説明

取付部材の取付構造

【課題】組付作業性を向上できる取付部材の取付構造を得る。
【解決手段】スパッツ10に形成した係止突起20の係止部24が、フェンダーライナー12に形成された係止孔36の第2スリット43の両縁部32Bに係止されることで、フェンダーライナー12にスパッツ10を仮止めすることができ、組付作業性が向上するようになっている。また、スパッツ10の係止突起20が挿入されたフェンダーライナー12の係止孔36に第1スリット42側からクリップ44を挿入することで、クリップ44の係止爪46が、フェンダーライナー12の縦壁部30における第1スリット42の上側周縁部30Aに係合することで、クリップ44によって、係止突起20が係止孔36から脱落するのを防止できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に取付部材をクリップによって取付ける取付部材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、取付部材の取付構造としては、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、2つの部材のフランジを互いに重ね合わせた状態で、二股クリップによって連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用登録2515897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、一方の部材のフランジに突出形成した門方突起を、他方の部材のフランジに形成した貫通孔に下方側から挿入し、貫通孔を貫通した門方突起に二股クリップの一端部を挿入することで、2つの部材のフランジを重合状態に保持している。このため、組付作業時には、門方突起が貫通孔から抜け、下方側の部材である取付部材が落下しないように、作業者は、取付部材を保持した状態でクリップを組み付ける必要がある。この結果、組付作業が困難な場合がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、組付作業性を向上できる取付部材の取付構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の取付部材の取付構造は、取付部材を取付ける取付壁部と、前記取付壁部に屈曲部によって連続する連続壁部と、を有し、前記連続壁部に前記屈曲部に沿って形成された第1スリットと、前記取付壁部に形成され一端が前記第1スリットと連通する第2スリットと、を備えた係止孔が形成された被取付部材と、前記取付部材に設けられ、脚部が前記第1スリット側から前記第2スリットへ挿入されることで、係止部が前記取付壁部に係止される係止突起と、前記係止突起が挿入された前記係止孔に、前記第1スリット側から挿入されることで、前記係止突起が前記係止孔から脱落するのを防止するためのクリップと、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明の取付部材の取付構造では、取付部材を取付ける取付壁部と、取付壁部に屈曲部によって連続する連続壁部と、を有する被取付部材に係止孔が形成されている。また、係止孔は連続壁部の屈曲部に沿って形成された第1スリットと、取付壁部に形成され一端が第1スリットと連通する第2スリットと、を備えている。このため、この係止孔の第1スリット側から第2スリットへ、取付部材に突出形成された係止突起の脚部を挿入することで、係止突起の係止部が取付壁部に係止されるので、被取付部材に取付部材を仮止めすることができる。次に、取付部材の係止突起が挿入された被取付部材の係止孔に、クリップを第1スリット側から挿入することで、係止突起が係止孔から脱落するのを防止できる。このように、被取付部材への取付部材の組付作業時に、取付部材の係止突起が被取付部材の取付壁部に係止されるため、作業者が取付部材を落下しないように保持する必要がないので組付作業性が向上する。
【0008】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載の取付部材の取付構造において、前記第2スリットは前記第1スリットの長手方向中央部に連通されていると共に、前記係止突起の係止部は前記第2スリットの両縁部に係止される。
【0009】
請求項2記載の本発明の取付部材の取付構造では、第1スリットの長手方向中央部に第2スリットが連通されており、取付部材に形成した係止突起の係止部を、被取付部材に形成した第2スリットの両縁部で係止することができるので、取付部材の被取付部材への係止が安定する。
【0010】
