説明

合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備

【課題】プレス成形時の摺動特性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、工業的規模で安定して製造する設備を提供する。
【解決手段】溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、水洗装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、中和処理装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は亜鉛めっき鋼板と比較して溶接性および塗装性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用されている。そのような用途での合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での合金化溶融めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で合金化溶融亜鉛めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
【0003】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に亜鉛めっきを施した後、加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっき層中のZnが拡散する合金化反応が生じることにより、Fe-Zn合金相を形成させたものである。このFe-Zn合金相は、通常、Γ相、δ1相、ζ相からなる皮膜であり、Fe濃度が低くなるに従い、すなわち、Γ相→δ1相→ζ相の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。このため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、プレス成形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の平均Fe濃度を高めに製造されている。
【0004】
しかしながら、高Fe濃度の皮膜では、めっき−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく加工時に、界面から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生じ易い問題を有している。このため、特許文献1に示されているように、摺動性と耐パウダリング性を両立するために、上層に第二層として硬質のFe系合金を電気めっきなどの手法により付与する方法がとられている。
【0005】
亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を向上させる方法としては、この他に、高粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられている。しかし、この方法では、潤滑油の高粘性のために塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生したり、また、プレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。従って、合金化溶融亜鉛めっき自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
【0006】
上記の問題を解決する方法として、特許文献2および特許文献3には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とする酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させる技術を開示している。
【0007】
特許文献4は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の水溶液にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理を行うか、または、上記水溶液を塗布することにより、P酸化物を主体とした酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理性を向上させる技術を開示している。
【0008】
特許文献5は、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させることにより、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術を開示している。
【特許文献1】特開平1-319661号公報
【特許文献2】特開昭53-60332号公報
【特許文献3】特開平2-190483号公報
【特許文献4】特開平4-88196号公報
【特許文献5】特開平3-191093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の先行技術を合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用した場合、プレス成形性の改善効果を安定して得ることはできない。本発明者らは、その原因について詳細な検討を行った結果、合金化溶融めっき鋼板はAl酸化物が存在することにより表面の反応性が劣ること、及び表面の凹凸が大きいことが原因であることを見出した。即ち、先行技術を合金化溶融めっき鋼板に適用した場合、表面の反応性が低いため、電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理及び加熱処理等を行っても、所定の皮膜を表面に形成することは困難であり、反応性の低い部分、すなわち、Al酸化物量が多い部分では膜厚が薄くなってしまう。また、表面の凹凸が大きいため、プレス成型時にプレス金型と直接接触するのは表面の凸部となるが、凸部のうち膜厚の薄い部分と金型との接触部での摺動抵抗が大きくなり、プレス成形性の改善効果が十分には得られない。
【0010】
また、このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、自動車メーカーなどで使用する際には、使用量が膨大になることから、大量にしかも品質の高い製品を安定的に供給することが必要である。しかしながら、上記のような合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常の溶融めっきラインで製造することはできないため、現在のところ大量に安定して供給できない課題がある。
【0011】
本発明は、前記事情を考慮し、プレス成形時の摺動特性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、工業的規模で安定して製造する設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、合金化溶融めっき鋼板表面に存在する平坦部表層の酸化物層厚さを10nm以上に制御することで、安定して優れたプレス成形性が得られることを知見した。
