説明

吐出装置、吐出方法

【課題】液滴の着弾地点を正確に制御できる技術を提供する。
【解決手段】吐出回路22に吐出信号が入力されてから吐出された液滴が吐出対象物に着弾するまでの吐出必要時間よりも長い処理割当時間を設定し、吐出口16が着弾地点の真上に到達する真上時刻よりも処理割当時間前の信号出力時刻に制御部10が吐出部13に吐出信号を出力する。遅延部24には、処理割当時間と吐出必要時間の差である遅延時間が設定されており、遅延部24は、入力された吐出信号を遅延時間遅らせて吐出回路22に入力させ、吐出された液滴を真上時刻において吐出地点に着弾させる。同じ真上時刻において複数の吐出地点にそれぞれ吐出口16が到達する場合は、各吐出口16に対し、同じ信号処理時刻において吐出信号を出力すればいよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴を吐出する技術に関し、特に、吐出する液滴を着弾地点に正確に着弾させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の吐出液を液滴にして吐出口から吐出する方式には、吐出液を急速に加熱して気泡を発生させ、気泡の圧力で吐出液を液滴にして吐出口から吐出する方式と、ピエゾ素子に電圧を印加してピエゾ素子を膨張させ、吐出液を加圧して液滴として吐出口から吐出させる方式とがある。
【0003】
吐出口については、製造工程での加工精度や組立精度に限界があり、吐出口内を吐出液が流れる流路の寸法や、吐出口が接続された吐出室の剛性、向きなどに個体差が発生する。そのため、各吐出口から吐出される液滴には、液滴の体積や飛行速度、また、液滴が吐出されるタイミングにばらつきが発生する。
【0004】
ピエゾ素子を用いる吐出ヘッドでは、吐出口のばらつきの他に、ピエゾ素子の圧電特性の差があり、同一波形で同一の大きさのパルス電圧を印加しても吐出室にかかる圧力に差が生じる。これも、吐出される液滴の体積と速度にばらつきが生じる原因になる。
液滴の体積にばらつきがあると、吐出対象物に着弾した液滴の広がりにばらつきがあり、濃度むらが生じるという問題がある。
【0005】
しかし、各吐出口から吐出される液滴の体積を所定範囲内にするためには、ピエゾ素子に印加するパルス電圧の大きさや印加時間を調節するため、吐出に要する時間や液滴の飛行速度が吐出口毎に変わる原因となる。
【0006】
液滴は、吐出口と吐出対象物とが相対運動をしながら吐出されるため、液滴の飛行速度や吐出タイミングにばらつきがあると、液滴の着弾位置ずれが起こるから、液滴の体積を所定範囲内に納めると、液滴を着弾地点に正確に着弾させることが一層できなくなるという問題がある。
【0007】
特に、ピエゾ素子を用いて吐出液の液滴を吐出してFPD(フラットパネルディスプレイ)を作成する工程では、液滴の着弾位置の数マイクロメートルの誤差が問題となるため、所望の位置に所望の量の液滴を着弾させる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−23275号公報
【特許文献2】特開2007−276420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は液滴の体積と着弾地点の両方を正確に制御できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、吐出室と、前記吐出室に接続された吐出口と、前記吐出室内に配置された吐出液に圧力を印加して前記吐出液を液滴にして前記吐出口から吐出させる吐出素子と、吐出信号が入力されると前記吐出素子を動作させる吐出回路とを複数有する吐出部と、前記各吐出部から吐出された前記吐出液の液滴が着弾する吐出対象物が配置される基板保持台と、前記吐出口と前記吐出対象物とを相対移動させる移動部と、前記吐出口と前記基板保持台との間の相対位置を検出し、検出結果を出力する位置情報測定部と、あらかじめ記憶された記憶内容と、入力された前記検出結果とから前記吐出信号の出力の可否を判断し、判断結果が出力可になると前記吐出信号を前記吐出部に向けて出力する制御部とを有する吐出装置であって、前記吐出部には、前記制御部が出力する前記吐出信号が入力され、入力された前記吐出信号を設定された遅延時間だけ遅延させて前記吐出回路に出力する遅延部が設けられた吐出装置である。
また、本発明は、前記吐出部は前記吐出口毎に設けられ、前記遅延部は、各前記吐出部にそれぞれ設けられ、対応する吐出部の前記遅延時間は、各前記遅延部に記憶された吐出装置である。
