説明

可変ガイドベーン及びその製造方法並びに車両用過給機

【課題】製造が容易で強度に優れた可変ガイドベーンを提供する。
【解決手段】羽根部17と軸部20と歯車部101が一体構造の可変ガイドベーンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ガイドベーン及びその製造方法並びに車両用過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機に備えられる圧縮機においては、圧縮機に取り入れるガス流体(空気)の量が減少してくると、圧縮機の特性曲線がサージ線を越えてサージング領域に入るという特性がある。従って、上記サージ線を低流量側へ移動させることによりサージング領域を狭めることができれば、エンジンの運転範囲をワイドレンジとすることができて有益となる。
【0003】
このため、従来、サージング領域に入るような低流量の運転状況下でも、サージング領域に入らないようにサージ線を低流量側へ移動させるようにした圧縮機として、コンプレッサインペラの入口上流側に可変ガイドベーン(VIGV)を設けて、コンプレッサインペラに向かう空気の傾き角を調整するようにしたものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
前記特許文献1は、複数の可変ガイドベーンの夫々にコントロールアームが直結されており、各コントロールアームはその軸心と直交するレバーと、該レバーの回転平面に垂直をなすピンと、ピンを支持する球面軸受を介して環状のガイドリングに接続されており、該ガイドリングをアクチュエータの動力で回動させることにより複数の可変ガイドベーンが同時に回転するようになっている。
【0005】
前記特許文献1では、各可変ガイドベーンにコントロールアームを備え、該各コントロールアームをピンを介して環状のガイドリングの球面軸受に接続した構成を有しているため、複雑な構造となり製造及び組み立てが大変になる問題がある。更に、部品点数及び連結箇所が多いことから、製作誤差による連結部の遊び(誤差)が大きくなって可変ガイドベーンの正確な回転が難しくなるという問題がある。
【0006】
一方、前記特許文献2は、各可変ガイドベーンの羽根部を有する軸部にピニオン(歯車部)を備え、且つ、各ピニオンに噛合する環状のベベルギヤを備えており、1台のモータにより1つの可変ガイドベーンを回転させると、ピニオンを介してベベルギヤが回動し、ベベルギヤの回動により他のピニオンが回転して、全ての可変ガイドベーンが回転するようになっている。
【0007】
前記特許文献2では、特許文献1に比して構成が簡略となり部品点数が減少すると共に、ベベルギヤとピニオンの噛合により作動するため製作誤差による連結部の遊びを減少させて各可変ガイドベーンの回転をより正確に行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2807498号公報
【特許文献2】特開2006−046220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に記載の可変ガイドベーンでは、羽根部を有する軸部とピニオンとが別体に構成されており、従って、前記ピニオンをキーを用いて軸部に固定することにより可変ガイドベーンを組み立てている。
【0010】
これは、環状のベベルギヤ(傘歯歯車)に噛合するピニオンも傘歯歯車であるため、羽根部と軸部とピニオンは成形用金型を用いて一体構造に成形することが困難なためである。
【0011】
即ち、前記可変ガイドベーンを成形用金型を用いて一体構造に成形しようとしても前記傘歯歯車からなるピニオンは、抜き型では成形することができない。即ち、ピニオンよりも羽根部の断面が大きいために、抜き型を羽根部側へ抜き出すことができず、又、前記ピニオンは反羽根部側へ向かって径が増加するテーパを有しているために、反羽根部側へも抜き出すことができない。そのために、ピニオンは複数の歯ごとに分割された複数の割り型を用いて成形する必要があり、この場合には型費用が非常に嵩んでコストが増大する問題があり、従って、一体構造の可変ガイドベーンを製造することは一般に行われていなかった。
【0012】
又、特許文献1では、羽根部を有する軸部とピニオンとをキーで組み立てているために、キーによる固定が緩む或いは抜け落ちる懸念を有していた。
