説明

同軸で付設されたポンプを備えた電気モータ

本発明は、特に温度変換部および/または熱伝達部を備えた設備における冷却材回路用の同軸で付設されたポンプ(6)を備えた電気モータ(1)に関する。完全密封圧力外装として構成されたケーシング部品(7、10)の内部で軸列(5)が電気モータ(1)のトルクを、ポンプケーシング(7)内に配置される羽根車(8)に伝達し、電気モータ(1)とポンプケーシング(7)との間にフライホイール(12)が配置されている。回転する全部品が完全密封モータポンプ組立体の内部に配置されており、モータポンプ組立体に液体が充填されている。フライホイール(12)を構成するフライホイール本体(13)が多数の空洞(14、15)と、空洞内に配置される重金属挿入物(16、17)とを備えている。密度が11.0(kg/dm3)を超える重金属が重金属挿入物を形成し、または、そのなかに配置されており、フライホイール本体(13)が高強度材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に温度変換部および/または熱伝達部を備えた設備における冷却材回路用の同軸で付設されたポンプを備えた電気モータであって、完全密封圧力外装として構成されたケーシング部品の内部で軸列が電気モータのトルクを、ポンプケーシング内に配置される羽根車に伝達し、電気モータとポンプケーシングとの間にフライホイールが配置されており、回転する全部品が完全密封モータポンプ組立体の内部に配置されており、モータポンプ組立体に液体が充填されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
熱発生器を装備し温度変換部および/または熱伝達機構を有する発電設備においてフライホイールを装備したモータポンプ組立体を利用することは知られている。これは、万一の故障事故のときフライホイールの慣性能力に基づいて最低時間の間ポンプによって冷却材循環の維持を保証できるようにするための安全措置である。フライホイールの慣性モーメントによってこのような電気モータは停電時にもなおさらに作動し、モータポンプ組立体が冷却材量を移送する。しかし、熱発生器が確実に遮断されるまで熱伝達機構内で熱排出を保証するには、このように低減された冷却材量で間に合う。
【0003】
米国特許第3960034号明細書によりいわゆる乾式電気モータが公知であり、モータとフライホイールは空気で冷却される。過回転時に破裂するフライホイールによって周囲が危険に曝される可能性を排除するためにフライホイールは付加的に保護機構を装備している。
【0004】
しかし独国特許発明第2807876号明細書または米国特許第4084876号明細書により公知のグランドレスモータポンプ組立体では、冷却材を満たされたモータと冷却材中を回転するフライホイールとによって流体摩擦抵抗が生じる。冷却材、しばしば水のなかでのフライホイールの回転は流体摩擦と熱エネルギーの発生とに起因して高い損失出力を生じる。そのことからポンプ、モータおよびフライホイールの全効率が低下する。このモータポンプ組立体はポンプ部とモータ部との間に、高温のポンプケーシングと冷えたモータケーシングとの間の熱伝導を極力僅かなものに抑えるために、薄いケーシング首部を備えた熱障壁を有する。熱障壁の下流側でモータケーシングの正面と、耐圧構成される共通するケーシングの内部とに、軸列によって駆動されるフライホイールがある。そして流体摩擦損失を減らすためにフライホイールは回転可能にケーシング内で支承される外殻によって取り囲まれており、この外殻はモータケーシング内にある液体用の流入口を有する。動作中、外殻はケーシングと外殻とフライホイールとの間の流体摩擦面のゆえに、フライホイールの回転数よりも低い平均的回転数となる。これにより、冷えたモータ部内に配置されるフライホイールでの摩擦損失が減少するとされる。
【0005】
フライホイールを備えたモータポンプ組立体用のキャンドモータの態様の電気モータが欧州特許第0351488号明細書または米国特許第4886430号明細書により公知である。圧力外装を形成するケーシング部品の内部で密閉液体充填モータポンプ組立体の圧力側ポンプケーシングカバーの領域においてフライホイールが支承要素として構成されている。フライホイールは軸列用にポンプケーシングの領域でラジアル軸受の機能を引き受ける。そしてフライホイールがアキシアル軸受としても構成されているので、独国特許出願第2807876号明細書による解決とは異なり、遠ポンプ側モータ末端にアキシアル軸受を配置することはこうして省かれた。
