可動フロア装置用の駆動モータ配設構造
【課題】 車室近傍に配設される可動フロア装置用の駆動モータの支持剛性をさらに向上可能な可動フロア装置用の駆動モータの配設構造を提供する。
【解決手段】前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロアパネル61およびこの可動フロアパネル61を昇降動させる昇降機構62を有する可動フロア装置と、この昇降機構62に対して駆動力を入力する駆動モータ9と、可動フロア装置6が配設される車室の床面を構成するフロアパネル4と、屈曲形成されこのフロアパネル4とともに閉断面C1を構成するトルクボックス部32とを備える。駆動モータ9は、昇降機構62の近傍位置に配設されるとともに、閉断面C1を構成する所定部分に当接した状態でフロアパネル4に取り付けられている。
【解決手段】前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロアパネル61およびこの可動フロアパネル61を昇降動させる昇降機構62を有する可動フロア装置と、この昇降機構62に対して駆動力を入力する駆動モータ9と、可動フロア装置6が配設される車室の床面を構成するフロアパネル4と、屈曲形成されこのフロアパネル4とともに閉断面C1を構成するトルクボックス部32とを備える。駆動モータ9は、昇降機構62の近傍位置に配設されるとともに、閉断面C1を構成する所定部分に当接した状態でフロアパネル4に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が載置される足部載置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア装置に用いられる駆動モータの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調節するシート位置調節手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調節する可動フロア装置によっても調節可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してこのペダルを操作する乗員の足部が載置される操作時足部載置領域に配設される可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、固定フロア部に形成された凹部内に配設され上記昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータとを備えた可動フロア装置が提案されている。
【特許文献1】実開昭63−69655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、この種の可動フロア装置では、駆動モータはその駆動力入力対象である昇降機構に近接した位置に設けられるのが駆動力伝達効率の点で好ましく、したがってこの観点からは上記特許文献1に記載の装置のように駆動モータから昇降機構に対してダイレクトに駆動力が伝達されるように構成されるのが好ましい。また、可動フロア装置は、固定フロア部上に配設されたシートに対応して配設されているため、駆動力伝達効率を良好なまま維持させようとすると、駆動モータの配設位置が限定的になり、したがって特許文献1に記載の装置のように駆動モータを固定フロア部に形成された凹部内に単に取り付けられるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、駆動モータが固定フロア部に形成された凹部内に単に取り付けられる駆動モータの配設構造を採用すると、可動フロア部は乗員の足部を載せた状態駆動されることが多いと考えられ、駆動モータに作用するトルクの反動も大きいため、駆動モータの支持剛性ついて不安が残るものであった。すなわち、特許文献1の駆動モータの配設構造では、永年の使用によって固定フロア部が変形や破損等することが懸念されるものであった。したがって、このような可動フロア装置用の駆動モータについて、支持剛性の向上が望まれている。その他、駆動モータは車室内に配設される可動フロア装置を駆動するためのものであり、車室内外を問わず車室近傍位置に配設されることが多く、このような駆動モータの配設構造では駆動モータの支持剛性が低いと、車両衝突時等に駆動モータが車室内へ飛散することが懸念される。したがって、このような点でも、可動フロア装置用の駆動モータについてさらなる支持剛性の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、従来の可動フロア装置用の駆動モータの配設構造の改良に係るものであり、車室近傍に配設される可動フロア装置用の駆動モータの支持剛性をさらに向上可能な可動フロア装置用の駆動モータの配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可動フロア装置用の駆動モータの配設構造によれば、前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部およびこの可動フロア部を昇降動させる昇降機構を有する可動フロア装置と、この昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータと、上記可動フロア装置が配設される車室の内面壁を構成するパネル部材と、屈曲形成されこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材とを備え、上記駆動モータは、上記昇降機構の近傍位置に配設されるとともに、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、駆動モータが昇降機構の近傍位置に配設されるとともに車室の内面壁を構成するパネル部材およびこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられるので、駆動モータと昇降機構との相対位置を可及的に近接させることができ、これにより駆動モータから昇降機構に対する駆動力の伝達効率を良好なまま維持することができる。しかも、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられているので、上記閉断面によってパネル部材を補強することができるとともに、駆動モータの車体に対する支持剛性を向上させることができ、これにより車両衝突時等の駆動モータの車室内への飛散を効果的に防止することができる。
【0009】
ここで、上記可動フロア装置は、例えば2列、3列シート等の後列シート用に、車室後部に配設されているものであってもよいが、例えば前列シート用に、車室前部に配設されているものであってもよい(請求項2)。
【0010】
この発明において、上記補強部材は、上記パネル部材の車室外側の面に接合されているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このように構成すれば、補強部材が車室内に突出することがなく、車室内空間に与える影響を軽減することができる。
【0012】
この場合、上記補強部材に対向するパネル部材の対向壁部分に取り付けられているのが好ましい(請求項4)。
【0013】
このように構成すれば、車室外側に配設された補強部材よりも車室側に配設されたパネル部材に駆動モータを取り付けることができ、駆動力の伝達経路を可及的に短くして駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、このパネル部材の対向壁部分についても補強部材によって剛性が高められていることから駆動モータの支持剛性も良好なまま維持することができる。
【0014】
また、補強部材がパネル部材の車室外側の面に接合される場合には、上記駆動モータは、その少なくとも一部が上記補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されるのが好ましい(請求項5)。
【0015】
このように構成すれば、駆動モータをその車室側への突出量を抑えた状態で車体に対して配設することができ、例えば可動フロア部の下方に駆動モータを配設する場合でもその干渉を防止することができ、駆動モータのレイアウト性を向上させることができる。
【0016】
この場合、上記補強部材は上記駆動モータの大きさに対応して形成され、上記駆動モータは当該補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されているのが好ましい(請求項6)。
【0017】
このように構成すれば、駆動モータの車室側への突出量を無くすことができ、これにより可動フロア部との干渉を確実に防止することができるとともに、見栄えを向上させることができる。
【0018】
また、駆動モータを補強部材内に配設する場合には、この補強部材は、その配設位置が特に限定されるものではないが、上記可動フロア装置の下方に配設されているのが好ましい(請求項7)。
【0019】
このように構成すれば、駆動モータを可動フロア装置の近傍に配設することができ、駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、可動フロア部とフロアパネルとの間の空間を有効に利用して駆動モータを配設することができる。
【0020】
この発明において、上記補強部材は、上記パネル部材の車室内側の面に接合されているものであってもよい(請求項8)。
【0021】
この場合、上記駆動モータは、上記補強部材のみに取り付けられたり(請求項9)、駆動モータが上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置される場合には、これらの補強部材およびパネル部材の両方に取り付けられたり(請求項10)、することができる。
【0022】
すなわち、駆動モータが補強部材のみに取り付けられる場合にはパネル部材に例えばボルト挿通孔等を穿設する必要がなく、密閉性の点で有利であり、駆動モータが上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置されると収まりがよくなり、この状態で強固に固定することができる点で有利である。
【0023】
この場合、パネル部材に対する補強部材を新たに設けるものであってもよいが、既存の補強部材を利用するのが好ましく、例えば上記パネル部材は車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルであり、上記補強部材はこのダッシュパネルの高さ方向中間部を車幅方向に延びるダッシュクロスメンバであるのが好ましい(請求項11)。
【0024】
このように構成すれば、既存の部材を有効に利用して駆動モータを高い支持剛性で効率的に配設することができる。
【0025】
ここで、通常、ダッシュクロスメンバについてはダッシュパネルの補強の観点からその形状や閉断面積が決定され、この場合には駆動モータにおける軸線方向と直交する方向の寸法に対して小さい突出量に抑えられるのが一般的であるが、上記要素に加え、上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法をも考慮に入れることにより、ダッシュクロスメンバのダッシュパネルに対する補強機能を向上させることができるとともに、ダッシュパネルに対するダッシュクロスメンバの段差を有効に利用して駆動モータを配設することができる。
【0026】
すなわち、上記補強部材は、上記パネル部材に対して車室内方に突出することにより上記閉断面を構成するように形成されるとともに、その突出量が上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法に対応して設定されているのが好ましい(請求項12)。
【0027】
このように構成すれば、駆動モータの支持剛性を一層向上させつつ、ダッシュクロスメンバを設けることにより生じる段差を有効に利用して駆動モータを効率的に配設することができる。
【0028】
また、この発明において、上記パネル部材および補強部材は特に限定されるものではないが、例えば、上記パネル部材は車室床面を構成するフロアパネルのうちその車幅方向略中央部において車両前後方向に延びるトンネル部の天壁部であり、上記補強部材は当該トンネル部を補強するトンネル補強部材であるとすることができる(請求項13)。
【0029】
