説明

可変容量タービン

【課題】ノズルベーンの端面に存在する隙間からの流体漏れを抑制するとともにウェイクの発生を抑制し得る可変容量タービンを提供する。
【解決手段】ノズルマウントおよびノズルプレートによって形成される流体空間と、流体空間に、周方向に間隔を空けて流体空間を区切るように配置され、それぞれノズルマウントに自転可能に軸支持されている複数のノズルベーン27と、を備え、隣り合うノズルベーン27で形成される流路断面積を開閉して流出する流体の流量が調整できる可変容量タービンであって、ノズルプレートには、ノズルベーン27が閉じた位置におけるノズルベーン27の前縁40側と隣り合うノズルベーン27の後縁42側との間を覆うように、少なくともノズルベーン27の端面位置よりもノズルベーン27側に突出したプレート突起部41が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルタービンは、回転軸に固定されたハブに複数の遠心翼が固定され、ほぼ平行な環状をしたノズルマウントおよびノズルプレート間を流路として半径方向外周側から内向きに流れる作動流体である空気やガスが、遠心翼に作用してハブを回転させるとともにほぼ軸方向に流出される構成となっている。
円板間の流路には、作動流体を加速する複数のノズルベーンが周方向に間隔を空けて配置されている。
可変容量ラジアルタービンは、このノズルベーンをノズルマウントに軸支させ、この軸回りに自転させて、隣り合うノズルベーンで形成されるスロート空間を開閉して流出する流体の流量、速度等が調整できるものである。
【0003】
このように、可変容量ラジアルタービンでは、ノズルベーンが自転するので、それに伴ってノズルベーンの端面がノズルマウントおよびノズルプレートに沿って移動する。このため、ノズルベーンの端面がノズルマウントおよびノズルプレートに接触して固定される不具合を防止するために、ノズルベーンの端面とノズルマウントおよびノズルプレートとの間には、隙間を設ける必要がある。
この隙間は、流体の漏れ流路となるので、可変容量ラジアルタービンの効率を低下させる。この低下は、特に、小流量であるノズルベーンが閉じた状態のときに影響が大きくなる。
【0004】
このノズルベーンが閉じた状態のときに流体の漏れを抑制し、小流量時の効率低下を抑制するものとして、たとえば、特許文献1に示されるものが提案されている。
これは、ノズルベーンが閉じた位置におけるノズルベーンの前縁側と隣り合うノズルベーンの後縁側に板状の突起部を設け、隙間からの流体の漏れを抑制するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−96018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ノズルベーンが閉じた(ノズルベーンの開度が小さい)状態のときに、スロート空間のスロート幅(ノズルベーン間の距離)に対するノズルベーンの後縁の厚さが相対的に大きくなるので、スロート空間を出た流体の拡幅率が大きくなる。このように拡幅率が大きくなると、大きなウェイクが発生し、可変容量ラジアルタービンの性能が低下する。
特許文献1に示されるものでは、板状の突起部によって流体の漏れは抑制できるが、スロート幅に対する影響は小さく、ウェイクの発生に対する考慮がなされていないので、可変容量ラジアルタービンの性能低下が避けられないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、ノズルベーンの端面に存在する隙間からの流体漏れを抑制するとともにウェイクの発生を抑制し得る可変容量タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、間隔を空けて対向して配置された環状の一対の対向面によってドーナツ形状に形成され、外周側から流入する流体を内周側に流出させる流体空間と、該流体空間に、周方向に間隔を空けて該流体空間を区切るように配置され、それぞれ一方の前記対向面に自転可能に軸支持されている複数のノズルベーンと、を備え、該ノズルベーンを前記軸回りに自転させて隣り合う該ノズルベーンで形成されるスロート空間を開閉して流出する流体の流量が調整できる可変容量タービンであって、一対の前記対向面の内、少なくとも一方の前記対向面には、前記ノズルベーンが閉じた位置における前記ノズルベーンの前縁側と隣り合う前記ノズルベーンの後縁側との間を覆うように、少なくとも前記ノズルベーンの端面位置よりも前記ノズルベーン側に突出した突起部が備えられている可変容量タービンである。
【0009】
本態様によれば、一対の対向面の内、少なくとも一方の対向面には、ノズルベーンが閉じた位置におけるノズルベーンの前縁側と隣り合うノズルベーンの後縁側との間を覆うように突起部が備えられているので、ノズルベーンが閉じた状態では、突起部がノズルベーンに隣り合って存在することになる。突起部は、少なくともノズルベーンの端面位置よりもノズルベーン側に突出しているので、ノズルベーンと対向面との間の隙間を覆うことができる。したがって、突起部は、この隙間からの流体の漏れを抑制できるので、小流量の場合における可変容量タービンの効率低下を抑制することができる。