【0006】
ポンプケーシングと支承力を吸収するフライホイールとの間でケーシング内に鉢状挿入物が一体な熱障壁として配置されている。この挿入物は外面に、ポンプ部に対して、絶縁空気室を備えている。フライホイール正面に向き合うその内面に付加的外部液体冷却部が配置されている。液体冷却部とフライホイールの近ポンプ側正面との間に、支承力を吸収する壁要素がなお配置されている。キャンドモータポンプ組立体として構成されることによってフライホイール室と電気モータのロータ室は被ポンピング移送流体を充填されており、これらの室はポンプケーシングと同じ圧力を受けているが、モータのステータ室は乾式に構成されている。モータを熱交換器が取り囲み、フライホイールに当接する支承要素を潤滑し冷却する水がこの熱交換器内を流れる。モータ、ラジアル軸受、アキシアル軸受およびフライホイールのこの冷却回路はフライホイール自体内も経由する。こうして、そのことからフライホイールのハブ‐軸‐結合が弱まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、フライホイールを装備したモータポンプ組立体用に改良された解決を達成し、フライホイールの構造もその動作信頼性も流体摩擦の結果としてのその損失出力も改善されているようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決では、フライホイールを構成するフライホイール本体が多数の空洞と空洞内に配置される重金属挿入物とを備えており、密度が11.0(kg/dm3)を超える重金属が重金属挿入物を形成しまたはそのなかに配置されており、フライホイール本体が高強度材料からなる。
【0009】
この解決は、異なる動作状況に対する一層容易かつ改良された適合性という利点を提供する。空洞を単純に選択して配置することによってさまざまな重金属挿入物を空洞内に挿入することができる。モータポンプ組立体内にある移送液体が重金属挿入物と不都合な反応を開始し得るような応用事例のため、重金属挿入物を周囲の液体から遮断するための手段が設けられている。これらの手段はフライホイール本体に配置しておくことができる。そして/または、挿入物は重金属挿入物を周囲の液体から分離するための手段を備えている。
【0010】
重金属挿入物がカートリッジ状に構成され、かつそれ自体公知の手段によってフライホイール本体内で固着されていると、特別有利であることが判明した。その限りで、挿入物は別の場所で確実に製造することができ、それとともに容易に輸送することができ、保管可能でもある。後に、フライホイール本体が仕上げ加工されたとき、挿入物はごく容易にフライホイール本体内に挿入することができる。重金属挿入物をフライホイール本体内で保持することはそれ自体公知の技術的手段によって行うことができる。これらの技術的手段には溶接結合、ねじ結合、蝋付、接着、焼嵌め結合、圧着結合等があろう。結合方式はその都度の動作条件に依存して選択される。
【0011】
同様に、重金属挿入物を空洞に注入される充填物として構成し、かつそれ自体公知の手段によってフライホイール本体内で保持することも可能である。これは、重金属が流し込み可能な粒質物等として貯蔵されかつ相応に取り扱うことのできる事例についての解決であろう。
【0012】
本発明の別の1構成によれば、フライホイール本体が軸列挿通用の穴を持たないと有利であることが実証された。大型発電所で使用されるような発電電力がきわめて高い電気モータでは、このようなフライホイールにきわめて大きな力が作用する。その際、軸列用貫通穴から出発してフライホイール本体と軸列との間の移行領域で不都合なハブ応力の発生する虞がある。極端な場合、例えば過負荷動作のとき、不都合なハブ応力はフライホイール本体の破損をもたらすことがある。それに対して、フライホイール本体が単部分構成または多部分構成のフランジ結合部を介して軸列と結合されていると有利である。そのことから、フライホイール本体の破損する虞は著しく減少する。トルク伝達に役立つフェーススプラインがフライホイール本体と軸列との間の結合手段を形成することも有利である。
【0013】
