説明

吐水制御システム

【課題】無線タグを利用して、構成が簡単で低コストの吐水制御システムを提供する。
【解決手段】無線タグTは水洗便器・浴槽・洗面器等の水回り機器に装着され、検出装置10は無線タグTへ向かって質問信号を発信する。無線タグTの記憶部には水回り機器の種類や品番に関する識別情報が保持されている。手動操作で動作制御装置を駆動して吐水装置の吐水動作を開始させる。検出装置10は、無線タグTからの応答信号を受信し、識別情報に基づき検知信号を動作制御装置へ出力し、動作制御装置は吐水対象である水回り機器の識別情報に基づいて所要吐水量や所要吐水時間を算出し、吐水量又は吐水時間を制御する。無線タグを装着しておけば、水回り機器の種類を変更しても、吐水装置の設定を変更することなく適切な吐水動作を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器・浴槽・シンク・水洗便器等の水回り機器に備えられる吐水装置の吐水動作を制御する吐水制御システムを、無線タグを利用して構築したものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水回り機器にはそれぞれに対応する吐水装置が備えられ、例えば洗面器・シンクには湯水混合栓などの給水器具が、浴槽には定量止水栓が、水洗便器にはフラッシュバルブや洗浄水タンクなどの洗浄装置が備えられる。これら吐水装置の多くは、手動で操作されるが、リモコンによって遠隔的に操作可能に構成したものも従来提案されている。例えば特許文献1には、リモコンからの信号出力によって、制御手段を動作させ、水の流量や水温を調節し得るようになされた自動水栓が記載されている。また、特許文献2には、リモコンからの信号出力により便器洗浄を実行する大便器洗浄装置が記載されている。
【特許文献1】特開2001−207499公報
【特許文献2】特開2002−115300公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1,2に記載の吐水装置は、リモコンから制御装置へ赤外線で通信するようになされ、それ故、リモコンには赤外線出力用の電源を、また制御装置には信号処理用の電源を装備する必要がある。このため、装置の大型化及びコスト高をもたらしている。
【0004】
また特許文献2の大便器洗浄装置は、複数の異なる種類の便器を設置した場合、便器ごとに備えられる洗浄装置について個別に洗浄水量の調節を行う必要がある。また、便器を交換したときには、洗浄装置の再調整が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が採用した吐水制御システムの特徴は、水回り機器に備えられる吐水装置の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記水回り機器又はその近傍に配置され前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグとから構成され、前記無線タグは、前記水回り機器に対応する識別情報を応答信号に含むようになされ、前記検出装置が無線タグからの応答信号に基づいて検知信号を前記動作制御装置へ出力し、前記動作制御装置が検知信号に基づき前記吐水装置に所定の吐水動作を実行させるように設定されていることである。
【0006】
前記無線タグは、検出装置から送信される電波を利用して電力を生起させ、記憶部に保持した情報に基づき受信電波を変調し、応答信号を生成して送信するものが考えられ、通常、記憶部に、無線タグを取り付けた対象を識別するための識別情報を保持し、該保持情報が応答信号に含まれる。検出装置は、無線タグへ質問信号を送信すると共に、無線タグから返信される応答信号を受信し、応答信号に含まれる識別情報を解析して、対応する所定の検知信号を動作制御装置へ出力するものである。このため検出装置は、識別情報に関するデータ及び/又はプログラムの記憶手段と演算手段とを有し、識別情報の違いに応じた異なる検知信号を生成する信号生成機能を持っている。動作制御装置は、検出装置から出力される検知信号に基づき、吐水装置を制御して所定の吐水動作を実行させるものであり、そのための演算手段と制御プログラムとを備えている。
【0007】
