説明

同心性管マイクロプレート自動サンプリングインターフェース

本発明の例示的な実施形態に従って、容器(110)から流体サンプル(114)を得るためのシステムが提供される。この容器は、サンプルを保持するための容積を規定し、この容積はシール(116)によって閉鎖されている。外管(103)は、近位端(107)および遠位端を有し、この近位端はシールを貫通するのを可能にするような形状にされている。内管(105)は、貫通位置(内管の末端領域の末端が、外管の近位端から引き込められている)と伝達位置(内管の末端は外管の近位端を越えて同軸上に延びている)との間で、外管内で同軸上に移動可能である末端領域(109)を有する。外管および内管は、管アセンブリ(101)を形成する。管アセンブリおよび容器の少なくとも1つは、外管にシールを貫通させるように移動され得、そしてシールが貫通された後、内管は、容積に関する流体移送を可能にする伝達位置において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、サンプル液体をアッセイするための技術に関し、そしてより具体的には、シールされた容積からの少量の流体サンプルの物理的移送に関する。
【背景技術】
【0002】
高スループットスクリーニング(HTS)は、選択される標的に対する活性に関する非常に多くの化学化合物の迅速かつ正確な分析のための方法である。代表的な化学ライブラリーは、数十万〜数百万の別個の化合物を含み、これらの化合物は種々の広範な標的に対してスクリーニングされる。慣用的にスクリーニングされなければならない多くのアッセイは、少量の流体サンプルの迅速かつ定量的な分析を可能にする新規技術の必要性に繋がっている。
【0003】
しばしば、HTSにおいて処理される少量サンプルは、最初に、マイクロプレートにおいて形成される複数の少量のウェルにおいて保管される。マイクロプレートは、代表的にはポリプロピレンまたは他のプラスチックから作製され、このマイクロプレートはサイズが変動していてもよく、そしてウェルをいくらでも備えていてよい。例えば、標準的なマイクロプレートは、128mm×86mm×14mmの寸法を有し得、そして96個、384個または1536個のウェルを備え得、各々ウェルは直径1〜7mmの開口を備え、そして3〜300μlの作業容積を備える。
【0004】
サンプルがそれぞれのウェルに充填された後、代表的に、このマイクロプレートはシールされて、サンプルを保存する。特に、このような少量の流体サンプルが含まれる場合、サンプルの蒸発を防ぐことは重要であり得る。シールは、箔(例えば、アルミニウム箔)であり得、これは感圧性接着剤(PSA)および/または熱シールを介してプレートに接着され得る。一旦シールされると、このマイクロプレートは、インキュベーションのために保管され、そして/またはさらなる処理のために試験位置へと移送される。
【0005】
マイクロプレートのウェルにおいてシールされたサンプルをさらに処理するため、所定のサンプルをマイクロプレートから分析器(例えば、質量分析器、および/またはクロマトグラフィーカラム)に移送することがしばしば必要とされる。このことは、特定のウェルのシールに穴を開け、そしてそのウェルからサンプルを所望の行き先へと吸引することによって、達成され得る。
【0006】
しかしながら、サンプルをそれぞれのウェルから取り出すことを試みる場合、問題が生じる。サンプルをウェルから吸引するため、ウェルのサイズに適合する小さな直径を有する管が必要とされる。この管が非常に可撓性である場合(例えば、テフロン(登録商標)製の管)、この管は、ウェルを覆うシールに穴を開け得ない。その代わり、シールに接触する際、このテフロン(登録商標)管は単に曲がるのみである。
【0007】
代替的に、シールに穴をあけるのを可能にする材料(例えば、ステンレス鋼)から作製された管は、しばしば化学的に適合性ではな。サンプルのスループットを最大にするための主要な問題は、サンプル間の持ち越し汚染の排除である。ステンレス鋼は、特に生物不活性な材料ということはなく、そしてその表面に疎水性物質を強力に吸着させがちである。従って、次のサンプルを吸引する前に、ステンレス鋼シリンジは、サンプルの持ち越し汚染を防止するため、完全に洗浄されなければならない。多くの数のサンプルを処理する場合、このステンレス鋼シリンジを完全に洗浄するために必要とされるさらなる時間は、生物不活性な物質から作製されたシリンジと比較して、システムにおける時間を消費する制限となり得る。持ち越し汚染を最小化するため、種々の疎水性表面コーティングがシリンジに適用され得るが、これらの表面の耐久性は制限される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の例示的な実施形態において、容器から流体サンプルを得るためのシステムが提供される。この容器は、サンプルを保持するための容積を規定し、この容積はシールによって閉鎖される。外管は、、近位末端および遠位末端を有し、この近位末端はシールを貫通するのを可能にするような形状にされている。内管は、貫通位置(ここで、内管の末端領域の末端が、外管の近位端から引き込められている)と伝達位置(ここで、内管の末端は外管の近位端を越えて同軸上に延びている)との間で、外管内を同軸上で移動可能である末端領域を有する。外管および内管は、管アセンブリを形成する。管アセンブリおよび容器の少なくとも1つは、外管にシールを貫通させ得るように移動され得、そしてシールが貫通された後、内管は、容積に関する流体移送を可能にする伝達位置において使用され得る。