電気モータとそれによって駆動される完全密封モータポンプ組立体が移送液体を充填されているので、液体内を回転するフライホイールが液体摩擦によって高い損失出力も発生するとの付加的問題がここで生じる。しかし経済的理由または安全技術上の理由から、フライホイール領域におけるこのような損失出力を意識的にそのままとし、こうして完全密封を達成し、故障し易い軸封装置の利用を省くことができると有意義なことがある。
【0014】
このため、フライホイールの外径を取り囲む少なくとも1つの熱交換器が圧力外装の内部に配置され、かつフライホイール室の半径方向壁面を形成しており、ポンプ室の高圧ゾーンが、熱交換器の外面を介して案内される単数または複数の流れ路によってフライホイール室の遠ポンプ側と結合されており、熱交換器とフライホイールとの間の環状隙間が遠ポンプ側フライホイール室と近ポンプ側フライホイール室との間に第1還流路を形成し、軸列の領域に配置される第2還流路が近ポンプ側フライホイール室をポンプ室と結合する。
【0015】
この解決でもって、動作信頼性が高くかつ限定的に高い温度がフライホイール室内で保証される。ここで根底にあるのは、フライホイール室内部の液体温度が比較的高い場合ここで発生する出力損失がかなり低減されるとの認識である。というのも、温度影響の結果、液体の密度およびその粘度が低減され、それとともに摩擦損失が最小となるからである。フライホイールの周りの比較的大きな直径に熱交換器を配置することによって、特別高率的な冷却作用が得られる。ポンプ室から取り出された移送流体が熱交換器の最大直径を越えて流れ、遠ポンプ側でフライホイール室に流入すると、向上した冷却作用が現れる。
【0016】
ポンプケーシング内で羽根車入口の低い圧力と羽根車の下流側、案内機構の下流側または渦巻室内の高い圧力との間の圧力勾配のゆえに、移送流体は流れ路および還流路を流れてポンプ室に戻る。フライホイールが穴を備えていないので、冷却された移送流体はフライホイールの外径と円筒形熱交換器の内径との間の隙間を逆方向に流れて戻る。その際、移送流体は付加的に、二度目として熱交換器の冷却作用に曝され、同時にフライホイールの損失熱を吸収する。移送流体は軸列領域の比較的小さな直径で、他方の近ポンプ側で、フライホイール室から流出する。移送流体は羽根車に設けられる除圧穴を流れてポンプの主流に戻る。この内部液体流の駆動にとって、ポンプケーシングの取出孔と流入孔との間の圧力勾配は十分であり得る。
【0017】
複数の熱交換器がフライホイールを比較的大きな直径において同軸で取り囲み、これら熱交換器の間で1つの環状隙間または複数の通路が遠ポンプ側フライホイール室に至る流れ路を形成することによって、冷却作用は改善することができる。単数または複数の熱交換器は外部冷却水源と結合されており、例えば円筒形に構成しておくことができる。
【0018】
そして本発明の他の1構成では、軸列によって駆動される少なくとも1つの移送機構が第2還流路中に配置されている。これにより、冷却する液体流の流量を高めることが可能となる。これは、穴または羽根を備えた小さな付加的羽根車の態様の公知の手段、移送スクリュー、または別の公知の機構とすることができる。
【0019】
別の構成によれば、ポンプ側モータカバーがフライホイール室の遠ポンプ側壁を形成し、モータカバー内に冷却機構が配置されている。この冷却機構は低圧冷却機構または高圧冷却機構として構成しておくことができる。同様に、この冷却機構を高圧モータ冷却部の一部として構成することが可能である。混合を減らすために、モータ室とフライホイールとの間で軸列の領域に軸封装置が配置されている。これは、絞り区間、ラビリンスパッキンまたは類似のものとすることができる。
【0020】
本発明の1実施例が図面に示してあり、以下で詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1が示す液体冷却モータ1はケーシング2が圧力外装として構成されている。モータ1の内部に液体が充填されており、電気損失出力を排出するために高圧冷却系3がモータ末端と結合されている。一方のモータ末端4にラジアル軸受とアキシアル軸受が配置されており、アキシアル軸受は同時に、モータの内部および冷却器3内を循環する冷却水用の移送機構として役立つ。モータの駆動力は軸列5に作用し、それとともに、電気モータ1に同軸で付設されるポンプ6にトルクを伝達する。ポンプケーシング7の内部に羽根車8と下流側の案内機構9が配置されており、ポンプケーシング7はカバー要素10によって閉鎖され、タイロッド11を介してモータ1のケーシング2と結合されている。この場合多部分で構成されるカバー要素10の内部にフライホイール12があり、フライホイールの慣性モーメントは停電のとき軸列5と接続された羽根車8との継続回転運動をもたらし、従ってポンプ6の移送出力をもたらす。
