説明

合わせずれ検査マーク

【課題】観察可能な合わせずれ検査マークをデバイスパターンのデザインルールに従った微細なパターンから構成する。
【解決手段】デバイスパターンのデザインルールに従った第1の長さの幅W1を有する第1のパターンP11を第1の間隔D1で第1の方向Xへ複数配置して構成される第1のパターングループPG11を第1のピッチPT1で前記第1の方向Xへ複数配置して構成された第2のパターングループPG24を備え、前記第1のピッチPTは、合わせずれ検査装置の分解能に適合した距離であることを特徴とする合わせずれ検査マークが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合わせずれ検査マークに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造するためのフォトリソグラフィ工程において、連続して投影されるデバイスパターンが相互に正確な位置に投影されるようにするため、合わせずれ検査マークが使用される。半導体装置の生産効率を高めるなどの理由で、合わせずれ検査マークはデバイスパターンとともに形成することが望ましいことから、元々のマーク幅がデバイスパターンの幅よりも広くても、デバイスパターンの寸法程度の大きさに分割して使用することが提案されている(例えば特許文献1および2)。
【0003】
しかしながら、デバイスパターンのさらなる微細化に伴って、より微細なパターンへの分割が進むと、合わせずれ検査装置の光学顕微鏡で合わせずれ検査マークを観察できないという問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−102457号公報
【特許文献2】特開2002−064055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、デバイスパターンのデザインルールに従った微細なパターンから構成された、観察可能な合わせずれ検査マークを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
デバイスパターンのデザインルールに従った第1の長さの幅を有する第1のパターンを第1の間隔で第1の方向へ複数配置して構成される第1のパターングループを第1のピッチで前記第1の方向へ複数配置して構成された第2のパターングループを備え、前記第1のピッチは、合わせずれ検査装置の分解能に適合した距離であることを特徴とする合わせずれ検査マークが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デバイスパターンのデザインルールに従った微細なパターンから構成された、観察可能な合わせずれ検査マークが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る合わせずれ検査マークの概略構成を示す図。
【図2】図1に示す合わせずれ検査マークからの±1次光の経路を示す図。
【図3】図1に示す合わせずれ検査マークの第2実施例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る合わせずれ検査マークの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の検討により、背景技術で記載の問題の主な原因として以下の事項を見出した。
【0010】
(i)検査マークの形状が幅方向のみならず、厚さ方向にもシュリンクし、このため、マーク部分とそれ以外の下地の部分との光学位相差が減少し、回折格子パターンにしても回折光の強度が弱く、マーク部分と下地の部分との明暗差が小さい。
【0011】
(ii)本来のマークをデバイスパターンのためのデザインルール(Design Rule)のレベルで分割しているので、光学顕微鏡の対物レンズには0次光以外の光、例えば±1次光が入ってこない(図2の符号RL120,RL130参照)。このため、パターンエッジを認識することができない。
【0012】
以下、本発明の実施の形態のいくつかについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図面において、同一の部分には同一の番号を付し、重複説明は必要な場合に限り行う。
【0013】
(1)第の実施の形態
本発明の第1の実施の形態について図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態の合わせずれ検査マークの特徴は、入れ籠のような階層構造を有するように、デバイスパターンのデザインルールに準拠した微細パターンで構成されたライン・アンド・スペース(以下、単に「L/S」という)のパターングループを備える点にある。
【0014】
図1は、本実施形態の合わせずれ検査マークの概略構成を示す平面図である。図1の紙面上側に示すように、パターングループPG21〜PG2k(kは2以上の自然数)でなるL/SのパターングループPG3で合わせずれ検査マークが構成される。パターングループPG21〜PG2kは、それぞれW3の幅を有し、間隔D3でX方向に配置される。
【0015】
パターングループPG21〜PG2kの一つ、例えばPG24を図1の紙面下方に拡大して示す。パターングループPG24は、L/SのパターングループPG11〜PG1j(jは2以上の自然数)で構成される。パターングループPG11〜PG1jは、それぞれW2の幅を有し、互いに間隔D2で、ピッチPT1でX方向に反復配置される。
【0016】
そして、パターングループ11〜PG1jのそれぞれは、L/SのパターンP11〜P1i(iは2以上の自然数)で構成される。パターンP11〜P1iは互いに間隔D1でX方向に反復配置されるが、個々のパターンの幅W1は、デバイスパターンのデザインルールに準拠している。このため、検査マークのためにデバイスパターンと大きく異なる幅のパターンを形成する必要が無いので、半導体装置の製造における加工精度が低下することもない。
【0017】
一般に、光学系のL/Sについての解像限界寸法LSは、
【数1】