【0013】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、製造が容易で強度に優れた可変ガイドベーン及びその製造方法並びに車両用過給機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、羽根部と軸部と歯車部が一体構造を有することを特徴とする可変ガイドベーン、に係るものである。
【0015】
上記可変ガイドベーンにおいて、前記歯車部が、外径が軸部の軸心線と平行な平歯車、又は、外径がテーパ角を備えた平歯車であることは好ましい。
【0016】
又、上記可変ガイドベーンにおいて、前記軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置されたことは好ましい。
【0017】
又、上記可変ガイドベーンにおいて、前記軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置され且つ歯車部の反羽根部側に別の軸部が配置されたことは好ましい。
【0018】
又、上記可変ガイドベーンにおいて、前記羽根部と歯車部の間に配置される軸部が、該軸部を成形するための2つ割り型の合わせ部に位置する切欠き面を有することは好ましい。
【0019】
本発明は、軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置された可変ガイドベーンを成形用金型を用いて製造する可変ガイドベーンの製造方法であって、前記羽根部と軸部を前記羽根部の面と平行な方向に延びる分割面により分割されて成形するための2つ割り型と、前記歯車部を反羽部側に抜き出して形成するための抜き型とを用いて一体構造の可変ガイドベーンを成形することを特徴とする可変ガイドベーンの製造方法、に係るものである。
【0020】
上記可変ガイドベーンの製造方法において、前記歯車部が、外径が軸部の軸心線と平行な平歯車、又は、外径がテーパ角を備えた平歯車であることは好ましい。
【0021】
上記可変ガイドベーンの製造方法において、前記2つ割り型によって軸部を形成する部分の分割面の位置に分割面と交差する方向へ延びた張出面を備えることにより、前記軸部の周面に切欠き面を形成することができる。
【0022】
本発明は、前記可変ガイドベーンを備えたことを特徴とする車両用過給機、に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の可変ガイドベーンによれば、強度が安定した可変ガイドベーンを安価に製作できる優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の可変ガイドベーンの一実施例を示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の可変ガイドベーンを製造する成形用金型の断面図、(b)は(a)をIIB−IIB方向から見た断面図、(c)は(a)をIIC−IIC方向から見た軸部の断面図、(d)は(a)をIIC−IIC方向から見た2つ割り型の断面図である。
【図3】本発明の可変ガイドベーンの他の実施例を示す側面図である。
【図4】本発明を適用する自動車用エンジンに備えられる過給機の圧縮機の一例を示す切断側面図である。
【図5】(a)はガイドベーンユニットを組み立てた状態を示す側面図、(b)は軸受リングを上方から見た斜視図である。
【図6】(a)はリングギヤの正面図、(b)は(a)のリングギヤをVI−VI方向から見た断面図である。
【図7】(a)は波ワッシャの正面図、(b)は(a)の波ワッシャをVII−VII方向から見た側面図である。
【図8】止め輪の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0026】
本発明者は、図4に示すような自動車用エンジンに備えられる過給機の圧縮機を開発した。図4に示す圧縮機1のハウジング2の内部にはコンプレッサインペラ3が備えてあり、該コンプレッサインペラ3は、自動車用エンジンの排気によって回転する図示しないタービンインペラと同軸の回転軸4によって回転される。前記ハウジング2の内側には、吸い込み方向前方から前記コンプレッサインペラ3の外周部へ向かう吸込口5が形成されておれ、又、コンプレッサインペラ3によって速度が高められた空気を圧力に換えた空気をスクロール6に導くディフューザ7がハウジング2の内部に形成されている。
