説明

可燃性廃棄物の燃料化システム及び燃料化方法

【課題】廃スラッジ等、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化する。
【解決手段】可燃性廃棄物を封入した容器33を破砕する破砕装置6と、破砕装置6によって破砕された破砕物Gと液体燃料Cとを混合する混合装置8と、混合装置8によって混合された混合物Mから固形物Sを篩い分けする第1の篩分装置9と、第1の篩分装置9の篩を通過した液部L1から金属片MPを除去する(第1の)磁力選別装置11と、磁力選別装置11によって金属片MPが除去された液部L1中のスラッジ塊を解砕し、分散させる解砕装置19と、解砕装置19によって処理された液部L2から固形物を篩い分けする第2の篩分装置20と、第2の篩分装置20によって篩い分けられた液部L3を燃料Fとして貯留する貯留装置(製品タンク)26とを備える可燃性廃棄物の燃料化システム1等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物の燃料化システム及び燃料化方法に関し、特に、引火点が低かったり、臭気を有していたり、スラッジ又は高粘度の物質を含有するなどの理由により、容器に封入され、これまで焼却されてきた可燃性廃棄物を燃料化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃スラッジ、ケミカルスラッジ等、ドラム缶、一斗缶、IBC容器等に封入されたまま廃棄される可燃性廃棄物がある。これらは、(1)引火点が低いため、静電気火花により引火する危険性がある、(2)有害ガスや臭気が発生するため、作業環境が悪い、(3)スラッジ又は高粘度の物質を含有するため、容器から排出することが難しいなどの理由により、容器ごと処理することが望ましい。また、上記可燃性廃棄物は、容器から取り出したとしても、物理性状の悪さ、異物の混入、一品種の量が少ないなどの問題から、焼却するしか処分方法はなかった。
【0003】
そこで、容器に封入された可燃性廃棄物は、従来、容器ごと焼却炉に投入したり、近年では容器ごと破砕し、容器の破片とともにポンプで焼却炉に送って焼却している(特許文献1、2参照)。このような装置の一例として、図5に示す装置は、ホッパ61内に一般廃棄物GWを投入し、ホッパ61の下部に連設されたダクト63内に産業廃棄物Iをドラム缶に封入したまま直接投入し、これらを破砕機62で破砕し、次に、ミキサー66で混練して高粘度廃棄物Wとしてから、圧送ポンプ67で焼却炉69へ圧送して焼却処理する。産業廃棄物Iの焼却の際、発生する熱は回収されて発電に利用されるが、焼却施設の稼動用電源程度に留まり、化石燃料の削減には貢献しないのが現状である。
【0004】
一方、近年、地球温暖化防止のため、単純焼却を止め、できるだけ効率的に可燃性廃棄物の熱量を回収する技術の開発が求められている。また、石油や石炭の価格が高騰しているため、コスト低減のためにも可燃性廃棄物の利用拡大が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3846254号公報
【特許文献2】特開2005−17267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、廃スラッジ等、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、可燃性廃棄物の燃料化システムであって、可燃性廃棄物を封入した容器を破砕する破砕装置と、該破砕装置によって破砕された破砕物と液体燃料とを混合する混合装置と、該混合装置によって混合された混合物から固形物を篩い分けする第1の篩分装置と、該第1の篩分装置の篩を通過した液部から金属片を除去する磁力選別装置と、該磁力選別装置によって金属片が除去された液部中のスラッジ塊を解砕し、分散させる解砕装置と、該解砕装置によって処理された液部から固形物を篩い分けする第2の篩分装置と、該第2の篩分装置によって篩い分けられた液部を燃料として貯留する貯留装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、破砕装置で可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、混合装置で破砕された容器の破片とともに可燃性廃棄物を撹拌し、液体燃料を途中で添加・混合して、容器に封入されていた高粘性の可燃性廃棄物の分散を促進し、その後、第1の篩分装置によって混合物を篩い分けた後、篩を通過した液部から磁力選別装置によって金属片を除去し、さらに解砕装置で液部中のスラッジ塊を解砕し、分散させるため、混合物中に溶剤に溶けにくいスラッジ塊が存在する場合や、スラッジ塊を溶解させる能力に乏しい廃油を上記液体燃料として用いて高粘性の可燃性廃棄物を希釈する場合でも、スラッジ塊を液中に分散させ、効率よく燃料化することができる。
