説明

口腔内分散性多層錠剤

【課題】任意選択で被覆され、内容物の不均一性または不適合といった欠点を有することがない、種々の活性物質の組合せを可能にする口腔内分散性錠剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、口腔内分散性多層錠剤およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層口腔内分散性錠剤およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「口腔内分散性錠剤」は、口の中で、唾液と接触すると、60秒以内、好ましくは40秒以内に、咀嚼することなく、崩壊または溶解し、容易に嚥下できる粒子の懸濁液を形成するよう意図された錠剤を意味する。
【0003】
崩壊時間は、錠剤を舌の上に置いた瞬間から錠剤の崩壊または溶解により生じた懸濁液を嚥下した瞬間までの時間に相当する。
【0004】
錠剤のタイプは、例えば文書EP 548 356、EP 636 364、EP 1 003 484、EP 1 058 538、WO 98/46215、WO 00/06126、WO 00/27357およびWO 00/51568に記述されている。
【0005】
活性物質の粒子は、嚥下された後は、活性物質を消化管の下方部分に放出する。
【0006】
口腔内分散性錠剤は、使用が容易であるところから、通院治療、より特には、ある種の患者、および、特には、液体と同時に摂取する場合でも、錠剤またはゲルカプセルの摂取を不快、または耐え難いと感じるような、嚥下を困難とする高齢者または幼児に最適である。
【0007】
母集団の50%がこのような困難を感じていると推定され、その結果、処方された医薬品の摂取がなされず、したがって治療の効果に対し大きな影響を与える可能性がある(H. Seager、1998年、J. Pharm. Pharmacol.、50、375〜382頁)。
【0008】
これらの嚥下困難は、数種類の医薬品を終日摂取する必要があり、摂取回数が増加する場合、明らかに悪化する。
【0009】
活性成分を一定の組合せで含む口腔内分散性錠剤は、特に高齢者および小児が罹る慢性的病状の場合、長期治療での患者のコンプライアンス改善のための解決策となるであろう。
【0010】
このような錠剤を製造しようとする試みは、例えば錠剤化賦形剤および活性物質の両方を含む単一の混合物を錠剤化することにより、すでに行われている。しかし、これらの錠剤には、ある種の欠点、特に各活性物質の内容物の不均一性、あるいは錠剤の種々の成分、活性物質または賦形剤の間の不適合の危険性がある。
【0011】
具体的には、技術的に難しい第1の点は、成形プロセス全体を通じて、各活性物質の内容物の均一性を得ること、この例では、前記錠剤の全ての成分を含む粉末混合物の錠剤化である。
【0012】
粉末混合物は、それぞれが固有のサイズ、密度または形態的特徴を有する活性物質および賦形剤のいくつかの集合体からなるため、一般に、コントロール(調節)するのが難しい。
【0013】
この不均一性は、貯蔵中または打錠機のフィードホッパーにおける、ある種の粒子集合体の段階的な不均一性に反映される、分離の危険性増大を引き起こす。
【0014】
その場合、最終的な単位形態は、各活性物質の非常に多様な内容物、および同一バッチ内でも有意に異なる固有の硬度、崩壊または食味特性を有する。
【0015】
活性物質および賦形剤の集合体を細部に注意を払って選択しても、この危険性を完全に排除するには十分ではない。
【0016】
さらに、口腔内分散性錠剤に適用できる他の解決策が、例えば出願人により特許出願FR 03 01308(現在までのところ未公表)において、内容物の均一性を改善することを提案しているが、これらは不適合の危険性を制限するには完全に満足のいくものではない。
【0017】
具体的には、活性物質の組合せを含む錠剤の製造における技術的に難しい第2の点は、一緒に使用される可能性のある活性物質および賦形剤の選択であり、その理由は活性物質同士の不適合および活性物質と賦形剤との間の不適合による危険性であって、この危険性は錠剤中に存在する成分の数が多いと増大する。
【0018】
これらの不適合の危険性を低減するために、解決策が、特に多層錠剤の調製により、提案されている。このような錠剤は、長年にわたり記述されている(Abrege Pharmacie Galenique [Abstract of Pharmaceutical Pharmacy]、Le Hir、3rd. ed.、269頁、Evaluation of bilayer tablet machines - A case study.、S.P. Li、M.G. Karth、K.M. Feld、L.C. Di Paolo、C.M. Pendharkar、R.O. Williams、Drug Dev. Ind. Pharm.、21 (5)、571〜590頁、(1995年))。
【0019】
これらの錠剤は、お互いに表面を介して接着した少なくとも2つの層により形成される。
【0020】
錠剤の各層は、固有の組成を有し、かつ内容物の不均一性および物理化学的不適合の両方の危険性を制限する一連の錠剤化によりうまく(成功裏に)形成される。
【0021】
しかしこのタイプの錠剤は、それぞれの層の接着を確実にするために処方調整を必要とする。
【0022】
この目的は、100Nよりもかなり高い硬度値を有する錠剤を高頻度でもたらす高い圧縮力をかけることにより、または、錠剤の層の少なくとも1つの中に、層間の接着を促進するのに有効な量で、結合剤が存在することにより、通常、達成される。
【0023】
さらに、多層錠剤の調製は、各粉末混合物に圧縮力を繰り返しかけることを必要とする。
【0024】
したがって、これらの条件は、迅速に崩壊するよう意図された錠剤の場合、または、苦味をマスキングすることが必要な活性物質の場合(圧縮の影響を特に受けやすいことが知られているポリマーコーティングなどの方法であって、かつその使用が、被膜の崩壊の危険性を増大させる高い圧縮力をかけることに適合しないポリマーコーティングなどの方法を介したマスキング)のどちらにおいても、好ましくない。
【0025】
このような理由から、現時点において、口中で崩壊することを意図された固体形態の中で、存在する多層錠剤は、頬側粘膜および中咽頭に限定された局所作用を有する活性物質の投与を目的とする錠剤または舐めて用いるトローチの形態であり、単に甘味料を加える以外にいかなる味マスキングをも必要としない。
【0026】
このような舌下投与用錠剤の既知の一例は、Theraplixによりフランスで販売されているSolutricine(登録商標) vitamin Cであり、チロスリシンおよびアスコルビン酸を含む3層錠剤である。
【0027】
これらの舐めて用いる多層錠剤は、層の接着を確実にする高レベルの硬度を有し、かつ錠剤が徐々に崩壊する時間に相当する口腔内での滞留時間として数分を有する。
【0028】
このような錠剤の主要な崩壊のメカニズムである侵食および溶解は、この場合、錠剤のサイズおよび唾液と接触する錠剤の表面積に直接依存する。
【0029】
この解決策には制約があり、その結果、解決策は、現在のところ活性物質の組合せを処方化するために提案され、したがって口腔内分散性錠剤には応用される可能性がなく、使用される活性物質の味がマスキングを必要とする場合にはさらに応用されにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】EP 548 356
【特許文献2】EP 636 364
【特許文献3】EP 1 003 484
【特許文献4】EP 1 058 538
【特許文献5】WO 98/46215
【特許文献6】WO 00/06126
【特許文献7】WO 00/27357
【特許文献8】WO 00/51568
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】H. Seager、1998年、J. Pharm. Pharmacol.、50、375〜382頁
【非特許文献2】Abrege Pharmacie Galenique [Abstract of Pharmaceutical Pharmacy]、Le Hir、3rd. ed.、269頁
