説明

可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷及びその製造方法

【課題】可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンルツボの中敷は、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、厚みが0.2〜1.0mm及び不純物含有量が5ppm以下であり、さらに線対称形状である膨張黒鉛シートを用いた可撓性を有するカーボンルツボの中敷である。また、前記膨張黒鉛シートは非線対称形状のものであってもよい。さらに、カーボンルツボの中敷の製造方法は、かさ密度が0.7〜1.3g/cm及び厚みが0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートを、線対称形状に加工した後に高純度化処理して、不純物含有量を5ppm以下にする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、膨張黒鉛シートは、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等を硫酸、硝酸等の混合溶液で処理し、水洗、乾燥後、膨張炉で約1000℃に膨張化処理させ、これをロール等で圧延によりシート化されている。膨張黒鉛シートは、耐熱性に優れ、気液不浸透性に優れているのでパッキン、バルブシート、ガスケット、燃料電池用セパレーター等に使用されている。
【0003】
また、この膨張黒鉛シートを2000℃以上のハロゲンガス雰囲気下で高純度化処理し、不純物の含有量が15ppm以下の高純度膨張黒鉛シートを得ることが特許文献1に開示されており、このものは半導体製造工程でも使用されている。
【0004】
以下、半導体製造工程で使用される高純度膨張黒鉛シートを例にとって説明する。代表的な単結晶引き上げ方法であるチョクラルスキー(以下、CZという。)法にも高純度膨張黒鉛シートが使用されている。CZ装置の要部断面を図1に示す。CZ装置は、石英ルツボ1を支持するカーボンルツボ5、ヒーター2、アッパーリング6、インナーシールド7等の部品によって構成されている。CZ装置では、石英ルツボ1内に充填した多結晶シリコンを高温に加熱してシリコン融液3とし、この原料融液3にシードチャックの先端を接触させて引き上げながら単結晶シリコン4を引き上げしている。
【0005】
図1に示すように、黒鉛あるいは炭素繊維強化炭素複合材料で構成されたカーボンルツボ(以下、カーボンルツボと総称する。)5は石英ルツボ1と直に接触しているので、石英ルツボ1とカーボンルツボ5との反応、あるいはシリコン蒸気と黒鉛ルツボとの反応によりカーボンルツボ5の表面が徐々に炭化ケイ素(以下、SiCという。)化し、カーボンとSiCの熱膨張係数の違いによりカーボンルツボに割れ等が発生する。また、石英ルツボ1がカーボンルツボ5に固着し、石英ルツボ5の取り出しが困難になる。
【0006】
このような問題を解決するための一手段として、石英ルツボ1とカーボンルツボ5の間に高純度膨張黒鉛シートを中敷として介装することが特許文献2に開示されている。
【0007】
通常、膨張黒鉛シートの純度を向上させるために高純度化処理を行うと、膨張黒鉛シートが有する可撓性を損なってしまうため、可撓性を必要とする部材として使用できない。このため、可撓性を回復させるために圧縮成形することが特許文献1に開示されているが、圧縮成形による高純度膨張黒鉛シートの純度低下、可撓性が十分に回復していない高純度膨張黒鉛シートをカッター等で複雑な形状に加工する場合、シートの端部等に割れ、欠けが発生するという問題もある。
【0008】
また、カーボンルツボ5の内面をすべて膨張黒鉛シートで覆ってしまうと、石英ルツボ1の加熱効率が低下する。したがって、近年では中敷の形状を様々な複雑な形状に加工して石英ルツボの加熱効率を向上できるようにするケースが増加している。また、中敷は、基本的に1回の単結晶製造で1枚消費するので、量産性に優れた高純度膨張黒鉛シートの製造方法を提供することも重要である。
【0009】
【特許文献1】特許第2620606号公報
【特許文献2】特許第2528285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は可撓性を有し且つ高純度の膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、それに加えて量産性に優れたカーボンルツボの中敷の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を加えた結果、かさ密度がある一定の範囲にある膨張黒鉛シートを高純度化処理すると、高純度処理後も可撓性を殆ど損なわない高純度膨張黒鉛シートを得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、(1)本発明に係るカーボンルツボの中敷は、膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷であって、前記膨張黒鉛シートにおいて、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、厚みが0.2〜1.0mm、不純物含有量が5ppm以下であり、前記膨張黒鉛シートが、線対称形状である可撓性を有するカーボンルツボの中敷である。特に、前記膨張黒鉛シートが、円形部と、前記円形部に延設しかつ前記円径部の中心に対して90度間隔で設けられている帯形状部とを有するもの、楕円形、星型又は菊花御紋であることが好ましい。
【0012】
(2) 別の観点として、本発明に係るカーボンルツボの中敷は、膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷であって、前記膨張黒鉛シートにおいて、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、厚みが0.2〜1.0mm、不純物含有量が5ppm以下であり、前記膨張黒鉛シートが、非線対称形状である可撓性を有するカーボンルツボの中敷である。特に、前記膨張黒鉛シートが、円形部と、前記円形部に延設しかつ前記円形部の中心に対して120度間隔で設けられている略湾曲した帯形状部とを有するものであることが好ましい。
