説明

可逆的停止ヌクレオチドを利用する配列決定法および遺伝型解析法

本発明は、2’位において修飾された可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いた標的核酸のヌクレオチド配列
を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月21日に出願された米国仮出願第60/752,827号、および2006年9月11日に出願された米国仮出願第60/844,041号の利益を主張するものであり、それらの開示内容は、ともに参照によって、その全体がすべての目的で組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大規模配列決定プロジェクトを効率的に行うためにDNA配列解析技術が発展してきた。しかし、コストを抑え、かつ十分な速さで行うことが望まれるハイスループット配列決定プロジェクトに適用する場合、現在利用できる技術には制約がある。例えば、古典的なサンガー(Sanger)ジデオキシ配列決定法では、DNA断片をゲル上で分析する工程が用いられる。この工程は、非常に大規模な多重化または並列処理には役立たないし、電気泳動中にバンド圧縮するという問題がある。配列決定の速度を上げ、コストを下げるため、その他の技術が開発されている。これらには、ハイブリダイゼーション配列決定法(例えば、BainsとSmith,J.Theoret.Biol.135:303−307,1988;Drmanacら、Genomics 4:114−128,1989;Khrapkoら、FEBS Lett.256:118−122,1989;Southern,WO10977,1989);ライゲーションおよび切断による並列シグネチャ配列決定法(例えば、Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.97:1665−1670,2000);可逆的鎖停止ヌクレオチドを用いる配列決定法(例えば、米国特許第5,902,723号および第5,547,83号;CanardとArzumanov,Gene 11:1(1994);およびDyatkina Arzumanov,Nucleic Acids Symp Ser 18:117(1987)参照);DNAリガーゼによる可逆的鎖停止法(例えば、米国特許第5,403,708号参照);時間分解配列決定法(例えば、Johnsonら、Anal.Biochem.136:192(1984)参照);およびパイロシーケンシング法(pyrosequencing(例えば、Ronaghiら、Anal.Biochem.242:84−89,1996)。
【0003】
パイロシーケンシング法は、合成による配列決定という概念に基づいている(例えば、米国特許第4,863,849号)。この技術は、大量並列シーケンシングプロジェクトに適用することができる。例えば、自動化されたプラットホームを用いて、何十万ものシーケンシング反応を同時に行うことが可能である。合成による配列決定法は、多数の配列を同時に生じさせてから、その後の段階でそれらの特徴を調べるのではなく、伸長する鎖の中に各塩基が取り込まれるのをリアルタイムで観察する方法が用いられる点で、古典的なジデオキシ配列決定法とは異なる。この方法は、各シーケンシング反応という面では遅いが、数十万から数百万の反応を並行して行う場合に、各サイクル毎に大量の配列情報を生じさせるために利用することができる。このような利点にもかかわらず、パイロシーケンシング法には、なお限界がある。例えば、多数の同一の分子を取り込んだ後の非線形的シグナル反応のせいで、ホモポリマー領域で取り込まれたヌクレオチドの数を判定するのが困難である。その他、可逆的ターミネーターを用いない固相アレイ上における合成による配列決定法には同様の短所がある。
【0004】
最近、3’−O−アリル修飾されたヌクレオチドアナログを用いた化学的に可逆的なターミネーターを用いる配列決定法が記載されている(Ruparelら、Proc.Natl.Acad.Sci.102:5932−5937,2005)。その方法では、ヌクレオチドアナログは、3’−OH基をキャップするアリル部分と、光切断可能なリンカーを介してウラシルの5’位に結合したフルオロフォアとを含む。このヌクレオチドが、DNAポリメラーゼの基質となる。DNA鎖への取り込み、およびリンカーの光切断の後、Pd触媒反応を用いて、このアリル基を除去すると、ポリメラーゼ反応が再び開始される。このように、これらのアナログは、合成反応による配列決定において、可逆的ターミネーターとして働くことができる。その他の可逆的ターミネーターが、例えば、米国特許第5,872,244号;第6,232,465号;第6,214,987号;第5,808,045号;第5,763,594号、および第5,302,509号、ならびに米国特許出願公開第20030215862号に記載されている。3’−OHブロッキング型可逆的ターミネーターには、取り込みがよくない、脱ブロッキング効率が悪い、および脱ブロッキングに用いられる条件が面倒であるなど、いくつか短所がある。相反応から生じる問題点およびバックグランドシグナルを最小限に抑えるために、可逆的ターミネーターによるハイスループット配列決定を行うために非常に望ましい方法では、ほぼ完璧な取り込み、連鎖停止、および脱ブロッキング効率が示される。
【0005】
最近、ただ1個の塩基を取り込むために、一定の核酸重合酵素の基質として使用することができる、2’修飾された(例えば、2’−リン酸)ヌクレオシド5’三リン酸が記載されている(例えば、米国特許出願公開第2005/00373898号および第2005/0037991号参照)。本発明は、可逆的停止シーケンシング反応において2’ターミネーターヌクレオチドを用いる、新規の配列決定法および遺伝子型解析法を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば、可逆的ターミネーターとなる2’修飾型ヌクレオチドを用いて核酸配列を決定する方法を提供する。ある実施形態において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを伸長中の核酸鎖に取り込ませると、検出可能なシグナルとなる。検出可能なシグナルを検出する方法の例には、中でも、例えば、発光シグナルをもたらす共役酵素カスケードによって遊離されるピロリン酸を検出する方法、取り込まれたヌクレオチド上の蛍光標識(複合添加に対して切断可能)を検出する方法、末端リン酸標識ヌクレオシドを検出する方法、ポリリン酸/ホスファターゼ戦略によって検出する方法などがある。取り込まれたヌクレオチドを修飾基または保護基を除去する活性で処理すると、核酸鎖の更なる伸長がもたらされる。本発明は、さらに、本発明の可逆的停止法を用いて、例えば、配列決定や遺伝子型解析など、例えば、配列を決定するための成分を含むキット、およびそのような配列解析を行うためのシステムを含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は、鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
(a)少なくとも1つの鋳型核酸を、少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つの2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド(例えば、2’−一リン酸−3’−ヒドロキシルヌクレオチドなど)、および、少なくとも鋳型核酸の部分配列に相補的な、少なくとも1つのプライマー核酸とインキュベートし、それによって、ポリメラーゼがプライマー核酸を伸長させて、プライマー伸長産物の3’末端に、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを取り込む、少なくとも1つのプライマー伸長産物を生じさせる工程;
(b)プライマー伸長産物の3’末端にある2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位から保護基(例えば、リン酸など)を除去する工程;および
(c)工程(b)の前および/またはその工程中に、プライマー伸長産物中にある2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを同定し、それによって、同定された2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドから鋳型核酸の塩基配列の少なくとも一部を決定することが可能になり、少なくとも鋳型核酸のその一部を配列決定する工程。ある実施形態において、工程(b)は、プライマー伸長産物を、2’位にある保護基(例えば、リン酸など)を除去する活性とインキュベートする工程を含む。本方法は、一般的に、工程(a)〜(c)を1回以上繰り返すことを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、2’位の修飾はリン酸または修飾リン酸であって、それは、例えば、ホスファターゼ、エキソヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、ポリヌクレオチドキナーゼ、ホスホジエステラーゼ、またはホスホジエステラーゼとホスファターゼを組み合わせたものなどの酵素を用いて酵素的に除去することができる。ヘビ毒ジエステラーゼなどのホスホジエステラーゼ酵素が用いられるある実施形態においては、ターミネーターヌクレオチドは、例えば、α−ホスホロチオエート修飾などを含むように修飾されている。
【0009】
典型的な実施形態において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは、図1A〜1Hに示した構造物からなる群から選択される。
【0010】
ある実施形態において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは、蛍光色素、発光性分子、または放射性同位元素など、少なくとも1つの標識成分によって標識されている。いくつかの実施形態では、標識成分を、切断可能なリンカーを介して塩基のところで、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドに付着させることができ、本方法は、リンカーを切断する工程をさらに含む。標識は、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの糖残基もしくは2’修飾位置にあるリン酸、またはポリリン酸部位の末端リン酸など、さまざまな位置に付着させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法において用いられる2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは標識されていない。
【0011】
いくつかの実施形態において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは、蛍光性レポーターとクエンチャーとの組み合わせなど、供与体と受容体を含む2つの標識成分に結合している。特定の実施形態において、供与体と受容体は、蛍光共鳴エネルギー転移を起こすこともできる。
【0012】
本発明は、クエンチャー成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの塩基に結合しており、レポーター成分がリン酸に結合しているが、ただし、このリン酸は、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドのαリン酸ではないという実施形態を含む。例えば、このリン酸は、ポリリン酸上の末端のδ位またはγ位のリン酸、βリン酸、または2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドに存在するリン酸であってもよい。
【0013】
ある実施形態においては、1つの標識成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドに存在するリン酸に結合しており、別の標識成分が、別のリン酸、例えば、γリン酸などに結合している。いくつかの実施形態では、これらの標識成分には、例えば、レポーター成分およびクエンチャー成分が含まれる。
【0014】
本発明の方法は、反応混合物が、それぞれが異なった塩基を有し、異なった標識成分で標識されているために、各ヌクレオチドについて異なったシグナルを発生させる4種類の異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む実施形態を含む。ある実施形態において、本明細書に記載の方法で利用される2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは標識されていない。別の実施形態は、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを取り込む際に発生するピロリン酸を検出することを含む検出工程を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、配列を決定するため、例えば、再配列決定、デノボ配列決定、遺伝子型解析などを行うためのキットであって、少なくとも1つの2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位の修飾を除去するための試薬を含むキットを含む。例えば、本キットは、ホスファターゼ、エキソヌクレアーゼ、ホスホジエステラーゼ、エンドヌクレアーゼIV、およびポリヌクレオチドキナーゼからなる群から選択される試薬を有することができる。そのようなキットは、さらにポリメラーゼを含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、本キットに含まれる2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは標識に付着している。本キットは、任意で、少なくとも1つの伸長可能なヌクレオチドを含むことができる。
【0017】
本発明は、また、以下の工程を含む遺伝子型解析法を提供する。
a)プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、さらに、前記プライマーが鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下で合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液の中で、鋳型核酸をインキュベートする工程;
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在するか否かを判定する工程;
c)該シグナルが存在しない場合には、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち別の1つを含む、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いて工程a)およびb)を繰り返す工程;
d)前記伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程;
e)工程a)〜d)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の一部の配列を決定する工程;および
f)鋳型核酸の該一部の配列を、多型性部位の公知の配列と比較する工程。
【0018】
更なる態様において、本発明は、以下の装置を含む、核酸の配列決定を行うためのシステムを提供する。
鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液に入れてインキュベートする反応用チャンバーを含むサーマルサイクラーであって、プライマーを鋳型核酸にアニールさせ、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長させて伸長産物を生成させる条件を作り出すのに効果的なサーマルサイクラー;
試薬を添加および除去するための入口と出口をもつ該反応用チャンバー;および
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在することを検出するのに効果的な検出装置。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、以下の化学式からなる群から選択される、標識された2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを提供する。
【化1】