【0027】
前記圧縮機1のハウジング2における前記コンプレッサインペラ3の前方内側には、前記吸込口5から拡径されて前方が開放された円筒状の段部8を形成している。この段部8は切欠底面8aと内周面8bとからなる。
【0028】
前記段部8の内周面8bには、その外面が嵌合し、内面に前記吸込口5の延長部5aが形成されたガイドベーンユニット9を設けている。
【0029】
前記ガイドベーンユニット9は、図5(a)にも示すように、対向面10a,10bによって軸長方向前後に分割された後側の軸受リング11と前側の押えリング12とを有している。前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々には、図4、図5に示すように、環状溝13,14が形成してあり、従って、この前記環状溝13,14によって軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bには夫々内側壁15と外側壁16が形成されている。そして、前記内側壁15と外側壁16の対向面10a,10bには、周方向に等間隔を有して放射状に配置される複数の可変ガイドベーン19を挟んで回転可能に支持する軸受部21,21'を備えている。
【0030】
図4に示す可変ガイドベーン19は、軸部20の一端(内方端)には羽根部17が設けられ、軸部20の他端(外方端)には歯車部であるピニオン18が設けられ、ピニオン18の更に外側には別の軸部20'が設けられている。
【0031】
前記軸受部21,21'は、図5に示すように、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける軸受リング11側に、前記可変ガイドベーン19の軸部20,20'が嵌合する深さを備えたU字状軸受凹部50,50を形成している。従って、前記可変ガイドベーン19の外側の軸部20'は外側壁16に備えたU字状軸受凹部50に嵌合し、可変ガイドベーン19の内側の軸部20は内側壁15に備えたU字状軸受凹部50に嵌合して2点で支持される。又、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにおける押えリング12側には、前記U字状軸受凹部50内に嵌合した前記軸部20,20'を前記U字状軸受凹部50内に支持する直線支持部51を備えている。図5では軸受リング11側にU字状軸受凹部50を形成し、押えリング12側に直線支持部51を有しているが、逆に、押えリング12側にU字状軸受凹部50を形成し、軸受リング11側に直線支持部51を有してもよい。又、前記U字状軸受凹部50と直線支持部51とからなる軸受部21,21'に代えて、軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bの夫々に、可変ガイドベーン19の軸部20,20'を支持する半円状軸受凹部を形成してもよい。
【0032】
前記軸受リング11及び押えリング12と可変ガイドベーン19は、アルミダイキャスト、焼結金属等からなる金属によって製造することができる。
【0033】
又、前記軸受リング11及び押えリング12と可変ガイドベーン19は、樹脂による射出成形によって製造することができる。前記軸受リング11及び押えリング12と、可変ガイドベーン19の少なくとも一方を樹脂により製造すると、樹脂による自己潤滑性によって、可変ガイドベーン19の軸部20,20'を軸受部21,21'により無潤滑で好適に軸支することができる。前記軸受リング11及び押えリング12と可変ガイドベーン19を樹脂で成形する場合の樹脂の選定においては、射出成形における成形性、圧縮機の使用温度における耐熱性、耐腐食性(エンジンオイルに対する耐油性、耐水性等)、強度(ガイドベーン19については、ガイドベーン19に作用する作動力・流体力に耐えうる強度)、自己潤滑性(軸受機能)、コスト(樹脂材料単価が安価であること)等を考慮することが好ましい。
【0034】
図4の可変ガイドベーン19は、前記軸受部21の内側面と外側面に係合するよう突出して、前記可変ガイドベーン19の軸部20,20'が軸長手方向へ移動するのを規制するための鍔部53,54を備えている。
【0035】
