説明

受信装置、基地局装置、無線装置及び干渉波の除去方法

【課題】干渉除去機能と自動利得制御機能を備える受信装置において干渉波除去動作の収束時間を低減する。
【解決手段】受信装置1は、受信信号に含まれる干渉波を除去する干渉波除去部11と、受信信号の自動利得制御を行う自動利得制御部12と、干渉波の入力に伴う受信信号の利得制御の収束時間を低減させる収束時間低減部(43、44)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、受信信号に含まれる干渉波の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の分野において、受信信号に含まれる干渉波を検出して除去する干渉波除去機能や、受信信号の電力強度や平均振幅値が所定の範囲になるように受信信号の利得を自動的に制御する自動利得制御機能が知られている。
【0003】
なお、無線機の受信電力レベルとあらかじめ設定された値との差分に従って自動的に受信利得を制御する方法及び装置において、受信電力レベルに移動平均化処理を適用することが知られている。
【0004】
また、IC内部に時定数を決定する素子を容易に入れることができる受信回路が知られている。受信回路は、周波数変換回路からの出力信号の電圧と所定の電圧とを比較し、比較結果を所定の信号にして出力するコンパレータと、比較結果に基づく出力信号と復調回路からの出力信号とから、第1の可変利得増幅手段の利得を制御する第1の制御信号と第2の可変利得増幅手段の利得を制御する第2の制御信号とを出力する自動利得増幅回路とを備える。
【0005】
また、高周波信号と局部発振信号とを混合して中間周波数に変換する混合回路と、混合回路の出力が供給される中間周波増幅回路を有する受信装置が知られている。受信装置は、混合回路の前段の信号ラインに妨害波も含む受信帯域全体の信号レベルを検波する検波手段と、検波手段の出力と希望波の受信電界強度に応じた出力とに基づいて希望信号より大きい妨害波入力があるかどうかを判定する判定手段と、判定手段の出力に基づいて回路の線形性を切り替える可変手段を備える。
【0006】
また、送信データを誤り訂正符号にて符号化すると共に、そのビット配置をインターリーブにより並び替えることにより送信用のビット列を生成し、該ビット列を所定ビット長のシンボル単位でOFDM変調して無線送信する送信装置からの送信電波を、アンテナにて受信し、前記送信データを復元する受信装置が知られている。受信装置は、アンテナからの受信信号からビット列に対応した信号をOFDM復調する復調手段と、復調手段にて復調された信号を軟判定及びデインターリーブすると共に、軟判定により得られた軟判定値に基づく誤り訂正復号を行うことで、送信データを復元する復号手段と、復調手段にて復調されるOFDM信号の1シンボル毎に、信号の分散値を算出する分散算出手段と、分散算出手段にて算出された分散値が予め設定された閾値以上であるとき、アンテナが受信中の電波に干渉波が重畳されたことを検出する干渉検出手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−283277号公報
【特許文献2】特開2004−304568号公報
【特許文献3】特開平11−298348号公報
【特許文献4】特開2009−284156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
干渉除去機能と自動利得制御機能を備える受信装置の受信信号に強い干渉波が混入した場合に、干渉波除去動作の収束が遅れることがある。これは、自動利得制御機能が、強い干渉波の混入のため一時的に利得を低減するため、干渉波の除去後に利得を回復させるという無駄な動作によって干渉波除去時の動作の収束が遅れるためである。図1を参照してこの現象を説明する。
【0009】
図1は、自動利得制御により利得調整が行われた受信信号の電力変化を示す波形である。グラフの値は、自動利得制御の目標値に対する比較電力を示す。期間100では、強い干渉波の混入によって受信信号の電力が急激に増加する。この結果、自動利得制御が開始され、受信信号の利得が徐々に低減される。期間101では受信信号の利得が低減される。またこの期間で干渉波除去機能が干渉波を検出する。干渉波除去機能によって干渉波の除去が始まり、また受信信号の利得低減も行われているが、自動利得制御の出力上限の制限によって波形がクロッピングされる。
【0010】
期間102では、干渉波除去が継続される。干渉波の除去のため受信信号の電力が低下する。強い干渉波の影響により期間101で受信信号の利得が大きく低減されているため、期間102では利得調整後の電力が目標値を大きく下回る。このため、干渉波が除去された後に利得を再調整する動作が期間103で発生し、干渉波除去動作の収束を遅らせている。
【0011】
開示の装置及び方法は、干渉除去機能と自動利得制御機能を備える受信装置において干渉波除去動作の収束時間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
