説明

合成無機系難燃剤、それらの調製方法及び難燃剤としてのそれらの使用

全く予想外に、一般式MIIIII(OH)12(ここでMIIは周期表の IIA族の二価金属イオン、特にアルカリ土類金属イオンを示し、MIIIは、周期表のIIIA族の三価金属イオン、特にアルミニウムを示す)のハイドロガーネットの結晶構造を、併合ケイ酸塩及び/又はリン酸塩の好適な量で最適に変性することによって、ATH及びMDHのような従来の無機系難燃剤より高い難燃剤効率及びATHより高い熱安定性を有する難燃剤を生成できる。立方晶形を有する一般式MIIIII(OH)12(ここでMII及びMIIIは上記と同義である)の合成ハイドロガーネットを生成できて、これらの合成ハイドロガーネットも高難燃剤効率を示すことも分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成無機系難燃剤、それらの調製方法及び難燃剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミニウム三水酸化物(ATH)及び水酸化マグネシウム(MDH)のような重合体によく使用される無機系難燃剤の効率には限界がある。関連した燃焼試験に合格するには高充填が必要である。場合によっては、最大充填で使用されるときでも、特定の燃焼試験は要求が高く、又は、最終生成物の機械的、流動学的、若しくは電気的特性が破壊される。更に、アルミニウム三水酸化物は約200℃で分解し始め、同様の温度又はそれより低い温度で処理される重合体への適用が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アルミニウム三水酸化物及び水酸化マグネシウムのような従来の生成物よりも充填剤の充填を低くすることができる高い難燃剤効率を有する新規な無機の難燃剤を提供し、好ましくは、アルミニウム三水酸化物より十分に高い熱的安定性を有して200℃を上回る処理温度が必要な重合体材料に効果的に用いられる新規な難燃剤が得られる方法が見つかれば大いに有益であろう。
【0004】
本発明は、経済的に魅力的な主成分で前述の利点を満たすために為された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従って、驚くべきことに、一般式MIIIII(OH)12(ここでMIIは周期表IIA族の二価金属イオン、特にアルカリ土類金属イオンを示し、MIIIは、周期表IIIA族の三価金属イオン、特にアルミニウムを示す)のハイドロガーネットの合成に対する水酸化アルカリの添加が結晶形状を不規則でほぼ球形の結晶から、明白に定義された立方体へ変形することが発見された。これらの合成ハイドロガーネット化合物が、アルミニウム三水酸化物(ATH)や水酸化マグネシウム(MDH)のような従来の無機系難燃剤より高い難燃剤効率とアルミニウム三水酸化物(ATH)より高い熱的安定性を有する難燃性材料として利用できる。
【0006】
更に、全く予想外に、一般式MIIIII(OH)12(MII及びMIIIは上記と同義である)のハイドロガーネットの結晶構造を適量の併合ケイ酸塩及び/又はリン酸塩で適切に変性することによって、アルミニウム三水酸化物(ATH)や水酸化マグネシウム(MDH)のような従来の無機系難燃剤より高い難燃剤効率と、水酸化アルカリの存在下で合成されるハイドロガーネットより高い熱的安定性とを有する難燃性材料が生成されることが発見された。結晶構造にケイ酸塩又はリン酸塩イオンを添加することによって、ケイ酸塩のみを組み込んだ場合の実験式MIIIII(OH)12−4x(SiOの難燃剤化合物、リン酸塩のみを組み込んだ場合の実験式MIIIIIOy(OH)12−5y(POの難燃剤化合物、若しくはケイ酸塩及びリン酸塩を組み込んだ場合の実験式MIIIII(OH)12−5y−4x(PO(SiOの難燃剤化合物がそれぞれ得られる。
【0007】
ケイ素変性及び/又はリン変性組成物の結晶構造はハイドロガーネット(すなわちMIIIII(OH)12)及びガーネット(すなわちMIIIII(SiO)に関するが、本発明の難燃剤はガーネット及びハイドロガーネットとは組成及び特
性において異なる。ケイ素変性及び/又はリン変性組成物は、一般的に八面体の結晶形状を有する。
【0008】
ケイ素変性及び/又はリン変性ではない本発明のハイドロガーネット化合物の結晶形状は、一般的に立方体である。米国特許第3,912,671号によって生成されるハイドロガーネット結晶は、形が球状であると報告され、その中で開示されている手順に従うと不規則な等尺性の多面体を生じた。
【0009】
本発明に起因する構造上及び組成上の変化は、難燃剤の特性において予想外の有益性を供与する。例えば、後掲の表1〜3にて示す通り、本発明の組成物が通常のハイドロガーネットより大きな熱的安定性を有することが分かった。
【0010】
このように、本発明は、とりわけ、その結晶構造にケイ酸塩及び/又はリン酸塩を含むことによって任意に変性変性される合成ハイドロガーネットを含む難燃剤を提供する。又、本発明が提供する難燃剤は、難燃剤の結晶構造がハイドロガーネット、即ちMIIIII(OH)12に関連していることを特徴とすることを更に記載される。この種の合成難燃剤は、円錐型熱量計での燃焼を受けるエチレンビニルアセテート試験片に好適な好適な濃度で組み込まれる際に高放熱特性を提供することを特徴とされる。例えば、第2放熱ピークに達し得るならば、第2放熱ピークに着くまでの時間は長く、第2最大放熱(あるとして)は低い。第2ピーク若しくはその低い最大値が存在しないということは、チャー形成の帰結であり、可燃性の気体がその気相に進入して発火するのを防ぐ。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明は下記(i)の実験式と下記(ii)の特性とを有する合成無機変性ハイドロガーネット難燃剤を提供する:
(i)実験式MIIIII(OH)12−5y−4x(PO(SiOを有し、
式中、MIIは、1種類、又は1種類を超えるアルカリ土類金属(好ましくはCa)の混合物であり、x及びyは、好ましくは0〜約1.5の範囲の数であり、x+yは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の数であり、より好ましい範囲は、約0.1〜約1.5であり、更に好ましい範囲は、約0.05〜約1.2であり;(ii)以下の特性を有する:
a)粒径の中位数、d50、はレーザ回折による判定で約0.5μm〜約10μmの範囲の数であり、
b)BET判定での表面積は約0.5m/g〜約30m/gの範囲内であり、好ましくは約1m/g〜約30m/g、より好ましくは約0.5m/g〜約15m/g、約1m/g〜約15m/g、更により好ましくは約1m/g〜約10m/g、約2m/g〜約10m/gであり、及び、
c)毎分1℃の加熱速度及び105℃、4時間の予備乾燥後の2%水分損失の熱量分析温度が230℃未満、好ましくは240℃未満、より好ましくは250℃未満である。
【0012】
更により好ましい上記合成無機系難燃剤は、105℃での赤外線水分天秤によって定まる表面含水量が0.7重量%未満、好ましくは0.5重量%未満であり、炎色測光によって定まる酸化ナトリウム含有量が0.5重量%未満であることを更に特徴としている。
【0013】
また、上記記載の合成難燃剤を生産するため工程技術も、本発明によって提供される。例えば、本発明は好適な量のケイ酸塩及び/又はリン酸塩によって任意に変性される合成無機ハイドロガーネットを調合する工程を提供し、工程には下記が含まれる:
●下記から形成される混合物を攪拌すること
(1)IIIA族金属源(特にアルミニウム源)、
(2)IIA族金属源(特にアルカリ土類金属源)、
(3)任意にケイ素源(特に水性ケイ酸塩水溶液、例えば(i)「水ガラス」として市販の例えばNaSiO又はNaSiの水溶液のうちの1つ以上、及び/又は(ii)粉末状の非結晶性若しくは結晶性二酸化ケイ素)、及び/又は
(4)任意にリン源(特に水のリン酸塩水溶液、例えばリン酸、NaPO、NaHPO、NaHPO、のようなアルカリ又はリン酸アンモニウム塩、Naのようなアルカリ又はアンモニウム二リン酸塩及び/又はアルカリ又はアンモニウムポリリン酸塩)、
ここで、 前記(1)、(2)、(3)及び/又は(4)は、独立に、及び/又はこれらそれぞれの水和物は固体の状態若しくは水溶液であり;
(5)水酸化アルカリ金属、
及び、約50℃〜約100℃の範囲の温度で前記の攪拌された混合物を加熱すること。
●任意に反応生成物を冷却するか、又は反応生成物を冷まし、反応生成物を回収すること、
前記工程は、前記混合物形成において使用する前記IIIA族金属源と前記IIA族金属源との比率がIIA族金属:IIIA族金属のモル比にて、約1:1〜約2:1の範囲内であることを特徴とし、実在時、前記混合物形成に用いる前記のケイ素源は、調合すべき合成無機ハイドロガーネットの1モル当たり約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のケイ酸塩を提供し、及び/又は実在時、前記混合物形成に用いる前記のリン源は、調合すべき合成無機ハイドロガーネットの1モル当たり約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のリン酸塩を提供する。前記混合物形成に用いる前記のケイ素源及び/又は前記混合物形成に用いる前記のリン源との好ましい割合は、ケイ酸塩及び/又はリン酸塩を約0.1モル〜約1.5モルの範囲の量で、より好ましくは、調合すべき合成無機ハイドロガーネットの1モル当たり約0.05モル〜約1.2モルの範囲の量のケイ酸塩及び/又はリン酸塩を提供することである。一般的に、ケイ素源からのケイ素の各原子は、変性合成無機ハイドロガーネットにおいて1つのケイ酸イオンを形成し、リン源からのリンの各原子は、変性合成無機ハイドロガーネットにおいて1つのリン酸イオンを形成する。
【0014】
前記工程で使用可能な多数の反応剤が水に対して低溶解性であり、前記工程で使用する反応条件下で1つ以上の反応剤の小留分のみが溶液中にあり、反応は溶解イオンを介して起こる点に留意する必要がある。従って、如何なる与えられた時間の瞬間にでも少量の反応剤だけが水に溶解しても良く、この種のイオンが反応において消費されるように、反応の続行に必要なイオンの準備の為に以前には未溶解の量の反応剤を水溶液に入れる。このように、アルミニウム三水酸化物(ATH)又はAlのような、水溶性として一般に記載されていない化合物によっても反応は順調に続行できる。
【0015】
本発明の好ましい工程は合成難燃剤の生成に関し、合成難燃剤は工程への好適な量のケイ酸塩及び/又はリン酸塩の採用によって変性される。この工程は、以下を含む:
●アルミニウム源、カルシウム源、水、ケイ素及び/又はリン源、及びアルカリ金属水酸化物から形成される混合物を攪拌し、前記攪拌された混合物を約50℃〜100℃の範囲の温度で加熱すること、アルミニウム源は(i)水酸化アルミニウム、ベーマイト、疑似ベーマイト、酸化アルミニウム又は前述のいずれか2つ以上の混合物であり、及び(ii)粉末状で、カルシウム源は(i)無機塩、水酸化物、又は水和物を含むカルシウムの酸化物であり、及び(ii)粉末状で、
●任意に反応生成物を冷やすか又は反応生成物を冷却すること、
及び、
●反応生成物を回収すること、
前記工程は、前記混合物形成において使用するアルミニウム源とカルシウム源との比率はCA:Alのモル比にて、約1:1〜約2:1の範囲内であることを特徴とし、前記混合物形成に使用するケイ素源は約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のケイ酸塩を提供し、生成する合成難燃剤1モル当たりのケイ酸塩の、好ましくは約0.1モル〜約1.5
モルの範囲で、より好ましくは、約0.05モル〜約1.2モルの範囲で、及び/又は前記混合物形成に使用するリン源は約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のリン酸塩を提供し、生成する合成難燃剤1モル当たりのリン酸塩の、好ましくは約0.1モル〜約1.5モルの範囲で、より好ましくは、約0.05モル〜約1.2モルの範囲である。
【0016】
本発明の上記及び他の特徴、実施形態及び利点は、後続の記述、添付の図面及び付記する請求項から更に明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例6(発明)と実施例9(比較)との円錐型熱量計放熱速度曲線である。
【図2】本発明の実施例7(発明)と実施例9(比較)との円錐型熱量計放熱速度曲線である。
【図3】本発明の実施例8(発明)と実施例9(比較)との円錐型熱量計放熱速度曲線である。
【図4】本発明の実施例10(発明)と実施例12(比較)との円錐型熱量計放熱速度曲線である。
【図5】本発明の実施例11(発明)と実施例12(比較)との円錐型熱量計放熱速度曲線である。
【図6】本発明の実施例1で形成した変性ハイドロガーネットのSEM顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例5で形成したハイドロガーネットのSEM顕微鏡写真である。
【図8】米国特許第3,912,671号に基づいて形成したハイドロガーネットのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
理論に縛られることを望むものではないが、ケイ酸塩及び/又はリン酸塩イオンが存在する本発明化合物の構造は、ケイ酸塩又はリン酸塩イオンと交換した4つの水酸化物イオンのいくつかの配置とともに、ハイドロガーネットとして同じ原子配列を有するものと考えられ、結晶構造においてケイ酸塩若しくはリン酸塩の4つの酸素原子は、4つの水酸化物イオンの酸素原子と同じ場所にあるものと思われる。
【0019】
上記の通り、本発明の新規の難燃剤は、下記一般式(1)で表される:
【化1】