また、本発明は、前記吐出口と、前記吐出口から吐出された前記液滴が着弾する着弾地点とが対面する到達時刻よりも、前記吐出回路に前記吐出信号が入力されてから前記吐出回路が動作して前記吐出口から吐出された前記液滴が前記吐出対象物上に着弾するまでの時間である吐出必要時間だけ前の時刻である入力時刻に、前記吐出信号が前記吐出回路に入力される様に構成された吐出装置である。
また、本発明は、前記遅延時間には、前記吐出口が配置された直線と、前記相対移動の方向に垂直な方向との間の傾斜角度に応じた傾斜遅れ時間が含まれる吐出装置である。
また、本発明は、前記吐出回路は、前記吐出素子に出力するパルス電圧の電圧値と出力時間を変更できるように構成された吐出装置である。
また、本発明は、前記吐出素子はピエゾ素子である吐出装置である。
また、本発明は、吐出室と、前記吐出室に接続された吐出口と、前記吐出室内に配置された吐出液に圧力を印加して前記吐出液を液滴にして前記吐出口から吐出させる吐出素子と、吐出信号が入力されると前記吐出素子を動作させる吐出回路とを有する吐出部を複数個と、吐出された前記吐出液が着弾する吐出対象物が配置される基板保持台と、前記吐出部と前記吐出対象物とを相対移動させる移動部と、前記吐出ヘッドと前記基板保持台との間の相対位置を検出し、検出結果を出力する位置情報測定部と、前記位置情報測定部の測定結果から得られた値を吐出条件と比較し、吐出信号の出力の可否を判断し、判断結果が出力可のときに、前記吐出信号を前記吐出素子に向けて出力する制御部と、を有する吐出装置を用い、前記吐出口と前記吐出対象物とを一定速度で相対移動させながら前記液滴を吐出して前記吐出対象物上の着弾地点に前記液滴を着弾させる吐出方法であって、前記吐出回路に前記吐出信号が入力されてから前記吐出回路が動作して前記吐出口から吐出された前記液滴が前記吐出対象物上に着弾するまでの時間である吐出必要時間を前記吐出部毎に求めておき、前記吐出部毎に、前記吐出口が前記着弾地点の真上位置にそれぞれ到達する到達時刻よりも前記吐出部の前記吐出必要時間前の時刻である入力時刻に、前記吐出信号を前記吐出回路にそれぞれ入力させ、前記液滴を、前記到達時刻において、前記吐出対象物上に予め設定された着弾地点へ着弾させる吐出方法である。
また、本発明は、前記吐出部には遅延部を設け、前記吐出部に入力された吐出信号は、前記吐出部で前記吐出部毎に設定された遅延時間だけ遅延された後、前記吐出回路に入力させる吐出方法である。
また、本発明は、前記遅延時間には、各前記吐出部に、同時に前記吐出信号が入力されたときに、前記傾斜遅れ時間に、予め求められた処理時間を加えた時間を前記遅延時間とし、前記吐出回路には、前記入力時刻に前記吐出信号が入力されるようにする吐出方法である。
【発明の効果】
【0011】
各吐出口から吐出する液滴を予め設定された位置の着弾地点に正確に着弾させることができる。
複数の吐出口から吐出される液滴が所定範囲内の体積になるように吐出素子に印加するパルス電圧の大きさや印加時間を設定しても、液滴を着弾地点に正確に着弾させることができるので、体積のばらつきや着弾位置のばらつきによるムラが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の印刷装置の平面図
【図2】吐出ヘッドの内部を説明するための図
【図3】本発明の印刷装置を側方から見た側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<吐出装置>
本発明の吐出装置の構成を説明する。
まず、図1〜3を参照し、符号1は、本発明の一例の吐出装置を示している。この吐出装置1は、基板状の吐出対象物25を配置する基板保持台50と、基板保持台50上の吐出対象物25に吐出液を吐出する一乃至複数の吐出ヘッド17と、基板保持台50上の吐出対象物25と吐出ヘッド17とを相対的に移動させる移動装置30と、吐出ヘッド17と吐出対象物25との相対移動と、吐出液の吐出を制御する制御部10とを有している。
【0014】
移動装置30は、ここではリニアモータであり、該移動装置30は、複数の電磁石が一直線に配置された固定磁石部31と、固定磁石部31に移動可能に取り付けられた移動磁石部33とを有している。
ここでは二個の固定磁石部31が、基板保持台50の長手方向に沿って、基板保持台50の両側に互いに平行に設けられており、二本の固定磁石部31には、移動磁石部33がそれぞれ一台ずつ取り付けられている。
【0015】