請求項3記載の本発明は請求項1または請求項2に記載の取付部材の取付構造において、前記クリップは、前記第1スリットの周縁部に係合して前記係止突起が前記係止孔から脱落するのを防止するための弾性変形可能な係止爪を有する。
【0011】
請求項3記載の本発明の取付部材の取付構造では、クリップが有する弾性変形可能な係止爪が、第1スリットの周縁部に係合して係止突起が係止孔から脱落するのを防止する。このため、外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0012】
請求項4記載の本発明は請求項3に記載の取付部材の取付構造において、前記係止爪は、前記取付部材の高さ方向に弾性変形すると共に、前記第1スリットの長手方向中央部の周縁部に係止される係止面を有する。
【0013】
請求項4記載の本発明の取付部材の取付構造では、クリップに形成された弾性変形可能な係止爪が取付部材の高さ方向に弾性変形すると共に、係止爪の係止面が、第1スリットの長手方向中央部の周縁部に係合して係止突起が係止孔から脱落するのを防止する。このため、係止爪が第1スリットに確実に係止され、外力、特に車体上下方向の外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項3に記載の取付部材の取付構造において、前記係止爪は、前記取付部材の幅方向に弾性変形すると共に、前記第1スリットの長手方向端部の周縁部に係止される係止面を有する。
【0015】
請求項5記載の本発明の取付部材の取付構造では、クリップに形成された弾性変形可能な係止爪が取付部材の幅方向に弾性変形すると共に、係止爪の係止面が、第1スリットの長手方向端部の周縁部に係合して係止突起が係止孔から脱落するのを防止する。このため、係止爪が取付壁部に確実に係止され、外力、特に車幅方向の外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0016】
請求項6記載の本発明は請求項1〜5の何れか1項に記載の取付部材の取付構造において、前記クリップと前記係止突起とが一体成型されている。
【0017】
請求項6記載の本発明の取付部材の取付構造では、クリップと係止突起とが一体成型されているため、部品点数を少なくすることができる。また、組付工数も減るので組付作業性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、組付作業性を向上できる。
【0019】
請求項2に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、取付部材の被取付部材への係止が安定する。
【0020】
請求項3に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0021】
請求項4に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0022】
請求項5に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、外力によって取付部材が被取付部材から外れるのを防止できる。
【0023】
請求項6に記載の本発明の取付部材の取付構造は、上記構成としたので、部品点数を少なくすることができると共に、組付作業性をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る取付部材の取付構造を示す斜視図である。
【図3】図2の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る取付部材の取付構造を示す斜視図である。
【図6】図5の6−6断面線に沿った拡大断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る取付部材の取付構造を示す斜視図である。
【図9】図8の9−9断面線に沿った拡大断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る取付部材の取付構造を示す斜視図である。
【図12】図11の12−12断面線に沿った拡大断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係る取付部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
次に、本発明の取付部材の取付構造の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印Wは車幅方向を示す。
【0026】
(取付部材)