図4の環状溝13,14の一方には、押付手段24を介してリングギヤ25を挿入している。図4では、対向面10a,10bにU字状軸受凹部50を備えている軸受リング11の環状溝13の底部に、押付手段24を挿入し、押付手段24の上部にリングギヤ25を挿入している。
【0036】
リングギヤ25は、図6に示すように、短い筒状の端面にギヤ歯25aが形成してあり、リングギヤ25のギヤ歯25aは前記軸受部21,21'のU字状軸受凹部50に嵌合した可変ガイドベーン19のピニオン18と噛合するようになっている。図6のリングギヤ25は全周に亘ってギヤ歯25aを形成した場合を示しているが、前記可変ガイドベーン19のピニオン18が噛合する部分のみにギヤ歯25aを備えたものでもよい。又、前記可変ガイドベーン19に備えるピニオン18も、軸部20の全周に歯を備えたものでもよく、又、可変ガイドベーン19が回動する範囲のみでリングギヤ25と噛合するよう一部に歯を備えたセクターピニオンとしてもよい。
【0037】
前記押付手段24は前記リングギヤ25を前記可変ガイドベーン19のピニオン18に確実に噛合させるためのものであり、図7に示すように、環状に形成された波ワッシャ26を用いることができる。この波ワッシャ26は図7(b)に示すように、周方向3個所で突出又はへこむように波打った形状を有しており、これにより前記リングギヤ25を3個所で押してリングギヤ25を可変ガイドベーン19のピニオン18に噛合させるようになっている。尚、この押付手段24としては、前記波ワッシャ26に代えて、コイルバネを用いて前記リングギヤ25を前記可変ガイドベーン19のピニオン18に押し付けるようにしてもよい。
【0038】
前記ガイドベーンユニット9は、前記軸受リング11と押えリング12を組み立てた際に一体に保持しておくための仮止め手段を有している。この仮止め手段としては、例えば前記軸受リング11と押えリング12とに備られて互いに嵌合する係合凸部22と係合凹部23とから構成されており、前記係合凸部22と係合凹部23を嵌合する際に塑性変形させることで一体化している。又、前記係合凸部22と係合凹部23を少量の接着剤を用いて嵌合することでも達成できる。更に、図5(b)に示すように、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにピン孔31(図示では周方向2個所)を設けておき、このピン孔31にきつく嵌合するピン32を挿入することによっても、軸受リング11と押えリング12を一体に保持することができる。上記仮止め手段は、組み立てられたガイドベーンユニット9をハウジング2の段部8に挿入する際に分解しないように保持しておくためのものであり、強度が要求されるものではない。
【0039】
図4に示すように、前記ハウジング2の段部8の切欠底面8aと軸受リング11の後端面11aとには、ピン28を挿入して前記軸受リング11(ガイドベーンユニット9)をハウジング2に対して周方向の位置決め、即ち、回り止めを行うためのピン孔29,30が形成してあり、前記ガイドベーンユニット9側のピン孔30には、前記ピン28を予め取り付けるようにしている。
【0040】
又、前記段部8の切欠底面8aに近い内周面8bの位置には、軸受リング11の底部近傍が緊密に嵌合する嵌合部37が形成してあり、該嵌合部37よりも前方の内周面8bは前記嵌合部37よりも径が大きくなっていて隙間38が形成されている。そして、前記ピン孔30にピン28を挿入したガイドベーンユニット9を前記段部8に挿入してピン28を、切欠底面8aに設けたピン孔29に嵌合し、更に、ガイドベーンユニット9を前記嵌合部37に嵌合させると、該嵌合部37と前記回り止めのピン28の作用によって前記ガイドベーンユニット9は径方向の位置が拘束されるようになっている。
【0041】
更に、前記ハウジング2には、段部8に挿入した前記ガイドベーンユニット9を段部8内に固定しておくための固定手段33を設けている。図4では、前記段部8に挿入したガイドベーンユニット9の前端面(右端面)に対応する内周面8bの位置には環状の係止溝34が形成してあり、該係止溝34に、図9に示す止め輪35を縮めた状態で挿入し、開放して弾撥力により係合させることで、止め輪35によって前記ガイドベーンユニット9が段部8から抜け出ないように固定している。上記固定手段33としては、前記ガイドベーンユニット9が段部8から抜け出ないように固定ボルト等を用いてハウジング2に固定してもよい。
【0042】