【0009】
本発明の関連する実施形態において、内管は、伝達位置において機械的に付勢され、このような付勢は通常、外管がシールを貫通するために使用される間、克服されている。種々の実施形態において、内管が伝達位置において使用される場合、管アセンブリは、容器に対して移動されて、内管の末端にシールと接触させ得、そして内管を貫通位置へと移動させ得る。種々の実施形態において、内管が貫通位置にある場合、内管は、シールが貫通された後、機械的付勢に起因して伝達位置に戻る。内管は、外管に対する位置で固定される第二末端を有し得、内管は弾性であり、伝達位置で内管に機械的に付勢される。内管の第二末端は、外管の遠位末端を越えて延び得、外管の遠位末端と内管の第二末端との間に位置付けられる内管の一部が、内管が貫通位置にある場合に曲がる。内管は、外管内で自由に移動し得る。
【0010】
本発明の他の関連する実施形態に従って、吸込み供給源は、内管と流体連絡され得、この吸込み供給源はサンプルを吸引するためである。注入弁は内管と流体連絡され得、この注入弁は内管と流体連絡して吸込み供給源を選択的に配置し得る。このシステムは、容器から吸引されたサンプルの特徴を決定するための分析器を備え得る。(例えば、クロマトグラフィーカラム、または質量分析器)。外管と内管とは、同心性であり得る。外管は、金属または金属合金から作製され得る。内管は、有利には、生物不活性から作製され得、広範な種々の材料(例えば、ポリミド(polymide)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK))を含む)から作製され得る。種々の実施形態において、内管は、ポリミドのシースを有する、石英ガラスから作製され得るか、または適切な疎水性コーティングでコーティングされ得るニチノールから作製され得る。内管は、制限なしに、弾性材料、可撓性材料、および/または伸縮性材料から作製され得る。
【0011】
さらに関連する実施形態に従って、容器はマイクロプレートであり得る。このマイクロプレートは、複数のウェルを備え、ウェルの各々はサンプルを保持し、そしてシールによって封鎖される。コントローラーは、管アセンブリおよび容器の少なくとも1つの移動を制御し得る。マウントは、容器に対する管アセンブリの動作を可能にし得る。
【0012】
本発明の別の局面に従って、管アセンブリを使用してシールされた容器から流体サンプルを得るための方法が提供される。この容器は、サンプルを保持するための容量を規定し、この容量はシールによって閉鎖される。管アセンブリは、シールを貫通するのを可能にするための形状にされている近位端を有する、外管を備える。管アセンブリは、外管内で同軸上に移動可能な末端領域を有する内管を備える。内管は、貫通位置において配置され、ここで内管の末端は、外管の近位端から引き込められる。シールは、外管の近位端を用いて貫通される。次いで、内管は伝達位置において配置され、ここで末端領域において、内管の末端は外管の近位端を越えて同軸上に延びる。
【0013】
本発明の関連する実施形態において、吸込み供給源は、内管に適用されて、サンプル流体を容量から吸引する。次いで、吸引されたサンプル流体は、例えば、クロマトグラフィーおよび/または質量分析を使用して分析され得る。吸込み供給源を内管に適用する工程は、注入弁を介して吸込み供給源を内管に適用する工程を包含し得る。容器は、複数のウェルを備えるマイクロプレートであり得、各々のウェルはサンプルを保持するためであり、そしてシールによって閉鎖され、ここで、本方法はさらに、管アセンブリおよび容器のうちの少なくとも1つを移動して、各々のウェルからサンプルを吸引する工程を包含する。
【0014】
本発明のさらなる関連する実施形態において、内管は、伝達位置において機械的に付勢され得、その結果、内管を貫通位置に配置する工程は、その機械的付勢を克服する工程を包含する。内管は弾性であり得、そして内管を貫通位置に配置する工程は、内管の一部を曲げる工程を包含する。従って、内管は、内管の弾性に起因して、伝達位置に戻り得る。内管を貫通位置に配置する工程は、管アセンブリおよび容器のうちの少なくとも1つを移動させる工程を包含し得、その結果、内管の末端はシールと接触し、そして貫通位置へと移動する。
【0015】
本発明の以下の特徴は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を参照して、より容易に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(特定の実施形態の詳細な説明)
