説明

向上した耐候性を有するポリカーボネート・システム及び同システムの製造方法

向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムが開示されている。該ポリカーボネート・システムは、第一表面及び第二表面を含む基体、該基体の第一表面上に配置されたプライマー、及び磨耗抵抗用に該第一表面上のプライマー上に配置された表面塗膜を含む。該プライマー及び該表面塗膜の少なくとも一方は、紫外線吸収に対して溶剤中に紫外線吸収剤を含み、該紫外線吸収剤はλ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物の窓用の向上した耐候性を有するポリカーボネート透明板ガラス・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、自動車工業において窓に使用される一部品であった。知られているように、ガラスは、乗り物における窓として使用できる、磨耗抵抗及び紫外線抵抗用に扱うことの出来る媒介基体を提供する。ガラス基体は、適切であるけれども、特質上比較的重いので、それは運搬及び装着において高価格に変換される。更に、ガラスの重量は最終的に該乗り物の全重量に影響する。プラスチック材料は、ガラスを置き換え、乗り物のスタイリングを向上させ、そして乗り物の全体的重量及び価格を低下させるために、多数の自動車工学的用途で使用されてきた。透明なプラスチック材料に対する新生の用途は自動車の窓システムである。
【0003】
しかしながら、多数の製造業者は、ポリマー物品が長期間色不安定性を有し、該ポリマーの黄変(「光黄変」と呼ばれる)を引起こし、そしてその透明性及び魅力を損なうことに関する難問に直面している。多くの場合、ポリマーの黄変は紫外線の作用により引起こされる。耐磨耗性も又かかる製造業者にとって関連する問題である。
【0004】
従って、その表面を保護する機能性を損なうことなく重量が比較的軽いプラスチック・システムのようなガラス代替品を考案する必要性が該産業には存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は一般に、ポリカーボネート透明板・システム及び耐候性を向上させる方法を提供するものである。より具体的に、本発明は向上した耐磨耗性及び耐紫外線性特色を有するポリカーボネート透明板・システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムを提供する。該システムは、第一表面及び第二表面を含む基体、該基体の第一表面上に配置されたプライマー、及び耐磨耗用に該第一表面上のプライマー上に配置された表面塗膜を含む。該プライマー及び該表面塗膜の少なくとも一方は紫外線吸収に対して溶剤中の紫外線吸収剤を含み、該紫外線吸収剤はλ=325ナノメートル(nm)において45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する。
【0007】
もう一つの例において、本発明は向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムの製造方法を提供する。該方法は、λ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する紫外線吸収剤の溶液を希釈ラテックス乳濁液の混合物に添加して分散液プライマーを確立することを含む。該方法は更に、該プライマーをポリカーボネート基体の表面上に塗付することを含む。該方法は更に、該プライマー上に耐磨耗用の表面塗膜を塗付することを含む。
【0008】
もう一つの例において該方法は、λ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する紫外線吸収剤を溶剤中に大体室温と約50℃の間で約20分間混合して紫外線吸収剤溶液を確立して、該紫外線吸収剤溶液を希釈ラテックス乳濁液の混合物に添加して分散液プライマーを確立することを含む。該方法は更に、該プライマーをポリカーボネート基体の表面上に塗付し、該プライマーを該基体上で室温において約20分間乾燥させることを含む。該方法は更に、該基体上のプライマーを約120℃と130℃の間で約30分間硬化させ、そして該プライマー上に耐磨耗用の表面塗膜を塗付することを含む。
【0009】
本発明の更なる目的、特色、及び利点は、別紙図面と関連させて以下の説明及び別紙特許請求の範囲を検討すると明白になるであろう。
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は一般に、向上した耐磨耗性及び耐紫外線性を含む向上した耐候性特色を有するポリカーボネート・システムを提供する。該ポリカーボネート・システムは、ポリカーボネート基体、該ポリカーボネート基体上に配置されたプライマー、及び該プライマー上に配置された表面塗膜を含む。該プライマーは予想外に相溶性のある紫外線吸収剤を溶剤中に含み、該紫外線吸収剤は比較的高い吸光係数、低い揮発性、比較的高い光安定性を有する。その結果、該ポリカーボネート・システムは向上した紫外線吸収性が付与される。
【0011】
本発明の一例には、本発明の一態様に従う向上した耐候性を有するポリカーボネート・システム13を含む乗り物の窓が含まれる。この態様において、該ポリカーボネート・システムは向上した耐磨耗性及び耐紫外線性を含む向上した耐候性を有する。該システムは一般に、透明なプラスチック基体、該プラスチック基体上に配置され紫外線吸収剤を有するプライマー、及び該プライマー上に配置された表面塗膜を含む。
【0012】