図4の可変ガイドベーン19における外側の軸部20'の外側端部には、直径方向から外側へ延びる扁平状の接続凸部36が形成してあり、この接続凸部36は、前記可変ガイドベーン19の軸部20,20'を前記軸受リング11のU字状軸受凹部50に嵌合させて組み立てた前記ガイドベーンユニット9を段部8に挿入する際に、先端が段部8の内周面8bに接しない長さに形成してある。
【0043】
図4の段部8にガイドベーンユニット9を挿入した際に、前記可変ガイドベーン19の軸部20の1つが対応するハウジング2位置には、前記可変ガイドベーン19を回動する回動軸40を外部から挿入するための1つの軸孔41を設けている。前記回動軸40の内側端部には、前記可変ガイドベーン19の軸部20'に備えた接続凸部36と嵌合する接続凹部39を設けている。又、前記回動軸40の外側他端には、アーム42を介して作動ピン43がクランク状に取り付けてあり、図示しないアクチュエータよって前記作動ピン43を押し引きして前記回動軸40を回転することにより、前記接続凹部39と接続凸部36を介して1つの可変ガイドベーン19の軸部20,20'が回転するようになっている。1つの可変ガイドベーン19の軸部20,20'が回転すると、ピニオン18を介してリングギヤ25が回動し、該リングギヤ25の回動によりピニオン18を介して全ての可変ガイドベーン19が一斉に回転するようになっている。
【0044】
上記図4〜図8に示す圧縮機1によれば、前記軸受リング11と押えリング12の対向面10a,10bにより可変ガイドベーン19を挟み込んでガイドベーンユニット9を組み立てる作業は、ハウジング2の外部で行うことができ、更に、外部で組み立てたガイドベーンユニット9はハウジング2の段部8に挿入して容易に固定することができるので、圧縮機1の組み立て作業を容易にすることができる。
【0045】
一方、前記可変ガイドベーン19に備えるピニオン18が従来と同様の傘歯歯車であると、抜き型を用いてピニオン18を成形することができず、従って、従来と同様に、羽根部を有する軸部とピニオンとを別体に構成し、それをキーにより一体に組み立てる必要があるため、組み立て工数が増加すると共に強度上にも問題を生じることが考えられる。
【0046】
図1は、上記課題を解決する本発明の可変ガイドベーン100の一例を示している。この可変ガイドベーン100は、軸部20を挟んで一端に有する羽根部17と他端に有する歯車部101、及び、前記歯車部101の反羽根部17側に有する他の軸部20'が一体構造に形成されている。図1の可変ガイドベーン100は、図4のガイドベーンユニット9の軸受部21,21'に対応する軸部20,20'を備えた場合を示しているが、前記他の軸部20'を備えない構成のものも本発明に含まれる。
【0047】
前記可変ガイドベーン100に備える歯車部101としては、図4のピニオン18に代えて、平歯車102を設ける。この平歯車102は、各ギヤ歯103が前記軸部20の軸心線と平行に形成されている。更に、この平歯車102は、図1のように周方向の必要な範囲にギヤ歯103を備えていてもよく、或いは、周方向全周にギヤ歯103を備えていてもよい。そして、前記平歯車102と噛合する図4、図6におけるリングギヤ25には、前記平歯車102のギヤ歯103と噛合する放射状のギヤ歯25aを備えたフェースギヤと呼ばれるものを用いることができる。
【0048】
図2(a)、(b)は、図1に示す可変ガイドベーン100を製造するための成形用金型を示している。即ち、可変ガイドベーン100の前記羽根部17及び顎部53と、軸部20及び顎部54の一部は、前記羽根部17の広い面と平行な方向に延びる分割面Xによって分割されて、A,A'方向に分離される2つ割り型104,105によって成形される。又、前記歯車部101及び軸部20'と接続凸部36は、反羽根部17側であるB方向へ抜き出される抜き型106によって成形される。従って、2つ割り型104,105と抜き型106により、一体構造の可変ガイドベーン100が成形される。
【0049】
このとき、前記歯車部101は平歯車102となっている。この平歯車102には、ギヤ歯103の外径が軸部20,20'の軸心線と平行である場合、及び、図2(a)に示す如く、ギヤ歯103の外径が抜き型の抜き出し方向Bへ向かって径が嶄減するように例えば0.5〜3゜程度のテーパ角α(抜き角)を備えている場合も含まれる。