例示的な実施形態において、シールにより密閉された容積からサンプルを移送するためのシステムおよび方法が示される。一般的に、このシステムは、外管と内管とを有する管アセンブリを備える。内管は、外管内で軸方向に移動可能な末端領域を備え、それにより、外管は、シールを貫通するために使用され得、一方で内管は、サンプルと接触し、そして容積からサンプルを移送するために使用され得る。結果として、内管は、有利にも、小さな直径を有し得、そして生物不活性基材から作製され得る。この内管は、シールを貫通し得ないが、ごく少量のサンプルしか吸着しない。それゆえ、サンプル持ち越し汚染および次のサンプルの移送の前のチュービング(tubing)を洗浄するための所要時間は、最小化され得る。詳細は、以下で議論される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にしたがって、容器110に接近する管アセンブリ101を示す。容器110は、吸引されるべきサンプル114を含み得る少なくとも1つの容積を規定する。種々の実施形態において、容器110は、上記のような、複数の小さなウェル112を備える標準的なマイクロプレートであり得る。例えば、マイクロプレートは、128mm×86mm×14mmの寸法を有し得、制限されないが、96、384または1536のウェルを備え得、これらのウェルは、1mm〜7mmとの間の開口部ウェル直径と約2μl〜300μlの作業用(working)容積とを有する。他の実施形態において、容器110は、例えば、米国特許第6,387,331号および米国特許出願第20020094533号(これらの内容は、本明細書において参考として援用される)において記載されるように、プラテンを横断する複数の貫通孔ウェルを備えるプラテンであり得る。
【0018】
吸引されるべきサンプル114を含む容積は、最初、シール116により密閉される開口部を有する。シール116は、サンプル114を保存する、およびサンプル114の蒸発を防止するために役立つ。種々の実施形態において、シール116は、アルミニウムホイルのようなホイルまたはプラスチックから作製される。シール116は、感圧接着剤を介して、容器110に装着され得る、および/または、シール116は、熱を適用することにより装着される熱シールであり得る。代表的に、単一のシール116が、所定のマイクロプレートの各々のウェルを覆う。
【0019】
本発明の種々の実施形態において、管アセンブリ101は、外管103と内管105とを備える。内管105の少なくとも一部は、外管103内に配置され、そして、制限されないが、外管103と同軸であり得る。外管103は、シール116を貫通するために使用され、そして、好ましくは、内管105が容積からサンプル114を吸引するために使用される間、サンプル114と接触しない。
【0020】
外管103は、シール116の貫通を可能にする形状にされた近位端107を備える。例えば、近位端107は、制限されないが、鋭利であり得る、および/または尖り得る。あるいは、近位端107は、鈍らであり得るが、シール116に穴をあけることを可能にするために十分硬くあり得る。外管103は、シール116を打ち抜き得る広範な種類の材料(例えば、制限しないが、ステンレス鋼またはチタンのような種々の金属/合金)から作製され得る。好ましい実施形態において、外管103はサンプル114と接触しないので、外管103を作製する材料は、サンプル114の適合性に関係なく選択され得る。
【0021】
外管103の外径は、シール116により密閉される開口部の寸法により束縛される。例えば、1536ウェルのマイクロプレートにおいて、各々のウェルは、代表的に、直径約1mmの開口部を有する。それゆえ、外管103の近位端107が、ウェル内に突き出し、そしてシール116を貫通するように、外管103の外径は1mm未満であるべきである。内管105の一部は、外管103内に配置され、それゆえ、外管103の内径より小さな外径を有する。例示的な実施形態において、内管105の外径は、内管105に接続される1つ以上の弁(以下でより詳細に記載される)と適合するように、例えば、360ミクロンであり得る。
【0022】
内管105の内径の制限は、減圧の適用により適度な速度でサンプル114を吸引する能力である。非常に細い直径の内管105が使用される場合、内管105の一端での減圧の適用は、かなりの速度で、内管105を通ってサンプル114を吸引するのに十分ではなく、それにより、システムのサンプル処理能力の低下をもたらす。例示的な実施形態において、内管105の内径は、制限されないが、100ミクロン〜300ミクロンの範囲である。
【0023】
内管105は、広範な種類の材料(例えば、種々のプラスチック、金属および/または合金)から作製され得る。本発明の種々の実施形態において、内管105は、サンプル114の最低限の量を吸着する生物不活性材料から作製され得る。それゆえ、サンプルの持ち越し汚染と、次のサンプルを吸引する前に内管105を洗浄するための所要時間とが、最小化される。内管108に適切な生物不活性材料としては、制限されないが、ポリミド(polymide)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。特定の適用に依存して、コーティングが、内管105の表面に適用され得る。例えば、特に、内管105が、生物不活性ではない材料から作製される場合、疎水性コーティングが、内管105に適用され得る(しかしながら、上記のように、このコーティングの耐久性は、幾分限定的であり得る)。内管105のために使用される材料に対する、さらなる制限(例えば、望ましい可撓性および/または弾力性)もまた、以下でより詳細に記載されるように課され得る。小さな直径および内管105のために選択される適用特異的な材料のため、内管105は、しばしばシール116を貫通し得ない。シール116と接触する際、内管は、しばしば曲がり、および/または壊れる。それゆえ内管は、シール116を貫通するための外管103の使用を必要とする。
