説明

受信機およびその信号位相誤差補償方法

【課題】方法および光受信機が、受信機において光信号の位相の誤差を補償する。
【解決手段】各ブロックは、部分的に位相補償されたシンボルに基づいて復号され、ブロックの平均位相誤差が推定される。順方向位相補償および逆方向位相補償が、平均位相誤差に基づいてブロックに対して実行され、終了条件が満たされるまで、復号すること、推定すること、実行することを反復して、位相補償ブロックを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包括的には反復搬送波位相補償受信機に関し、より詳細には、コヒーレント光ファイバ通信における受信機の信号の位相誤差補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信リンクのデータ速度および伝送距離の両方を増大させたいという望みは、コヒーレントシグナリングの使用を促進してきた。従来、光通信システムは、単純なシグナリング方法の使用に頼ってデータビットを光搬送波上に符号化してきた。最も一般的なシグナリング方法は強度変調であり、強度変調では、ビット「1」を送信すべき場合、高強度光を光ファイバケーブルに入力するようにレーザがゲーティングされ、ビット「0」が送信される場合、低強度光を入力するようにレーザがゲーティングされる。これは、オンオフキーイングの形態であり、フォトダイオードおよび適切な閾値により容易に復調されるという利点を有する。
【0003】
オンオフキーイングの主な欠点は、情報が単一の次元でのみ送信されることにより、帯域幅効率が低いことである。他方、コヒーレントシグナリング技法では、レーザ光の強度および位相の両方を変調することにより、多次元信号の送信が可能である。
【0004】
図1は、従来技術によるコヒーレント光通信システムを示す。送信機100は、第1のレーザ光源(送信局所発振器TXLO)101を含み、このレーザ光源の出力は、一定の光ビームであるか、またはパルスカーバが用いられる場合には、パルストレインである。ビームは変調器102に入力され、変調器102は、データソース103に従って入力光ビームの振幅および位相の両方を変調する。送信機内のデータソースは通常、順方向誤り訂正(FEC)符号化器を含む。したがって、レーザと変調器との組み合わせは、任意の一般的な二次元デジタル変調フォーマット、たとえば、位相シフトキーイング(PSK)および直交振幅変調(QAM)を生成することが可能である。
【0005】
次元信号は、光チャネル104を通され、受信機105において検出され、復調される。コヒーレント受信機は、第2のレーザ光源(受信局所発振器RXLO)101’、光ハイブリッド復調器/光検出器(「コヒーレント検出器」と呼ばれる)106、および電気デジタル受信機107を含む。
【0006】
非理想的なレーザの影響を含め、いくつかの欠陥が、光通信リンクの性能に影響する。理想的なレーザ出力は、
【数1】

として表すことができる。式中、Ecw(t)は光搬送波であり、tは時間であり、
【数2】

は振幅であり、ωはラジアン単位の毎秒あたりの周波数であり、θは初期位相であり、eは光搬送波の偏光である。上記の理想的なレーザ出力からのずれは、自然放出される光子によるものであり、自然放出される光子は、強度および位相を変動させ、結果として
【数3】