また、突起部は、ノズルベーンが閉じた位置におけるノズルベーンの前縁側と隣り合うノズルベーンの後縁側との間を覆うように備えられているので、その分ノズルベーンが閉じた状態のときにおけるスロート空間の高さを減少することができる。スロート空間の高さが減少させられると、同一の流量、すなわち、同面積のスロート空間を得る場合に、スロート幅を大きく、すなわち、ノズルベーンの開度を大きくできるので、スロート空間のスロート幅(ノズルベーン間の距離)に対するノズルベーンの後縁の厚さが相対的に小さくできる。これにより、スロート空間を出た流体の拡幅率が小さくなるので、ウェイクの発生を抑制することができ、可変容量ラジアルタービンの性能を向上させることができる。
【0010】
前記態様では、前記突起部の外周側には、前記突起部に向かい前記ノズルベーンに近づくように形成された外周テーパ面が備えられていてもよい。
【0011】
このように突起部の外周側には、突起部に向かいノズルベーンに近づくように形成された外周テーパ面が備えられているので、隙間を通って漏れる流体は外周テーパ面を通って突起部に当接することになる。この流体は外周テーパ面を通ってノズルベーン側に、すなわち、突起部先端側に向かって流れるので、突起部で急激に流れが方向変換されることを抑制できる。このため、流体は突起部において急激に方向転換されることが抑制されるので、流体流れの剥離を抑制することができ、損失を低減することができる。
また、突起部の外周側は、ノズルベーンの前縁側部分が移動する範囲であるので、ノズルベーンの開度が効率低下に影響しない程度以上に大きくなると、ノズルベーンと対向面との間隔が大きくなる。ノズルベーンと対向面との間隔が大きくなると、この間隔を通る流体量が多くなるので、ノズルベーンから供給される流体の流量を増加させることができる。
一方、ノズルベーンの開度が小さくなると、ノズルベーンと対向面との間隔が小さくなるので、流体の漏れ量をより小さくすることができ、突起部と相俟って、小流量の場合における可変容量タービンの効率低下をより抑制することができる。
さらに、ノズルベーンと対向面との間隔を連続的に変化させることができるので、外周テーパ面の傾斜度、範囲等を調節することによって流体の流量の制御を容易に行うことができる。
なお、外周テーパ面は、少なくともノズルベーンの前縁側部分が移動する範囲に設けるのが好適である。
【0012】
前記態様では、前記突起部の内周側には、前記突起部に向かい前記ノズルベーンに近づくように形成された内周テーパ面が備えられていてもよい。
【0013】
このように突起部の内周側には、突起部に向かいノズルベーンに近づくように形成された内周テーパ面が備えられているので、スロート部の流体は突起部を通って内周テーパ面とノズルベーンとの間隔に漏れ出ることになる。内周テーパ面は突起部側がよりノズルベーン側、すなわち、突起部先端側に位置しているので、突起部から内周テーパ面になめらかに移動する。これにより、突起部を出る流体の流れが急激に方向変換されることを抑制できるので、流体流れの剥離を抑制することができ、損失を低減することができる。
また、突起部の内周側は、ノズルベーンの後縁側部分が移動する範囲であるので、ノズルベーンの開度が効率低下に影響しない程度以上に大きくなると、ノズルベーンと対向面との間隔が大きくなる。ノズルベーンと対向面との間隔が大きくなると、この間隔を通る流体量が多くなるので、ノズルベーンから供給される流体の流量を増加させることができる。
一方、ノズルベーンの開度が小さくなると、ノズルベーンと対向面との間隔が小さくなるので、流体の漏れ量をより小さくすることができ、突起部と相俟って、小流量の場合における可変容量タービンの効率低下をより抑制することができる。
さらに、ノズルベーンと対向面との間隔を連続的に変化させることができるので、外周テーパ面の傾斜度、範囲等を調節することによって流体の流量の制御を容易に行うことができる。
なお、内周テーパ面は、少なくともノズルベーンの後縁側部分が移動する範囲に設けるのが好適である。
【0014】
前記態様では、前記突起部は、前記ノズルベーンの翼弦方向において前記ノズルベーンの前縁あるいは後縁から前記軸の近傍位置までをカバーするようにされていてもよい。
【0015】
このようにすると、突起部はノズルベーンの翼弦方向においてノズルベーンの略全範囲をカバーすることができる。したがって、ノズルベーンと対向面との間の隙間を略完全にカバーすることができるので、小流量の場合における可変容量タービンの効率低下をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、一対の対向面の内、少なくとも一方の対向面には、ノズルベーンが閉じた位置におけるノズルベーンの前縁側と隣り合うノズルベーンの後縁側との間を覆うように、少なくともノズルベーンの端面位置よりもノズルベーン側に突出した突起部が備えられているので、小流量の場合における可変容量タービンの効率低下を抑制することができる。また、可変容量ラジアルタービンの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機の可変容量ラジアルタービン側の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】図1のノズルベーンの一部を示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】ノズルマウント部を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる可変容量ラジアルタービンのノズルベーンの一部を示す平面図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】図5のC−C断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態にかかる可変容量ラジアルタービンのノズルベーンの一部を示す平面図である。