【非特許文献3】Evaluation of bilayer tablet machines - A case study.、S.P. Li、M.G. Karth、K.M. Feld、L.C. Di Paolo、C.M. Pendharkar、R.O. Williams、Drug Dev. Ind. Pharm.、21 (5)、571〜590頁、(1995年)
【非特許文献4】Remington's Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA、1985年、1418頁
【非特許文献5】European Pharmacopoeia、(2.9.8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、任意選択で被覆され、内容物の不均一性または不適合といった欠点を有することがない、種々の活性物質の組合せを可能にする口腔内分散性錠剤が、真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
出願人は、全く予想に反して、多層口腔内分散性錠剤を得ることが可能であることを見出した。したがって、本発明は、口腔内分散性であり、かつ少なくとも2つの重なり合って一体化した層からなり、前記の2層がそれぞれ少なくとも1種の活性物質を含む錠剤に関する。
【0034】
層は、それぞれ錠剤化賦形剤の混合物を含む。賦形剤の混合物は、
・少なくとも1種の可溶性薬剤、
・少なくとも1種の崩壊剤および/または少なくとも1種の膨張剤、
を含む。
【0035】
層の数は、結果として決まる錠剤の厚さにより制限されるが、患者に許容されなければならず、かつ一般に、3を超えることがない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の第1の変形例において、口腔内分散性錠剤は、各層に少なくとも1種の活性物質を含む2層錠剤である。
【0037】
本発明の第2の変形例において、口腔内分散性錠剤は、3層錠剤である。
【0038】
この場合、3層が活性物質を含んでよいか、あるいは層のうちの1つが賦形剤のみを含んでよい。
【0039】
有利には、賦形剤のみを含む層は、それぞれが少なくとも1種の活性物質を含む2層の間に挿入される。
【0040】
本発明の一変形例によれば、2つの層の活性物質は、ベースの分子は同一であるが、塩の性質または使用される塩基が異なるか、あるいは層のうちの1つに存在する分子の多形または無定形結晶状態、溶解性および/または薬物動態学的性質がもう1つの層中に存在する分子の多形または無定形結晶状態、溶解性および/または薬物動態学的性質と異なっている。
【0041】
本発明のもう1つの変形例によれば、層のそれぞれに存在する活性物質は、化学的に同一であるが、有意に異なるin vitroおよびin vivo放出速度を有するように層のそれぞれにおいて別々に形成される。
【0042】
活性物質は、例えば、調節された放出特性、例えば8から24時間の時間にわたり効果的に放出するような徐放性、または活性物質が特定の吸収部位において放出されることまたは好ましくないpHの媒体中での分解を防ぐことを可能にする遅延放出性を有する粒子の形態である。
【0043】
この変形例において、もう一方の層の活性物質は、任意選択で、分子が単純な味マスキングを必要とする場合には被覆された、または第1の層とは異なる放出プロフィールに従って改質された即時形態である。
【0044】
これらの放出または味マスキング特性は、この結果を達成するためのあらゆる既知の方法によって、しかし好ましくは活性物質粒子のポリマーコーティングによって達成されてよい。
【0045】
このような錠剤の患者への投与がもたらす血漿プロフィールは、各層の粒子の放出速度に対応するいくつかの血漿濃度ピークを示す。前記粒子は口腔内分散性錠剤の崩壊後にいっせいに嚥下されている。
【0046】
活性物質は、薬剤のあらゆるファミリー、例えば、消化管鎮静薬、制酸薬、鎮痛薬、抗炎症薬、冠動脈血管拡張薬、抹消および脳血管拡張薬、抗感染症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、駆虫剤、抗がん剤、抗不安薬、神経遮断薬、中枢神経系賦活薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、止瀉薬、緩下剤、食事性サプリメント、免疫抑制剤、低コレステロール血症薬、ホルモン、酵素、鎮痙薬、抗狭心症薬、心拍数に影響を及ぼす医薬品、動脈性高血圧の治療に使用される医薬品、血液凝固に影響を及ぼす医薬品、抗てんかん薬、筋肉弛緩剤、糖尿病の治療に使用される医薬品、甲状腺機能障害の治療に使用される医薬品、利尿薬、食欲抑制薬、抗喘息薬、去痰薬、鎮咳薬、粘液調節剤、鬱血除去薬、催眠薬、制嘔吐剤、造血剤、尿酸排泄剤、植物抽出物、造影剤またはあらゆる他のファミリーの化合物から選択されてよく、錠剤に配合される活性物質は場合によっては同一のファミリーまたは異なるファミリーから選択される。
【0047】
活性物質は、薬学的に許容できるその塩の形態またはあらゆる多形形態(ラセミ混合物、エナンチオマーなど)であってよい。表現「薬学的に許容できる塩」は、その中でベースとなる薬学的に活性な化合物がその塩基性または酸性塩に変換される、記述された化合物の誘導体を意味し、薬学的に許容できる塩の例は、特にアミンなどの塩基性残基の有機酸または無機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ性誘導体または有機塩、などを含む。薬学的に許容できる塩は、例えば非毒性の無機または有機酸から形成される、ベースの化合物の標準的な非毒性の塩または第四級アンモニウム塩を含む。例えば、このような標準的な非毒性の塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される無毒性塩;およびアミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモイン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの無機酸から誘導される塩を含む。
【0048】
本発明の薬学的に許容できる塩は、酸性または塩基性化画分を含むベースの治療用化合物から標準的方法により合成されてよい。一般に、これらの塩は、遊離酸または遊離塩基形態を所定の量の適切な塩基または酸と、水中または有機溶媒中または水と有機溶媒の混合物中で反応させることにより調製されてよい。
【0049】
非水性媒体が、一般に好ましい。適切な塩の一覧は、Remington's Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA、1985年、1418頁に示される。
【0050】
表現「薬学的に許容できる」は、本明細書において、通常医学的に許容できるものに基づき、適度なベネフィット/リスク比を目的とし、毒性、刺激、アレルギー反応または他の極端な問題または困難な状況を伴うことなくヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに適した、化合物、物質、組成物および/または医薬品形態を称するために使用される。
【0051】
本発明の多層口腔内分散性錠剤は、特に医薬品を組み合わせて投与するのに適する。なぜならば、この多層口腔内分散性錠剤は、嚥下が困難である患者の場合、患者に毎日摂取されるユニットの数を低減することおよび患者の治療に対するコンプライアンスを向上させることの両方を可能にするからである。
【0052】
組合せは、薬学の研究所により特に研究されている;下記に挙げる組合せは比限定的例として示される。
【0053】
活性物質の組合せは、相乗効果が所望されるとき、特に鎮痛分野において、例えばモルヒネ、オキシコドンまたはトラマドールをイブプロフェン、パラセタモールなどの第2の鎮痛薬と組み合わせることにより、あるいは抗炎症分野においてケトプロフェンおよびナプロキセンを、あるいはジクロフェナクとミソプロストールを組み合わせることにより特に有用である。
【0054】
薬物中毒者による医薬品の乱用を避けるために、オピオイド鎮痛薬、例えばオキシコドンまたはモルヒネを、ナロキソンまたはナルトレキソンなどのオピオイド受容体拮抗薬とともに投与することもまた可能である。
【0055】
抗潰瘍薬分野において、好ましい組合せは、抗潰瘍薬例えばオメプラゾールまたはランソプラゾールなどのプロトンポンプ抑制薬を、ファモチジンまたはラニチジンなどのH-2受容体阻害薬あるいは制酸薬と組み合わせる。
【0056】