として表すことができるレーザ出力を生じさせる。式中、δP(t)およびθns(t)は、強度および位相のそれぞれの雑音過程を表す。
【0007】
これらの過程は自然放出によるものであるため、正規分布ランダム過程として妥当にモデリングされる。位相雑音の影響は、光場の電力スペクトル密度を広げることである。したがって、レーザ出力はもはや、単一の周波数トーンの範囲内にとどまらず、通常、ローレンツ形スペクトルを有する。半値全幅(FWHM)帯域幅が、通常、「レーザ線幅」と呼ばれる。位相雑音θns(t)、言い換えるとレーザ線幅は、搬送波Ecw(t)の位相が、任意の二次元変調フォーマットをコヒーレントに復調する必要があるという点で、コヒーレントシステムにとって特に厄介である。
【0008】
ランダム搬送波位相θns(t)は、搬送波復元過程を損い、一般に、レーザ線幅が大きいほど、受信機が搬送波位相の変化を追跡することが難しい。コヒーレント受信機は、追加のレーザ101’を利用して、受信信号と混合する光搬送波の局所バージョンを生成する。このレーザの非理想的な線幅は、送信レーザの線幅の影響の度合いも増大させる。コヒーレントシステムにおけるレーザの通常の線幅要件は、約数十kHz〜数百kHzであるが、直接検出または差動直交位相シフトキーイング(QPSK)は、信号フォーマットが搬送波位相変化の影響を受けにくいため、線幅要件を数十MHzに大きく低減することができる。研究により、QPSKシステムが、250kHzの最大線幅を必要とし、16QAMシステムが6.9kHzの線幅を必要とすることが分かっている。
【0009】
レーザ線幅に加えて、受信信号は、色分散などの線形分散の影響並びに信号が光ファイバを横断する際の四波混合などの非線形の影響も受ける。通常の受信機は、電子信号処理を利用して、分散効果および非線形効果を低減する。したがって、電子信号処理技法を用いて、レーザ線幅効果も同様に補償することが望ましい。
【0010】
ゼロ平均位相雑音に加えて、搬送波周波数オフセット(CFO)ΔFが、温度変動、経年劣化、および他の減速効果(slow effect)により、2つの発振器の間に存在することがある。CFOは一般に、シンボルレートに関して非常に遅く、したがって、いくつかの送信シンボルにわたって一定であるとみなすことができる。CFOは、更なる位相誤差を加える。
【0011】
局所発振器(LO)の非ゼロの線幅Δvによって、結果として、或る受信シンボルr(n)から次のシンボルr(n+1)への位相雑音が生じ、この位相雑音は、
【数4】

により表される。式中、Tはシンボル持続時間であり、N(0,σ)は分散σを有するゼロ平均正規分布を示す。しかし、この発明において説明される方法では、位相雑音分布が正規である必要もゼロ平均である必要もない。
【0012】
k番目のシンボルの位相誤差は、
【数5】