固定磁石部31は、制御部10に接続されており、制御部10が出力する信号によって、所望位置の電磁石に電流が流れて磁力線が形成され、移動磁石部33は、固定磁石部31との間の磁気力により、固定磁石部31が配置された一直線方向に沿って、所望位置に移動できるように構成されている。
【0016】
基板保持台50の長手方向の中央位置の、基板保持台50の両側位置には、支柱(不図示)が一本ずつ立設されている。
支柱は、下端が基板保持台50に固定されており、上端には、一枚の細長の保持板12が取り付けられている。
【0017】
保持板12は、基板保持台50上で、長手方向が基板保持台50の幅方向と平行であって、固定磁石部31とは直角になるように配置されている。
各吐出ヘッド17は、保持板12の基板保持台50と対面する面に取り付けられている。
基板保持台50上には、移動可能に移動板55が配置されている。
【0018】
移動板55は、移動磁石部33に取り付けられ、移動磁石部33が、固定磁石部31の長手方向に沿って移動すると、移動板55は、移動磁石33と共に移動する。
移動板55上に吐出対象物25を配置し、吐出ヘッド17を静止させ、吐出ヘッド17に対して移動板55と共に吐出対象物25を移動させることで、吐出対象物25と吐出ヘッド17とは相対的に直線移動する。
移動装置30は、移動磁石部33を往復移動させることができるので、移動板55も往復移動することができる。
【0019】
本発明は、吐出対象物25を移動板55上に載せて吐出ヘッド17を移動板55に対して移動させることで、吐出対象物25と吐出ヘッド17とを相対移動させてもよい。
また、移動板55と吐出ヘッド17との両方を基板保持台50に対して移動させることで、移動板55上の吐出対象物25と吐出ヘッド17とを相対移動させても良い。
【0020】
移動板55の表面は水平であり、その上に配置された吐出対象物25の表面も水平になるようにされている。相対的な往復移動の間、移動板55上の吐出対象物25の上方を向いた面と下記吐出口16との間の距離は一定である。
【0021】
次に、吐出ヘッド17を説明する。
図2は、一乃至複数の吐出ヘッド17のうち、一個の吐出ヘッド17の内部を示しており、他の吐出ヘッド17の内部構造は同一である。
各吐出ヘッド17には、複数の吐出部13がそれぞれ設けられている。各吐出部13の構造は同一なので、一個の吐出部13の内部の部材の符号を付し、他の吐出部13についての符号の表記は省略する。
【0022】
吐出部13を説明すると、吐出部13は、吐出室14と、吐出室14の一部の壁面に設けられた弾性部材18と、弾性部材18に接触された吐出素子15と、吐出素子15に電気的に接続された吐出回路22と、吐出回路22に接続された遅延部24とを有している。
【0023】
吐出室14は、液体を輸送する配管によって吐出液タンク11に接続されており、吐出液タンク11から吐出液を供給されて内部が充満されるように構成されている。図2の符号23は、吐出室14の内部に供給され、吐出室14の内部を充満させる途中の吐出液を示している。
【0024】
吐出室14内が吐出液で充満された後、制御部10が吐出信号を出力し、吐出信号が吐出部13に入力されると、吐出信号は、遅延部24を介して、吐出回路22に入力される。吐出回路22は、吐出信号が入力されると予め設定された大きさと印加時間のパルス電圧を吐出素子15に出力する。
【0025】
吐出素子15は、印加される電圧の変化によって変形する素子であり(例えばピエゾ素子)、パルス電圧が入力された吐出素子15は、入力された電圧値と入力される時間の長さに応じて膨張し、弾性部材18を押圧し、吐出室14内の圧力を上昇させる。
【0026】
吐出室14には、吐出室14内を吐出ヘッド17の外部雰囲気に接続する吐出口16が設けられており、吐出室14の内部圧力が上昇すると吐出室14内の吐出液23は、その一部が液滴となって吐出口16から吐出される。
【0027】
吐出口16は、鉛直下方を吐出口16に対して相対移動する移動板55の表面に向けられており、吐出口16の下方に吐出対象物25が位置すると、液滴は吐出口16から吐出対象物25に向けて吐出されることになる。吐出された液滴は、吐出口16と吐出対象物25との間を飛行し、吐出対象物25の表面に着弾する。
【0028】
吐出対象物25の表面の所定位置には、基板基準点が設けられており、液滴が着弾すべき場所である着弾地点は、吐出対象物25上の位置が予め定められている。着弾地点の位置は、基板基準点を基準にして表すことができる。
