説明

可変容量コンプレッサの制御装置

【課題】可変容量コンプレッサを停止してから再起動を行うとき、高温時初期の冷房能力不足を解消することができる可変容量コンプレッサの制御装置を提供すること。
【解決手段】可変容量コンプレッサ1の動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決め、決めた出力値を可変容量アクチュエータに対して出力する可変容量コンプレッサの制御装置において、可変容量コンプレッサ1を起動した後、停止するときの可変容量アクチュエータに対する出力値を出力記憶値として記憶し(ステップS7)、可変容量コンプレッサ1の再起動の開始時、可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にする可変容量コンプレッサ起動制御部(図4のステップS8〜ステップS15)を有する手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量コンプレッサの動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決めて制御する可変容量コンプレッサの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変容量コンプレッサの制御装置としては、{比例係数×差温+(積分係数×差温+前回までの積算値)}の式をベースとして制御デューティを求め、出力されるデューティ信号により可変容量コンプレッサの容量制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−38223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の可変容量コンプレッサの制御装置にあっては、可変容量コンプレッサの起動時には常にそれまでに積算された積算値をクリアする制御となっていたため、エアコンスイッチをオフにした後、再度、エアコンスイッチをオンにすると、出力される制御デューティが(比例係数×差温)という比例制御分のみからの開始となり、高温時初期の冷房能力不足となってしまう、という問題があった。
【0004】
例えば、エアコンスイッチをオフにした後、短時間が経過しただけでありエバポレータ出口温度センサによる実温度が未だに低い温度を認識している状態で、エアコンスイッチをオンとした場合、エバポレータは既に冷えていると判断し、本来必要とする出力デューティよりも低い値となる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、可変容量コンプレッサを停止してから再起動を行うとき、高温時初期の冷房能力不足を解消することができる可変容量コンプレッサの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、可変容量コンプレッサの動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決め、決めた出力値を可変容量アクチュエータに対して出力するコンプレッサ制御手段を備えた可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサを起動した後、停止するときの可変容量アクチュエータに対する出力値を出力記憶値として記憶する出力値記憶手段を設け、
前記コンプレッサ制御手段は、可変容量コンプレッサの再起動の開始時、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にする可変容量コンプレッサ起動制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の可変容量コンプレッサの制御装置にあっては、可変容量コンプレッサの再起動の開始時、可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値が出力記憶値とされる。つまり、可変容量コンプレッサを停止する時点における冷房能力要求による値(出力記憶値)を再起動の開始時に出力するため、比例制御分のみであると出力値が低い値となるような場合、冷房能力の再起動の開始初期応答が確保される。
【0008】
加えて、可変容量コンプレッサの再起動の開始時、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値が積算初期値とされる。つまり、可変容量コンプレッサの再起動を出力記憶値により開始すると、次の制御周期から積算初期値による積分制御が比例制御と共に開始されるため、再起動の開始初期における冷房能力不足が解消される。
【0009】
ちなみに、可変容量コンプレッサを駆動制御する出力値を、比例制御分+積分制御分により決めるのは、積分制御分を比例制御分に加える+α分とし、この積分制御分により冷房能力不足となるのをカバーするためである。よって、積算初期値を持たない従来技術の場合には、積分制御分が出るまでの積算時間による演算遅れが発生し、この演算遅れが可変容量コンプレッサの再起動時における冷房能力不足の原因となる。
【0010】
