に形成され、上下方向に貫通する貫通孔44を備えている。貫通孔44の横断面は、矩形状を呈する。換言すると、胴部41は、上下両端が開口した四角筒形状に形成されている。図1に示す状態を基準として、胴部41の前側および後側に位置し、互いに平行に対向する側壁部を第1側壁部46および第2側壁部47とし、第1側壁部46および第2側壁部47の左端どうしを連結する側壁部を第3側壁部48とし、第1側壁部46および第2側壁部47の右端どうしを連結する側壁部を第4側壁部49とする。
【0032】
各固定爪42は、胴部41の第1側壁部46および第2側壁部47の互いに対向する面の左右方向における中間部から貫通孔44の内方へと突出した基端部51と、基端部51の先端から上方へと向けて突出する柱状部52と、各柱状部52の先端部から互いに近接する方向に突出した爪部53とを備えている。各基端部51の左右方向における中間部には、肉盗み部54が凹設されている。
【0033】
爪部53は、柱状部52の先端側に進むほど柱状部52からの突出量が大きくなる傾斜面55を備え、傾斜面55の先端側に柱状部52の突出方向と概ね直交する逆止面56を備えている。また、傾斜面55および逆止面56の左右両側には、傾斜面55および逆止面56の左右方向における中間部に進むほど柱状部52からの突出量が大きくなる傾斜面57,57が形成されている。
【0034】
各基端部51の対向面間および各柱状部52の対向面間は、所定の距離離間しており、各爪部53の突出端間の距離は、各柱状部52の対向面間距離よりも短くなっている。各柱状部52は、可撓性を有し、所定の外力が加わったときに傾倒可能になっている。各柱状部52が傾倒することによって、各爪部53は前後方向に変位し、突出端間距離が変化する。
【0035】
胴部41の第1側壁部46および第2側壁部47には、固定爪42の左右側に、胴部41の外面と内面(貫通孔44の孔壁)とを連通する連結孔58がそれぞれ2つずつ形成されている。第4側壁部49の外面には、凸部67が形成されている。
【0036】
胴部41の第3側壁部48の外面には、平面視においてコ字状を呈するリンク部61が形成されている(図2参照)。リンク部61は、第3側壁部48の前側部分から左方に突出する棒状の第1部分62と、第3側壁部48の後側部分から左方に突出する棒状の第2部分63と、第1部分62と第2部分63との先端どうしを連結する第3部分64と備えている。図1〜図3に示す状態において、第2部分63と第3部分64とは上下方向において同一の高さに存在し、第1部分62は第3部分64よりも上下方向において下方に位置し、段違いに結合している。リンク部61は、第3側壁部48とともに閉環状の第2リング部66を形成する。第2リング部66は、第1リング部38と連鎖している。
【0037】
パネル結合部材11およびバンパ結合部材12は、スライド型を用いて同時に成形され、第1リング部38と第2リング部66とが連鎖した図1〜図3に示す形態に当初より成形される。
【0038】
次に、パネル結合部材11とバンパ結合部材12とを組み立てて形成するバンパクリップ10の組立形態について説明する。図1および図3に示すように、バンパ結合部材12をパネル結合部材11に対して矢印150の方向に回動させ、胴部41の固定爪42が突出する側の端面を、脚部14の上端面に当接させる。このとき、2つの固定爪42が受容孔21内に挿入されるとともに、4つの連結爪16が貫通孔44内に挿入される。
【0039】
連結爪16が貫通孔44内に進入するときには、各爪部32が貫通孔44の孔壁に摺接し、柱状部31が弾性変形して貫通孔44の内方へと傾倒する。図4に示すように、連結爪16の貫通孔44に対する進入が進み、爪部32が連結孔58に到達すると、柱状部31は弾性力によって初期状態に復帰し、爪部32が連結孔58内に突入する。これにより、爪部32の逆止面が連結孔58の孔壁に係止され、バンパ結合部材12のパネル結合部材11からの抜去が阻止される。なお、この状態の連結爪16と連結孔58との係合力は比較的弱く、所定の抜去力がバンパ結合部材12およびパネル結合部材11に加わった際には、柱状部31が傾倒して爪部32が連結孔58から離脱する。
【0040】
図5に示すように、バンパ結合部材12は、第3側壁部48が第1規制壁35に当接し、第4側壁部49が第2規制壁36に当接することによって、パネル結合部材11に対して左右方向において所定の位置に配置される。また、バンパ結合部材12は、凸部67が第2規制壁36のコ字状部の内部に保持されること、および4つの連結爪16の柱状部31の側部が貫通孔44の孔壁に当接することによって、パネル結合部材11に対して前後方向において所定の位置に配置される。
【0041】
バンパ結合部材12がパネル結合部材11に対して所定の位置に配置された状態(バンパクリップ10の組立形態)において、固定爪42は左右方向において、拡幅部22に対応する位置に配置される(図7参照)。これにより、2つの固定爪42は、受容孔21の内部において、互いに離間する方向に変位(傾倒)可能になっている。
【0042】
<バンパクリップを用いた車体パネルとバンパとの取付方法および取付構造>
次に、バンパクリップ10を用いて、車体パネル100にバンパ110を取り付ける方法およびその取付構造について説明する。図6に示すように、板状の車体パネル100には、長方形の貫通孔である取付孔101が形成されている。バンパ110の裏面側には、突片111が突設されている。突片111は、平板状の中央部112と、中央部112の両側部に中央部112と直交するように設けられた2つの平板状の側部113を有し、H型の断面形状を呈する。中央部112の先端部には、突片111の突出方向と略直交する向きの軸線を有する長方形の貫通孔である係止孔114が形成されている。