【0029】
例えば、基板基準点を原点とし、互いに直交する二直線のうち、一方をX軸、他方をY軸とすると、各着弾地点の位置は、吐出対象物25上で、X−Y座標系のX座標とY座標として表すことができる。
【0030】
ここでは、着弾地点は、吐出対象物25上で行列に並んで配置されている。すなわち、各着弾地点は、吐出対象物25の表面上で、互いに平行な複数の直線と、それらの直線と垂直で互いに平行な直線とが交差する位置に配置されている。
各着弾地点は、吐出対象物25上の所定位置を原点にして、例えばXY座標などの座標が設定されている。
【0031】
移動板55上の位置にも、移動板55の基準点を原点として座標が設定されており、吐出対象物25が移動板55上に乗せられると、吐出対象物25上の座標と、移動板55上の座標とが関連づけられる。
また、基板保持台50上にも、基準点が設定され、基板保持台50上の位置にも座標が定められている。
【0032】
例えば、基板保持台50の基準点である保持台基準点を原点とし、相対移動方向に沿った方向をY軸とし、そのY軸と直交する水平面内の方向をX軸とすると、吐出対象物25は、吐出対象物25のY軸が基板保持台50のY軸と平行になり、吐出対象物25のX軸は基板保持台50のX軸とを平行になるように、移動板55上に配置される。
【0033】
本発明の吐出装置1は、吐出口16と吐出対象物25とが相対移動する際には、吐出口16と吐出対象物25との間の、相対移動方向に沿った方向の移動量や、相対位置のいずれか一方又は両方を測定する位置情報測定部7を有している。
【0034】
この例では、位置情報測定部7は、符号表示装置5と符号読取装置6とを有しおり、符号表示装置5と符号読取装置6は、いずれか一方が、所定角度(ゼロ度を含む)傾けられた吐出ヘッド17に対して静止し、他方が吐出対象物25に対して静止するように取り付けられている。
ここでは、符号表示装置5は基板保持台50に設けられ、符号読取装置6は移動板55に設けられている。
【0035】
吐出口16と吐出対象物25との間の相対移動方向に平行な方向の移動距離は、符号表示装置5と符号読取装置6との間の相対移動方向に平行な方向の移動距離に等しくなる。なお、相対移動の際には、吐出口16同士は相対的に静止されている。
【0036】
符号表示装置5は、長手方向を有する表示板5aが、長手方向を相対移動方向と平行にして基板保持台50に取り付けられており、表示板5aの表面には、符号線5bが、相対移動方向と垂直に向けられて、表示板5aの長手方向に沿って、相対移動方向と平行な一直線上に配置されている。符号読取装置6と符号表示装置5とは、符号読取装置6が符号線5bと対面しながら相対移動するようにされている。
ここでは、符号線5bは、金属薄膜等の線状の薄膜で構成されており、隣接する符号線5bの中心位置間は等しい距離にされている。
【0037】
符号読取装置6は、ここでは入射する光の光量を測定する受光素子である。符号線5b表面の光反射率と、隣接する符号線5b間の部分の反射率とは異なるようにされており、符号読取装置6が符号線5bに対面するときと、符号線5b間の部分に対面するときとでは、符号読取装置6が検出する光量が異なるようにされている。
【0038】
符号読取装置6と符号表示装置5とが相対移動して、符号読取装置6が複数の符号線5b上を通過し、光量の検出結果が制御部10に出力されると、制御部10は通過個数に応じた光量の大小を検出し、通過した符号線5bの個数が求められる。
【0039】
図1では、移動板55上に吐出対象物25が乗せられた状態で、吐出ヘッド17の真下位置よりも手前の移動開始位置に配置されており、吐出ヘッド17は、相対移動方向と垂直な方向から、傾けられている。
【0040】
吐出ヘッド17と移動板55とが相対移動することで、吐出口16と吐出対象物25とは相対移動している。吐出対象物25を移動板55上に配置する際には、吐出対象物25上で着弾地点が並ぶ直線が、吐出口16と吐出対象物25との相対移動方向と平行になるように吐出対象物25が配置されている。
その状態で移動板55が吐出ヘッド17の真下位置を移動し、吐出液が着弾し、吐出ヘッド17の真下位置を通過して、移動終了位置に到着して移動が終了するようになっている。
【0041】
移動板55が移動開始位置に位置するときの、移動板55上の座標と基板保持台50上の座標とは関係づけられており、移動板55が移動し、吐出対象物25と吐出口16とが相対的に移動するとき、符号読取装置6の測定によって制御部10が求めた移動量から、移動中の移動板55上の位置については、基板保持台50上での座標を求めることができる。