【0009】
上記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記混合装置を、水平方向に延設された回転軸と、該回転軸とともに回転する複数の撹拌羽根と、前記液体燃料を該混合装置内の前記破砕物に添加するための供給口を有する液体燃料添加装置とを備えるように構成することができる。容器の破片に付着した高粘性物や、スラッジの塊に、最初は強いせん断力を与えて解砕し、供給口より液体燃料を破砕物に添加し、混合することで、容器破片に付着したスラッジと容器破片とを分離し、スラッジ塊を小さくし、最終的に容器破片のみを前記混合物から分離し易い状態とすることができる。
【0010】
上記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記第1の篩分装置を、回転スクリーンと、前記液体燃料を該回転スクリーン上の前記混合物に添加するための供給口を有する第2の液体燃料添加装置とを備えるように構成することができる。混合装置内において段階的に粘度を低下させながら撹拌した効果と、第2の液体燃料添加装置の効果により、容器の破片等の固体にスラリー状の付着物が残る場合でも、スラリー状の付着物を洗い流し、固体のリサイクルを容易にすることができる。さらに、液体添加装置では、廃溶剤やエマルジョン燃料等の液体燃料の他、界面活性剤を含む水を添加することができる。
【0011】
上記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記第1の篩分装置を、前記混合装置の排出シュート内を貫通するスクリューコンベアと、前記排出シュートを上下に仕切り、かつ該排出シュート内のスクリューの下面を覆うように設置された固定スクリーンと、前記排出シュートから外側に突出したスクリューの外側を囲むように該スクリューに固定された回転スクリーンと、前記液体燃料を前記スクリューの上方から該スクリューの搬送物に添加する第2の液体燃料添加装置とを備えるように構成することができる。この構成により、上述の篩分装置を用いた場合と同様に、混合装置内において段階的に粘度を低下させながら撹拌した効果と、第2の液体燃料添加装置の効果により、容器の破片等の固体にスラリー状の付着物が残る場合でも、スラリー状の付着物を洗い流し、固体のリサイクルを容易にすることができるとともに、スクリューコンベア等を斜めに設置することにより、分離した固体を高い位置に移動させながら固体表面を洗浄できるため、関連設備の高さを抑えることができ、設備コストを低減することができる。
【0012】
前記スクリューの軸中心から前記回転スクリーンまでの距離を、前記スクリューの軸中心から前記固定スクリーンまでの距離より大きくし、前記固定スクリーンの一部を前記回転スクリーンの内側に位置させることができる。これにより、固定スクリーンと回転スクリーンの乗り継ぎ部に固形物が引っ掛かってスクリューによる搬送が困難になることを防止し、安定した運転を確保することができる。
【0013】
また、前記第1の篩分装置によって篩い分けされた塊状物に含まれる金属片を除去するための第2の磁力選別装置を備えることができる。これにより、第1の篩分装置からの塊状物を鉄片等と、プラスチック、ゴム等とに分離し、後処理を容易に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明は、可燃性廃棄物の燃料化方法であって、可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、該容器の破砕によって得られた破砕物と液体燃料とを混合し、該混合によって得られた混合物を篩い分けして固形物と液部とに分離し、該液部から金属片を除去し、該金属片が除去された液部中のスラッジ塊を解砕し、分散させ、該解砕され、分散した液部から固形物を篩い分けし、該篩い分けして分離された液部を燃料として貯留することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、混合物中に溶剤に溶けにくいスラッジ塊が存在する場合や、スラッジ塊を溶解させる能力に乏しい廃油を液体燃料として用いて高粘性の可燃性廃棄物を希釈する場合でも、スラッジ塊を液中に分散させ、効率よく燃料化することができる。
【0015】
上記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記混合物を篩い分けする際に、該混合物に第2の液体燃料を添加することができる。これにより、容器の破片等の固体にスラリー状の付着物が残る場合でも、固体表面全体を洗い流すことで、固体のリサイクルを容易にすることができる。また、液体燃料の他、界面活性剤を含む水を添加することにより、分離された固体からのガス発生量を抑制し、固体の取り扱いを容易にすることができ、さらには、容器に水が混入している場合に、可燃性廃棄物と水との分離を防ぐことができる。