装置の一観点によれば、受信信号に含まれる干渉波を除去する干渉波除去部と、受信信号の自動利得制御を行う自動利得制御部を備える受信装置が与えられる。自動利得制御部は、干渉波の入力に伴う受信信号の利得制御の収束時間を低減させる収束時間低減部を備える。
【0013】
方法の一観点によれば、受信信号に含まれる干渉波を検出し、検出された干渉波を除去し、干渉波の入力に伴う受信信号の自動利得制御の収束時間を低減させる干渉波の除去方法が与えられる。
【発明の効果】
【0014】
本件開示の装置又は方法によれば、干渉除去機能と自動利得制御機能を備える受信装置において干渉波除去動作の収束時間が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】干渉除去機能と自動利得制御機能を備える受信装置に生じる干渉除去動作の収束の遅れの説明図である。
【図2】受信装置のハードウエア構成例を示す図である。
【図3】ディジタル信号回路の第1例の機能ブロック図である。
【図4】干渉除去動作の収束時間の低減の説明図(その1)である。
【図5】受信装置の処理の第1例の説明図である。
【図6】ディジタル信号回路の第2例の機能ブロック図である。
【図7】受信装置の処理の第2例の説明図である。
【図8】ディジタル信号回路の第3例の機能ブロック図である。
【図9】干渉除去動作の収束時間の低減の説明図(その2)である。
【図10】受信装置の処理の第3例の説明図である。
【図11】受信装置の処理の第4例の説明図である。
【図12】基地局装置のハードウエア構成例の第1例を示す図である。
【図13】基地局装置のハードウエア構成例の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.受信装置のハードウエア構成例>
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図2は、受信装置のハードウエア構成例を示す図である。受信装置1は、アンテナ2と、無線周波数回路3と、アナログディジタル変換器4及びディジタル信号回路5を備える。なお、添付する図面において、アナログディジタル変換器及びアナログディジタル変換をそれぞれ「ADC」及び「AD変換」と表記することがある。また、無線周波数及びベースバンドをそれぞれ「RF」及び「BB」と表記することがある。
【0017】
無線周波数回路3は、アンテナ2で受信された受信信号を無線周波数信号から中間周波数信号へ変換する。アナログディジタル変換器4は中間周波数信号をディジタル信号に変換する。ディジタル信号回路5は、フィルタリング、帯域内干渉波除去及び自動利得制御などの信号処理をディジタル信号に施して、ベースバンド信号処理回路6へ出力する。ディジタル信号回路5は、ディジタル信号を処理するためのLSI(large scale integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等の論理回路を備えていてもよい。他の実施例では、ディジタル信号回路5は、ソフトウエア処理によってディジタル信号を処理するためのCPU(Central Processing Unit: 中央処理ユニット)及び/又はDSP(digital signal processor)と、プログラムを格納するためのメモリを備えていてもよい。
【0018】
ベースバンド信号処理回路6は、ディジタル信号回路5から出力されたディジタル信号の復調処理及び復号処理を行う。受信装置1は、ベースバンド信号処理回路6を備えていてもよい。若しくは、受信装置1は、ベースバンド信号処理回路6を備える通信装置と別れていて、ディジタル信号回路5により処理されたベースバンド信号を、ベースバンド信号処理回路6へ送信するためのインタフェース回路を備えていてもよい。
【0019】
<2.第1実施例>
<2.1.受信装置の機能構成の第1例>
上記ハードウエア構成によって実現される受信装置1の機能について説明する。図3は、ディジタル信号回路5の第1例の機能ブロック図である。ディジタル信号回路5は、フィルタ10と、干渉波除去部11と、自動利得制御部12を備える。添付する図面において自動利得制御を「AGC」と表記することがある。なお、図3は、以下の説明に関係する機能を中心として示している。ディジタル信号回路5は、図示の構成要素以外の他の構成要素を含んでいてよい。他の図面の機能ブロック図やハードウエア構成図においても同様である。
【0020】
フィルタ10は、ディジタル信号回路5に入力されたディジタル形式の受信信号をフィルタリングして受信帯域内の信号を抽出する。干渉波除去部11は、受信帯域内に混入した干渉波を検出し検出された干渉波を除去する。自動利得制御部12は、干渉波除去部11によって干渉波が除去された受信信号の平均電力が予め設定された範囲内に調整できるように、受信信号の利得すなわち増幅率を調整し、調整された増幅率で受信信号を増幅又は低減する。他の実施例では、自動利得制御部12は、干渉波除去部11によって干渉波が除去された受信信号の平均振幅が予め設定された範囲内に調整できるように、受信信号の利得を調整してもよい。