図1は該ポリカーボネート・システム13の断面の一例を描いたものである。示されているように、該ポリカーボネート・システム13は第一表面16及び第二表面18を有する透明なプラスチック基体14を含む。この態様において、該第一表面16は外部の、即ち「A」表面であり、該第二表面18は内部、即ち該窓12の「B」表面である。
【0013】
この態様において、該透明なプラスチック基体14には、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン樹脂、又は共重合体、又は他の任意の適切な透明プラスチック材料、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、該透明プラスチック基体には、ビスフェノール−Aポリカーボネート及び、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、又はポリエチレンのような他のポリマーと共重合又は混合されるような他の樹脂品種(例えば分枝又は置換されている)が含まれる。該透明プラスチック基体は、着色剤、離型剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤のような種々の添加剤を更に含むことが出来る。
【0014】
図1に示されているように、プライマー20は該透明プラスチック基体14上に配置されている。該基体14は好ましくは第一表面16及び第二表面18の両方に塗付されたプライマー20を含むけれども、その表面16,18の一方だけがその上に配置されたプライマー20を有してもよい。上述したように、該プライマーは溶剤中に紫外線吸収剤を含み、それは向上した耐候性、例えば、改良された耐紫外線性を提供する。プライマー20は水性プライマー又は溶剤系プライマーであっても良い。
【0015】
一態様において、プライマー20は2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、水、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びポリメチルメタクリレートの紫外線吸収剤混合物を含む。もう一つの態様において、プライマー20は溶剤系プライマーであり、その場合水及びエチレングリコールモノブチルエーテルはジアセトンアルコール及び1−メトキシ−2−プロパノールで置き換えられている。
【0016】
この例において、該紫外線吸収剤は吸光係数εを有するが、ここにおいてεは好ましくはλ=325ナノメートル(nm)において45,000L−mol−1cm−1以上であり、より好ましくはλ=325nmにおいて55,000L−mol−1cm−1以上であり、最も好ましくはλ=325nmにおいて65,000L−mol−1cm−1以上である。
【0017】
もう一つの態様において、プライマー20は、第一共溶剤として水をそして第二共溶剤として有機液体を一般に含む水性プライマーである。この態様において、該第二溶剤は一般にグリコールエーテル、ケトン、アルコール、及びアセテートを含む。該第一共溶剤は、好ましくは該水性プライマーに30重量パーセントより多く、より好ましくは該水性プライマーの約50重量パーセントより多く、最も好ましくは該水性プライマーの少なくとも70重量パーセントより多く含まれる。上述したように、該第二共溶剤に関連する一般的化学薬品類は好ましくはグリコールエーテル、ケトン、アルコール、及びアセテートを含み、該第二共溶剤は該水性プライマーの70重量パーセント未満で存在する。該第二共溶剤は、より好ましくは該水性プライマーに約50重量パーセント未満、最も好ましくは該水性プライマーの約30重量パーセント未満含まれる。
【0018】
例えば、該第二共溶剤は2−ブトキシエタノール(エチレングリコールモノブチルエーテルとも呼ばれる)を含むことが出来る。該プライマーは、界面活性剤、酸化防止剤、殺生剤、及び乾燥剤のような他の添加剤を含有することが出来るが、それらに限定されない。該第一及び第二共溶剤中の紫外線吸収剤は、ヒドロキシフェニルトリアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、ポリアロイルレゾルシノール、及びシアノアクリレートを含むことが出来る。
【0019】
該プライマーは、カーテン塗装、吹付け塗り、スピン塗装、浸漬塗装、及び流し塗りを含むがそれらに限定されない任意の適切な大気塗装方法により塗付することが出来る。
【0020】
図1に示されているように、表面塗膜23は、システム13の第一及び第二表面16,18の各々の上にあるプライマー20上に塗付される。表面塗膜23は、該ポリカーボネート・システムに更なる向上した機能を追加する。かかる向上した機能は、改良された耐磨耗性及び耐紫外線性を含む。例えば、表面塗膜23はExatec(登録商標)900透明板・システムで使用されている硬い塗膜であっても良い。Exatec(登録商標)900透明板・システムにおいて、自動車の透明板ガラスパネルは、透明なポリカーボネート基体、本明細書で検討されているインク、水性アクリル系プライマー(Exatec(登録商標)SHP 9X,GEシリコーンを有するExatecLLC)、シリコーンの硬い塗膜(Exatec(登録商標)SHX,GEシリコーンを有するExatecLLC)、及びプラズマ向上化学蒸着を用いて沈着した「ガラス状」塗膜を含む。
【0021】
表面塗膜23は、本発明のポリカーボネート・システム13に対してその機能を向上させるために他の適切な成分を含むことが出来る。例えば、他の適切な成分は、酸化アルミニウム、弗化バリウム、窒化硼素、酸化ハフニウム、弗化ランタン、弗化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素、オキシ窒化珪素、オキシ炭化珪素、炭化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、又はそれらの混合物を含むことが出来る。