【0024】
内管105は、伝達位置(図1に示される)と貫通位置(図2を参照のこと、以下に記載される)との間で、外管105内の軸方向に移動可能な末端領域109を備える。伝達位置において、末端領域109内の内管105の末端108は、外管103の近位端107を越えて軸方向に伸びる。次いで、管アセンブリ101および/または容器110は、移動され得、その結果、内管105(外管103ではない)が、サンプル114と接触する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態にしたがう、貫通位置における図1の管アセンブリ101を示す図である。貫通位置において、内管105の末端108は、外管103の近位端107から引き込められている。それゆえ、貫通位置にある間、管アセンブリ101および/または容器110は、外管103の近位端107がシール116を貫通することを引き起こすように、移動され得る。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態にしたがう、シール116が貫通された後の、伝達位置における図1の管アセンブリ101を示す図である。外管103がシール116を貫通した後、管アセンブリ101は、伝達位置に移動され(必要ならば、管アセンブリ101および/または容器110が移動され)、その結果、内管105の末端108が、サンプルと接触する。サンプル114の持ち越し汚染を最低限にするために、内管105は、外管103からの望ましい距離で突き出し、その結果、外管103は、容積内のサンプル114と接触しない。次いで、サンプル114は、内管105を介して容器112から、吸引され得るか、またはその他の方法で移送され得る。
【0027】
サンプル114が、容器112から移送された後、管アセンブリ101および/または容器110は、開口部から管アセンブリ108を引き込み得るように移動され得る。次いで、内管105は、制限しないが、内管105を介して洗浄溶液を吸引することにより、あらゆるサンプルの持ち越し汚染も洗浄され得る。次いで、管アセンブリ101は、別のサンプルを移送するために準備される。
【0028】
本発明の種々の実施形態において、内管105は、伝達位置において、機械的に付勢される。このような付勢は、管アセンブリ101が貫通位置にある間、通常克服されている。機械的な付勢は、以下でより詳細に記載されるように、例えば、内管の弾力性に基づき得る。本発明の他の実施形態において、付勢機構は、当該分野において公知の他の適切な手段(例えば、バネ機構)を備え得る。
【0029】
この機械的な付勢は、例えば、図1に示されるように、管アセンブリ101と容器110とを互いの方向に移動させることにより克服され得る。管アセンブリ101と容器110とのいずれか、またはそれらの両方が移動され得ることが理解されるべきである。内管105が、シール116と接触し、そして、この付勢を克服することにより、図2に示されるように、貫通位置に移動する。外管103がシール116を貫通した後、この付勢は、管アセンブリ101を伝達位置へ戻す。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に従う、容器110からサンプルを獲得し、そして吸引するためのシステム500を図示する図(同一縮尺ではない)である。システム500は、自動ロボット運動制御システムに取り付けられ得、この自動ロボット運動制御システムは、当該分野において公知であるように、コンピュータおよび関連するソフトウェアによって制御され得る。管アセンブリ101は、容器110に対する管アセンブリ101の運動を可能にする、マウント502に結合される。種々の実施形態において、管アセンブリ101は、運動が可能であり得ること、および/または容器110は、運動が可能であり得ることに注目のこと。内管105は、第二の末端504を有し、この第二の末端504は、外管103の遠位端506を越えて延び、そして外管103に対して位置が固定される。
【0031】
種々の実施形態において、内管105の第二の末端504は、注入弁506と流体連絡する。この注入弁は、例えば、米国特許出願09/842,361(2001年4月25日出願、発明の名称「System and Method for High Throughput Processing of Droplets」)および米国特許出願10,267,912(2002年10月8日出願、発明の名称「System and Method for High Throughput Screening of Droplets」)に記載されるように機能し得る。これらの内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0032】
内管105は、可撓性かつ弾性の材料から作製され、そして外管103の内部で自由に移動可能である。内管105は、静止状態において、外管の近位端107を通って突出し、その結果、管アセンブリ101は、伝達位置になる。内管105の弾性は、この伝達位置への機械的付勢を提供する。管アセンブリ101が容器110の方へと低下されると、内管105は、シール112と接触する。内管105は、結果として、上方に押され、内管105の弾性に打ち勝ち、その結果、管アセンブリ101は、穿孔位置に配置される。このことにより、例えば、外管103の遠位端506と内管105の第二の末端504との間に位置する内管105の部分を撓ませ得る。