【0013】
上記(1)、(2)において、高純度膨張黒鉛シートは、例えば鱗片状黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解黒鉛等をフィラーとし、濃硫酸あるいは濃硝酸等を加えた混酸に浸漬して酸化処理を施し、水洗、乾燥後、加熱膨張化処理して膨張化黒鉛とし、これをプレスまたはロールで圧縮成形してかさ密度がおよそ0.7〜1.3g/cm3となるように調整する必要がある。かさ密度が0.7g/cm3よりも低い膨張黒鉛シートは高純度化処理を行っても可撓性を10回以上にできないので好ましくない。また、かさ密度が1.3g/cm3よりも高い膨張黒鉛シートは高純度化処理してもその中に含まれる不純物を10ppm以下にできないので好ましくない。その中でも、かさ密度が0.8〜1.3g/cm3、特に好ましくは、かさ密度が0.9〜1.3g/cm3に調整した膨張黒鉛シートを高純度化処理する。高純度化処理の方法自体は公知の方法が例示でき、たとえばハロゲンガス雰囲気下2000℃以上に加熱して膨張黒鉛シート中の金属を蒸気圧の高いハロゲン化金属化合物にして蒸発・揮散させることで不純物含有量が10ppm以下で且つ可撓性が10回以上の可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを得ることができる。膨張黒鉛シートを高純度化処理することによってかさ密度やシートの厚みは殆ど変化せず高純度化処理前後で同等である。なお、可撓性の測定装置は図4に概略を示す。試料となる10×100(mm)の高純度膨張黒鉛シート21の先端に50gの錘22をつけ、直径6mmの曲げ体24で折り曲げ、その回数を数えた。この折り曲げ回数を縦方向の可撓性とした。また、膨張黒鉛シートは、高純度処理前に、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、シート1枚あたりの厚みが0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートを積層して所望する形状に加工すると、高純度化処理後も可撓性を損なわない。
【0014】
(1)及び(2)は、上記可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートをカーボンルツボの中敷として使用するものである。すなわち、可撓性を有し不純物含有量が少ない高純度膨張黒鉛シートをカーボンルツボの中敷として使用するので石英ルツボのすわりが良く、一酸
化珪素ガスが侵入するのを抑制できるので、カーボンルツボの炭化珪素化が抑制でき高価なカーボンルツボの寿命が向上するのである。また、カーボンルツボの内面をすべて膨張黒鉛シートで覆ってしまうものでないので、石英ルツボの加熱効率が低下することを抑制することができる。さらに、上記(1)又は(2)に記載の様々な複雑な形状に加工することによって、石英ルツボの加熱効率を向上させることができる。
【0015】
(3) 本発明に係るカーボンルツボの中敷の製造方法は、かさ密度が0.7〜1.3g/cm及び厚みが0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートを、上記(1)又は(2)に記載の形状に加工した後に高純度化処理して、不純物含有量を5ppm以下にすることを特徴とする可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷の製造方法である。膨張黒鉛シートの厚みが0.7g/cm3以下であると前述したように高純度化処理を行っても可撓性を10回以上とすることができないので好ましくない。また、かさ密度が1.3g/cm3よりも高い膨張黒鉛シートを高純度化処理してもその中に含まれる不純物を10ppm以下にできないので好ましくない。さらに、高純度化処理する膨張黒鉛シートの厚みは、0.2〜1.0mmとすることが好ましい。高純度化処理する前の膨張黒鉛シートの厚みが0.2mmよりも薄いと高純度化処理後の可撓性や強度の低下が著しく、割れ等が発生しやすくなる。膨張黒鉛シートの厚みが1.0mmよりも厚いと高純度化処理により十分に不純物を低減させることができない。高純度化処理する膨張黒鉛シートの厚みは0.3〜0.9mmとすることがさらに好ましく、0.5〜0.8mmの膨張黒鉛シートを高純度化処理することが特に好ましい。なお、(1)又は(2)に記載の形状というのは、例えば図2に示すような形状や、楕円、星型、菊花御紋等の線対称形状や、線対称でない形状等が例示できる。
【0016】
(4) 本発明に係るカーボンルツボの中敷の製造方法は、かさ密度が0.7〜1.3g/cmの膨張黒鉛シートを複数枚積層した積層体を、スリット機による加工、トムソン型による打ち抜き加工およびウォータージェット加工から選ばれる1種類で、1回の加工で上記(1)又は(2)に記載の形状に加工した後に高純度化処理することを特徴とする可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷の製造方法である。膨張黒鉛シートを複数枚重ね、上述した加工方法で1回で加工することによって、上記(1)又は(2)に記載の同一形状で且つ複雑な形状の膨張黒鉛シートの量産性を向上できるので好ましい。また、中敷は、基本的に1回の単結晶製造で1枚消費するので、量産性に優れた高純度膨張黒鉛シートの製造方法を提供することができる。なお、1枚あたりの膨張黒鉛シートの厚みは、0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートを積層することが好ましい。膨張黒鉛シートの1枚あたりの厚みが0.2mmよりも低いと膨張黒鉛シートの可撓性や強度が得られず、割れ等が発生しやすくなる。また、1枚あたりの厚みが1.0mmよりも厚いと、高純度化処理によって十分に不純物を低減させることができないので好ましくない。また、高純度化処理を行う前の膨張黒鉛シートのかさ密度は、0.7〜1.3g/cm3とすることが好ましい。
【0017】