式中、MIIはIIA族金属原子であり、代表的にはCa、Sr、Ba、又はこれらの少なくとも2つのの混合物、若しくはこれらの1つ以上とMgの僅少比率(即ち、約50重量%未満)との混合物であり、MIIIはIIIA族金属原子、特にアルミニウムであるが、B、Ga、In又はTlの少量(例えば、約20重量%未満)との混合材でも良く、若しくはこれら2つ以上の混合物であり、x及びyは、好ましくは0〜約1.5の範囲の数であり、x+yは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の数であり、より好ましい範囲は約0.1〜約1.5であり、更に好ましい範囲は約0.05〜約1.2である。難燃剤及び難燃剤の熱安定性に悪影響を及ぼさない他の金属原子の痕跡量の存在は有り得る。ケイ素又はリン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は一般式MIIIII(OH)12によって表され、MII及びMIIIは上記一般式(1)の記載と同義である。リン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化2】

式中MII及びMIIIは上記一般式(1)の記載と同義であり、xは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、更に好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。ケイ素源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化3】

式中MII及びMIIIは上記一般式(1)の記載と同義であり、yは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、更に好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。
【0020】
本発明の好ましい難燃剤は、下記一般実験式(2)によって表される:
【化4】

式中、MIIはIIA族金属原子であり、代表的にはCa、Sr、Ba、又はこれらの少なくとも2つの混合物、若しくはこれらの1つ以上とMgの僅少比率(即ち、約50重量%未満)との混合物であり、x及びyは、好ましくは0〜約1.5の範囲の数であり、x+yは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、より好ましくは約0.1〜約1.5の範囲の数であり、更に好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。更にここで、難燃剤及び難燃剤の熱安定性に悪影響を及ぼさない他の金属原子の痕跡量の存在は有り得る。ケイ素又はリン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は一般式MIIIII(OH)12によって表され、MIIは上記一般式(2)の記載と同義である。リン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化5】

式中MIIは上記一般式(2)の記載と同義であり、xは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、更に好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。ケイ素源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化6】

式中MIIは上記一般式(2)の記載と同義であり、yは0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、更に好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。
【0021】
本発明の特に好ましい難燃剤は、下記一般実験式(3)によって表される:
【化7】