また本発明に係る吐水制御システムは、水回り機器に備えられる吐水装置の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記水回り機器又はその近傍に配置され前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグとから構成されるものにおいて、前記無線タグは信号返信機能を有効又は無効にするスイッチを有するものとし、前記検出装置が無線タグのスイッチ操作による応答信号の開始又は途絶を検出して検知信号を前記動作制御装置へ出力し、前記動作制御装置が検知信号に基づき前記吐水装置に所定の吐水動作を実行させるように設定することが可能である。
【0008】
前記無線タグのスイッチとしては、使用者が操作してアンテナ回路をONまたはOFFにするものの場合、タグアンテナの途中に設けられるリードスイッチ等の開閉器構造のほか、コイル状に形成されたタグアンテナに対しフェライト等よりなるリアクタンス制御部材を挿入・脱離させる構造、圧力によって電気抵抗が変化する感圧導電体を用いた感圧スイッチ構造などが考えられる。また、センサーを用いて一定条件に達すると無線タグ回路を自動的にON・OFFするようにスイッチを構成することも可能であり、その場合のセンサーには、水センサーや水圧センサー等を用いるとよい。
【0009】
ところで本発明に係る吐水制御システムは、前記吐水装置の吐水部又は流路途中に水流発電機を設け、当該水流発電機の起電力により、前記検出装置を動作させるようにすることが出来る。この場合、前記水流発電機と前記検出装置とを一体化してもよい。
【0010】
また前記吐水装置が給水器具である場合、動作制御装置によって定量止水を実行するように設定すれば、定量止水栓が構成される。
【0011】
さらに前記水回り機器が複数の水洗便器である場合、複数の水洗便器それぞれに吐水装置を備え、前記各水洗便器ごとに異なる識別情報を保持する前記無線タグを装着し、前記動作制御装置によって、無線タグからの応答信号に基づき、水洗便器ごとに洗浄水の吐出量を制御するように設定してもよい。さらに本例では、いずれかの水洗便器の吐水装置における洗浄水吐出動作の開始後、一定時間は次の洗浄水吐出動作が実行されないように設
【0012】
なお前記無線タグのスイッチは、ゼンマイ等からなる無電源タイマーとすることができる。この場合の使用態様としては、一定時間経過後に無線タグ回路をONにする場合と、タイマーの動作する間だけ回路をONに維持し、一定時間経過後、回路をOFFにする場合とが考えられる。いずれの使用態様を採用するかは、実施の状況に応じ適宜判断すればよい。
【0013】
ところで本発明に係る吐水制御システムを水栓器具に適用する場合、吐水器具の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える複数の無線タグとから構成し、前記複数の無線タグはそれぞれ異なる識別情報を保持すると共に信号送信機能を有効又は無効にするスイッチを有するものとし、前記動作制御装置は、前記無線タグにおけるスイッチ操作により応答信号の開始又は途絶を検出すると、当該無線タグの保持情報に基づき水栓器具の吐水動作を制御するように設定することが考えられる。
【0014】
あるいは本発明に係る吐水制御システムを水栓器具に適用する場合、水栓器具の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグで構成した操作部とから成るものとし、前記操作部の無線タグは信号送信機能を有効又は無効にするスイッチを有し、前記動作制御装置は、前記無線タグにおけるスイッチ操作により応答信号の開始又は途絶を検出すると水栓器具の吐水動作を制御するように設定されるものにおいて、前記操作部を前記水栓器具とは別体に構成することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る吐水制御システムは、無線タグの識別情報を検出装置で読み取り、識別情報に基づいて、動作制御装置が吐水装置を制御して、所定の吐水動作を実行させる。すなわち、使用可能性の有る水回り機器それぞれに対応する吐水動作の設定情報や動作プログラムを、検出装置及び/又は動作制御装置に与えておけば、水回り機器に無線タグを装着しておくだけで、自動的に最適な吐水動作を行わせることができる。従って、水回り機器の種類を交換・変更したとしても、吐水装置の再調整や再設定は不要であるから、水回り機器の種類や品番にかかわらず、吐水装置の共通化が可能である。また異なる種類の水回り機器を設置した場合でも、同一の吐水装置を使用することが可能である。よって本発明によれば、低コストの吐水制御システムを提供することができる。