【図9】図8のD−D断面図である。
【図10】図8のE−E断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態にかかる可変容量ラジアルタービンのノズルベーンの一部を示す平面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】図11のG−G断面図である。
【図14】本発明の第五実施形態にかかる可変容量ラジアルタービンのノズルベーンの一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
以下に、本発明の第一実施例にかかる可変容量ラジアルタービン1を備えた可変容量ターボ過給機について図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる可変容量型排気ターボ過給機の可変容量ラジアルタービン側の概略構成を示す部分断面図である。図2は、図1のノズルベーンの一部を示す平面図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、ノズルマウント部を示す断面図である。
【0019】
可変容量ターボ過給機3には、可変容量ラジアルタービン1と、コンプレッサ(図示せず)とが備えられている。
可変容量ラジアルタービン1とコンプレッサとは、軸受ハウジング5を介して連結されている。軸受ハウジング5内には、軸受7に回転支持されたタービンロータ9が挿通されている。
【0020】
コンプレッサは、タービンロータ9の一端側に取り付けられたコンプレッサホイール(図示せず)と、このコンプレッサホイールを囲んで覆うように設けられたコンプレッサケーシング(図示せず)とを備えている。
一方、可変容量ラジアルタービン1には、タービンロータ9の他端側に取り付けられたタービンホイール11と、このタービンホイール11を囲んで覆うように設けられたタービンケーシング13と、タービンホイール11に流入する排気ガス(流体)の流路断面積(スロート面積)Sを変化させる可変ノズル機構15とが備えられている。
【0021】
タービンケーシング13の内側には、タービンロータ9の回転軸心17回りにタービンホイール11の外周を囲むようにスクロール19が形成されている。このスクロール19とタービンホイール入口21とは流体入口流路(流体空間)23により連通されている。
また、スクロール19の外周側には概ねスクロール19の接線方向に沿った排気ガス入口(図示せず)が設けられ、タービンロータ9の回転軸心17に沿って排気ガス出口25が設けられている。
【0022】
可変ノズル機構15には、図2に示すような断面視翼形状を呈する複数枚のノズルベーン27と、断面視環形状を呈する一本のノズルマウント(対向面)29と、断面視環形状を呈する一本のドライブリング31と、断面視環形状を呈する一本のノズルプレート(対向面)33とを備えている。
ノズルマウント29とノズルプレート33とは、対向して配置され、ドーナツ形状をした流体入口流路23を形成している。
【0023】
ノズルベーン27は、流体入口流路23に、周方向に沿って等ピッチで配置されており、ノズルベーン27のノズルマウント29側の端面に軸35が設けられている。軸35は、ノズルマウント29の端面に回転可能に支持されている。
軸35の端部には、レバープレート37の一端が固定されている。レバープレート37の他端は、ドライブリング31に固定して取り付けられているドライブピン39に係合されている。
【0024】
ドライブリング31は、タービンケーシング13に回転可能に支持され、図示を省略したアクチュエータによって回転させられる。ドライブリング31が回転すると、ドライブピン39が移動するので、レバープレート37が移動する。レバープレート37が移動すると、軸35が回転し、ノズルベーン27は軸35回りに自転する。これにより、ノズルベーン27の開度が調整される、すなわち、隣り合うノズルベーンによって形成される流路断面積Sが調整される。
【0025】
ノズルプレート33には、図2および図3に示されるようにプレート突起部(突起部)41が備えられている。
プレート突起部41は、図2に示されるように、ノズルベーン27が閉じた位置におけるノズルベーン27の前縁40側と隣り合うノズルベーン27の後縁42側との間を全面的に覆うように備えられている。
プレート突起部41の先端位置は、図3に示されるようにノズルベーン27の端面位置よりもノズルベーン27側に突出するように構成されている。
【0026】
ノズルマウント29には、図4に示されるようにマウント突起部(突起部)43が備えられている。
マウント突起部43は、ノズルベーン27が閉じた位置におけるノズルベーン27の前縁40側と隣り合うノズルベーン27の後縁42側との間を全面的に覆うように備えられている。
マウント突起部43の先端位置は、図4に示されるようにノズルベーン27の端面位置よりもノズルベーン27側に突出するように構成されている。
【0027】
以上のように構成された本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1およびこれを備えた可変容量ターボ過給機の動作について説明する。