低コレステロール血症薬および抗糖尿病の分野において、異なるファミリーに属する分子を組み合わせることが可能であり、これらはフィブレート、例えばフェノフィブレート、メトフォルミンなどのビグアナイドあるいはアトルバスタチンまたはシンバスタチンなどのスタチン類を含む。
【0057】
他の分野は、特にAIDSウイルスに対して有効な医薬品または抗がん剤の分野などが特に研究されている。
【0058】
サイズが20μmと1,000μmとの間である活性物質は、粉末または微小結晶の形態、あるいは乾燥、湿式または高温顆粒化により得られた顆粒の形態、あるいは別法として中性担体上にマウントすることまたは押出し球状化により得られた顆粒の形態であってよい。
【0059】
以下の記述において、用語「活性粒子」は、活性物質が使用されてよいこれらの形態のあらゆるものを意味するために使用されることになる。
【0060】
当初は粉末または微小結晶形態である活性物質を、乾燥形態で顆粒化のため、また水溶性溶液または有機溶媒溶液中での溶液または懸濁液の形態で不活性担体へのマウントのために使用する。不活性担体は、微粒子の形態、結晶形態またはアモルファス形態で存在する化学的におよび薬学的に不活性な任意の賦形剤(例えばラクトース、スクロース、加水分解デンプン(マルトデキストリン)またはセルロースなどの糖誘導体)からなることができる。
【0061】
スクロースおよびデンプンなどの混合物、またはセルロース系の混合物もまた、球状不活性担体の調製に使用される。
【0062】
不活性担体の単位粒子サイズは、50μmと500μmとの間、好ましくは90μmと150μとの間であってよい。
【0063】
活性粒子はまた、1つまたは複数の結合剤、希釈剤、帯電防止剤、周囲のマイクロpHを改変するための薬剤、およびこれらの混合物を含む群から選択される賦形剤を含んでもよい。
【0064】
結合剤は、非被覆粒子の重量に対して、15重量%まで、好ましくは10重量%までであってよい割合で存在し、かつ特にセルロース系ポリマー、アクリルポリマー、ポビドン、コポビドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デンプン、プレゼラチン化デンプン、スクロースおよびこれらの誘導体、グアーガムおよびポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物を含む群から選択されてよい。
【0065】
希釈剤は、非被覆粒子の重量に対して、95重量%まで、好ましくは50重量%までであってよい割合で存在し、特にセルロース系の誘導体、好ましくはマイクロクリスタリンセルロース、ポリオール、好ましくはマンニトール、デンプン単独、ラクトースなどの糖誘導体およびこれらの混合物を含む群から選択されてよい。
【0066】
帯電防止剤は、非被覆粒子の重量に対して、10重量%まで、好ましくは3重量%までであってよい割合で存在し、特にコロイド状シリカ、特にAerosil(登録商標)のブランド名で販売されている製品、好ましくは沈降シリカ、特にSyloid(登録商標) FP244の名称で販売されている製品、および微粒子または非微粒子化タルク、ならびにこれらの混合物を含む群から選択されてよい。
【0067】
周囲のマイクロpHを改変するための薬剤は、酸性または塩基性化合物であってよい。
【0068】
酸性薬剤は、遊離酸、無水酸または酸性塩の形態のいかなる無機または有機酸からなってもよい。
【0069】
この酸は、特に酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、α-ヒドロキシ酸、アスコルビン酸およびアミノ酸、ならびにこれらの酸の塩および誘導体をも含む群から選択される。
【0070】
塩基性化合物は、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸アンモニウムあるいは炭酸L-リシン、炭酸アルギニン、グリシン炭酸ナトリウム、アミノ酸炭酸ナトリウム、無水過ホウ酸ナトリウム、発泡性過ホウ酸、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過炭酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カルシウムならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0071】
本発明の状況において、炭酸塩は、炭酸塩かセスキ炭酸塩または炭酸水素塩のいずれかである。
【0072】
周囲のマイクロpHを改変するための薬剤の量は、非被覆粒子の重量に対して、0.5重量%と20%との間、好ましくは5重量%と15重量%との間、より好ましくは5重量%と10重量%との間である。
【0073】
適切である場合には、粉末、微小結晶または活性物質粒子は、有利には所望の特性、特に味マスキングおよび/または緩和、遅延または維持された放出、の機能として組成が選択された機能層により被覆されてよい。
【0074】
コーティング組成物は、各活性物質の物理化学的特性の機能として選択され、かつ少なくとも1種のコーティングポリマーからなる。
【0075】
コーティングポリマーは、特定のpH値で不溶性または可溶性であってよく、かつ有利にはセルロース系ポリマー、アクリルポリマーおよびビニルポリマー、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0076】
セルロース系ポリマーの中で、有利に選択されるであろうセルロース系ポリマーは、単独でまたはこれらの混合物としての、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。
【0077】
アクリルポリマーの中で、有利に選択されるであろうアクリルポリマーは、アンモニオ-メタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標) RLおよびRS)、ポリアクリレート(Eudragit(登録商標) NE)およびポリメタクリレート(Eudragit(登録商標) E)、Eudragit(登録商標) L100またはEudragit(登録商標) L30Dのブランド名で販売されているメタクリル酸コポリマーであり、Eudragit(登録商標)は、Rohmにより申請されたブランド名である。
【0078】
他のポリマーは、例えば、単独で、混合物としてまたは別個に組み合わされて使用されるシェラック、フタル酸酢酸ポリビニル、または他のあらゆるポリマーである。
【0079】
コーティング組成物は、好ましくは、表面の状態にかかわらず、各粒子の表面全体を覆う連続的被膜を形成するために、例えば医薬品が摂取された瞬間および口腔中での被覆粒子の滞留時間の間中効率的な味マスキングを得る事を可能にするのに十分な量で、溶媒または溶媒混合物中のコーティングポリマーの溶液、懸濁液またはコロイド分散液を噴霧することにより塗布される。
【0080】
被膜の厚さは、一般に5μmと75μmとの間であるが、通常、唾液のpHにおける活性物質の溶解度、および、程度の差はあれ、その苦味の顕著な性質に依存する。
【0081】
ポリマーは、活性物質粒子の表面に、被覆粒子の重量に対して添加重量として算出して、60重量%まで、好ましくは20重量%までの割合で塗布される。
【0082】
コーティングポリマーを噴霧するために選択される溶媒は、水、または、エタノール、イソプロパノール、アセトンもしくは塩化メチレンなどの有機溶媒、あるいは溶媒の混合物であってよい。
【0083】
コーティング組成物はまた、任意選択で、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤および/または滑沢剤を含む。
【0084】
可塑剤は、ポリマーの乾燥重量に対して重量ベースで表して、40重量%以下、好ましくは15重量%と30重量%との間の割合で使用され、かつ、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリアセチン、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、モノアセチル化およびジアセチル化グリセリド、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0085】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性および両性界面活性剤から選択される。