【0016】
また、前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記第1及び第2の液体燃料を、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料、有機物含有廃液及び再生油からなる群から選択される少なくとも一種以上とすることができる。これにより、可燃性廃棄物のみならず、廃溶剤等の廃棄物も同時に燃料化することができる。
【0017】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記燃料を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所に供給することができる。可燃性廃棄物に含まれている灰分は、セメント原料としてリサイクルされ、焼却灰等の二次廃棄物が発生しないため好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、廃スラッジ等、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図1の可燃性廃棄物燃料化システムの混合装置を示す概略断面図である。
【図3】本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】図4の可燃性廃棄物燃料化システムのスクリューコンベアを利用した第1の篩分装置を示す概略断面図である。
【図5】従来の廃棄物焼却装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システム(以下、適宜「燃料化システム」と略称する)の第1の実施形態を示し、この燃料化システム1は、大別して、ドラム缶搬送装置2〜4と、破砕装置6と、混合装置8と、第1の篩分装置9と、第1の磁力選別装置11と、解砕装置19と、第2の篩分装置20と、液体燃料タンク28と、混合タンク23、24と、製品(燃料)タンク26等で構成される。尚、以下の説明においては、可燃性廃棄物の一例として廃塗料スラッジが封入されたドラム缶33を処理するものとして説明する。一方、液体燃料タンク28には廃溶剤Cが貯留され、液体燃料添加装置7、10からは液体燃料として廃溶剤Cが供給されるものとする。
【0022】
ドラム缶搬送装置2〜4は、ローラコンベア2と、エレベータ3と、供給機4とで構成され、廃塗料スラッジを封入したドラム缶33をそのままの状態で供給室5に搬送するために備えられる。供給室5は、開閉可能な扉5a、5bを備え、防爆のため窒素置換される。
【0023】
破砕装置6は、供給室5に隣接して設けられ、破砕装置6の内部には、爆発防止のために窒素ガスが供給される。この破砕装置6は、投入されたドラム缶33を破砕するための2軸の回転破砕機6bと、その上方に位置し、ドラム缶33を斜め上方から回転破砕機6bに押し付けるプッシャ6aと、破砕不可能な物を外部に排出するための排出部6cが設けられる。尚、排出部6cから破砕不可能な物を排出する際には、破砕装置6の内壁を一部解放することができる。
【0024】
混合装置8は、破砕装置6からの破砕物Gと、液体燃料タンク28からポンプ29を介して供給された廃溶剤Cとを混合するために備えられ、モータ8cによって回転する回転軸8aに複数の撹拌羽根8bを備える。また、この混合装置8には、ポンプ29を介して供給された廃溶剤Cを混合装置8内の破砕物Gに添加するため、第1の液体燃料添加装置7が付設される。混合装置8によって混合された混合物Mは、排出シュート8jを介して第1の篩分装置9に供給される。
【0025】
上記混合装置8は、図2に示すように、円筒状の本体8d内に回転軸8aが水平方向に延設され、この回転軸8aに複数の撹拌羽根8bが取り付けられて矢印方向に回転する。本体8d内の内容物の粘度等に応じて内容物の滞留時間を調節可能なように、排出口に設けた堰8i(図1参照)の高さを任意に変更することができる。堰8iを動かすことにより、適切な滞留時間を確保したり、バッチ処置と連続処理との切り替えや、後段の装置トラブルの際に破砕を継続しながら混合装置からの排出を一時的に遅らせることが可能となる。
【0026】
また、混合装置8には、振動粘度計8eが設けられ、振動粘度計8eによって混合装置8の内容物の粘度を測定し、測定された粘度に応じて液体燃料タンク28から廃溶剤C等を混合装置8に添加することにより、容器の破片や異物へのスラッジの付着量を少なく抑えることができる。