エンジン(図示省略)からの排ガスはスクロール19に入り、スクロール19の渦巻きに沿って周回しながら流体入口流路23に流入する。
流体入口流路23に流入した排ガスはノズルベーン27によって加速されてタービンホイール11にその外周側から流入する。この排ガスは、タービンホイール11の中心側に向かい半径方向に流れてタービンホイール11に膨張仕事をなした後、軸方向に流出して排気ガス出口25に案内されて機外に送出される。
【0028】
このとき、可変容量ラジアルタービンの容量は以下のように制御される。図示しないアクチュエータを作動させてドライブリング31を回転させると、ドライブピン39が移動する。ドライブピン39の移動によって、レバープレート37が軸35回りに揺動し、軸35が回転移動する。軸35が回転すると、ノズルベーン27は軸35回りに自転する。これにより、ノズルベーン27の翼角が変更され、ノズルベーン27の開度が調整される。ノズルベーン27間に形成される流路断面積Sが調整され、流量が調整される。
【0029】
本実施形態によれば、ノズルプレート33にプレート突起部41が、ノズルマウント29にマウント突起部43が、それぞれノズルベーン27が閉じた位置におけるノズルベーン27の前縁40側と隣り合うノズルベーン27の後縁42側との間を覆うように備えられているので、ノズルベーン27が図2に示されているように閉じた状態では、プレート突起部41およびマウント突起部43がノズルベーン27に隣り合って存在する。
【0030】
プレート突起部41およびマウント突起部43の先端位置は、ノズルベーン27の端面位置よりもノズルベーン27側に突出しているので、プレート突起部41およびマウント突起部43はノズルベーン27とノズルプレート33およびノズルマウント29との間の隙間を覆うことができる。したがって、プレート突起部41およびマウント突起部43は、この隙間からの流体の漏れを抑制できるので、小流量の場合における可変容量ラジアルタービン1の効率低下を抑制することができる。
【0031】
また、プレート突起部41およびマウント突起部43は、ノズルベーン27が閉じた位置におけるノズルベーン27の前縁40側と隣り合うノズルベーン27の後縁42側との間を覆うように備えられているので、その分ノズルベーン27が閉じた状態のときにおける流路断面積Sの高さHを減少させることができる。
図3に示されるように、本実施形態における流路断面積Sと同一面積となるプレート突起部41およびマウント突起部43がない場合の流路断面積S1を示している。両者を比べると、流路断面積Sの方が高さHが小さい分、スロート幅Bがスロート幅B1よりも大きくなる。
【0032】
このように、流路断面積Sの高さが減少させられると、同一の流量、すなわち、同面積の流路断面積Sを得る場合に、スロート幅Bを大きく、すなわち、ノズルベーン27の開度を大きくできる。
このように、スロート幅Bに対するノズルベーン27の後縁42の厚さが相対的に小さくできる。これにより、ノズルベーン27を出た排ガスの拡幅率が小さくなるので、ウェイクの発生を抑制することができ、可変容量ラジアルタービン1の性能を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、ノズルプレート33にプレート突起部41を、ノズルマウント29にマウント突起部43を備えているが、これに限定されるものではなく、プレート突起部41およびマウント突起部43のいずれか一方を備えるようにしてもよい。
【0034】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1を備えた可変容量ターボ過給機について、図5〜図7を用いて説明する。
本実施形態は、ノズルプレート33の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0035】
図5は、本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1のノズルベーンの一部を示す平面図である。図6は、図5のB−B断面図である。図7は、図5のC−C断面図である。
本実施形態では、ノズルプレート33には、プレート突起部41の外周側にプレート突起部41に向かいノズルベーン27に近づくように形成された外周テーパ面51が備えられている。
【0036】
外周テーパ面51は、図5に示されるようにノズルベーン27の開閉に伴いノズルベーン27の前縁40側部分が移動する範囲に設けられている。
外周テーパ面51とプレート突起部41との境界位置では、外周テーパ面51はノズルベーン27に接触しない程度の隙間が設けられている。
マウント突起部43が備えられている場合、マウント突起部43の外周側に外周テーパ面51に相当するテーパ面を備えるようにしてもよい。
【0037】
このように構成された本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1の作用・効果について説明する。
ノズルプレート33とノズルベーン27との隙間を通って漏れる排ガスは外周テーパ面51を通ってプレート突起部41に当接することになる。この排ガスは外周テーパ面51を通ってノズルベーン27側に、すなわち、プレート突起部41の先端側に向かって流れるので、プレート突起部41で急激に流れが方向変換されることを抑制できる。このため、排ガスはプレート突起部41において急激に方向転換されることが抑制されるので、流体流れの剥離を抑制することができ、損失を低減することができる。
