説明

受光素子およびそれを備えた光ピックアップ装置

【課題】応答時間の低下を防止でき、かつ、電気信号の劣化を防止できる受光素子およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】P型シリコン基板1の表面にはカソード低抵抗化領域8が形成されている。このカソード低抵抗化領域8上には、入射した光信号の強度に応じて反射率が変化するアモルファス合金膜16を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受光素子およびそれを備えた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を電気信号に変換してその信号処理を行なう、受光素子を内蔵した半導体装置が光ピックアップ等の製品で用いられている。このような装置はIC(集積回路)プロセスを利用して、受光素子であるフォトダイオードと信号処理に用いられるトランジスタ,抵抗,容量などとを同一チップ上に集積したものが一般的である。
【0003】
一般的に、受光素子の性能はその受光感度と応答速度で決定される。上記受光素子の一例であるPN接合ダイオードの受光感度は、基板中に侵入した光によって生成したキャリアのうち、PN接合で形成された空乏層内で発生したキャリアと、空乏層外で発生して拡散によって空乏層内に到達するキャリアとの和によって決定される。また、上記PN接合ダイオードの応答速度は、受光量が低いときにはPN接合の容量値と寄生抵抗とによって決定される。
【0004】
ところで、光ディスクが年々高密度化されるにつれて、光ディスクに照射する光が短波長化されてきている。例えば、CD(コンパクトディスク)には780nmの赤外の光を照射し、DVD(デジタル万能ディスク)には650nmの赤色の光を照射し、BD(ブルーレイディスク)では405nmの青紫色の光を照射している。
【0005】
上記光ディスクに短波長の光を照射する場合、光ディスクで反射された短波長の光が受光素子に入射するが、短波長の光は侵入長が短いため、光励起キャリアの発生場所が受光素子の表面近傍に偏ってしまう。つまり、上記短波長の光を受光した受光素子では、空乏層以外で発生する光励起キャリアの数が多くなってしまう。例えば、上記受光素子が赤外の光を受光した場合、受光素子全体で発生する光キャリアの10%が空乏層外で発生するだけであるが、受光素子が赤色の光を受光した場合、受光素子全体で発生する光キャリアの40%が空乏層外で発生してしまう。また、上記受光素子で青紫色の光を受光した場合に至っては、青紫色の光の侵入長が0.3μm程度であるため、ほとんどの光キャリアが空乏層外で発生してしまう。
【0006】
その結果、上記受光素子では、光電流として空乏層を完全に横切らなければならないキャリアの数が増加するため、空乏層内の内部電界強度が弱いとキャリアの単位時間当りの空乏層通過可能量がキャリアの流入量に追いつかなくなり、受光量が多い場合には空乏層内に過剰のキャリアが蓄積してしまう状況が発生する。これは等価的に空乏層幅の縮小となって現れ、受光素子の応答速度が低下してシステムの性能低下につながる。このような現象は、780nmの波長の光を使うCD装置では問題化していなかったが、650nmの光を使うDVD装置では記録速度の高速化により顕著に問題化してきている。
【0007】
すなわち、上記光ディスクの情報を再生する場合、通常、光ディスクに照射する光の強度は再生速度によらず比較的低いため、光ディスクからの反射光の強度も1μW〜100μW程度と小さく、受光素子の応答速度が低下する問題は発生しない。
【0008】
しかしながら、上記光ディスクに情報を記録する場合、光ディスクに照射する光のエネルギで光ディスクにピットを形成するため、その光の光量は数mW以上と大きな値が必要となる。また、上記光ディスクの記録を高速化すると、光ディスクの回転数が増大するため、光ディスクにピットを形成するために必要なエネルギもますます増大し、光ディスクに照射する光の強度は数十mW以上とさらに大きくなる。その結果、上記受光素子に入射する光の強度はディスクの反射率の仕様から10mW以上となるため、受光素子の応答速度の低下が顕著に現れる。
【0009】
図3に、受光素子に入射する光の入射光量と、その受光素子の応答時間(遅延時間)との関係を示す。ここで、上記受光素子に入射する光の波長は650nmである。
【0010】
図3から判るように、上記受光素子への入射光量が10mWを超えると、応答時間が急激に増大してしまう。
【0011】
このような現象を防ぐためには、上記受光素子への印加電圧と、空乏層幅で決定される空乏層内の電界強度とを強めればよい。しかし、上記印加電圧および電界強度を強くすることは、以下の点で実現不可能であった。
(1)受光素子に印加できる上限電圧は回路仕様で決定されるため、印加電圧を自由に大きく設定して電界強度を上げることはできない点。
(2)拡散プロファイルを調整して空乏層幅が狭くなる構造を作製して電界強度を上げることは可能であるが、その構造では接合容量が増加するため、光ディスクの再生時の本来の応答速度自体が低下してしまう点。