式中、x及びyは、は0〜約1.5の範囲の数であり、x+yは約0〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、より好ましい範囲は、約0.1〜約1.5であり、更に好ましい範囲は、約0.05〜約1.2である。上記同様に、難燃剤及び難燃剤の熱安定性に悪影響を及ぼさない他の金属原子の痕跡量の存在は
有り得る。ケイ素源やリン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は一般式CaAl(OH)12によって表される。リン源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化8】

式中xは0.05〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.1〜約1.5の範囲の数であり、より好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。ケイ素源を生成物の合成に使わない場合には、生成物は下記一般実験式によって表される:
【化9】

式中yは0.05〜約1.5の範囲の数であり、好ましくは約0.05〜約1.5の範囲の数であり、より好ましくは約0.05〜約1.2の範囲の数である。
【0022】
本発明の難燃剤(上記一般式(1)、(1A)、(1B)、(2)、(2A)、(2B)、(3)、(3A)又は(3B)の難燃剤)は有効性を増した難燃剤であって、熱安定性の強化を更に特徴としている。また、結晶構造にケイ酸塩及び/又はリン酸塩を含むことによって、本発明難燃剤の結晶成長特性が結果として良い方向に影響されると信じられる。一転して、純度を始めとする難燃剤の様々な特性上の有益な影響の可能性が有り得る。この関係で、本発明の特に好ましい難燃剤(上記一般式(1)、(1A)、(1B)、(2)、(2A)、(2B)、(3)、(3A)又は(3B)の難燃剤)において、MIIの少なくとも約98重量%がCaであり、MIIIの少なくとも約98重量%がAlである。
【0023】
本発明の難燃剤は、多種多様な難燃剤応用に有用である。例えば、前記難燃剤は熱可塑性及び熱硬化性重合体や樹脂、弾性体(例えば天然及び合成ゴム)のような多種多様な重合体において、効果的に利用できる。本発明難燃剤の好ましい利用は、電線やケーブル線用のポリエチレン及びその共重合体成分又はポリプロピレン及びその共重合体成分としてであり、及び、プリント回路板用のエポキシ樹脂のような樹脂成分としてである。これらの応用において、難燃剤にケイ酸塩及び/又はリン酸塩部分を併合することによって提供される改良された熱安定性は、かなり重要であり、数値的にではあるが、比較可能な従来材料と比較した高い熱安定性は摂氏(℃)で比較的小さく見える。このように、難燃性の電線やケーブル線を形成する場合、例えば、押出成形の間、より高い処理温度やより高い処理量が得られるので、例えば3〜5℃の増加は難燃剤の利用者にかなり重要であり得る。
【0024】
上述の通り、様々な原材料が本発明難燃剤を調合する際に利用できる。IIA族化合物の非限定例には、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、臭化カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、臭化バリウム、塩化バリウム、ヨウ化バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、又は、前述の2つ以上の混合物が含まれる。このように、使用するIIA族原材料は、IIA族金属の1つ以上の無機塩又はIIA族金属の混合物、又は1つ以上の無機IIA族金属塩と他の微量のIIA族金属塩との混合物、例えば、水酸化カルシウム或いは水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムを有する酸化カルシウムであり得る。これらの中で、ハロゲンを欠いたカルシウム化合物が好ましく、水酸化カルシ
ウム及び酸化カルシウムがより好ましい。本発明の好ましい実施形態において、出発原料の粒径の中位数d50は50μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは2μm未満である。
【0025】
同様に、多種多様なIIIA族化合物が本発明難燃剤の調合用原料として利用できる。IIIA族化合物の非限定例には、水酸化アルミニウム、ベーマイト、疑似ベーマイト、酸化アルミニウム、臭化アルミニウム6水和物、塩化アルミニウム6水和物、ヨウ化アルミニウム6水和物、硝酸アルミニウム及びその水和物、硫酸アルミニウム及びその水和物、リン酸アルミニウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウム、ガリウム酸塩化物、硫酸ガリウム、三塩化ガリウム、ガリウム三臭化物、三塩化インジウム、インジウム硝酸塩、硫酸インジウム、又は、前述の2つ以上の混合物が含まれる。これらの中で、ハロゲンを欠いたカルシウム化合物が好ましい。本発明の好ましい実施形態において、出発原料の粒径の中位数d50は50μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは20μm未満である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、出発原料は所望の粒度分布を得るために、当該技術分野で知られている任意の好適な乾式又は湿式粉砕工程によって粉砕される。粉砕工程は、i)IIA族源のみ、ii)IIIA族源のみ、iii)IIA族源とIIIA族源の両方、又はiv)IIA族源とIIIA族源との本発明生成物の合成のために要求されるモル比の混合物に適用できる。
【0027】
生成物の粒径は、IIA族金属塩の粒径によって影響されることが観察されている。一般的に、IIA族金属塩の粒径が大であると、生成物粒径も大となる。また、IIA族金属塩に集合が存在すると、生成物もしばしば集合を形成する。IIA族金属塩の粉砕は、集合を最小化するか又は除去するのに好ましい方策である。
【0028】
本発明の難燃剤の調合において使用するケイ素源は変化できる。特に有用なケイ素源は水性ケイ酸塩溶液であり、例えば、(i)「水ガラス」として市販の例えばNaSiO若しくはNaSiの1つ以上の溶液及び/又は(ii)粉末状の非結晶性若しくは結晶性の二酸化ケイ素である。リン源は、水性リン酸塩水溶液、例えばリン酸、NaPO、NaHPO、NaHPOのようなアルカリ又はアンモニウムリン酸塩、Naのようなアルカリ又はアンモニウム二リン酸塩、及び/又はアルカリ又はアンモニウムポリリン酸塩、固形又は水溶液中でのこれらのリン化合物及びそれぞれの水和物の全てであり得る。
【0029】
最初に水相を形成する水を少なくとも若干量反応器に充填し、それに対してII族金属塩及びIII族金属塩の適当な比率で(個別に又は予め形成した混合物として)充填し、使用する場合は、その後にケイ素源及び/又はリン源を充填することが望ましい。必要に応じて、ケイ素源及び/又はリン源はII族金属源及び/又はIII族金属源の前に添加しても良い。
【0030】
IIIA族金属源、IIA族金属源、ケイ素及び/又はリンの任意源、及びアルカリ金属水酸化物から形成される混合物は、実質的に均質な混合物であるべきである。従って、混合物は全体的に攪拌され、混ぜ合って実質的に均質な調製の混合物を形成する。この混合物は代表的に1つ以上の昇温状態、例えば約50℃〜約100℃の範囲の温度で加熱され、攪拌される。前記成分の攪拌と混合とは、これらの温度条件の下で少なくとも本発明の難燃剤生成物を形成するのに充分な期間を通じて実行される。通常、加温の期間の長さは、使用温度と撹拌される混合物の均質性の程度によって変更できるので、臨界的ではない。典型的に、混合物は上記昇温状態の温度で少なくとも約10分、及び場合によっては少なくとも約30分の全期間をかけてかき混ぜ、又は攪拌して混合される。
【0031】
受け入れ可能な反応速度を生む好適な反応温度若しくは反応温度順序はどれも利用できる。代表的には、反応は約50℃〜約100℃の範囲の温度で実施される。この反応は沈降反応ではなく、その代わりにカルシウムもアルミニウムも全部が決して完全に溶かされない部分的な水溶液を経た再結晶である点に留意する必要がある。
【0032】
本発明による難燃剤で得られた懸濁液は次に不純物を除去するために濾過され、洗浄され、濾過ケークを形成する。濾過ケークは、次に濾過ケークを乾燥させるための公知技術の方法のいずれかによって乾燥させる。典型的ないくつかの実施形態において、濾過ケークはスピンフラッシュ乾燥機、他の連続作動フラッシュ乾燥機、又は無機充填剤の生成における細胞破砕技術を用いて乾燥する。全ての技術において、濾過ケークの一貫性に従い、濾過ケークは好適な供給設備、例えばスクリューコンベヤで乾燥機へ移され、1つ以上の回転子で分散される。高温気体、代表的に空気は、濾過ケークに含まれる水の高速蒸発用に準備した乾燥機に誘導される。熱い気体流は、微細な脱凝集粒子を更に下流へ運ぶ。選択的に、気体流は分級器具を経由して導かれ、粗粒子を更なる処理のための分散帯域に戻せる。
【0033】
しかしながら、他の典型的な実施形態において、濾過ケークを水で懸濁してスラリーを形成する。本発明の他の実施形態において、分散剤を濾過ケークに添加してスラリーを形成する。分散剤の非限定例にはポリアクリレート、有機酸、ナフタレンスルホネート/ホルムアルデヒド縮合物、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、ポリプロピレンエチレンオキサイド、ポリグリコールエステル、ポリアミンエチレンオキサイド、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びポリビニルアルコールが含まれる。スラリーは、次にスラリーを乾燥させるための公知技術の方法のいずれかによって乾燥させる。この技術は、一般にノズル及び/又は回転式噴霧器の使用によって供給する無機充填剤の噴霧を含む。噴霧化した供給物は次に高温気体、代表的に空気、と接触し、噴霧乾燥した生成物は熱いガス流から回収される。噴霧化した供給物との接触は逆流方式か伴流方式で実行され、気体及び/又は噴霧化した供給物の気体温度、噴霧化、接触及び流速は制御可能で、所望の特性を有する充填剤粒子を生産できる。
【0034】
乾燥した生成物の回収は、例えば、織布濾過器を用いた濾過のような回収技術用いて達成できる、若しくは乾燥粒子を、それらが除去できる乾燥器に集める為に落下せしめる、しかしながら、好適な回収技術のどれも利用できる。好ましい実施例において、生成物は粒子フィルタを使用して乾燥器から回収され、生成物をフィルタ匡体の底に定置し、スクリューコンベヤを用いて生成物をそこから回収し、次いで圧縮空気によって配管を通じてサイロに運ぶことができる。
【0035】
乾燥条件は、従来技術が適用できて、通常の技巧を持つ当業者によって適宜選択できる。一般的にこれらの条件は、代表的に250℃〜650℃の間の入り口気体温度と代表的に105℃〜150℃の間の出口気体温度を含む。
難燃剤用途
【0036】
本発明の難燃剤は、様々な合成樹脂の難燃剤として利用できる。本発明の難燃剤が利用できる熱可塑性樹脂の非限定例にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリブテンやポリ(4−メチルペンタン−1)等のような炭素原子数2〜8のオレフィン(アルファオレフィン)の重合体及び共重合体、これらのオレフィン及びジエンの共重合体、エチレンアクリレート共重合体、ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、エチレン塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンビニル塩化物−ビニルアセテートグラフト重合体樹脂、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル(塩素化ポリエチレン)塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−プロピレ
ン共重合体、ビニルアセテート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂などが含まれる。好適な合成樹脂の更なる例は、EPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR、NIR、ウレタンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素エラストマ、NBRのような天然又は合成ゴムを含み、クロロスルホン化ポリエチレンもまた含まれる。重合体懸濁物(格子状)も更に含まれる。
【0037】
好ましくは、合成樹脂はポリエチレン系樹脂(例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)、EEA(エチレンアクリル酸エチル樹脂)、EMA(エチレンアクリル酸メチル共重合体樹脂)、EAA(エチレンアクリル酸共重合体樹脂)及び超高分子量ポリエチレン、ポリブテンやポリ(4−メチルペンタン−1)等のような炭素原子数2〜8のオレフィン(アルファオレフィン)の重合体及び共重合体、ポリ塩化ビニル及びゴムである。より好ましい実施形態において、合成樹脂はポリエチレン系樹脂である。
【0038】
このように、一実施形態において、本発明は上述から選ばれる少なくとも一つの合成樹脂を含む難燃性重合体処方に関し、いくつかの実施形態において、本発明の難燃剤の1つ又は燃焼遅延量、任意の他の難燃剤、難燃性重合体処方から例えば押出又は成形工程によって作られる完結した物体に関する。
【0039】
本発明の難燃剤の燃焼遅延量では、それは、難燃性重合体処方の重量に基づいて一般的に約5重量%〜90重量%の範囲を意味し、同じ主成分でより好ましくは約10重量%〜約60重量%である。最も好ましい実施形態において、燃焼遅延量は、同じ主成分で、本発明難燃剤の約30重量部%〜約60重量%である。
【0040】
本発明の実施形態において、他の難燃剤又は異なる他の難燃剤の組み合わせは、重合体処方に添加できる。これら付加難燃剤の非限定例は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、層状複水酸化物(LDH)、有機的に変性した層状複水酸化物類(LDHs)、粘土、有機的に変性したナノ粘土、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、水酸基錫酸亜鉛、臭素化難燃剤、リン含有難燃剤、窒素含有難燃剤などのような無機系難燃剤である。(i)その結晶構造のケイ酸塩及び/又はリン酸塩イオンの包含によって変性されないか、若しくは変性を受けた合成ハイドロガーネットと(ii)本段落で記載されているような少なくとも1つの無機系難燃剤との組み合わせは、(i):(ii)重量比が99:1〜1:99の範囲、好ましくは95:5〜5:95の範囲のような関係量で代表的に用いられる。重合体において若しくは重合体と共に用いる難燃剤の組み合わせの総量は、使用している重合体の燃焼を遅延させるのに少なくとも充分な量である。
【0041】
難燃性重合体処方は、また、従来技術において共通して使われる他の添加剤を含むこともできる。本発明の難燃性重合体処方に好適な他の添加剤の非限定例には、ポリエチレンワックス、ケイ素系押出助剤、脂肪酸のような押出助剤、アミノー、ビニル−、アルキルシラン、マレイン酸融合重合体のような結合剤、ステアリン酸ナトリウム又はカルシウムステアリン酸塩、オルガノペルオキシド、染料、顔料、充填剤、発泡剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤、金属捕集剤又は不活性化剤、耐衝撃性改良剤、処理助剤、離型助剤、離型剤、ブロッキング防止剤、他の難燃剤、紫外線安定剤、可塑剤、流動助剤、等が含まれる。他の任意の添加剤の比率は、従来技術に従い、与えられた局面のいずれの需要にも適切に変化できる。
【0042】
難燃性重合体処方の成分の組み込みと添加の方法は本発明にとって臨界的ではなく、選択した方法が実質的に均質な混合を含む限りにおいては公知技術のいずれでもあり得る。
例えば、上記の各成分及び使用する任意の添加剤も、ブスコニーダー、密閉式混合機、Farrel連続混合器、二軸スクリュー押出機、又は場合によっては単軸スクリュー押出機又は2本ロール粉砕器を使用して混合できる。難燃性重合体処方は、次の処理段階において成型若しくは押出し成形できる。いくつかの実施形態において、装置を使って難燃性重合体処方を形成する成分を全面的に混合でき、更に、物体を難燃性重合体処方から成型できる。
【0043】
押し出された物体の場合、上記した合成樹脂混合物に効果的なことが公知のどの押出技術も利用できる。ある典型的な技術において、合成樹脂、本発明の難燃剤及び任意の成分は、選ばれれば、上述の難燃剤樹脂処方を形成するために配合器で調合する。難燃剤樹脂処方は、次に押し出し機において溶融状態に加熱され、融解した難燃剤樹脂処方は選択された型を通じて押し出され、押し出された物体を形成する、又は、例えばデータ伝送のために使用する金属電線又はガラス繊維を被覆する。