【0022】
ポンプおよびモータの、周囲の環境に対して内部空間を限定するケーシング部品2、4、7、10は、いわゆる圧力外装を形成する。この圧力外装は、移送流体を循環させるためのこのモータポンプ組立体が組込まれた熱交換設備内で支配的なきわめて高い系圧力用に設計されている。このような組立体は600キロワットを超える発電電力用に設計されており、従って不釣合いな寸法を有するので、図1の図示は概略にすぎない。詳細は後続の図2、図3に拡大して図示されている。
【0023】
図2はフライホイール12を斜視図で示す。このフライホイールは、図2に明灰色で示したフライホイール本体13からなる。フライホイール13は暗灰色で図示した多数の空洞14、15を備えている。これらの空洞14、15は重金属挿入物16、17を受容するのに役立ち、組立完了したフライホイール12の慣性モーメントがこれらの重金属挿入物で増大される。空洞14、15が異なる直径を有し、これにより、高強度材料からなるフライホイール本体13が動作中の支配的遠心力に対して安定していることが保証されている。空洞14、15の配置、寸法および数によってフライホイール本体13内で高い温度影響のもとで確実な応力分布が保証される。危険な動作状態のときにも、例えば動作障害に起因したタービン動作、または定格回転数よりも高い回転数を生じるポンプ過負荷動作のときにも、こうして十分な強度余裕が確保されている。
【0024】
円筒形フライホイール本体13の正面18にフランジ結合部19が固着されており、このフランジ結合部によって軸列5との結合が実現される。ここに示したフェーススプライン20は相応に構成された軸列5と協動し、こうして確実なトルク伝達が保証されている。別の摩擦式および/または嵌合式結合態様も応用できる。しかしその際、これらの結合方式がフライホイール本体13内部での応力分布に否定的に影響しないよう確保されていなければならないであろう。
【0025】
図2からさらに認めることができるように、異なる大きさの空洞14、15内に相応に寸法付与された重金属挿入物16、17が配置される。重金属は棒状またはバラ状挿入物として配置しておくことができる。ここに示した重金属挿入物16、17は、重金属がカートリッジ21、22の内部にある変更態様である。このようなカートリッジは簡単に製造でき、容易に取り扱うことができ、保管し輸送することができ、従ってこのような重金属挿入物16、17を問題なく貯蔵するための前提条件を提供する。付加的に、このようなカートリッジ21、22はそのなかに配置される重金属を、フライホイール12を取り囲んで冷却する流体の影響から保護し、または流体を重金属の影響から保護する。
【0026】
この場合円筒形に構成されたこのようなカートリッジの閉鎖は公知の技術によって行われ、通常の工作機械で可能である。そのために特殊な機械は必要でない。このようなカートリッジ21、22は公知の技術によってフライホイール本体13の内部で保持することができる。同様に、空洞14、15をフライホイール本体13内に貫通孔または袋孔として設け、そのなかに重金属を直接配置することも十分可能である。空洞14、15内に直接ある重金属の位置を固定するために、空洞は個々のカバー要素によって、またはフライホイールの直径に相応した大きさのカバー要素によって閉鎖することができる。
【0027】
図3と図4は軸列へのフライホイールの配置と、ポンプとモータとの間におけるその位置とを拡大図で示す。ポンプケーシング6の内部に羽根車8とその下流側の案内機構9が認められる。ポンプ型式に応じて単段式または多段式の実施を設けることができる。ここに示した単一ポンプ段または最終ポンプ段では、ポンプケーシング7の内部で最高圧力のゾーンに‐ここでは案内機構9の下流側で‐取出管路が認められる。この取出管路は移送流体用流れ路23として役立ち、移送流体を圧力外装の内部でフライホイール室24内に誘導する。フライホイール室24を形成するのはポンプカバー10と近ポンプ側モータカバー25である。両方のカバー部品10、25の圧密かつ液密な当接面26はフライホイール12の遠ポンプ側正面18の領域にある。こうして形成された2部分構成のフライホイールケーシングは製造と組立を容易とする。全部品を一緒に結合するタイロッド11がポンプケーシング7にねじ込まれており、モータケーシング2のフランジにその受け部がある。