【0013】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の上記平坦部は、周囲と比較すると凸部として存在する。プレス成形時に実際にプレス金型と接触するのは、この平坦部が主体となるため、この平坦部における摺動抵抗を小さくすれば、プレス成形性を安定して改善することができる。この平坦部における摺動抵抗を小さくするには、めっき層と金型との凝着を防ぐのが有効であり、そのためには、めっき層の表面に、硬質かつ高融点の皮膜を形成することが有効である。この観点から検討を進めた結果、平坦部表層の酸化物層厚さを制御することが有効であり、こうして平坦部表層の酸化膜厚を制御すると、めっき層と金型の凝着が生じず、良好な摺動性を示すことを見出した。また、このような酸化膜厚の形成には、酸性溶液と接触させてめっき表層に酸化物層を形成する方法が有効なことが明らかになった。
【0014】
本発明者らは、前記の知見に基づいて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法について特許出願した(特願2000-212591)。この出願に係る発明は、鉄−亜鉛合金めっき表面に面積率で20〜80%の平坦部を有し、その平坦部の表層に厚さが10nm以上の酸化物層を有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、前記鋼板を製造するに際し、鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱処理により合金化し、調質圧延を施した後に、酸性溶液と接触させてめっき表層に酸化物層を形成することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0015】
さらに、本発明者らは、プレス成形時の摺動性に優れた合金化溶融めっき鋼板の製造方法について検討した結果、前記製造方法において、酸性溶液に接触終了後1〜30秒放置した後水洗、乾燥することによって、摺動特性に優れた鋼板をより安定的に製造できることが明らかになり、この観点から特許出願した(特願2001-059914)。
【0016】
本発明は、このようなプレス成形時の摺動特性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、工業的規模で安定して製造する設備を提供することを目的としたものであり、その要旨は次のとおりである。
【0017】
第一発明は、溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、水洗装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【0018】
第二発明は、溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、中和処理装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【0019】
第三発明は、第二発明において、酸性溶液濃縮領域と中和処理装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【0020】
第四発明は、第二または第三発明において、中和処理装置と乾燥装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【0021】
第五発明は、第一〜第四発明のいずれかにおいて、調質圧延機と酸性溶液接触装置の間に活性化処理装置を設置することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【0022】
第六発明は、第一〜第五発明のいずれかにおいて、溶融亜鉛めっき装置の前に、連続焼鈍炉が配設されていることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、めっき表面平坦部に酸化物層を形成することにより摺動性を向上させ、プレス成形性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を量産することができるので、工業的に大きな効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
通常、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際しては、溶融亜鉛めっき設備の前に設けられている連続焼鈍炉で焼鈍され、溶融亜鉛めっき装置でめっきされる。
【0025】
溶融亜鉛めっき装置としては、例えば、亜鉛めっき浴温度近傍まで加熱された鋼帯(鋼板)を連続的に亜鉛めっき浴へ導き、めっき浴から引き出された後に、ガスワイピングによりめっき付着量を20〜120g/m2に制御される。こうして溶融亜鉛めっきを施された鋼板は、合金化加熱炉に導かれ、熱拡散によりめっき層中へFeが6〜15%程度含有せしめた合金化溶融亜鉛めっき鋼板となる。この際、所定温度に加熱でき、めっき層中へ所定量のFeを拡散させることができれば、その加熱方式に制限はないが、高周波誘導加熱方式の加熱炉を用いると有利である。これは、高周波誘導加熱方式を用いることにより、鋼板自体を瞬時に加熱できるため、短時間で均一な合金化が可能であり、また、鋼板幅方向、長さ方向でバラツキが少ないためである。
【0026】
上記のように、溶融亜鉛めっき、さらに合金化処理を施された鋼板は、高温であるため、例えば送風機などを用いた冷却装置により、常温程度まで冷却する必要がある。
【0027】
その後、材質の制御、めっき表面の粗度を調整するため、冷却されためっき鋼板は調質圧延機に導かれる。この調質圧延時には、めっきの凹凸が緩和され、めっき表面には平坦部が形成される。この凹凸の緩和により合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動性は向上するため、めっき表面に平坦部を存在させることは重要である。一方、平坦化されない部分(凹部)は、潤滑油を保持し、プレス成形時の油切れを防止する役割があることから、凹部の存在も重要である。この観点から、めっき表面の平坦部の面積率は20〜80%の範囲にあることが有効であり、調質圧延時の圧下率は、前記平坦部の面積率となるように調整する必要がある。
【0028】
引き続き、調質圧延後のめっき鋼板は、酸性溶液接触装置、および酸性溶液濃縮領域に導かれ、めっき表面平坦部にZnを主成分とする酸化物層を形成する処理が施される。これは、めっき鋼板に酸性溶液を接触させると、めっき成分であるZnが溶解し、これに伴う水素発生反応により液のpHが上昇するため、Znの水酸化物がめっき表面へ沈殿し、その結果、Znを主成分とする酸化物層が形成されるためであると考えられる。しかしながら、単に酸性溶液と接触させただけでは、Znの溶解が生じるのみで、酸化物層が形成されないため、液を乾燥・濃縮する必要がある。本発明では、酸性溶液濃縮領域で液を乾燥・濃縮する。
【0029】
