説明

合成樹脂製ブロー容器

【課題】温度の高い環境下で使用される場合においても形状変形、収縮が少ない耐熱性に優れた合成樹脂製のブロー容器を提案する。
【解決手段】残留応力を除去する加熱、収縮処理の前後でそれぞれ一回の軸延伸ブロー成形を行うことによって製造された合成樹脂製ブロー容器において、前記ブロー容器は、加熱処理を終えたのちにおけるブロー中間体2に対する密度の増減率を-0.03%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製ブロー容器に関するものであり、熱に対する強度を高めて熱収縮による形状変形を確実に防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルに代表される合成樹脂製の容器は、計量で取り扱いが容易であること、また、透明性も確保でき、ガラス製の容器に比較して遜色のない外観を呈すること、さらにコスト的にも安価であることから近年、食品や飲料、化粧料あるいは薬剤等を入れる容器として多用されている。
【0003】
ところで、この種の容器は、熱に対する強度が小さく、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を素材した容器にあっては85〜87°C程度が限界であって、とくに、内容物として上記の温度を超える内容物を充填する場合においては熱収縮による形状変形が避け難く、用途範囲を拡大するにも限界があった。
【0004】
この点に関する先行技術としては、底壁の周端部を除いた密度を1.360g/cm以上とし、約120°Cまでの使用雰囲気温度範囲内での内部容積の収縮減少率を最大で1.0%以下とした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)が、殺菌温度が120°Cを超えるレトルト処理に供されるる容器にあってはやはり形状変形や収縮を避けることは困難であって、未だ改善の余地が残されていた。
【特許文献1】特公平6-22861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、温度の高い環境下で使用される場合においても形状変形、収縮が少ない耐熱性に優れた合成樹脂製のブロー容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、残留応力を除去する加熱、収縮処理の前後でそれぞれ一回の二軸延伸ブロー成形を行うことによって製造された合成樹脂製ブロー容器であって、
前記ブロー容器は、加熱処理を終えたのちにおけるブロー中間体に対する密度の増減率が−0.03%以上である、ことを特徴とする合成樹脂製ブロー容器である。
【0007】
ここに、加熱、収縮処理を終えたのちにおけるブロー中間体の密度をρ(g/cm)とし、容器(完成品)の密度をρ(g/cm)とした場合に、密度の増減率Δは{(ρ−ρ)/ρ}×100(%)で表示される。密度は高いほど容器の耐熱性が向上するので増減率の上限についてはとくに設定されない。
【発明の効果】
【0008】
ブロー容器と、加熱、収縮処理後におけるブロー中間体の密度(何れも徐冷後の室温における密度をいうものとする)の増減率Δを−0.03%以上とすることにより、ブロー容器の密度はブロー中間体の密度とほとんどかわらず耐熱性が高い状態に維持される。高い耐熱性、特に120℃以上の殺菌を必要とするレトルト処理を行う容器を対象とする場合には密度を高く(1.395g/cm3以上が望ましい)する必要がある。
【0009】
これまで、ブロー成形においては、ブロー中間体の表面温度(二回目のブロー成形直前) > 二回目のブロー成形直後の表面温度として二回目のブロー成形後の密度上昇を抑えていたが、ブロー中間体の表面温度(二回目のブロー成形直前) ≦ 二回目のブロー成形直後の表面温度とすることで二回目のブロー成形後(完成品)においても密度上昇を継続させて密度の増減率を−0.03%以上とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図1(a)〜(d)は280mlの容器を対象にした場合におけるプリフォームの状態から完成品に至るまでの各段階における外観形状を模式的に示したものであり、図中1はプリフォーム、2は一回目のブロー成形によって成形されたブロー中間体(一次ブロー中間体)、3は加熱処理後のブロー中間体そして4は完成品であるブロー容器である。
【0011】
加熱、収縮処理を終えたブロー中間体3と、ブロー容器4の密度の増減率Δを−0.03%以上とするとブロー中間体3からブロー容器4になるまでの間で密度が高いまま維持されることになる。
【0012】
本発明にしたがうブロー容器を製造するにあったて使用する樹脂としては、PET樹脂系、ポリブチレンテレフタレート樹脂系、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂等の樹脂がある。そしてこれらポリエステル系樹脂のブレンド物、さらにはこれらポリエステル系樹脂を主体としてポリオレフィン系樹脂、ポリカーボーネート系樹脂、アリレート系樹脂、ナイロン系樹脂等をブレンドした樹脂も使用することができる。
【0013】
かかる樹脂を用いてブロー容器を作製するには、該樹脂を射出成形あるいは押出し成形等により図1(a)に示す如きプリフォーム1を作製し、これを、延伸効果を発現できる例えば70〜130°C、より好ましくは90〜120°C程度まで加熱する。
【0014】
そして、該プリフォーム1を70〜130°C、より好ましくは70〜180°Cの温度域で延伸表面積倍率4〜22倍、より好ましくは6〜15倍(容量で完成品より、1.2〜2.5倍程度のオーバーサイズ)とする条件下で一回目の二軸延伸ブロー成形を行いブロー中間体2を得る。
【0015】
次いで、ブロー中間体2を110〜255°C、より好ましくは130〜220°Cのもとで、完成品より0.60〜0.95倍程度まで収縮させるとともに内部の残留応力を除去する加熱、収縮処理を行いブロー中間体3とし、引き続いて、210〜240°C、より好ましくは210〜220°Cの温度域で二軸延伸ブロー成形を行う。ここに、上記温度は何れも金型温度をいうものとする。
【0016】
実施例
重さ29gのプリフォームを用いて、120°Cに加熱し170°Cの温度で一回目の二軸延伸ブロー成形を行い、次いで200°Cの温度域に維持して完成品よりも約0.8倍まで収縮させて内部応力を除去する加熱、収縮処理を施してブロー中間体を得た。そして、さらにブロー中間体を210〜230°Cの温度で二回目の二軸延伸ブロー成形を行い得られた完成品の耐熱性について調査した。ブロー中間体の密度、ブロー容器の密度、密度の増減率を表1に、また、耐熱性の調査結果(レトルト処理(温度90°Cの水を充填、キャッピングしたのち、蒸気により124°Cで42分間保持)前後の容器の容積変化量)を表2に示す。なお、密度は減圧吸収パネルが形成される部位を除いた胴部の中央域で計測したものである。また、比較例は二回目の二軸延伸ブロー成形の温度を100〜170°Cに変更した場合の結果を示したものである。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表2より明らかなように、本発明にしたがう容器(試料No.1〜6)ではレトルト処理による形状変形、収縮が非常に小さかったのに対して比較例の容器(試料No.6〜12)は形状変形、収縮が大きいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
温度の高い環境下においても変形や収縮の軽減された高い耐熱性を有するブロー容器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)〜(d)はブロー成形における各段階における外観形状を示した図である。
【符号の説明】
【0022】
1 プリフォーム
2 ブロー中間体
3 加熱処理後のブロー中間体
4 ブロー容器(完成品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留応力を除去する加熱、収縮処理の前後でそれぞれ一回の二軸延伸ブロー成形を行うことによって製造された合成樹脂製ブロー容器であって、
前記ブロー容器は、加熱処理を終えたのちにおけるブロー中間体に対する密度の増減率が−0.03%以上である、ことを特徴とする合成樹脂製ブロー容器。

【図1】
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【公開番号】特開2008−273058(P2008−273058A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120108(P2007−120108)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】