【0086】
帯電防止剤は、ポリマーの乾燥重量に対して算出して、10重量%以下、好ましくは0と3重量%との間、好ましくは1重量%以下の割合で、微粒子または非微粒子化タルク、コロイド状シリカ(Aerosil(登録商標) 200)、処理シリカ(Aerosil(登録商標) R972)または沈降シリカ(Syloid(登録商標) FP244)およびこれらの混合物を含む群から使用される。
【0087】
滑沢剤は、ポリマーの乾燥重量に対して算出して、10重量%以下、好ましくは0と3重量%との間、好ましくは1重量%以下の割合で使用され、かつステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールおよび安息香酸ナトリウム、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0088】
被覆粒子のサイズは、通常、50μmと1,000μmとの間、好ましくは100μmと800μmとの間、より好ましくは200μmと500μmとの間であり、通常の方法、例えばメッシュサイズを較正したふるいを用いてまたはレーザー散乱により決定する。
【0089】
通常被覆粒子に好ましい粒度分布は、上記の方法のうち1つにより決定して、少なくとも80重量%の被覆粒子群が、90μmと500μmとの間、好ましくは150μmから500μmのサイズおよび200μmと400μmとの間のD50%値に相当する。
【0090】
錠剤の各層に存在する賦形剤の混合物は、時として、活性物質粒子を形成するために使用される賦形剤とは異なるものとして下記の記述において「錠剤化賦形剤」と称される。
【0091】
この混合物は、必然的に少なくとも1種の可溶性薬剤、少なくとも1種の崩壊剤および/または少なくとも1種の膨張剤を含む。
【0092】
可溶性薬剤は、スクロース、ラクトース、フラクトース、デキストロースなどの糖類またはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、ラクチトールまたはエリスリトールなど13個未満の炭素原子を含むポリオールから、単独でまたは混合物として選択される。
【0093】
可溶性薬剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、20重量%と90重量%との間、好ましくは30重量%と60重量%との間の割合で使用される。
【0094】
可溶性薬剤は、平均粒子径が100μmから500μmである直接圧縮可能な形態で使用されるかあるいは、平均粒子径が100μm未満である粉末形態で使用され、前記粉末は、単独または直接圧縮可能な物質との混合物として使用される。
【0095】
錠剤の各層は、単一の可溶性薬剤または少なくとも2種の可溶性薬剤の混合物を含んでよく、可溶性薬剤は場合により、その都度、直接圧縮可能な形態または直接圧縮可能でない粉末の形態のどちらかで使用される。
【0096】
錠剤は、層のそれぞれに同一の可溶性薬剤を、または可溶性薬剤の同一の混合物を含んでよいが、組成物はまた、可溶性薬剤の性質、その粒子のサイズに関してだけではなく、混合物の場合、画分のそれぞれの比率についても、層によって異なってもよい。
【0097】
本発明の錠剤の第1の有利な実施形態において、錠剤の各層は、直接圧縮可能な形態で使用される単一の可溶性薬剤を含む。
【0098】
本発明の錠剤の第2の有利な実施形態において、錠剤の各層は、単一の可溶性薬剤を直接圧縮可能な形態でかつ同一の可溶性薬剤を粉末の形態で含み、直接圧縮可能な形態と粉末のそれぞれの割合は、99/1と20/80との間、好ましくは80/20と20/80との間である。
【0099】
本発明の錠剤の第3の有利な実施形態において、錠剤は、同一の可溶性薬剤または可溶性薬剤の同一の混合物を、構成する層のそれぞれに含む。
【0100】
崩壊剤は、特に、当技術分野では用語クロスカルメロースで示される架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、当技術分野では用語クロスポビドンで示される架橋ポリビニルピロリドンおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0101】
崩壊剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、1重量%と20重量%との間、好ましくは5重量%と15重量%との間の割合で使用され、混合物の場合、各崩壊剤は0.5重量%と15重量%との間、好ましくは5重量%と10重量%との間である。
【0102】
膨張剤は、マイクロクリスタリンセルロース、デンプン、カルボキシメチルデンプンまたはナトリウムデンプングリコレートなどの改質デンプン、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0103】
膨張剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、1重量%と15重量%との間の割合で使用される。
【0104】
前述の賦形剤の他に、本発明の口腔内分散性錠剤の各層は任意選択で、滑沢剤、浸透剤、帯電防止剤、水不溶性希釈剤、結合剤、甘味料、香味料、着色料およびアジュバントを含んでよい。
【0105】
滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、薬学的に許容できる油、好ましくはジメチコンまたは流動パラフィン、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0106】
滑沢剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、2重量%まで、好ましくは0.02重量%と2重量%との間、より好ましくは0.5重量%と1重量%との間の割合で使用される。
【0107】
第1の変形例において、滑沢剤は、全体として錠剤化賦形剤の中に配合され、第2の変形例においては、この滑沢剤の画分が金型の壁に噴霧され、かつ圧縮時にパンチされ、その際に前記滑沢剤が粉末または液体の形態になる。
【0108】
内部および/または外部相において使用される滑沢剤の量は、最終圧縮時に過剰分が層の接着に悪影響を及ぼすことがないように注意深く調節される。
【0109】
浸透剤は、特に水性溶媒と大きな親和性を有するシリカ、例えばより一般的にはSyloid(商標登録)のブランド名で知られている沈降シリカ混合物、およびβ-シクロデキストリン、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0110】
浸透剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、5重量%までであってよい割合で使用される。
【0111】
帯電防止剤は、微粒子または非微粒子化タルク、コロイド状シリカ(Aerosil(登録商標) 200)、処理シリカ(Aerosil(登録商標) R972)または沈降シリカ(Syloid(登録商標) FP244)およびこれらの混合物を含む群から選択されてよい。
【0112】
帯電防止剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、5重量%までであってよい割合で使用される。
【0113】
水不溶性希釈剤は、リン酸ジカルシウム、リン酸トリカルシウムおよびマイクロクリスタリンセルロースから選択されてよい。
【0114】
水不溶性希釈剤の役割は、錠剤中の不溶性物質の電荷を増大させることにより崩壊剤の作用を向上させることである。水不溶性希釈剤は、錠剤の各層の重量に対して算出して、20重量%まで、好ましくは10重量%未満であってよい割合で使用される。
【0115】
結合剤は、乾燥形態で使用され、かつ、単独でまたは混合物としての、デンプン、糖、ポリビニルピロリドンまたはカルボキシメチルセルロースであってよい。
【0116】
結合剤は、好ましくは錠剤の層のうち1つのみにおいて、それが存在する層の重量に対して算出して、15重量%まで、好ましくは10重量%未満であってよい割合で、使用される。
【0117】
甘味料は、特にアスパルテーム、アセサルフェームカリウム、サッカリン酸ナトリウム、ジヒドロカルコン酸ネオヘスペリジン、スクラロースおよびグリチルリチン酸モノアンモニウム、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0118】