【0042】
移動板55の座標と、移動板55上の吐出対象物25の座標とは予め関連付けられているから、相対移動中の吐出対象物25の着弾位置の基板保持台50の座標は制御部10によって求められる。
【0043】
<吐出工程>
吐出液を吐出するためには、制御部10は、先ず、吐出ヘッド17と吐出対象物25との間の相対移動を開始する。
制御部10には、吐出口16と吐出対象物25との相対移動速度の値が一又は複数記憶されており、記憶内容から一の相対移動速度が選択され、制御部10は吐出ヘッド17と吐出対象物25との間を加速して(本例では、移動板55を加速する。)、選択された相対移動速度に達すると、吐出口16と吐出対象物25とは、一定速度で相対移動するようになる。
【0044】
符号読取装置6が符号線5bが配置された範囲の上に到達すると、符号読取装置6に入射する光の光量は、符号読取装置6が対面する部分の符号線5bの有無によって、変化するようになり、符号読取装置6による光量の検出結果は制御部10に出力される。
制御部10は、符号読取装置6が出力する検出結果から、通過した符号線5bの個数や吐出口16と吐出対象物25との間の相対移動方向に沿った方向の相対移動量や、位置を求める。
【0045】
なお、本例の位置情報測定部7は、符号読取装置6が受光素子であり、符号線5bの有無による光量変化によって符号線5bを検出していたが、符号読取装置6に磁気検出素子を用い、符号線5bの替わりに磁石を配置し、符号読取装置6が磁気強度を検出して制御部10に検出結果を出力して制御部10が、受光量変化の場合と同様に、相対移動量や相対位置を求めてもよい。
【0046】
この制御部10では、着弾地点はいずれか一個の吐出口16の真下を通過し、一個の吐出口16と対面する。制御部10には、各吐出部13に、後述するように、成立すると吐出信号が出力される吐出条件が、着弾地点に対応して記憶されている。
【0047】
制御部10は、位置情報測定部7から入力された検出結果に基いて、相対移動中の各吐出口16が吐出条件を満足して出力可とできるかどうかを判断する。出力可と判断した場合は、吐出信号をその吐出口16の吐出部13に出力する。出力否と判断している間は吐出信号を出力しない。
【0048】
本発明では、吐出可と判断されて制御部10から吐出部13に吐出信号が出力され、吐出部13から吐出液が液滴として吐出されると、後述するように、液滴は、予め決められた着弾位置に着弾する。
【0049】
吐出対象物25上の各着弾地点に液滴が着弾した後、吐出対象物25は基板保持台50の移動終了位置から他の装置に移動され、液滴の未着弾の他の吐出対象物25が、基板保持台50上の移動開始位置に配置された移動板55上に、上記のように配置され、着弾位置に吐出液の液滴が着弾する。
【0050】
<吐出条件>
次に、本実施例の吐出装置1の吐出条件と液滴の着弾について説明する。
本発明では、吐出信号が入力された吐出回路22は、予め設定された電圧値と出力時間のパルス電圧を吐出素子15に出力する。
【0051】
各吐出口16から吐出される液滴は、設定された範囲の大きさの体積になるように、吐出回路22のパルス電圧の電圧値と出力時間が求められ、各吐出回路22は、求めた電圧値と出力時間のパルス電圧を出力するように設定されている。
【0052】
吐出回路22に吐出信号が入力されてから、その吐出回路22の動作によって液滴が吐出されるまでの時間を動作必要時間とし、液滴が吐出されてから基板保持台50上に配置された吐出対象物25に着弾するまでの時間を飛行時間とすると、動作必要時間は吐出回路22と吐出素子15との特性により異なる値となり、飛行時間は液滴の飛行速度によって異なる値となるから、動作必要時間と飛行時間は、吐出部13毎に異なる値となり得る。
【0053】
パルス電圧の電圧値や出力時間によって液滴の速度が異なる値になるため、吐出口16から吐出された液滴が吐出されてから着弾するまでの飛行時間も異なる値となる。
従って、飛行時間は、吐出口16と、吐出口16の直下に位置するときの着弾地点との間の距離と、吐出された液滴の鉛直下方方向の速度成分から飛行速度を求める他、各吐出口16から吐出される吐出液の液滴を観察して、飛行速度を求めることができる。
【0054】
ここでは、飛行速度は観察によって求められており、実際の値であるから、一定速度で相対移動する吐出口16と着弾地点との間の、相対移動方向の距離が、飛行時間と相対移動速度の積だけ離間しているときに、吐出口16から吐出されると、液滴は、着弾地点に正確に着弾する。