【0033】
管アセンブリ101が十分に低下されると、外管103の近位端107は、シール116と接触し、そしてシール116を穿孔する。一旦、シール116が穿孔されると、内管105に蓄積した張力が解放され、そして管アセンブリ101は、静止状態/伝達位置に戻る。内管105がサンプル114と接触すると、サンプル114は、さらなるプロセシングのために、内管105を通して吸引される。
【0034】
内管105の弾性は、重要な問題である。例えば、内管105の可撓性が高すぎ、そして十分な弾性を欠く場合、内管105は、撓むのみであり、そしてシール116の穿孔の際に、伝達位置に戻らない。可撓性でありすぎるが化学的には認容可能であるチュービングの例としては、多くの種類のTeflon(登録商標)チュービングが挙げられる。さらに、特定の材料は、もろすぎ得、シール116との接触の際に壊れる(例えば、溶融シリカ(石英ガラス)のチュービング)。内管105として良好に働くプラスチック材料としては、限定されないが、適切な直径のポリミドチュービングおよびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)チュービングが挙げられる。これらの材料から作製されるチュービングは、非常に高度に疎水性の化合物でさえも、例外的に低い持ち越し汚染(carryover)を有し、故障の前に高い圧力に抵抗し得、そして20マイクロメートル〜300マイクロメートルの内径(線形拡散を最小にするために最適な内径)で製造され得る。他の実施形態において、内管105は、材料の組み合わせ(例えば、ポリミドシースを備える溶融シリカチュービング)を含み得る。なお他の実施形態において、内管105は、形状記憶合金(例えば、ニチノール)から、そのままでか、または特別な用途によって必要とされるような表面化学を含めて、作製され得る。
【0035】
種々の実施形態において、低下した圧力および増加した圧力は、例えば、ポンプによって、注入弁506の第一のポートおよび第二のポートにそれぞれ適用される。第一の位置において、注入弁506は、低下した圧力を適用して、サンプル114を、容器110から内管105を通してサンプルループ508内へと吸引する。サンプルループ508を、規定された体積で満たすために十分なサンプル114が、吸引される。吸引されたあらゆる過剰なサンプルは、トラップ509に収集される。このトラップ509は、例えば、注入弁506と減圧供給源との間に位置決めされ得る。
【0036】
注入弁506の作動の際に、図6に示されるように、上昇した圧力を適用することによって、計量された量のサンプルが、流体回路507に導入される。従って、注入されるべきサンプルの量は、サンプルループ508のサイズによって制御され得る。流体回路507は、例えば、分析器(クロマトグラフィーカラムまたは質量分析器)を備え得る。このサンプルは、種々の標準的なシステム(大気圧化学イオン化(APCI)またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)が挙げられる)を使用して、この分析器に提供され得る。
【0037】
弁506の脱作動および次のサンプルの吸引の前に、内管105を清浄化するために、内管105は、洗浄溶媒または緩衝溶液に浸漬され得、そして減圧が適用されて、洗浄溶媒を、内管105を通してトラップ109の内部へと吸引する。従って、一定の負圧とインライントラップとの組み合わせによって、シリンジを通して洗浄溶液を繰り返し吸引および分配することの必要性が排除される。
【0038】
種々の実施形態において、開示されたシステムおよび方法は、コンピュータシステムと共に使用するためのコンピュータプログラム製品としてインプリメントされ得る。このようなインプリメントは、一連のコンピュータ指示を含み得、これらの指示は、有形(tangible)媒体(例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、ROM、または固定ディスク))に固定されるか、またはコンピュータシステムに、モデムまたは他のインターフェースデバイス(例えば、媒体を介してネットワークに接続された通信アダプタ)を介して伝送可能であるかのいずれかである。媒体は、有形媒体(例えば、光通信ラインもしくはアナログ通信ライン)または無線技術を用いてインプリメントされる媒体(例えば、マイクロ波、赤外線または他の伝送技術)のいずれかであり得る。一連のコンピュータ指示は、このシステムに関して本明細書中で先に記載された機能の全てまたは一部を実施する。当業者は、これらのコンピュータ指示が、多くのコンピュータアーキテクチャまたは演算システムと共に使用するために、多数のプログラム言語で書かれ得ることを理解するはずである。さらに、このような指示は、任意の記憶デバイス(例えば、半導体デバイス、磁気デバイス、光学デバイスまたは他の記憶デバイス)に格納され得、そして任意の通信技術(例えば、光技術、赤外線技術、マイクロ波技術、または他の伝送技術)を使用して伝送され得る。このようなコンピュータプログラム製品は、リムーバブル媒体(印刷されたかもしくは電子的な文書(例えば、収縮包装されたソフトウェア)が付随する)としてコンピュータシステムにプレロードされて(例えば、オンシステムROMまたは固定ディスク)販売され得るか、またはネットワーク(例えば、インターネットまたはワールドワイドウェブ)を介してサーバもしくは電子掲示板から販売され得ることが予測される。