【0043】
最初に、図7に示すように、バンパクリップ10の脚部14が、車体パネル100の取付孔101に挿入される。このとき、係止爪17の爪部28は、基部27が弾性変形することによって、取付孔101を通過し、取付孔101を通過した後は取付孔101の周縁部に引っ掛かる。爪部28と取付孔101との引っ掛かり状態は、基部27の付勢力によって維持される。これにより、バンパクリップ10が車体パネル100に取り付けられる。
【0044】
脚部14の取付孔101に対する挿入が完了した状態で、外側フランジ部25は弾性変形して車体パネル100の表面(上面)に密着する。これにより、フランジ部15は、取付孔101を封止し、液体が取付孔101を通過することを防止する。また、外側フランジ部25は、車体パネル100を下方へと付勢し、係止爪17の爪部28との間に車体パネル100を挟持する。これにより、パネル結合部材11と車体パネル100とのガタつきが防止される。
【0045】
続いて、バンパクリップ10の貫通孔44および受容孔21内に、バンパ110の突片111が挿入される。突片111は、貫通孔44に対して左右方向における概ね中間部に、かつ突片111の中央部112が左右方向に延在するように挿入される。これにより、図9に示すように、左右方向において、突片111の中央部112は固定爪42に対応する位置に配置され、それぞれの側部113は連結爪16に対応する位置に配置される。
【0046】
中央部112の板厚は、両固定爪42の柱状部52間の距離よりも小さく、かつ両爪部53の突出端間距離よりも大きく形成されている。これにより、中央部112は、固定爪42の柱状部52間に挿入可能になっている。突片111の貫通孔44および受容孔21への挿入が進むと、固定爪42の爪部53は中央部112に押圧され、柱状部52が拡幅部22内へと傾倒する。図8に示すように、中央部112の先端部がリブ23に当接した時点で、突片111の貫通孔44および受容孔21への挿入が完了する。この状態では、図10および図11に示すように、爪部53は、係止孔114内に突入し、柱状部52は弾性によって初期の状態に復帰する。また、係止孔114の孔壁が爪部53の逆止面56と相対し、突片111の貫通孔44および受容孔21からの抜去が阻止される。
【0047】
突片111の側部113の前後方向における幅は、側部113が貫通孔44および受容孔21の前後方向における対向する内壁に同時に摺接可能な大きさに形成されている。すなわち、突片111の側部113の前後方向における幅は、貫通孔44および受容孔21の前後方向における幅と概ね同一に形成されている。これにより、側部113と貫通孔44および受容孔21との前後方向におけるガタが小さくなり、突片111はバンパクリップ10に安定した状態で固定される。また、図12に示すように、側部113は連結爪16の柱状部31の背部に当接し、柱状部31の傾倒を阻止する。これにより、連結爪16の爪部32は、連結孔58の孔壁に係止された状態に維持され、パネル結合部材11とバンパ結合部材12との分離が阻止される。以上のようにして、バンパクリップ10は、車体パネル100と、バンパ110とを連結する。
【0048】
次に、バンパ110をバンパクリップ10から分離する(突片111をバンパクリップ10から抜去する)方法について説明する。最初に、突片111をバンパクリップ10に対して、右方にスライド移動させる。この操作は、車体パネル100に対してバンパ110を右方にスライド移動させる等によって行われる。
【0049】
突片111がバンパクリップ10に対して右方へスライド移動するとき、係止孔114の周縁部は、固定爪42の爪部53の左側部に形成された傾斜面57に当接する。傾斜面57は、突片111の右方への移動を、爪部53の係止孔114から離脱する方向への運動に変換するカムとして機能する。突片111の右方への移動に伴って、柱状部52が傾倒し、拡幅部22内へと変位する。図14および図15に示すように、突片111の右方への移動が進むと、爪部53は係止孔114から完全に離脱し、爪部53の突出端が中央部112の前後側面に当接した状態となる。この状態では、爪部53の逆止面56と、係止孔114との係止状態が解除されているため、突片111を貫通孔44および受容孔21から抜き出すことができる。これにより、バンパ110を車体パネル100およびバンパクリップ10から分離することができる。なお、突片111をバンパクリップ10に対して、左方にスライド移動させても、爪部53を係止孔114から離脱させることができる。
【0050】
<バンパクリップの作用効果>
連結爪16を受容孔21の外部に形成し、有底孔である受容孔21の孔壁部に、有底凹部や凸部を設けない構造としたため、受容孔21の内部の成形が容易である。すなわち、受容孔21の内部を形成するために、スライド型を用いる必要がなく、成形型を簡素化することができる。なお、受容孔21は拡幅部22を備えるが、拡幅部22は凹形状が受容孔21の開口端まで連続しているため、拡幅部22を形成するためにスライド型を使用する必要がない。
【0051】
また、バンパクリップ10は、突片111をバンパクリップ10に対して挿入方向と概ね直交する方向にスライド移動させるだけで、突片111との係合を解除することができ、取り外しが容易である。また、パネル結合部材11とバンパ結合部材12との分離は、突片111が貫通孔44に挿入されていない状態では、比較的容易に行うことができる。