【0027】
尚、特許文献2においても、図5に示すように、ミキサー66の負荷と、ミキサー66の内容物(高粘度廃棄物W)の重量とに基づいてミキサー66の内容物の粘度を検出し、検出された粘度に応じて、粘度調整剤タンク68から廃液L又はスラッジSをミキサー66内に供給するが、この文献に記載の技術は、高粘度廃棄物Wを取り扱うため、ミキサー66の負荷に対して容器の破片による影響が小さい。そのため、ミキサー66の負荷等に基づいて検出される内容物の粘度についても、破片による影響が小さい。しかし、本発明は、燃料としてそのまま利用することを目的とするため、混合装置8の内容物の粘度が低く、容器の破片の影響で負荷が安定せず、混合装置8の負荷等に基づいて混合装置8内の内容物の粘度を精度よく検出することができない。そこで、図2に示すように、振動粘度計8eを用いるとともに、振動粘度計8eは、固体衝突の衝撃に弱く、破片等の固体は、混合装置8内において撹拌羽根8bが上昇する側8fに集まるため、撹拌羽根8bが下降する側8gに外側に突出する突出部8hを形成し、突出部8h内に振動粘度計8eのセンサ部を配置する。
【0028】
図1に示す第1の篩分装置9は、排出シュート8jを介して供給された、混合装置8からの混合物Mから粗大な固形物を篩い分けるために備えられ、モータ9bによって回転する回転スクリーン9aを備えるトロンメル等が用いられる。この第1の篩分装置9には、廃溶剤Cを回転スクリーン9a上の混合物Mに添加するため、第2の液体燃料添加装置10が付設される。第1の篩分装置9によって篩い分けられた液部L1は、第1の磁力選別装置11に供給され、塊状物Sはコンベア12へ排出される。尚、第1の篩分装置9として、トロンメルに代えて、ロールスクリーン装置又は振動篩分装置を使用することもできる。
【0029】
第1の磁力選別装置11は、第1の篩分装置9の篩を通過した液部L1からボルト等の金属片MPを除去するために備えられ、除去された金属片MPは容器18に排出される。第1の磁力選別装置11を通過した液部L2は、解砕装置19に供給される。
【0030】
解砕装置19は、撹拌羽根19aを備え、第1の磁力選別装置11から供給された液部L2中のスラッジ塊を解砕し、分散させるために備えられる。この解砕装置19としては、パイプラインアジター等が用いられる。
【0031】
第2の篩分装置20は、解砕装置19によって処理された液部L2からプラスチックPL等の固形物を除去するために備えられ、除去されたプラスチックPL等は容器21に排出される。この第2の篩分装置20には、トロンメル、振動篩、ディスクスクリーン等が用いられ、目開きは5mm程度に設定される。
【0032】
混合タンク23、24は、ポンプ22を介して第2の篩分装置20から搬送された液部L3を一旦貯留し、品質を確保し、必要があれば成分を調製するため、液体燃料タンク28からポンプ30を介して搬送された廃溶剤Cを添加、混合して、製品としての燃料Fを得るために並設される。
【0033】
製品タンク26は、混合タンク23、24からポンプ25を介して搬送された燃料Fを貯留するために備えられる。
【0034】
一方、第1の篩分装置9の後段には、第1の篩分装置9から排出されてコンベア12によって搬送される塊状物Sに含まれる鉄片I等を除去するため、第2の磁力選別装置13が配置される。また、置場15は、第2の磁力選別装置13によって除去された鉄片I等を貯留するために備えられ、置場16は、第2の磁力選別装置13を通過したプラスチック、ゴム等の塊状物S’を貯留するために備えられる。
【0035】
次に、上記構成を有する燃料化システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0036】
受け入れた廃塗料スラッジ入りドラム缶33をローラコンベア2に供給すると、ドラム缶33は、ローラコンベア2、エレベータ3及び供給機4によって搬送され、そのまま供給室5に搬送される。ドラム缶33は、窒素置換される供給室5を経由して破砕装置6に落下して破砕される。
【0037】
破砕装置6の内部で、プッシャ6a及び回転破砕機6bによって破砕されることにより、ドラム缶33が裂け、内部の廃塗料スラッジが放出される。尚、プッシャ6a及び回転破砕機6bによっても細かく破砕されずに破砕装置6の出口を通過できない物が存在する場合には、回転破砕機6bを逆転させてさらに破砕する。これによっても破砕装置6の出口を通過しない物については、破砕装置6の内壁を一部解放し、排出部6cを介して外部に排出する。破砕装置6の内部には、窒素ガスが供給され、酸素濃度を低く抑えているため、ドラム缶33から廃塗料スラッジが放出されても爆発を防止することができる。
【0038】
