説明

受光回路実装体

【課題】受光回路半導体チップをフレキシブル基板にフリップチップ実装することで光ピックアップの薄型化および小型化を実現する。
【解決手段】開口部を有するフレキシブル基板10上に前光用半導体チップ12をフリップチップ実装し、フレキシブル基板10の周囲部の一部を折り返して前記前光用半導体チップ12の受光面と反対の面に配置し、前記フレキシブル基板10の折り返し部分に前記前光用半導体チップ12と電気的に接続する回路部品を実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの書込み及び読出しを行う光ピックアップにおいて使用される受光回路実装体に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置においては、装置の小型、軽量化及び低価格化の要望が高まっており、その主要部である光ピックアップにおいても使用部品の小型化軽量化が必須である。
【0003】
従来の構成による光ピックアップの受光回路は、光ディスクからの光を受光し光電変換を行うフォトダイオードと信号処理を行う回路を集積形成した半導体チップを、リードフレーム上にワイヤボンディングして透光性の樹脂でモールドしたパッケージ、もしくはガラス窓を有するセラミックパッケージ内部に納めた状態で使用されていた。パッケージされた受光回路(以下受光回路パッケージ)はノイズ除去用のセラミックコンデンサなどとともにフレキシブル基板等に実装され、受光回路の信号配線が通っているフレキシブル基板は光ピックアップの外形に沿って引き回されていた。
【0004】
図7に従来の光ピックアップに使用される受光回路パッケージの実装の例を示す。図7において50はフレキシブル基板、51は樹脂モールドされた受光回路パッケージ、52は補強板、53は支持枠、54はセラミックコンデンサである。受光回路パッケージ51は樹脂モールド型のパッケージを有し、リードフレームの端子をはんだ付けによりフレキシブル基板50上に接続実装する。フレキシブル基板50の受光回路パッケージ実装部の裏面には補強板52が接着される。フレキシブル基板50は折り返し部50aを有し、補強板52の裏側にまわして接着し、複数のセラミックコンデンサ54をはんだ付けにより実装する。セラミックコンデンサ54は受光回路パッケージ51の電源電圧や基準電圧の安定化のために用いられ、ノイズ低減の役割を果たしている。支持枠53は受光回路パッケージ51の外形よりも大きい開口部を有し、補強板52とともにフレキシブル基板を挟み込んで支持する。支持枠53はキャリッジに密着した状態で、光軸方向と垂直な2方向に位置調整されたのち接着固定される。図7の受光回路の実装例では受光回路とセラミックコンデンサを補強板52と指示枠53によって一体化されているため、位置調整が容易である。
【0005】
従来構成の光ピックアップにおいては受光回路パッケージのパッケージのサイズが大きいために光ピックアップの小型化には限界がある。特に青紫レーザを使用する光ディスク装置においては樹脂モールド型のパッケージは樹脂の光学的な劣化が発生して透過率が低下することが知られており、使用に耐えることができない。青紫レーザを使用する光ディスク装置においては樹脂モールドの代わりにガラス窓を有するセラミックパッケージ等の受光回路パッケージを用いなければならず、そのことがさらに小型軽量化を困難にしていた。
【特許文献1】特開2004−5828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ピックアップの小型化実現のために、受光回路のパッケージの大きさが阻害要因となっている。さらに、コンデンサなどの周辺回路部品の実装スペースやそれを搭載するリジッド基板の大きさがさらに小型化を阻害している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、開口部を有するフレキシブル基板と、受光集積回路が形成された半導体チップとを備え、前記半導体チップの受光部が前記フレキシブル基板の開口部に対向した配置にてフリップチップ実装されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記手段により、本発明の受光回路実装体を使用した光ピックアップにおいては受光回路実装体の配置の自由度が高く、とくにキャリッジの側面に装着した場合でもキャリッジの厚みを小さくすることができ、光ディスク装置の薄型化、小型化に貢献できる。また、樹脂モールドを用いないために青紫レーザを用いた光ピックアップでも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、フレキシブル基板において受光回路を実装した領域の周囲部の一部を折り返して受光回路の受光面と反対の面に配置し、フレキシブル基板の折り返し部分に受光回路と電気的に接続する周辺部品を実装した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の1実施例を示す光ピックアップの光学系を示す略図である。なお、本実施例では1個の光ピックアップに対し2種類の受光回路実装体を用いている。図1において1は前光用受光回路実装体、2はディスク光用受光回路実装体、3はキャリッジ、4はレーザダイオード、5は偏光ビームスプリッタ、6は4分の1波長板、7はコリメータレンズ、8は対物レンズ、9はシリンドリカルレンズである。