【0016】
本発明の請求項2に係る吐水制御システムは、無線タグに設けたスイッチを操作して、応答信号の送信を開始又は途絶させることにより、吐水装置に所定の吐水動作を実行させるように構成したので、この無線タグを用いて構成した操作部と吐水装置とを配線接続する必要がない。よって、施工の容易な吐水制御システムを提供することができる。
【0017】
請求項3に係る吐水制御システムによれば、吐水装置の吐水部又は流路途中に設けた水流発電機の起電力で検出装置を動作させるので、検出装置を動作させるための電池電源や商用電源を必要としない。さらに請求項4に記載の如く水流発電機と検出装置とを一体化した場合は、これをユニット化することにより、部材点数が少なく組立の簡単な吐水制御システムを提供できる。
【0018】
請求項5に記載の如く、吐水装置が給水器具であり、動作制御装置によって定量止水を実行するように設定した場合、簡単な構成で定量止水栓を構築できる。
【0019】
請求項6に記載するように、前記水回り機器が複数の水洗便器の場合、本発明を適用することにより、共通の検出装置と動作制御装置とで、水洗便器ごとに洗浄水の吐出量を制御可能な吐水制御システムを提供できる。さらに上記の場合において、請求項7に記載の如く、いずれかの水洗便器で洗浄水吐出動作を開始した後、一定時間は次の洗浄水吐出動作が実行されないように動作制御装置を設定した場合は、便器洗浄が短時間に連続することによる洗浄水量の不足を防止することができる。
【0020】
なお請求項8に記載の如く、無線タグのスイッチをゼンマイ等の無電源タイマーで構成した場合は、電源を用いずに、吐水制御システムの動作をタイマー制御することが可能である。
【0021】
請求項9に記載の如く、本発明を水栓器具に適用して、複数の無線タグのスイッチ操作により応答信号の開始又は途絶を検出すると、当該無線タグの保持情報に基づき水栓器具の吐水動作を制御するように設定した場合は、流量や水温の調節を行う操作部を無線タグで構築でき、しかも、操作部は検出装置や動作制御装置と配線接続する必要がないから、製造の容易で安価な水栓器具の吐水制御システムを提供できる。
【0022】
さらに請求項10に記載したように、無線タグで構成した操作部を前記水栓器具とは別体に構成した場合は、操作部の配置が自由に出来るから、使い勝手を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る吐水制御システムSの概要を図1に示す。同システムSは、吐水装置に配置した無線タグT、この無線タグTと電波信号を介して交信する検出装置10、吐水装置の動作を制御する動作制御装置を主要な構成要素とする。また本例では、アンテナ2の途中にスイッチ3を設けた無線タグTで手動操作用の操作部を構成したので、これを適当箇所に配置することができる。
【0024】
無線タグT及び検出装置10はそれぞれ、電波交信用のタグアンテナ2,リーダーアンテナ11を備えている。タグアンテナ2及びリーダーアンテナ11は、電波を効率よく受信するため、平面内においてコイル状に巻回した面ループ状形態を採用している。しかし各アンテナ2,11の形態は、交信に使用する電波の周波数や強度等に基づき変更することが可能であり、例えば棒状・パッチ状(素子状)・複合パッチ状・面状・スロット状・螺旋状・パターン状等、状況に応じ適宜採用することが可能である。また無線タグTの全体形状は、板状・棒状・円盤状・直方体状などの形態が可能である。
【0025】
無線タグTは、図2に示すように、ICチップ1、タグアンテナ2、及び、温度スイッチ3から成る。ICチップ1の内部構造は例えば同図に示す如く、無線通信インターフェースを介してアンテナ回路2と接続される受信部及び送信部、受信電波により電力を発生させる電源生成部、電波の復調・変調を制御するMPU等から成る制御部、識別情報その他のデータを保持する不揮発性メモリ等から成る記憶部などより構成されている。上記無線通信インターフェース・受信部・送信部は、一体に構成される場合もある。また、記憶部を読み取り専用のメモリで構成してもよいが、所望により保持情報の更新又は変更等の書換を可能とする場合は、基板に外部通信インターフェースを備えることが望ましい。