ある実施形態において、本明細書に記載の2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは標識されていない。
【0020】
また、本発明は、以下の工程を含む、鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法を提供する。
a)該鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液の中で、プライマーが該鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下でインキュベートする工程;
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在することを判定する工程;
c)伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程;
d)工程a)〜c)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の少なくとも一部の配列を決定する工程。
【0021】
いくつかの実施形態では、それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが異なった塩基を含む、複数の異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを単一の反応混合液で用いて工程(a)を行う。例えば、伸長産物に2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれたことを示すシグナルが検出されるまで、それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを連続して付加することができる。あるいは、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを異なった標識成分で標識する実施形態では、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを同時に付加することができる。
【0022】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法を提供する。
a)プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、さらに、前記プライマーが鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下で合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液の中で、鋳型核酸をインキュベートする工程;
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在するか否かを判定する工程;
c)該シグナルが存在しない場合には、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち別の1つを含む、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いて工程a)およびb)を繰り返す工程;
d)前記伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程;および
e)工程a)〜d)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の少なくとも一部の配列を決定する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、例えば、核酸鎖の伸長を停止することができる、2’OH位に修飾を有する修飾ヌクレオチドを用いて、配列決定を行う方法を提供する。そして、さらに鎖が伸長できるよう、2’OH位の修飾を、一般的には次の工程で除去し、新たに付加されたヌクレオチドが伸長できるようにする。修飾された2’−ターミネ−ターヌクレオチドが取り込まれると、直接または間接的に検出可能なシグナルが最終的にもたらされる。ターミネーターが取り込まれるか、修飾が除去されたときに、検出可能なシグナルを生成することができる。この方法は、例えば、所望の核酸の配列を決定するハイスループット配列解読法や、遺伝子型解析などの応用法に用いることができる。
【0024】
定義
「2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド」(2’−修飾型可逆的ターミネーターとも呼ばれることがある)という用語は、ヌクレオチドの糖成分の2’位に除去可能な保護基を含むヌクレオチドアナログを意味する。「除去可能な保護基」とは、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれた後に核酸の伸長を少なくとも部分的に停止させる化学物質の基または部分であるが、それを除去すると、核酸分子の伸長が回復できるものを意味する。保護基が存在することによって伸長が停止するが、保護基を切除した後に伸長が回復される限り、保護基の性質は本発明にとって重大な意味を持たない。除去可能な保護基の例はリン酸基である。その他の代表的な保護基も本明細書に記載されている。2’−ターミネーターヌクレオチドの例には、2’−一リン酸−3’−ヒドロキシル−5’−三リン酸ヌクレオシドおよび2’−一リン酸−3’−ヒドロキシル−5’−二リン酸ヌクレオシドが含まれる。本発明において用いられる2’−ターミネーターヌクレオチドは、例えば、米国特許出願公開第20050037991号および第20050037398号に記載されている。
【0025】
保護基を除去するための具体的な手段は、当然ながら、除去可能な保護基に依存するが、これも本発明には重大な意味を持たない。一般的に、除去可能な保護基は、酵素的、化学的、または光化学的な手段によって除去される。
【0026】
「核酸」という用語は、直線状または分枝状に共有結合しているヌクレオチドを含むヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、2’−ターミネーターヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチドなど)およびポリマー(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA−RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遺伝子、cDNA、アプタマー、アンチセンス核酸、干渉RNA(RNAi)、分子指標、核酸プローブ、ペプチド核酸(PNA)、PNA−DNA複合体、PNA−RNA複合体などを含むもの)を意味する。核酸は、一般的に一本鎖または二本鎖であり、通常、リン酸ジエステル結合を含むが、ただし、本明細書に概略が記載されているように、場合によっては、例えば、以下のものなどであるが、それらに限定されない代替的な骨格をもつことができる核酸アナログも含まれる:ホスホルアミド(Beaucageら(1993)Tetrahedron 49(10):1925)およびそこに記載されている参考文献;Letsinger(1970)J.Org.Chem.35:3800;Sprinzlら(1977)Eur.J.Biochem.81:579;Letsingerら(1986)Nucl.Acids Res.14:3487;Sawaiら(1984)Chem.Lett.805;Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470;およびPauwelsら(1986)Chemica Scripta 26:1419)、ホスホロチオエート(Magら(1991)Nucleic Acids Res.19:1437;および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:2321)、メチルホスホネート結合(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press(1992)参照)、およびペプチド核酸の骨格および結合(Egholm(1992)J.Am.Chem.Soc.114:1895;Meierら(1992)Chem.Int.Ed.Engl.31:1008;Nielsen(1993)Nature 365:566;Carlssonら(1996)Nature 380:207参照)。これらの参考文献は、各々が参照によって、本明細書に組み込まれる。その他のアナログ核酸には、正に荷電した骨格を有するもの(Denpcyら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:6097);非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、および第4,469,863号;Angew(1991)Chem.Intl.Ed.English 30:423;Letsingerら(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4470;Letsingerrら(1994)Nucleoside&Nucleotide 13:1597;第2章および第3章,ASC Symposium Series 580,“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”,Ed.Y.S.SanghviおよびP.Dan Cook;Mesmaekerら(1994)Bioorganic&Medicinal Chem.Lett.4:395;Jeffsら(1994)J.Biomolecular NMR 34:17;Tetrahedron Lett.37:743(1996));および非リボース骨格、例えば、米国特許第5,235,033号および第5,034,506号、ならびに第6章および第7章,ASC Symposium Series 580,Carbohydrate Modifications in Antisense Research,Ed.Y.S.SanghviとP.Dan Cookに記載されたものなど。これらの参考文献はそれぞれ参照によって組み込まれる。1つ以上の炭素環式糖を含む核酸も、核酸の定義に含まれる(Jenkinsら(1995)Chem.Soc.Rev.pp169−176参照、これは参照によって組み込まれる)。いくつかの核酸アナログも、例えば、Rawls,C&E News Jun.2,1997 page35に記載されており、これは参照によって組み込まれる。
【0027】
核酸中に一般的に見られる、これら天然型ヘテロ環塩基(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、およびウラシル)に加えて、核酸アナログも、非天然型ヘテロ環塩基を有するもの含み、本明細書にその多くが説明されているか、あるいは言及されている。特に、数多くの非天然型塩基が、さらに、例えば、Seelaら(1991)HeIv.Chim.Acta 74:1790,Greinら(1994)Bioorg.Med.Chem.Lett.4:971−976、およびSeelaら(1999)HeIv.Chim.Acta82:1640に記載されており、これらはそれぞれ参照によって組み込まれる。さらに説明すれば、融解温度(TM)修飾因子として作用する、ヌクレオチド中で使用される特定の塩基が任意で含まれる。例えば、これらのいくつかには、7−デアザプリン(例えば、7−デアザグアニン、7−デアザアデニンなど)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、プロピニル−dN(例えば、プロピニル−dU、プロピニル−dCなど)などが含まれる。例えばSeelaに1999年11月23日に発行された、“SYNTHESIS OF 7−DEAZA−2’−DEOXYGUANOSINE NUCLEOTIDES”という名称の米国特許第5,990,303号を参照のこと。これは参照によって組み込まれる。その他の代表的なヘテロ環塩基には、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2−アミノプリン、2,6−ジアアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、およびキサンチンの8−アザ誘導体;アデニン、グアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、およびキサンチンの7−デアザ−8−アザ誘導体;6−アザシトシン;5−フルオロシトシン;5−クロロシトシン;5−ヨードシトシン;5−ブロモシトシン;5−メチルシトシン;5−プロピニルシトシン;5−ブロモビニルウラシル;5−フルオロウラシル;5−クロロウラシル;5−ヨードウラシル;5−ブロモウラシル;5−トリフルオロメチルウラシル;5−メトオキシメチルウラシル;5−エチニルウラシル;5−プロピニルウラシルなどが含まれる。一定の事例において、「塩基」という用語は、環外アミンが保護基で修飾されている場合、保護された塩基を含む意味である。
【0028】
「ヌクレオシド」は、糖部分(例えば、リボース糖など)、糖部分の誘導体、または糖部分の機能的等価物(例えば、アナログ、例えば、炭素環)と共有結合している塩基すなわち塩基性基(例えば、少なくとも1個の単素環、少なくとも1個のヘテロ環、少なくとも1個のアリール基など)を含む核酸成分を意味する。例えば、ヌクレオシドが糖部分を含む場合、その塩基は、一般的に、その糖成分の1’位に結合している。上記したように、塩基は天然型(例えば、アデニン(A)またはグアニン(G)などのプリン塩基、チミン(T)、シトシン(C)、またはウラシル(U)などのピリミジン塩基)、または非天然型(例えば、7−デアザプリン塩基、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン塩基、プロピニル−dN塩基など)であってもよい。ヌクレオシドの例には、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシド、炭素環ヌクレオシドなどが含まれる。
【0029】
「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドのエステル、例えば、ヌクレオシドのリン酸エステルを意味する。例えば、ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖成分の5’位に共有結合している1個、2個、3個、またはそれ以上のリン酸基を含むことができる(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)。
【0030】
「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2個のヌクレオチド、一般的には4個以上のヌクレオチド、さらに一般的には11個以上のヌクレオチドを含む核酸を意味する。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、通常、そのオリゴヌクレオチドの最終的な機能および用途など、さまざまな因子に応じて変わる。オリゴヌクレオチドは、任意には、任意の適当な方法、例えば、適当な配列のクローニングおよび制限酵素消化、または当分野において周知の方法の中でもとりわけ、Narangら(1979)Meth.Enzymol.68:90−99のホスホトリエステル法;Brownら(1979)Meth.Enzymol.68:109−151のホスホジエステル法;Beaucageら(1981)Tetrahedron Lett.22:1859− 1862のジエチルホスホロアミダイト法;Matteucciら(1981)J.Am.Chem.Soc.103:3185−3191のトリエステル法;自動合成法;または米国特許第4,458,066号の固相支持体法などの方法による直接的な化学合成法などによって調製される。また、これらの参考文献は参照によって組み込まれる。
【0031】
「プライマー」は、一般的には、例えば、ヌクレオチドが適当な反応条件下における熱安定ポリメラーゼのような、ヌクレオチドを取り込む生体触媒を用いて、鋳型核酸とハイブリダイズして鎖の延長または伸長を可能にすることができる核酸である。プライマー核酸は、一般的に、天然または合成のオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドなど)である。任意で、他のプライマー核酸長も利用されるが、一般的には15から35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー核酸は通常、より低温を利用して、鋳型核酸と十分に安定したハイブリッド複合体を形成する。鋳型核酸とハイブリダイズして伸長するには、鋳型核酸の部分配列に少なくとも部分的に相補的なプライマー核酸で一般的には十分である。プライマー核酸は、所望であれば、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的な技術によって検出できる標識を取り込ませることによって標識することができる。例えば、有用な標識には、放射性同位元素、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(ELISA法で広く使用されているものなど)、ビオチン、または抗血清またはモノクローナル抗体を利用できるハプテンおよびタンパク質が含まれる。これらの標識またはその他の標識の多くが、本明細書においてさらに説明され、および/または、そうでなければ当分野において公知である。また、プライマー核酸は、単に、鋳型に依存せずにヌクレオチドを取り込む生体触媒の基質を提供することもできる。
【0032】
「鋳型核酸」は、プライマー核酸がハイブリダイズして伸長することができる核酸を意味する。したがって、鋳型核酸は、プライマー核酸に少なくとも部分的に相補的な部分配列を含む。鋳型核酸は、基本的には如何なる起源のものであってもよい。例えば、鋳型核酸は、任意で、例えば、培養微生物、非培養微生物、複合生物学的混合物、組織、血清、プール血清もしくはプール組織、複数種集団(multispecies consortia)、古代の、化石化した、またはその他の生物の残骸、環境分離株、土壌、地下水、廃棄物施設、深海環境などに由来するか、そこから単離される。さらに、鋳型核酸は、任意で、例えば、個々のcDNA分子、cDNAのクローンセット、cDNAライブラリー、抽出されたRNA、天然のRNA、インビトロ転写されたRNA、同定済みまたは未同定のゲノムDNA、クローニングされたゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、酵素によって断片化されたDNAまたはRNA、化学的に断片化されたDNAまたはRNA、物理的に断片化されたDNAまたはRNAなどを含むか、これらに由来する。また、当分野において周知の方法を用いて、鋳型核酸を化学合成することもできる。さらに、鋳型核酸は、任意で、遺伝子の少なくとも一部に相当するか、それと相補的である。本明細書において、「遺伝子」は、生物学的機能に関連するDNAの任意のセグメントを意味する。したがって、遺伝子は、コード配列と、任意には、その発現に必要な調節配列とを含む。また、遺伝子は、任意で、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する非発現DNA部分も含む。
【0033】
「伸長可能なヌクレオチド」は、伸長可能なヌクレオチドがヌクレオチドポリマーに取り込まれると、例えば、ヌクレオチドを取り込む生体触媒によって触媒される反応で、少なくとも1つの別のヌクレオチドを付加するか共有結合させることができるヌクレオチドを意味する。伸長可能なヌクレオチドの例には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド、ならびに、例えば、標識を有するそれらの誘導体が含まれる。伸長可能なヌクレオチドは、一般的には、伸長可能なヌクレオチドの糖成分の3’位に別のヌクレオチドを付加することによって伸長される。
【0034】
「伸長不可能な」ヌクレオチドまたは「ターミネーター」ヌクレオチドは、核酸に取り込まれると、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドを取り込む生体触媒によって、核酸がさらに伸長するのを抑制するか、さらに伸長する速度を実質的に低下させるヌクレオチドを意味する。
【0035】
「四リン酸ヌクレオチド」は、4つのリン酸基を含むヌクレオチドを意味する。四リン酸ヌクレオチドの例には、2’−一リン酸−5’−三リン酸ヌクレオチドおよび3’−一リン酸−5’−三リン酸ヌクレオチドが含まれる。
【0036】
「負に荷電した保護基」は、少なくとも1個の負電荷を含む保護基であって、この負電荷が、例えば、取り込まれるヌクレオチドの静電反発力によって付着させられているヌクレオチドの非伸長特性の少なくとも一因となっている保護基を意味する。例えば、本発明のヌクレオチドの2’位にある負電荷保護基は、任意で、生理学的pH範囲内でイオン化すると少なくともの1個の負電荷を含むリン酸基、カルボキシ基、または本明細書で言及されているその他の基を含む。ある実施形態において、複数の因子、例えば、保護基の電荷およびサイズなどが、本発明のヌクレオチドの非伸長特性の一因となりうる。
【0037】
「完全長配列」は、参照配列と少なくとも実質的に同数のヌクレオチドを含む核酸配列、または参照配列と少なくとも部分的に相補的である核酸配列を意味する。本発明のある実施形態において、例えば、伸長したプライマー核酸は、鋳型核酸またはその他の参照配列の完全長配列に相補的である。
【0038】
「部分配列」または「断片」は、核酸配列の一部分であって、部分配列または断片が、その配列の連続したヌクレオチドを含む核酸配列の一部分を意味する。
【0039】
「遺伝子型」は、細胞もしくは被検体、または細胞または被検体の集団の遺伝子構成の全部または一部を意味する。例えば、遺伝子型には、所定の遺伝子座に存在するかゲノム内に分布している特定の突然変異および/または対立遺伝子(例えば、一塩基多型(SNP)などの多型)が含まれる。
【0040】
「付着」または「結合」という用語は、共有結合、イオン結合、化学吸着、物理吸着、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない相互作用を意味する。
【0041】
「リンカー」または「スペーサー」は、共有結合的または非共有結合的に(たとえば、イオン結合的になど)化合物または置換基を、例えば、固形支持体、別の化合物、または基などに付着させる化学的成分を意味する。例えば、リンカーは、任意で、標識(例えば、蛍光色素、放射性同位元素など)を2’−ターミネーターヌクレオチドなどに付着させる。リンカーは、一般的に二官能性の化学的成分であり、ある実施形態において、それらは、切断可能な付着を含み、例えば、熱、酵素、化学薬品、電磁波などによって切断して、例えば、固形支持体や別の化合物などから物質または化合物を放出させることができる。リンカーを慎重に選択すれば、化合物およびアッセイ法の安定性に適合する適当な条件下で切断を行うことが可能になる。通常、リンカーには、例えば、化学種同士を結合させたり、そのような種同士間の最小の距離、またはその他の空間関係を保存したりする以外に、特別な生物活性はない。しかし、リンカーの構成成分は、三次元構造、正味電荷、疎水性など、結合した化学種のある特性に影響を与えるように選択することができる。リンカー分子のさらなる説明は、例えば、Lyttleら(1996)Nucleic Acids Res.24(14):2793、Shchepinoら(2001)Nucleosides,Nucleotides,&Nucleic Acids 20:369、Doroninaら(2001)Nucleosides,Nucleotides,&Nucleic Acids 20:1007、Trawickら(2001)Bioconjugate Chem.12:900、Olejnikら(1998)Methods in Enzymology 291:135、Pljevaljcicら(2003)J.Am.Chem.Soc.125(12):3486、Wardら、米国特許第4,711,955号、Stavrianopoulos、米国特許4,707,352号、およびStavrianopoulos、米国特許第4,707,440号に記載されており、これらはそれぞれ参照によって組み込まれる。
【0042】
「標識」は、分子に(共有結合的か非共有結合的に)付着しているか、付着する能力のある成分であって、その分子についての情報(例えば、分子についての記述的情報、同定するための情報など)を提供するか、提供することができる成分を意味する。標識の例には、蛍光標識、微弱蛍光標識、非蛍光標識、比色標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性標識、質量変更基(mass−modifying groups)、抗体、抗原、ビオチン、ハプテン、および酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼなど)が含まれる。さらに例えば、標識には、レポーター成分およびクエンチャー成分も含まれる。
【0043】
「固形支持体」は、例えば、プライマー核酸や鋳型核酸などの化学的成分によって誘導体化されるか、さもなければ、それらに付着させることができる固体物質を意味する。固形支持体の例には、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、ファイバー、ウィスカー、コーム、ハイブリダイゼーションチップ、膜、単結晶、セラミック層、自己組織化膜などが含まれる。
【0044】
「溶液中で」という語句は、少なくとも反応物が固形支持体に付着していない反応条件を意味する。例えば、本発明の一定の伸長反応は、鋳型核酸、プライマー核酸、2’ターミネーターヌクレオチド、伸長可能なヌクレオチド、およびヌクレオチドを取り込む生体触媒を溶液中で一緒にインキュベートすることを含む。
【0045】
「切断」という用語は、別の化合物または物質から、または固形支持体から物質または化合物を放出させて、例えば液相法によって化合物を解析できるようにするプロセスを意味する。例えば、Wellsら(1998)“Cleavage and Analysis of Material from Single Resin Beads,”J.Org.Chem.63:6430−6431を参照。これは参照によって組み込まれる。
【0046】
緒言
本発明は、例えば、可逆的ターミネーターとして役立つ2’修飾ヌクレオチドを用いて核酸配列を決定する方法を提供する。ある実施形態において、伸長中の核酸鎖に2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを取り込むと、検出可能なシグナルが生じる。いくつかの例示的実施形態では、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれた後、例えば、2’位から修飾が除去されると、検出可能なシグナルが生成される。さらに、取り込まれたヌクレオチドを、修飾を除去する活性で処理すると、核酸鎖がさらに伸長する可能性がもたらされる。
【0047】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド
一定の2’修飾型ターミネーターヌクレオチドが当分野において公知である。このヌクレオチドは、例えば、米国特許出願公開第20050037991号および第20050037398号に記載されている。ターミネーターヌクレオチドは、天然型塩基、またはそのような塩基のアナログをもつことができる。さらに、この用語は、5’−三リン酸アナログ、5’−四リン酸アナログおよび5’−五リン酸アナログも包含する。
【0048】
本発明の修飾ヌクレオチドは、本明細書において保護基と呼ばれ、ヌクレオチド鎖の伸長を阻害する、糖の2’位の修飾を有する。ターミネーターヌクレオチド内の糖の2’位における修飾は、糖成分の2’位に取り込まれている、任意の数の保護基、例えば、負に帯電した保護基、嵩高い(bulky)保護基などであってもよい。本発明で用いられるターミネーターヌクレオチドの保護基は除去可能であるために、ターミネーターは可逆的ターミネーターとなる。保護基は、酵素的、化学的、またはその他の手段で除去することができる。
【0049】
保護基は、例えば、酵素的、化学的、または光化学的な手段で除去することができる。切断可能な結合の例には、酵素、光、還元剤、酸化剤、脱水剤などによって切断することができるリンカーが含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態において、2’修飾物はリン酸である。したがって、2’修飾は、リン酸を除去する活性を用いて容易に除去される。しばしばこの活性は酵素活性、例えば、ホスファターゼ、エキソヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、またはポリヌクレオチドキナーゼである。いくつかの例では、例えば、標識が2’−リン酸に付着している場合、ホスホジエステラーゼを単独で用いるかホスファターゼと併用して、リン酸基を除去することができる。これは、ホスホロチオエート結合を取り込んで、核酸骨格の分解を阻害しつつ行うことができる。
【0051】
他の実施形態において、上記した通り、保護基は、酵素、化学物質(例えば、還元剤、酸化剤、脱水剤など)によって切断することができる結合を介して、または光切断可能な結合を介して保護基を2位に付着している。使用可能な光切断可能な成分には、2−ニトロベンジル成分、α置換型2−ニトロベンジル成分(例えば、1−(2−ニトロフェニル)エチル成分)、3,5−ジメトキシベンジル成分、チオヒドロキサム酸、7−ニトロインドリン成分、9−フェニルキサンチル成分、ベンゾイン成分、ヒドロキシフェンアシル成分、NHS−ASA成分などが含まれる。光切断可能なリンカーは、米国特許公開第2003/0099972号にさらに説明されている。