で表される。ここで、λは観察光学系に用いる照明光源の波長であり、NAは観察光学系の開口数である。
【0018】
kは、リソグラフィ上の条件が全て満たされた場合に限界値0.25をとり、Rayleigh基準では点像に関して0.61として表すことができるので、kが0.5付近であるとしても大きく外れるわけではない。従って、パターン例を考える際にkが0.5であるとする。
【0019】
開口数NAが0.5、照明波長λが500nmであるとすると、式(1)からLS寸法は500nm(ピッチは1μm)となる。即ちピッチが1μmのパターンは解像限界内であるので、パターンエッジの観察が可能となる。
【0020】
本実施形態の一実施例では、図1のマークについて、W1=D1=43nm、i=7で、W2(W1×7+D1×6)=D2=559nmで、PT1=1,118nmであり、パターンエッジPEは十分に観察可能である。本実施形態において、W1は例えば第1の長さに対応し、D1は例えば第1の間隔に対応し、PT1は例えば第1のピッチに対応し、X方向は例えば第1の方向に対応する。
【0021】
パターンのピッチが解像限界内にある場合、図2に示すように、ビームスプリッタBSを経由して入射した照明光ILの反射光のうち、0次光RL10以外の+1次光RL20および−1次光RL30の双方が検査装置の対物レンズOLに入射する。これにより、受光素子LSEを介して生成される光顕画像でパターンエッジを観察できる。図2の符号RL120,RL130で示す一点鎖線はそれぞれ、従来の合わせずれ検査マークからの+1次光および−1次光の例である。基板S上の合わせずれ検査マークのパターンピッチをp、1次の反射回折光の回折角をθとすると、パターンピッチpと回折角θの間には、
sinθ∝1/p 式(2)
の関係があり、ピッチpが小さくなると回折角θが大きくなる。デバイスパターンと同一幅のパターンを、デバイスパターンと同一の間隔で単に反復配置して短冊状の合わせずれ検査マークを形成すると、100nm程度のデザインルールの世代では、高精度の検査装置を用いればエッジを観察することができた。しかしながら、近年ではデザインルールが50nmを下回っているため、回折角θ、図2の例ではθ100が大きいので、±1次の回折光が対物レンズOLの入射瞳に入って来なくなる。
【0022】
これに対して、本実施形態では階層構造のパターングループを用いて合わせずれ検査マークを形成するので、パターングループ11〜PG1jのエッジPE間の距離が十分にとれて回折角θ10が小さくなり、+1次光RL20および−1次光RL30の双方が検査装置の対物レンズOLに入射する。これにより、既存の合わせずれ検査装置を用いて合わせずれ検査マークの認識が可能になる。その結果、検査精度が向上する。
【0023】
図3は、上述の実施形態を二次元格子に適用した第2の実施例である。W4の長さとW3の幅を有するパターングループPG211〜PG21m(mは2以上の自然数)が間隔D3でX方向に配置され、同様のパターングループがY方向にも間隔D4で反復して形成されることにより、パターングループPG211〜PG2lmでなる合わせずれ検査マークが構成される。各パターングループの具体的構成は図1に示す構成と同様である。本例において、Y方向は例えば第2の方向に対応する。
【0024】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る合わせずれ検査マークの概略構成を示す。図4の検査マークは、全体として矩形状をなすように、対のパターングループをX方向およびY方向で互いに対向するように配置したものである。すなわち、パターングループPG21,PG22をX方向に間隔D5だけ離隔して領域RGを間に挟むように対向して配置し、パターングループPG51,PG52をY方向に間隔D5だけ離隔して領域RGを間に挟むように対向して配置したものである。そして、パターングループPG51,PG52についても上述した第1の実施の形態と同様に、入れ籠式の階層構造になっている。例えばパターングループPG51を取り挙げると、図4の紙面下方のパターングループPG41〜PG4q(qは2以上の自然数)に示すように、幅W2のパターングループがピッチPT2でY方向に反復形成されている。パターングループPG41〜PG4qのそれぞれは、デバイスパターンのデザインルールに準拠した微細パターンP21〜P2p(pは2以上の自然数)で構成される。本実施形態において、パターングループPG21,PG22は例えば第2のパターングループに対応し、パターングループPG51,PG52は例えば第3のパターングループに対応する。また、間隔D5は例えば第2の間隔に対応する。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記形態に限るものではなく、その技術的範囲内で種々変形して適用できることは勿論である。例えば、上述の第2の実施の形態では、パターングループPG21,PG22が2つで一対をなすようにX方向に対向配置され、パターングループPG51,PG52が2つで一対をなすようにY方向に対向配置される形態について説明したが、これに限ることなく、観察精度を向上させるために、例えば図4においてパターングループPG21を間隔W3でX方向外側に複数反復配置し、パターングループPG22を間隔W3でX方向外側に複数反復配置してもよい。この場合はパターングループPG51,PG52についても同様に、それぞれ同じ数だけY方向の外側に間隔W3で反復配置される。また、上述した実施形態では、パターンP11〜P1iが凸パターンである例を取り上げて説明したが、これに限ることなく、凹パターンについても勿論適用可能である。なお、上述した実施形態ではいずれも単一の合わせずれ検査マークについて説明したが、実際には基板上でデバイスパターンが形成される層のそれぞれに形成される。
【符号の説明】
【0026】
D1〜D5:間隔
P11〜P1i,P21〜P2p:パターン
PG11〜PG1j,PG21〜PG2k,PG211〜PG21m,PG221〜PG22m,PG2l1〜PG2lm,PG51,PG52,PG3,:パターングループ
RG:領域
W1〜W3:幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスパターンのデザインルールに従った第1の長さの幅を有する第1のパターンを第1の間隔で第1の方向へ複数配置して構成される第1のパターングループを第1のピッチで前記第1の方向へ複数配置して構成された第2のパターングループを備え、
前記第1のピッチは、合わせずれ検査装置の分解能に適合した距離であることを特徴とする合わせずれ検査マーク。
【請求項2】
前記第2のパターングループは、前記第1の方向に直交する第2の方向にさらに複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の合わせずれ検査マーク。
【請求項3】
2つの前記第2のパターングループが第2の間隔で前記第1の方向へ配置されることを特徴とする請求項1に記載の合わせずれ検査マーク。
【請求項4】
前記第1の長さの幅を有する第2のパターンが前記第2の間隔で前記第1の方向に直交する第2の方向へ配置される2つの第3のパターングループをさらに備え、
前記2つの第3のパターングループは、前記2つの第2のパターングループが間に挟む領域を前記第2の方向で間に挟むように対向して配置されることを特徴とする請求項3に記載の合わせずれ検査マーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203325(P2011−203325A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68172(P2010−68172)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】