このように構成すれば、トンネル部自体の剛性も高いことから上記駆動モータの車体に対する支持剛性をより一層向上させることができる。
【0030】
この場合、上記トンネル部はその前部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜部分の上方に車室内を空調するためのエアコンユニットが配設され、このエアコンユニットと上記トンネル部の間に上記駆動モータが配設されているのが好ましい(請求項14)。
【0031】
このように構成すれば、エアコンユニットの下方の空間を有効に利用して駆動モータを配設することができるとともに、駆動モータを隠蔽して見栄えを向上させることができる。しかも、車両の衝突等によってトンネル部が上方に変形すれば、当該トンネル部とエアコンユニットとの間に駆動モータを挟み込むことができ、車両衝突時等における駆動モータの飛散をより確実に防止することができる。
【0032】
この発明において、上記駆動モータと上記昇降機構とは駆動力を伝達する駆動力伝達ケーブルで連結されているのが好ましい(請求項15)。
【0033】
このように構成すれば、駆動モータの配設方向に拘わらず、当該駆動モータから昇降機構に対して駆動力を伝達することができ、駆動モータのレイアウト性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明に係る可動フロア装置用の駆動モータ配設構造によれば、駆動モータと昇降機構との相対位置を可及的に近接させることができ、これにより駆動モータから昇降機構に対する駆動力の伝達効率を良好なまま維持することができ、しかも、駆動モータを高剛性部材に取り付けることにより駆動モータの車体に対する支持剛性を向上させることができ、これにより駆動モータをその駆動トルクの反動に耐えられるように頑丈に支持できると共に、車両衝突時等の駆動モータの車室内への飛散を効果的に防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
(第1実施形態)
まず、後述する可動フロア装置用の駆動モータがフロントサイドフレームのトルクボックス部に収納される第1実施形態について説明する。図1は本発明の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図2は前部車体構造の車幅方向中央よりも片側のみを示す底面図である。なお、この前部車体構造は、左右が略対象に形成されている。
【0037】
この前部車体構造は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム3と、これらの一対のフロントサイドフレーム3上に接合されたフロアパネル4と、フロアパネル4の車幅方向両端縁に接合され車体前後方向に延びるサイドシル5とを備え、フロアパネル4上であって図示しない前列シートに着座する乗員の足部が載置される領域には、可動フロアパネル61をフロアパネル4に対して昇降動させる可動フロア装置6が設けられている。
【0038】
フロントサイドフレーム3は、中間部に後下がりに傾斜するキックアップ部3aを有し、前部と後部との相対高さが異なるように形成されている。このフロントサイドフレーム3の後部およびキックアップ部3a上には、フロアパネル4が接合されている。このフロアパネル4は、車室の床面を構成するものであり、その車幅方向中央部は上方に屈曲形成されて前後方向に延びるトンネル部41が形成されている。このトンネル部41は、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部41の外側は図示していないがセンターコンソールによって被覆され、当該センターコンソールとトンネル部41との間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。このフロアパネル4の前端縁には上下方向に立ち上がってエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル7が連設されている。
【0039】
このダッシュパネル7の高さ方向中間部には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ11が配設されている。このダッシュクロスメンバ11は、図1に示すように、断面ハット状に形成されるとともに、その開口部をダッシュパネル7側に向けてダッシュパネル7の車室側側面に接合されている。これにより、ダッシュクロスメンバ11は、ダッシュパネル7とともに車幅方向に延びる閉断面を形成し、これによりダッシュパネル7を補強するものとなされている。
【0040】
なお、このフロントサイドフレーム3における前部の車幅方向外方に、ホイールハウジング8が設けられている。このホイールハウジング8の後方にはサイドシル5の前端部が配置されている。また、サイドシル5にはその長手方向前端部にフロントピラー12が接合されているとともに長手方向中間部にセンターピラー13が接合されている。
【0041】
具体的には、フロントサイドフレーム3は、車体前後方向に沿って複数部材(当実施形態では3部材)に分割形成されている。すなわち、フロントサイドフレーム3は、車体前部からキックアップ部3aの略中央部にまで延びるフレーム前部31と、このフレーム前部31の後端縁に連結されキックアップ部3aの後方にまで延びるトルクボックス部32と、このトルクボックス部32の後端縁に連結され図示しないリヤサイドフレームに接続されるフレーム後部33とを備え、これらが一体的に接合されることにより高剛性部材として形成されている。
【0042】
フレーム前部31は、角筒状に形成され、これ自体で車体前後方向に延びる閉断面を構成している。トルクボックス部32およびフレーム後部33は、プレス加工により屈曲形成されて断面逆ハット状に形成され、上端開口縁に突設された接合フランジ部32a,33aにおいてフロアパネル4の下面、すなわちフロアパネル4の車室外側の面に接合されている。これにより、トルクボックス部32およびフレーム後部33は、フロアパネル4とともに車体前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0043】
トルクボックス部32は、サイドシル5に連結されることにより、車体の捩り剛性を向上させるもので、当実施形態ではフロントサイドフレーム3の一部材として構成されている。このトルクボックス部32は、プレス加工により屈曲して形成され、その全体形状が底面視略台形状の碗型を呈するようになされ、上記したようにフロアパネル4に接合されることにより閉断面C1を構成している。
【0044】
トルクボックス部32についてより具体的に説明すると、このトルクボックス部32は、車体前後方向に延び前後各端部の断面形状がフレーム前後各部31,33の断面形状に対応して形成されたフレーム構成部32bと、このフレーム構成部32bの長手方向中間部における車幅方向外側の側壁および底面壁が外方に位置するサイドシル5にまで延びて形成されたボックス部32cとを備え、フレーム構成部32bの長手方向両端部がフレーム前後各部31,33の対向端部に外嵌されて溶接により接合されるとともに、ボックス部32cの車幅方向外側の端部がサイドシル5に接合されている。この結果、フロアパネル4とともに構成される閉断面C1が、図3に示すように、車体前後方向について、ボックス部32cに対応する部分で車幅方向外側に延出してサイドシル5にまで拡幅された状態となっている。
【0045】
このトルクボックス部32は、その内部空間に可動フロア装置6に対して駆動力を入力する駆動モータ9を収納可能な深さに設定されている。そして、この内部空間には、駆動モータ9がその軸線方向を車幅方向に沿わせた状態で配設されている。
【0046】
この駆動モータ9は、当実施形態では円筒状のステッピングモータが用いられ、その駆動力によって可動フロア装置6の後述する可動フロアパネル61を上下昇降動可能に構成されている。また、この駆動モータ9は、乗員によって操作される操作入力部(図示せず)の出力に応じて駆動されるものとなされ、駆動停止状態で出力軸91の回転を規制するブレーキ(図示せず)が内蔵されている。この出力軸91には、駆動モータ9の径よりも大径の駆動ギヤ92が取り付けられている。この駆動ギヤ92は、可動フロア装置6の後述する昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに歯合される。したがって、駆動モータ9の駆動力はこの駆動ギヤ92を介して昇降機構62に入力される。
【0047】
この駆動モータ9は、図4に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してフロアパネル4の下面に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9は、トルクボックス部32とフロアパネル4とにより構成される閉断面C1の上辺部分に下側から取り付けられている。このブラケット10は、駆動モータ9の周面に沿うU字状形状を呈し、その上端部でボルトにより強固にフロアパネル4の下面に接合されている。駆動モータ9の駆動ギヤ92に対応するフロアパネル4の部分には図3および図4に示すようにスリット42が設けられ、このスリット42を通じて駆動ギヤ92の周縁部が車室側に突出するように構成されている。
【0048】
この駆動ギヤ92の上方のフロアパネル4上には、可動フロア装置6が配設されている。この可動フロア装置6は、図4に示すように、アクセルペダルやブレーキペダル等のペダル類(図示せず)の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル61(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル61をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構62とを備え、上記したように操作入力部(図示せず)からの入力に基づいて可動フロアパネル61を乗員の体型、体格に応じた高さ位置に設定可能に構成されている。なお、この可動フロア装置6について、図示しないシートの前後スライド移動に連動して可動フロアパネル61を昇降動させるものであってもよい。
【0049】
可動フロアパネル61は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジ61cにより連結された前後2枚のパネル61a,61bから構成されている。この可動フロアパネル61は、シート(図示せず)に着座する乗員がペダル類(図示せず)を操作する場合にその足部が載置されるものである。
【0050】
可動フロアパネル61は、その前側パネル61aの前端縁がフロアパネル4の前上がり傾斜部分にヒンジ連結部61dによって枢支され、昇降機構62によって前側パネル61aがその前端縁を中心に揺動されることによって昇降動可能に構成されている。そして、後側パネル61bは、この前側パネル61aの昇降動に伴って、前側パネル61aとの相対角度が変化しながら、その後端縁をフロアパネル4上を車体前後方向に沿って摺動されることになる。
【0051】
昇降機構62は、図4に示すように、前側パネル61aの下方であって上記駆動モータ9の上方のフロアパネル4上に配設されている。この昇降機構62は、前側パネル61aを昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では前側パネル61aの所定部分(図例では中間部やや後方寄り)を下方から支承して上下させる機構が採用されている。
【0052】
すなわち、昇降機構62は、図3および図4に示すように、前側パネル61aの下方において車幅方向に沿って延び、水平軸回りに正逆回転する回転軸部62aと、この回転軸部62aの長手方向両端部および中央部に取り付けられ当該回転軸部62aと一体に回転する揺動アーム62bと、各揺動アーム62bに対応して設けられ回転軸部62aを回転自在に支持する軸ブラケット62cとを備える。揺動アーム62bのうち、回転軸部62aの長手方向中央部に配置された中央揺動アーム62bはその基端部に上記駆動モータ9の駆動ギヤ92に歯合する伝動セクタギヤ62dが形成されている。