【0021】
干渉波除去部11は、干渉検出部20と、除去部30を備える。干渉検出部20は、受信帯域内に混入した干渉波を検出する。除去部30は、受信信号から干渉波を除去するための干渉波除去フィルタを備える。
【0022】
干渉検出部20は、窓関数乗算部21と、高速フーリエ変換部22と、電力計算部23と、平均値計算部24と、閾値決定部25と、ピーク検出部26と、選択部27を備える。なお、添付する図面において高速フーリエ変換を「FFT」と表記することがある。
【0023】
窓関数乗算部21は、受信信号に窓関数を乗算する。高速フーリエ変換部22は、窓関数が乗算された受信信号に高速フーリエ変換処理を施して周波数領域信号に変換する。電力計算部23は、各周波数成分における電力を計算する。平均値計算部24は、電力計算部23によって算出された電力の平均電力を算出する。閾値決定部25は、平均電力に基づいて電力ピーク値を検出するための閾値を決定する。
【0024】
ピーク検出部26は、平均値計算部24により計算された平均電力が閾値決定部25により算出された閾値を超える周波数成分があった場合に、その周波数の識別番号を選択部27に出力する。このときピーク検出部26は、干渉波の検出を自動利得制御部12に通知する。選択部27は、ピーク検出部26から受信した識別番号に応じたフィルタ係数を選択して、除去部30の干渉波除去フィルタのフィルタ係数を設定する。除去部30によって干渉波が除去された受信信号は、自動利得制御部12に入力される。
【0025】
自動利得制御部12は、平均電力計算部40と、利得調整部41と、信号強度調整部42を備える。平均振幅に基づいて利得を調整する実施例においては、平均振幅を計算する平均振幅計算部を備えてもよい。平均電力計算部40は、入力された受信信号の平均電力を計算する。利得調整部41は、受信信号の平均電力が予め設定された範囲内に調整できるように、受信信号の利得すなわち増幅率を調整する。信号強度調整部42は、利得調整部41により調整された利得によって受信信号を増幅又は低減する。
【0026】
利得調整部41は、利得調整部41による受信信号の利得調整を停止する調整停止部43を備える。調整停止部43は、ピーク検出部26から干渉波の検出の通知を受信すると、ある長さの期間に亘って受信信号の利得調整を停止する。以下の説明において、利得調整を停止する期間を「調整停止期間」と表記することがある。
【0027】
調整停止期間は、例えば、干渉波除去部11による干渉除去動作の長さとして予め見積もられた設定値であってよい。また、干渉波除去部11が干渉除去に要した期間長を測定して統計処理によって決定した統計値を、調整停止期間として使用してもよい。利得調整部41は、干渉波除去部11が干渉除去に要した期間の統計計算を行う調整停止期間計算部を備えていてもよい。
【0028】
本実施例では、干渉波の検出後のある期間に亘って受信信号の利得調整を停止することにより、干渉除去動作の収束時間が低減される。図4を参照してその理由を説明する。実線110は調整停止部43による利得調整の停止が行われる場合の波形を示す。比較のため、一点鎖線111は、調整停止部43による利得調整の停止が行われない場合の波形を示す。
【0029】
図1の波形と同様に、符号100の期間では強い干渉波の混入により電力が増加する。この結果、自動利得制御によって受信信号の利得が徐々に低減される。しかし、符号101の期間でピーク検出部26が干渉波を検出すると、調整停止部43は利得の低減を停止するため。このため、調整停止部43が利得調整を停止しない一点鎖線111の場合と比較すると利得低下量が低減される。この結果、期間102で生じる利得調整後の電力の低下が低減され、干渉波除去後の利得の再調整期間も減少する。したがって、干渉除去動作の収束時間が低減される。
【0030】
<2.2.受信装置の処理の第1例>
続いて、本実施例における受信装置1の処理について説明する。図5は、受信装置1の処理の第1例の説明図である。なお、以下、図5を参照して説明する一連の処理は複数の手順を含む方法と解釈してよい。この場合に「オペレーション」を「ステップ」と読み替えてもよい。図7、10及び図11の場合も同様である。
【0031】
オペレーションAAにおいて受信装置1は信号を受信する。オペレーションABにおいて無線周波数回路3は、受信信号を無線周波数信号から中間周波数信号へダウンコンバートする。オペレーションACにおいてアナログディジタル変換器4は中間周波数信号をディジタル信号に変換する。オペレーションADにおいてフィルタ10は、ディジタル形式の受信信号をフィルタリングして受信帯域内の信号を抽出する。
【0032】
オペレーションAEにおいて干渉検出部20のピーク検出部26は、干渉波の有無を検出する。干渉波が検出されない場合には(オペレーションAE:N)処理はオペレーションAFへ進む。干渉波が検出された場合には(オペレーションAE:Y)処理はオペレーションAIへ進む。
【0033】