【0011】
図1に示した光ピックアップの光学系の簡単な動作を説明する。レーザダイオード4から出射された光の一部は偏光ビームスプリッタ5にて直角に反射されて前光用受光回路実装体1に入射する。前光用受光回路実装体1は入射した光を電気信号に変換し、変換された電気信号はレーザダイオードの光量を一定に制御するのに使用される。レーザダイオード4からの光のうち偏光ビームスプリッタ5にて反射されなかった光は4分の1波長板6、コリメータレンズ7、図示せぬ立ち上げミラーを通り対物レンズ8にてスポット光に集光されて光ディスク上に到達する。光ディスクにて反射された光は対物レンズ8、コリメータレンズ7、4分の1波長板6を通り、偏光ビームスプリッタ5にて直角に反射され、シリンドリカルレンズ9を通ってディスク光用受光回路実装体2に入射する。ディスク光用受光回路実装体2に入射した光は光ディスク上に記録された情報により変調されており、電気信号に変換されて、情報の読み取りおよび対物レンズ8のサーボ制御に使用される。
【0012】
図2は図1に示した前光用受光回路実装体1を拡大した側面図である。図2において10はフレキシブル基板、11は前光用受光回路実装体の支持板、12は前光用半導体チップ、13は金バンプ、14は半固定抵抗である。支持板11は1枚の金属板を180度に折り曲げたもので、前光用半導体チップ12の実装部を固定する主部11aと、半固定抵抗14を固定する折り返し部11bとより構成される。支持板の主部11aには円形の開口部11cが、またフレキシブル基板10には同様に円形の開口部10cが形成されており、ともに前光用半導体チップ12の表面に形成されたセンサ部と位置を略一致させて偏光ビームスプリッタ5からの光がセンサ部に届くようにしている。前光用半導体チップ12はパッケージを持たないベアチップであり、金バンプ13にてフレキシブル基板10に実装されている。フレキシブル基板10は前光用半導体チップ12の電源端子、基準電位端子、および信号出力端子と光ピックアップのコネクタとを結ぶ配線を有する一方、受光回路実装部の近傍に受光回路の周辺部品を実装する領域を折り返し部10bとして有している。折り返し部10bは支持板の折り返し部11bの外側に接着したのち、受光回路の周辺部品を実装する。図2では一例として半固定抵抗14を実装している。半固定抵抗14は、前光用半導体チップ12の出力と対物レンズ8から出力された光のパワーとが所定
の比になるように調整するのに必要な部品であり、光ピックアップの組み立て後にレーザダイオード4を発光させながら前光用受光回路実装体1を動作させ、出力信号を見ながら抵抗値を調整する。その調整を容易にするため、半固定抵抗14はキャリッジ3と前光用受光回路実装体1の接合面の反対側に向いている必要がある。
【0013】
図3は前光用受光回路実装体1のフレキシブル基板の配置を変えた例を示す側面図である。片面実装型のフレキシブル基板を使用する場合には、図3に示すようにフレキシブル基板の折り返し部分を2度折り返し、支持板の折り返し11bの内側面と外側面の双方に這わせて固定することで半固定抵抗を支持板の折り返し11bの外側に配置実装することが可能である。図3に示したフレキシブル基板の配置は、前光用半導体チップ12と半固定抵抗14との配線距離がやや長くなるため、信号周波数帯域があまり高くない場合に適している。
【0014】
図4は図1に示したディスク光用受光回路実装体2を拡大した側面図である。図4において20はフレキシブル基板、21はディスク光用受光回路実装体の支持板、22はディスク光用半導体チップ、23は金バンプであり、基本的構成は前光用受光回路実装体1とほぼ同一である。図4においてフレキシブル基板の折り返し部20bの上に周辺部品としてセラミックコンデンサ24を実装した例を示す。ディスク光用受光回路実装体2においては高周波信号を扱い、信号精度を要求されるために、電源電圧や基準電圧を安定化させてノイズを低減するセラミックコンデンサ24が必要となってくる。セラミックコンデンサ24はフレキシブル基板の折り返し部20bを支持板の折り返し部21bの外側に接着固定したのちにはんだ付けする。
【0015】
図5はディスク光用受光回路実装体2において周辺部品の位置を変えた例を示す側面図である。セラミックコンデンサ24の実装ランドがディスク光用受光回路実装体2と同一面にあるような片面実装型のフレキシブル基板の場合には、図5に示すようにフレキシブル基板の折り返し部20bを支持板の折り返し部11bの内側に這わせて接着固定することができる。この場合、フレキシブル基板の折り返し部20bにあらかじめセラミックコンデンサ24を実装しておき、折り返して支持板の折り返し部21bの内側に挿入して接着する。支持板の主部21aと折り返し部21bの間隔は十分広げておく必要がある。
【0016】