【0053】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および駆動ギヤ92が正逆回転駆動され、この駆動ギヤ92から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0054】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の真下に設けられるとともに駆動ギヤ92を介して昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに直接駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0055】
しかも、駆動モータ9は車室の床面を構成するフロアパネル4およびこのフロアパネル4とともに閉断面C1を構成するトルクボックス部32のうちのフロアパネル4の下面に、トルクボックス部32内に収納された状態で接合されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるフロアパネル4の所定部分はフロントサイドフレーム3のトルクボックス部32に補強されることにより剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0056】
また、この駆動モータ9の配設構造によれば、フロントサイドフレーム3をトルクボックス(車体の捩り剛性を向上させるための部材)と共用させることにより、当該フロントサイドフレーム3内に駆動モータ9の収容空間、すなわちトルクボックス部32によって形成される内部空間を形成し、この内部空間内に駆動モータ9が収納されるので、簡単な構成で収納スペースを作り出して駆動モータ9を収納させることができる。このため、フロアパネル4の下方のデッドスペースを有効活用して駆動モータ9を収納することができるとともに、車室内に駆動モータ9が露出することなく見栄えを向上させることができる。さらに、このようにトルクボックス部32内に駆動モータ9が収納されれば、駆動モータ9について、昇降機構62に近接配置して直接的に駆動力を入力させることを可能としながら、可動フロアパネル61の昇降動に伴って当該パネル61との干渉を確実に防止した状態で配設することができる。
【0057】
なお、この第1実施形態において、駆動モータ9をフロアパネル4の下面に接合される構成に代えて、駆動モータ9をトルクボックス部32の底面壁、或いは周面壁に接合される構成を採用するものであってもよい。
【0058】
また、トルクボックス部32内に収納される構成ばかりでなく、このトルクボックス部32によって補強されたフロアパネル4の上面に接合されるものであってもよい。この場合には、フロアパネル4の対応箇所を凹陥させて、この凹陥部に駆動モータ9を接合することとすれば、可動フロアパネルとの干渉を防止しつつ、トルクボックス部32によって補強された部分において高い剛性で支持することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、可動フロア装置用の駆動モータがフロアパネル4のトンネル部41の上面に取り付けられる第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図6は同前部車体構造の底面図である。
【0060】
この第2実施形態の駆動モータ配設構造は、駆動モータの配設位置だけではなく、これに伴ってフロントサイドフレームの構成、駆動力伝達構造等も異なっており、この点を中心に説明する。なお、第2実施形態で第1実施形態と同様の構成については、図中に符号を付してその説明を省略する。
【0061】
当第2実施形態のフロントサイドフレーム103は、上記第1実施形態と異なり、トルクボックス部32に代えて、フレーム前部131とフレーム後部133との間に車体の前後方向に延びる断面逆ハット状の中間フレーム部132が設けられている。これらのフレーム各部131〜133上にはフロアパネル4が接合されており、このフロアパネル4のトンネル部41の上方には当該トンネル部41の上面に対して所定の空隙を設けてエアコンユニット112が配設されている。
【0062】
このエアコンユニット112は、エンジンルーム側から差し込まれたボルトによってダッシュパネル7の後面に接合されている。エアコンユニット112は、その幅がトンネル部41の幅よりも若干広く形成され、図5に示すように取り付け状態においてその後端縁がトンネル部41の前端部における傾斜部41aよりも後方に位置するようになっている。
【0063】
トンネル部41の傾斜部41aは、トンネル部41の前端部がキックアップ部3aに沿って前上がりに傾斜することにより形成されている。このトンネル部41には、その傾斜部41aの下端部からセンタクロスメンバ113の上方にまで延びるトンネル補強部材114が設けられている。
【0064】
このトンネル補強部材114は、図7に示すように、長手方向に直交する断面が下方に開口するM字状形状を呈し、この下端開口にトンネル部41の上部が外嵌されることによりトンネル部41に取り付けられている。すなわち、トンネル補強部材114は、上面壁114aと上面壁114aの車幅方向両端から下方に垂下する側壁部114bとを有し、この側壁部114bの下端部においてトンネル部41の側壁にスポット溶接により接合されている。また、このトンネル補強部材114は、その上面壁114aの幅方向中央部分に車体前後方向に延びる補強溝部114cが設けられ、補強溝部114cの底面においてもトンネル部41の上面壁に接合されている。このトンネル部41の上面壁とトンネル補強部材114の上面壁114aとの間であって上記補強溝部114cの両側方には間隙が設けられており、この間隙が閉断面として構成されている。すなわち、トンネル補強部材114は、トンネル部41とともに車体前後方向に延びる閉断面C2を構成し、これによりトンネル部41の上部の剛性を向上させている。
【0065】
図8に示すように、このトンネル補強部材114の上面壁114aも前端部においてトンネル部41の傾斜部41aに応じて前上がりに傾斜して形成されている。このトンネル補強部材114の上面壁における上記傾斜境界部114dには、駆動モータ9がその軸線方向を境界線に沿わせた状態で配設されている。この傾斜境界部114dは可動フロア装置6の側方、具体的には昇降機構62の側方に位置しており、したがって駆動モータ9は昇降機構62の近傍に配置されている。また、この傾斜境界部114dは、エアコンユニット112の下方に位置しており、したがって駆動モータ9はエアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されている。
【0066】
駆動モータ9自体の構造は上記第1実施形態と同様である。この駆動モータ9の出力軸91にはカップリング193を介して動力伝達ケーブル194が接続されている。動力伝達ケーブル194は、可撓性を有する長尺の回転駆動軸部からなり、回転駆動軸部が軸心周りに回転駆動されて後述する伝動ギヤ116に回転力を伝達するように構成されている。
【0067】
この駆動モータ9は、図7に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してトンネル補強部材114の上面壁114a上に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9はフロアパネル4のトンネル部41とトンネル補強部材114とにより構成される閉断面C2の上辺部上に取り付けられている。
【0068】
このブラケット10は、図8に示すように、駆動モータ9の周面に沿うU字状形状を呈している。このブラケット10の前後取付部10a,10bは、前側取付部10aがトンネル補強部材114上に形成された差込突出部114eの差込口(図示せず)に挿入されることにより接合され、後側取付部10bがボルトにより強固にトンネル補強部材114の上面壁114aに接合されている。なお、このブラケット10の前側取付部10aは図5に示すようにトンネル補強部材114の傾斜部分において接合されている。
【0069】
動力伝達ケーブル194の他端は、フロアパネル4上に軸受ブラケット115を介して取り付けられた伝動ギヤ116に接続されている。したがって、駆動モータ9の駆動力は、動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116に入力される。
【0070】
この伝動ギヤ116は、昇降機構62の中央揺動アーム62bに形成された伝動セクタギヤ62dに歯合可能に構成され、駆動モータ9からの回転駆動力を昇降機構62に入力可能に構成されている。
【0071】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および動力伝達ケーブル194並びに伝動ギヤ116が正逆回転駆動され、この伝動ギヤ116から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0072】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の側方に設けられるとともに比較的短い動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116を回転駆動し、この伝動ギヤ116から昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0073】
しかも、駆動モータ9は車室の床面を構成するフロアパネル4におけるトンネル部41の上面壁およびこのトンネル部41とともに閉断面C2を構成するトンネル補強部材114の上面壁114a上に駆動モータ9が接合されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるトンネル補強部材114は、トンネル部41に接合されることにより閉断面C2を形成して剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。その上、トンネル部41にボルト孔等を設ける必要もなく、防音や防水等の点でも有利になる。
【0074】
また、この駆動モータ9の配設構造によれば、エアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されているので、デッドスペースを有効活用して駆動モータ9を配設することができるとともに、エアコンユニット112によって駆動モータ9を隠蔽することができこれにより見栄えを向上させることができる。
【0075】
さらに、エアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されているとともにトンネル部41の前端部が前上がりに傾斜して形成されているので、車両の衝突時にトンネル部41が変形する場合には上方に屈曲されるケースが多くなり、このようにトンネル部41が上方に屈曲されると、駆動モータ9がエアコンユニット112とトンネル部41との間に挟持されるので、駆動モータ9の飛散を効果的に防止することができる。
【0076】
なお、この第2実施形態において、動力伝達ケーブル194の他端が伝動ギヤ116に接続されることにより、動力伝達ケーブル194の駆動力が伝動ギヤ116に直接的に入力されるように構成されているが、例えば動力伝達ケーブル194の他端部にウォームを設け、ウォームホイールとしての伝動ギヤを回転駆動するように構成してもよい。この場合には、ウォームギヤによって可動フロアパネル61に入力された逆駆動力を支持することができ、駆動モータにおける電磁ブレーキを省略することができる。
【0077】
また、上記トンネル補強部材114には、補強溝114cが設けられているが、この補強溝114cを設けるものではなく、トンネル部41の左右に閉断面を形成するように左右一対のトンネル補強部材を設けるように構成してもよい。この場合には、これら左右一対のトンネル補強部材の間の間隙に駆動モータ9が当該トンネル補強部材およびトンネル部41の上面壁114aの両方に当接した状態で配設され、この状態でトンネル補強部材および上面壁114aの少なくとも一方に取り付けられるものであってもよい。
【0078】
(第3実施形態)
次に、可動フロア装置用の駆動モータがダッシュクロスメンバ上に配設される第3実施形態について説明する。図9は第3実施形態の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図10は同前部車体構造の底面図である。
【0079】
この第3実施形態の駆動モータ配設構造は、駆動モータの配設位置等について上記第2実施形態と異なっており、この点を中心に説明する。なお、第3実施形態で第1,2実施形態と同様の構成については、図中に符号を付してその説明を省略する。