この結果、可変容量コンプレッサを停止してから再起動を行うとき、高温時初期の冷房能力不足を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の可変容量コンプレッサの制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の可変容量コンプレッサの制御装置が適用された外部制御コンプレッサシステムを示す全体図、図2は実施例1の可変容量コンプレッサの容量を制御する高圧弁の一例を示す断面図、図3は図2に示す高圧弁のコイルに印加する制御デューティ信号の電流波形と電圧波形の一例を示すタイムチャートである。
【0013】
図1に示す外部制御コンプレッサシステムは、可変容量コンプレッサ1の容量を電気的に変え、エバポレータ出口温度を所定温度範囲(例えば、3℃〜10℃の範囲)で制御するものである。また、電気的負荷の低減を行うために、コンデンサファン制御も同時に行う。
【0014】
実施例1における可変容量コンプレッサ1は、図1に示すように、車両の空調ユニット2内に配置されたエバポレータ3を含む冷凍サイクルの構成要素として設けられている。
【0015】
前記冷凍サイクルは、冷媒が蒸発→圧縮→凝縮→膨張の4つの状態変化を繰り返して循環するサイクルで、蒸発作用のとき冷媒が周囲から熱を奪って冷房能力を発揮する。
この冷凍サイクルは、構成要素として、図1に示すように、エバポレータ3(蒸発器)と、可変容量コンプレッサ1(圧縮機)と、コンデンサ4(凝縮器)と、受液器5と、膨張弁6と、を備えている。
【0016】
前記エバポレータ3は、冷媒を蒸発させることによって冷えた空気を作り出す蒸発器であり、送風機7の後流位置に設けられ、エバポレータ3を経過した冷風は、図外のエアミックスドアやヒータコア等を経過し、吹き出し口から車室内に吹き出される。
このエバポレータ3の後流側直後位置には、図1に示すように、エバポレータ出口温度を検出するエバポレータ出口温度センサ8(エバポレータ出口温度検出手段)が設けられている。
【0017】
前記可変容量コンプレッサ1は、比較的高い外気温度でも液化できるように冷媒の温度を上げるもので、吐出する冷媒流量を制御する高圧弁9を有する。
前記高圧弁9は、図2に示すように、ダイアフラム91に作用する圧力荷重F(Ps)とバネ荷重F(K)と磁力F(I)により決まる弁制御体92及びボール弁90のリフト量によって吐出する冷媒流量を制御する。
図2において、93はセットスプリング、94はコイル、Psは吸入室圧、Pcはクランク室圧、Pdは吐出室圧である。
【0018】
圧力荷重F(Ps)は、F(Ps)=Ps×ダイアフラム有効径によりあらわされる。
バネ荷重F(K)は、前記セットスプリング93による荷重である。
磁力F(I)は、前記コイル94により発生する力である。
そして、これらの力の関係は、F(K)=F(I)+F(Ps)であり、バネ荷重F(K)は図9の上向き方向に作用し、磁力F(I)と圧力荷重F(Ps)は図9の下向き方向に作用する。
上記力の関係式において、高圧弁9のダイアフラム91に作用する磁力F(I)を電気的に可変とするコイル94を可変容量アクチュエータとし、このコイル94に対し、例えば、図3の電圧波形特性に示すように、400Hzのデューティ制御信号を与え、図3の電流波形特性に示すように、デューティ比に応じた実効電流を印加するようにしている。
なお、デューティ比(%)は、デューティ比=T1/(T1+T2)×100の式にて表される。
【0019】
ちなみに、デューティ比が低い場合(低実効電流の場合)、バネ荷重F(K)によりボール弁90が開かれ、吐出室からクランク室へと冷媒が流れることで、コンプレッサ容量が低く抑えられる。一方、デューティ比が高くなるほど(実効電流が高電流になるほど)、磁力F(I)が強まり、バネ荷重F(K)により開かれていたボール弁90が閉じ側に移動し、吐出室からクランク室へと冷媒の流れが抑制されることで、コンプレッサ容量もデューティ比の高まりに応じて高くなる。
【0020】
前記コンデンサ4は、冷媒を凝縮して液化させるもので、コンデンサ4の車両前方側には、ラジエータ10が配置され、コンデンサ4の車両後方側には、モータファン構造によるコンデンサファン11が配置されている。
【0021】
外部制御コンプレッサシステムは、演算処理装置としてのECVコントローラ12と、該ECVコントローラ12に対し入力情報をもたらすエバポレータ出口温度センサ8とエアコンスイッチ13と吹き出し温度設定器14等と、前記ECVコントローラ12からの制御指令(デューティ信号)により実効電流が制御される高圧弁9(コイル94)により、可変容量コンプレッサ制御系が構成される。
【0022】
また、外部制御コンプレッサシステムは、演算処理装置としてのECVコントローラ12と、該ECVコントローラ12に対し入力情報をもたらすエンジン冷却水温センサ15と圧力トランスデューサー16等と、前記ECVコントローラ12からの制御指令(モータ駆動電流)により回転制御されるコンデンサファン11により、電気的負荷の低減を行うためのコンデンサファン制御系が構成される。
【0023】
図4は実施例1のECVコントローラ12にて実行されるコンプレッサ制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(コンプレッサ制御手段)。
【0024】
ステップS1は、エアコンスイッチ13をオフからオンに切り換えるのが1回目であるか否かを判断するステップである。
このステップS1において、Yesと判断した場合にはステップS2へ移行し、Noと判断した場合にはステップS3へ移行する。