【0044】
本発明の他の実施形態において、本発明の難燃性重合体処方は熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1つの、場合によっては1つを超えるの合成樹脂を含む。熱硬化性樹脂の非限定例は、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、DOPOのようなリン含有樹脂、例えば、臭素化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステルのような変性エポキシ樹脂を含む。難燃性樹脂処方は、また、従来技術において共通して使われる他の添加剤を含むこともできる。上記引用に加えて本発明の難燃性重合体処方に好適な他の添加剤の非限定例は、溶剤、硬化剤又は促進剤のような熱硬化剤、分散剤又は微細シリカを含む。
【0045】
本発明の一実施形態において、他の難燃剤又は異なる他の難燃剤の組み合わせは、熱硬化性重合体処方に添加できる。これら付加難燃剤の非限定例は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、層状複水酸化物(LDH)、有機的に変性した層状複水酸化物類(LDHs)、粘土、有機的に変性したナノ粘土、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、水酸基錫酸亜鉛、臭素化難燃剤、リン含有難燃剤、窒素含有難燃剤などのような無機系難燃剤である。(i)その結晶構造のケイ酸塩及び/又はリン酸塩イオンの包含によって変性されないか、若しくは変性を受けた合成ハイドロガーネットと(ii)本段落で記載されているような少なくとも1つの無機系難燃剤との組み合わせは、(i):(ii)重量比が99:1〜1:99の範囲、好ましくは95:5〜5:95の範囲のような関係量で代表的に用いられる。熱硬化性重合体処方に用い、又は共用するこの種の難燃剤組み合わせの総量は、使用する熱硬化性重合体処方の燃焼遅延に少なくとも充分な量である。
【0046】
他の任意の添加剤の比率は、従来技術に従い、与えられた局面のいずれの需要にも適切に変化できる。熱硬化性重合体処方の成分の組み込み及び添加の好ましい方法は、高剪断混合による。例えば、Silverson社によってたとえば製造される高剪断混合器の使用による。樹脂−充填剤混合物の更なる処理は一般の最高水準の技術であり、文献に記載されている。例えば、硬化後の積層体用に、「プリプレグ」段及び硬化後の積層体に対する、樹脂−充填剤混合物の更なる処理はMcGraw−Hill出版社発刊の「エポキシド樹脂ハンドブック」に記載されており、本願明細書において完全に参考文献として取り入れている。
【0047】
本発明の他の実施形態において、本発明の難燃性重合体処方も、少なくとも1つの、場合に2つ以上の、重合体変性瀝青を含む。重合体変性瀝青の非限定例は、ポリプロピレンによって変性されるそれら及びスチレンブタジエンスチレンゴムによって変性されるそれらを含む。難燃性瀝青処方は、また、従来技術において共通して使われる他の添加剤を含むこともできる。本発明の難燃性重合体処方に好適な他の添加剤の非限定例は、上記した他の添加剤である。本発明の更に他の実施形態において、他の難燃剤又は異なる他の難燃剤の組み合わせは、重合体変性瀝青処方に添加できる。他の任意の添加剤の比率は、従来
技術に従い、与えられた局面のいずれの需要にも適切に変化できる。
【0048】
上記の記載は、本発明のいくつかの実施形態に対して述べている。当業者であれば、均等に効果的な他の手段が本発明の趣旨を実行するために工夫され得ると認識するであろう。本発明の好ましい実施形態が本願明細書において議論される全ての範囲がどの低限量からどの高限量までの範囲を含むことを熟慮することも強調されなければならない。例えば、本発明難燃剤の難燃量は、約70重量%〜約90重量%、約20重量%〜約70重量%の範囲の量も含むことができる。
【0049】
本発明の更なる実施形態としては、下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【0050】
a)少なくとも1つの合成樹脂又はゴムとその結晶構造にケイ素原子及び/又はリン原子を含むことによって任意に変性された合成ハイドロガーネットを含む少なくとも1つの難燃剤の約5重量%〜約90重量%の範囲とを含む難燃性重合体処方で、前記合成ハイドロガーネットがケイ素原子及び/又はリン原子を含むことによって変性を受けない場合の立方晶形を有し、選択的に、少なく1つの他の難燃剤添加剤を有する、難燃性重合体処方。
【0051】
b)前記の合成樹脂が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び重合性懸濁液から選択される、a)に記載の難燃性重合体処方。
【0052】
c)前記の合成樹脂がポリオレフィン系樹脂である、a)に記載の難燃性重合体処方。
【0053】
d)前記の合成樹脂がエポキシ系樹脂である、a)に記載の難燃性重合体処方。
【0054】
e)前記の合成樹脂がポリエステル系樹脂である、a)に記載の難燃性重合体処方。
【0055】
f)少なくとも1つの重合体変性瀝青と、その結晶構造にケイ素原子及び/又はリン原子を含むことによって任意に変性された合成ハイドロガーネットを含む少なくとも1つの難燃剤の約5重量%〜約90重量%の範囲とを含む難燃性重合体処方で、前記合成ハイドロガーネットがケイ素原子及び/又はリン原子を含むことによって変性を受けない場合の立方晶形を有し、選択的に、少なく1つの他の難燃剤添加剤を有する、難燃性重合体処方。
【0056】
g)前記の難燃剤添加剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、層状複水酸化物、有機的変性層状複水酸化物、粘土、有機的変性ナノ粘土、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛及び水酸基錫酸亜鉛、臭素化難燃剤、リン含有難燃剤、窒素含有難燃剤から選択される、a)又はf)に記載の難燃性重合体処方。
【0057】
h)前記の難燃性重合体処方が、押出助剤、結合剤、溶解剤、硬化剤、染料、顔料、充填剤、発泡剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤、金属捕集剤又は不活性化剤、衝撃変性剤、処理助剤、離型助剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線安定剤、可塑剤及び流動助剤から選択される少なくとも1つの付加添加剤を含む、a)又はg)に記載の難燃性重合体処方。
【0058】
i)前記の難燃剤が下記実験式を有するa)〜h)のいずれかに記載の難燃性重合体処方:
(A)MIIIII(OH)12−4x(SiO、式中MIIはIIA族金属原子であり、MIIIはIIIA族金属原子であり、xは約0.05〜約1.5の範囲
の数である、又は、
(B)MIIIII(OH)12−5y(PO、式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じであり、yは約0.05〜約1.5の範囲の数である、又は、
(C)MIIIII(OH)12−5y−4x(PO(SiO、式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じであり、xは(A)における定義と同じであり、yは(B)における定義と同じである、但しx+yの和は約0.05〜約1.5の範囲の数である、又は、
(D)MIIIII(OH)12、式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じである。
【0059】
j)前記の合成組成物が(A)の実験式を有するi)に記載の難燃性重合体処方。
【0060】
k)前記の合成組成物が(B)の実験式を有するi)に記載の難燃性重合体処方。
【0061】
l)前記の合成組成物が(B)の実験式を有するi)に記載の難燃性重合体処方。
【0062】
m)前記の合成組成物が(D)の実験式を有するi)に記載の難燃性重合体処方。
【0063】
n)MIIが、(i)Ca、Sr又はBa、(ii)Ca、Sr又はBaのうちの少なくとも2つの混合物、(iii)MgとCa、Sr又はBaのうちの1つ以上との混合物であって、(iii)の混合物の約50重量%未満がMgであり、MIIIが(i)Al又は(ii)AlとB、Ga、In、Tlのうちの1つ以上との混合物であり、(ii)の混合物の約20重量%未満はB、Ga、In、Tlの1つ以上である、i)〜m)のいずれかに記載の難燃性重合体処方。
【0064】
o)MIIの少なくとも約98重量%がCaであり、MIIIの少なくとも約98重量%がAlである、n)に記載の難燃性重合体処方。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、説明のために示される。それらは、限定を意図するものではなく、本発明をここで記載されている細目だけに限定することとして解釈されてはならない。
一般の手順
【0066】
本発明によって提供される新規な無機変性ハイドロガーネット難燃剤を合成するためのこれらの実施例において使用される一般の手順は、以下の通りであった:外部加熱源及びプロペラ撹拌機を備えた20リットルの容器内に、指定された量の水及び水酸化アルカリを充填する。撹拌しつつ、適当な温度に達するまで混合物を加熱し、アルミニウム三水酸化物(ATH)、好適なカルシウム化合物及び好適なケイ素化合物はそれから適当な形で、適当な量で添加し、添加時間を書き留める。調製混合物を、指定された温度で、4時間かけて連続的に撹拌する。この時点で、混合物は容器から除去され、室温までに冷却される。スラリー状の調製混合物を次にフィルタプレスを経て濾過し、洗浄水の電導度が500μ秒未満に達するまで蒸留水で洗浄する。濾過ケークを再結合し、水で再度スラリー化する。調製スラリーを次に220℃の入り口温度と約80℃の出口温度で作動するBuchi実験室噴霧乾燥器、型B−290、で乾燥する。水分蒸発の速度は、毎時ほぼ1リットルである。
試験方法
【0067】
実施例において生成され、評価される組成物の結果と特性とを判定するために使用する方法は、以下通りである:
A)BET表面積は、DIN−66132によって測定した。
B)粒径分布の中位数(d50)はISO13320に準拠したBeckman Coulter LS 13 320を使用し、レーザ回折によって測定した。以下の詳細な手順を利用する:好適な水−分散剤水溶液をベックマン粒径分析器に斯け、その水溶液の背景測定を行う。測定される試料のほぼ0.5gを次に背景測定を行う際に使用する同一の水−分散剤水溶液に分散し、このようにして懸濁液を形成する。この懸濁液に200Wで2分間の超音波処理を施し、次にピペットによって装置に導入し、製造元が指定する最適の計測濃度に達するまで導入を続ける。応用ソフトウェアにおいて、試料用の適当なパラメータ、即ち、屈折率とナノ範囲用PIDS検出器を含む計測条件、を選ぶ。その後に、粒度分布データを90秒間隔で集め、Mie散乱理論によって分析する。これらの判定で使用する水/分散剤水溶液を調合するために、500グラムの登録商標Calgon分散剤、KMF Laborchemie製、及び3リットルのCAL Polysalt、BASF製、から最初に濃縮物を調合することが便利である。この水溶液は、脱イオン水を用いて10リットルまで調合する。次いで、この原液10リットルのうち100mlを取り出し、今度は脱イオン水で10リットルに薄め、最終的な水溶液を上述の水−分散剤水溶液として使用する。
C)熱重量分析(TGA)は、Mettler Toledo TGA/SDTA 851eMettler Toledo TGA/SDTA 851e計測器を使用して実行された。この分析において、窒素(毎分25ml)の下で蓋のある70μlのアルミナるつぼ(約180mgの初期重量)を使用した。使用した加熱速度は、毎分1℃であった。D)酸化ナトリウム含有量の炎光光度判定は、ラング博士による炎光光度計M 7DC又はM 8D Propanを使用して行われた。
E)X線 粉末回折(XRD)は、単色化用のニッケルフィルタを有する銅陽極を適用して、Bragg−Brentano焦点化を備えたSiemensD500計測器で実行する。
F)ASTM E 1354に準拠して厚さ3mmの圧縮成型板上で、35kW/mの条件で円錐型熱量測定計測を行った。表2で示すピーク発熱速度(PHRR)は、円錐型熱量計の試料の燃焼の間に放出される熱の最大値である。円錐型熱量計の試料の燃焼の間に第2ピークがある場合、発熱速度(HRR)の値も測定する。表2で示す点火までの時間(TTI)値は、試料が円錐型熱量計への熱暴露によって点火する時間である。MARHE(Maximum of the Average Rate of Heat Emission)は、発熱の平均速度の最大値である。
【0068】
実施例1〜8、10及び実施例11は本発明の新規な難燃剤及びこれらの調合方法を説明するためのものである。実施例9及び12は、比較目的のために提示する。
実施例 1(発明)
【0069】
本実施例において、20リットル容器に対する初期充填は4リットルの水であり、次いでNaOHを324g充填した。この混合物を撹拌しながら、1分当たり約15℃の割合で、95℃まで加熱した。所望の温度に到達した時、微細な沈殿アルミニウム3水和物413gを添加し、次いで水酸化カルシウム587gを添加し、更に27重量%の算出SiO濃度を有する水ガラス(NaSi)のケイ酸ソーダ水溶液(Riedel−de Haen社製)93gを添加した。これにより合成難燃剤1モル当たり0.15モル当量のケイ酸塩相当の理論量が提供され、生成物CaAl(OH)11.4(SiO0.15が得られる。この混合物は2時間撹拌して前記温度に維持された。この結果として得た合成無機変性難燃剤の分析判定結果を表1に要約表示する。この生成物の八面体結晶形状のSEM写真を図6に示す。「SiO」濃度は計算目的だけの計算値である点に留意されたい。実際にSiOが存在することを意味するものではない。
実施例2(発明)
【0070】
本実施例において、20リットル容器に対する初期充填は4リットルの水であり、次いでNaOHを444g充填した。この混合物を撹拌しながら、1分当たり約15℃の割合で、95℃まで加熱した。所望の温度に到達した時、微細な沈殿アルミニウム3水和物413gを添加し、次いで水酸化カルシウム587gを添加し、更に27重量%の算出SiO濃度を有する水ガラス(NaSi)のケイ酸ソーダ水溶液(Riedel−de Haen社製)587gを添加した。これにより合成難燃剤1モル当たり0.3モル当量のケイ酸塩相当の理論量が提供され、生成物CaAl(OH)10.8(SiO0.3が得られる。この混合物は2時間撹拌して前記温度に維持された。この結果として得た合成無機変性難燃剤の分析判定結果を表1に要約表示する。
実施例3(発明)
【0071】
本実施例において、20リットル容器に対する初期充填は14,2リットルの水であり、次いで3.55kgのSolvayアルコール飲料と50重量%の濃縮NaOHとを充填した。この混合物を撹拌しながら、1分当たり約1℃の割合で、95℃まで加熱した。所望の温度に到達した時、微細な沈殿アルミニウム3水和物1850gを添加し、次いで水酸化カルシウム2340gを添加し、更に27重量%の算出SiO濃度を有する水ガラス(NaSi)のケイ酸ソーダ水溶液(Riedel−de Haen社製)750gを添加した。
これにより合成難燃剤1モル当たり0.3モル当量のケイ酸塩相当の理論量が提供され、生成物CaAl(OH)10.8(SiO0.3が得られる。この混合物は1時間撹拌して前記温度に維持された。この結果として得た合成無機変性難燃剤の分析判定結果を表1に要約表示する。
実施例4(発明)
【0072】
本実施例において、20リットル容器に対する初期充填は4リットルの水であり、次いでNaOHを705g充填した。この混合物を撹拌しながら、1分当たり約15℃の割合で、95℃まで加熱した。所望の温度に到達した時、微細な沈殿アルミニウム3水和物413gを添加し、次いで水酸化カルシウム587gを添加し、更に85重量%HPOの濃度を有するリン酸92gを添加した。これにより合成難燃剤1モル当たり0.3モル当量のケイ酸塩相当の理論量が提供され、生成物CaAl0.3(OH)10.5(PO0.3が得られる。この混合物は2時間撹拌して前記温度に維持された。この結果として得た合成無機変性難燃剤の分析判定結果を表1に要約表示する。
実施例5(発明)
【0073】
20リットル容器に4リットルの水、444gの水酸化ナトリウムを充填し、次いで微細な沈殿アルミニウム3水和物413gを添加し、更に587gの水酸化カルシウムを添加し、合成ハイドロガーネットCaAl(OH)12を得た。次いで混合物を2時間かけて85℃で加熱した。4時間後のスラリーのpHは、12.1であった。この結果として得た無変性合成アルミン酸カルシウム難燃剤の分析判定結果を表1に要約表示する。この生成物の立方晶形状のSEM写真を図7に示す。
【表1】