【0080】
前部車体の車室前面を構成するダッシュパネル7の後面壁には、上記第1実施形態と同様に、車幅方向に沿ってダッシュクロスメンバ211が配設されている。このダッシュクロスメンバ211は、上記第1実施形態と異なり、その突出量が駆動モータ9の径に応じて設定されている。
【0081】
すなわち、ダッシュクロスメンバ211は、その長手方向両端部がダッシュパネル7の車幅方向端部にスポット溶接されているとともに、長手方向の所定箇所においてダッシュパネル7にスポット溶接されている。具体的には、このダッシュクロスメンバ211は、図12に示すように、前方に開口する断面視略ハット状に形成されており、車体に対して略鉛直方向に延びる後面壁211aと、後面壁211aの上下両端縁から前方に延びる上下両面壁211b,cと、これらの上下両面壁211b,cの前端縁からダッシュパネル7に沿って上下外方に延びる接合フランジ部211d,eとを備える。この接合フランジ部211d,eにおいて上記したようにダッシュパネル7にスポット溶接されることによりダッシュパネル7に接合され、これによりダッシュクロスメンバ211は、ダッシュパネル7とともに車幅方向に延びる閉断面C3を構成し、これによりダッシュパネル7の剛性を向上させている。
【0082】
このダッシュクロスメンバ211のダッシュパネル7に対する突出量は、上下両面壁211b,cの延出長さによって定まり、当第3実施形態では、上面壁211bの車体前後方向の長さhが駆動モータ9の径dよりも長くなるように設計されている。ダッシュクロスメンバ211の上面壁211bは、車体に対して略水平方向に延びるように形成され、これにより駆動モータ9を載置し易くなっている。また、ダッシュクロスメンバ211の下面壁211cは、前下がりに傾斜して配置され、駆動モータ9を安定して載置可能に構成されている。
【0083】
駆動モータ9は、図10および図11に示すように、このダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上であって可動フロア装置6の前方、より具体的には可動フロアパネル61の中央側半部の前方に配設されている。この駆動モータ9自体の構造、および駆動モータ9から伝動ギヤ194に駆動力を伝達する構造は上記第1、第2実施形態と同様である。
【0084】
この駆動モータ9は、図12に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9はダッシュクロスメンバ211と車室前面を構成するダッシュパネル7とにより構成される閉断面C3の上辺部上に取り付けられている。
【0085】
このブラケット10は、駆動モータ9の周面に沿って形成され、上端部がダッシュパネル7にボルトにより強固に接合されているとともに、下端部がダッシュクロスメンバ211の後面壁211aの上部にボルトにより強固に接合されている。
【0086】
この駆動モータ9にカップリング193を介して一端が取り付けられる動力伝達ケーブル194は、駆動モータ9が可動フロア装置6の前方のダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に配設されているため、その長さを比較的短く形成することができる。
【0087】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および動力伝達ケーブル194並びに伝動ギヤ116が正逆回転駆動され、この伝動ギヤ116から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0088】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の前方に設けられるとともに比較的短い動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116を回転駆動し、この伝動ギヤ116から昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0089】
しかも、駆動モータ9は車室の前面を構成するダッシュパネル7およびこのダッシュパネル7とともに閉断面C3を構成するダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に駆動モータ9が載置された状態で固定されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるダッシュクロスメンバ211は、ダッシュパネル7に接合されることにより閉断面C3を形成して剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0090】
なお、この第3実施形態において、ダッシュクロスメンバ211はダッシュパネル7の後面、すなわち、車室側の面に接合されているが、このダッシュクロスメンバはダッシュパネル7の前面、すなわち、エンジンルーム側の面に接合されているものであってもよい。この場合、駆動モータ9は、エンジンルーム側にこのダッシュクロスメンバの上面壁を利用して載置取り付けられるものであってもよいし、またダッシュクロスメンバとダッシュパネルとで構成される閉断面内に収納し、かつ、取り付けられるものであってもよい。このように閉断面内に収納するように構成した場合には、ダッシュパネルに開口を設け、この開口を通じて車室内に動力伝達ケーブルが導入されることになる。また、第2実施形態のように、駆動モータ9をダッシュクロスメンバ221のみに取り付けてもよく、この場合、ダッシュパネル7にボルト孔を設ける必要もなく防音、防水等の点で有利となる。
【0091】
なお、以上に説明した可動フロア装置用の駆動モータ配設構造は、本発明に係る構造の一実施形態であり、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0092】
上記各実施形態では、補強部材について車体強度を向上させる等のための既存の高剛性部材を利用してこの高剛性部材に駆動モータ9が取り付けられるように構成されているが、駆動モータ9を取り付けるための補強部材を別途取り付けるように構成してもよい。ただし、上記各実施形態のように既存の高剛性部材を利用することにより、簡易に構成することができ、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図2】同前部車体構造の底面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】第1実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【図5】第2実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図6】同前部車体構造の底面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】第2実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【図9】第3実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図10】同前部車体構造の底面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】第3実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0094】
C1 閉断面
C2 閉断面
C3 閉断面
3 フロントサイドフレーム
4 フロアパネル
6 可動フロア装置
7 ダッシュパネル
9 駆動モータ
10 ブラケット
11 ダッシュクロスメンバ
32 トルクボックス部
41 トンネル部
61 可動フロアパネル
62 昇降機構
112 エアコンユニット
211 ダッシュクロスメンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が載置される足部載置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア装置に用いられる駆動モータの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調節するシート位置調節手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調節する可動フロア装置によっても調節可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してこのペダルを操作する乗員の足部が載置される操作時足部載置領域に配設される可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、固定フロア部に形成された凹部内に配設され上記昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータとを備えた可動フロア装置が提案されている。
【特許文献1】実開昭63−69655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、この種の可動フロア装置では、駆動モータはその駆動力入力対象である昇降機構に近接した位置に設けられるのが駆動力伝達効率の点で好ましく、したがってこの観点からは上記特許文献1に記載の装置のように駆動モータから昇降機構に対してダイレクトに駆動力が伝達されるように構成されるのが好ましい。また、可動フロア装置は、固定フロア部上に配設されたシートに対応して配設されているため、駆動力伝達効率を良好なまま維持させようとすると、駆動モータの配設位置が限定的になり、したがって特許文献1に記載の装置のように駆動モータを固定フロア部に形成された凹部内に単に取り付けられるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、駆動モータが固定フロア部に形成された凹部内に単に取り付けられる駆動モータの配設構造を採用すると、可動フロア部は乗員の足部を載せた状態駆動されることが多いと考えられ、駆動モータに作用するトルクの反動も大きいため、駆動モータの支持剛性ついて不安が残るものであった。すなわち、特許文献1の駆動モータの配設構造では、永年の使用によって固定フロア部が変形や破損等することが懸念されるものであった。したがって、このような可動フロア装置用の駆動モータについて、支持剛性の向上が望まれている。その他、駆動モータは車室内に配設される可動フロア装置を駆動するためのものであり、車室内外を問わず車室近傍位置に配設されることが多く、このような駆動モータの配設構造では駆動モータの支持剛性が低いと、車両衝突時等に駆動モータが車室内へ飛散することが懸念される。したがって、このような点でも、可動フロア装置用の駆動モータについてさらなる支持剛性の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、従来の可動フロア装置用の駆動モータの配設構造の改良に係るものであり、車室近傍に配設される可動フロア装置用の駆動モータの支持剛性をさらに向上可能な可動フロア装置用の駆動モータの配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可動フロア装置用の駆動モータの配設構造によれば、前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部およびこの可動フロア部を昇降動させる昇降機構を有する可動フロア装置と、この昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータと、上記可動フロア装置が配設される車室の内面壁を構成するパネル部材と、屈曲形成されこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材とを備え、上記駆動モータは、上記昇降機構の近傍位置に配設されるとともに、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、駆動モータが昇降機構の近傍位置に配設されるとともに車室の内面壁を構成するパネル部材およびこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられるので、駆動モータと昇降機構との相対位置を可及的に近接させることができ、これにより駆動モータから昇降機構に対する駆動力の伝達効率を良好なまま維持することができる。しかも、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられているので、上記閉断面によってパネル部材を補強することができるとともに、駆動モータの車体に対する支持剛性を向上させることができ、これにより車両衝突時等の駆動モータの車室内への飛散を効果的に防止することができる。