【0012】
また、上記現象を防ぐには、受光素子上に光学フィルタを配置したり(例えば特許文献1(特開2002−270937号公報)参照。)、受光素子の表面の反射率を大きしたりすることよって、受光素子内への入射光量を低下させる方法もある。
【0013】
しかしながら、上記方法は、光ディスクの再生時の光量も低下してしまうため、再生信号のSN(シグナルノイズ)が劣化してしまうという問題が新たに発生してしまう。
【特許文献1】特開2002−270937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の課題は、応答時間の低下を防止でき、かつ、電気信号の劣化を防止できる受光素子およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、第1の発明の受光素子は、
光信号を電気信号に変換するための受光部と、
上記受光部上に形成され、入射した光信号の強度に応じて反射率が変化する機能膜と
を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成の受光素子によれば、上記機能膜に入射した光信号の強度に応じて、機能膜の反射率が変化する。より詳しくは、上記機能膜に入射した光信号の強度が大きいと、機能膜の反射率が大きくなる。反対に、上記機能膜に入射した光信号の強度が小さいと、機能膜の反射率が小さくなる。
【0017】
このように、上記機能膜に入射した光信号の強度が大きいとき、機能膜の反射率が大きくなるから、光信号は機能膜を通過することで強度が小さくなる。したがって、上記受光部には大きな強度の光信号が入射せず、応答速度が低下するのを防止できる。
【0018】
また、上記機能膜に入射した光信号の強度が小さいとき、機能膜の反射率が小さくなるから、機能膜を通過した光信号がさらに小さくならない。したがって、上記電気信号が劣化するのを防止できる。
【0019】
また、上記機能膜の膜厚は、信号光の波長に基づいて設定するのが好ましい。
【0020】
また、上記機能膜は受光部の表面を保護する保護膜を兼ねている。
【0021】
通常、上記受光素子の表面反射率は、受光部が形成された基板の屈折率と、機能膜の屈折率と、機能膜の膜厚と、受光素子周囲の屈折率とによって決定される。上記受光素子周囲の媒質は空気または透明樹脂であるので、受光素子周囲の屈折率は1.0または1.5程度である。
【0022】
例えば、上記受光素子周囲の媒質が空気である場合は、受光素子の受光部上に、屈折率が約1.45で厚さが約50nmの酸化シリコン膜と、屈折率が約2.0で厚さが約50nmの窒化シリコン膜とを積層すると、650nmの波長の光信号に対して受光素子の表面反射率は、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜に入射した光信号の光量に関係なく約15%という低い値を実現できる。これは、上記酸化シリコン膜と窒化シリコン膜が光信号の光量に関係なくほぼ一定の屈折率を示すからである。
【0023】
また、上記受光素子の受光部上に、屈折率が約1.45で厚さが約55nmの酸化シリコン膜と、厚さが約45nmでCo(コバルト),Cr(クロム),Zr(ジルコニウム)で構成された非線形光学膜とを積層した場合、非線形光学膜に入射した光信号の光量が例えば数十μWであると、非線形光学膜の屈折率は約2.0となる。このため、650nmの波長の光信号に対して受光素子の表面反射率は約15%となる。そして、上記光信号の光量が例えば15mWに上がると、非線形光学膜の屈折率は約2.5に増加する。このため、650nmの波長の光信号に対して受光素子の表面反射率は約45%となる。このとき、上記受光素子の内部に実際に入射する光信号の光量は、受光素子へ向かって来た光信号の光量の約半分となる。具体的には、上記受光素子の内部に実際に入射する光信号の光量は8mWである。このレベルであれば図3に示すように応答速度の低下は発生しない。
【0024】
また、上記受光素子の受光部上に積層する膜の数は各膜厚を最適化すれば3つ以上でもよい。例えば、上記受光素子の受光部上に、屈折率が約1.45で厚さが約15nmの酸化シリコン膜と、屈折率が約2.0で厚さが約50nmの窒化シリコン膜と、厚さが50nmでCo,Cr,Zrで構成された構成された非線形光学膜とを積層してもよい。この酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および非線形光学膜を光学素子の受光部上に積層した場合、非線形光学膜に入射した光信号の光量が例えば数十μWであると、非線形光学膜の屈折率は約2.0となる。このため、650nmの波長の光信号に対して受光素子の表面反射率は約15%となる。そして、上記光信号の光量が例えば15mWに上がると、非線形光学膜の屈折率は約2.5に増加する。このため、650nmの波長の光信号に対して受光素子の表面反射率は約40%となる。このとき、上記受光素子の内部に実際に入射する光信号の光量は9mWである。このレベルでも図3に示すように応答速度の低下は発生しない。
【0025】