オペレーションAFにおいて利得調整部41は、計算された平均電力が所定の範囲内になるように、受信信号の利得を調整する。オペレーションAGにおいて信号強度調整部42は、調整された利得によって受信信号を増幅又は低減する。オペレーションAHにおいて信号強度調整部42は、調整後の受信信号をベースバンド信号処理回路6へ送信する。
【0034】
一方で、オペレーションAIにおいて利得調整部41の調整停止部43は、調整停止期間の経過を測定するタイマが以前に干渉波が検出されたことによって動作しているか否かを判断する。タイマがまだ動作していない場合には(オペレーションAI:N)処理はオペレーションAJへ進む。タイマが既に動作中の場合には(オペレーションAI:Y)オペレーションAJがスキップされ、処理はオペレーションAKへ進む。オペレーションAJにおいて調整停止部43は、調整停止期間の経過を測定するタイマを起動する。その後処理はオペレーションAKへ進む。
【0035】
オペレーションAKにおいて選択部27は、ピーク検出部26によって干渉波が検出された周波数の識別番号に従って、除去部30の干渉波除去フィルタのフィルタ係数を設定する。オペレーションALにおいて除去部30は、受信信号に混入する干渉波を除去する。
【0036】
オペレーションAMにおいて調整停止部43は、タイマによる時間計測がタイムアウトしているか否かを判断する。時間計測がタイムアウトしていない場合には(オペレーションAM:N)オペレーションAFがスキップされ、処理はオペレーションAGへ進む。このため、調整停止期間中は利得調整部41による利得調整が停止される。時間計測がタイムアウトした場合には(オペレーションAM:Y)処理はオペレーションANへ進む。オペレーションANにおいて調整停止部43はタイマを停止し、処理をオペレーションAFへ進める。この結果、利得調整部41による利得調整が再開される。
【0037】
<2.3.実施例の効果>
本実施例によれば、干渉波が検出された後のある期間に亘って自動利得制御による利得の低減を停止する。このため、干渉波除去完了前の過大な信号強度に基づく利得調整による不適切な利得低下を低減することが可能となる。この結果、低下した利得を再調整する期間が短縮されるので干渉波除去動作の収束時間が短縮される。
【0038】
<3.第2実施例>
<3.1.受信装置の機能構成の第2例>
続いて、受信装置1の他の実施例について説明する。本実施例では、調整停止部43は干渉波の検出後から干渉波の除去完了までの期間に受信信号の利得調整部41による利得調整を停止する。図6は、ディジタル信号回路5の第2例の機能ブロック図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には図3で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。
【0039】
干渉除去部11は、除去部30により干渉波が除去された受信信号を監視することにより、干渉除去部11による干渉の除去が完了したか否かを判断する監視部31を備える。監視部31は、例えば干渉検出部20と同様の処理によって除去部30から出力される受信信号に干渉波が含まれているか否かを判定してよい。ある実施例では、監視部31は、例えば除去部30の一部であってもよい。監視部31は、干渉波の除去完了を利得調整部41に通知する。
【0040】
調整停止部43は、干渉波の検出通知をピーク検出部26から受信してから、干渉波の除去完了通知を監視部31から受信するまでの間、受信信号の利得調整を停止する。すなわち、調整停止部43は、干渉波の検出通知をピーク検出部26から受信した場合に利得調整を停止する。調整停止部43は、干渉波の除去完了通知を監視部31から受信した場合に、利得調整を再開する。
【0041】
<3.2.受信装置の処理の第2例>
続いて、本実施例における受信装置1の処理について説明する。図7は、受信装置1の処理の第2例の説明図である。オペレーションBA〜BHの処理は、それぞれ図5のオペレーションAA〜AHの処理と同様である。干渉波が検出された場合には(オペレーションBE:Y)処理はオペレーションBIへ進む。
【0042】
オペレーションBIにおいて選択部27は、除去部30の干渉波除去フィルタのフィルタ係数を設定する。オペレーションBJにおいて除去部30は、受信信号に混入する干渉波を除去する。オペレーションBKにおいて監視部31は、干渉除去部11による干渉の除去が完了したか否かを判断する。除去が完了していない場合には(オペレーションBK:N)処理はオペレーションBGへ進む。このため干渉波検出後から除去完了までの間は、利得調整部41による受信信号の利得調整が停止される。除去が完了した場合には(オペレーションBK:Y)処理はオペレーションBFへ進む。この結果、利得調整部41による受信信号の利得調整が再開される。
【0043】
<2.3.実施例の効果>