【0009】
ここで、上記可動フロア装置は、例えば2列、3列シート等の後列シート用に、車室後部に配設されているものであってもよいが、例えば前列シート用に、車室前部に配設されているものであってもよい(請求項2)。
【0010】
この発明において、上記補強部材は、上記パネル部材の車室外側の面に接合されているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このように構成すれば、補強部材が車室内に突出することがなく、車室内空間に与える影響を軽減することができる。
【0012】
この場合、上記補強部材に対向するパネル部材の対向壁部分に取り付けられているのが好ましい(請求項4)。
【0013】
このように構成すれば、車室外側に配設された補強部材よりも車室側に配設されたパネル部材に駆動モータを取り付けることができ、駆動力の伝達経路を可及的に短くして駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、このパネル部材の対向壁部分についても補強部材によって剛性が高められていることから駆動モータの支持剛性も良好なまま維持することができる。
【0014】
また、補強部材がパネル部材の車室外側の面に接合される場合には、上記駆動モータは、その少なくとも一部が上記補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されるのが好ましい(請求項5)。
【0015】
このように構成すれば、駆動モータをその車室側への突出量を抑えた状態で車体に対して配設することができ、例えば可動フロア部の下方に駆動モータを配設する場合でもその干渉を防止することができ、駆動モータのレイアウト性を向上させることができる。
【0016】
この場合、上記補強部材は上記駆動モータの大きさに対応して形成され、上記駆動モータは当該補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されているのが好ましい(請求項6)。
【0017】
このように構成すれば、駆動モータの車室側への突出量を無くすことができ、これにより可動フロア部との干渉を確実に防止することができるとともに、見栄えを向上させることができる。
【0018】
また、駆動モータを補強部材内に配設する場合には、この補強部材は、その配設位置が特に限定されるものではないが、上記可動フロア装置の下方に配設されているのが好ましい(請求項7)。
【0019】
このように構成すれば、駆動モータを可動フロア装置の近傍に配設することができ、駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、可動フロア部とフロアパネルとの間の空間を有効に利用して駆動モータを配設することができる。
【0020】
この発明において、上記補強部材は、上記パネル部材の車室内側の面に接合されているものであってもよい(請求項8)。
【0021】
この場合、上記駆動モータは、上記補強部材のみに取り付けられたり(請求項9)、駆動モータが上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置される場合には、これらの補強部材およびパネル部材の両方に取り付けられたり(請求項10)、することができる。
【0022】
すなわち、駆動モータが補強部材のみに取り付けられる場合にはパネル部材に例えばボルト挿通孔等を穿設する必要がなく、密閉性の点で有利であり、駆動モータが上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置されると収まりがよくなり、この状態で強固に固定することができる点で有利である。
【0023】
この場合、パネル部材に対する補強部材を新たに設けるものであってもよいが、既存の補強部材を利用するのが好ましく、例えば上記パネル部材は車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルであり、上記補強部材はこのダッシュパネルの高さ方向中間部を車幅方向に延びるダッシュクロスメンバであるのが好ましい(請求項11)。
【0024】
このように構成すれば、既存の部材を有効に利用して駆動モータを高い支持剛性で効率的に配設することができる。
【0025】
ここで、通常、ダッシュクロスメンバについてはダッシュパネルの補強の観点からその形状や閉断面積が決定され、この場合には駆動モータにおける軸線方向と直交する方向の寸法に対して小さい突出量に抑えられるのが一般的であるが、上記要素に加え、上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法をも考慮に入れることにより、ダッシュクロスメンバのダッシュパネルに対する補強機能を向上させることができるとともに、ダッシュパネルに対するダッシュクロスメンバの段差を有効に利用して駆動モータを配設することができる。
【0026】
すなわち、上記補強部材は、上記パネル部材に対して車室内方に突出することにより上記閉断面を構成するように形成されるとともに、その突出量が上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法に対応して設定されているのが好ましい(請求項12)。
【0027】
このように構成すれば、駆動モータの支持剛性を一層向上させつつ、ダッシュクロスメンバを設けることにより生じる段差を有効に利用して駆動モータを効率的に配設することができる。
【0028】
また、この発明において、上記パネル部材および補強部材は特に限定されるものではないが、例えば、上記パネル部材は車室床面を構成するフロアパネルのうちその車幅方向略中央部において車両前後方向に延びるトンネル部の天壁部であり、上記補強部材は当該トンネル部を補強するトンネル補強部材であるとすることができる(請求項13)。
【0029】
このように構成すれば、トンネル部自体の剛性も高いことから上記駆動モータの車体に対する支持剛性をより一層向上させることができる。
【0030】
この場合、上記トンネル部はその前部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜部分の上方に車室内を空調するためのエアコンユニットが配設され、このエアコンユニットと上記トンネル部の間に上記駆動モータが配設されているのが好ましい(請求項14)。
【0031】
このように構成すれば、エアコンユニットの下方の空間を有効に利用して駆動モータを配設することができるとともに、駆動モータを隠蔽して見栄えを向上させることができる。しかも、車両の衝突等によってトンネル部が上方に変形すれば、当該トンネル部とエアコンユニットとの間に駆動モータを挟み込むことができ、車両衝突時等における駆動モータの飛散をより確実に防止することができる。
【0032】
この発明において、上記駆動モータと上記昇降機構とは駆動力を伝達する駆動力伝達ケーブルで連結されているのが好ましい(請求項15)。
【0033】
このように構成すれば、駆動モータの配設方向に拘わらず、当該駆動モータから昇降機構に対して駆動力を伝達することができ、駆動モータのレイアウト性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明に係る可動フロア装置用の駆動モータ配設構造によれば、駆動モータと昇降機構との相対位置を可及的に近接させることができ、これにより駆動モータから昇降機構に対する駆動力の伝達効率を良好なまま維持することができ、しかも、駆動モータを高剛性部材に取り付けることにより駆動モータの車体に対する支持剛性を向上させることができ、これにより駆動モータをその駆動トルクの反動に耐えられるように頑丈に支持できると共に、車両衝突時等の駆動モータの車室内への飛散を効果的に防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
(第1実施形態)
まず、後述する可動フロア装置用の駆動モータがフロントサイドフレームのトルクボックス部に収納される第1実施形態について説明する。図1は本発明の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図2は前部車体構造の車幅方向中央よりも片側のみを示す底面図である。なお、この前部車体構造は、左右が略対象に形成されている。
【0037】
この前部車体構造は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム3と、これらの一対のフロントサイドフレーム3上に接合されたフロアパネル4と、フロアパネル4の車幅方向両端縁に接合され車体前後方向に延びるサイドシル5とを備え、フロアパネル4上であって図示しない前列シートに着座する乗員の足部が載置される領域には、可動フロアパネル61をフロアパネル4に対して昇降動させる可動フロア装置6が設けられている。
【0038】
フロントサイドフレーム3は、中間部に後下がりに傾斜するキックアップ部3aを有し、前部と後部との相対高さが異なるように形成されている。このフロントサイドフレーム3の後部およびキックアップ部3a上には、フロアパネル4が接合されている。このフロアパネル4は、車室の床面を構成するものであり、その車幅方向中央部は上方に屈曲形成されて前後方向に延びるトンネル部41が形成されている。このトンネル部41は、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部41の外側は図示していないがセンターコンソールによって被覆され、当該センターコンソールとトンネル部41との間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。このフロアパネル4の前端縁には上下方向に立ち上がってエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル7が連設されている。
【0039】
このダッシュパネル7の高さ方向中間部には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ11が配設されている。このダッシュクロスメンバ11は、図1に示すように、断面ハット状に形成されるとともに、その開口部をダッシュパネル7側に向けてダッシュパネル7の車室側側面に接合されている。これにより、ダッシュクロスメンバ11は、ダッシュパネル7とともに車幅方向に延びる閉断面を形成し、これによりダッシュパネル7を補強するものとなされている。
【0040】
なお、このフロントサイドフレーム3における前部の車幅方向外方に、ホイールハウジング8が設けられている。このホイールハウジング8の後方にはサイドシル5の前端部が配置されている。また、サイドシル5にはその長手方向前端部にフロントピラー12が接合されているとともに長手方向中間部にセンターピラー13が接合されている。
【0041】
具体的には、フロントサイドフレーム3は、車体前後方向に沿って複数部材(当実施形態では3部材)に分割形成されている。すなわち、フロントサイドフレーム3は、車体前部からキックアップ部3aの略中央部にまで延びるフレーム前部31と、このフレーム前部31の後端縁に連結されキックアップ部3aの後方にまで延びるトルクボックス部32と、このトルクボックス部32の後端縁に連結され図示しないリヤサイドフレームに接続されるフレーム後部33とを備え、これらが一体的に接合されることにより高剛性部材として形成されている。
【0042】
フレーム前部31は、角筒状に形成され、これ自体で車体前後方向に延びる閉断面を構成している。トルクボックス部32およびフレーム後部33は、プレス加工により屈曲形成されて断面逆ハット状に形成され、上端開口縁に突設された接合フランジ部32a,33aにおいてフロアパネル4の下面、すなわちフロアパネル4の車室外側の面に接合されている。これにより、トルクボックス部32およびフレーム後部33は、フロアパネル4とともに車体前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0043】