【0052】
また、化学的に切断可能なリンカーを用いて、2’位に保護基を付着させることも可能である。切断剤には、リンカーに存在するジスルフィド結合を切断する還元剤など化学剤が含まれる。核酸にとって有害ではない条件下で可逆的な任意の化学修飾を用いることができる。したがって、弱酸または弱塩基、還元剤、弱酸化剤、熱、触媒などを用いて容易に逆転することができる化学修飾が適当である。例えば、適当な置換によって、エステル、アリルエーテル、トリチルエーテル、ベンジルエーテルはすべて、化学的に可逆な修飾剤として作用することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、保護基は、図1に示されたもののうちの1つから選択される。これらの保護基は公知の技術を用いて除去することができる。例えば、図1Aに示された保護基は、例えば、酵素的に、あるいはX=NHの場合には弱酸または熱で除去することができる。図1Bに例示された保護基は、例えば、フッ化物イオン処理によって除去することができる。図1Cに例示された保護基、例えば、トリチル基または置換型トリチル基などは、例えば、弱酸または熱で除去することができる。図1Dに示された例示的置換は、例えば、還元剤を用いるジスルフィド切断によって除去することができる。図1Eに示された2’修飾は、例えば、パラジウムを用いて除去することができる(例えば、Turroら参照)。図1Fに例示された2’保護基は、エステラーゼ、プロテアーゼなどの薬剤、および弱酸または弱塩基による処理などを用いて除去することができる。図1Gに示されているような2’修飾は、例えば、光化学的に除去することができる。図1Hに示されたもののような保護基は、例えば、触媒還元によって除去することができる。
【0054】
2’修飾ターミネーターヌクレオチドは一般的に、公知の方法を用いて合成する。合成プロトコルの例は、例えば、米国特許公開第20050037991号に記載されている。
【0055】
標識
標識成分
いくつかの実施形態において、本発明の2’修飾型ターミネーターヌクレオチドは、核酸分子の中にヌクレオチドが取り込まれたことの検出を可能にするための標識系の標識または成分を含む。このシグナルは、鎖にヌクレオチドが取り込まれるとシグナルが検出される標識ストラテジーに基づいて発生させるか、または核酸鎖に付加されている2’修飾型ヌクレオチドから保護基を除去するときに発生させることができる。このような標識は、ヌクレオチドが核酸鎖に取り込まれているか否かを示すシグナルの発生をもたらす。ヌクレオチドが取り込まれているか否かの指標であるシグナル発生という概念には、直接または間接のシグナル発生、およびヌクレオチドが取り込まれると起きるシグナル発生を含み、例えば、γリン酸が除去されるとシグナルをもたらし、取り込まれたヌクレオチドを検出するための、取り込み後の更なる工程、例えば、2’OH基にある保護基を除去する工程を含む状況、または塩基上に位置しているリンカーを光切断または化学切断することを用いる実施形態が含まれる。
【0056】
2’修飾型ターミネーターヌクレオチドは、放射性標識、質量改変基、蛍光成分、発光成分、酵素成分など、シグナルを発生させる検出可能な任意の標識で標識することができる。典型的な実施形態において、標識は蛍光標識である。
【0057】
本発明に関して、標識は、複数の成分、例えば、一対の成分が互いに相互作用してシグナル発生を調節する標識系も意味する。例えば、これらは、供与体/受容体の対が含まれ、これらの分子が近接している場合、供与体の蛍光発光によって受容体が刺激される。したがって、2つの分子が離れている場合は、近接している場合と比較して、供与体および/または受容体によって発せられたシグナルは異なっている。供与体成分、一般的にはフルオロフォアは第1の波長でエネルギーを吸収し、第2の、より長い波長でエネルギーを放出する。受容体は、供与体の発光スペクトルに重複する吸収スペクトルを有するフルオロフォア、発色団、またはクエンチャーなど、別の成分を意味する。供与体と受容体の間の効率的なエネルギー伝達は、例えば、供与体の発光スペクトルと受容体の吸収スペクトルの重複および供与体と受容体間の距離によって決まる。
【0058】
標識として用いることができる蛍光成分は、通常、当業者に周知のものである。これらには、フルオレセイン系色素(Integrated DNA Technologies,Inc.,Coralville,IA)、ポリハロフルオレセイン系色素(ABI,Foster City,CA)、ヘキサクロロフルオロセイン系色素(ABI,Foster City,CA)、クマリン系色素(Invitrogen−Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)、ローダミン系色素(GE Healthcare)、シアニン系色素、オキザジン系色素、チアジン系色素、スクアライン系色素、キレート化ランタニド系色素、およびBODIPY(登録商標)系色素(Molecular Probes,Inc.)が含まれる。蛍光成分のその他の例は、米国特許第6,406,297号;第6,221,604号;第5,994,063号;第5,808,044号;第5,880,287号;第5,556,959号、および第5,135,717号に見出すことができる。任意で利用することができる、さらなる検出可能な標識には、例えば、ジメチルアクリジノン(DDAO)、4−メチルウンベリフェロン、6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェロンなどが含まれる。上記したように、標識として用いることができる蛍光成分は、他にも数多くある中で、例えば、Invitrogen−Molecular Probes(Eugene,OR)から購入することができる。
【0059】
いくつかの実施例において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを蛍光−クエンチャー対(例えば、供与体−受容体対)で標識する。クエンチャー成分には、例えば、フルオレセイン系色素、ポリハロフルオレセイン系色素、ヘキサクロロフルオレセイン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、シアニン系色素、オキザジン系色素、チアジン系色素、スクアライン系色素、キレート化ランタニド系色素、BODIPY(登録商標)系色素、低蛍光性クエンチャー成分、および非蛍光性クエンチャー成分が含まれる。ある実施形態において、非蛍光性クエンチャー成分は、BHQ(商標)系色素(国際特許公開WO01/86001号に記載されたクエンチャー、BHQ−I、BHQ−2、BHQ−3など)(BioSearch Technologies,Novato,CA)、またはDabcyl(Integrated DNA Technologies,Inc.)であってもよい。その他の特異的なクエンチャー成分の例には、TAMRA(N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン)(Invitrogen−Molecular Probes, Inc.)、DABCYL(4(4’ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)、アイオワブラック(Iowa Black)(商標)(Integrated DNA Technologies,Inc.)、Cy3(商標)、Cy3.5(商標)、Cy5(商標)、またはCy5.5(商標)(GE Healthcare)などが含まれる。
【0060】
用いられる蛍光成分とクエンチャー成分との組み合わせの例には、例えば、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)フルオロフォア成分およびCy5(商標)クエンチャー成分;FAM、TET、JOE、HEX、オレゴングリーン、およびBHQ−1クエンチャー成分からなる群から選択されたフルオロフォア成分;FAM、TAMRA、ROX、Cy3、Cy3.5、CALレッド、レッド640、およびBHQ−2クエンチャー成分からなる群から選択されるフルオロフォア成分;Cy5、Cy5.5、およびBHQ−3クエンチャー成分からなる群から選択されるフルオロフォア成分が含まれる。
【0061】
標識付着部位
標識(標識成分)は、核酸鎖に取り込まれる2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの検出をもたらす適当な部位に付着させることができる。ヌクレオチドに標識を付着させると、シグナルの除去ももたらされるため、核酸鎖に取り込まれた標識からのシグナルを除去することができる。例えば、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドに単一の標識が付着している場合には、その標識は、切断可能なリンカーを介して塩基または糖に付着させることができる。伸長した核酸鎖に取り込まれた標識からのシグナルが検出されたところで、リンカーを切断して標識を除去することができる。別の実施形態においては、2’修飾位置に存在するリン酸に標識成分を付着させる。そうすれば、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドから2’修飾を除去する場合、例えば、ホスホジエステラーゼおよび/またはホスファターゼによって標識成分を除去することができる。
【0062】
1つ以上の成分が標識系に含まれる場合、その成分は、2’修飾型ターミネーターヌクレオチド上の適当な部位に付着させる。例えば、標識系は供与体−受容体対、例えば、蛍光色素レポーター分子とクエンチャーを含むことができる。本節で考察された例では、標識成分の例として蛍光レポーターおよびクエンチャーが用いられている。同様の標識構成を他の多成分標識系に用いることができると、当分野では理解されている。
【0063】
いくつかの実施形態において、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドは、塩基または糖に結合しているクエンチャー成分、およびリン酸に結合しているレポーターを有することができる。一般的に、リン酸は、αリン酸以外のヌクレオチド上の任意のリン酸である。したがって、レポーターは、2’−リン酸修飾基に付着した糖の2’位に位置することができる。他の実施形態では、レポーターは、好ましくはγリン酸に結合している。このレポーターはβリン酸にも結合することができ、四リン酸または五リン酸の2’修飾型ターミネーターヌクレオチドを用いる実施形態においては、レポーターは、付加されたリン酸の1つに付着させることも可能である。
【0064】
一定の応用において、代替的構成を用いることも望ましいかもしれない。例えば、切断可能なリンカーおよびリン酸に結合したクエンチャーによって2’修飾型ターミネーターヌクレオチドの塩基に、蛍光レポーターを結合させてもよい。このような構成は、例えば、本発明のシーケンシング反応が、それぞれ異なった色の蛍光レポーターで標識された4種類の2’修飾型ターミネーターヌクレオチドを用いる場合には有用であり得る。クエンチャーがβリン酸またはγリン酸上に存在し、その結果、4種類のアナログ全部は存在しているが、シグナルはほとんどか全く発生しない。核酸鎖にこれらのアナログのうちの1つを取り込ませると、取り込まれたヌクレオチドからのシグナルを検出することができる。切断可能なリンカーの切断によって色素を除去した後、2’−保護基を除去する。
【0065】
別の実施形態において、1つの標識成分、例えば、蛍光性のレポーターまたはクエンチャーが、2’修飾型ターミネーターヌクレオチドの2’位に存在するリン酸に結合しており、第1の標識成分の実体に応じた、対応するレポーターまたはクエンチャーである第2の標識成分が、αリン酸以外の第2のリン酸、例えば、γリン酸またはβリン酸、または四リン酸2−修飾型ターミネーターヌクレオチドまたは五リン酸2−修飾型ターミネーターヌクレオチド内の他のリン酸位置に結合している。
【0066】
標識は、公知の方法を用いて2’−修飾型ターミネーターヌクレオチドに結合させることができる。切断可能な結合の例には、光、還元剤、酸化剤、脱水剤などによって切断することができるリンカーが含まれる。米国特許出願公開第20050037398号に、例が記載されている。
【0067】
例えば、レポーターを、γリン酸もしくはβリン酸、または合成の過程で、もしくは修飾型ヌクレオチドが核酸鎖に取り込まれたところで除去される他の成分、例えば、修飾型ヌクレオチド上の保護基などに結合させるためには、非切断型リンカーも用いられる。このような結合には、公知の方法が用いられる。
【0068】
ヌクレオチドまたはその他の有機分子に標識を付着させるための手引きは、当分野において容易に入手できる(例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,(1996)Academic Press,San Diego,Calif,pp.40−55,643−71;Garman,1997,Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London.;Beaucageら,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley&Sons,New York,N.Y.(2000);Handbook of Fluorescent Probes and Research Products,9th ed.,Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregon.(2002);およびPierce Applications Handbook and Catalog 2003−2004,Pierce Biotechnology,Rockford,111.(2003)参照)。
【0069】
2’−修飾型ターミネーターヌクレオチドを用いるシーケンシング反応
本発明の2’−修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いるシーケンシング反応は、2’修飾基を除去して鎖伸長の終止を逆転させる工程を含む。したがって、本発明は、伸長反応で伸長しているヌクレオチド鎖をリアルタイムでモニターすることを提供する。このようなシーケンシング反応は、さまざまな方式で行うことができる。
【0070】
1つの実施形態において、4種類のヌクレオチド(この用語は天然型ヌクレオチドdATP、dGTP、dCTP、およびdTTPのアナログを含む)はすべて2’修飾型ターミネーターヌクレオチドとして存在し、それぞれが識別可能な標識で標識されている。特定のヌクレオチドの取り込みを、例えば、蛍光レポーター/クエンチャー系を用いて検出することができる。ヌクレオチドが取り込まれたところで、シグナルを除去することができる。鎖の伸長を継続させるために、2’位のブロッキング修飾を除去することもできる。
【0071】
典型的な実施形態において、配列決定工程を、一度に1種類の2’修飾型ターミネーターヌクレオチドを用いて連続して行う。この方法では、核酸鋳型、適当なプライマー、ポリメラーゼ、およびその他の反応成分を含む反応混合物には、1種類の2’修飾型ターミネーターが含まれる。この反応は、プライマーが核酸鋳型とハイブリダイズして伸長することができる条件下で行なわれる。2’修飾型ターミネーターが取り込まれるのをモニタリングする。ヌクレオチドが取り込まれていれば、シグナルが検出され、2’修飾を除去して伸長を継続させる。いくつかの実施形態において、2’修飾が除去される前か、それと同時に、シグナルを検出する。修飾されたターミネーターが取り込まれていなければ、第2の2’修飾型ターミネーター(別の塩基に対応している)を用いる。4種類の2’修飾型ヌクレオチドのうちの1つを検出するまで、これらの工程を繰り返す。修飾基を除去した後、同じ連続解析法を用いて鋳型核酸内の次の位置を調べる。
【0072】
4種類のヌクレオチドを連続的に付加する実施形態において、同一の標識、また異なった標識でヌクレオチドを標識することができる。
【0073】
2’−修飾型ターミネーターヌクレオチドが取り込まれたことは、数ある方法の任意のものによって検出することができる。いくつかの実施形態では、パイロシーケンシング法におけるように、ヌクレオチドが取り込まれると放出されるピロリン酸を検出することによってヌクレオチドを決定する。ピロリン酸に基づく検出法を用いた合成による配列決定法は、米国特許第4,971,903号およびHyman,Anal.Biochem.174:423(1988);Rosenthal,国際特許出願公開第761107号(1989);Metzkerら、Nucl.Acids Res.22:4259(1994);Jones,Biotechniques 22:938(1997);Ronaghiら、Anal.Biochem.242:84(1996)、Nyrenら、Anal.Biochem.151:504(1985)に記載されている。ATPスルフリラーゼ活性の検出は、例えば、KaramohamedとNyren,Anal.Biochem.271:81(1999)に記載されている。これらの方法は、DNAポリメラーゼ反応の過程で放出されたピロリン酸(PPi)を検出することに基づくものである。伸長中の核酸鎖にヌクレオシド三リン酸を付加すると、PPiが放出される。これを、スルフリラーゼ酵素によってPPiをATPに変換させた後、蛍ルシフェラーゼによって可視光を発生させて定量的に測定することができる。この機構に基づいたいくつかのアッセイ系が記載されている(例えば、WO93/23564、WO 98/28440、およびWO98/13523;ならびにRonaghiら、Science 281:363(1998)参照)。
【0074】
別の実施形態において、例えば、蛍光標識などの標識の存在を検出することによって、取り込みを検出することができる。使用する検出法は、標識に応じて選択される。このように、検出工程では、光の放出、放射活性などを検出することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明に従った配列解析は、核酸の1つ以上の位置の配列を決定することが望まれる、さまざまな用途のために行うことができる。これらの用途には、再配列決定、一塩基多型(SNP)遺伝子型解析、分子ハプロタイプ解析、対立遺伝子頻度の決定、メチル化解析、および混合遺伝子型検出などが含まれる。
【0076】
例えば、遺伝子型解析は、プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合物中で鋳型核酸をインキュベートすることによって、連続的な工程で行うことができる。プライマーは、核酸の特定の領域を標的するように設計されている。この反応をモニターして、2’修飾型ターミネーターヌクレオチドの取り込みを示すシグナルが存在するか否かを決定する。このシグナルが存在しない場合、異なった、2’修飾型ターミネーターヌクレオチド、すなわち、異なった塩基を有する2’修飾型ターミネーターヌクレオチドを用いて次の工程を行う。2’修飾型ヌクレオチドが取り込まれたところで、修飾基を除去して鎖の伸長を継続させることができる。
【0077】
当然のことながら、いくつかの用途においては、4種類の天然型塩基すべてに対応する2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いて、鋳型配列を調べる必要はないかもしれない。例えば、ヌクレオチドのホモポリマー鎖を再配列決定して残基数を測定するために再配列決定するという用途では、ホモポリマー鎖内の反復塩基に相補的な、たった1種類の2’修飾型可逆的ターミネーターを用いて反復サイクルを行うことができる。
【0078】
シーケンシング反応は任意の数の方式で行うことが可能である。例えば、溶液中で反応を行うことができる。別の実施形態においては、固相、例えば、マイクロアレイなどの上、またはマイクロビーズ上で反応を行うことができるが、その場合、DNA鋳型は固形支持体に結合している。有用な種類の固形支持体は、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、ウィスカー、ファイバー、コーム、ハイブリダイゼーションチップ、膜、単結晶、セラミックス、および自己集合性単層などである。核酸は、カップリング剤を用いた結合などの共有結合によって、または静電相互作用、水素結合、もしくは抗体−抗原結合などの非共有結合によって、あるいはこれらを併用することによって固形支持体に付着させることができる。核酸を固形支持体に付着させる方法には多様なものが知られている。例えば、PCT出願第US98/21193号、第US99/14387号、第US98/05025号;およびWO98/50782参照。
【0079】
核酸鋳型は、5’末端または3’末端付近で表面に直接的に付着させることができる。また、鋳型は、オリゴヌクレオチド、例えば、オリゴヌクレオチドプライマーを介して付着させることも可能である。例えば、いくつかの用途では、表面に付着したオリゴヌクレオチドプライマーを鋳型にアニーリングして架橋させるマイクロアレイフォーマット上でシーケンシング反応を行うことが望ましいかもしれない。あるいは、溶液中で鋳型をオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせてから、例えば、このオリゴヌクレオチドプライマー上に存在するリンカーを介して、固形支持体に付着させることも可能である。アレイは離れた解析可能な位置からなっているため、存在する標的ポリヌクレオチドはそれぞれ、修飾型2’可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれたことを示す一連の異なったシグナルを発生する。例えば、米国特許第6,787,308号および米国特許出願公開第20020164629号に記載されているような単一分子マイクロアレイなど、数多くの異なったマイクロアレイフォーマットを用いることができる。これらの参考文献は、核酸を固体表面に付着させる上でのさらに例示的な手引きを提供する。
【0080】
配列決定は、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド、例えば、4種類の天然型ヌクレオチドのそれぞれに対応するターミネーターヌクレオチドを、同時または連続して付加して行うことができる。例えば、ヌクレオチドを同時に付加する場合、鋳型DNA内に存在するヌクレオチドと対合する、付加されたターミネーターヌクレオチドが鎖に取り込まれて鎖の伸長を停止させる。2’−保護基が除去されると、さらなる鎖の伸長が可能になる。ヌクレオチドが鎖に取り込まれるか、または次の工程で、例えば、保護基が除去されるか、リンカーを介して塩基上に存在する標識が除去されると、検出を行うことが可能になる。いくつかの実施形態では、2’−保護基を、取り込まれなかったヌクレオチドもすべて除去するバッファーまたは洗浄液内で除去することができる。
【0081】
別の実施形態において、ヌクレオチドは連続的に付加される。
【0082】
システム
また、本発明は、核酸の配列を決定するためのシステムも提供する。このようなシステムは、2’可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む、少なくとも1個の容器を含む。一般的には、このシステムは、例えば、並行して配列決定反応を行うために、複数の容器を含んでいる。また、このシステムは、容器内の温度を調節するために、容器に操作可能に接続されている、少なくとも1個の熱調節装置(例えば、熱サイクル装置)、および/または(c)液体を容器へ、および/または容器から移動させる、少なくとも1個の液体移動用コンポーネント(例えば、自動式ピペッターなど)も含む。そのいくつかがマイクロ流体装置として具体化されている熱サイクル装置、および本発明のシステム内で使用するのに適しているか適合可能な、さまざまな液体移動用装置が、当分野において公知である。このシステムは、任意で、容器内で発生する検出可能なシグナルを検出するために、容器に操作可能に接続されている、少なくとも1個の検出装置をさらに含む。このシステムは、一般的には、容器内の温度を調節するために熱調節装置、および/または容器へ、および/または容器から液体を移動させるための液体移動用コンポーネントに操作可能に接続されている、少なくとも1個の制御装置をさらに含む。
【0083】
本発明のシステムは、さまざまなシグナル検出装置を含む。検出用コンポーネントは、2’可逆的ターミネーターヌクレオチドが取り込まれたことを示すシグナルを検出する。例えば、検出装置は、任意で、複数の光学シグナルをモニタリングするが、これらのシグナルは、位置が「リアルタイム」結果に相当する。レポーター分子の活性を読み取ることができる任意の方法を用いて、シーケンシング反応の過程で発生したシグナルを検出することができる。これらのシステムで使用するのに適したシグナル検出装置は、例えば、蛍光、燐光、放射能、質量、濃度、pH、電荷、吸光度、屈折率、発光、温度、磁性などを検出する。例えば、蛍光は、任意で、例えば、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、高感度CCD、光ダイオード、アバランシェフォトダイオード、光学センサー、走査式検出装置などの検出装置またはセンサーによって検出される。検出装置の例は、例えば、Skoogら、Principles of Instrumental Analysis,5.sup.th Ed.,Harcourt Brace College Publishers(1998)、およびCurrell,Analytical Instrumentation:Performance Characteristics and Quality,John Wiley & Sons,Inc.(2000))に記載されている。このような検出装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)など、さまざまな商業的供給源から容易に購入することができる。
【0084】
また、本発明のシステムは、一般的には、コンポーネントの動作を制御するために、システムの1つ以上のコンポーネント(例えば、分析用コンポーネント、合成用コンポーネント、熱調節装置、液体移動用コンポーネント、検出装置など)に操作可能に接続された制御装置を含む。制御装置は、通常、例えば、検出装置からのデータを受け取るための、容器内の温度を達成および/または調節するための、または選択された容器に出入りする液流を発生および/または調節するためなどの分離型または一体型のシステムコンポーネントとして含まれている。制御装置および/またはその他のシステムコンポーネントは、任意で、適当にプログラムされたプロセッサー、コンピューター、デジタル素子、またはその他の情報機器(必要ならば、アナログからデジタル、またはデジタルからアナログへの変換器を含む)と結合しており、予めプログラムされている指示、またはユーザーが入力した指示に従ってこれらの機器の作業を指示したり、これらの機器からデータおよび情報を受けたり、また、この情報を解釈処理してユーザーに報告するよう機能する。適当な制御装置は当分野において周知されており、さまざまな商業的供給源から入手することができる。
【0085】
任意の制御装置またはコンピューターは、任意で、しばしば、陰極線管(「CRT」)ディスプレー、フラットパネルディスプレー(例えば、アクティブマトリックス液晶ディスプレー、液晶ディスプレーなど)などのモニターを含む。コンピューター回路はしばしば筐体内に取付けられ、マイクロプロセッサー、メモリー、インターフェース回路など、多数の集積回路チップを含む。筐体も、任意で、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、書き込み可能なCD−ROMなどの高容量リムーバブルドライブ、およびその他の共通の周辺装置を含む。キーボードまたはマウスなどの入力用機器は、任意で、ユーザーからの入力を可能にする。これらのコンポーネントは、さらに以下で説明する。
【0086】
コンピューターは、一般的には、一組のパラメーターフィールドへの、例えば、GUIにおけるユーザー入力という形式、または予めプログラムされた、例えば、さまざまな異なった特定の作業に関して予めプログラムされた命令という形式で、ユーザーの命令を受け取るための適当なソフトウェアを含む。次に、このソフトウェアは、これらの命令を、所望の作業を実行するために、1つ以上の制御装置の操作を指示するための適当な言語に変換する。そして、コンピューターは、例えば、システムに内蔵されたセンサー/検出装置からのデータを受け取り、そのデータを解釈して、プログラミングに従って、ユーザーが理解できるフォーマットでデータを提供するか、または、例えば、重量計などから受け取った液体の重量データに応じて流量調節装置を調節するなど、そのデータを用いて更なる制御装置の命令を開始する。
【0087】
キット
また、本発明は、配列決定のためのキットも提供する。そのようなキットは、少なくとも1つの2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含むことができる。2’修飾型ターミネーターヌクレオチドは、任意で、少なくとも1つの標識(例えば、ラジオアイソトープ、蛍光色素、質量改変基など)を含む。いくつかの実施形態において、本キットは、ターミネーターヌクレオチド上に存在するブロッキング修飾を除去するための試薬をさらに含む。また、本発明のキットは、以下のものの1つ以上など、追加的な成分も含むことができる:伸長可能なヌクレオチド、反応を行うためのポリメラーゼ、バッファー、またはシグナルを検出するのに必要な酵素成分もしくは試薬。
【0088】
いくつかの実施形態において、キットは、以下に示すような、1つ以上の標識された2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む。
【化2】