即ち、着弾地点が吐出口16の真下に到達し、着弾地点と吐出口16とが対面する時刻を、到達時刻とすると、到達時刻よりも飛行時刻前に吐出されていると、液滴は着弾地点に着弾する。
【0055】
但し、吐出回路22に吐出信号が入力されてから液滴が吐出されるまでに、吐出口16固有の動作必要時間を必要とするときは、吐出回路22には、飛行時間と動作必要時間を合計した時間だけ到達時刻よりも前の時刻に吐出信号が入力されると、液滴は着弾地点に正確に着弾することになる。
【0056】
動作必要時間と飛行時間とを合計した時間を、各吐出回路22の吐出必要時間とすると、吐出必要時間は、吐出回路22に吐出信号が入力されてから液滴が吐出対象物25に着弾するまでに必要な時間であるから、吐出部13内の、吐出回路22、吐出素子15、及び吐出口16等の特性によって異なる値になるから、吐出回路22固有の値である。
【0057】
そして、到達時刻よりも吐出必要時間前の時刻を信号入力時刻とすると、各着弾地点に接続された吐出回路22に、着弾地点に対応する信号入力時刻に吐出信号が入力されて吐出口16から吐出液が吐出されると、吐出された吐出液の液滴は、着弾地点に正確に着弾することになる。
各吐出部13については、動作必要時間と飛行時間の両方、または、吐出必要時間は、吐出部13毎に個別に測定して求められており、記憶されている。
【0058】
各着弾地点については、その着弾地点に吐出する吐出部13は予め分かっており、一定速度で相対移動する吐出対象物25の着弾地点の位置と時刻とから、各着弾地点に対する到達時刻や信号入力時刻は、各着弾地点に対応して求められ、制御部10に記憶されている。
【0059】
従って、例えば、制御部10が、吐出口16と吐出対象物25との相対移動中に信号入力時刻となった着弾地点を検出すると、制御部10が出力可と判断し、吐出信号を出力し、その吐出信号が、着弾地点に吐出する吐出部13内の吐出回路22に遅滞なく入力されると、着弾地点には、到達時刻に液滴が着弾することになる。しかし、着弾地点毎に信号入力時刻が異なる時刻であると、制御部10は、着弾地点毎に吐出部13に吐出信号を出力することになり、配線や回路が複雑になる。
【0060】
吐出対象物25の着弾地点は、相対移動方向と平行な直線上に配置されており、吐出口16の間隔である吐出口間隔が、着弾地点の相対移動方向に対して直角な方向の間隔と等しい場合は、吐出ヘッド17は、相対移動方向に対して直角に配置されるが、吐出口間隔が、着弾地点の相対移動方向に対して直角な方向の間隔よりも長い場合は、吐出ヘッド17は、相対移動方向に対して直角では無い角度で交差して相対移動方向と直角な方向の間隔が短くなるように斜めにされている。
【0061】
その結果、着弾地点が並んだ直線上に、吐出口16が位置するようになり、吐出ヘッド17の吐出口16の真下位置で吐出口16と着弾地点とが対面する。
吐出口16の間隔が、着弾地点の相対移動方向に対して直角な方向の間隔と等しい場合は、吐出口16が並ぶ直線は、相対移動方向と直角に配置され、各吐出口16は、同じ到達時刻に、着弾地点の真上位置に一斉に到達するが、吐出ヘッド17が相対移動方向に直角な方向から傾けられ、吐出口16の並びが相対移動方向に対して斜めに配置されている場合は、各着弾地点の到達時刻は異なる時刻になる。
【0062】
吐出口16が一斉に到達する場合は、各吐出部13に対して信号入力時刻に吐出信号が入力されれば、液滴は到達時刻に一斉に着弾地点に着弾する。
吐出口16の並びが相対移動方向に対して斜めにされているときは、各吐出口16の真上時間と、吐出口16の並びが相対移動方向に対して直角方向に配置されたときの到達時刻との間には、時間差が発生するため、各吐出口16が配置された直線が、相対移動方向とは垂直な方向から傾斜された場合は、一斉に着弾地点に着弾することはなく、到達時刻が異なることになる。
【0063】
このときの到達時刻の時間差は、例えば、吐出ヘッド17を斜めにするときの回転中心と、各吐出口16との間の距離と、傾斜角度(ここでは、水平面内での吐出口16が配置された直線と、相対移動方向に対して直角な方向との角度θ)とから算出できる。
【0064】
吐出口16が並ぶ直線が傾斜されたときには、各吐出口16のうち、最先に吐出液を吐出する吐出口16の到達時刻を基準とし、他の吐出口16の到達時刻との間の差時間を傾斜遅れ時間とすると、傾斜遅れ時間は、傾斜の角度と着弾地点の位置から求めることができる。