なお、上記受光素子の受光部上に積層する膜の数は使用するプロセスに合わせて適時選択すればよい。
【0026】
一実施形態の受光素子では、上記機能膜は、上記光信号の光量に応じて屈折率が変化する。
【0027】
一実施形態の受光素子では、上記機能膜は非線形光学膜である。
【0028】
一実施形態の受光素子では、上記非線形光学膜の材料がアモルファス合金またはナノガラスである。
【0029】
一実施形態の受光素子では、上記機能膜とは異なる材料で形成され、かつ、上記機能膜に積層された光学膜を備える。
【0030】
一実施形態の受光素子では、上記光学膜は酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との少なくとも一方である。
【0031】
一実施形態の受光素子では、上記光学膜は、上記機能膜と上記受光部との間に形成された酸化シリコン膜である。
【0032】
一実施形態の受光素子では、上記光学膜は、上記機能膜と上記受光部との間に形成され、かつ、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを含み、上記窒化シリコン膜は、上記酸化シリコン膜と上記機能膜との間に位置する。
【0033】
一実施形態の受光素子では、上記酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および機能膜の各膜厚は、上記光信号の波長に基づいて設定されている。
【0034】
より詳しくは、上記実施形態の受光素子では、上記酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および機能膜は、それぞれ、対象となる光信号の強度が大きいときには反射率が大きく、かつ、対象となる光信号の強度が小さいときには反射率が小さくなるように膜厚が設定されている。
【0035】
第2の発明の光ピックアップ装置は、上記第1の発明の受光素子を備えたことを特徴としている。
【0036】
上記構成の光ピックアップ装置によれば、例えばDVDなどの光ディスクに情報を記録するときには受光素子の機能膜の光透過量が小さくなり、かつ、光ディスクの情報を再生するときには受光素子の機能膜の光透過量が大きくなる。
【0037】
したがって、上記光ディスクに情報を記録するときの応答速度の低下を防ぐことができ、かつ、光ディスクの情報を再生するときの電気信号の劣化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0038】
第1の発明の受光素子は、上記機能膜に入射した光信号の強度に応じて、機能膜の反射率が変化することによって、その光信号の強度が大きいときには機能膜の反射率が大きくなるから、受光部には大きな強度の光信号が入射せず、応答速度が低下するのを防止できる。
【0039】
また、上記機能膜に入射した光信号の強度に応じて、機能膜の反射率が変化することによって、その光信号の強度が小さいときは機能膜の反射率が小さくなるから、その光信号は機能膜を通過しても強度がさらに小さくならず、電気信号が劣化するのを防止できる。
【0040】
すなわち、第1の発明の受光素子は、入射光量によらず応答速度の速くできる上に、入射光量の低下を防ぐこともできる。
【0041】
第2の発明の光ピックアップ装置は、上記第1の発明の受光素子を備えているから、光ディスクに情報を記録するときの応答速度の低下を防ぐことができ、かつ、光ディスクの情報を再生するときの電気信号の劣化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の受光素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。本実施の形態では、本発明の受光素子とICとを集積した光半導体装置について詳細に説明する。
【0043】
図1に、本発明の一実施の形態の受光素子101の模式断面図を示す。
【0044】
上記受光素子101は、P型シリコン基板1の表面に形成されたカソード低抵抗化領域8と、このカソード低抵抗化領域8上に順次積層された酸化シリコン膜6、窒化シリコン膜7およびアモルファス合金膜16とを備えている。また、上記P型シリコン基板1にはNPNトランジスタ102が形成されている。
【0045】
なお、図1において、2はNPNトランジスタ102のN+埋込み層、3は素子分離するためのP+埋込み層、4はN型エピタキシャル層、5は素子分離領域、9はベース領域、10はコレクタ補償拡散領域、11はエミッタ領域、12A,12B,12Cは1層目メタル、13は層間絶縁膜、14は2層目メタル、15は表面保護膜である。
【0046】
本実施の形態では、上記カソード低抵抗化領域8と、N型エピタキシャル層のカソード低抵抗化領域8下の部分と、P型シリコン基板1のカソード低抵抗化領域8下の部分とが受光部の一例を構成している。そして、上記アモルファス合金膜16が非線形光学膜の一例である。また、上記酸化シリコン膜6と窒化シリコン膜7とは光学膜の一例を構成している。
【0047】