【0028】
フライホイール12を取り囲む熱交換器27がフライホイール室24の内部に配置されており、この熱交換器は圧力外装を貫通する低圧冷却系A‐Bと結合されている。ポンプ室をフライホイール室24と結合する流れ路23は熱交換器27の外面28を介してフライホイール室24の遠ポンプ側へと移送流体を誘導する。フライホイール室24の遠ポンプ側正面にモータカバー25の領域で他の低圧冷却系C‐Dが配置されており、この低圧冷却系によって遠ポンプ側フライホイール正面18の領域で相応する温度勾配が達成される。さらに認めることができるように、モータカバー25はモータ冷却器3に結合された高圧モータ冷却部E用の接続部を備えている。矢印は、ステータのコイル端の周りでのモータ冷却液の流れ方向を示す。モータ冷却液は同時に近ポンプ側モータ軸受30用潤滑液として役立つ。暖められたモータ冷却液はモータカバー25内の通路31を介して取り出され、図1に示すモータ冷却器3を介して再冷却され、遠ポンプ側モータカバー4で再びモータ1内に供給される。
【0029】
フライホイール室24にその遠ポンプ側末端で流入する移送流体は熱交換器27の内面33とフライホイール12の外径との間の環状隙間32を通して近ポンプ側フライホイール室24.1へと流れる。この環状隙間32は移送流体用第1還流路を形成し、この移送流体はこの場合同時に熱交換器27の作用に曝されている。移送流体はフライホイール12の近ポンプ側正面34の近ポンプ側フライホイール室24.1を介して軸列5の方向に流れる。軸列5の領域から移送流体はそこに配置される第2還流路を介してポンプ6の羽根車8へと還流する。その際同時にポンプ軸受35が潤滑される。流れ方向はポンプケーシング7の高圧ゾーンと軸スラスト除圧孔36によって定義される羽根車8の領域における低圧ゾーンとの間の圧力勾配によって引き起こされる。
【0030】
このようなモータポンプ組立体を設計するとき、冷却する移送流体用基本調整を相応する出力について達成するために、所定の動作条件について流れ路の寸法および数は確定される。同様に、軸列5によって駆動される付加的移送機構37を第2流れ路の領域に設けることが可能である。この実施例では移送スクリューが示してあるが、相応する羽根車または別の公知の支援的移送機構37とすることも同様に十分可能である。フライホイール室24、24.1内を循環する移送流体の冷却出力はこうして改善することができる。それとともに、フライホイール12との流体摩擦によって液体中に発生される損失熱は物質輸送によってきわめて効率的に排出される。
【0031】
ポンプ室からフライホイール室24、24.1へと内部冷却流を適切に案内することによって、フライホイール室内で、フライホイール12の内部でも、温度レベルは動作中に均一な温度レベルが生じるように調節することができる。フライホイール12内に均一な温度レベルを生じることは、フライホイール12の外周面の熱交換出力と遠ポンプ側フライホイール正面18の冷却作用とによって支援される。この熱交換出力を調節することで、温度レベルの均一性を守ることが可能となる。それとともに、フライホイール12の内部で温度差に起因した材料応力が防止されるという決定的利点が得られる。
【0032】
フライホイール室内の温度レベルが移送流体の温度レベルよりも高い動作状態の場合、この解決でもって熱をポンプの回路に戻すことさえできる。こうして損失熱の部分的回収が可能である。しかしいずれにしてもフライホイール室24、24.1内の温度は、フライホイール本体の強度に否定的に影響しない最大値に限定されている。
【0033】
図4が示す図3の変更態様では、フライホイール12の遠ポンプ側正面8の領域で低圧冷却部C‐Dが省かれただけである。その代わりにここでは高圧モータ冷却部Eが同時にフライホイール室24内の温度レベルを調節するのにも使用される。このようなモータポンプ組立体の所定の動作条件に依存して、この解決でもフライホイール12内に所要の均一な温度レベルが確保される。ポンプ側モータカバー25によって形成されるフライホイール室24の遠ポンプ側壁29は、ここでは結合部39を頼りに高圧モータ冷却部Eの作用を受ける。壁25の領域に配置される軸封装置38が流体の混合を減少させる。