図3に示すように、取付部材の一例としてのスパッツ10は、車両のフロントタイヤ11を覆うフロントタイヤハウスのフェンダ内側に装着された被取付部材の一例としてのフェンダーライナー12の前方下部に、路面100と間隔を開けて取付けられている。なお、スパッツ10は、車両のリヤタイヤを覆うリヤタイヤハウスのフェンダ内側に装着されたフェンダーライナーに取付けてもよい。
【0027】
図1に示すように、スパッツ10はタイヤハウス内への空気の侵入を抑制する平板状の本体部14と、本体部14の上端に設けられた平板状の取付部16とを備えている。また、スパッツ10の本体部14は鉛直方向に延設されており、スパッツ10の取付部16は車体前方に向かって延設されている。
【0028】
スパッツ10の取付部16の上面16Aには、係止突起20が突出形成されている。係止突起20は車幅方向に所定の間隔で複数個、例えば2個形成されている。係止突起20は取付部16の上面16Aにおける後部に形成されており、係止突起20の後端20Aと、取付部16の後端とが一致している。また、係止突起20の先端20Bは、取付部16の前後方向中間部に達しており、取付部16の前端16Bから車体後方へ離間した位置となっている。
【0029】
係止突起20は、取付部16の上面16Aから上方へ立設された脚部22と、脚部22の上端から係止突起20の幅方向(図中W方向)両側へ延設された一対の係止部24と、を有している。
【0030】
(被取付部材)
フェンダーライナー12における連続壁部としての縦壁部30の下端には、車体前方へ向かって取付壁部としての水平壁部32が形成されており、縦壁部30と水平壁部32とが連結する部分が屈曲部34となっている。また、フェンダーライナー12には、係止孔36が形成されている。係止孔36は車幅方向に所定の間隔で複数個、例えば2個形成されており、スパッツ10の係止突起20の位置と対応している。係止孔36は、フェンダーライナー12の縦壁部30に屈曲部34に沿って形成された第1スリット42と、フェンダーライナー12の水平壁部32に形成され、車体前後方向に沿った後端が第1スリット42と連通する第2スリット43と、を備えている。
【0031】
より具体的に説明すると、第1スリット42は、フェンダーライナー12の屈曲部34に沿って、車幅方向へ直線状に形成されている。一方、第2スリット43は第1スリット42の長手方向中央部から垂直に、車体前方へ向かって延びており、第2スリット43と第1スリット42とは連通している。
【0032】
スパッツ10の係止突起20は、フェンダーライナー12の係止孔36の第1スリット42側となる車体後方側から車体前方(図1の矢印A方向)へ向かって挿入可能となっている。また、スパッツ10の係止突起20をフェンダーライナー12の係止孔36に挿入すると、係止突起20の一対の係止部24が、フェンダーライナー12の水平壁部32における第2スリット43の両縁部32Bに係止されるようになっている。このため、スパッツ10は、取付部16の上面16Aを、フェンダーライナー12の水平壁部32の下面32Aに重ねた状態で、フェンダーライナー12に仮止めされ、下方へ落下しないようになっている。
【0033】
(クリップ)
図1及び図2に示すように、クリップ44は係止突起20が挿入された係止孔36に、第1スリット42側から図1の矢印A方向へ挿入されることで、係止突起20が係止孔36から脱落するのを防止している。
【0034】
より具体的に説明すると、クリップ44は、車体前方から見た形状が、上壁部44Aと下壁部44Bとの幅方向(図中W方向)中央部を連結する連結壁部44Cを備えたエ字状となっている。また、クリップ44は上壁部44Aの後端、下壁部44Bの後端、及び連結壁部44Cの後端を連結する縦壁部44Dを備えている。さらに、クリップ44の上壁部44Aの後部における幅方向中央には、弾性変形可能な係止爪46が上方へ向かって突出形成されている。
【0035】
図3に示すように、クリップ44の係止爪46は、前部が車体前方下側から車体後方上側に向かって傾斜した傾斜面46Aとなっている。また、傾斜面46Aの後端からは車体後方へ向かって水平面46Bが形成されており、水平面46Bの後端からは車体下方へ向かって係止面46Cが形成されている。
【0036】
従って、クリップ44の連結壁部44Cを係止孔36の第2スリット43に合わせ、クリップ44の上壁部44Aを係止孔36の第1スリット42に合わせることで、クリップ44は、フェンダーライナー12の係止孔36に、第1スリット42側となる車体後方側から車体前方(図3に矢印A方向)へ挿入可能となっている。また、クリップ44をフェンダーライナー12の係止孔36に挿入すると、クリップ44の係止爪46の傾斜部46Aが、フェンダーライナー12の縦壁部30における係止孔36の第1スリット42の上側周縁部30Aと摺動し、係止爪46が一旦下方へ弾性変形し、その後復帰することで、係止爪46の係止面46Cが、フェンダーライナー12の縦壁部30における第1スリット42の長手方向(車幅方向)中央部の車体前方の上側周縁部30Aに係合するようになっている。