トルクボックス部32は、サイドシル5に連結されることにより、車体の捩り剛性を向上させるもので、当実施形態ではフロントサイドフレーム3の一部材として構成されている。このトルクボックス部32は、プレス加工により屈曲して形成され、その全体形状が底面視略台形状の碗型を呈するようになされ、上記したようにフロアパネル4に接合されることにより閉断面C1を構成している。
【0044】
トルクボックス部32についてより具体的に説明すると、このトルクボックス部32は、車体前後方向に延び前後各端部の断面形状がフレーム前後各部31,33の断面形状に対応して形成されたフレーム構成部32bと、このフレーム構成部32bの長手方向中間部における車幅方向外側の側壁および底面壁が外方に位置するサイドシル5にまで延びて形成されたボックス部32cとを備え、フレーム構成部32bの長手方向両端部がフレーム前後各部31,33の対向端部に外嵌されて溶接により接合されるとともに、ボックス部32cの車幅方向外側の端部がサイドシル5に接合されている。この結果、フロアパネル4とともに構成される閉断面C1が、図3に示すように、車体前後方向について、ボックス部32cに対応する部分で車幅方向外側に延出してサイドシル5にまで拡幅された状態となっている。
【0045】
このトルクボックス部32は、その内部空間に可動フロア装置6に対して駆動力を入力する駆動モータ9を収納可能な深さに設定されている。そして、この内部空間には、駆動モータ9がその軸線方向を車幅方向に沿わせた状態で配設されている。
【0046】
この駆動モータ9は、当実施形態では円筒状のステッピングモータが用いられ、その駆動力によって可動フロア装置6の後述する可動フロアパネル61を上下昇降動可能に構成されている。また、この駆動モータ9は、乗員によって操作される操作入力部(図示せず)の出力に応じて駆動されるものとなされ、駆動停止状態で出力軸91の回転を規制するブレーキ(図示せず)が内蔵されている。この出力軸91には、駆動モータ9の径よりも大径の駆動ギヤ92が取り付けられている。この駆動ギヤ92は、可動フロア装置6の後述する昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに歯合される。したがって、駆動モータ9の駆動力はこの駆動ギヤ92を介して昇降機構62に入力される。
【0047】
この駆動モータ9は、図4に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してフロアパネル4の下面に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9は、トルクボックス部32とフロアパネル4とにより構成される閉断面C1の上辺部分に下側から取り付けられている。このブラケット10は、駆動モータ9の周面に沿うU字状形状を呈し、その上端部でボルトにより強固にフロアパネル4の下面に接合されている。駆動モータ9の駆動ギヤ92に対応するフロアパネル4の部分には図3および図4に示すようにスリット42が設けられ、このスリット42を通じて駆動ギヤ92の周縁部が車室側に突出するように構成されている。
【0048】
この駆動ギヤ92の上方のフロアパネル4上には、可動フロア装置6が配設されている。この可動フロア装置6は、図4に示すように、アクセルペダルやブレーキペダル等のペダル類(図示せず)の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル61(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル61をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構62とを備え、上記したように操作入力部(図示せず)からの入力に基づいて可動フロアパネル61を乗員の体型、体格に応じた高さ位置に設定可能に構成されている。なお、この可動フロア装置6について、図示しないシートの前後スライド移動に連動して可動フロアパネル61を昇降動させるものであってもよい。
【0049】
可動フロアパネル61は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジ61cにより連結された前後2枚のパネル61a,61bから構成されている。この可動フロアパネル61は、シート(図示せず)に着座する乗員がペダル類(図示せず)を操作する場合にその足部が載置されるものである。
【0050】
可動フロアパネル61は、その前側パネル61aの前端縁がフロアパネル4の前上がり傾斜部分にヒンジ連結部61dによって枢支され、昇降機構62によって前側パネル61aがその前端縁を中心に揺動されることによって昇降動可能に構成されている。そして、後側パネル61bは、この前側パネル61aの昇降動に伴って、前側パネル61aとの相対角度が変化しながら、その後端縁をフロアパネル4上を車体前後方向に沿って摺動されることになる。
【0051】
昇降機構62は、図4に示すように、前側パネル61aの下方であって上記駆動モータ9の上方のフロアパネル4上に配設されている。この昇降機構62は、前側パネル61aを昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では前側パネル61aの所定部分(図例では中間部やや後方寄り)を下方から支承して上下させる機構が採用されている。
【0052】
すなわち、昇降機構62は、図3および図4に示すように、前側パネル61aの下方において車幅方向に沿って延び、水平軸回りに正逆回転する回転軸部62aと、この回転軸部62aの長手方向両端部および中央部に取り付けられ当該回転軸部62aと一体に回転する揺動アーム62bと、各揺動アーム62bに対応して設けられ回転軸部62aを回転自在に支持する軸ブラケット62cとを備える。揺動アーム62bのうち、回転軸部62aの長手方向中央部に配置された中央揺動アーム62bはその基端部に上記駆動モータ9の駆動ギヤ92に歯合する伝動セクタギヤ62dが形成されている。
【0053】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および駆動ギヤ92が正逆回転駆動され、この駆動ギヤ92から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0054】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の真下に設けられるとともに駆動ギヤ92を介して昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに直接駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0055】
しかも、駆動モータ9は車室の床面を構成するフロアパネル4およびこのフロアパネル4とともに閉断面C1を構成するトルクボックス部32のうちのフロアパネル4の下面に、トルクボックス部32内に収納された状態で接合されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるフロアパネル4の所定部分はフロントサイドフレーム3のトルクボックス部32に補強されることにより剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0056】
また、この駆動モータ9の配設構造によれば、フロントサイドフレーム3をトルクボックス(車体の捩り剛性を向上させるための部材)と共用させることにより、当該フロントサイドフレーム3内に駆動モータ9の収容空間、すなわちトルクボックス部32によって形成される内部空間を形成し、この内部空間内に駆動モータ9が収納されるので、簡単な構成で収納スペースを作り出して駆動モータ9を収納させることができる。このため、フロアパネル4の下方のデッドスペースを有効活用して駆動モータ9を収納することができるとともに、車室内に駆動モータ9が露出することなく見栄えを向上させることができる。さらに、このようにトルクボックス部32内に駆動モータ9が収納されれば、駆動モータ9について、昇降機構62に近接配置して直接的に駆動力を入力させることを可能としながら、可動フロアパネル61の昇降動に伴って当該パネル61との干渉を確実に防止した状態で配設することができる。
【0057】
なお、この第1実施形態において、駆動モータ9をフロアパネル4の下面に接合される構成に代えて、駆動モータ9をトルクボックス部32の底面壁、或いは周面壁に接合される構成を採用するものであってもよい。
【0058】
また、トルクボックス部32内に収納される構成ばかりでなく、このトルクボックス部32によって補強されたフロアパネル4の上面に接合されるものであってもよい。この場合には、フロアパネル4の対応箇所を凹陥させて、この凹陥部に駆動モータ9を接合することとすれば、可動フロアパネルとの干渉を防止しつつ、トルクボックス部32によって補強された部分において高い剛性で支持することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、可動フロア装置用の駆動モータがフロアパネル4のトンネル部41の上面に取り付けられる第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図6は同前部車体構造の底面図である。
【0060】
この第2実施形態の駆動モータ配設構造は、駆動モータの配設位置だけではなく、これに伴ってフロントサイドフレームの構成、駆動力伝達構造等も異なっており、この点を中心に説明する。なお、第2実施形態で第1実施形態と同様の構成については、図中に符号を付してその説明を省略する。
【0061】
当第2実施形態のフロントサイドフレーム103は、上記第1実施形態と異なり、トルクボックス部32に代えて、フレーム前部131とフレーム後部133との間に車体の前後方向に延びる断面逆ハット状の中間フレーム部132が設けられている。これらのフレーム各部131〜133上にはフロアパネル4が接合されており、このフロアパネル4のトンネル部41の上方には当該トンネル部41の上面に対して所定の空隙を設けてエアコンユニット112が配設されている。
【0062】
このエアコンユニット112は、エンジンルーム側から差し込まれたボルトによってダッシュパネル7の後面に接合されている。エアコンユニット112は、その幅がトンネル部41の幅よりも若干広く形成され、図5に示すように取り付け状態においてその後端縁がトンネル部41の前端部における傾斜部41aよりも後方に位置するようになっている。
【0063】
トンネル部41の傾斜部41aは、トンネル部41の前端部がキックアップ部3aに沿って前上がりに傾斜することにより形成されている。このトンネル部41には、その傾斜部41aの下端部からセンタクロスメンバ113の上方にまで延びるトンネル補強部材114が設けられている。
【0064】
このトンネル補強部材114は、図7に示すように、長手方向に直交する断面が下方に開口するM字状形状を呈し、この下端開口にトンネル部41の上部が外嵌されることによりトンネル部41に取り付けられている。すなわち、トンネル補強部材114は、上面壁114aと上面壁114aの車幅方向両端から下方に垂下する側壁部114bとを有し、この側壁部114bの下端部においてトンネル部41の側壁にスポット溶接により接合されている。また、このトンネル補強部材114は、その上面壁114aの幅方向中央部分に車体前後方向に延びる補強溝部114cが設けられ、補強溝部114cの底面においてもトンネル部41の上面壁に接合されている。このトンネル部41の上面壁とトンネル補強部材114の上面壁114aとの間であって上記補強溝部114cの両側方には間隙が設けられており、この間隙が閉断面として構成されている。すなわち、トンネル補強部材114は、トンネル部41とともに車体前後方向に延びる閉断面C2を構成し、これによりトンネル部41の上部の剛性を向上させている。
【0065】