【0074】
表1は発明の難燃性材料がアルミニウム三水酸化物(ATH)、Martinswerk社によって生産される市販のATH難燃剤Martinal OL−104のLEOによって表示、よりかなり高い熱安定性を有することを示す。ケイ酸塩及びリン酸塩変性ハイドロガーネット材料(実施例1〜4)の熱安定性が、無変性ハイドロガーネット(実施例5)と比較して高いことを更に示す。
実施例6(発明)
【0075】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00119エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)100phr(約396.9g)と、実施例1で生成した本発明難燃剤の150phr(約595.3g)とをEvonik社製アミノシランAMEO1.2phr(約4.8g)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ‐tert‐ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)(Albemarle社製登録商標Ethanox 310 抗酸化剤)0.75phr(約3.0g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、130℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温まで冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図1は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表2は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
実施例7(発明)
【0076】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00119エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)100phr(約396.9g)と、実施例2で生成した本発明難燃剤150phr(約595.3g)とをEvonik社製アミノシランAMEO 1.2phr(約4.8g)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ‐tert‐ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)(Albemarle社製登録商標Ethanox 310 抗酸化剤)0.75phr(約3.0g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、130℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温まで冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図2は、厚さ
3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表2は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
実施例8(発明)
【0077】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00119エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)100phr(約396.9g)と、実施例5で生成した比較添加剤150phr(約595.3g)とをEvonik社製アミノシランAMEO1.2phr(約4.8g)及びAlbemarle社製登録商標Ethanox 310 抗酸化剤0.75phr(約3.0g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、130℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温まで冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図3は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表2は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
実施例9(比較)
【0078】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00119エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)100phr(約396.9g)と、Martinswerk社によって生産される市販のATH難燃剤Martinal OL−104 LEO 150 phr (約595.3g) とをEvonik社製アミノシランAMEO 1.2phr(約4.8g)及びAlbemarle社製登録商標Ethanox 310 抗酸化剤0.75phr(約3.0g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、130℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温まで冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図1、2及び図3は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表2は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。表2において、実施例6、7及び実施例8は本発明の実施例であるが、実施例9は比較実施例である。
【表2】