【0037】
また、クリップ44の上壁部44Aの先端と連結壁部44Cの先端とが、係止突起20の後端20Aに当接し、クリップ44の下壁部44Bの先端が、スパッツ10の本体部14における後面14Aの上端部14Bに当接するようになっている。
【0038】
(作用・効果)
次に本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、図1に示すように、フェンダーライナー12がスパッツ10を取付ける水平壁部32と、水平壁部32に屈曲部34によって連続する縦壁部30と、を備えていると共に、フェンダーライナー12に係止孔36が形成されている。また、係止孔36がフェンダーライナー12の縦壁部30に屈曲部34に沿って形成された第1スリット42と、フェンダーライナー12の水平壁部32に形成され、第1スリット42と連通する第2スリット43と、を備えている。
【0039】
このため、スパッツ10の取付部16の上面16Aに突出形成された係止突起20を、フェンダーライナー12に形成した係止孔36に第1スリット42側から第2スリット43へ図1の矢印A方向に挿入することで、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の水平壁部32に係止される。このため、フェンダーライナー12にスパッツ10を仮止めすることができる。
【0040】
次に、クリップ44を、スパッツ10の係止突起20が挿入されたフェンダーライナー12の係止孔36に第1スリット42側から図1の矢印A方向に挿入することで、図3に示すように、クリップ44の係止爪46の傾斜部46Aが、係止孔36の第1スリット42と摺動し、係止爪46が一旦下方(スパッツ10の高さ方向)へ弾性変形し、その後復帰することで、係止爪46の係止面46Cが、第1スリット42の長手方向中央部の車体前方の上側周縁部30Aに係合する。また、クリップ44の上壁部44Aの先端と連結壁部44Cの先端とが、係止突起20の後端20Aに当接し、クリップ44の下壁部44Bの先端が、スパッツ10の本体部14における後面14Aの上端部14Bに当接する。この結果、スパッツ10によって、係止突起20が係止孔36から脱落するのを防止できる。
【0041】
このように、本実施形態では、スパッツ10のフェンダーライナー12への組付作業時に、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の水平壁部32に係止されるため、フェンダーライナー12にスパッツ10を仮止することができる。この結果、スパッツ10のフェンダーライナー12への組付作業時に、作業者がスパッツ10を落下しないように保持する必要がないので、クリップ44を容易に組み付けることができ、組付作業性が向上する。
【0042】
また、本実施形態では、フェンダーライナー12の屈曲部34に沿って形成された係止孔36の第1スリット42の長手方向中央部から第2スリット43が車体前方へ向かって垂直に延びており、スパッツ10に形成した係止突起20の一対の係止部24を、フェンダーライナー12に形成した第2スリット43の両縁部32Bで係止することができる。このため、スパッツ10の係止が安定する。
【0043】
また、本実施形態では、クリップ44に形成された弾性変形可能な係止爪46が、スパッツ10の高さ方向に弾性変形して、係止面46Cが第1スリット42の長手方向中央部の車体前方の上側周縁部30Aに係合することで、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の係止孔36から脱落するのを防止する。このため、風等の外力、特に車体上下方向の外力によってスパッツ10がフェンダーライナー12から外れるのを防止できる。また、スパッツ10が車体前方からの風圧を受けた場合に、スパッツ10に作用する荷重を、クリップ44を介してフェンダーライナー12の縦壁部30で支持することができる。
【0044】
また、本実施形態では、フェンダーライナー12の水平壁部32にスパッツ10を取付けるための補強用金属ブラケットを使用しない。このため、コストダウン、軽量化、作業工数削減が可能になる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の取付部材の取付構造の第2実施形態を図4〜図6に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態では、クリップ50が第1実施形態のクリップ44と異なる形状となっている。