図8に示すように、このトンネル補強部材114の上面壁114aも前端部においてトンネル部41の傾斜部41aに応じて前上がりに傾斜して形成されている。このトンネル補強部材114の上面壁における上記傾斜境界部114dには、駆動モータ9がその軸線方向を境界線に沿わせた状態で配設されている。この傾斜境界部114dは可動フロア装置6の側方、具体的には昇降機構62の側方に位置しており、したがって駆動モータ9は昇降機構62の近傍に配置されている。また、この傾斜境界部114dは、エアコンユニット112の下方に位置しており、したがって駆動モータ9はエアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されている。
【0066】
駆動モータ9自体の構造は上記第1実施形態と同様である。この駆動モータ9の出力軸91にはカップリング193を介して動力伝達ケーブル194が接続されている。動力伝達ケーブル194は、可撓性を有する長尺の回転駆動軸部からなり、回転駆動軸部が軸心周りに回転駆動されて後述する伝動ギヤ116に回転力を伝達するように構成されている。
【0067】
この駆動モータ9は、図7に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してトンネル補強部材114の上面壁114a上に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9はフロアパネル4のトンネル部41とトンネル補強部材114とにより構成される閉断面C2の上辺部上に取り付けられている。
【0068】
このブラケット10は、図8に示すように、駆動モータ9の周面に沿うU字状形状を呈している。このブラケット10の前後取付部10a,10bは、前側取付部10aがトンネル補強部材114上に形成された差込突出部114eの差込口(図示せず)に挿入されることにより接合され、後側取付部10bがボルトにより強固にトンネル補強部材114の上面壁114aに接合されている。なお、このブラケット10の前側取付部10aは図5に示すようにトンネル補強部材114の傾斜部分において接合されている。
【0069】
動力伝達ケーブル194の他端は、フロアパネル4上に軸受ブラケット115を介して取り付けられた伝動ギヤ116に接続されている。したがって、駆動モータ9の駆動力は、動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116に入力される。
【0070】
この伝動ギヤ116は、昇降機構62の中央揺動アーム62bに形成された伝動セクタギヤ62dに歯合可能に構成され、駆動モータ9からの回転駆動力を昇降機構62に入力可能に構成されている。
【0071】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および動力伝達ケーブル194並びに伝動ギヤ116が正逆回転駆動され、この伝動ギヤ116から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0072】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の側方に設けられるとともに比較的短い動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116を回転駆動し、この伝動ギヤ116から昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0073】
しかも、駆動モータ9は車室の床面を構成するフロアパネル4におけるトンネル部41の上面壁およびこのトンネル部41とともに閉断面C2を構成するトンネル補強部材114の上面壁114a上に駆動モータ9が接合されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるトンネル補強部材114は、トンネル部41に接合されることにより閉断面C2を形成して剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。その上、トンネル部41にボルト孔等を設ける必要もなく、防音や防水等の点でも有利になる。
【0074】
また、この駆動モータ9の配設構造によれば、エアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されているので、デッドスペースを有効活用して駆動モータ9を配設することができるとともに、エアコンユニット112によって駆動モータ9を隠蔽することができこれにより見栄えを向上させることができる。
【0075】
さらに、エアコンユニット112の下面とトンネル部41の上面との間の空隙に配設されているとともにトンネル部41の前端部が前上がりに傾斜して形成されているので、車両の衝突時にトンネル部41が変形する場合には上方に屈曲されるケースが多くなり、このようにトンネル部41が上方に屈曲されると、駆動モータ9がエアコンユニット112とトンネル部41との間に挟持されるので、駆動モータ9の飛散を効果的に防止することができる。
【0076】
なお、この第2実施形態において、動力伝達ケーブル194の他端が伝動ギヤ116に接続されることにより、動力伝達ケーブル194の駆動力が伝動ギヤ116に直接的に入力されるように構成されているが、例えば動力伝達ケーブル194の他端部にウォームを設け、ウォームホイールとしての伝動ギヤを回転駆動するように構成してもよい。この場合には、ウォームギヤによって可動フロアパネル61に入力された逆駆動力を支持することができ、駆動モータにおける電磁ブレーキを省略することができる。
【0077】
また、上記トンネル補強部材114には、補強溝114cが設けられているが、この補強溝114cを設けるものではなく、トンネル部41の左右に閉断面を形成するように左右一対のトンネル補強部材を設けるように構成してもよい。この場合には、これら左右一対のトンネル補強部材の間の間隙に駆動モータ9が当該トンネル補強部材およびトンネル部41の上面壁114aの両方に当接した状態で配設され、この状態でトンネル補強部材および上面壁114aの少なくとも一方に取り付けられるものであってもよい。
【0078】
(第3実施形態)
次に、可動フロア装置用の駆動モータがダッシュクロスメンバ上に配設される第3実施形態について説明する。図9は第3実施形態の駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図であり、図10は同前部車体構造の底面図である。
【0079】
この第3実施形態の駆動モータ配設構造は、駆動モータの配設位置等について上記第2実施形態と異なっており、この点を中心に説明する。なお、第3実施形態で第1,2実施形態と同様の構成については、図中に符号を付してその説明を省略する。
【0080】
前部車体の車室前面を構成するダッシュパネル7の後面壁には、上記第1実施形態と同様に、車幅方向に沿ってダッシュクロスメンバ211が配設されている。このダッシュクロスメンバ211は、上記第1実施形態と異なり、その突出量が駆動モータ9の径に応じて設定されている。
【0081】
すなわち、ダッシュクロスメンバ211は、その長手方向両端部がダッシュパネル7の車幅方向端部にスポット溶接されているとともに、長手方向の所定箇所においてダッシュパネル7にスポット溶接されている。具体的には、このダッシュクロスメンバ211は、図12に示すように、前方に開口する断面視略ハット状に形成されており、車体に対して略鉛直方向に延びる後面壁211aと、後面壁211aの上下両端縁から前方に延びる上下両面壁211b,cと、これらの上下両面壁211b,cの前端縁からダッシュパネル7に沿って上下外方に延びる接合フランジ部211d,eとを備える。この接合フランジ部211d,eにおいて上記したようにダッシュパネル7にスポット溶接されることによりダッシュパネル7に接合され、これによりダッシュクロスメンバ211は、ダッシュパネル7とともに車幅方向に延びる閉断面C3を構成し、これによりダッシュパネル7の剛性を向上させている。
【0082】
このダッシュクロスメンバ211のダッシュパネル7に対する突出量は、上下両面壁211b,cの延出長さによって定まり、当第3実施形態では、上面壁211bの車体前後方向の長さhが駆動モータ9の径dよりも長くなるように設計されている。ダッシュクロスメンバ211の上面壁211bは、車体に対して略水平方向に延びるように形成され、これにより駆動モータ9を載置し易くなっている。また、ダッシュクロスメンバ211の下面壁211cは、前下がりに傾斜して配置され、駆動モータ9を安定して載置可能に構成されている。
【0083】
駆動モータ9は、図10および図11に示すように、このダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上であって可動フロア装置6の前方、より具体的には可動フロアパネル61の中央側半部の前方に配設されている。この駆動モータ9自体の構造、および駆動モータ9から伝動ギヤ194に駆動力を伝達する構造は上記第1、第2実施形態と同様である。
【0084】
この駆動モータ9は、図12に示すように、その軸線方向に沿って並設された一対のブラケット10を介してダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に取り付けられている。すなわち、駆動モータ9はダッシュクロスメンバ211と車室前面を構成するダッシュパネル7とにより構成される閉断面C3の上辺部上に取り付けられている。
【0085】
このブラケット10は、駆動モータ9の周面に沿って形成され、上端部がダッシュパネル7にボルトにより強固に接合されているとともに、下端部がダッシュクロスメンバ211の後面壁211aの上部にボルトにより強固に接合されている。
【0086】
この駆動モータ9にカップリング193を介して一端が取り付けられる動力伝達ケーブル194は、駆動モータ9が可動フロア装置6の前方のダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に配設されているため、その長さを比較的短く形成することができる。
【0087】
以上のように構成された可動フロア装置6は、乗員によって駆動モータ9の操作入力部が駆動操作されると、駆動モータ9の出力軸91および動力伝達ケーブル194並びに伝動ギヤ116が正逆回転駆動され、この伝動ギヤ116から昇降機構62、具体的には中央の揺動アーム62bに駆動力が伝達される。そして、中央の揺動アーム62bが正逆回転すると、回転軸部62aおよび他の揺動アーム62bも正逆回転駆動され、これにより各揺動アーム62bの先端部に当接する前側パネル61aを上下に揺動させて可動フロアパネル61を昇降動される。
【0088】
この昇降機構62に駆動力を入力する駆動モータ9は、昇降機構62の前方に設けられるとともに比較的短い動力伝達ケーブル194を介して伝動ギヤ116を回転駆動し、この伝動ギヤ116から昇降機構62の伝動セクタギヤ62dに駆動力が入力されるので、駆動モータ9と昇降機構62との相対位置を近接配置してこれにより駆動モータ9から昇降機構62に対する駆動力の伝動効率を良好なものとすることができる。
【0089】
しかも、駆動モータ9は車室の前面を構成するダッシュパネル7およびこのダッシュパネル7とともに閉断面C3を構成するダッシュクロスメンバ211の上面壁211b上に駆動モータ9が載置された状態で固定されるので、駆動モータ9の車体に対する支持剛性を向上させることができる。すなわち、この駆動モータ9が接合されるダッシュクロスメンバ211は、ダッシュパネル7に接合されることにより閉断面C3を形成して剛性が高められており、このため駆動モータ9に対する支持剛性も単に凹部に取り付ける従来構造に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0090】
なお、この第3実施形態において、ダッシュクロスメンバ211はダッシュパネル7の後面、すなわち、車室側の面に接合されているが、このダッシュクロスメンバはダッシュパネル7の前面、すなわち、エンジンルーム側の面に接合されているものであってもよい。この場合、駆動モータ9は、エンジンルーム側にこのダッシュクロスメンバの上面壁を利用して載置取り付けられるものであってもよいし、またダッシュクロスメンバとダッシュパネルとで構成される閉断面内に収納し、かつ、取り付けられるものであってもよい。このように閉断面内に収納するように構成した場合には、ダッシュパネルに開口を設け、この開口を通じて車室内に動力伝達ケーブルが導入されることになる。また、第2実施形態のように、駆動モータ9をダッシュクロスメンバ221のみに取り付けてもよく、この場合、ダッシュパネル7にボルト孔を設ける必要もなく防音、防水等の点で有利となる。