【0052】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、固定爪42の爪部53の左右側部に傾斜面57を形成したが、係止孔114の周縁部の左右側に位置する部分に傾斜面を形成し、突片111が左右方向にスライド移動する際に爪部53を係止孔114の外部に導くようにしてもよい。また、実施形態では、連結爪16が係止される連結部として連結孔58を形成したが、連結爪16の先端が貫通孔44外方まで突出するようにし、連結爪16の爪部32が貫通孔44の開口端周縁部に係止されるようにしてもよい。実施形態では、本発明の取付具を、バンパを車体パネルに取り付けるためのバンパクリップに適用した例について説明したが、本発明の取付具は、取付部材に取付孔が形成され、被取付部材に係止孔が形成された突片が設けられている限り、様々な取付部材および被取付部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…バンパクリップ(取付具)、11…パネル結合部材(第1部材)、12…バンパ結合部材(第2部材)、14…脚部、15…フランジ部、16…連結爪、17…係止爪、21…受容孔、24…内側フランジ部、25…外側フランジ部、37…リンク部、38…第1リング部、41…胴部、42…固定爪、44…貫通孔、53…爪部、57…傾斜面、58…連結孔(連結係合部)、61…リンク部、66…第2リング部、100…車体パネル(取付部材)、101…取付孔、110…バンパ(被取付部材)、111…突片、112…中央部、113…側部、114…係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を備えた取付部材に、突出方向と略直交する向きの軸線を有する係止孔が形成された突片を備えた被取付部材を取り付ける取付具であって、
基端部から先端部へと延びる脚部と、前記脚部の前記基端部に設けられ前記脚部の外方へと突出するフランジ部と、前記脚部の前記基端部から前記先端部側と相反する方向に突設された傾倒可能な連結爪とを備えた第1部材と、
貫通孔および当該貫通孔に近接して前記連結爪が係合する連結係合部が形成された胴部と、前記胴部に突設された固定爪とを備えた第2部材と
を有し、
前記連結爪は、前記貫通孔に挿入されて前記連結係合部に係合し、前記第1部材および前記第2部材を互いに連結し、
前記脚部は、前記先端部から前記取付孔に挿入されて前記取付孔に係合し、
前記フランジ部は、前記脚部が前記取付孔に挿入された状態で、前記取付孔の周縁部に係合し、
前記突片は、前記第1部材と前記第2部材とが連結された状態で、前記貫通孔に挿入され、前記固定爪と前記係止孔とが係合することによって前記第2部材に連結されるとともに、前記連結爪に当接して前記連結爪の傾倒を阻止し、前記連結爪と前記連結係合部との係合状態を維持することを特徴とする取付具。
【請求項2】
前記脚部は、前記第1部材と前記第2部材とが連結された状態で、前記貫通孔に対応する部分に前記突片を受容可能な受容孔を有し、
前記固定爪は、前記受容孔内へと延びていることを特徴とする、請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記突片が挿入された状態で、前記突片の挿入方向に直交する方向であり、かつ前記係止孔の軸線方向に直交する方向である所定のスライド方向に前記突片がスライド移動可能な大きさに形成されており、
前記突片が前記スライド方向に移動するときに当接する前記固定爪の側部および前記係止孔の周縁部の一方には傾斜面部が形成されており、前記突片が前記貫通孔に対して前記スライド方向に移動することによって、前記固定爪の側部および前記係止孔の周縁部の他方が前記傾斜面部に押圧され、前記固定爪が前記係止孔から離脱することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の取付具。
【請求項4】
前記受容孔は、前記脚部の基端部のみに開口していることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の取付具。
【請求項5】
前記フランジ部は、可撓性を有し、前記脚部が前記取付孔に挿入された状態で、前記取付孔の周縁部に密着し、前記取付孔を封止することを特徴とする、請求項4に記載の取付具。
【請求項6】
前記連結係合部は、前記胴部の外面から前記貫通孔へと連通していることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の取付具。
【請求項7】
前記第1部材は、第1リング部を備え、前記第2部材は、前記第1リング部に連鎖した第2リング部を備えることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の取付具。
【請求項8】
前記第1部材および前記第2部材は、所定の金型から同時に成形されることを特徴とする、請求項7に記載の取付具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−178340(P2011−178340A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46727(P2010−46727)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】