干渉除去部11による干渉波の除去の完了より前に利得調整部41による受信信号の利得調整が再開すると、利得低下量が増えるために除去後の利得の再調整期間が長くなる。一方で、干渉波の除去の完了時よりも利得調整の再開が遅れると、遅延の分だけ除去後の利得の再調整の完了が遅れる。本実施例によれば、干渉波の除去が完了した時点で利得調整部41による受信信号の利得調整が再開される。このため、干渉波除去後における利得再調整の完了が遅延することが防止されるため、干渉除去動作の収束時間をより低減することが可能となる。
【0044】
<4.第3実施例>
<4.1.受信装置の機能構成の第3例>
続いて、受信装置1の他の実施例について説明する。本実施例では、干渉波が検出されてその除去が完了した後のある長さの期間に亘って、利得調整部41は自動利得制御時の利得変更の変化速度、すなわち時定数を、その他の期間における時定数と異ならせる。以下の説明において、干渉波の除去完了後に時定数が変更される上記のある長さの期間を、「時定数変更期間」と表記することがある。時定数変更期間における時定数は、他の期間における時定数よりも速い。
【0045】
図8は、ディジタル信号回路5の第3例の機能ブロック図である。図6に示す構成要素と同様の構成要素には図6で使用した参照符号と同じ参照符号を付し、同一の機能については説明を省略する。利得調整部41は、時定数変更部44を備える。
【0046】
時定数変更期間以外の期間において利得調整部41は、所定の第1時定数で利得を変更して受信信号の利得を制御する。時定数変更期間において時定数変更部44は、利得調整部41による自動利得制御の時定数を第1時定数よりも速い第2時定数へ変更する。
【0047】
本実施例では、干渉波の除去完了後のある期間に亘ってより速い時定数で自動利得制御を行うことによって、干渉除去動作の収束時間が低減される。図9を参照してその理由を説明する。実線110は時定数の変更が行われる場合の波形を示す。比較のため、一点鎖線111は、時定数の変更が行われない場合の波形を示す。
【0048】
図1の波形と同様に、符号100の期間では強い干渉波の混入により電力が増加する。この結果、自動利得制御によって受信信号の利得が徐々に低減される。期間101では受信信号の利得が低減されるが、自動利得制御部12の出力上限の制限によって波形がクロッピングされる。期間102では、干渉波除去が継続され干渉波が除去されるため受信信号の電力が低下する。
【0049】
干渉波の除去完了後の期間103では、時定数変更部44は、利得調整部41による自動利得制御の時定数をより速い第2時定数へ変更する。このため、時定数が変更されない一点鎖線111の場合と比較すると利得の回復時間が短縮される。この結果、干渉波除去後の利得の再調整期間も減少し、干渉除去動作の収束時間が低減される。
【0050】
<4.2.受信装置の処理の第3例>
続いて、本実施例における受信装置1の処理について説明する。図10は、受信装置1の処理の第3例の説明図である。オペレーションCA〜CHの処理は、それぞれ図5のオペレーションAA〜AHの処理と同様である。干渉波が検出された場合には(オペレーションCE:Y)処理はオペレーションCIへ進む。
【0051】
オペレーションCIにおいて選択部27は、除去部30の干渉波除去フィルタのフィルタ係数を設定する。オペレーションCJにおいて除去部30は、受信信号に混入する干渉波を除去する。オペレーションCKにおいて監視部31は、干渉除去部11による干渉の除去が完了したか否かを判断する。除去が完了していない場合には(オペレーションCK:N)処理はオペレーションCLへ進む。除去が完了した場合には(オペレーションCK:Y)処理はオペレーションCMへ進む。オペレーションCLにおいて利得調整部41は、自動利得制御の時定数として第1時定数を使用する。その後オペレーションCFにおいて、利得調整部41は、第1時定数で利得を変更して利得調整を行う。このため、除去が完了する前は第1時定数で自動利得制御が行われる。
【0052】
オペレーションCMにおいて時定数変更部44は、時定数変更期間の経過を測定するタイマが以前に干渉波の除去が完了したことによって動作しているか否かを判断する。タイマがまだ動作していない場合には(オペレーションCM:N)処理はオペレーションCNへ進む。タイマが既に動作中の場合には(オペレーションCM:Y)処理はオペレーションCOへ進む。オペレーションCNにおいて時定数変更部44は、時定数変更期間の経過を測定するタイマを起動する。
【0053】
オペレーションCOにおいて時定数変更部44は、タイマによる時間計測がタイムアウトしているか否かを判断する。時間計測がタイムアウトしていない場合には(オペレーションCO:N)処理はオペレーションCPへ進む。時間計測がタイムアウトしている場合には(オペレーションCO:Y)処理はオペレーションCQへ進む。オペレーションCPにおいて時定数変更部44は、利得調整部41による自動利得制御の時定数を第2時定数へ変更する。その後オペレーションCFにおいて、利得調整部41は、第2時定数で利得を変更して利得調整を行う。このため、時定数変更期間では第2時定数で自動利得制御が行われる。
【0054】