香味料および着色料は、錠剤の調製のために通常、調剤業において使用されている香味料および着色料である。
【0119】
特に好ましい一実施形態において、各層は、錠剤の層化した構造が速やかに目視できるように、それが接着している層とは異なる色を有する。
【0120】
アジュバントもまた、混合物に添加されてよく、かつ、崩壊促進剤、例えばアミノ酸またはタンパク、pH調節剤、発泡のための系、特にpH調節剤として使用されるタイプの二酸化炭素発生剤、または界面活性剤を含む群から選択される。
【0121】
薬学的に活性な物質を含む層において、被覆または非被覆活性物質に対する賦形剤の混合物の割合は、通常0.4と10重量部との間、好ましくは1と5重量部との間である。
【0122】
本発明の錠剤の有利な一実施形態において、本発明の錠剤の崩壊が、同一の質的組成を有する「単層」口腔内分散性錠剤により提供されるのと同一な口中での感触を提供するように、かつ錠剤を構成する種々の層の間の崩壊速度のいかなる違いをも患者が知覚しないように、錠剤の各層は、同一の賦形剤を含む。
【0123】
各層の量的組成は、各活性物質の含有量を考慮に入れて調節される。
【0124】
最も厚い層と最も薄い層との間に許容される最大質量比は、10/1である。
【0125】
最も重く投与される活性物質と最も軽く投与される活性物質との間の用量比が10を超える場合、希釈剤の量は、層間の重量比が値10にまで戻るように調節される。この場合、希釈剤は、好ましくは可溶性薬剤、より好ましくは直接圧縮可能な形態の可溶性薬剤である。
【0126】
錠剤は、6mmと18mmの間の直径を有してよい。
【0127】
錠剤は、円形、長円形または長楕円形であってよく、錠剤は、平面、凹面または凸面を有してよく、かつ任意選択で刻印されていてよい。
【0128】
有利には、両凸形のまたはディンプル形のパンチが使用される。
【0129】
錠剤は、一般に、0.1グラムと2.0グラムの間の質量を有する。
【0130】
本発明はまた、前述の多層錠剤を調製するための方法にも関する。
【0131】
本発明の方法は、下記の工程を含む:
1. 少なくとも2つのタイプの任意選択で被覆された活性物質の粒子の調製;
2.それぞれが、錠剤化賦形剤および少なくとも1つのタイプの活性物質粒子を含む少なくとも2種の乾燥混合物の調製;
3.上記で得られた粉末混合物のうち少なくとも1種の予備圧縮;
4.上記の混合物への他の混合物の塗布;
5.任意選択の予備圧縮;
6. 上記で得られた予備成型層の最終圧縮、
錠剤の層の数に応じて、工程4および5は場合によって少なくとも1回、繰り返される。
【0132】
2層錠剤の場合、本発明の方法は、下記の工程を含む:
・2つのタイプの任意選択で被覆された活性物質粒子の調製;
・それぞれが、錠剤化賦形剤および上記で調製された活性物質粒子を含む2種の乾燥混合物の調製;
・錠剤の下層を形成するための、上記の混合物のうちの1種の予備圧縮;
・形成した層への第2の混合物の塗布;
・任意選択で、錠剤の上層を形成するための、第2の混合物の予備圧縮;
・最終圧縮。
【0133】
3層錠剤の場合、本発明の方法は、下記の工程を含む:
・少なくとも2つのタイプの任意選択で被覆された活性物質粒子の調製;
・それぞれが、錠剤化賦形剤を含3種の乾燥混合物であって、そのうちの少なくとも2つが上記で調製された活性物質粒子をも含む3種の乾燥混合物の調製;
・錠剤の下層を形成するための、上記の混合物のうちの1種の予備圧縮;
・形成した層への第2の混合物の塗布;
・錠剤の中間層を形成するための、第2の混合物の予備圧縮;
・形成した層への第3の混合物の塗布;
・任意選択で、錠剤の上層を形成するための、第3の混合物の予備圧縮;
・最終圧縮。
【0134】
好ましい一実施形態において、各混合物それ自体の調製は、2つの工程を含み、第1の工程は、被覆または非被覆活性物質を、内部滑沢剤を除く全ての賦形剤と混合することであり、それに続いて、滑沢剤が全量または少量ずつ添加される第2の工程により、次いで残りの部分がパンチおよび/または金型の内面に噴霧される。
【0135】
滑沢剤が全てパンチおよび/または金型の内面に噴霧されるとき、その際、第2の混合工程は明らかに省略される。
【0136】
予備圧縮および圧縮工程は交互式またはロータリー式打錠機により行われる。
【0137】
予備圧縮は、最終圧縮時に、一方で金型中に粉末のベッドを充填することにより層を形成すること、および第2に、へき開の発生を防止するために、前記粉末のベッドから気体を除去することを意図されており、このへき開は、場合により、接着不足により層同士の間に、または層自体の中に発生する。
【0138】
層が同一の相対質量および/または厚さ等級を有さない錠剤において、最初に形成される層は、より大きい質量または厚さを有する層である。
【0139】
予備圧縮工程において加えられる圧力は、0.5から5kNの範囲であってよく、一般に最終圧縮において加えられる圧力よりも5から10倍低い。
【0140】
圧縮工程において加えられる圧力は、5kNから50kN、好ましくは5kNから15kNの範囲であってよい。
【0141】
粉末のベッドにかける予備圧縮力は、2つの可能なモードに従って調節され、第1のモードは、圧縮力を、金型中の粉末のベッドの高さに関して機械で測定した変動の関数として調節するものであり、第2のモードは、充填体積を、パンチにより加えた圧力の測定値の関数として調節するものである。
【0142】
これらの錠剤の硬度は好ましくは1と10kpとの間、より好ましくは1と6kpとの間であり、European Pharmacopoeia、(2.9.8)の方法に従って測定され、1kpは、9.8Nに等しい。
【0143】
多層錠剤の硬度は、European Pharmacopoeiaの方法に従って測定される2%未満、好ましくは1%未満のもろさが得られるよう、かつ、60秒以下、好ましくは40秒以下の唾液の作用下での錠剤の口中での崩壊時間を可能にするように調節される。
【0144】
本発明の錠剤が、活性物質を、その味をマスクするためにせよ、その放出を遅延させるかあるいは維持するためにせよ、被覆形態で含む場合、圧縮は、圧縮の前後に被覆された活性物質粒子間での同一の溶解プロフィールを維持するように行なわれなければならず、用語「同一の」は必然的に、同一のin vitro溶解条件下で各サンプリング時間において放出された活性物質のパーセンテージに対する絶対値として15%を超える違いがないことを意味する。
【0145】
本発明は、本発明の錠剤の調製の実施例によって、より明白に理解されるであろう。これらの実施例は、純粋に本発明の有利な実施形態を例証する目的で示され、かつこれによる限定を決して構成することはない。
【実施例】
【0146】
〈使用される賦形剤〉
直接圧縮可能なマンニトールM 300: Merck社により販売されているParteck(登録商標)
マンニトール60パウダー:Roquette Freresにより販売されているPearlitol(登録商標) 160C
クロスポビドン:BASFにより販売されているKollidon(登録商標) CL
スクラロース:McNeillが販売
アスパルテーム:NutraSweetが販売
ルートビアミントフレーバーおよびバニラビスケットフレーバー:Pharmaromeが販売
ステアリン酸マグネシウム:Peter Gravenが販売
【0147】
〈装置〉
ミキサーは、60Lまたは200Lのブランド名SonecoまたはBSIのツインシェルブレンダーである。
【0148】
実施例1、2および3で使用された打錠機は、55 B-タイプのステーションを備えたCourtoy R292Fプレス機であり、ステーションのうち28ステーションのみが使用された。
【0149】
打錠機は、ツインフィードシステムを含み、かつ単層錠剤の高速圧縮の間は、ツインアウトレットモードで、または2層錠剤の製造の間はシングルアウトレットモードで使用されてよい。
【0150】
実施例4および5で使用された打錠機は、61 B-タイプのステーションおよび49タイプ-Dのステーションを備えたFette PT3090プレス機である。
【0151】
(実施例1:500mgのパラセタモール(アセトアミノフェン)および65mgのカフェインを含む2層口腔内分散性錠剤)
【0152】
〈1/混合物〉
第1の粉末混合物(層A)を表1の処方に従って調製する。
【0153】
【表1】