【実施例】
【0089】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、例示目的ためだけのものであり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を制限することを意図するものではないと解されるべきである。また、本明細書に記載された実施例および実施形態に照らして、さまざまな改変または変更が当業者に示唆され、それらも、本出願の精神および範囲、ならびに添付された特許請求の範囲に含まれるものと解されるべきである。
【0090】
実施例1:標識された四リン酸ヌクレオチドの合成
2’−リン酸標識(TAMRA)−ウリジン、四リン酸を合成する方法の机上実施例を以下に示す。示されているように、この方法は、固相合成技術および簡単に入手できる出発物質を利用するものであるが、このスキームは、僅かな変更を加えて液相合成にも簡単に合わせることができる。同様に、このスキームは、僅かな変更を加えて、他の色素標識ヌクレオチドを合成するために簡単に適合させることができる。例えば、このスキームの最初の工程におけるTAMRA−cpgを、適当に保護および修飾された反応性水酸基含有色素成分に選択的に代えることができる。ウリジン3’−tBDシリルCEDホスホロアミダイト(ANP−5684、Chemgenes,Wilmington,MA)を3’−TamraCPG(Glen Research,Sterling,VA)に結合させる。5’−DMT保護基を除去した後、5’−OH基を、サリチルホスホロクロリダイトおよびピロリン酸と反応させ、その後、酸化し(LudwigとEckstein,J.Org.Chem.1989,54,631−635)、支持体から切り離して所望の化合物を得る。
【化3】