上記構成の受光素子101によれば、アモルファス合金膜16は光信号の強度に応じて反射率が変化する。より詳しくは、上記アモルファス合金膜16に入射した光信号の強度が大きいと、アモルファス合金膜16の反射率が大きくなる。反対に、上記アモルファス合金膜16に入射した光信号の強度が小さくなると、アモルファス合金膜16の反射率が小さくなる。
【0048】
このように、上記アモルファス合金膜16に入射した光信号の強度が大きいときは、アモルファス合金膜16の反射率が大きくなるから、カソード低抵抗化領域8に入射した光信号の強度が小さくなる。したがって、上記カソード低抵抗化領域8には大きな強度の光信号が入射せず、応答速度が低下するのを防止できる。
【0049】
また、上記アモルファス合金膜16に入射した光信号の強度が小さいときには、アモルファス合金膜16の反射率が小さくなるから、光信号はアモルファス合金膜16を通過しても強度がさらに小さくならない。したがって、上記電気信号が劣化するのを防止できる。
【0050】
以下、図2A〜図2Gを用いて、上記受光素子101およびNPNトランジスタ102の製造方法について説明する。
【0051】
まず、図2Aに示すように、約500Ωcmの比抵抗を持つP型シリコン基板1の表面に、NPNトランジスタ102のコレクタ領域を形成するためのN+埋込み層2と、素子分離のためのP+埋込み層3とを形成する。なお、上記受光素子101を形成するための領域を分割する必要がある場合には、その領域の分割部にもP+埋込み層3を形成しておく。また、上記P型シリコン基板1のような高比抵抗の基板を使用するのは、空乏層幅を大きくし、接合容量を低減することにより、受光素子101の応答速度を向上させるためである。
【0052】
次に、上記P型シリコン基板1の表面上に、図2Bに示すように、約2μmのN型エピタキシャル層4を積層する。さらに、LOCOS(シリコン局所酸化法)工程を行うことによって、P+埋込み層3の上に、酸化膜からなる素子分離領域5を形成する。これにより、上記P型シリコン基板1に形成する各素子を電気的に分離する。このとき、上記受光素子101を形成するための領域に分割部がある場合、この分割部のP+埋込み層3上に酸化を行なわなくともよい。
【0053】
次に、上記N型エピシャキタル層4および素子分離領域5上に、図2Cに示すように、厚さが例えば15nmの酸化シリコン膜6を熱酸化法で形成する。さらに、上記酸化シリコン膜6上に、厚さが例えば50nmの窒化シリコン膜をCVD(化学蒸気堆積)法で形成した後、N型エピタキシャル層4に受光素子101のカソード低抵抗化領域8をリンのイオン注入法で形成する。なお、上記受光素子101を形成するための領域を分割する場合には、その領域の分割部にボロンのイオン注入を行なう。この後、上記受光素子101を形成するための領域以外の窒化シリコン膜をドライエッチング法で除去する。これにより、上記カソード低抵抗化領域8上に位置する窒化シリコン膜7が得られる。
【0054】
次に、上記N型エピシャキタル層4に、図2Dに示すように、NPNトランジスタ102のベース領域9をボロンのイオン注入法によって形成すると共に、コレクタ補償拡散領域10をリンのイオン注入法によって形成する。
【0055】
次に、上記ベース領域9に、図2Eに示すように、エミッタ領域11を砒素のイオン注入法で形成した後、アニール処理を行なって所定のプロファイルを実現する。
【0056】
次に、上記酸化シリコン膜6に、図2Fに示すように、コンタクトホール17を形成した後、1層目メタル配線層12A,12B,12Cを形成する。この1層目メタル配線層12Aはベース領域9に電気的に接続し、1層目メタル配線層12Bはコレクタ補償拡散領域10に電気的に接続し、1層目メタル配線層12Cはエミッタ領域11に電気的に接続する。さらに、上記酸化シリコン膜6、窒化シリコン膜7および1層目メタル配線層12A,12B,12C上に層間絶縁膜13を形成する。
【0057】
次に、上記層間絶縁膜13に、図2Gに示すように、スルーホール18を開口した後、層間絶縁膜13上に2層目メタル配線層14を形成する。
【0058】
次に、上記2層目メタル配線層14上に表面保護膜15を形成した後、図1に示すように、全面にアモルファス合金膜16をスパッタ法で形成する。その後、ボンディングパッド部を開口すれば、光半導体装置が完成する。
【0059】
このように作製した光半導体装置を光ピックアップ装置に搭載した場合、例えばDVDなどの光ディスクに情報を記録するときにはアモルファス合金膜16の光透過量が小さくなり、かつ、光ディスクの情報を再生するときにはアモルファス合金膜16の光透過量が大きくなる。
【0060】
したがって、上記光ディスクに情報を記録するときの応答速度の低下を防ぐことができ、かつ、光ディスクの情報を再生するときの電気信号の劣化を防ぐことができる。
【0061】
また、上記受光素子101は、特にCD、DVDおよびBDなどの光ピックアップ装置に好適に用いることができる。
【0062】
上記実施の形態では、カソード低抵抗化領域8上にアモルファス合金膜16を形成したが、カソード低抵抗化領域8上に、ナノガラスからなる非線形光学膜を形成してもよい。
【0063】