オペレーションCQにおいて時定数変更部44は、タイマを停止し、処理をオペレーションCLへ進める。この結果、時定数変更期間満了以降は、自動利得制御の時定数は第1時定数に戻る。
【0055】
<4.3.実施例の効果>
本実施例によれば、干渉波の除去完了後のある期間に亘って自動利得制御の時定数を早める。この結果、干渉波の除去完了後における自動利得制御の利得の回復時間が短縮される。この結果、干渉波除去後の利得の再調整期間も減少し、干渉除去動作の収束時間が低減される。なお、他の実施例では、利得調整部41が、第3実施例における時定数の変更処理と第1実施例又は第2実施例の利得調整の停止処理とを組み合わせて実行してもよい。
【0056】
<5.第4実施例>
<5.1.受信装置の処理の第4例>
続いて、図8のディジタル信号回路5を備える受信装置の他の処理の例について説明する。本実施例において時定数変更部44は、干渉波が検出されその除去が完了してから利得調整部41による利得制御が収束するまでの間に、自動利得制御の時定数をその他の期間における時定数よりも速くする。例えば、時定数変更部44は、所定時間における利得調整部41による利得変化量が所定の範囲内に収まった場合に、利得制御が収束したと判断してよい。
【0057】
図11は、受信装置1の処理の第4例の説明図である。オペレーションDA〜DHの処理は、それぞれ図5のオペレーションAA〜AHの処理と同様である。干渉波が検出された場合には(オペレーションDE:Y)処理はオペレーションDIへ進む。
【0058】
オペレーションDIにおいて選択部27は、除去部30の干渉波除去フィルタのフィルタ係数を設定する。オペレーションDJにおいて除去部30は、受信信号に混入する干渉波を除去する。オペレーションDKにおいて監視部31は、干渉除去部11による干渉の除去が完了したか否かを判断する。除去が完了していない場合には(オペレーションDK:N)処理はオペレーションDLへ進む。除去が完了した場合には(オペレーションDK:Y)処理はオペレーションDMへ進む。オペレーションDLにおいて利得調整部41は、自動利得制御の時定数として第1時定数を使用する。その後オペレーションDFにおいて、利得調整部41は、第1時定数で利得を変更して利得調整を行う。このため、除去が完了する前は第1時定数で自動利得制御が行われる。
【0059】
オペレーションDMにおいて時定数変更部44は、利得調整部41による利得制御が収束したか否かを判断する。利得制御が収束していない場合には(オペレーションDM:N)処理はオペレーションDNへ進む。オペレーションDNにおいて時定数変更部44は、利得調整部41による自動利得制御の時定数を第2時定数へ変更する。その後オペレーションDFにおいて、利得調整部41は、第2時定数で利得を変更して利得調整を行う。このため、干渉波の除去が完了してから利得調整部41による利得制御が収束するまでの間では第2時定数で自動利得制御が行われる。
【0060】
一方で、オペレーションDMの判断において利得制御が収束した場合には(オペレーションDM:Y)処理はオペレーションDLへ進む。この結果、利得制御が収束後は、自動利得制御の時定数は第1時定数に戻る。
【0061】
<5.2.実施例の効果>
利得調整部41による利得制御が収束すれば、それ以降は、速い時定数を使用しなくてもよい。本実施例では、利得制御の時定数をより速い第2時定数へ変更する期間を、干渉波検出時からそれに続く利得制御収束時までの間に制限することによって、時変数の変更が受信装置1に与える影響を少なくすることができる。なお、他の実施例では、利得調整部41が、第4実施例における時定数の変更処理と第1実施例又は第2実施例の利得調整の停止処理とを組み合わせて実行してもよい。
【0062】
<6.基地局装置への適用例>
以下、第1実施例〜第4実施例の受信装置を適用する通信装置の一例について説明する。例えば、上述の受信装置は、移動局装置から送信される無線信号を受信する基地局装置で使用されてよい。図12は、基地局装置のハードウエア構成例の第1例を示す図である。基地局装置50は、制御回路60と、ベースバンド処理回路61と、送信側ディジタル信号回路62と、ディジタルアナログ変換器63と、無線周波数回路64及び68と、増幅器65とアンテナ66と、共用器67を備える。また、基地局装置50は、アナログディジタル変換器69と、受信側ディジタル信号回路70と、ネットワークインタフェース71と、レイヤ2スイッチ72を備える。なお、添付する図面において、ディジタルアナログ変換器、共用器及びレイヤ2スイッチをそれぞれ「DAC」、「DUP」及び「L2SW」と記す。
【0063】
制御回路60は、基地局装置50の全体の動作を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)80及びメモリ81を備える。CPU80は、メモリ81に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、基地局装置50の全体の動作を制御する各種処理を行う。ベースバンド処理回路61は、移動局装置との間で送受信される信号のベースバンド処理を実行する。ベースバンド処理回路61は、DSP(Digital Signal Processor)82と、DSP82によって実行されるファームウエアが格納されるメモリ83を備える。