さらに、膨張黒鉛シートの加工方法が、スリット機による加工、トムソン型による打ち抜き加工、ウォータージェット加工から選ばれる一種類であることを特徴とするものである。なお、量産性を考慮すると、トムソン型による打ち抜き加工、ウォータージェット加工が時間を短縮でき、しかも膨張黒鉛シートの純度を低下させる恐れが少なく、しかも量産性に優れるので好ましい。ここで、積層してウォータージェット等により加工することで加工の作業時間を従来の1/10以下に短縮でき、不純物含有量も1/10以下に低減させることができる。したがって、半導体関連産業であるCZ装置やCVD化炉等高い純度が要求され且つ可撓性が要求されるカーボンルツボの中敷、原子力産業関連用途で可撓性に加えて高純度であることが要求される炉内部品として有用である。さらに付け加えると、トムソン型等で打ち抜き加工を行った場合には、膨張黒鉛シートの加工面(切断面)に付着した加工粉を除去するため水、アルコール等に浸漬して超音波洗浄を行って加工粉を除去し、乾燥して水分を蒸発させた後に高純度化処理を行うことが好ましい。
【実施例】
【0018】
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−50、寸法:1000×1000×0.5(mm)、かさ密度1.3g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0020】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0021】
(実施例3)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、厚さ0.4mm、かさ密度1.0g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0022】
(実施例4)
実施例3で使用したのと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0023】
(実施例5)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、厚さ0.4mm、かさ密度0.7g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0024】
(実施例6)
実施例5で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスで50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0025】
(実施例7)
実施例1で使用したものと同じ材質同じ寸法の膨張黒鉛シートを1枚を準備した。このシートをノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0026】
(実施例8)
実施例1で使用したのと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を、ノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0027】
(実施例9)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、厚さ0.4mm、かさ密度1.0g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートをノズルの噴射孔の直径0.1mm,3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0028】
(実施例10)
実施例3で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を、ノズルの噴射孔直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃に加熱し10時間保持して高純度化処理を行った。
【0029】
(実施例11)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、厚さ0.4mm、かさ密度0.7g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを、ノズルの噴射孔直径0.1mm,3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0030】
(実施例12)
実施例5で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォ一タージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0031】
(実施例13)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−20、寸法:1000×1000×0.2(mm)、かさ密度1.3g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0032】
(実施例14)
実施例13で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用い50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0033】
(実施例15)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−20、厚さ0.2mm、かさ密度1.0g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間
保持して高純度化処理を行った。
【0034】
(実施例16)
実施例15で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0035】
(実施例17)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−20、厚さ0.2mm、かさ密度0.7g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化
処理を行った。
【0036】
(実施例18)
実施例17で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し高純度化処理を行った。
【0037】