【0065】
各吐出部13に設けられた遅延部24は、遅延回路19と、遅延回路19に接続された遅延記憶回路20とをそれぞれ有しており、制御部10が出力する吐出信号は、吐出部13の遅延部24内の遅延回路19に入力される。
【0066】
傾斜遅れ時間は吐出口16毎に求められており、求められた値は、その吐出口16の遅延記憶回路20に記憶されている。従って、各吐出口16の遅延回路19は、制御部10から入力された信号を記憶された傾斜遅れ時間だけ遅らせることができる。
各着弾地点の到達時刻よりも、各着弾地点の傾斜遅れ時間だけ前の時刻は、同一の時刻になる。
【0067】
従って、仮に、各吐出部13が、吐出信号が入力されると直ちに吐出液が吐出され、飛行時間がゼロで着弾する場合は、その同一時刻に吐出信号が入力されると、吐出液の液滴は、各着弾地点の到達時刻に、各着弾地点に着弾する。
しかし、各吐出部13が吐出する際には、吐出必要時間が必要で有り、その値は吐出口16毎に異なっている。
【0068】
本発明では、各吐出部13の吐出必要時間のうち、最も長い吐出必要時間よりも長い時間が処理割当時間として吐出部13毎に遅延記憶回路20に記憶されている。
到達時刻よりも処理割当時間前の時刻を信号伝達時刻とすると、制御部10は、一の出力時刻で吐出信号を各吐出部13に出力すると、各吐出部13内では、遅延部24によって、先ず、傾斜遅れ時間だけ制御信号の伝達が停止されると、出力時刻から傾斜遅れ時間の経過後の時刻は、信号伝達時刻になる。
【0069】
処理割当時間と吐出必要時間との差の時間を処理時間とすると、処理時間は吐出必要時間の値に応じて、各吐出部13毎に求められており、吐出部13毎に求めた処理時間の値は、遅延記憶回路20に記憶されている。
【0070】
そして、傾斜遅れ時間を待って、信号伝達時刻に達した後、各遅延部24で処理時間だけ待つと、各吐出部13毎に信号入力時刻になり、この信号入力時刻のときに、各吐出部13内の吐出回路22に吐出信号が入浴され、吐出口16から吐出された液滴は到達時刻に着弾地点に着弾する。
【0071】
以上説明したように、各着弾地点の到達時刻よりも、処理割当時間と傾斜遅れ時間とを加算した時間だけ前の時刻は、各着弾地点間で同じ時刻となっており、その時刻を出力時刻とすると、制御部10が吐出信号を出力すべき時刻は出力時刻であり、現在時刻が出力時刻になったかどうかを判断するためには、現在の時刻と出力時刻とを比較し、出力時刻になったと判断したときに、吐出信号を出力すればよい。
【0072】
また、吐出ヘッド17には、基準点を設けておくと、その基準点の出力時刻での位置は予め求めることができるので、位置情報測定部7の検出結果から基準点の現在の位置を検出し、出力時刻での位置と比較することで、吐出信号を出力するか否かを判断することもできる。
【0073】
なお、本発明は、上記のように、各吐出部13の遅延回路19は、制御部10から各吐出部13に対して、吐出信号は出力時刻に出力され、各吐出部13に同時に入力されるようになっており、各吐出部13の遅延記憶回路20に記憶された処理時間(処理割当時間から吐出必要時間を差し引いた値の時間)と傾斜遅れ時間とを合計した時間を、吐出部13毎に求められた遅延時間とすると、各吐出部13内では、入力された吐出信号の伝達が、遅延時間だけ遅延させて吐出回路22に入力されると見ることもできる。
【0074】
以上説明したように、位置情報測定部7から入力される検出結果や、現在時刻、着弾地点の位置情報などから、制御部10が出力時刻に吐出信号を出力すると、吐出信号は、傾斜遅れ時間と処理時間遅らされて信号入力時刻になったときに吐出回路22に入力されるので、到達時刻に吐出された液滴が着弾位置に着弾する。吐出口16が、相対移動方向と垂直な方向の一直線上に並んで配置されているときは、傾斜遅れ時間はゼロになる。
【符号の説明】
【0075】
1……吐出装置
7……位置情報測定部
10……制御部
13……吐出部
14……吐出室
15……吐出素子
16……吐出口
17……吐出ヘッド
19……遅延回路
20……遅延記憶回路
22……吐出回路
24……遅延部
25……吐出対象物25(基板)
30……移動装置
50……基板保持台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出室と、前記吐出室に接続された吐出口と、前記吐出室内に配置された吐出液に圧力を印加して前記吐出液を液滴にして前記吐出口から吐出させる吐出素子と、吐出信号が入力されると前記吐出素子を動作させる吐出回路とを複数有する吐出部と、