【0154】
被覆パラセタモール粒子を、空気流動床における顆粒化および被覆により調製する。前記粒子の粒度分布は、レーザー拡散により下記のように決定される:
被覆粒子の98重量%は150μmと500μmとの間のサイズを有する。
【0155】
マンニトール60、コリドンCL、スクラロースおよび香味料からなる香味プレミックスを、種々の原料を表1に示した割合で、10rpmで15分間混合することにより調製する。
【0156】
マンニトールM300および被覆パラセタモール顆粒を、表1に示す割合で、この第1の混合物に添加する。
【0157】
混合時間は20分であり、混合速度は10rpmである。
【0158】
このようにして得られた混合物に、滑沢剤を10rpmの速度で2分間混合することにより、添加する(滑沢化工程)。
【0159】
被覆カフェインおよび錠剤化賦形剤を含む、表2に示す第2の混合物を第1の混合用に上述されたものと同一のプロトコールに厳密に従って調製する。
【0160】
【表2】

【0161】
被覆カフェイン粒子を、空気流動床における顆粒化および被覆により調製する。
前記粒子の粒度分布は、レーザー拡散により下記のように決定される:
被覆粒子の96重量%は150μmと500μmとの間のサイズを有する。
【0162】
〈2/圧縮〉
打錠機は、55 B-タイプのステーションを備えたCourtoy R292Fプレス機であり、ステーションのうち28ステーションのみが使用された。
【0163】
第1の層A(1,200mgの質量)を4.8kNの予備圧縮力下で充填し、厚さは1,200mgの質量が得られるように決定される。
【0164】
次いで、混合物B(200mgの質量)を金型中の層Aの表面に入れる。
【0165】
15.3kNの力をかけて、連続して形成される2層の最終圧縮を行う前に、硬度50から60Nを目標として2.3kNの予備圧縮をかける。
【0166】
使用されるパンチは、円形、平坦かつ面取りがされており、16.5mmの直径を有する。
【0167】
このように調製された2層錠剤は、1,400mgの理論質量を有し、かつ、500mg用量のパラセタモールおよび65mg用量のカフェインを含む。
【0168】
各錠剤の最終処方は下記の通り(表3)である:
【0169】
【表3】