【0025】
ステップS2は、ステップS1でのエアコンスイッチ13をオフからオンに切り換えるのが1回目であるとの判断に続き、積算値SSをSS=0とするステップである。
このステップS2による処理後はステップS1へ戻る。
【0026】
ステップS3は、ステップS1でのエアコンスイッチ13をオフからオンに切り換えるのが1回目でないとの判断に続き、エアコンスイッチ13をオンからオフに切り換えた後、再びオンに切り換えるエアコンディショナー(A/C)の再起動開始時か否かを判断するステップである。
このステップS3において、Yesと判断した場合にはステップS8へ移行し、Noと判断した場合にはステップS4へ移行する。
【0027】
ステップS4は、ステップS3でのA/C再起動開始ではないとの判断に続き、PI制御(比例制御+積分制御)により目標出力デューティDを演算するステップである(後述する図5のフローチャートの説明を参照)。
このステップS4による処理後はステップS5へ移行する。
【0028】
ステップS5は、ステップS4でのPI制御での積算値の演算、または、ステップS13での積算値のクリア、または、ステップS15での積算初期値の設定に続き、積算値を記憶するステップである。
このステップS5による処理後はステップS6へ移行する。
【0029】
ステップS6は、ステップS4でのPI制御で演算された目標出力デューティD、または、ステップS12で設定されたデューティ出力、または、ステップS14で設定されたデューティ出力に続き、各デューティ比によるデューティ信号を高圧弁9(アクチュエータ)に出力するステップである。
このステップS6による処理後はステップS7へ移行する。
【0030】
ステップS7は、ステップS6でのアクチュエータへの出力に続き、高圧弁9(アクチュエータ)に出力したデューティ値を記憶するステップである(出力値記憶手段)。
このステップS7による処理後はステップS1へ戻る。
【0031】
ステップS8は、ステップS3でのA/C再起動開始であるとの判断に続き、記憶されているデューティメモリ値を読み込むステップである。
このデューティメモリ値は、可変容量コンプレッサ1を起動した後、停止するときの高圧弁9に対して出力したデューティ値となる。このステップS8による処理後はステップS9へ移行する。
【0032】
ステップS9は、ステップS8でのデューティメモリ値読み込みに続き、可変容量コンプレッサ1の再起動開始時における実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)に比例する比例初期値を第1目標値として算出するステップである(第1目標値算出手段)。
なお、実エバポレータ出口温度Tevaの情報は、エバポレータ出口温度センサ8からのセンサ信号に基づいて取得される。また、目標エバポレータ出口温度TMevaは、吹きだし温度設定器14による設定温度等の情報に基づいて設定される。このステップS9による処理後はステップS10へ移行する。
【0033】
ステップS10は、ステップS9での目標1=P(比例)算出に続き、ステップS8にて読み込んだデューティメモリ値(出力記憶値)を第2目標値として設定するステップである(第2目標値設定手段)。
このステップS10による処理後はステップS11へ移行する。
【0034】
ステップS11は、ステップS10での目標2=DUTYメモリに続き、第1目標値が第2目標値を超えているか否かを判断するステップである。
このステップS11において、Yesと判断された場合はステップS12へ移行し、Noと判断された場合はステップS14へ移行する。
【0035】
ステップS12は、ステップS11での目標1>目標2であるとの判断に続き、デューティ出力を第1目標値(比例初期値)に設定するステップである。
このステップS12による処理後はステップS13へ移行する。
【0036】
ステップS13は、ステップS12でのDUTY出力=目標1との設定に続き、積算値、すなわち、A/C再起動開始時の積算初期値をクリアにするステップである。
このステップS13による処理後はステップS5へ移行する。
【0037】
ステップS14は、ステップS11での目標1≦目標2であるとの判断に続き、デューティ出力を第2目標値(デューティメモリ値)に設定するステップである。
このステップS14による処理後はステップS15へ移行する。
【0038】
ステップS15は、ステップS14でのDUTY出力=目標2との設定に続き、A/C再起動開始時の積算初期値をデューティメモリ値から比例初期値を差し引いた値とするステップである。
このステップS15による処理後はステップS5へ移行する。
【0039】
図5は図4のフローチャートのステップS4にて実行されるPI制御による目標出力デューティ演算処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、例えば、100msecの周期により繰り返し実行される。
【0040】
ステップS401は、実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)に基づいて、比例定数Khを算出するステップである。