【0079】
発明実施例7のPHRRが比較実施例9よりも相当に低いことが、表2によって分かる。発明実施例6及び8のPHRRは、実験誤差の範囲内で、実施例9のPHRRに等しい
が、図1,2及び図3は、初期ピーク後、発明実施例の放熱速度が比較実施例9よりも低いことを示し、これにより、良好な難燃剤特性を示す。発明実施例6、7及び発明実施例8ではMARHEも減少している。
【0080】
円錐曲線の第2最大値に対応する時間値は一般に充填剤のチャー形成潜在性と相関しており、チャーが強い程、第2ピークピークの出現時間は長くかかる。表2は発明実施例6、7及び実施例8の全てが比較実施例9より相当に長い「第2ピークピークまでの時間」を示し、無機系難燃性充填剤の最高水準技術を示唆する。また、第2ピークの放熱速度は発明実施例6、7及び実施例8では比較実施例9より相当に低く、それぞれの実施例のPHRRに関する絶対値と同様に共に留意する必要がある。
実施例10(発明)
【0081】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00328エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)67phr(約333,8g)及びExxonMobil社製線状低密度ポリエチレン(LLDPE)LL1001XV 17phr(約84.7g)と実施例4で生成した本発明難燃剤100phr(約498.13g)とを Arkema社製でEthylene(E)、ブチルアクリレート(BA)及び無水マレイン酸(MAH)のランダムターポリマーLotader 3210 8phr(約39.9g)、DuPont社製MAH融合LLDPE Fusabond MB 226D 8phr(約39.9g)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ‐tert‐ブチル−4−ヒドロキシエチル)プロピオナート)(Albemarle社製登録商標Ethanox310 抗酸化剤)0.75phr(約3.7g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、150℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温迄冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図4は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表3は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
実施例11(発明)
【0082】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00328エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)67phr(約333,8g)及びExxonMobil社製線状低密度ポリエチレン(LLDPE)LL1001XV 17phr(約84.7g)と実施例5で生成した本発明難燃剤100phr(約498.13g)とを Arkema社製でEthylene(E)、ブチルアクリレート(BA)及び無水マレイン酸(MAH)のランダムターポリマーLotader 3210 8phr(約39.9g)、DuPont社製MAH融合LLDPE Fusabond MB 226D 8phr(約39.9g)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ‐tert‐ブチル−4−ヒドロキシエチル)プロピオナート)(Albemarle社製登録商標Ethanox310 抗酸化剤)0.75phr(約3.7g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、150℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温迄冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図5は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表3は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
実施例12(比較)
【0083】
ExxonMobil社製登録商標EscoreneUltra UL00328エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)67phr(約333,8g)及びExxonMobil社製線状低密度ポリエチレン(LLDPE)LL1001XV 17phr(約84.7g)とMartinswerk社によって生産される市販のATH難燃剤Martinal OL−104 LEO 100phr(約498.1g)とを Arkema社製でエチレン(E)、ブチルアクリレート(BA)及び無水マレイン酸(MAH)のランダムターポリマーLotader 3210 8phr(約39.9g)、DuPont社製MAH融合LLDPE Fusabond MB 226D 8phr(約39.9g)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ‐tert‐ブチル−4−ヒドロキシエチル)プロピオナート)(Albemarle社製登録商標Ethanox310 抗酸化剤)0.75phr(約3.7g)と共にCollin 社製の2本ロール粉砕器W150M上で約20分間混合した。2本ロール粉砕器上の混合は、当業者に周知の通常の方式において行った。2本ローラーの温度は、150℃に設定した。準備できた化合物を粉砕器から除去し、室温迄冷却して後、粒径を更に縮小して、2圧盤プレスでの圧縮成形に適した粒状物を得た。図4及び5は、厚さ3mmの圧縮成形板上にて35kW/mで測定した円錐型熱量計放熱速度曲線である。表3は、円錐曲線の特性値(即ち、PHRR、TTI、MARHE及び放熱速度(HRR)及び第2最大値時間)を示す。
【表3】