前記各吐出部から吐出された前記吐出液の液滴が着弾する吐出対象物が配置される基板保持台と、
前記吐出口と前記吐出対象物とを相対移動させる移動部と、
前記吐出口と前記基板保持台との間の相対位置を検出し、検出結果を出力する位置情報測定部と、
あらかじめ記憶された記憶内容と、入力された前記検出結果とから前記吐出信号の出力の可否を判断し、判断結果が出力可になると前記吐出信号を前記吐出部に向けて出力する制御部とを有する吐出装置であって、
前記吐出部には、前記制御部が出力する前記吐出信号が入力され、入力された前記吐出信号を設定された遅延時間だけ遅延させて前記吐出回路に出力する遅延部が設けられた吐出装置。
【請求項2】
前記吐出部は前記吐出口毎に設けられ、
前記遅延部は、各前記吐出部にそれぞれ設けられ、対応する吐出部の前記遅延時間は、各前記遅延部に記憶された請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記吐出口と、前記吐出口から吐出された前記液滴が着弾する着弾地点とが対面する到達時刻よりも、前記吐出回路に前記吐出信号が入力されてから前記吐出回路が動作して前記吐出口から吐出された前記液滴が前記吐出対象物上に着弾するまでの時間である吐出必要時間だけ前の時刻である入力時刻に、前記吐出信号が前記吐出回路に入力される様に構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項4】
前記遅延時間には、前記吐出口が配置された直線と、前記相対移動の方向に垂直な方向との間の傾斜角度に応じた傾斜遅れ時間が含まれる請求項3記載の吐出装置。
【請求項5】
前記吐出回路は、前記吐出素子に出力するパルス電圧の電圧値と出力時間を変更できるように構成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項6】
前記吐出素子はピエゾ素子である請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項7】
吐出室と、前記吐出室に接続された吐出口と、前記吐出室内に配置された吐出液に圧力を印加して前記吐出液を液滴にして前記吐出口から吐出させる吐出素子と、吐出信号が入力されると前記吐出素子を動作させる吐出回路とを有する吐出部を複数個と、
吐出された前記吐出液が着弾する吐出対象物が配置される基板保持台と、
前記吐出部と前記吐出対象物とを相対移動させる移動部と、
前記吐出ヘッドと前記基板保持台との間の相対位置を検出し、検出結果を出力する位置情報測定部と、
前記位置情報測定部の測定結果から得られた値を吐出条件と比較し、吐出信号の出力の可否を判断し、判断結果が出力可のときに、前記吐出信号を前記吐出素子に向けて出力する制御部と、
を有する吐出装置を用い、前記吐出口と前記吐出対象物とを一定速度で相対移動させながら前記液滴を吐出して前記吐出対象物上の着弾地点に前記液滴を着弾させる吐出方法であって、
前記吐出回路に前記吐出信号が入力されてから前記吐出回路が動作して前記吐出口から吐出された前記液滴が前記吐出対象物上に着弾するまでの時間である吐出必要時間を前記吐出部毎に求めておき、
前記吐出部毎に、前記吐出口が前記着弾地点の真上位置にそれぞれ到達する到達時刻よりも前記吐出部の前記吐出必要時間前の時刻である入力時刻に、前記吐出信号を前記吐出回路にそれぞれ入力させ、前記液滴を、前記到達時刻において、前記吐出対象物上に予め設定された着弾地点へ着弾させる吐出方法。
【請求項8】
前記吐出部には遅延部を設け、前記吐出部に入力された吐出信号は、前記吐出部で前記吐出部毎に設定された遅延時間だけ遅延された後、前記吐出回路に入力させる請求項7記載の吐出方法。
【請求項9】
前記遅延時間には、各前記吐出部に、同時に前記吐出信号が入力されたときに、前記傾斜遅れ時間に、予め求められた処理時間を加えた時間を前記遅延時間とし、前記吐出回路には、前記入力時刻に前記吐出信号が入力されるようにする請求項8記載の吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22545(P2013−22545A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161703(P2011−161703)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】