【0034】
図5の線図に示した第1曲線σAは、温度に依存したフライホイール本体の材料の特定強度特性を示す。例えば耐力の80%であるこの強度特性は、材料破壊に対する十分な安全余裕を含む。
【0035】
第2曲線ηgesにはモータポンプ組立体の全効率が温度にわたってプロットされている。この温度はフライホイール室内で支配的となることのある温度に一致する。両方の曲線の交点Aは、機能するすべての冷却系におけるモータポンプ組立体の動作点に一致する。この交点Aでは最適な動作温度Toptが支配している。その際、フライホイール室内とフライホイール内に均一な温度レベルToptが生じる。
【0036】
この動作点Aは、外部冷却系の故障が予想された動作状態に対してさらに高い安全余裕Sを有する。故障事故と称することのできるような単数または複数の外部冷却系の故障状態が現れると、フライホイール室内部での内部液体摩擦のゆえに温度は最大に生じる温度TOに至るまで上昇する。
【0037】
このような温度上昇の結果、移送流体の粘度は温度上昇の結果として低下し、それとともにフライホイール室内の損失出力が減少することになる。その結果、モータポンプ組立体の全効率ηgesが上昇する。しかし温度上昇の否定的作用は、フライホイール本体の材料強度が温度TOにおける低い値σLに低下することである。それとともに、1つの外部冷却部の故障時フライホイール室内で故障事故動作点Bは比較的高い温度レベルTOに生じる。しかしこの動作点Bにおいてフライホイール本体の強度は、この例において残存する20%の耐力余裕のゆえにいまなお保証されている。線図において故障事故動作点Bの右横にハッチングされた区画Cは許容外の動作範囲を表す。
【0038】
それとともに、全効率ηgesの改善を意識的に省くことによって動作信頼性の著しい改善が達成される。1つの外部冷却機構が故障した場合でも、モータポンプ組立体の確実な動作がいまなお保証されている。その場合にも、フライホイール本体材料の許容外の応力状態に基づいてフライホイールの破壊が現れることを懸念する必要はない。その結果、これにより、支出を要するフライホイール保護機構を省くことができ、そのことから、このようなモータポンプ組立体の著しい費用低下と動作信頼性の高まりがもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】モータポンプ組立体の横断面図である。
【図2】フライホイール本体と重金属挿入物との斜視図である。
【図3】フライホイール室の拡大図である。
【図4】フライホイール室の拡大図である。
【図5】フライホイールの温度分布の線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に温度変換部および/または熱伝達部を備えた設備における冷却材回路用の同軸で付設されたポンプ(6)を備えた電気モータ(1)であって、完全密封圧力外装として構成されたケーシング部品(7、10)の内部で軸列(5)が電気モータ(1)のトルクを、ポンプケーシング(7)内に配置される羽根車(8)に伝達し、前記電気モータ(1)とポンプケーシング(7)との間にフライホイール(12)が配置されており、回転する全部品が完全密封モータポンプ組立体の内部に配置されており、モータポンプ組立体に液体が充填されているものにおいて、前記フライホイール(12)を構成するフライホイール本体(13)が多数の空洞(14、15)と、該空洞(14、15)内に配置される重金属挿入物(16、17)とを備えており、密度が11.0(kg/dm3)を超える重金属が重金属挿入物(16、17)を形成し、または、そのなかに配置されており、前記フライホイール本体(13)が高強度材料からなることを特徴とする電気モータ。
【請求項2】
前記重金属挿入物(16、17)を周囲の液体から遮断するための手段が配置されていることを特徴とする、請求項1記載の電気モータ。
【請求項3】
前記重金属挿入物(16、17)がカートリッジ状(21、22)に構成され、かつ、それ自体公知の手段によってフライホイール本体(13)内で固着されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電気モータ。