【0084】
実施例10〜12の重合体処方が異なっており、充填剤の量が相当に低く、2処方は互いに比較するべきでは無い点に留意する必要がある。
【0085】
発明実施例10及び11のPHRRが比較実施例12よりも相当に低いことが、表3によって分かる。図4及び5は初期ピーク後の発明実施例の放熱速度が比較実施例11より相当に低く、より良好な難燃剤特性を示している。発明実施例ではMARHEも減少している。
【0086】
円錐曲線の第2最大値に対応する時間値は一般に充填剤のチャー形成潜在性と相関しており、チャーが強い程、第2ピークの出現時間は長くかかる。表3は発明実施例10及び11が比較実施例12より相当に長い「第2ピークまでの時間」を示す。実施例12は、無機系難燃性充填剤の最高水準技術を示唆する。また、第2ピークの放熱速度は発明実施例10及び11では比較実施例12より相当に低い点に留意する必要がある。
【0087】
本明細書若しくは請求項のいずれの場所において化学名又は化学式によって言及される成分は、単数であっても複数であっても、それらが化学名又は化学的な型(例えば他の成分、溶解剤等)によって言及される他の物質との接触に先立って存在するものと識別される。如何なる化学的変化、化学的変換及び/又は化学的反応が起ころうと、この種の変化、変換及び/又は反応で結果として生じる混合物又は溶液で発生する物が、特定の成分をこの開示に従って要求される条件下でまとめた自然の結果であることは重要ではない。こ
のように、成分は所望の操作を実行することと関連して又は所望の組成を形成する際にまとめられる原料として識別される。また、以下の請求項が、現在時制(「含む」、「である」等)で物質、成分及び/又は原料を言及しても、その言及は、前記物質、成分又は原料が本開示に従った他の1つ以上の物質、成分及び/又は原料と最初に接触し、調合し、若しくは混合する直前に存在したものに適用される。物質、成分又は原料が、接触、調合又は混合操作過程の間、化学反応又は変換によってその初期同一性を失い得たという事実は、この開示によって、化学者の通常の熟練によって実施された場合、実際的な関心事ではない。本願明細書のいかなる部分においても言及した各々又はいずれの特許若しくは公開も本開示に参考文献として関連し、あたかも本願明細書における記載のように扱われる。
【0088】
別段に明白な示唆がなければ、本願明細書において使用する冠詞「a」又は「an」は、請求項をその冠詞が言及する単一要素に限定することを意図するものでは無い。むしろ、文脈に別段の明瞭な示唆がなければ、本願明細書において使用する冠詞「a」又は「an」は、一つ以上の前記要素を包含することを意図するものである。
【0089】
本発明は、本願明細書において詳述される材料及び/又は手順を含み、これらから成り、又は実質的にこれらのみから成っても良い。
【0090】
本発明は、その実用における重要な変動に影響されやすい。従って、前述の記載は本発明を本願明細書の上記に提示した特別の実例等に限定することを意図するものではなく、限定することとして解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造にケイ素原子及び/又はリン原子を含ませることによって任意に変性される合成ハイドロガーネットを含む難燃剤であって、ケイ素原子及び/又はリン原子を含有することによる変性が無い場合に、前記合成ハイドロガーネットが立方晶形を有する難燃剤。
【請求項2】
下記いずれかの実験式を有する請求項1に記載の難燃剤:
(A)
【化1】