受光回路実装体の組み立て手順を前光用受光回路実装体を例に説明する。図6は前光用受光回路実装体1の組み立て手順を示す斜視図である。図6において15は異方性導電テープ、16はフレキシブル基板上の半導体チップ実装ランド、17は半固定抵抗実装ランドである。半導体チップをフレキシブル基板へ実装する方法はフリップチップ実装と呼ばれる方法による。はじめにフレキシブル基板上の半導体チップ実装ランド16のそれぞれの列ごとに異方性導電テープを貼り付ける。次に前光用半導体チップ12の接続パッドのそれぞれに金バンプ13を形成しておき、金バンプ13と実装ランド17を位置あわせしたのち、前光用半導体チップ12の背面より加圧、加熱を行うと、金バンプ13が異方性導電テープ15内の導電性粒子を介して半導体チップ実装ランド16と電気的に接続される。同時に、異方性導電テープ15の主たる材料の樹脂が融解して金バンプ13を包み込んだ形で凝固し、前光用半導体チップ12とフレキシブル基板10の接続部分の強度を上げ、保護する役割を果たす。融解した異方性導電テープはフレキシブル基板と半導体チップとの間隔が狭いことにより生じる毛管現象によりフレキシブル基板の開口部11cの周縁部まで達することがあるので、開口部の大きさを半導体チップのセンサ部の大きさよりも広げて半導体チップのセンサ部が異方性導電テープの樹脂で覆われないようにする必要がある。
【0017】
こののち支持板の主部11aと折り返し部11bの間にフレキシブル基板10を挿入する形でそれぞれの開口部10cおよび11cの中心位置を略一致させ、フレキシブル基板
20と支持板の主部11aとを接着固定する。フレキシブル基板の折り返し部10bは支持板の折り返し部11bの外側に接着固定し、実装ランド17上に半固定抵抗14をはんだ付けにより接続固定する。図6で明らかなように、支持板11は折り曲げ形成によって主部11aおよび折り返し部11bが形成されたもので、きわめて安価に実現できる。また支持板の主部11aの大きさは前光用半導体チップ12よりわずかに大きくしておくことで、前光用半導体チップ12のフリップチップ実装端子のはがれなどを防止することができるので、前光用受光回路実装体1が小型化できる。なお図6では前光用受光回路実装体1の組み立て手順を説明したが、ディスク光用受光回路実装体2の組み立て手順もほぼ同一である。
【0018】
受光回路実装体のキャリッジへの実装方法について説明する。前光用受光回路実装体1およびディスク光用受光回路実装体2はそれぞれ、受光回路実装体の光センサ部に適正に光が入射するように出力信号を見ながら光軸と垂直な2方向に受光回路実装体の位置の調整を行ったのち、キャリッジ3に接着固定される。このとき支持板11もしくは21を把持して位置調整することにより、欠けやすい半導体チップ自体や柔らかいフレキシブル基板の把持を避けることができる。
【0019】
キャリッジ3と支持板11および21は密着したまま摺動させながら位置調整するために、キャリッジ3には接着面積にある程度の余裕を持たせた平面を容易する必要がある。本発明の受光回路実装体では接着面積が小さいために、キャリッジ3に用意する接着用の平面を小さくすることができ、キャリッジ3を小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の受光回路実装体は、小型でキャリッジとの接触面の面積が小さく、薄型および小型の光ピックアップならびに光ディスク装置に適している。また、樹脂モールドパッケージを使用しないために、青紫レーザダイオードを用いた高密度ディスクに適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を使用した光ピックアップの光学系を示す略図
【図2】本発明の前光用受光回路実装体を示す側面図
【図3】本発明の前光用受光回路実装体の他の実装例を示す側面図
【図4】本発明のディスク光用受光回路実装体を示す側面図
【図5】本発明のディスク光用受光回路実装体の他の実装例を示す側面図
【図6】本発明の受光回路実装体の組み立て斜視図
【図7】従来の受光回路パッケージの実装を示す説明図
【符号の説明】
【0022】
1 前光用受光回路実装体
2 ディスク光用受光回路実装体
12 前光用半導体チップ
22 ディスク光用半導体チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するフレキシブル基板と、受光集積回路が形成された半導体チップとを備え、前記半導体チップの受光部が前記フレキシブル基板の開口部に対向した配置にて前記半導体チップを前記フレキシブル基板上にフリップチップ実装されたことを特徴とする受光回路実装体。
【請求項2】
前記フレキシブル基板において前記半導体チップを実装した領域の周辺の一部を折り返して前記半導体チップの受光部がある面と反対の面に対向させ、前記フレキシブル基板の折り返した部分に前記半導体チップと電気的に接続された回路部品を実装したことを特徴とする請求項1記載の受光回路実装体。
【請求項3】
前記半導体チップの受光部に対向した位置に光を透過する開口部を有し、前記フレキシブル基板の半導体チップ実装部分ならびに折り返し部分を保持する支持板を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の受光回路実装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−48804(P2006−48804A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226495(P2004−226495)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】