【0038】
また、外周テーパ面51は、ノズルベーン27の前縁40側部分が移動する範囲であるので、ノズルベーン27の開度が効率低下に影響しない程度以上に大きくなると、ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔が大きくなる。ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔が大きくなると、この間隔を通る流体量が多くなるので、ノズルベーン27からタービンホイール11へ供給される排ガスの流量を増加させることができる。
【0039】
一方、ノズルベーン27の開度が小さくなると、ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔が小さくなるので、排ガスの漏れ量をより小さくすることができ、プレート突起部41と相俟って、小流量の場合における可変容量ラジアルタービン1の効率低下をより抑制することができる。
さらに、ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔を連続的に変化させることができるので、外周テーパ面51の傾斜度、範囲等を調節することによって排ガスの流量の制御を容易に行うことができる。
【0040】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1を備えた可変容量ターボ過給機について、図8〜図10を用いて説明する。
本実施形態は、ノズルプレート33の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0041】
図8は、本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1のノズルベーンの一部を示す平面図である。図9は、図8のD−D断面図である。図10は、図8のE−E断面図である。
本実施形態では、ノズルプレート33には、プレート突起部41の内周側にプレート突起部41に向かいノズルベーン27に近づくように形成された内周テーパ面53が備えられている。
【0042】
内周テーパ面53は、図8に示されるようにノズルベーン27の開閉に伴いノズルベーン27の後縁42側部分が移動する範囲に設けられている。
内周テーパ面53とプレート突起部41との境界位置では、内周テーパ面53はノズルベーン27に接触しない程度の隙間が設けられている。
マウント突起部43が備えられている場合、マウント突起部43の内周側に内周テーパ面53に相当するテーパ面を備えるようにしてもよい。
【0043】
このように構成された本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1の作用・効果について説明する。
ノズルプレート33間の排ガスは、ノズルプレート33とノズルベーン27との隙間を通って漏れる。内周テーパ面53はプレート突起部41側がよりノズルベーン27側、すなわち、プレート突起部41先端側に位置しているので、プレート突起部41から内周テーパ面53になめらかに移動する。これにより、プレート突起部41から隙間を通って出る排ガスの流れが急激に方向変換されることを抑制できるので、排ガス流れの剥離を抑制することができ、損失を低減することができる。
【0044】
また、内周テーパ面53は、ノズルベーン27の後縁42側部分が移動する範囲であるので、ノズルベーン27の開度が効率低下に影響しない程度以上に大きくなると、ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔が大きくなる。ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔が大きくなると、この間隔を通る流体量が多くなるので、ノズルベーン27からタービンホイール11へ供給される排ガスの流量を増加させることができる。
【0045】
一方、ノズルベーン27の開度が小さくなると、ノズルベーン27とノズルプレート33(内周テーパ面53)との間隔が小さくなるので、排ガスの漏れ量をより小さくすることができ、プレート突起部41と相俟って、小流量の場合における可変容量ラジアルタービン1の効率低下をより抑制することができる。
さらに、ノズルベーン27とノズルプレート33との間隔を連続的に変化させることができるので、内周テーパ面53の傾斜度、範囲等を調節することによって排ガスの流量の制御を容易に行うことができる。
【0046】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1を備えた可変容量ターボ過給機について、図11〜図13を用いて説明する。
本実施形態は、ノズルプレート33の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0047】
図11は、本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1のノズルベーンの一部を示す平面図である。図12は、図11のF−F断面図である。図13は、図11のG−G断面図である。
本実施形態では、第一実施形態の構成に加えて第二実施形態の外周テーパ面51および第三実施形態の内周テーパ面53が備えられている。
【0048】