【0170】
これらの錠剤は、下記の物理的および化学的特性を有する(表4):
【0171】
【表4】

【0172】
(実施例2:325mgのパラセタモールおよび37.5mgの塩酸トラマドール(Tramadol HCl)を含む2層口腔内分散性錠剤)
【0173】
14,000個の2層錠剤1バッチを以下の方法で調製する。
【0174】
〈1/混合物〉
全ての混合物を実施例1と同一のプロトコールに従って調製する。
【0175】
第1の混合物(層A、800mgの質量)は、20%(被覆粒子の重量に対するコーティングポリマーの乾燥重量により算出)のポリマー混合物Eudragit(登録商標) E100/Eudragit(登録商標) NE30Dを比率67/33で被覆したパラセタモールを第1に含み、かつ第2に錠剤化賦剤を表5に示す割合で含む。
【0176】
【表5】

【0177】
第2の混合物(層B)は、35%(被覆粒子の重量に対するコーティングポリマーの乾燥重量として算出)のエチルセルロースN7で被覆した塩酸トラマドールを第1に含み、かつ第2に錠剤化賦剤を表6に示す割合で含む。
【0178】
被覆トラマドール粒子を、空気流動床における顆粒化および被覆により調製する。
粒度分布は、レーザー拡散により決定され、下記の通りである:
D10%、D50%およびD90%は、それぞれ187μm、330μmおよび530μmである。
【0179】
【表6】

【0180】
〈2/圧縮〉
圧縮は、実施例1と同一の装置により行った。
【0181】
各錠剤の平均理論用量は、325mgのパラセタモールおよび37.5mgのトラマドールHClである。
【0182】
打錠機は、円形、平坦かつ面取りがなされた直径15mmのパンチを備えている。
【0183】
層A(800mgの質量)を、1.6kNの予備圧縮力下で充填する。
【0184】
次いで、層B(200mgの質量)の粉末混合物を予備充填した層Aの表面に導入する。
【0185】
10kNの力をかけて、連続して形成される2層の最終圧縮を行う前に、硬度50Nを目標として0.8kNの予備圧縮をかける。
【0186】
この14,000個の錠剤1バッチにおいて、各錠剤は以下の最終組成を有する(表7):
【0187】
【表7】

【0188】
これらの錠剤は、下記の物理的および化学的特性を有する(表8):
【0189】
【表8】

【0190】
(実施例3:200mgのイブプロフェンおよび37.5mgの塩酸トラマドール(Tramadol HCl)を含む2層口腔内分散性錠剤)
【0191】
14,000個の2層錠剤1バッチを以下の方法で調製する。
【0192】
〈1/混合物〉
全ての混合物を実施例1と同一のプロトコールに従って調製する。
【0193】
被覆イブプロフェン粒子を、空気流動床における顆粒化および被覆により調製する。
粒度分布は、レーザー拡散により決定され、下記の通りである:
258μmのD50%値、2重量%の粒子が90μm未満のサイズを有し、かつ前記粒子の1重量%が500μm超のサイズを有する。
【0194】
第1の混合物(層A)は、13.7%(被覆粒子の重量に対するコーティングの乾燥重量として算出)のエチルセルロースN7で被覆したイブプロフェンを第1に含み、かつ第2に錠剤化賦剤を表9に示す割合で含む。
【0195】
【表9】

【0196】
第2の混合物(層B)は、35%(被覆粒子の重量に対するコーティングポリマーの乾燥重量として算出)のエチルセルロースN7で被覆した塩酸トラマドールを第1に含み、かつ第2に錠剤化賦剤を表10に示す割合で含む。被覆トラマドール粒子は、実施例2と同様なサイズ特性を示す。
【0197】
【表10】