【0091】
なお、以上に説明した可動フロア装置用の駆動モータ配設構造は、本発明に係る構造の一実施形態であり、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0092】
上記各実施形態では、補強部材について車体強度を向上させる等のための既存の高剛性部材を利用してこの高剛性部材に駆動モータ9が取り付けられるように構成されているが、駆動モータ9を取り付けるための補強部材を別途取り付けるように構成してもよい。ただし、上記各実施形態のように既存の高剛性部材を利用することにより、簡易に構成することができ、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図2】同前部車体構造の底面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】第1実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【図5】第2実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図6】同前部車体構造の底面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】第2実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【図9】第3実施形態に係る駆動モータ配設構造が適用される前部車体構造の概略構成図である。
【図10】同前部車体構造の底面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】第3実施形態に係る駆動モータ配設構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0094】
C1 閉断面
C2 閉断面
C3 閉断面
3 フロントサイドフレーム
4 フロアパネル
6 可動フロア装置
7 ダッシュパネル
9 駆動モータ
10 ブラケット
11 ダッシュクロスメンバ
32 トルクボックス部
41 トンネル部
61 可動フロアパネル
62 昇降機構
112 エアコンユニット
211 ダッシュクロスメンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部およびこの可動フロア部を昇降動させる昇降機構を有する可動フロア装置と、この昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータと、上記可動フロア装置が配設される車室の内面壁を構成するパネル部材と、屈曲形成されこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材とを備え、
上記駆動モータは、上記昇降機構の近傍位置に配設されるとともに、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられていることを特徴とする可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項2】
上記可動フロア装置は、車室前部に配設されていることを特徴とする請求項1記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項3】
上記補強部材は、上記パネル部材の車室外側の面に接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項4】
上記駆動モータは、上記補強部材に対向するパネル部材の対向壁部分に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項5】
上記駆動モータは、その少なくとも一部が上記補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項6】
上記補強部材は上記駆動モータの大きさに対応して形成され、上記駆動モータは当該補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されていることを特徴とする請求項5記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項7】
上記補強部材は、上記可動フロア装置の下方に配設されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項8】
上記補強部材は、上記パネル部材の車室内側の面に接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項9】
上記駆動モータは、上記補強部材のみに取り付けられることを特徴とする請求項8記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項10】
上記駆動モータは、上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置されるとともにこれらの補強部材およびパネル部材の両方に取り付けられることを特徴とする請求項8記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項11】
上記パネル部材は車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルであり、上記補強部材はこのダッシュパネルの高さ方向中間部を車幅方向に延びるダッシュクロスメンバであることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項12】
上記補強部材は、上記パネル部材に対して車室内方に突出することにより上記閉断面を構成するように形成されるとともに、その突出量が上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法に対応して設定されていることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項13】
上記パネル部材は車室床面を構成するフロアパネルのうちその車幅方向略中央部において車両前後方向に延びるトンネル部の天壁部であり、上記補強部材は当該トンネル部を補強するトンネル補強部材であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項14】
上記トンネル部はその前部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜部分の上方に車室内を空調するためのエアコンユニットが配設され、このエアコンユニットと上記トンネル部の間に上記駆動モータが配設されていることを特徴とする請求項13に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項15】
上記駆動モータと上記昇降機構とは駆動力を伝達する駆動力伝達ケーブルで連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項1】
前列シートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部およびこの可動フロア部を昇降動させる昇降機構を有する可動フロア装置と、この昇降機構に対して駆動力を入力する駆動モータと、上記可動フロア装置が配設される車室の内面壁を構成するパネル部材と、屈曲形成されこのパネル部材とともに閉断面を構成する補強部材とを備え、
上記駆動モータは、上記昇降機構の近傍位置に配設されるとともに、上記閉断面を構成する所定部分に当接した状態で上記パネル部材および補強部材の少なくともいずれか一方に取り付けられていることを特徴とする可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項2】
上記可動フロア装置は、車室前部に配設されていることを特徴とする請求項1記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項3】
上記補強部材は、上記パネル部材の車室外側の面に接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項4】
上記駆動モータは、上記補強部材に対向するパネル部材の対向壁部分に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項5】
上記駆動モータは、その少なくとも一部が上記補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項6】
上記補強部材は上記駆動モータの大きさに対応して形成され、上記駆動モータは当該補強部材とパネル部材とによって構成される空間の内部に収納される状態で配設されていることを特徴とする請求項5記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項7】
上記補強部材は、上記可動フロア装置の下方に配設されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項8】
上記補強部材は、上記パネル部材の車室内側の面に接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項9】
上記駆動モータは、上記補強部材のみに取り付けられることを特徴とする請求項8記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項10】
上記駆動モータは、上記補強部材およびパネル部材の両方に当接した状態で配置されるとともにこれらの補強部材およびパネル部材の両方に取り付けられることを特徴とする請求項8記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項11】
上記パネル部材は車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルであり、上記補強部材はこのダッシュパネルの高さ方向中間部を車幅方向に延びるダッシュクロスメンバであることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項12】
上記補強部材は、上記パネル部材に対して車室内方に突出することにより上記閉断面を構成するように形成されるとともに、その突出量が上記駆動モータにおけるその軸線方向と直交する方向の寸法に対応して設定されていることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項13】
上記パネル部材は車室床面を構成するフロアパネルのうちその車幅方向略中央部において車両前後方向に延びるトンネル部の天壁部であり、上記補強部材は当該トンネル部を補強するトンネル補強部材であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項14】
上記トンネル部はその前部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜部分の上方に車室内を空調するためのエアコンユニットが配設され、このエアコンユニットと上記トンネル部の間に上記駆動モータが配設されていることを特徴とする請求項13に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【請求項15】
上記駆動モータと上記昇降機構とは駆動力を伝達する駆動力伝達ケーブルで連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の可動フロア装置用の駆動モータ配設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−281911(P2006−281911A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102453(P2005−102453)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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