(実施例19)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−100、寸法:1000×1000×1.0(mm)、かさ密度1.3g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートをノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0038】
(実施例20)
実施例19で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0039】
(実施例21)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−100、厚さ1.0mm、かさ密度1.0g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このものをノズルの噴射孔の直径0.1mm,3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にシートをウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0040】
(実施例22)
実施例21で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を、ノズルの噴射孔直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0041】
(実施例23)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−100、厚さ1.0mm、かさ密度0.7g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートをノズルの噴射孔直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0042】
(実施例24)
実施例23で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0043】
(実施例25)
実施例1で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート5枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。加工に要する時間は5分間であった。その後、43kHzで超音波洗浄を3分間行って膨張黒鉛シートの切断粉を除去した後、100℃で30分問乾燥して水分を蒸発させた。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0044】
(比較例1)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−50、寸法:1000×l000×0.5(mm)、かさ密度1.5g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0045】
(比較例2)
比較例1で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0046】
(比較例3)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−10、寸法:1000×1000×0.1(mm)、かさ密度1.3g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0047】
(比較例4)
比較例3で使用したのと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0048】
(比較例5)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−120、寸法:1000×1000×1.2(mm)、かさ密度1.3g/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートを油圧プレスを用いて10MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0049】
(比較例6)
比較例5で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート10枚を積層した積層体を準備した。この積層体を油圧プレスを用いて50MPaの圧力でトムソン型を用いて図2に示す形状に打ち抜き加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持して高純度化処理を行った。
【0050】
(比較例7)
実施例1で使用したものと同じ材質、同じ寸法の膨張黒鉛シート5枚を積層した積層体を準備した。この積層体を人手によりカッターで図2に示す形状に加工した。加工に要する時間は1時間であった。その後、43kHzで超音波洗浄を3分問行って膨張黒鉛シートの切断粉を除去した後、100℃で30分間乾燥して水分を蒸発させた。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し、高純度化処理を行った。
【0051】
(比較例8)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、寸法1000×1000×0.4(mm)、かさ密度0.6g/cm3、灰分0.2mass%)10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で、図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し、高純度化処理を行った。
【0052】
(比較例9)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、寸法:1000×1000×0.4(mm)、かさ密度0.3g/cm3、灰分0.2mass%)10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し、高純度化処理を行った。
【0053】