【0046】
図5及び図6に示すように、クリップ50はスパッツ10の係止突起20が挿入された係止孔36に、第1スリット42側となる車体後方側から車体前方(図6の矢印A方向)へ向かって挿入されることで、係止突起20が係止孔36から脱落するのを防止している。
【0047】
図4に示すように、クリップ50は、車体前方から見た形状が、上壁部50A、下壁部50B及び上壁部50Aと下壁部50Bとの幅方向(図中W方向)中央部を連結する連結壁部50Cを備えたエ字状となっている。また、クリップ50は、連結壁部50Cの後端と下壁部50Bの後端とを連結する縦壁部50Dを備えている。さらに、クリップ50の上壁部50Aには、クリップ50の幅方向(図中W方向)の両端部外側方向(スパッツ10の幅方向)へ向かって弾性変形可能な左右一対の係止爪52が突出形成されている。
【0048】
クリップ50の係止爪52は、車体前方から車体後方に向かってクリップ50の幅方向外側へ傾斜した傾斜面52Aとなっている。また、傾斜面52Aの後端からはクリップ50の幅方向内側へ向かって係止面52Bが形成され、係止面52Bのクリップ50の幅方向内側端からは車体後方へ向かって凸部52Cが形成されている。
【0049】
従って、クリップ50の連結壁部50Cを係止孔36の第2スリット43に合わせ、クリップ50の上壁部50Aを係止孔36の第1スリット42に合わせることで、クリップ50は、フェンダーライナー12の係止孔36に、第1スリット42側のとなる車体後方側から車体前方(図4の矢印A方向)へ向かって挿入可能となっている。また、クリップ50をフェンダーライナー12の係止孔36に挿入すると、クリップ50の係止爪52の傾斜部52Aが、フェンダーライナー12の縦壁部30における係止孔36の第1スリット42の長手方向の両端部の周縁部30Bと摺動し、係止爪52が一旦、クリップ50の幅方向内側へ弾性変形し、その後復帰することで、係止爪52の係止面52Bが、フェンダーライナー12の縦壁部30における係止孔36の第1スリット42の長手方向の両端部の周縁部30Bに係合するようになっている。
【0050】
また、図6に示すように、クリップ50の上壁部50Aの先端と連結壁部50Cの先端とが、係止突起20の後端20Aに当接し、クリップ50の下壁部50Bの先端が、スパッツ10の本体部14における後面14Aの上端部14Bに当接するようになっている。
【0051】
(作用・効果)
次に本実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、スパッツ10のフェンダーライナー12への組付作業時に、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の水平壁部32に係止されるため、フェンダーライナー12にスパッツ10を仮止することができる。この結果、作業者がスパッツ10を落下しないように保持する必要がないので、クリップ50を容易に組み付けることができ、組付作業性が向上する。また、スパッツ10に形成した係止突起20の一対の係止部24を、フェンダーライナー12に形成した係止孔36の第2スリット43の両縁部32Bで係止することができるので、スパッツ10の係止が安定する。
【0052】
また、本実施形態では、クリップ50に形成された弾性変形可能な係止爪52がスパッツ10の幅方向へ弾性変形し、係止面52Bがフェンダーライナー12の縦壁部30における係止孔36の第1スリット42の長手方向の両端部の周縁部30Bに係合することで、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の係止孔36から脱落するのを防止する。このため、風等の外力、特に車幅方向の外力によってスパッツ10がフェンダーライナー12から外れるのを防止できる。また、スパッツ10が車体前方からの風圧を受けた場合に、スパッツ10に作用する荷重を、クリップ50を介してフェンダーライナー12の縦壁部30で支持することができる。
【0053】
また、本実施形態では、フェンダーライナー12の水平壁部32にスパッツ10を取付けるための補強用金属ブラケットを使用しない。このため、コストダウン、軽量化、作業工数削減が可能になる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の取付部材の取付構造の第3実施形態を図7〜9に従って説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態では、スパッツ10を取付けるフェンダーライナー12の前方下部の形状が第1実施形態と異なっている。