また、上記カソード低抵抗化領域8上に、4つ以上の層からなる積層膜を形成してもよい。ただし、上記積層膜を構成する層の少なくとも1つは、光信号の強度に応じて反射率が変化する機能膜である。
【0064】
また、上記カソード低抵抗化領域8上に、酸化シリコン膜6や窒化シリコン膜7以外の光学膜を形成してもよい。この光学膜は、アモルファス合金膜16とは異なる材料で形成する。
【0065】
また、上記カソード低抵抗化領域8とアモルファス合金膜16との間に酸化シリコン膜6および窒化シリコン膜7を形成してたが、カソード低抵抗化領域8とアモルファス合金膜16との間に酸化シリコン膜6のみを形成してもよい、または、カソード低抵抗化領域8とアモルファス合金膜16との間に窒化シリコン膜6のみを形成してもよい。
【0066】
また、上記酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および機能膜の各膜厚は、光信号の波長に応じて設定するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は本発明の一実施の形態の受光素子の模式断面図である。
【図2A】図2Aは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2B】図2Bは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2C】図2Cは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2D】図2Dは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2E】図2Eは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2F】図2Fは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図2G】図2Gは上記受光素子の製造工程を説明するための模式断面図である。
【図3】図3は従来の受光素子における入射光量と応答時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1…P型シリコン基板
2…N+埋込み層
3…P+埋込み層
4…N型エピタキシャル層
5…素子分離領域
6…酸化シリコン膜
7…窒化シリコン膜
8…カソード低抵抗化領域
9…ベース領域
10…コレクタ補償拡散領域
11…エミッタ領域
12…1層目メタル
13…層間絶縁膜
14…2層目メタル
15…表面保護膜
16…アモルファス合金膜
101…受光素子
102…NPNトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を電気信号に変換するための受光部と、
上記受光部上に形成され、入射した光信号の強度に応じて反射率が変化する機能膜と
を備えたことを特徴とする受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の受光素子において、
上記機能膜は、上記光信号の光量に応じて屈折率が変化することを特徴とする受光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の受光素子において、
上記機能膜は非線形光学膜であることを特徴とする受光素子。
【請求項4】
請求項3に記載の受光素子において、
上記非線形光学膜の材料がアモルファス合金またはナノガラスであることを特徴とする受光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の受光素子において、
上記機能膜とは異なる材料で形成され、かつ、上記機能膜に積層された光学膜を備えたことを特徴とする受光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の受光素子において、
上記光学膜は酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との少なくとも一方であることを特徴とする受光素子。
【請求項7】
請求項5に記載の受光素子において、
上記光学膜は、上記機能膜と上記受光部との間に形成された酸化シリコン膜であることを特徴とする受光素子。
【請求項8】
請求項5に記載の受光素子において、
上記光学膜は、上記機能膜と上記受光部との間に形成され、かつ、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを含み、
上記窒化シリコン膜は、上記酸化シリコン膜と上記機能膜との間に位置することを特徴とする受光素子。
【請求項9】
請求項1に記載の受光素子を備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−19423(P2006−19423A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194613(P2004−194613)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】