【0039】
本発明の種々の例示的な実施形態が開示されたが、本発明の利点のいくつかを達成する種々の変更または改変が、本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者に明らかであるはずである。これらおよび他の明らかな改変は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の1実施形態に従って、シールによって閉鎖された容積を備える容器に接近している、管アセンブリを例示する図である。
【図2】図2は、本発明の1実施形態に従う、貫通位置における図1の管アセンブリを例示する図である。
【図3】図3は、本発明の1実施形態に従う、シールを貫通した後の図1の管アセンブリを例示する図である。
【図4】図4は、本発明の1実施形態に従う、容器から移動して離れてた図2の管アセンブリを例示する図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従う、容器からサンプルを吸引するためのシステムを例示する図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従う、流体回路中にサンプルが注入されている間の、図5のシステムを例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器から流体サンプルを得るためのシステムであって、該容器は該サンプルを保持するための容積を規定し、該容積はシールによって閉鎖され、該システムは、以下:
近位端および遠位端を有する外管であって、該近位端は、該シールを貫通するのを可能とするような形状にされている、外管、および;
貫通位置と伝達位置との間で該外管内で軸方向に移動可能な末端領域を有する内管であって、該貫通位置において、該内管の該末端領域の末端が該外管の近位端から引き込められており、該伝達位置において、該内管の該末端が該外管の該近位端を越えて軸方向に延びている、内管
を備え;
ここで、該外管と該内管とは管アセンブリを形成し;
ここで、該管アセンブリおよび該容器の少なくとも1つは、該外管に該シールを貫通させ得るように移動され得、そして該シールを貫通した後、該内管は、該容積に関する流体移送を可能にする伝達位置において使用され得る、
システム。
【請求項2】
前記内管は前記伝達位置において機械的に付勢されており、通常はこのような付勢が、前記外管が前記シールを貫通するために使用される間は克服されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記内管が伝達位置にある場合、前記管アセンブリは前記容器に対して移動されて、該内管の末端を前記シールと接触させ得、そして該内管を前記貫通位置へと移動させ得る、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記内管が貫通位置にある場合、該内管は、前記シールが貫通された後、機械的付勢に起因して前記伝達位置に戻る、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記内管は、前記外管に対する位置で固定される第二末端を有し、そしてここで該内管は、前記伝達位置において該内管に機械的に付勢されるために弾性である、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記内管の第二末端は前記外管の前記遠位末端を越えて延び、そして該外管の該遠位末端と該内管の該第二末端との間に位置付けられる該内管の一部は、該内管が前記貫通位置にある場合に曲がる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記内管が前記外管の中を自由に移動し得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記内管と流体連絡した吸込み供給源をさらに備え、該吸込み供給源が前記サンプルを吸引するためである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記内管と流体連絡した注入弁をさらに備え、該注入弁が該内管と流体連絡した吸込み供給源を選択的に配置し得る、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記容器から吸引された前記サンプルの特徴を決定するための分析器をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記分析器が、カラムクロマトグラフィーカラムおよび質量分析器のうちの1つである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記外管および前記内管が同心性にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記外管が、金属および合金のうちの1つから作製されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記内管が弾性材料から作製されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記内管がプラスチックから作製されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、ここで前記内管が、ニチノール、ポリミドおよびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群の材料より選択される材料のうちの少なくとも1つから作製されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記内管が、ポリミドのシースを備え、石英ガラスから作製されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記容器がマイクロプレートであり、そして該マイクロプレートが複数のウェルを備え、各々のウェルが、サンプルを保持するためであり、そしてシールによって閉鎖される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記管アセンブリおよび前記容器のうちの少なくとも1つの移動を制御するためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記コンテナに対する前記管アセンブリの動作を可能にするマウントをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
管アセンブリを使用してシールされた容器から流体サンプルを得るための方法であって、該容器は該サンプルを保持するための容積を規定し、該容積はシールによって閉鎖され、該管アセンブリは、該シールを貫通するのを可能にするような形状にされた近位末端を有する外管を備え、該管アセンブリは、該外管の中で同軸上で移動可能な末端領域を有する内管をさらに備え、該方法は、以下:
該内管を貫通位置に配置する工程であって、該貫通位置において、該内管の末端が該外管の近位末端から引き込まれる、工程;
該外管の近位末端で該シールを貫通する、工程;および
該内管を伝達位置に配置する工程であって、該伝達位置において、該内管の該末端領域の末端が該外管の該近位端を軸方向に越えて延びている、工程
を包含する、方法。
【請求項22】
前記容積から前記流体サンプルを吸引するため、前記内管に吸込み供給源を適用する工程をさらに包含する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
吸引された前記サンプルを分析する工程をさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
分析する工程がクロマトグラフィーおよび質量分析のうちの1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記内管に吸込み供給源を適用する工程が、注入弁を介して該内管に吸込み供給源を適用する工程を包含する、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記容器が複数のウェルを備えるマイクロプレートであり、各々のウェルは、サンプルを保持するためであり、そしてシールによって閉鎖され、該方法は、前記管アセンブリおよび該容器のうちの少なくとも1つを移動させ、各々のウェルからサンプルを吸引する工程を包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記内管が伝達位置において機械的に付勢され、そして該内管を前記貫通位置に配置する工程が機械的付勢を克服する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記内管が弾性であり、そして該内管を前記貫通位置に配置する工程が、該内管の一部を曲げる工程をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記内管を前記伝達位置に配置する工程が、該内管の弾性に起因して、該内管を該伝達位置へと戻す工程を包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記内管を前記貫通位置に配置する工程が、前記管アセンブリおよび前記容器のうちの少なくとも1つを移動させ、その結果該内管の末端が該シールに接触しそして該貫通位置へと移動する工程を備える、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−532877(P2007−532877A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507421(P2007−507421)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/011449
【国際公開番号】WO2005/100945
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505179764)バイオトローブ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】