【0091】
実施例2:標識された四リン酸ヌクレオチドの合成
2’−リン酸標識され、2’−リン酸標識−末端リン酸標識されたヌクレオシドポリリン酸を合成するためのより一般的な方法の机上実施例を以下に示す。示されているように、この方法は、固相合成技術および簡単に入手できる出発物質を利用するものであるが、このスキームは、僅かな変更を加えて液相合成にも簡単に合わせることができる。例えば、このスキームの最初の工程における3’−アミノ修飾剤C7 CPGを、反応性水酸基をもつ、適当に保護されたアミノ−アルキル−リンカーに選択的に代えることができる。ヌクレオシド3’−tBDシリルCEDホスホロアミダイト(例えば、ANP−5684、Chemgenes,Wilmington,MA)を3’−アミノ修飾剤C7 CPG(Glen Research,Sterling,VA)に結合させる。この結合工程の後、必要に応じて、当分野において公知である適当な試薬を選択することにより、2’−リンをP=O、P=S、P=Se、またはP:BH3に修飾してもよい。次の3つの工程で、5’−DMT保護基を除去し、得られた5’−OH基を、サリチルホスホロクロリダイトと反応させ、このサリチル基をピロリン酸によって置換する(LudwigとEckstein,J.Org.Chem.1989,54,631−635)。あるいは、例えば、トリポリリン酸などのポリリン酸を別の修飾に用いることができる。ここでも、また、αリン酸を、必要に応じて、当分野において公知である適当な試薬を選択することによって、2’−リンをP=O、P=S、P=Se、またはP:BH3に修飾することができる。次の工程では、末端リン鎖標識を行うために、環状ポリリン酸を、加水分解するか、または求核基をもつ色素もしくは他の標識と反応させることができる。最後に、この分子を支持体から切り離し、脱保護し、NHSエステルなどの反応性色素誘導体と反応させる。
【化4】