ここで、比例定数Khは、ステップS401の枠内に示すように、±1℃の範囲を不感帯とし、差温(Teva−TMeva)がプラス側に大きくなるほど、また、差温(Teva−TMeva)がマイナス側に大きくなるほど比例的に大きくなる値にて与える。なお、例えば、±5℃を超える領域では、比例定数Khを上限値(例えば、Kh=7)にて与える。
このステップS401による処理後はステップS402へ移行する。
【0041】
ステップS402は、実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)に基づいて、積分定数Ksを算出するステップである。
ここで、積分定数Ksは、ステップS402の枠内に示すように、±1℃の範囲を不感帯とし、差温(Teva−TMeva)がプラス側に大きい場合、また、差温(Teva−TMeva)がマイナス側に大きい場合、のいずれにおいても一定値(例えば、Ks=0.01)にて与える。
このステップS402による処理後はステップS403へ移行する。
【0042】
ステップS403は、ステップS402での積分定数Ksの算出に続き、積算値SSを算出するステップである。
積算値SSの算出式は、
SS=S+Ks×(Teva−TMeva)
である。但し、Sは前回までの積算値である。
このステップS403による処理後はステップS404へ移行する。
【0043】
ステップS404は、ステップS403での積算値SSの算出に続き、ステップS403にて算出された積算値SSが積算値上限リミットSmax以上であるか否かを判断するステップである。
このステップS404において、Yesと判断された場合はステップS408へ移行し、Noと判断された場合はステップS405へ移行する。
【0044】
ステップS405は、ステップS404でのSS<Smaxであるとの判断に続き、ステップS403にて算出された積算値SSが積算値下限リミットSmin以下であるか否かを判断するステップである。
このステップS405において、Yesと判断された場合はステップS407へ移行し、Noと判断された場合はステップS406へ移行する。
【0045】
ステップS406は、ステップS404及びステップS405でのSmin<SS<Smaxであるとの判断に続き、ステップS403にて算出された積算値SSを前回までの積算値Sとして設定するステップである。
このステップS406による処理後はステップS409へ移行する。
【0046】
ステップS407は、ステップS405でのSS≦Sminであるとの判断に続き、積算値下限リミットSminを前回までの積算値Sとして設定するステップである。
このステップS407による処理後はステップS409へ移行する。
【0047】
ステップS408は、ステップS404でのSS≧Smaxであるとの判断に続き、積算値上限リミットSmaxを前回までの積算値Sとして設定するステップである。
このステップS408による処理後はステップS409へ移行する。
【0048】
ステップS409では、ステップS406、ステップS407、ステップS408の何れかによる前回までの積算値Sの更新に続き、ECVデューティPを算出するステップである。
このECVデューティPを算出式は、
P=Kh×(Teva−TMeva)+SS
である。
このステップS409による処理後はステップS410へ移行する。
【0049】
ステップS410は、ステップS409でのECVデューティPの算出に続き、ECVデューティPがデューティ演算値上限リミットDmax以上であるか否かを判断するステップである。
このステップS410において、Yesと判断された場合はステップS414へ移行し、Noと判断された場合はステップS411へ移行する。
【0050】
ステップS411は、ステップS410でのP<Dmaxとの判断に続き、ECVデューティPがデューティ演算値下限リミットDmin以下であるか否かを判断するステップである。
このステップS411において、Yesと判断された場合はステップS413へ移行し、Noと判断された場合はステップS412へ移行する。
【0051】
ステップS412は、ステップS410及びステップS411でのDmin<P<Dmaxであるとの判断に続き、ステップS409にて算出されたECVデューティPを目標出力デューティDとして設定するステップである。
このステップS412による処理後はDUTY演算ENDへ移行する。
【0052】
ステップS413は、ステップS411でのP≦Dminであるとの判断に続き、デューティ演算値下限リミットDminを目標出力デューティDとして設定するステップである。
このステップS413による処理後はDUTY演算ENDへ移行する。
【0053】
ステップS414は、ステップS410でのD≧Dmaxであるとの判断に続き、デューティ演算値上限リミットDmaxを目標出力デューティDとして設定するステップである。
このステップS414による処理後はDUTY演算ENDへ移行する。
【0054】
次に、作用を説明する。
【0055】
[A/Cの初回起動時]
車に乗ってエアコンスイッチ13をON操作する場合、エアコンスイッチ13のOFF→ON操作の開始時点では、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、ステップS2において、積算値SSがSS=0に設定される。
そして、ステップS2からステップS1へ戻り、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れが繰り返される。