酸性溶液接触装置では、めっき鋼板と酸性溶液の接触が行われればよく、酸性溶液への浸漬処理を行う装置、酸性溶液のスプレー装置、酸性溶液をロールなどを用いて塗布する装置等があげられる。また、使用する酸性溶液は、めっき層中のZnを溶解する必要があるため、pHは1.0〜4.0程度に制御する必要がある。pHがこの範囲にあれば、その他に制限はなく、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができ、また塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの化合物類を添加した溶液を用いてもよい。
【0030】
一方、酸性溶液濃縮領域では、酸性溶液を完全に乾燥させる必要はないが、酸性溶液が濃縮し、酸化物が生成するのに十分な時間を経過させる必要がある。すなわち、酸性溶液が表面に少量存在する場合には、酸性溶液濃縮領域で鋼板を大気にさらしておく(放置しておく)だけでも十分である。この場合、大気にさらす時間(放置時間)は1〜30秒であることが望ましい。酸性溶液が表面に多量に存在する場合には、大気にさらしておくだけでは、酸化物が生成するのに長時間を要し、十分なスペースが必要であるため、加熱炉を設けたり、熱風乾燥装置を設けたりすることにより、鋼板表面の酸性溶液の濃縮を促進させる装置を設けるとより効果的である。また、このような鋼板表面の酸性溶液の濃縮を促進させる装置の設置が不可能な場合には、酸性溶液接触後に、絞りロールなどを用いて酸性溶液の付着量を制御し、酸化物生成時間を短縮することも可能である。この場合、酸性溶液の付着量は3.0g/m2以下に制御することが好ましい。
【0031】
こうして酸性溶液濃縮領域を通過した鋼板は、表面に残存した酸性溶液成分を洗い流す処理が施される。この観点から、直後に水洗装置を設け、鋼板の水洗処理を行うとよいが、この水洗が不十分であると、酸性溶液成分がめっき表面に残存し、実際の製品となった場合に腐食を促進する恐れがある。このため、鋼板を水洗するかわりに、中和処理装置に導くことにより、めっき表面に残存した酸性溶液成分を中和する処理を施すとより効果的である。中和処理に使用する溶液は、アルカリ性の溶液であれば特に制限はなく、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶液を使用することができる。
【0032】
この中和処理装置は、めっき液乾燥領域の直後に設けることもできるが、めっき液が乾燥したまま鋼板を中和処理装置に導入すると、中和処理液が汚染される場合があるため、めっき液乾燥領域と中和処理装置の間に水洗装置を設置し、一旦水洗を行うとよい。また、中和処理装置を通過した鋼板も、そのまま乾燥しても問題ないが、中和処理液が鋼板表面に残存すると、表面ムラなどにより外観を損ねる恐れがあるため、中和処理装置と乾燥装置の間に水洗装置を設置し、一旦水洗した後、乾燥することが望ましい。
【0033】
このように、めっき表面への酸化物形成処理が施された後のめっき鋼板は、最終的に、鋼板表面の水分を完全に除去するため、乾燥装置に導かれ、製品となる。
【0034】
このようにして形成されるめっき表面平坦部の酸化物層の厚さは、プレス成形性の向上のため10nm以上であることが必要であるが、厳しいプレス成形が施される場合には、20nm以上であることが好ましい。また酸化物層厚さの上限は特にないが、200nmを超えると表面の反応性が極端に低下し、化成処理皮膜を形成するのが困難になるため、200nm以下とするのが望ましい。
【0035】
上記のように、酸性溶液接触装置に導く前に、活性化処理装置を通過させるとより効果的である。これは、合金化加熱処理により、めっき鋼板表面には酸化物層が形成されており、その後の調質圧延過程で大部分が破壊されているものの、残存している酸化物も多く、反応性が低いためである。この観点から、酸性溶液に浸漬する前に、めっき表面に残存した酸化物を極力除去することは重要である。
【0036】
このような活性化処理の方法には特に制限はないが、表面を研削するなどの機械的に除去する方法や、強アルカリ性溶液と接触させることにより化学的に溶解させ除去する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の実施例を挙げる。なお、以下の図において、説明済みの図に示された部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
(実施例1)
図1は、本発明の装置の第1の実施の形態を示す概略説明図である。図1において、1は連続焼鈍炉、2は溶融亜鉛めっき槽、3は合金化加熱炉、4は冷却装置、5は調質圧延機、7は酸洗溶液接触装置である酸性溶液トレイ、8は酸性溶液濃縮領域、10は水洗装置、12は乾燥装置である。
【0038】
図1の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、酸性溶液濃縮領域8で鋼板を大気に接触させ、水洗装置10で水洗した後、乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯(合金化溶融亜鉛めっき鋼帯)Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【0039】
(実施例2)
図2は、本発明の装置の第2の実施の形態を示す概略説明図である。図2の装置では、酸性溶液濃縮領域8に誘導加熱装置9が設置されている。図2の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【0040】
連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、誘導加熱装置9を設置した酸性溶液濃縮領域8で鋼板表面の酸性溶液を濃縮する処理を行い、水洗装置10で水洗した後、乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【0041】
(実施例3)
図3は、本発明の装置の第3の実施の形態を示す概略説明図である。図3の装置において、11は中和処理装置であるアルカリスプレー処理装置であり、酸性溶液濃縮領域8と、アルカリスプレー処理装置(中和処理装置)11と、乾燥装置12が連接されている。図3の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【0042】
図3において、連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、酸性溶液濃縮領域8で鋼板を大気に接触させた後、アルカリスプレー処理装置11で50℃、pH10.0の水酸化ナトリウム溶液と接触させることにより、めっき表面に残存した酸性溶液を中和除去し、次いで乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【0043】
(実施例4)
図4は、本発明の装置の第4の実施の形態を示す概略説明図である。図4の装置では、酸性溶液濃縮領域8と、アルカリスプレー処理装置(中和処理装置)11の間に水洗装置10が設けられている。図4の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【0044】