【0092】
実施例3:標識された四リン酸ヌクレオチドの合成
切断可能な2’−リン酸標識され、2’−リン酸標識−末端リン酸標識されたヌクレオシドポリリン酸を合成するためのより一般的な方法の別の机上実施例を以下に示す。示されているように、この方法は、固相合成技術および簡単に入手できる出発物質を利用するものであるが、このスキームは、僅かな変更を加えて液相合成にも簡単に合わせることができる。例えば、このスキームの最初の工程における3’−チオール−修飾剤C3 S−S CPGを、反応性水酸基をもつ、適当に保護されたアルキル−チオール−リンカーに選択的に代えることができる。ヌクレオシド3’−tBDシリルCEDホスホロアミダイト(例えば、ANP−5684、Chemgenes,Wilmington,MA)を3’−チオール−修飾剤C3 S−S CPG(Glen Research,Sterling,VA)に結合させる。この結合工程の後、必要に応じて、当分野において公知である適当な試薬を選択することにより、2’−リンをP=O、P=S、P=Se、またはP:BH3に修飾してもよい。次の3つの工程で、5’−DMT保護基を除去し、得られた5’−OH基を、サリチルホスホロクロリダイトと反応させ、このサリチル基をピロリン酸によって置換する(LudwigとEckstein,J.Org.Chem.1989,54,631−635)。あるいは、例えば、トリポリリン酸などのポリリン酸を別の修飾に用いることができる。ここでも、また、αリン酸を、必要に応じて、当分野において公知である適当な試薬を選択することによって、2’−リンをP=O、P=S、P=Se、またはP:BH3に修飾することができる。次の工程では、末端リン鎖標識を行うために、環状ポリリン酸を、加水分解するか、または求核基をもつ色素もしくは他の標識と反応させることができる。最後に、この分子を支持体から切り離し、脱保護し、ジスルフィド結合を還元して反応性チオール機能を生じさせる。これを、マレイミド誘導体などのチオール反応性色素誘導体と反応させることができる。
【化5】