【0198】
〈2/圧縮〉
各錠剤の平均理論用量は、200mgのイブプロフェンおよび37.5mgのトラマドールHClである。
【0199】
打錠機は、円形、平坦かつ面取りがなされた直径15mmのパンチを備えている。
【0200】
第1層A(800mgの質量)を、1.6kNの予備圧縮力下で充填する。
【0201】
次いで、層Bの粉末混合物(200mgの質量)を形成した金型中の層Aの表面に導入する。
【0202】
10から12kNの圧縮力をかけて連続して形成される2層の最終圧縮を行う前に、硬度50Nを目標として0.8kNの予備圧縮をかける。
【0203】
各錠剤は以下の最終組成を有する(表11):
【0204】
【表11】

【0205】
これらの錠剤は、下記の物理的および化学的特性を有する(表12):
【0206】
【表12】

【0207】
(実施例4:500mgのパラセタモールおよび65mgのカフェインを含む2層口腔内分散性錠剤)
【0208】
〈1/混合物〉
第1の粉末混合物(層A)を表13の処方に従って調製する。
【0209】
【表13】

【0210】
第2の混合物は、被覆カフェインおよび錠剤化賦剤を表14に示す割合で含む。
【0211】
【表14】

【0212】
混合物は、両方とも実施例1のプロトコールに従って調製する。
被覆パラセタモール粒子および被覆カフェイン粒子は、実施例1と同様な粒度特性を有する。
【0213】
〈2/圧縮〉
(Fette PT 3090打錠機の49ステーション金型テーブルのうちの) 33ステーションが、円形、ディンプル形の直径17mmのパンチを備えている。
【0214】
ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢剤としてパンチおよび金型を滑沢化するために使用する。
【0215】
第1層A(1,200mgの質量)を、2.2kNの予備圧縮力下で充填し、厚さは1,200mgの質量が得られるように決定する。
【0216】
次いで、混合物Bの粉末混合物(200mgの質量)を金型中の層Aの表面に導入する。
【0217】
15.3kNの圧縮力をかけて連続して形成される2層の最終圧縮を行う前に、硬度70Nを目標として11.2kNの予備圧縮をかける。
【0218】
89,438個の錠剤が、最大生産打錠速度80,000錠/時間で調製される。
【0219】
このようにして調製された二層錠剤は、1,400mgの理論質量を有し、かつ500mg用量のパラセタモールおよび65mg用量のカフェインを含む。
【0220】
各錠剤の最終組成は以下の通りである(表15):
【0221】
【表15】

【0222】
これらの錠剤は、下記の物理的および化学的特性を有する(表16):
【0223】
【表16】

【0224】
(実施例5:325mgのパラセタモールおよび37.5mgの塩酸トラマドール(Tramadol HCl)を含む2層口腔内分散性錠剤)
【0225】
〈1/混合物〉
全ての混合物は、実施例2の第1段階に従って調製する。
被覆パラセタモール粒子および被覆トラマドール粒子は、実施例2と同様な粒度特性を示す。
【0226】
〈2/圧縮〉
使用されるパンチは、16mmの直径を有し、円形、凸形(25mmの半径)である。
【0227】
打錠機(Fette PT 3090)は、円形、凸形(25mmの半径)の直径16mmのパンチ61個を備えている。
【0228】
ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢剤としてパンチおよび金型を滑沢化するために使用する。
【0229】
第1層A(800mgの質量)を、2.3kNの予備圧縮力下で充填する。
【0230】
次いで、層B(200mgの質量)の粉末混合物を充填された層Aの表面に導入する。
【0231】
37.1kNの圧縮力をかけて連続して形成される2層の最終圧縮を行う前に、硬度50Nを目標として13.0kNの予備圧縮をかける。
【0232】
93,777個の錠剤が、最大生産打錠速度110,000錠/時間で調製される。
【0233】
このようにして調製された二層錠剤は、1,000mgの理論質量を有し、かつ325mg用量のパラセタモールおよび37.5mg用量のトラマドールHClを含む。
【0234】
各錠剤は、以下の最終組成を有する(表17):
【0235】
【表17】

【0236】
これらの錠剤は、下記の物理的および化学的特性を有する(表18):
【0237】
【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内分散性であり、かつ少なくとも2つの重なり合って一体化した層からなり、前記層のうちの2つがそれぞれ少なくとも1種の活性物質を含むことを特徴とする錠剤。
【請求項2】
2つまたは3つの層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
それぞれの層が
・糖類、13個未満の炭素原子を含むポリオールおよびこれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1種の可溶性薬剤、
・少なくとも1種の崩壊剤、または、少なくとも1種の崩壊剤および少なくとも1種の膨張剤
を含む賦形剤の混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
2つの外層のみが少なくとも1種の活性物質を含む3層を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
各層が、滑沢剤、浸透剤、帯電防止剤、水不溶性希釈剤、結合剤、甘味料、香味料、着色料およびアジュバントを、単独でまたは混合物として、さらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項6】
アジュバントが、崩壊促進剤、pH調節剤、二酸化炭素発生のための系および界面活性剤を含む群から、単独でまたは混合物として、選択されることを特徴とする、請求項5に記載の錠剤。
【請求項7】
活性物質のうち少なくとも1種が、調節された放出形態であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項8】
活性物質のうち少なくとも1種が、結晶形態、または味マスキングを目的とする被覆を含むコア形態であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の錠剤を調製するための方法であり、下記の工程:
1.任意選択で被覆された少なくとも2つのタイプの活性物質の粒子の調製;
2.それぞれが、錠剤化賦形剤および少なくとも1つのタイプの活性物質粒子を含む少なくとも2種の乾燥混合物の調製;
3.上記で得られた粉末混合物のうち少なくとも1種の予備圧縮;
4.上記の混合物への他の混合物の塗布;
5.任意選択の予備圧縮;
6.先に得られた予備成型層の最終圧縮、
を含む方法であって、錠剤の層の数に応じて、工程4および5が場合によって少なくとも1回、繰り返される、請求項1から8のいずれか一項に記載の錠剤を調製するための方法。

【公開番号】特開2012−31205(P2012−31205A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243534(P2011−243534)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2006−508358(P2006−508358)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(501435026)
【Fターム(参考)】