次に、破砕装置6から排出された破砕物Gは、混合装置8に供給され、液体燃料タンク28からポンプ29及び第1の液体燃料添加装置7を介して供給された廃溶剤Cと混合される。ここで、図2に示すように、混合装置8の内容物の表面レベルを、堰8iの高さを調節することにより混合装置8内における内容物の滞留時間を適切に調整し、振動粘度計8eによって混合装置8の内容物の粘度を測定し、測定された粘度に応じて液体燃料タンク28から廃溶剤Cを混合装置8に添加することにより、ドラム缶33の破片に付着した高粘性物や、廃塗料スラッジの塊に、最初は強いせん断力を与えて解砕し、混合することで、容器破片に付着したスラッジと容器破片とを分離し、スラッジ塊を小さくし、最終的に容器破片のみを前記混合物から分離し易い状態とすることができる。廃溶剤Cとの混合により液状となった廃塗料スラッジは、破砕されたドラム缶33の破片等とともに、排出シュート8jを介して第1の篩分装置9に供給される。
【0039】
第1の篩分装置9に供給された混合物Mは、第1の篩分装置9内の回転スクリーン9aによって出口側に搬送されながら、液部L1と、塊状物Sとに篩い分けられる。回転スクリーン9aの目開きは、破砕装置6で破砕された破砕物Gの寸法から決定される。
【0040】
第1の篩分装置9のスクリーンの目開きは、本来は、液状燃料として効率的に燃焼させるべきスラッジと、同じサイズに破砕される容器裁断片とを分離するために重要である。例えば、破砕装置6の歯の厚さを55mmに設定した場合には、回転スクリーン9aの目開きを55mm程度、すなわち破砕装置6での設定と同程度に設定することが望ましい。破砕装置6が2軸でスクリーンを持たない構造で、歯の厚さより、歯同士が重なり合う長さの方が長いので、容器は歯の厚みより長く裁断される。また、容器は、折り畳まれた状態で裁断され裁断後に広がるため、大部分の容器裁断片は、歯の厚さと同じ目開きのスクリーンで混合物から分離される。スラッジ塊は、破砕装置6により細長く、或いは歯と同じ厚さの板状に裁断される。その後、スラッジが液体燃料に溶けない場合でも、混合装置8内で強制的に混合されることにより、スラッジ裁断片は、小さくなる。従って、容器裁断片は、破砕装置6の歯の厚さより大きく、スラッジ裁断片は、歯の厚さと同等以下の大きさが主となる。この目開きを破砕装置6の歯の幅に近い大きさに設定することにより、スラッジ塊と容器裁断片とが分離され易くなる。但し、ロストルを有する破砕装置を用いる場合には、回転スクリーン9aの目開きをロストルの目開きより小さくする必要がある。回転スクリーン9aの目開きの設定範囲は、大まかには、破砕装置6で設定された破砕物の寸法の50%〜150%である。
【0041】
第1の篩分装置9で分離された液部L1は、第1の篩分装置9の底部より排出シュート9cを介して第1の磁力選別装置11に搬送され、塊状物Sは、第1の篩分装置9の出口部からコンベア12上へ落下する。ここで、ドラム缶33の破片等の塊状物Sに廃塗料スラッジの高粘度の付着物が残る場合でも、混合装置8内で廃溶剤Cとともに撹拌・混合されることにより、塊状物Sの付着物は、第2の液体燃料添加装置10により洗い流され易く、処分費用のかからないリサイクル容易な性状の塊状物S(金属片等)を得ることができる。
【0042】
第1の篩分装置9の排出シュート9cから第1の磁力選別装置11に搬送された液部L1は、第1の磁力選別装置11でボルト等の金属片MPが除去され、除去された金属片MPは容器18に収容されて別途処理され、金属片MPが除去された液部L2は、解砕装置19に供給される。
【0043】
解砕装置19において、液部L2中に存在する溶けにくいスラッジ塊を解砕装置19において解砕し、液部L2中に分散させる。
【0044】
次に、解砕装置19からの液部L2を第2の篩分装置20に供給し、液部L2からプラスチックPL等の固形物を篩い分けする。固形物が除去された液部L3は、混合タンク23、24にポンプ22によって搬送され、混合タンク23、24において液体燃料タンク28からポンプ30を介して供給された廃溶剤Cとバッチ混合して品質を調整して安定化させ、製品としての燃料Fを得ることができる。尚、液部L3を、廃溶剤Cと混合せずに、そのまま製品とすることもできる。
【0045】
混合タンク23、24からポンプ25によって製品タンク26に燃料Fを搬送して貯留し、所定の品質を有する燃料Fとしてセメントキルンの窯前部、窯尻部、仮焼炉等で利用することができ、さらに、セメント製造工程以外の工程にも燃料として利用することができる。
【0046】
一方、第1の篩分装置9からコンベア12に排出された塊状物Sは、コンベア12での搬送中に、第2の磁力選別装置13によって鉄片I等が除去され、除去された鉄片I等は、置場15に貯留され、再利用される。また、第2の磁力選別装置13を通過したプラスチック、ゴム等の塊状物S’は、置場16に貯留し、液だれを防止するため木屑等と混合し、例えばセメントキルンの窯尻部等に投入して燃料として利用することができる。