【0093】
実施例4:四色同時配列決定法
4種類すべての塩基について四色同時配列決定する一般的な方法の机上実施例を説明する。ある実施形態において、本発明は、4種類のヌクレオチドを同時に用いて、一本鎖鋳型に沿ってプライマー伸長を連続して繰り返し行うことによって核酸配列を決定する方法を提供する。ある実施形態では、フローセル中または固体支持体上に固定されたビーズに付着した鋳型上でシーケンシング反応が行われる。この繰り返しサイクルは、伸長、検出、標識除去、および脱保護という連続した工程を含む。ある実施形態において、本方法は、切断可能なリンカーを介して塩基を標識された2’ターミネーターヌクレオチドを利用するが、ここでは、4種類の各塩基について唯一の識別可能な標識(例えば、フルオロフォア)が使用される。以下に示す例示的スキームでは、伸長は、取り込まれる塩基に特異的な、取り込みによって発生する蛍光シグナルを伴う。この標識は、光化学的または化学的な切断によって除去され、また、保護基は、その後ホスファターゼで処理することによって除去される。
【化6】

【0094】
実施例5:四色同時配列決定法
4種類すべての塩基について四色同時配列決定する一般的な方法の机上実施例を説明する。ある実施形態において、本発明は、4種類のヌクレオチドを同時に用いて、一本鎖鋳型に沿ってプライマー伸長を連続して繰り返し行うことによって核酸配列を決定する方法を提供する。ある実施形態では、フローセル中または固体支持体上に固定されたビーズに付着した鋳型上でシーケンシング反応が行われる。このサイクルは、伸長、検出、標識除去、および脱保護という連続した工程を含む。ある実施形態において、本方法は、切断可能なリンカーを介して2’リン酸を標識された2’−ターミネーターヌクレオチドを利用するが、ここでは、4種類の各塩基について唯一の識別可能な標識(例えば、フルオロフォア)が使用される。以下に示す例示的スキームでは、伸長は、取り込まれる塩基に特異的な、取り込みによって発生する蛍光シグナルを伴う。この標識および保護基は、その後、ホスホジエステラーゼおよびホスファターゼで処理することによって除去される。必要であれば、リン酸骨格をホスホロチオエート結合で修飾する。
【化7】

【0095】
実施例6:四色同時配列決定法
4種類すべての塩基について四色同時配列決定する一般的な方法の机上実施例を説明する。ある実施形態において、本発明は、4種類のヌクレオチドを同時に用いて、一本鎖鋳型に沿ってプライマー伸長を連続して繰り返し行うことによって核酸配列を決定する方法を提供する。ある実施形態では、フローセル中または固体支持体上に固定されたビーズに付着した鋳型上でシーケンシング反応が行われる。このサイクルは、伸長、検出、標識除去、および脱保護という連続した工程を含む。ある実施形態において、本方法は、硫黄を介して2’位に付着している2’リン酸を標識された2’−ターミネーターヌクレオチドを利用するが、ここでは、4種類の各塩基についてユニークで識別可能な標識(例えば、フルオロフォア)が使用される。以下に示す例示的スキームでは、伸長は、取り込まれる塩基に特異的な、取り込みによって発生する蛍光シグナルを伴う。この標識および保護基は、その後、Ag+、Hg++などの金属イオン、ヨウ素等で処理することによって除去される。
【化8】

【0096】
実施例7:四リン酸ヌクレオチドを用いたサイクル式プライマー伸長法による配列決定
本実施例では、熱サイクル式鋳型依存的プライマー伸長およびシーケンシング反応において四リン酸ヌクレオチド(すなわち、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド)を利用することについて説明する。これらの反応は、G46E Q601R D640G S671F E678G(または「GQDSE」)CS6 DNAポリメラーゼを用いて行ったが、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを容易に取り込むよう修飾された別のDNAポリメラーゼを用いて行うことも可能である。CS6キメラポリメラーゼについては、例えば、米国特許出願第2004/0005599号に記載されている。プライマー伸長反応は、80mMトリシン(pH7.75)、100mM KOAc、および1.0mM Mn(OAc)2を含むバッファー中で行った。各反応液(50μl)は、0.04μMのGQDSE CS6 DNAポリメラーゼ、2ユニット/μlのrTth耐熱性ピロホスファターゼ(Roche Molecular Systems,Inc.,Branchburg NJ)、0.02μMの5’−FAM標識されたオリゴリボヌクレオチドプライマー、0.04μMのオリゴデオキシヌクレオチド鋳型、および0.2μMのDNAポリメラーゼ最適化アプタマーを含んでいた。さらに具体的には、プライマーおよび鋳型の配列は以下の通りであった。
プライマー:5’−FAM−AGCAACAAGUUUAGUUCGUUCGAGCCGUGCGA−3’
鋳型:3’−ACGTTGTTCAAATCAAGCAAGCTCGGCACGCTACGTACGTACGT−5’、ただし、E=3’リン酸。
【0097】
反応は、Applied Biosystems GeneAmp(登録商標)PCR System 9700内で熱サイクルにかけた。50℃で2μlの等量液を取り出して、38μlの1mM EDTAに加えた。この伸長反応を、250μMの各四リン酸ヌクレオチド(2’−PO4−NTP)の混合液2μlを50℃で加えて開始し、その後、64℃で5分間インキュベートした。温度を15℃に低下させて、解析のために伸長反応液の2μlの等量液を取り出し、38μlの1mM EDTAに加えて反応を停止させた。2μlの1ユニット/μl CIAP(アルカリホスファターゼ、仔ウシ腸管、Promega catalog(2005)#M182A)を加えて、27℃で5分間インキュベートして、2’−一リン酸保護基を取り除いた。CIAPを85℃で5分間インキュベートして不活性化させた。伸長および脱保護をさらに3回、上記したように行った。2μlの停止伸長反応液を18μlのGeneScan(商標)−120LIZ(商標)サイズスタンダード(Applied Biosystems,Foster City,CA,P/N 4322362):HiDi(商標)ホルムアミド(Applied Biosystems,Foster City,CA,P/N 311320)に希釈し(1:40)、95℃で5分間インキュベートした。
【0098】
伸長反応液を、Applied Biosystems 3100遺伝子解析装置をFoundation Data Collectionバージョン2.0ソフトウェアとともに用いたキャピラリー電気泳動によって解析し、最終解析は、Applied Biosystems GeneScan(商標)バージョン3.7ソフトウェアによって行った。図2は、伸長および脱保護を4回繰り返して得られたFAM色素標識プライマー伸長反応生成物を示している。1サイクル目では、ヌクレオシドを加える前の開始プライマー、およびCIAPで脱リン酸化される前後の伸長産物が示されている。2サイクル目および3サイクル目では、脱リン酸化される前後の伸長産物が示されているが、4サイクル目では、CIAP後の生成物を解析しなかったため、脱リン酸化前の伸長産物のみが示されている。2’−PO4を取り込むと、2’−PO4の余分な陰性電荷によって、120LIZサイズスタンダードと比較すると、伸長産物が開始プライマーよりも速く移動するようになる。CIAPとインキュベートした後、2’−PO4を除去すると、伸長産物は、予想通り、サイズスタンダードに対し、開始プライマーよりもゆっくりと移動する。これは、図2で、サイズスタンダードに対して、開始プライマーが約30塩基のところを移動し、伸長産物が約26塩基のところを移動し、CIAPとインキュベートした後の伸長産物が約31塩基のところを移動していることから明らかである。プライマー伸長産物のサイズが増大することが予想されているとおりに、サイクル毎に伸長産物は、120LIZサイズスタンダードに対して、CIAPとのインキュベーションの前後で、次第に大きくなる産物として移動している。
【0099】
実施例8:色素標識2’−ターミネーターヌクレオチドを用いたサイクル式プライマー伸長法による配列決定
本実施例では、熱サイクル式鋳型依存的プライマー伸長およびシーケンシング反応において色素標識された2’−PO4−NTPを利用することについて説明する。色素標識された2’−PO4−NTPは、単に、正しい2’−PO4−NTPが配列特異的に取り込まれていることを示すために、最後の伸長工程で使用した。例えば、3サイクルの伸長反応では、非標識2’−PO4−NTPを最初の2回の伸長サイクルで使用し、色素標識された2’−PO4−NTPは、最後の伸長工程で使用した。これらの反応は、GQDSE CS6 DNAポリメラーゼを用いて行ったが、2’修飾型NTPを容易に取り込むよう修飾された別のDNAポリメラーゼを用いて行うことも可能であろう。プライマー伸長反応は、80mMトリシン(pH7.75)、100mM KOAc、および1.0mM Mn(OAc)2を含むバッファー中で行った。各反応液(50μl)は、0.1μMのGQDSE CS6 DNAポリメラーゼ、2ユニット/μlのrTth耐熱性ピロホスファターゼ(Roche Molecular Systems,Inc.,Branchburg NJ)、0.02μMの5’−FAM標識されたオリゴリボヌクレオチドプライマー、0.04μMのオリゴデオキシヌクレオチド鋳型、および0.5μMのDNAポリメラーゼ最適化アプタマーを含んでいた。さらに具体的には、プライマーおよび鋳型の配列は以下の通りであった。
プライマー:5’−FAM−AGCAACAAGUUUAGUUCGUUCGAGCCGUGCGA−3’
鋳型:3’−ECGTTGTTCAAATCAAGCAAGCTCGGCACGCTACGTACGTACGT−5’、ただしE=反転(inverted)dA。
【0100】
反応は、Applied Biosystems GeneAmp(登録商標)PCR System 9700内で熱サイクルにかけた。27℃で2μlの等量液を取り出して、18μlの1mM EDTAに加えた。この伸長反応を、250μMの各2’−PO4−NTP2μlを27℃で加えて開始させるか、または最後の伸長工程であれば、2μlの25μM各色素標識2’−PO4−NTPを加え、その後、64℃で5分間インキュベートした。温度を15℃に低下させて、伸長反応液の2μlの等量液を取り出し、18μlの1mM EDTAに加えた。2μlの1ユニット/μl CIAP(アルカリホスファターゼ、仔ウシ腸管、Promega catalog(2005)#M182A(これは旧いカタログ番号で、新しい番号はM1821))を加えて、27℃で5分間インキュベートすることによって2’−PO4保護基を除去した。CIAPを85℃で5分間インキュベートして不活性化させた。伸長および脱保護を上記したように、さらに何回か行った。EDTAで停止させた反応液を、Sephadex(登録商標)G−50(Sigma−Aldrich品番G5080)で濾過して、取り込まれなかった色素標識2’−PO4−NTPを除去した。2μlの濾過伸長反応液を18μlのGeneScan(商標)−120LIZ(商標)サイズスタンダード(Applied Biosystems,CA,P/N 4322362):HiDi(商標)ホルムアミド(Applied Biosystems,P/N 311320)に希釈し(1:40)、95℃で3分間インキュベートした。
【0101】
伸長反応液を、Applied Biosystems 3100遺伝子解析装置をFoundation Data Collectionバージョン2.0ソフトウェアとともに用いたキャピラリー電気泳動によって解析し、最終解析は、Applied Biosystems GeneScan(商標)バージョン3.7ソフトウェアによって行った。図3は、色素標識された開始プライマーと、SBSの1回目、2回目、および3回目の色素標識伸長産物を示している。この機器は、図3のおける出力記録のピークとして表示されている5つの溝またはビンの色素発光データを集める。1種類の色素の分光発光は、1本以上のビンの中に入ることができるため、図中の1個以上のピークとして表示することができる。実施例において、R110およびFAMは、同じビンに入るため、1個のピークしか見られない。すべての伸長産物は、5’−FAM標識と3’色素標識2’−PO4−NTPを有する。1個だけの塩基伸長では、鋳型となる塩基はAであり、TAMRA−標識2’−PO4−UMPが取り込まれる。GeneScan(商標)−120LIZ(登録商標)サイズスタンダード(Applied Biosystems,Foster City,CA)に対して、1塩基の伸長産物は、サイズスタンダードに対して30から31塩基移動する開始FAM−標識プライマーと比較して約31塩基のところに移動する。2サイクル目の伸長反応では、2つ目の鋳型となる塩基はCであり、R110−標識された2’−PO4−GMPが取り込まれる。これら2塩基のプライマー伸長産物は、サイズスタンダードに対して約33塩基のところに移動する。3サイクル目の伸長反応では、3つ目の鋳型となる塩基はGであり、ROX−標識された2’−PO4−CMPが取り込まれる。これら3塩基のプライマー伸長産物は、サイズマーカーに対して33〜34塩基のところに移動する。色素標識された2’−PO4−NTPが配列特異的に取り込まれたことは、取り込まれた各色素標識2’−PO4−NTPの識別可能なスペクトルとともに、伸長サイクル毎に、産物がサイズスタンダードに対して次第に長くなることによって示される。
【0102】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、単に説明目的のためのものであること、および、それらを踏まえて多様な改変または変更が当業者に対して示唆されているはずであって、それらも、本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の請求の範囲に含まれるものであることと理解される。
【0103】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許文献、および特許出願は、それらの全文が、あらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1B】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1C】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1D】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1E】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1F】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1G】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図1H】2’修飾型可逆的ターミネーターの例を示す。
【図2】本発明の一実施形態に従って4回の伸長および脱ブロッキングから得られたFAM色素標識プライマー伸長産物を示す。
【図3】本発明の一実施形態に従って、色素標識された2’修飾型可逆的ターミネーターを用いたサイクル化されたプライマー伸長法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法であって、
(a)少なくとも1つの鋳型核酸を、少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つの2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド、および鋳型核酸の配列に相補的な、少なくとも1つのプライマー核酸とインキュベートし、それによって、ポリメラーゼがプライマー核酸を伸長させて、プライマー伸長産物の3’末端に、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを取り込む、少なくとも1つのプライマー伸長産物を生じさせる工程と、
(b)プライマー伸長産物の3’末端にある2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位から保護基を除去する工程と、
(c)工程(b)の前および/またはその工程中に、プライマー伸長産物中にある2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを同定し、それによって、同定された2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドから鋳型核酸の塩基配列の少なくとも一部を決定することが可能になり、少なくとも鋳型核酸のその一部を配列決定する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
2’位にある保護基がリン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)が、プライマー伸長産物を、2’位のリン酸を除去する活性とインキュベートする工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
2’位のリン酸を除去する活性がホスファターゼである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
2’位のリン酸を除去する活性がエキソヌクレアーゼIIIである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
2’位のリン酸を除去する活性がエンドヌクレアーゼIVである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
2’位のリン酸を除去する活性がポリヌクレオチドキナーゼである、請求項3記載の方法。
【請求項8】
2’位のリン酸を除去する活性がホスホジエステラーゼ、またはホスホジエステラーゼとホスファターゼを組み合わせたものである、請求項3記載の方法。
【請求項9】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