により表すことができる。
【0013】
図2Aは、レーザ線幅が5MHzであり、シンボルレートが25GHzである場合の位相雑音のゼロ平均分布を示す。この分布は正規分布を近似し、位相雑音の大半は+/−6×10−3ラジアン内にある。
【0014】
図2Bは、初期シンボルの位相が0ラジアンである、100,000個のシンボルにわたる位相誤差を示す。この例では、累積位相誤差は0.8ラジアンである。明らかに、そのような高いLO線幅を有するコヒーレントシステムは、適切な位相補償なしでは適切に機能することができない。図2Bは、位相誤差が、CFOが存在する場合に増大することも示す。この例では、ΔF=50kHzである。
【0015】
位相誤差を制限するために、最も従来的なシステムは、非常に狭い線幅を有するLOを用いる。線幅要件は、変調方式にも関係するため、高いスペクトル効率を有する変調ほど、はるかに狭いLO線幅を必要とする。
【0016】
必要とされる性能を達成するために、従来のコヒーレント光システムは、局所発振器として、非常に狭い線幅を有するレーザ、通常、外部共振器型(external cavity)分布帰還形(DFB)レーザを用いる。これらのレーザは、数十kHz範囲内の線幅Δvを有するが、非常に高価であり、大きなフォームファクターおよび高い消費電力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
DFBレーザおよび垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)などの他の多くのレーザ源は、コストおよび電力がより効率的である。しかし、受信機の性能が線幅の増大に伴って急激に劣化するため、厳密な線幅要件により、これらの安価でよりエネルギー効率的なレーザをコヒーレントシステムに用いることができない。DFBレーザ、VCSEL、および調整可能なレーザの大半は、MHz範囲の線幅を有する。従来的な現在のコヒーレントシステムは、そのような大きな線幅では適切な性能で機能しない。
【0018】
したがって、線幅許容差が緩和されて、より低コストの、または調整可能な光源がコヒーレントシステムにおいて用いられることを可能にするコヒーレントシステムを設計することが望ましい。これは、システム全体のコストおよびエネルギー消費を大幅に低減する。調整可能なレーザは、柔軟性および再構成可能性もコヒーレントシステムに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の実施の形態1は、局所発振器(LO)、すなわち、レーザの非ゼロの線幅および搬送波周波数オフセットにより生じる位相誤差を補償することができ、線幅許容差を効率的に増大させるコヒーレント受信機および方法を提供する。この方法は、所与の線幅での伝送性能を向上し、またはより大きな線幅で同じ性能を達成することができる。
【0020】
受信機は、チャネル復号器に補助されて、受信シンボルブロックの位相誤差を推定し、位相誤差を反復的に補償する。受信シンボルの各ブロックは、等化され、位相の初期推定を用いて位相補償される。
【0021】
等化され位相補償されたシンボルブロックは、次に、復号器に供給され、情報ビットが生成される。復号された情報ビットを用いて、送信シンボルを再生成する。
【0022】
位相推定器は、受信シンボルと再生成された送信シンボルとを比較し、推定平均位相誤差を出力する。平均位相誤差推定を用いて、位相補償を次のブロックに対して適用し、そのブロックは、復号器により読み込まれて、更なる情報ビットが復号される。この補償プロセスは、受信信号全体が補償され、復号されるまで、反復して続けられる。
【0023】
この補償は、更新位相補償シンボルストリームも生成する。受信機は、この方法を一回、または複数の反復で実行することができる。各反復は、ブロックの位相推定を精緻化し、次の反復に用いられる位相補償ストリームを更新する。反復は、終了条件が満たされた場合、たとえば、一定数の反復に達するか、または復号情報ビットシーケンスが収束した場合に終了する。
【発明の効果】
【0024】
本明細書において説明される受信機は、位相誤差の大部分を効率的に除去することができ、したがって、システムが、送信機および受信機の両方において局所発振器の線幅に対してはるかに高い許容差を有することを可能にする。受信機は、伝送の全体性能を向上させることができ、かつ/またはより広い線幅を有する局所発振器を用いてシステムを構築して、コストを低減することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術によるコヒーレント光伝送システムの概略図である。
【図2A】従来技術による位相雑音分布のグラフである。
【図2B】受信シンボルの従来技術による位相誤差のグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1による位相補償方法のフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による非反復位相補償受信機の概略図である。
【図5】この発明の実施の形態1による反復位相補償受信機の概略図である。
【図6】この発明の実施の形態1による位相補償プロセスのデータフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
この説明では、以下の変数が定義され用いられる:
:l番目の反復後の位相補償された受信シンボルストリーム、
:元のストリーム、
:l番目の反復のk番目のシンボルブロック、
(n):n番目に受信された位相補償シンボル、
:インターリーバ/復号器への入力シンボルのk番目のブロック、
【数6】

:k番目のブロックの復号器情報ビット、
:送信シンボルのk番目のブロック、
【数7】

:推定送信シンボルのk番目のブロック、
【数8】

:l番目の反復におけるk番目のブロックの推定平均位相誤差。
【0027】
シンボルインデックスは、括弧内にあり、たとえば、r(n)である。上付き文字はステップインデックスとして用いられ、下付き文字は反復インデックスに用いられる。これらは、混乱の原因がない場合、明確にするために省かれることがある。太字フォントは、変数がベクトル/行列であることを示す。曲折アクセント記号(ハット)
【数9】