【0026】
図2に例示する如く、タグアンテナ2の途中に、アンテナ回路をON/OFFするスイッチ3を設ける場合もある。スイッチ3の例としては、リードスイッチのような開閉器構造のほか、図3に示すように、タグアンテナ2にコイル部分2aを設け、フェライト等のリアクタンス制御部材30を、上記コイル部分2aに対し挿入・離脱動作するように構成するものが考えられる。リアクタンスの大幅な変化によって、信号送信機能を有効又は無効にする。
【0027】
また図4(A)(B)に示すような感圧式スイッチ3も考えられる。これは、タグアンテナ2の端部に接合した電極32,33で、感圧導電体31を挟持し、押しボタン34で上記感圧導電体31に押圧力を作用させるよう構成したものである。当該スイッチ3は、押しボタン34を押圧すると感圧導電体36の電気抵抗値が変化し、その結果、導電可能となって感圧導電体31の両面に配置した電極32,33間で電気が導通し、タグアンテナ2の回路が閉じるから、無線タグTと検出装置10との間で交信可能となる。
【0028】
なおスイッチ3の動作は、平常時はタグアンテナ回路をOFFにし、操作によって回路をONにする場合と、反対に、平常時はアンテナ回路がONであり、スイッチ操作により回路をOFFにする場合とが考えられる。またスイッチ3の配置については、タグアンテナ2の途中とするのが製作上好適と考えられるが、ICチップ1内に組み込むことも妨げない。
【0029】
前記吐水制御システムSの動作を説明すると次の如くである。無線タグTは、水洗便器・浴槽・洗面器等の水回り機器に装着され、検出装置10は、無線タグTへ向かって常時又は間歇的に質問信号を発信する。質問信号をタグアンテナ2で受信した無線タグTは、そのエネルギーを利用して動作用電力を発生させ、記憶部に保持されている情報を、受信電波を変調させた応答信号として検出装置10へ返信する。すなわち、無線タグTと検出装置10との間で、電波信号による交信が常時行われている状態となっている。また無線タグTの記憶部には、装着した水回り機器の種類や品番に関する識別情報が保持されている。
【0030】
水回り機器への給水を行う場合、手動操作等により動作制御装置を駆動して吐水装置の吐水動作を開始させる。このとき検出装置10は、無線タグTからの応答信号を受信し、応答信号に含まれる識別情報に基づき検知信号を動作制御装置へ出力している。検知信号を受けた動作制御装置は、吐水対象である水回り機器の種類・品番等の情報に基づいて、所要吐水量や所要吐水時間を算出し、吐水量又は吐水時間が所定値に達したならば、吐水装置の動作を停止させるように制御する。このように本例の吐水制御システムは、無線タグの識別情報を読み取って吐水量又は吐水時間を制御するので、無線タグを装着しておけば、水回り機器の種類を変更しても、吐水装置の設定を変更することなく、適切な吐水動作を実行させることができる。
【0031】
また異なる種類の水回り機器が複数設置されている場合でも、無線タグの識別情報に基づき、動作制御装置が吐水装置にそれぞれ異なる吐水動作を指令することができる。すなわち本発明によれば、他種類の水回り機器が設置されていても、一種類又は最小種類の検出装置・動作制御装置・吐水装置で、各水回り機器に対し適正な吐水動作を行う吐水制御システムを構築することができる。
【0032】
なお、吐水装置を動作させる操作部を、スイッチを備える無線タグTで構成することも可能である。この場合、スイッチをON操作して応答信号の返信を開始させると、この無線タグTの識別情報に基づき、検出装置が動作制御装置へ検知信号を出力し、吐水装置に吐水動作を開始させるようなされている。
【実施例1】
【0033】
図5は、本発明に係る吐水制御システムを、水洗便器に適用した実施例を示すものである。本例は、吐水装置21が便器への洗浄水供給装置であって、給水配管の途中に電動バルブ又は電磁バルブ22が配設されており、この電動バルブ又は電磁バルブ22に動作制御装置20が接続されている。水洗便器の適所に装着された無線タグTには、当該水洗便器の種類や品番に関する識別情報が保持されている。吐水装置21の吐水部には発電機付き検出装置が装着されている。その構成は、例えば図5(B)に示す如く、検出装置10と発電機12とを一体構成してユニット化したものであり、無線タグTと交信するための検出アンテナ11が吐出部21a内に配設されている。発電機12は、コイル又はヨーク13内で、インペラ又はプロペラ15に固定した磁石14が回転するように構成したものであり、水流が生じると、インペラ又はプロペラ15が回転して、誘導起電力を生成するようになされている。また本例では、検出装置10から動作制御装置20への検知信号の出力を、電波により無線で行うこととしたが、検出装置10と動作制御装置20とを配線接続することも妨げない。