および
【化8】

からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、少なくとも1つの標識成分で標識されている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記標識成分が、蛍光色素、発光分子、または放射性同位元素を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記標識成分が蛍光色素である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記標識成分が、切断可能なリンカーを介して塩基のところで2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドに付着し、かつ前記リンカーを切断する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記標識成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの糖残基に付着している、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記標識成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位に存在するリン酸に付着している、請求項10記載の方法。
【請求項16】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、供与体および受容体を含む2つの標識分子に結合している、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記供与体および受容体がレポーターおよびクエンチャーの組み合わせである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
2つの標識分子が蛍光共鳴エネルギー転移を起こすことができる、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記クエンチャー成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの塩基に結合していて、レポーター成分がリン酸に結合しているが、ただし、該リン酸は、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドのαリン酸ではない、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記リン酸がγリン酸である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記リン酸が、2’−可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位に存在するリン酸である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
1つの標識成分が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位に存在するリン酸に結合しており、別の標識成分が別のリン酸に結合している、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記別のリン酸がγリン酸である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
反応混合物が、それぞれが異なった塩基を有し、異なった標識成分で標識されている、4種類の異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記検出する工程が、2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを取り込む際に生じるピロリン酸を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが2’−一リン酸−3’−ヒドロキシルヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
工程(a)〜(c)を1回以上繰り返すことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
合成によって配列決定するためのキットであって、
少なくとも1つの2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド、および
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドの2’位の修飾を除去するための試薬を含むキット。
【請求項29】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが2’修飾物であるリン酸であり、試薬が、ホスファターゼ、エキソヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、およびポリヌクレオチドキナーゼからなる群から選択される、請求項28記載のキット。
【請求項30】
さらにポリメラーゼを含む、請求項28記載のキット。
【請求項31】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが標識に付着している、請求項28記載のキット。
【請求項32】
さらに、少なくとも1つの伸長可能なヌクレオチドを含む、請求項28記載のキット。
【請求項33】
遺伝子型解析法であって、
a)プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、さらに、前記プライマーが鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下で合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液の中で、鋳型核酸をインキュベートする工程と、
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在するか否かを判定する工程と、
c)該シグナルが存在しない場合には、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち別の1つを含む、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いて工程a)およびb)を繰り返す工程と、
d)前記伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程と、
e)工程a)〜d)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の一部の配列を決定する工程と、
f)鋳型核酸の該一部の配列を、多型性部位の公知の配列と比較する工程と、
を含む遺伝子型解析法。
【請求項34】
核酸の配列決定を行うためのシステムであって、
鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、さらに、合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液に入れてインキュベートする反応用チャンバーを含むサーマルサイクラーであって、プライマーを鋳型核酸にアニールさせ、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長させて前記伸長産物を生成させる条件を作り出すのに効果的なサーマルサイクラーと、
試薬を添加および除去するための入口と出口をもつ該反応用チャンバーと、
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在することを検出するのに効果的な検出装置と、
を備えるシステム。
【請求項35】
下記
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

及び
【化14】

からなる群から選択される、標識された2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチド。
【請求項36】
鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法であって、
a)該鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液の中で、プライマーが該鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下でインキュベートする工程と、
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在することを判定する工程と、
c)伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程と、
d)工程a)〜c)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の少なくとも一部の配列を決定する工程と、
を含む方法。
【請求項37】
それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが異なった塩基を含む、複数の異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを単一の反応混合液で用いて工程(a)を行う、請求項36記載の方法。
【請求項38】
2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが検出されるまで、それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを連続して付加する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを同時に付加し、それぞれ異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを異なった標識成分で標識する、請求項37記載の方法。
【請求項40】
鋳型核酸の少なくとも一部を配列決定する方法であって、
a)プライマー、ポリメラーゼ、および2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む反応混合液であって、該修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち1つを含み、さらに、前記プライマーが鋳型核酸にアニールし、反応液中に存在するポリメラーゼによって伸長して伸長産物を生成する条件下で合成を停止させる2’位の修飾を含むヌクレオチドである反応混合液の中で、鋳型核酸をインキュベートする工程と、
b)2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドが伸長産物に取り込まれたことを示すシグナルが存在するか否かを判定する工程と、
c)該シグナルが存在しない場合には、4種類の天然型塩基またはそれらのアナログのうち別の1つを含む、異なった2’修飾型可逆的ターミネーターヌクレオチドを用いて工程a)およびb)を繰り返す工程と、
d)前記伸長産物を、可逆的ターミネーターヌクレオチド上に存在する2’位の修飾を除去する活性とともにインキュベートする工程と、
e)工程a)〜d)を所望の回数繰り返して、該鋳型核酸の一部の配列を決定する工程と、を含む方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図1G】
image rotate

【図1H】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−521223(P2009−521223A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547582(P2008−547582)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048933
【国際公開番号】WO2007/075967
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】