は、変数aが推定値であることを示す。
【0028】
図3は、この発明の実施の形態1による位相補償方法を示す。補償は、1つまたは複数の反復602で実行される。各反復は、複数のステップ601で構成される。ステップは、当該技術分野において既知のように、メモリおよび/または入出力インタフェースに接続された受信機のプロセッサで実行することができる。
【0029】
初めに、インデックスlおよびkが初期化される。次に、各ステップにおいて、受信機は、
a)受信し、部分的に位相補償されたいくつかのシンボルに基づいて、情報シンボルのk番目のブロックを復号し(610)、
b)平均位相誤差を推定し(611)、
c)シンボルのブロックに対して順方向位相補償を実行し(612)、
d)シンボルシーケンスのブロックに対して逆方向位相補償を実行する(613)。
【0030】
反復は、シンボルブロックの終了(630)時に完了する。プロセス全体は、終了条件が満たされた場合、たとえば、反復の所定の最大回数に達するか、または復号情報ビットシーケンスが収束した場合、終了する(640)。次に、受信機は、最後の反復の復号情報ビットシーケンスを出力する。
【0031】
図4は、非反復位相補償受信機の実施形態を示す。受信機は、等化器1001、順方向位相補償器(FCMP)1002、位相推定器(Ph_Est)1004、順方向誤り訂正(FEC)復号器1003、逆デインターリーバ(inverse de−interleaver)1007、およびインターリーバ1008を含む。示される変数は上で定義されている。
【0032】
図5は、反復位相補償受信機の実施態様を示し、反復位相補償受信機は、図4に含まれる機能ブロックに加えて、等化器(EQ)、反復制御ユニット(CTL)1010、および逆方向位相補償器(BCMP)1011も含む。
【0033】
等化器1001は、色分散、偏光モード分散、および非線形効果などの非理想的な光ファイバチャネルからの影響を補償する。等化された受信シンボルシーケンスのブロックは、r=[r(1),r(1),...,r(N)]として示され、式中、r(N)はn番目のシンボルであり、Nはシーケンス内のシンボルの総数である。
【0034】
位相推定器1004は、2つのシンボルブロックを比較し、ブロック間の平均位相誤差
【数10】

を推定する。推定器は、推定値
【数11】

の対数尤度などの位相誤差を表す確率関数を生成することもできる。
【0035】
遅延ブロック(DLY)1005を用いて、位相推定器の時間領域において入力シンボルr(n)とs(n)とを一致させる。
【0036】
FCMP1002および逆方向位相補償器1011は、推定位相誤差
【数12】

を用いて入力シンボルrのブロックの位相回転を補償して、新しいシンボルブロックを生成する。
【0037】
デインターリーバ1007は、送信機が符号化データ後にインターリーバを有する場合、復号器の前に用いられる。インターリーバ1008は、デインターリーバ1007とペアで実装され、受信シンボルの順序に合うように、再生成されたシンボルを順序替えする。
【0038】
誤り訂正復号器1003は、位相補償されたシンボルシーケンスブロックuを受信し、復号された情報ビットシーケンス
【数13】

を出力する。軟出力復号器が用いられる場合、復号器は、情報ビットシーケンス
【数14】

の軟尤度も生成する。
【0039】
FEC符号化器1006およびインターリーバ1008は、l番目の反復で推定情報ビットシーケンス
【数15】

から推定送信シンボルシーケンス
【数16】

を再生成する。
【0040】
方法および受信機の詳細
方法および受信機の更なる詳細について、以下に説明する。
【0041】
第1の受信シンボルの初期位相
【数17】

は既知であり、受信シンボルシーケンスrは、θ(0)≒0であるように、すでに位相回転されている。これは妥当であり、そのような推定は、たとえば、データシンボルストリームに先行する既知のトレーニングプリアンブルシンボルの位相を評価することにより行うことができる。元の等化された受信シンボルシーケンスは、
【数18】

として示され、式中、r(n)はn番目のシンボルであり、Nはシンボルの総数である。
【0042】
各ステップ601において、受信機は、P個のシンボルからなるブロックの平均位相誤差を推定する。各反復602は、
【数19】

個のステップを有する。
【0043】
k番目のステップにおいて、k番目のブロックθの平均位相誤差は、(k+q−1)番目のブロック内の前のシンボルを用いて推定される。復号器がブロックkの情報ビットを復号するために必要な更なるシンボルブロックの数は、q−1であり、たとえば、復号遅延である。
【0044】
各反復の開始時に、受信機はシンボルのq個のブロックr,r,...,rを読み込み、シンボルをデインタリーブする。次に、復号器は情報ビット
【数20】

を推定する。順方向位相補償シーケンスuの最初のq個のブロックが、rと同じである、すなわち、u=r(但し、i≦q)であることに留意されたい。
【0045】
受信機は、
【数21】

を符号化し、再符号化されたシンボルをインタリーブして、最初のブロック
【数22】

内のP個の送信シンボルの推定を生成する。次に、受信機は、受信シンボルrの最初のブロックおよび推定送信シンボル
【数23】

の最初のブロックを用いて、最初のブロックの平均位相誤差を推定する。
【0046】
最初の
【数24】

が利用可能になった後、受信機はその推定値を用いて、シンボルrq+1の(q+1)番目のブロックの位相を補償する。たとえば、位相補償は、(q+1)番目のブロック内のすべてのシンボルについて、
【数25】