【0050】
又、前記2つ割り型104,105は、羽根部17の広い面と平行な分割面Xで分割されているので、前記軸部20における前記分割面Xが対応する位置には、図2(c)に示す如くバリ107が生成する問題がある。このため、図2(d)に示す如く、前記2つ割り型104,105によって軸部20を成形する分割面Xの位置には、分割面Xと交差(直交)する方向に延びる張出面110が対向して平行に形成してあり、この2つ割り型104,105を用いることにより、図2(c)の軸部20の外周面における前記分割面Xに対応する左右側部位置には、前記分割面Xと交差する方向(上下方向)へ延びた平行な切欠き面108が形成されている。
【0051】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0052】
図1に示す一体構造の可変ガイドベーン100を製造するには、図2(a)、(b)に示す2つ割り型104,105と抜き型106を配置し、該型104,105,106の内部空間に成形材料を供給することにより、一体構造の可変ガイドベーン100を成形する。ここで、前記可変ガイドベーン100を構成する前記羽根部17及び顎部53と、軸部20及び顎部54の一部は、前記羽根部17の広い面と平行な分割面Xで分割されて、A,A'方向に分離される2つ割り型104,105によって成形される。
【0053】
一方、前記可変ガイドベーン100を構成する前記歯車部101及び軸部20'と接続凸部36は、前記歯車部101が平歯車102によって形成されており、且つ、平歯車102が反羽根部17側であるB方向への抜き出しを容易にするテーパ角α(抜き角)を有しているので、抜き型106によって容易に成形することができる。
【0054】
前記2つ割り型104,105と抜き型106を用いることにより、樹脂を用いた射出成形により一体形の可変ガイドベーン100を製造することができる。又、アルミダイキャスト、焼結金属等の金属の場合にも、同様に製造することができる。
【0055】
このように、2つ割り型104,105と抜き型106とにより成形を可能にしたので、型費用を低減して一体構造の可変ガイドベーン100を低コストで製造することができる。更に、羽根部17と軸部20と歯車部101が一体構造を有しているため、本発明によれば、従来の如く羽根部を有する軸部にピニオンをキーで組み立てる構造において生じる可能性があるキーが緩む或いは抜け落ちる問題を防止して、高い強度を保持した可変ガイドベーン100が提供できる。
【0056】
又、前記2つ割り型104,105は分割面Xで分割されているので、前記軸部20の外周面における前記分割面Xが対応する位置には、図2(c)に示す如くバリ107が生成する問題がある。このように軸部20に生じたバリ107は、回転の障害になるために軸部20から確実に取り除く作業が必要である。しかし、このようなバリ取り作業は面倒で時間が掛り、コストを上昇させる問題がある。
【0057】
このため、本発明では、図2(c)の軸部20を形成するための図2(d)に示す2つ割り型104,105における分割面Xの位置には、前記軸部20の外周円弧面109よりも内側へ張出した張出面110が備えてあり、この張出面110によって、図2(c)の軸部20の外周面における前記分割面Xと対応した左右の位置には、上下方向へ延びる切欠き面108を形成している。この切欠き面108は、左右が平行になるように形成されていてもよく、又は、2つ割り型104,105をA,A'方向へ分離する際の型抜きを容易にするために、前記切欠き面108における左右の間隔が前記分割面Xの位置で最も大きく、分割面Xから離反する程間隔が小さくなるテーパ状となっていてもよい。2つ割り型104,105によって生じるバリ107は前記切欠き面108に生成することになり、従ってこのバリ107が軸部20の回転に悪影響を与えることはないので、バリ取り作業は省略することができる。
【0058】
又、図2(c)の軸部20の切欠き面108は、図2(b)の羽根部17の幅方向(左右方向)の両側に設けられており、この軸部20は図5(a)の前記U字状軸受凹部50に装入されて直線支持部51で押えられており、前記軸部20は上下の円弧面109が前記U字状軸受凹部50の底部と直線支持部51によって回転可能に支持されている。この時、前記軸部20に備えた切欠き面108は、前記羽根部17が閉塞から全開まで回転しても、前記U字状軸受凹部50の底部或いは直線支持部51の位置に移動することがないようになっている。従って、前記軸受部21,21'は常に軸部20の円弧面109を支持して可変ガイドベーン100の安定した回転を維持することができる。