【0034】
本吐水制御システムは、次のように動作する。初期状態では、検出装置10は動作しておらず、無線タグTとの交信はなされていない。使用者が水洗便器に洗浄水を供給すべく手動洗浄スイッチ等を操作すると、洗浄開始信号を受けた動作制御装置20は電磁バルブ22を開動作させ、便器への洗浄水供給が開始される。洗浄水が吐水装置21から吐出される際、吐出部21aに設けた発電機12のインペラ15が水流によって回転駆動され、起電力を検出装置10へ供給する。これによって検出装置10が起動し、質問信号を無線タグTへ送信する。無線タグTは水洗便器の識別情報を含む応答信号を返信し、応答信号を受信した検出装置10は、検知信号を動作制御装置20へ出力する。その結果、動作制御装置20が、識別情報に基づいて、洗浄水の吐水流量または吐水時間が水洗便器の種類・品番に応じた所要量となるように、電磁バルブ22を制御する。この場合、バルブ22を電動バルブとし、吐水流量を所定のプログラムに基づき経時的に変化させるよう制御することも可能である。
【0035】
本例において、洗浄水の吐水流量・吐水時間の制御は、水洗便器に装着した無線タグTの識別情報に基づいてなされるから、各種識別情報に対する制御プログラムを準備しておけば、水洗便器の種類を変更した場合でも、検出装置10・動作制御装置20・吐水装置21を変更することなく、容易に対処できる。
【実施例2】
【0036】
図6は、本発明に係る吐水制御システムを、浴槽への給湯設備に適用した実施例を示すものである。本例は、吐水装置21が温水の供給装置であって、温水供給配管の途中に電動バルブ又は電磁バルブ22が配設されており、この電動バルブ又は電磁バルブ22に動作制御装置20が接続されている。浴槽の適所に装着される無線タグTには、図6(B)に示す如く、水を検知する水センサーや水圧を検知する水圧センサー等から成るスイッチをタグアンテナに設けた。従って、無線タグTが水と接するか又は浴槽内の水位が一定値に達すると、アンテナ回路がONとなって、交信可能になる。また吐水装置21の吐水部に、発電機付き検出装置が装着されている。
【0037】
本吐水制御システムは、次のように動作する。初期状態では、検出装置10は動作しておらず、また無線タグTも交信不可の状態である。使用者が浴槽に湯を供給すべく手動スイッチ等を操作すると、給湯開始信号を受けた動作制御装置20は電磁バルブ22を開動作させ、浴槽への給湯を開始する。温水が吐水装置21から吐出される際、吐出部21aに設けた発電機12の起電力が検出装置10へ供給され、これによって検出装置10が質問信号を無線タグTへ送信する。浴槽内の水位が所定値に達するまでは、無線タグTは応答信号を返信しない。やがて浴槽内の水位が一定値に達すると、無線タグTのスイッチが動作して交信可能の状態となり、応答信号の返信を開始する。応答信号を受信した検出装置10は、検知信号を動作制御装置20へ出力し、その結果、動作制御装置20が電磁バルブ22を閉動作させる。このようにして本吐水制御システムは、予め設定された所定量の給湯を実行できる。
【0038】
なお、無線タグTにスイッチを設けず、記憶部に保持させた識別情報に基づいて、給湯量を浴槽の種類・品番に応じた所定量となるように、電磁バルブ22を制御することも可能である。
【0039】
さらに無線タグTのアンテナ回路に、ゼンマイなどで動作する無電源タイマーを組み込み、このタイマーの設定時間により、給湯量を浴槽の種類・品番に応じた所定量となるように、電磁バルブ22の動作時間を制御することも考えられる。
【実施例3】
【0040】
図7は、本発明を複数の水洗便器の吐水制御システムに適用した実施例を示すものである。本例では、各水洗便器ごとに、電磁バルブ22を備える吐水装置21が設けられると共に、無線タグTが装着されている。そして、各電磁バルブ22の動作を、検出装置10で読み取った無線タグTの識別情報に基づいて、動作制御装置20が制御するようになされている。