として実行することができる。デインターリーバ/復号器への入力はuである。
【0047】
次に、新たに生成されたブロックuq+1をデインターリーバおよび復号器に供給して、情報ビットブロック
【数26】

を生成するとともに、
【数27】

、および最終的に、次のブロック
【数28】

の平均位相誤差推定を再生成する。
【0048】
次のシンボルブロックは、後続のステップで用いるために、位相補償される。k番目のブロックの位相推定が完了した後、受信機は(k+1)番目のブロックに進む。このステップは、すべてのブロックが第1の反復で処理されるまで、繰り返される。
【0049】
大半のブロックにおいて、(q−1)個の更なるブロックが、1つのデータブロックを適切に復号するために必要である。シーケンスの最後のブロックは、一般に、符号が適切に終了している場合、たとえば、畳み込み符号が通常、テールビットを挿入することにより、既知(ゼロ)の状態で終了している場合、復号のための追加のブロックを必要としない。これにより、プロセスは、シーケンスの末端に達し、K−q+1個のブロックのみではなく、K個すべてのブロックの位相推定を生成するまで続くことができる。
【0050】
逆方向位相補償器は、次の(l+1)番目の反復に対して新しいシンボルシーケンスrを生成する。新しいシンボルシーケンスは、推定平均位相誤差
【数29】

を用いてシンボルブロックrを直接補償することにより導出される。
【数30】

【0051】
k番目のステップにおいて、復号器1003は、部分シンボルシーケンスu,u,...,uk+qを所与として、k番目の情報ビットシーケンス
【数31】

を出力する。たとえば、最尤(ML)復号器が用いられる場合、復号データは、
【数32】

であり、式中、関数arg maxは最大値の引数を返す。
【0052】
最大事後(MAP)復号器または線形復号器などの他の種類の復号器を用いることもできる。軟入力軟出力(SISO)復号器は、よりよい位相推定性能を提供するが、本明細書の発明において説明される受信機は、SISO復号器を必要としない。更なるシンボルが、正確な復号のために必要になることがあり、その結果、更なるシンボルブロックuk+1,...,uk+q−1が、デインターリーバおよび復号器により読み込まれる。
【0053】
位相推定器1004は、入力シンボルシーケンスブロック
【数33】

を推定送信シンボルブロック
【数34】

と比較することにより、その入力シンボルシーケンスブロックの平均位相回転を特定する。正規分布の雑音を仮定すると、ML推定量は、
【数35】

であるか、または線形推定量
【数36】

であり、式中、∠(,)は、2つの複素数の角度を計算する演算子であり、wは、雑音分散σ(n)、r(n)の振幅、および/またはL(s(n))に基づいて求めることができる重み係数である。重みが等しい場合、推定量は、
【数37】

に、さらに簡単化することができる。
【0054】
順方向位相補償器1002および逆方向位相補償器1011は、両方とも、
【数38】

として与えられる平均位相誤差に対応する角度
【数39】

だけ、ブロックk+q内のシンボルを回転させることにより実現することができる。
【0055】
順方向位相補償器1002および逆方向位相補償器1011は、シンボルuk+qを生成するML等化器を用いて実現することもできる。シンボルの対数尤度比(LLR)は以下の通りである。
【数40】

【0056】
L(r(n))および
【数41】

が両方とも利用可能な場合、L(u(n))は、
【数42】

【0057】
受信機は、終了条件が満たされた場合、外ループから出る。可能な終了条件のうちのいくつかとしては、
a)復号情報ビットストリームが収束する、すなわち、
【数43】