式中MIIはIIA族金属原子であり、MIIIはIIIA族金属原子であり、xは約0.05〜約1.5の範囲の数である、又は、
(B)
【化2】

式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じであり、yは約0.05〜約1.5の範囲の数である、又は、
(C)
【化3】

式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じであり、xは(A)における定義と同じであり、yは(B)における定義と同じである、但しx+yの和は約0.05〜約1.5の範囲の数である、又は、
(D)
【化4】

式中MII及びMIIIは(A)における定義と同じである。
【請求項3】
前記の合成ハイドロガーネットが(A)の実験式を有する、請求項2に記載の難燃剤。
【請求項4】
前記の合成ハイドロガーネットが(B)の実験式を有する、請求項2に記載の難燃剤。
【請求項5】
前記の合成ハイドロガーネットが(C)の実験式を有する、請求項2に記載の難燃剤。
【請求項6】
前記の合成ハイドロガーネットが(D)の実験式を有する、請求項2に記載の難燃剤。
【請求項7】
IIが、(i)Ca、Sr又はBa、(ii)Ca、Sr又はBaのうちの少なくとも2つの混合物、又は(iii)MgとCa、Sr又はBaのうちの1つ以上との混合物であって、(iii)の混合物の約50重量%未満がMgであり、MIIIが(i)Al又は(ii)AlとB、Ga、In、Tlのうちの1つ以上との混合物であり、(ii)の混合物の約20重量%未満はB、Ga、In、Tlの1つ以上である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の難燃剤。
【請求項8】
IIの少なくとも約98重量%がCaであり、MIIIの少なくとも約98重量%がAlである、請求項7に記載の難燃剤。
【請求項9】
下記実験式を有する化合物を形成するための工程:
a)
【化5】

式中MIIはIIA族金属原子であり、MIIIはIIIA族金属原子であり、xは約0.05〜約1.5の範囲の数である、
b)
【化6】

式中MII及びMIIIはa)における定義と同じであり、yは約0.05〜約1.5の範囲の数である、
c)
【化7】

式中MII及びMIIIはa)における定義と同じであり、xはa)における定義と同じであり、yはb)における定義と同じである、但しx+yの和は0.05〜約1.5の範囲の数である、
d)
【化8】

式中MII及びMIIIはa)における定義と同じであり、この工程は下記を含む:
i)(1)IIIA族金属源(2)IIA族金属源(3)式a)又はc)の化合物を形成する時のケイ素源、(4)式b)又はc)の化合物を形成する時のリン源及び(5)水酸化アルカリ金属で形成した混合物の撹拌すること、
ii)約50℃〜約100℃の範囲の温度での前記混合物の加熱すること、及び、
iii)反応生成物を任意に冷やす、又は反応生成物を冷却すること、ここで、前記混合物形成において使用する前記IIIA族金属源と前記IIA族金属源との比率はIIA族金属:IIIA族金属のモル比にて、約1:1〜約2:1の範囲内であり、またここで、前記混合物を形成する前記のケイ素源は、形成すべき化合物の1モル当たり約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のケイ酸塩を提供する為に用いられ、及び/又は、前記混合物を形成する前記のリン源は、形成すべき化合物の1モル当たり約0.05モル〜約1.5モルの範囲の量のリン酸塩を提供する為に用いられる。
【請求項10】
前記の化合物がa)の実験式を有する、請求項9に記載の工程。
【請求項11】
前記の化合物がb)の実験式を有する、請求項9に記載の工程。
【請求項12】
前記の化合物がc)の実験式を有する、請求項9に記載の工程。
【請求項13】
前記の化合物がd)の実験式を有する、請求項9に記載の工程。
【請求項14】
前記の混合物(1)がアルミニウム源である、及び/又は前記の混合物(2)がカルシウム源である、及び/又は前記の混合物(3)が水性ケイ酸塩溶液若しくは結晶性二酸化ケイ素である、及び/又は前記の混合物(4)が水性リン酸塩溶液である、請求項9に記載の工程。
【請求項15】
前記の混合物において、前記アルミニウム源が水酸化アルミニウム、ベーマイト、疑似ベーマイト、酸化アルミニウム又は前述の2つ以上の混合物である、及び/又は前記カルシウム源が無機塩、水酸化物若しくはこれらの水和物を含むカルシウムの酸化物である、及び/又は前記水性ケイ酸塩溶液がNaSiO若しくはNaSiの1つ以上の溶液である、及び/又は、前記水性リン酸塩溶液がリン酸、アルカリ若しくはリン酸アンモニウム塩、アルカリ若しくはアンモニウム2リン酸塩及び/又はアルカリ若しくはポリリン酸アンモニウム塩のうちの1つ以上の溶液である、請求項14に記載の工程。
【請求項16】
少なくとも1つの合成樹脂、ゴム又は少なくとも1つの重合体変性瀝青と、請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの難燃剤の約5重量%〜約90重量%と、必要に応じて少なくとも1つの他の難燃剤添加剤とを含む難燃性重合体処方。
【請求項17】
前記の処方が合成樹脂を含み、前記の合成樹脂が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び高分子懸濁液から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の難燃性重合体処方。
【請求項18】
前記の処方が合成樹脂を含み、前記の合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項16に記載の難燃性重合体処方。
【請求項19】
前記の処方が合成樹脂を含み、前記の合成樹脂がエポキシ系樹脂であることを特徴とする、請求項16に記載の難燃性重合体処方。
【請求項20】
前記の処方が合成樹脂を含み、前記の合成樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項16に記載の難燃性重合体処方。
【請求項21】
前記難燃剤添加剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、層状複水酸化物、有機的に変性した層状複水酸化物、粘土、有機的に変性したナノ粘土、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛及び水酸基錫酸亜鉛、臭素化難燃剤、リン含有難燃剤、窒素含有難燃剤から選択される、請求項16に記載の難燃性重合体処方。
【請求項22】
前記の難燃性重合体処方が、押出助剤、結合剤、溶解剤、硬化剤、染料、顔料、充填剤、発泡剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤、金属捕集剤又は不活性化剤、耐衝撃性改良剤、処理助剤、離型助剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線安定剤、可塑剤及び流動助剤から選択される少なくとも1つの付加添加剤を含む、請求項16に記載した難燃性重合体処方。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−509389(P2012−509389A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537514(P2011−537514)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064305
【国際公開番号】WO2010/059508
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】