【0041】
使用者が水洗便器に洗浄水を供給すべく手動スイッチ等を操作すると、洗浄開始信号を受けた動作制御装置20が電磁バルブ22を開動作させ、便器へ所定量の洗浄水供給を開始する。ところで図示の如く、各水洗便器への給水配管が共通である場合、いずれかの水洗便器に洗浄水を供給している間に、別の水洗便器にも平行して洗浄水を供給した場合、洗浄水量の一時的な不足を招くおそれがある。そこで本吐水制御システムでは、いずれかの水洗便器に対する洗浄水供給が開始されてから一定時間内は、他の水洗便器に対する洗浄水供給が実行されないように設定した。これにより、洗浄水不足により洗浄不良が発生するのを防止できる。なお条件によっては、洗浄水の供給禁止を、3番目あるいは4番目以降の水洗便器とすることも妨げない。
【0042】
なお本例における手動スイッチを、無線タグを用いて構成し、スイッチ操作を検出装置10で検知するようにした場合は、配線を少なくできる利点が得られる。
【実施例4】
【0043】
図8は、本発明を洗面所や台所などに設置される湯水混合栓の吐水制御システムに適用した実施例を示すものである。本例では、湯水混合栓の操作部Aを、無線タグを用いて構成したところを特色としている。湯水混合栓は、例えば電動バルブより成る流量調節手段及び温度調節手段を備えるものとし、これらは、別途又は一体に設けた動作制御装置20に接続されている。
【0044】
操作部Aは、吐出する湯水の流量、水温、及び止水を制御するものであり、図8に示すように、そのための操作ボタンが設けられている。各操作ボタンa〜gは、図9に示す無線タグTの各スイッチ3,3,…に対応している。この無線タグTは、複数組のICチップ1とスイッチ3とを備えるものであって、各ICチップ1にはそれぞれ流量又は水温に関する異なった動作制御情報が保持されており、スイッチのON操作により、読み出しが可能となるように構成されている。従って、前記ボタンa〜gによりオン操作されたスイッチに対応するICチップ1の保持情報に基づいて、流量調節手段及び/又は温度調節手段の動作が制御され、その結果、操作部Aのボタン表示通りの吐水動作を湯水混合栓に実行させることができる。
【0045】
本例の吐水制御システムは、湯水混合栓の操作部Aを無線タグTで構成したので、これを流量調節手段及び温度調節手段と配線接続する必要がない。従って、構成の簡単な湯水混合栓を提供することが出来る。
【0046】
また操作部Aは、湯水混合栓の本体と分離可能であるから、所望箇所に設置して、手元スイッチや足元スイッチを構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る吐水制御システムの概略構成を示す図面である。
【図2】本発明に係る吐水制御システムに利用する無線タグの一例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る吐水制御システムの無線タグに利用するスイッチの一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係る吐水制御システムの無線タグに利用するスイッチの異なる例を示すものであって、図(A)は無線タグの概略図、図(B)はスイッチの概略拡大断面図である。
【図5】本発明に係る吐水制御システムを水洗便器に適用した実施例1を示すものであって、図(A)は概略正面図、図(B)は発電機付き検出装置の拡大図である。
【図6】本発明に係る吐水制御システムを浴槽に適用した実施例2を示すものであって、図(A)は概略図、図(B)は無線タグの拡大図である。
【図7】本発明を複数の水洗便器の吐水制御システムに適用した実施例3を示す概略図である。
【図8】本発明に係る吐水制御システムを湯水混合栓に適用した実施例4を示すものであって、図(A)は概略図、図(B)は操作部の拡大平面図である。
【図9】実施例4に利用する無線タグの内部構造を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
S…吐水制御システム
T…無線タグ
1…ICチップ
2…タグアンテナ
3…スイッチ
10…検出装置
11…リーダーアンテナ
20…動作制御装置
21…吐水装置