【0056】
例えば、積分値SSがSmin<SS<Smaxであり、かつ、ECVデューティPがDmin<P<Dmaxである場合、図5のフローチャートにおいて、ステップS401→ステップS402→ステップS403→ステップS404→ステップS405→ステップS406→ステップS409→ステップS410→ステップS411→ステップS412へと進む流れとなる。そして、ステップS409では、実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)に対する比例値{Kh×(Teva−TMeva)}と積算値SS{=S+Ks×(Teva−TMeva)}の和によりECVデューティPを決め、ステップS412では、このECVデューティPを目標出力デューティDと設定される。
【0057】
そして、ステップS5において、ステップS4でのPI制御での演算された積算値SSを記憶し、ステップS6において、ステップS4でのPI制御で演算された目標出力デューティDによるデューティ信号を高圧弁9のコイル94に対して出力するコンプレッサ制御が行われる。なお、ステップS7においては、高圧弁9のコイル94に出力したデューティ値が制御周期毎に記憶される。
【0058】
したがって、エアコンスイッチ13をON操作した時点で実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)が大きい場合、実エバポレータ出口温度Tevaが目標エバポレータ出口温度TMevaに一致するように、徐々に高くなる目標出力デューティDによる可変容量コンプレッサ1の容量制御が行われることになる。
なお、前回までの積算値Sの設定と目標出力デューティDの決定にあたっては、図5に示すように、いずれも上限値と下限値により制限されるため、積算値SSの上昇勾配も目標出力デューティD(=デューティ出力)の上昇勾配は滑らかなものとなる(図7の時点t1から時点t2までの特性参照)。
【0059】
[A/Cの再起動時で、かつ、目標1>目標2の時]
例えば、朝、車に乗ってエアコンスイッチ13を操作(ON→OFF)し、その後、昼の暑い時間帯に車を使用し、エアコンスイッチ13をON操作する場合、図4のフローチャートのステップS3におけるA/C再起動開始条件が成立すると共に、ステップS11における目標1>目標2の条件が成立する。
【0060】
目標1>目標2の条件が成立する理由は、外気温が低い朝の時間帯にエアコンスイッチ13をON→OFF操作した場合、OFF操作時点で出力したデューティメモリ値(=目標2)は低い値となる。これに対し、外気温が高い昼の時間帯にエアコンスイッチ13をON操作した場合、ON操作時点では実エバポレータ出口温度Tevaが高く、目標エバポレータ出口温度TMevaとの差温(Teva−TMeva)が大きい値となり、比例分のデューティ値(=目標1)が高い値となることによる。
【0061】
このため、エアコンスイッチ13のON操作による最初の制御起動時には、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなる。そして、次の制御周期からは、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れが繰り返される。
【0062】
したがって、A/Cの初回起動時の場合と同様に、ステップS13において積算値がクリアされることで、最初は比例分のみによる制御が行われ、積算時間を持たせながら徐々に積算値を高めてゆき、実エバポレータ出口温度Tevaが目標エバポレータ出口温度TMevaに一致するように、徐々に高くなる目標出力デューティDによる可変容量コンプレッサ1の容量制御が行われることになる。
【0063】
すなわち、目標1>目標2の条件が成立する場合、デューティメモリ値でコンプレッサ容量制御を開始すると、デューティメモリ値が低い値であることから、初期の冷房能力が不足することが考えられる。一方、単純に再起動時に常に最大となるデューティを出力するようにすると、過剰冷房となる可能性があり、必要以上に動力を消費し、燃費性能等の悪化原因となる。そこで、目標1>目標2の条件により状態判断を行い、目標1>目標2の条件が成立する場合には、比例制御によるコンプレッサ容量制御を開始する手法を採用したことで、過不足のない適切な冷房能力を確保することができる。
【0064】
[A/Cの再起動時で、かつ、目標1≦目標2の時]
エアコンスイッチ13を短時間のうちに操作(ON→OFF→ON)する場合、図4のフローチャートのステップS3におけるA/C再起動開始条件が成立するが、ステップS11における目標1>目標2の条件が非成立となる。
【0065】
目標1>目標2の条件が非成立となる理由は、エアコンスイッチ13をオフにした後、短時間が経過しただけでありエバポレータ出口温度センサ8による実温度が未だに低い温度を認識している状態で、エアコンスイッチ13をオンとした場合、エバポレータ3は既に冷えていると判断し、差温(Teva−TMeva)が小さい値となり、比例分のデューティ値(=目標1)は本来必要とする出力デューティよりも低い値となる。これに対し、エアコンスイッチ13をOFF操作した時点で出力したデューティメモリ値(=目標2)は、実エバポレータ出口温度Tevaを目標エバポレータ出口温度TMevaに一致させるために高い目標出力デューティDを出力していることで、高い値となることによる。