外周テーパ面51は、図11に示されるようにノズルベーン27の開閉に伴いノズルベーン27の前縁40側部分が移動する範囲に設けられている。
内周側テーパ面53は、図11に示されるようにノズルベーン27の開閉に伴いノズルベーン27の後縁42側部分が移動する範囲に設けられている。
マウント突起部43が備えられている場合、マウント突起部43の外周側に外周テーパ面51に相当するテーパ面および内周側に内周テーパ面53を備えるようにしてもよい。
【0049】
このように構成された本実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1の作用・効果については、上述の第二実施形態および第三実施形態のそれらを併せ持っているので、ここでは重複した説明を省略する。
【0050】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態にかかる可変容量ラジアルタービン1を備えた可変容量ターボ過給機について、図14を用いて説明する。
本実施形態は、ノズルプレート33の構成が第四実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第四実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
【0051】
本実施形態では、プレート突起部41は、ノズルベーン27の翼弦方向においてノズルベーン27の前縁40あるいは後縁42から軸35の近傍位置までをカバーするようにされている。これに伴い外周テーパ面51および内周テーパ面53のノズルベーン27の翼弦方向における長さが長くされている。
マウント突起部43が備えられている場合、マウント突起部43は、ノズルベーン27の翼弦方向においてノズルベーン27の前縁40あるいは後縁42から軸35の近傍位置までをカバーするようにされていてもよい。
【0052】
このようにすると、プレート突起部41はノズルベーン27の翼弦方向においてノズルベーン27とノズルプレート33との隙間から排ガスが洩れる範囲(図14に点線の矢印で示している。)の略全範囲をカバーすることができる。
したがって、ノズルベーン27とノズルプレート33との間の隙間を略完全にカバーすることができるので、小流量の場合における可変容量ラジアルタービン1の効率低下をより抑制することができる。
なお、外周テーパ面51および内周テーパ面53を省略してもよいし、外周テーパ面51および内周テーパ面53のいずれか一方を省略してもよい。
【0053】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
たとえば、本実施形態では、可変容量ラジアルタービン1に適用しているが、斜流タービンに適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 可変容量ラジアルタービン
23 流体入口流路
27 ノズルベーン
29 ノズルマウント
33 ノズルプレート
35 軸
40 前縁
41 プレート突起部
42 後縁
43 マウント突起部
51 外周テーパ面
53 内周テーパ面
S 流路断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて対向して配置された環状の一対の対向面によってドーナツ形状に形成され、外周側から流入する流体を内周側に流出させる流体空間と、
該流体空間に、周方向に間隔を空けて該流体空間を区切るように配置され、それぞれ一方の前記対向面に自転可能に軸支持されている複数のノズルベーンと、
を備え、
該ノズルベーンを前記軸回りに自転させて隣り合う該ノズルベーンで形成されるスロート空間を開閉して流出する流体の流量が調整できる可変容量タービンであって、
一対の前記対向面の内、少なくとも一方の対向面には、前記ノズルベーンが閉じた位置における前記ノズルベーンの前縁側と隣り合う前記ノズルベーンの後縁側との間を覆うように、少なくとも前記ノズルベーンの端面位置よりも前記ノズルベーン側に突出した突起部が備えられていることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項2】
前記突起部の外周側には、前記突起部に向かい前記ノズルベーンに近づくように形成された外周テーパ面が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量タービン。
【請求項3】
前記突起部の内周側には、前記突起部に向かい前記ノズルベーンに近づくように形成された内周テーパ面が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変容量タービン。
【請求項4】
前記突起部は、前記ノズルベーンの翼弦方向において前記ノズルベーンの前縁あるいは後縁から前記軸の近傍位置までをカバーするようにされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の可変容量タービン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−77661(P2012−77661A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222496(P2010−222496)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】