22…電磁バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り機器に備えられる吐水装置の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記水回り機器又はその近傍に配置され前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグとから構成され、前記無線タグは、前記水回り機器に対応する識別情報を応答信号に含むようになされ、前記検出装置が無線タグからの応答信号に基づいて検知信号を前記動作制御装置へ出力し、前記動作制御装置が検知信号に基づき前記吐水装置に所定の吐水動作を実行させるように設定されていることを特徴とする吐水制御システム。
【請求項2】
水回り機器に備えられる吐水装置の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記水回り機器又はその近傍に配置され前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグとから構成され、前記無線タグは信号返信機能を有効又は無効にするスイッチを有し、前記検出装置が無線タグのスイッチ操作による応答信号の開始又は途絶を検出して検知信号を前記動作制御装置へ出力し、前記動作制御装置が検知信号に基づき前記吐水装置に所定の吐水動作を実行させるように設定されていることを特徴とする吐水制御システム。
【請求項3】
前記吐水装置の吐水部又は流路途中に水流発電機が設けられ、当該水流発電機の起電力により、前記検出装置を動作させる請求項1又は2に記載の吐水制御システム。
【請求項4】
前記水流発電機と前記検出装置とを一体化した請求項3に記載の吐水制御システム。
【請求項5】
前記吐水装置が給水器具であって、動作制御装置によって定量止水を実行するように設定されている請求項1乃至4のいずれかに記載の吐水制御システム。
【請求項6】
前記水回り機器が複数の水洗便器であって、複数の水洗便器それぞれに吐水装置が備えられ、前記各水洗便器ごとに異なる識別情報を保持する前記無線タグが装着され、前記動作制御装置は、無線タグからの応答信号に基づき、水洗便器ごとに洗浄水の吐出量を制御するように設定されている請求項1に記載の吐水制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の吐水制御システムにおいて、前記動作制御装置は、いずれかの水洗便器の吐水装置における洗浄水吐出動作の開始後、一定時間は次の洗浄水吐出動作が実行されないように設定した吐水制御システム。
【請求項8】
前記無線タグのスイッチが、ゼンマイ等からなる無電源タイマーである請求項2に記載の吐水制御システム。
【請求項9】
水栓器具の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える複数の無線タグとから構成され、前記複数の無線タグはそれぞれ異なる識別情報を保持すると共に信号送信機能を有効又は無効にするスイッチを有し、前記動作制御装置は、前記無線タグにおけるスイッチ操作により応答信号の開始又は途絶を検出すると、当該無線タグの保持情報に基づき水栓器具の吐水動作を制御するように設定されていることを特徴とする吐水制御システム。
【請求項10】
水栓器具の吐水動作を制御する動作制御装置と、電波の送受信機能を備え前記動作制御装置に検知信号を出力する検出装置と、前記検出装置から送信される質問信号に応答して当該検出装置へ応答信号を返信する機能を備える無線タグで構成した操作部とから成り、前記操作部の無線タグは信号送信機能を有効又は無効にするスイッチを有し、前記動作制御装置は、前記無線タグにおけるスイッチ操作により応答信号の開始又は途絶を検出すると水栓器具の吐水動作を制御するように設定されるものにおいて、前記操作部を前記水栓器具とは別体に構成したことを特徴とする吐水制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−132097(P2006−132097A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319344(P2004−319344)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】