【請求項4】
前記重金属挿入物(16、17)が空洞(14、15)に注入される充填物として構成され、かつ、それ自体公知の手段によってフライホイール本体(13)内で保持されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電気モータ。
【請求項5】
前記フライホイール本体(13)が軸列(5)挿通用の穴を持たないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項6】
前記フライホイール本体(13)が単部分構成または多部分構成のフランジ結合部(19、20)によって軸列(5)と結合されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項7】
フェーススプライン(20)が前記フライホイール本体(13)と軸列(5)との間の結合手段を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項8】
前記フライホイール(12)の外径を取り囲む少なくとも1つの円筒形熱交換器(27)が圧力外装の内部に配置され、かつフライホイール室(24)の半径方向壁面を形成しており、ポンプ室の高圧ゾーンが、熱交換器(27)の外面を介して案内される単数または複数の流れ路(23)によってフライホイール室(24)の遠ポンプ側と結合されており、熱交換器(27)とフライホイール(12)との間の環状隙間(32)が遠ポンプ側フライホイール室と近ポンプ側フライホイール室(24.1)との間に第1還流路を形成し、軸列(5)の領域に配置される第2還流路が近ポンプ側フライホイール室(24.1)をポンプ室と結合することを特徴とする、請求項1の前文に記載の電気モータ。
【請求項9】
前記複数の円筒形熱交換器(27)がフライホイール(12)を同軸で取り囲み、熱交換器(27)の間で1つの環状隙間または複数の通路が遠ポンプ側フライホイール室(24)に至る流れ路を形成することを特徴とする、請求項8記載の電気モータ。
【請求項10】
前記軸列(5)によって駆動される少なくとも1つの移送機構(37)が第2還流路中に配置されていることを特徴とする、請求項8または9記載の電気モータ。
【請求項11】
前記円筒形熱交換器(27)が外部冷却水源(A‐B)と結合されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項12】
ポンプ側モータカバー(25)が前記フライホイール室(24)の遠ポンプ側壁(29)を形成し、前記モータカバー(25)内に冷却機構(C‐D、F)が配置されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項13】
前記冷却機構(C‐D)が低圧冷却機構として構成されていることを特徴とする、請求項12記載の電気モータ。
【請求項14】
前記冷却機構(E)が高圧冷却機構として構成されていることを特徴とする、請求項12記載の電気モータ。
【請求項15】
前記冷却機構が高圧モータ冷却部の一部として構成されていることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項記載の電気モータ。
【請求項16】
前記モータ室とフライホイールとの間で軸列の領域に軸封装置が配置されていることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項記載の電気モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−503322(P2009−503322A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523166(P2008−523166)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006644
【国際公開番号】WO2007/014620
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(591040649)カーエスベー・アクチエンゲゼルシャフト (16)
【氏名又は名称原語表記】KSB AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】