【0055】
具体的には、フェンダーライナー12における取付壁部としての水平壁部32の前端部に、車体上方へ向かって連続壁部としての前縦壁部60が形成されており、前縦壁部60と水平壁部32とが連結する部分が屈曲部62となっている。なお、前縦壁部60の上端部には車体前方へ向かってフランジ63が形成されている。また、フェンダーライナー12の係止孔36は、フェンダーライナー12の前縦壁部60に屈曲部62に沿って形成された第1スリット42と、水平壁部32に形成され、車体前後方向に沿った前端が第1スリット42と連通する第2スリット43と、を備えている。
【0056】
なお、本実施形態では、係止突起20の車体前後方向に沿った長さL1が、スパッツ10の取付部16の上面16Aの車体前後方向に沿った長さL2と一致している。
【0057】
スパッツ10の係止突起20は、フェンダーライナー12の係止孔36に、第1スリット42側となる車体前方側から車体後方(図7の矢印B方向)へ向かって挿入可能となっている。また、スパッツ10の係止突起20をフェンダーライナー12の係止孔36に挿入すると、図8に示すように、係止突起20の一対の係止部24が、フェンダーライナー12の水平壁部32における第2スリット43の両縁部32Bに係止されるようになっている。このため、スパッツ10は、取付部16の上面16Aを、フェンダーライナー12の水平壁部32の下面32Aに重ねた状態で、フェンダーライナー12に仮止めされ、下方へ落下しないようになっている。
【0058】
(作用・効果)
従って、本実施形態では、第1実施形態と同様に、スパッツ10のフェンダーライナー12への組付作業性を向上できる。また、スパッツ10の係止突起20が挿入されたフェンダーライナー12の係止孔36に、クリップ44を第1スリット42側となる車体前方側から車体後方(図7の矢印B方向)へ向かって挿入することで、図9に示すように、クリップ44の係止爪46の傾斜部46Aが、フェンダーライナー12の前縦壁部60における係止孔36の第1スリット42の上側周縁部60Aと摺動し、係止爪46が一旦下方(スパッツ10の高さ方向)へ弾性変形し、その後復帰することで、係止爪46の係止面46Cが、フェンダーライナー12の前縦壁部60における第1スリット42の長手方向(車幅方向)中央部の車体後方の上側周縁部60Aに係合する。また、クリップ44の上壁部44Aの先端と連結壁部44Cの先端とが、係止突起20の先端20Bに当接し、クリップ44の下壁部44Bの先端が、スパッツ10の取付部16の前端16Bに当接する。このため、スパッツ10によって、係止突起20が係止孔36から脱落するのを防止できる。この結果、風等の外力、特に車体上下方向の外力によってスパッツ10がフェンダーライナー12から外れるのを防止できる。また、スパッツ10が車体前方からの風圧を受けた場合に、スパッツ10に作用する荷重を、フェンダーライナー12の水平壁部32で直接支持することができる。
【0059】
また、本実施形態では、スパッツ10の取付部位の車体前方側に十分な作業スペースを確保可能な車体に本実施形態の構成を適用することで、作業性がさらに向上する。
【0060】
(第4実施形態)
次に、本発明の取付部材の取付構造の第4実施形態を図10〜12に従って説明する。
なお、第3実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、本実施形態では、第3実施形態のクリップ44に代えて、第2実施形態のクリップ50を使用している。
【0062】
従って、本実施形態では、第2実施形態と同様に、スパッツ10のフェンダーライナー12への組付作業性を向上できる。また、スパッツ10の係止突起20が挿入されたフェンダーライナー12の係止孔36に、クリップ50を第1スリット42側となる車体前方側から車体後方(図10の矢印B方向)へ向かって挿入することで、図11に示すように、クリップ50に形成された弾性変形可能な係止爪52が一旦下方(スパッツ10の幅方向)へ弾性変形する。その後、係止爪52が復帰することで、係止爪52の係止面52Bが、フェンダーライナー12の前縦壁部60における係止孔36の第1スリット42の長手方向両端部の周縁部60Bに車体後方側から係合して、スパッツ10の係止突起20が、フェンダーライナー12の係止孔36から脱落するのを防止する。このため、風等の外力、特に車幅方向の外力によってスパッツ10がフェンダーライナー12から外れるのを防止できる。また、スパッツ10が車体前方からの風圧を受けた場合に、スパッツ10に作用する荷重を、フェンダーライナー12の水平壁部32で直接支持することができる。