【0059】
図3は、前記可変ガイドベーン100の他の実施例を示すもので、この可変ガイドベーン100は、前記羽根部17と歯車部101が一体に形成され、更に、歯車部101の反羽根部17側に軸部20'が一体に形成された場合を示している。即ち、図3は、図1における軸部20を省略した構成となっており、図1の2点で支持される可変ガイドベーン100に対して、1つ軸部20'で支持される片持ちとなっている。図3の実施例においても、前記歯車部101は平歯車102により形成している。
【0060】
図3の可変ガイドベーン100の場合には、歯車部101の羽根部17側端面Yから羽根部17側は、図2に示した2つ割り型104,105により成形することができ、前記羽根部17側端面Yから反羽根部17側の歯車部101及び軸部20'は抜き型106により成形することができる。
【0061】
上記した如く、一体構造を有する可変ガイドベーンを車両用過給機に備えると、車両用過給機のコストを低減することができ、且つ可変ガイドベーンの強度が安定することにより車両用過給機の信頼性を高めることができる。
【0062】
尚、本発明における可変ガイドベーン及びその製造方法並びに車両用過給機は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
20,20' 軸部
100 可変ガイドベーン
101 歯車部
102 平歯車
104,105 2つ割り型
106 抜き型
108 切欠き面
110 張出面
X 分割面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根部と軸部と歯車部が一体構造を有することを特徴とする可変ガイドベーン。
【請求項2】
前記歯車部は、外径が軸部の軸心線と平行な平歯車、又は、外径がテーパ角を備えた平歯車であることを特徴とする請求項1に記載の可変ガイドベーン。
【請求項3】
前記軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変ガイドベーン。
【請求項4】
前記軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置され且つ歯車部の反羽根部側に別の軸部が配置されたことを特徴とする請求項3に記載の可変ガイドベーン。
【請求項5】
前記羽根部と歯車部の間に配置される軸部が、該軸部を成形するための2つ割り型の合わせ部に位置する切欠き面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の可変ガイドベーン。
【請求項6】
軸部を挟んで一端に羽根部が配置され他端に歯車部が配置された可変ガイドベーンを成形用金型を用いて製造する可変ガイドベーンの製造方法であって、前記羽根部と軸部を前記羽根部の面と平行な方向に延びる分割面により分割されて成形するための2つ割り型と、前記歯車部を反羽部側に抜き出して形成するための抜き型とを用いて一体構造の可変ガイドベーンを成形することを特徴とする可変ガイドベーンの製造方法。
【請求項7】
前記歯車部は、外径が軸部の軸心線と平行な平歯車、又は、外径がテーパ角を備えた平歯車であることを特徴とする請求項6に記載の可変ガイドベーンの製造方法。
【請求項8】
前記2つ割り型によって軸部を形成する部分の分割面の位置に、分割面と交差する方向へ延びた張出面を備えることにより、前記軸部の周面に切欠き面を形成することを特徴とする請求項6に記載の可変ガイドベーンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の可変ガイドベーンを備えたことを特徴とする車両用過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19324(P2013−19324A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153528(P2011−153528)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】