【0066】
このため、エアコンスイッチ13のON操作による最初の制御起動時には、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS14→ステップS15→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなる。そして、次の制御周期からは、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れが繰り返される。
【0067】
したがって、目標1>目標2の条件が成立する場合とは異なり、ステップS14において初回のデューティ出力がデューティメモリ値とされ、ステップS15において積算初期値がデューティメモリ値と比例分との差により与えられることで、あたかもエアコンスイッチ13のON操作をそのまま維持した場合と同様に、再起動の開始時から比例制御分と積分制御分による可変容量コンプレッサ1の容量制御が行われることになる。
【0068】
すなわち、目標1>目標2の条件が非成立となる場合、再起動の開始時に積算値をクリアするコンプレッサ容量制御を行うと初期の冷房能力が不足する。そこで、目標1>目標2の条件により状態判断を行い、目標1>目標2の条件が非成立となる場合には、再起動初期の積算値による冷房能力不足を補うため、エアコンスイッチ13のOFF時に出力されたデューティメモリ値を再起動の最初の出力値とすると共に、デューティメモリ値により積算初期値を算出してPI制御を維持する手法を採用した。
【0069】
この結果、短時間にエアコンスイッチ13を操作した時、速やかに出力デューティをあげることが可能となり、再起動時の冷房能力不足をカバーすることができる。
特に、短時間にてON→OFF→ON操作される誤ったエアコンスイッチ13の操作時に有効である。
【0070】
[A/Cの再起動時のコンプレッサ制御作用の対比]
従来、可変容量コンプレッサの容量制御は、{比例係数×差温+(積分係数×差温+前回までの積算値)}の式をベースとしてPI制御により制御デューティを求め、アクチュエータに出力されるデューティ信号により行うもので、図6のフローチャートに示すように、A/C起動開始時には、常にそれまでに積算された積算値をクリアする制御となっていた。
【0071】
このため、例えば、図7に示すように、t1の時点でエアコンスイッチをONにし、t2の時点でエアコンスイッチをOFFにした後、短時間が経過したt3の時点でエアコンスイッチをONとし、再起動する場合について説明する。
この場合、t3の時点からt4の時点までは、(比例係数×差温)という比例制御分のみからの開始となるため、デューティ出力特性と積算値特性は、図7の1点鎖線特性に示すように、0の値から徐々に上昇する特性を示す。
この結果、積算初期値を持たない従来技術の場合には、積分制御分が出るまでの積算時間(t3〜t4に要する時間)による演算遅れが発生し、この演算遅れが可変容量コンプレッサの再起動時における冷房能力不足の原因となる。
【0072】
これに対し、実施例1の可変容量コンプレッサ1の制御装置にあっては、図7のt3の時点でエアコンスイッチをONとして再起動する場合、エアコンスイッチ13をOFF操作し、可変容量コンプレッサ1を停止する時点t2における冷房能力要求によるデューティメモリ値を再起動の開始時に出力するため、目標1>目標2の条件が非成立となるような場合、冷房能力の再起動の開始初期応答が確保される。
【0073】
加えて、図7のt3の時点でエアコンスイッチをONとして再起動する場合、デューティメモリ値から比例分を差し引いた値が積算初期値とされる。つまり、デューティメモリ値により再起動を開始すると、次の制御周期から積算初期値による積分制御が比例制御と共に開始される。このため、デューティ出力特性と積算値特性は、図7の実線特性に示すように、t3の時点で0の値から一気に上昇するステップ的な特性を示し、デューティ出力特性の従来技術との効果代が図7のAにて表され、積算値特性の従来技術との効果代が図7のBにて表される。これによって、従来問題とされていた再起動の開始初期における冷房能力不足が解消される。
【0074】
ちなみに、可変容量コンプレッサ1を駆動制御する出力値を、比例制御分+積分制御分により決めるのは、積分制御分を比例制御分に加える+α分とし、この積分制御分により冷房能力不足となるのをカバーするためである。
【0075】
次に、効果を説明する。
実施例1の可変容量コンプレッサ1の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0076】
(1) 可変容量コンプレッサ1の動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決め、決めた出力値を可変容量アクチュエータに対して出力するコンプレッサ制御手段を備えた可変容量コンプレッサの制御装置において、前記可変容量コンプレッサ1を起動した後、停止するときの可変容量アクチュエータに対する出力値を出力記憶値として記憶する出力値記憶手段(ステップS7)を設け、前記コンプレッサ制御手段(図4)は、可変容量コンプレッサ1の再起動の開始時、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にする可変容量コンプレッサ起動制御部(ステップS8〜ステップS15)を有するため、可変容量コンプレッサ1を停止してから再起動を行うとき、高温時初期の冷房能力不足を解消することができる。