【0047】
次に、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第2の実施の形態について、図3及び図4を参照しながら説明する。尚、以下の説明においても、可燃性廃棄物の一例として廃塗料スラッジが封入されたドラム缶33を処理するものとして、また、液体燃料タンク28には廃溶剤Cが貯留され、液体燃料添加装置7、10からは液体燃料として廃溶剤Cが供給されるものとする。
【0048】
この燃料化システム41は、上記燃料化システム1の第1の篩分装置9に代えて、第1の篩分装置42、スクリューコンベア43を設けたものであり、これら以外の構成については、上記燃料化システム1の構成と同一であるため、同一の構成要素について同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0049】
第1の篩分装置42は、混合装置8の排出シュート8jを介して供給された混合物Mから粗大な固形物を篩い分けるために備えられ、図4に示すように、ケーシング42f内に、モータ42eによって回転する回転軸42dと、スクリュー42gを備え、排出シュート8j内を貫通するスクリューコンベアと、排出シュート8jを上下に仕切るとともに、排出シュート8j内のスクリュー42gの下面を覆うように設置された固定スクリーン42aと、排出シュート8jから外側に突出したスクリュー42gの外側を囲むようにスクリュー42gに固定された回転スクリーン42bとを備え、供給口42cを介して廃溶剤Cをスクリュー42gの上方から搬送物(塊状物S)に添加する第2の液体燃料添加装置10(図3参照)が付設される。
【0050】
固定スクリーン42aは、例えば、破砕装置6の歯の厚さを55mmに設定した場合には、固定スクリーン42aの目開きを55mm程度、すなわち破砕装置6での設定と同程度に設定することが望ましい。上述の破砕装置6の構成により、容器は歯の厚みより長く裁断され、容器は、折り畳まれた状態で裁断され裁断後に広がり、大部分の容器裁断片は、歯の厚さと同じ目開きのスクリーンで混合物から分離される。スラッジ塊は、破砕装置6により細長く、或いは歯と同じ厚さの板状に裁断され、スラッジが液体燃料に溶けない場合でも、混合装置8内で強制的に混合されることにより、スラッジ裁断片は、小さくなる。従って、容器裁断片は、破砕装置6の歯の厚さより大きく、スラッジ裁断片は、歯の厚さと同等以下の大きさが主となる。この目開きを破砕装置6の歯の幅に近い大きさに設定することにより、スラッジ塊と容器裁断片とが分離され易くなる。但し、ロストルを有する破砕装置を用いる場合には、固定スクリーン42aの目開きをロストルの目開きより小さくする必要がある。固定スクリーン42aの目開きの設定範囲は、大まかには、破砕装置6で設定された破砕物の寸法の50%〜150%である。
【0051】
回転スクリーン42bの目開きは、固定スクリーン42aの目開き以下に設定される。スクリュー42gの軸中心42hから回転スクリーン42bまでの距離X1は、スクリュー42gの軸中心42hから固定スクリーン42aまでの距離X2より大きく形成され、固定スクリーン42aの一部が回転スクリーン42bの内側に位置するように構成される。これは、固定スクリーン42aと回転スクリーン42bの乗り継ぎ部に塊状物Sが引っ掛かってスクリュー42gによる搬送が困難になることを防止し、安定した燃料化システム41の運転を確保するためである。
【0052】
図3に示すスクリューコンベア43は、混合装置8の排出シュート8jの最下部にその下部が連結され、第1の篩分装置42の固定スクリーン42aを通過した液部L1を第1の磁力選別装置11に搬送する。
【0053】
次に、上記構成を有する燃料化システム41の動作について、上記第1の篩分装置42とスクリューコンベア43の動作を中心に説明する。尚、以下の説明においても、廃塗料スラッジを封入したドラム缶33を処理する場合を例にとって説明する。
【0054】
受け入れた廃塗料スラッジ入りドラム缶33をローラコンベア2、エレベータ3及び供給機4によって搬送し、供給室5を介して破砕装置6に落下させて破砕する。破砕装置6から排出された破砕物Gを混合装置8に供給し、液体燃料タンク28から第1の液体燃料添加装置7を介して供給された廃溶剤Cと混合し、撹拌することにより、廃塗料スラッジ塊を小さくし、最終的に可燃性廃棄物から容器破片のみを分離しやすい状態とすることができる。廃溶剤Cとの混合により液状となった廃塗料スラッジは、破砕されたドラム缶33の破片等とともに、混合物Mとして排出シュート8jを介して第1の篩分装置42に供給される。
【0055】