図4において、連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、酸性溶液濃縮領域8で鋼板を大気に接触させ、水洗装置10で水洗する。その後、アルカリスプレー処理装置11で50℃、pH10.0の水酸化ナトリウム溶液と接触させることにより、めっき表面に残存した酸性溶液を中和除去し、次いで乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【0045】
(実施例5)
図5は、本発明の装置の第5の実施の形態を示す概略説明図である。図5の装置では、酸性溶液濃縮領域8とアルカリスプレー処理装置(中和処理装置)11の間に第1の水洗装置10が設けられ、さらにアルカリスプレー処理装置(中和処理装置)11と乾燥装置12の間に第2の水洗装置10が設けられている。図5の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【0046】
図5において、連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、酸性溶液濃縮領域8で鋼板を大気に接触させ、水洗装置10で水洗した。その後、アルカリスプレー処理装置11で50℃、pH10.0の水酸化ナトリウム溶液と接触させることにより、めっき表面に残存した酸性溶液を中和除去した後、水洗装置10で水洗し、次いで乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【0047】
(実施例6)
図6は、本発明の装置の第6の実施の形態を示す概略説明図であり、調質圧延機5と酸性溶液接触装置7の間に、活性化処理装置である前処理用アルカリスプレー装置6を設置した例である。図6の装置では、図5の装置について、調質圧延機5と酸性溶液接触装置7の間に、さらに前処理用アルカリスプレー装置(活性化処理装置)6が付設されている。図6の装置では、次のようにして合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【0048】
図6において、連続焼鈍炉1で鋼帯Sの表面を清浄化するとともに焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっき槽2へ導き、溶融亜鉛めっきを施し、溶融亜鉛めっき鋼帯Sとする。次いで、溶融亜鉛めっき鋼帯Sを合金化加熱炉3へ導き、加熱してめっき層内へ鉄を熱拡散して合金化処理を施した後、冷却装置4へ導き、めっき鋼帯Sを常温まで冷却し、次いで調質圧延機5へ導き、調質圧延を施す。その後、前処理用アルカリスプレー装置6で、50℃、pH12.0の水酸化ナトリウム水溶液と接触させ、50℃、pH2.0の硫酸酸性溶液を満たした酸性溶液トレイ7に導かれ、酸性溶液に浸漬しためっき鋼帯Sは、酸性溶液濃縮領域8で鋼板を大気に接触させ、水洗装置10で水洗する。その後、アルカリスプレー処理装置11で50℃、pH10.0の水酸化ナトリウム溶液と接触させることにより、めっき表面に残存した酸性溶液を中和除去した後、水洗装置10で水洗し、次いで乾燥装置12で水分を除去することにより、めっき表面に酸化物層を形成しためっき鋼帯Sが得られる。最終的には、簡易防錆油を塗布しコイル状に巻き取り製品とする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の装置の第1の実施の形態を示す概略説明図。
【図2】本発明の装置の第2の実施の形態を示す概略説明図。
【図3】本発明の装置の第3の実施の形態を示す概略説明図。
【図4】本発明の装置の第4の実施の形態を示す概略説明図。
【図5】本発明の装置の第5の実施の形態を示す概略説明図。
【図6】本発明の装置の第6の実施の形態を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 連続焼鈍炉
2 溶融亜鉛めっき槽
3 合金化加熱炉
4 冷却装置
5 調質圧延機
6 前処理用アルカリスプレー処理装置(活性化処理装置)
7 酸性溶液トレイ(酸性溶液接触装置)
8 酸性溶液濃縮領域
9 誘導加熱装置
10 水洗装置
11 アルカリスプレー処理装置(中和処理装置)
12 乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、水洗装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項2】
溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮領域と、中和処理装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項3】
酸性溶液濃縮領域と中和処理装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする請求項2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項4】
中和処理装置と乾燥装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項5】
調質圧延機と酸性溶液接触装置の間に活性化処理装置を設置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項6】
溶融亜鉛めっき装置の前に、連続焼鈍炉が配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮装置と、水洗装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項2】
溶融亜鉛めっき装置と、合金化加熱炉と、冷却装置と、調質圧延機と、酸性溶液接触装置と、酸性溶液濃縮装置と、中和処理装置と、乾燥装置を連設したことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項3】
酸性溶液濃縮装置と中和処理装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする請求項2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項4】
中和処理装置と乾燥装置の間に水洗装置を設置することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項5】
調質圧延機と酸性溶液接触装置の間に活性化処理装置を設置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。
【請求項6】
溶融亜鉛めっき装置の前に、連続焼鈍炉が配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183147(P2006−183147A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360082(P2005−360082)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【分割の表示】特願2002−35348(P2002−35348)の分割
【原出願日】平成14年2月13日(2002.2.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】