【0063】
また、本実施形態では、スパッツ10の取付部位の車体前方側に十分な作業スペースを確保可能な車体に本実施形態の構成を適用することで、作業性がさらに向上する。
【0064】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、図13に示す第5実施形態のように、スパッツ10がポリアセタール(POM)等の弾性体である場合には、係止突起20の後部(挿入側と反対側の部位)に、係止爪46を形成することで、係止突起とクリップとを一体成型した構成としてもよい。また、図14に示す第6実施形態のように、スパッツ10の係止突起20の前部(挿入側と反対側の部位)に、係止爪46を形成することで、係止突起とクリップとを一体成型した構成としてもよい。同様に、スパッツ10の係止突起20の挿入側と反対側の部位に係止爪52を形成することで、係止突起とクリップとを一体成型した構成としてもよい。そして、係止突起とクリップとを一体成型した構成とすることで部品点数を少なくすることができる。また、組付工数も減るので組付作業性がさらに向上する。
【0065】
また、上記各実施形態におけるクリップ44に設けた係止爪46と、クリップ50に設けた係止爪52との双方を設けたクリップを使用してもよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、取付部材の一例としてのスパッツ10を被取付部材の一例としてのフェンダーライナー12に取付る構成に本発明の取付部材の取付構造を適用したが、これに代えて、フェンダーライナー以外の被取付部材に、スパッツ以外の取付部材を取付ける取付部材の取付構造に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 スパッツ(取付部材)
12 フェンダーライナー(被取付部材)
14 スパッツの本体部
16 スパッツの取付部
20 係止突起
22 係止突起の脚部
24 係止突起の係止部
30 フェンダーライナーの縦壁部(連続壁部)
32 フェンダーライナーの水平壁部(取付壁部)
34 フェンダーライナーの屈曲部
36 係止孔
42 係止孔の第1スリット
43 係止孔の第2スリット
44 クリップ
46 クリップの係止爪
46C クリップの係止爪の係止面
50 クリップ
52 クリップの係止爪
52B クリップの係止爪の係止面
60 フェンダーライナーの前縦壁部(連続壁部)
62 フェンダーライナーの屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材を取付ける取付壁部と、前記取付壁部に屈曲部によって連続する連続壁部と、を有し、前記連続壁部に前記屈曲部に沿って形成された第1スリットと、前記取付壁部に形成され一端が前記第1スリットと連通する第2スリットと、を備えた係止孔が形成された被取付部材と、
前記取付部材に設けられ、脚部が前記第1スリット側から前記第2スリットへ挿入されることで、係止部が前記取付壁部に係止される係止突起と、
前記係止突起が挿入された前記係止孔に、前記第1スリット側から挿入されることで、前記係止突起が前記係止孔から脱落するのを防止するためのクリップと、
を有する取付部材の取付構造。
【請求項2】
前記第2スリットは前記第1スリットの長手方向中央部に連通されていると共に、前記係止突起の係止部は前記第2スリットの両縁部に係止される請求項1に記載の取付部材の取付構造。
【請求項3】
前記クリップは、前記第1スリットの周縁部に係合して前記係止突起が前記係止孔から脱落するのを防止するための弾性変形可能な係止爪を有する請求項1または請求項2に記載の取付部材の取付構造。
【請求項4】
前記係止爪は、前記取付部材の高さ方向に弾性変形すると共に、前記第1スリットの長手方向中央部の周縁部に係止される係止面を有する請求項3に記載の取付部材の取付構造。
【請求項5】
前記係止爪は、前記取付部材の幅方向に弾性変形すると共に、前記第1スリットの長手方向端部の周縁部に係止される係止面を有する請求項3に記載の取付部材の取付構造。
【請求項6】
前記クリップと前記係止突起とが一体成型されている請求項1〜5の何れか1項に記載の取付部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−189152(P2012−189152A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53495(P2011−53495)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】