【0077】
(2) 前記可変容量コンプレッサ1の再起動開始時における実温度と目標温度の差温に比例する比例初期値を第1目標値として算出する第1目標値算出手段(ステップS9)と、前記出力値記憶手段(ステップS7)による出力記憶値を第2目標値として設定する第2目標値設定手段(ステップS10)と、を設け、前記可変容量コンプレッサ起動制御部(ステップS8〜ステップS15)は、可変容量コンプレッサ1の再起動の開始時であって(ステップS3にてYesとの判断時)、第1目標値が第2目標値以下のとき(ステップS11にてNoとの判断時)、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値とする(ステップS14)と共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値とする(ステップS15)ため、停止から短時間にて可変容量コンプレッサ1を再起動する場合のように、再起動時の冷房能力不足が懸念される第1目標値が第2目標値以下という条件が成立する場合に限り、冷房能力不足をカバーすることができる。
【0078】
(3) 前記可変容量コンプレッサ起動制御部(ステップS8〜ステップS15)は、可変容量コンプレッサ1の再起動の開始時であって(ステップS3にてYesとの判断時)、第1目標値が第2目標値より大きいとき(ステップS11にてYesとの判断時)、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を比例初期値とする(ステップS12)と共に、積算初期値をクリアする(ステップS13)ため、停止から長時間が経過した後に可変容量コンプレッサ1を再起動する場合のように、第1目標値が第2目標値より大きいという条件が成立する場合に限り、過不足のない適切な冷房能力を確保することができる。
【0079】
(4) 前記可変容量コンプレッサ1は、車両の空調ユニット2内に配置されたエバポレータ3を含む冷凍サイクルの構成要素として設けられ、前記エバポレータ3の後流側直後位置に、エバポレータ出口温度を検出するエバポレータ出口温度センサ8を設け、前記第1目標値算出手段(ステップS9)は、前記可変容量コンプレッサ1の再起動開始時における実エバポレータ出口温度Tevaと目標エバポレータ出口温度TMevaの差温(Teva−TMeva)に比例する比例初期値を第1目標値として算出するため、可変容量コンプレッサ1を含む空調ユニット2を停止してから再起動を行うとき、車室内の冷房能力不足を解消することができる。
【0080】
(5) 前記可変容量コンプレッサ1は、ダイアフラム91に作用する圧力荷重F(Ps)とバネ荷重F(K)と磁力F(I)により決まる弁リフト量によって吐出する冷媒流量を制御する高圧弁9を有し、前記可変容量アクチュエータは、デューティ制御信号による実効電流を印加することにより、前記高圧弁9のダイアフラム91に作用する磁力F(I)を電気的に可変とするコイル94であるため、簡単な電流制御によりコンプレッサ容量の変更制御を行うことができる。
【0081】
以上、本発明の可変容量コンプレッサの制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0082】
実施例1では、可変容量コンプレッサとして高圧弁を可変容量アクチュエータとする例を示したが、外部からの電気的制御により容量変更する可変容量コンプレッサであれば、例えば、圧縮ストロークを可変にする斜板の傾斜角を変更する可変容量コンプレッサや、インバータ制御による電動の可変容量コンプレッサ等であっても良い。
【0083】
実施例1では、効率よくコンプレッサをコントロールするために目標1と目標2の大小関係により状態判断を行う例を示したが、例えば、状態判断を行うことなく、可変容量コンプレッサの再起動の開始時には、常に可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にする可変容量コンプレッサ起動制御を行うものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
実施例1では、車両の空調ユニット内に配置されたエバポレータを含む冷凍サイクルの構成要素として設けられた可変容量コンプレッサへの適用例を示したが、可変容量コンプレッサを有するものであれば、家庭や事業所や工場等で用いられる空調装置等へも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は実施例1の可変容量コンプレッサの制御装置が適用された外部制御コンプレッサシステムを示す全体図である。
【図2】実施例1の可変容量コンプレッサの容量を制御する高圧弁の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す高圧弁のコイルに印加する制御デューティ信号の電流波形と電圧波形の一例を示すタイムチャートである。