【0064】
送信側ディジタル信号回路62は、移動局装置への送信信号のベースバンド信号をベースバンド処理回路61から受信し、フィルタリング等の所定の信号処理をベースバンド信号に施す。ディジタルアナログ変換器63は、送信側ディジタル信号回路62が出力するベースバンド信号をアナログ信号に変換する。無線周波数回路64は、変換されたアナログ信号を無線周波数信号に変換する。無線周波数信号は増幅器65により増幅された後、共用器67を経由してアンテナ66から送信される。
【0065】
移動局装置からの送信信号はアンテナ66により受信される。受信された信号は共用器67を介して無線周波数回路68へ入力される。無線周波数回路68、アナログディジタル変換器69及び受信側ディジタル信号回路70には、図2を参照して説明した受信装置1の無線周波数回路3、アナログディジタル変換器4及びディジタル信号回路5が適用される。
【0066】
ネットワークインタフェース71は、基地局装置50と他の基地局装置との間、及び基地局装置50と上位ノードと間の通信のための通信インタフェース回路である。レイヤ2スイッチ72は、制御回路60と、ベースバンド処理回路61と、送信側ディジタル信号回路62と、受信側ディジタル信号回路70と、ネットワークインタフェース71に接続され、これらの回路の間で送受されるレイヤ2信号の交換処理を行う。
【0067】
図13に、基地局装置50のハードウエア構成例の第2例を示す。このハードウエア構成では、基地局装置50は無線制御装置(REC: Radio Equipment Controller)90と無線装置(RE: Radio Equipment)91とに分割され、その間が通信回路92で接続される。図12に示す構成要素と同様の構成要素には、図12で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。
【0068】
無線制御装置90は、制御回路60と、ベースバンド処理回路61と、ネットワークインタフェース71と、レイヤ2スイッチ72と、インタフェース回路93を備える。無線装置91は、送信側ディジタル信号回路62と、ディジタルアナログ変換器63と、無線周波数回路64及び68と、増幅器65と、アンテナ66を備える。また無線装置91は、共用器67と、アナログディジタル変換器69と、受信側ディジタル信号回路70と、インタフェース回路94を備える。無線装置91の一例は、例えばリモート・ラジオ・ヘッド(RRH: Remote Radio Head)である。インタフェース回路93及び94は、例えばCPRI(Common Public Radio Interface)や、OBSAI(Open Base Station Architecture Initiative)等の規格に従って、通信回路92上でベースバンド信号を送受してよい。
【0069】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
受信信号に含まれる干渉波を除去する干渉波除去部と、
前記受信信号の自動利得制御を行う自動利得制御部と、を備え、
前記自動利得制御部は、干渉波の入力に伴う前記受信信号の利得制御の収束時間を低減させる収束時間低減部を備えることを特徴とする受信装置。
(付記2)
前記干渉波除去部は、受信信号に含まれる干渉波を検出する検出部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波の入力が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更を停止する停止部を備えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記3)
前記ある期間は、前記検出部により干渉波の入力が検出された後の一定期間である付記2に記載の受信装置。
(付記4)
前記干渉波除去部による前記干渉波の除去を検出する監視部を備え、
前記ある期間は、前記検出部により干渉波の入力が検出された後から前記監視部により干渉波の除去が検出されるまでの間である付記2に記載の受信装置。
(付記5)
前記干渉波除去部による前記干渉波の除去を検出する監視部を備え、
前記干渉波除去部は、受信信号に含まれる干渉波を検出する検出部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波が検出されて前記監視部により干渉波の除去が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くする速度変更部を備えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記6)
前記ある期間は、検出された干渉波が除去された後の一定時間である付記5に記載の受信装置。
(付記7)