第1の篩分装置42に供給された混合物Mは、混合物Mに含まれる液部L1が固定スクリーン42aの開口部を通過して落下し、固定スクリーン42aの開口部を通過しなかった塊状物Sは、スクリュー42gによって搬送され、回転スクリーン42bへと移動する。この際、塊状物Sの付着物は、混合装置8内で廃溶剤Cとともに撹拌・混合された効果により、供給口42cから添加された粘度の低い廃溶剤Cによって洗い流され、処分費用の掛からないリサイクル容易な性状の塊状物S(金属片等)となり、固定スクリーン42aの開口部を通過して落下する。これにより、容器の破片等の粗大な固形物(塊状物S)のみが篩い分けられて排出シュート42iからコンベア12へ落下する。
【0056】
第1の篩分装置42からスクリューコンベア43によって第1の磁力選別装置11に搬送された液部L1は、第1の磁力選別装置11でボルト等の金属片MPが除去された後、解砕装置19において、液部L2中のスラッジ塊を解砕し、液部L2中に分散させる。
【0057】
次に、解砕装置19からの液部L2を第2の篩分装置20に供給し、液部L2からプラスチックPL等の固形物を篩い分けした後、篩い分けした液部L3を混合タンク23、24に搬送し、そのまま製品としたり、液部L3を液体燃料タンク28から供給された廃溶剤Cとバッチ混合して品質を調整して安定化させ、製品としての燃料Fを得ることができる。燃料Fは、製品タンク26に搬送し、セメントキルンの窯前部、窯尻部、仮焼炉等で利用したり、セメント製造工程以外の工程で利用することもできる。
【0058】
一方、第1の篩分装置42からコンベア12に排出された塊状物Sは、第2の磁力選別装置13によって鉄片I等を除去し、除去した鉄片I等を再利用することができ、第2の磁力選別装置13を通過したプラスチック、ゴム等の塊状物S’は木屑等と混合し、セメントキルンの窯尻部等に投入して燃料として利用することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態にかかる燃料化システム41も、第1の実施形態における燃料化システム1と同様に、廃スラッジ等これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化することができる。これに加え、燃料化システム41では、第1の篩分装置42にスクリューコンベア等を斜めに設置することにより、分離した固体を高い位置に移動させながら固体表面を洗浄できるため、関連設備の高さを抑えることができ、設備コストを低減することができる。
【0060】
尚、上記実施の形態においては、可燃性廃棄物の一例として、廃塗料スラッジを燃料化する場合について説明したが、廃塗料スラッジと同様に、粘度の高い廃溶剤蒸留残渣、廃グリス、オイルスラッジ、廃インク、廃白土等の廃スラッジについても同様に燃料化することができる。また、本発明によって、廃スラッジ以外にも、廃溶剤等の液状廃棄物を同様に処理することができ、粘度の高い可燃性廃棄物を処理する場合には、上述のように廃溶剤を添加して燃料化したが、廃溶剤等、粘度の低い可燃性廃棄物をドラム缶に封入した場合には、廃溶剤を添加する必要はない。
【0061】
また、上記実施の形態においては、取り扱いの困難な各種可燃性廃棄物をドラム缶に封入したものを処理して燃料化したが、ドラム缶に限らず、一斗缶、ペイント缶に封入したものであってもよく、 取り扱いの困難な各種可燃性廃棄物を密閉容器に封入したものであれば同様に処理することができ、可燃性廃棄物を封入したペイント缶等をさらにドラム缶に収容して上記システムで処理して燃料化することもできる。また、取り扱いの困難な各種可燃性廃棄物を封入したIBC(Intermediate Bulk Containers)容器ごと処理することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 可燃性廃棄物の燃料化システム
2 ローラコンベア
3 エレベータ
4 供給機
5 供給室
5a、5b 扉
6 破砕装置
6a プッシャ
6b 回転破砕機
6c 排出部
7 第1の液体燃料添加装置
8 混合装置
8a 回転軸
8b 撹拌羽根
8c モータ
8d 本体
8e 振動粘度計
8f 撹拌羽根上昇側
8g 撹拌羽根下降側
8h 突出部
8i 堰
8j 排出シュート
9 第1の篩分装置
9a 回転スクリーン
9b モータ
9c 排出シュート
10 第2の液体燃料添加装置
11 第1の磁力選別装置
12 コンベア
13 第2の磁力選別装置
15 置場
16 置場
18 容器
19 解砕装置
19a 撹拌羽根
20 第2の篩分装置
21 容器
22 ポンプ
23 混合タンク
24 混合タンク
25 ポンプ
26 製品タンク
28 液体燃料タンク
29 ポンプ
30 ポンプ
33 ドラム缶