、および
b)すべてのブロックについて、残留位相誤差が予め定義された閾値よりも低い、すなわち、
【数44】

であることが挙げられる。
【0058】
図6は、反復位相補償および復号のパイプライン化されたプロセス、すなわち、新しい反復が前の反復が終了する前に開始されるプロセスのデータフローおよびタイミングを示す。
【0059】
500を受信シンボルシーケンスの開始とし、tをブロックiの終了およびブロックi+1の開始とし、tを受信シーケンスのK番目のブロックの終了とする。図6に示される例では、q=2であると仮定する。また、明確にするために、機能ブロック、たとえば、復号器、位相推定器、および補償器での遅延を無視する。
【0060】
1番目の反復は時刻tにおいて開始する。時刻tにおいて、シンボルブロックrおよびrを受信し、したがって、dを復号することができ、
【数45】

が特定される。順方向補償器はuを生成する。逆方向補償器はrを生成する。最後のブロックrは、t506において利用可能であり、
【数46】

および
【数47】

は両方とも、t506の後に特定することができ、以下同様である。したがって、2番目の反復はt502で開始することができる。ブロック
【数48】

は、t503の後に読み込まれ、
【数49】

はt504の後に読み込まれる。2番目の反復ブロックのt504において、位相推定値
【数50】

が順方向補償器および逆方向補償器に利用可能になる。3番目の反復が必要な場合、t504において開始することができる。
【0061】
および
【数51】

が実際には、t503において早期に利用可能であり、したがって、2番目の反復をt503において早期に開始することができることに留意する。
【0062】
本明細書において説明される受信機は、位相誤差の大部分を効率的に除去することができ、したがって、システムが、送信機および受信機の両方において局所発振器の線幅に対してはるかに高い許容差を有することを可能にする。受信機は、伝送の全体性能を向上させることができ、かつ/またはより広い線幅を有する局所発振器を用いてシステムを構築して、コストを低減することを可能にする。
【0063】
この発明について特定の好ましい実施形態を参照して説明したが、この発明の趣旨および範囲内で様々な他の適合および変形を行うことができることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、この発明の真の趣旨および範囲内にあるすべての変形および変更を網羅することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機において信号の位相の誤差を補償する方法であって、前記信号は光信号であり、シーケンス内にシンボルブロックを含み、前記受信機は光受信機であり、前記方法は、
部分的に位相補償されたシンボルに基づいて、各ブロックを復号するステップと、
前記各ブロックの平均位相誤差を推定するステップと、
前記平均位相誤差に基づいて、順方向位相補償および逆方向位相補償を前記ブロックに対して実行するステップと、
終了条件が満たされるまで、前記復号するステップ、前記推定するステップ、前記実行するステップを繰り返して、位相補償ブロックを生成する、繰り返すステップと、
を含む、受信機において信号位相の誤差を補償する方法。
【請求項2】
前記復号するステップは、部分的に補償されたシンボルシーケンスに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定するステップは、前に復号されたシンボルに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記復号するステップは、最尤復号器に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記復号するステップは、最大事後復号器に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記位相補償は、前記平均位相誤差に対応する角度だけ、前記ブロック内の前記シンボルの位相を回転させることにより実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記位相補償は、位相回転の推定尤度および未補償シンボルの尤度に基づいて、前記シンボルの尤度を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
新しい反復が、前の反復が完了する前に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
受信信号の位相の誤差を補償する受信機であって、前記信号は光信号であり、シーケンス内にシンボルブロックを含み、前記受信機は光受信機であり、
部分的に位相補償されたシンボルに基づいて、各受信ブロックに適用される復号器と、
前記各ブロックの平均位相誤差を推定する手段と、
前記平均位相誤差に基づいて、前記ブロック内の前記シンボルの位相に適用される順方向位相補償器および逆方向位相補償器と、
を備える、受信信号の位相の誤差を補償する受信機。
【請求項10】
前記受信信号を前記順方向位相補償器に接続する等化器と、
前記等化器の出力と位相推定器の入力との間に接続される遅延器であって、前記位相推定器の出力は、前記順方向補償器の前記入力に接続される、遅延器と、
前記順方向補償器の出力および前記復号器の入力に接続される逆デインターリーバと、
前記復号器の出力および前記デインターリーバの入力に接続される復号器であって、前記デインターリーバの出力は前記位相推定器の前記入力に接続される、復号器と、
をさらに備える、請求項9に記載の受信機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170061(P2012−170061A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−22030(P2012−22030)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】