前記ある期間は、前記監視部により干渉波の除去が検出された後から前記自動利得制御部による利得制御が収束するまでの期間である付記5に記載の受信装置。
(付記8)
前記干渉波除去部による前記干渉波の除去を検出する監視部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波が検出されて前記監視部により干渉波の除去が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くする速度変更部を備えることを特徴とする付記2に記載の受信装置。
(付記9)
付記1〜8のいずれか一項に記載の受信装置を備える基地局装置。
(付記10)
付記1〜8のいずれか一項に記載の受信装置を備え、前記受信信号を復調する無線制御装置と伝送リンクを介して接続される無線装置。
(付記11)
受信信号に含まれる干渉波を検出し、
検出された前記干渉波を除去し、
干渉波の入力に伴う前記受信信号の自動利得制御の収束時間を低減させる、
ことを特徴とする干渉波の除去方法。
(付記12)
干渉波の入力の検出後のある期間に亘って前記自動利得制御による前記受信信号の利得変更を停止することにより、前記自動利得制御の収束時間を低減させる付記11に記載の干渉波の除去方法。
(付記13)
受信信号に含まれる干渉波の除去の完了を検出し、
干渉波の除去の完了が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くすることにより、前記自動利得制御の収束時間を低減させる付記11に記載の干渉波の除去方法。
【符号の説明】
【0070】
1 受信装置
5 ディジタル信号回路
11 干渉除去部
12 自動利得制御部
20 干渉検出部
43 調整停止部
44 時定数変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号に含まれる干渉波を除去する干渉波除去部と、
前記受信信号の自動利得制御を行う自動利得制御部と、を備え、
前記自動利得制御部は、干渉波の入力に伴う前記受信信号の利得制御の収束時間を低減させる収束時間低減部を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記干渉波除去部は、受信信号に含まれる干渉波を検出する検出部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波の入力が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更を停止する停止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記干渉波除去部による前記干渉波の除去を検出する監視部を備え、
前記干渉波除去部は、受信信号に含まれる干渉波を検出する検出部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波が検出されて前記監視部により干渉波の除去が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くする速度変更部を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記干渉波除去部による前記干渉波の除去を検出する監視部を備え、
前記収束時間低減部は、前記検出部により干渉波が検出されて前記監視部により干渉波の除去が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御部による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くする速度変更部を備えることを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項5】
受信信号に含まれる干渉波を検出し、
検出された前記干渉波を除去し、
干渉波の入力に伴う前記受信信号の自動利得制御の収束時間を低減させる、
ことを特徴とする干渉波の除去方法。
【請求項6】
干渉波の入力の検出後のある期間に亘って前記自動利得制御による前記受信信号の利得変更を停止することにより、前記自動利得制御の収束時間を低減させる請求項5に記載の干渉波の除去方法。
【請求項7】
受信信号に含まれる干渉波の除去の完了を検出し、
干渉波の除去の完了が検出された後のある期間に亘って、前記自動利得制御による前記受信信号の利得変更の変化速度を他の期間での速度よりも速くすることにより、前記自動利得制御の収束時間を低減させる請求項5に記載の干渉波の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−74610(P2013−74610A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214637(P2011−214637)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】