41 可燃性廃棄物の燃料化システム
42 第1の篩分装置
42a 固定スクリーン
42b 回転スクリーン
42c 供給口
42d 回転軸
42e モータ
42f ケーシング
42g スクリュー
42h (スクリューの)軸中心
42i 排出シュート
43 スクリューコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物を封入した容器を破砕する破砕装置と、
該破砕装置によって破砕された破砕物と液体燃料とを混合する混合装置と、
該混合装置によって混合された混合物から固形物を篩い分けする第1の篩分装置と、
該第1の篩分装置の篩を通過した液部から金属片を除去する磁力選別装置と、
該磁力選別装置によって金属片が除去された液部中のスラッジ塊を解砕し、分散させる解砕装置と、
該解砕装置によって処理された液部から固形物を篩い分けする第2の篩分装置と、
該第2の篩分装置によって篩い分けられた液部を燃料として貯留する貯留装置とを備えることを特徴とする可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項2】
前記混合装置は、水平方向に延設された回転軸と、該回転軸とともに回転する複数の撹拌羽根と、前記液体燃料を該混合装置内の前記破砕物に添加するための供給口を有する液体燃料添加装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項3】
前記第1の篩分装置は、回転スクリーンと、前記液体燃料を該回転スクリーン上の前記混合物に添加するための供給口を有する第2の液体燃料添加装置とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項4】
前記第1の篩分装置は、前記混合装置の排出シュート内を貫通するスクリューコンベアと、前記排出シュートを上下に仕切り、かつ該排出シュート内のスクリューの下面を覆うように設置された固定スクリーンと、前記排出シュートから外側に突出したスクリューの外側を囲むように該スクリューに固定された回転スクリーンと、前記液体燃料を前記スクリューの上方から該スクリューの搬送物に添加する第2の液体燃料添加装置とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項5】
前記スクリューの軸中心から前記回転スクリーンまでの距離が、前記スクリューの軸中心から前記固定スクリーンまでの距離より大きく、前記固定スクリーンの一部が前記回転スクリーンの内側に位置することを特徴とする請求項4に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項6】
前記第1の篩分装置によって篩い分けされた塊状物に含まれる金属片を除去するための第2の磁力選別装置を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項7】
可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、
該容器の破砕によって得られた破砕物と液体燃料とを混合し、
該混合によって得られた混合物を篩い分けして固形物と液部とに分離し、
該液部から金属片を除去し、
該金属片が除去された液部中のスラッジ塊を解砕し、分散させ、
該解砕され、分散した液部から固形物を篩い分けし、
該篩い分けして分離された液部を燃料として貯留することを特徴とする可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項8】
前記混合物を篩い分けする際に、該混合物に第2の液体燃料を添加することを特徴とする請求項7に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の液体燃料は、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料、有機物含有廃液及び再生油からなる群から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項10】
前記燃料を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所に供給することを特徴とする請求項7、8又は9に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222425(P2010−222425A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69341(P2009−69341)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】