(比較例10)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、寸法:1000×1000×0.4(mm)、かさ密度0.2g/cm3、灰分0.2mass%)10枚を積層した積層体を準備した。この積層体をノズルの噴射孔の直径0.1mm,3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し、高純度化処理を行った。
【0054】
(比較例11)
東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(グレード名:PF−40、寸法:1000×1000×0.4(mm)、かさ密度0.69/cm3、灰分0.2mass%)1枚を準備した。このシートをノズルの噴射孔の直径0.1mm、3000kg/cm2の水圧で図2に示す形状にウォータージェット加工した。その後、塩素ガスを供給しながら2000℃で10時間保持し、高純度化処理を行った。
【0055】
上記実施例1乃至25、比較例1乃至11について、膨張黒鉛シートのかさ密度、シートの厚み、積層枚数、加工方法、縦方向の可撓性、高純度化後の純度を表1にまとめた。なお、膨張黒鉛シートを高純度化処理することによってかさ密度やシートの厚みは殆ど変化せず高純度化処理前後で同等であった。
【0056】
また、高純度化処理後の膨張黒鉛シートの不純物含有量は、磁性ルツボに高純度膨張黒鉛シート15g以上を秤量しこれを電気炉に入れ、850℃で48時間加熱し、加熱前の質量と加熱後の質量から不純物量を測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、かさ密度が0.7〜1.3g/cm3、シート1枚あたりの厚みが0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートであれば、高純度処理後も可撓性の低下が少なく、純度が低下することも防止できることがわかる。
【0059】
上記実施例25と比較例3で製作した高純度膨張黒鉛シートをCZ装置の中敷として使用しシリコン単結晶の引き上げ実験を実施した。その結果、実施例25で製作した中敷を使用した場合は、比較例3で製作した中敷を使用した場合に比べてカーボンルツボの黄色に変色し炭化珪素化された部分の面積は少ないことが目視確認できた。これは、比較例3の高純度膨張黒鉛シートが可撓性を有さずシートに割れが発生したためである。
【0060】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】結晶引き上げ装置の断面模式図である。
【図2】単結晶引き上げ装置の中敷として使用される高純度膨張黒鉛シートの加工の一例を示す図である。
【図3】単結晶引き上げ装置の中敷として使用される高純度膨張黒鉛シートの他の加工一例を示す図である。
【図4】可撓性測定装置の模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 石英ルツボ
2 ヒーター
3 シリコン融液
4 シリコン単結晶
5 カーボンルツボ
6 アッパーリング
7 インナーシールド
8 ロアーリング
9 ボトムヒーター
10 ヒートインシュレーター
11 スピルトレー
21 試料(高純度膨張黒鉛シート)
22 錘
23 曲げ方向
24 曲げ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷であって、
前記膨張黒鉛シートにおいて、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、厚みが0.2〜1.0mm、不純物含有量が5ppm以下であり、
前記膨張黒鉛シートが、線対称形状であることを特徴とする可撓性を有するカーボンルツボの中敷。
【請求項2】
前記膨張黒鉛シートが、円形部と、前記円形部に延設しかつ前記円径部の中心に対して90度間隔で設けられている帯形状部とを有するものであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンルツボの中敷。
【請求項3】
前記膨張黒鉛シートが、楕円形、星型又は菊花御紋であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンルツボの中敷。
【請求項4】
膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷であって、
前記膨張黒鉛シートにおいて、かさ密度が0.7〜1.3g/cm、厚みが0.2〜1.0mm、不純物含有量が5ppm以下であり、
前記膨張黒鉛シートが、非線対称形状であることを特徴とする可撓性を有するカーボンルツボの中敷。
【請求項5】
前記膨張黒鉛シートが、円形部と、前記円形部に延設しかつ前記円形部の中心に対して120度間隔で設けられている略湾曲した帯形状部とを有するものであることを特徴とする請求項4に記載のカーボンルツボの中敷。
【請求項6】
かさ密度が0.7〜1.3g/cm及び厚みが0.2〜1.0mmの膨張黒鉛シートを、請求項1〜5のいずれか1項に記載の形状に加工した後に高純度化処理して、不純物含有量を5ppm以下にすることを特徴とする可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷の製造方法。
【請求項7】
かさ密度が0.7〜1.3g/cmの膨張黒鉛シートを複数枚積層した積層体を、スリット機による加工、トムソン型による打ち抜き加工およびウォータージェット加工から選ばれる1種類で、1回の加工で請求項1〜5のいずれか1項に記載の形状に加工した後に高純度化処理することを特徴とする可撓性を有する高純度膨張黒鉛シートを用いたカーボンルツボの中敷の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2800(P2008−2800A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204045(P2007−204045)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【分割の表示】特願2003−167662(P2003−167662)の分割
【原出願日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】