【図4】実施例1のECVコントローラ12にて実行されるコンプレッサ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートのステップS4にて実行されるPI制御による目標出力デューティ演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】従来のコントローラにて実行されるコンプレッサ制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】短時間のうちにエアコンスイッチをON→OFF→ON操作した場合のエアコンスイッチ信号特性とデューティ出力特性と積算値特性の各対比特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1 可変容量コンプレッサ
2 空調ユニット
3 エバポレータ
4 コンデンサ
5 受液器
6 膨張弁
7 送風機
8 エバポレータ出口温度センサ(エバポレータ出口温度検出手段)
9 高圧弁
90 ボール弁
91 ダイアフラム
92 弁制御体
93 セットスプリング
94 コイル
10 ラジエータ
11 コンデンサファン
12 ECVコントローラ
13 エアコンスイッチ
14 吹き出し温度設定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量コンプレッサの動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決め、決めた出力値を可変容量アクチュエータに対して出力するコンプレッサ制御手段を備えた可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサを起動した後、停止するときの可変容量アクチュエータに対する出力値を出力記憶値として記憶する出力値記憶手段を設け、
前記コンプレッサ制御手段は、可変容量コンプレッサの再起動の開始時、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にする可変容量コンプレッサ起動制御部を有することを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサの再起動開始時における実温度と目標温度の差温に比例する比例初期値を第1目標値として算出する第1目標値算出手段と、
前記出力値記憶手段による出力記憶値を第2目標値として設定する第2目標値設定手段と、を設け、
前記可変容量コンプレッサ起動制御部は、可変容量コンプレッサの再起動の開始時であって、第1目標値が第2目標値以下のとき、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値とすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値とすることを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサ起動制御部は、可変容量コンプレッサの再起動の開始時であって、第1目標値が第2目標値より大きいとき、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を比例初期値とすると共に、積算初期値をクリアすることを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載された可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサは、車両の空調ユニット内に配置されたエバポレータを含む冷凍サイクルの構成要素として設けられ、
前記エバポレータの後流側直後位置に、エバポレータ出口温度を検出するエバポレータ出口温度検出手段を設け、
前記第1目標値算出手段は、前記可変容量コンプレッサの再起動開始時におけるエバポレータ出口温度検出値と目標エバポレータ出口温度の差温に比例する比例初期値を第1目標値として算出することを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサは、ダイアフラムに作用する圧力荷重とバネ荷重と磁力により決まる弁リフト量によって吐出する冷媒流量を制御する高圧弁を有し、
前記可変容量アクチュエータは、デューティ制御信号による実効電流を印加することにより、前記高圧弁のダイアフラムに作用する磁力を電気的に可変とするコイルであることを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。
【請求項6】
可変容量コンプレッサの動作時、実温度と目標温度の差温に対する比例値と積算値により出力値を決め、決めた出力値を可変容量アクチュエータに対して出力する可変容量コンプレッサの制御装置において、
前記可変容量コンプレッサを起動した後、停止するときの可変容量アクチュエータに対する出力値を出力記憶値として記憶し、
可変容量コンプレッサの再起動の開始時、前記可変容量アクチュエータに対する再起動開始出力値を出力記憶値にすると共に、出力記憶値から比例初期値を差し引いた値を積算初期値にすることを特徴とする可変容量コンプレッサの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−107058(P2008−107058A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292696(P2006−292696)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】