【0022】
表面塗膜23は当業者に知られた任意の技術により塗付することが出来る。これらの技術には、真空補助沈着方法で使用されているような反応性種からの沈着、及びゾル・ゲル塗膜を基体に塗付するのに使用されているような大気塗装方法が含まれる。真空補助沈着方法の例は、プラズマ向上化学蒸着、イオン補助プラズマ沈着、マグネトロン・スパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオンビーム・スパッタリングを含むが、それらに限定されない。大気塗装方法の例は、カーテン塗装、吹付け塗り、スピン塗装、浸漬塗装、及び流し塗りを含むがそれらに限定されない。
【0023】
この態様において、該表面塗膜は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ弗化ビニリデン、ポリ弗化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、又はシリコーン硬塗膜を含む任意の適切な材料と一緒に紫外線吸収剤で構成することが出来る。
【0024】
一態様において、該表面塗膜は又、上述の紫外線吸収剤(例えば、Tinuvin(登録商標)479、CIBAからの上級トリアジン紫外線吸収剤)を有することも出来る。該表面塗膜は、下塗りをした基体上に塗付しても良いし、又はプライマーなしの表面塗膜であっても良い。
【0025】
この態様において、基体14とプライマー20との間の第二表面18上に装飾目的のために所望により装飾インク混合物を塗付しても良い。一態様において、該装飾インクは、ポリエステルインクから得られる約5〜34重量パーセントのポリエステル樹脂及びポリカーボネートインクから得られる約1〜13重量パーセントのポリカーボネート樹脂を含むことが出来る。この態様において、該ポリエステルインクと該ポリカーボネートインクは約50:50より大きく約100:0までの重量比を有する。該装飾インクは約0.1〜5重量パーセントのイソシアネートを更に含み、残りは水性溶剤である。この態様において、該装飾インクが該表面に付着するように、該装飾インクに硬い塗膜が塗付される。
【0026】
図2は本発明のもう一つの態様に従うポリカーボネート・システム113を図解したものである。示されているように、該ポリカーボネート・システム113は第一及び第二表面116,118を有する透明なプラスチック基体114を含む。この態様において、プライマー120は第二表面118だけに塗付されている。更に表面塗膜123は第二表面118の上だけにあるプライマー120に塗付されている。基体114、プライマー120、及び表面塗膜123は好ましくは、夫々上述した基体14、プライマー20、及び表面塗膜23と同じ材料から成る。この態様においても、基体114とプライマー120との間の第二表面118上に場合によりインク混合物を塗付しても良い。
【0027】
本発明の一例は、向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムの製造方法を含む。この例では、透明なプラスチック基体が提供される。好ましくは、該基体にはビスフェノール−Aポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、又はポリエチレンのような他のポリマーと共重合又は混合される他の樹脂品種(例えば分枝又は置換されている)が含まれる。該基体は好ましくは、押出;射出成形、吹込み成形、及び圧縮成形を含む成形;又は熱的成形、真空成形、及び冷間成形を含む熱成形のような当業者に知られた任意の技術により、窓、例えば、乗り物の窓に成形される。該基体を用いた窓は、本発明の範囲又は精神を超えることなく、印刷の前、印刷の後、又は該プライマー及び表面塗膜の塗付後に形成され得ることに注意すべきである。
【0028】
この例において、該方法は紫外線吸収剤を大体室温〜約50℃で約20分間上述の第一及び第二共溶剤に混合して紫外線吸収剤溶液を確立することを更に含む。好ましくは、該第一共溶剤は水であり、該水性プライマーの10重量パーセントより多くを含む。該第二共溶剤は好ましくはグリコールエーテル、ケトン、アルコール、及びアセテートを含む。該第二共溶剤は好ましくは該水性プライマーの90重量パーセント未満で存在する。
【0029】
該方法は、該紫外線吸収剤溶液を希釈ラテックス乳濁液の混合物に添加して分散液プライマーを確立することを更に含む。この例において、該紫外線吸収剤はヒドロキシフェニルトリアジンを含む。該方法は、該プライマーを上述のポリカーボネート基体の表面上に塗付することを更に含む。この例において、該プライマーは、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びポリメチルメタクリレートの混合物を含む。
【0030】
該方法は次に、該プライマーを該基体上で室温において約20分間乾燥させ、該基体上のプライマーを約120と130℃の間で約30分間硬化させることを含む。
【0031】
該方法は、該プライマー上に耐磨耗用の表面塗膜を塗付することを更に含む。この例において、該表面塗膜は耐磨耗性材料を有するシリコーンの硬い塗膜である。該耐磨耗性材料は、酸化アルミニウム、弗化バリウム、窒化硼素、酸化ハフニウム、弗化ランタン、弗化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素、オキシ窒化珪素、オキシ炭化珪素、炭化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、又はそれらの混合物を含むことが出来る。
【0032】
〔実施例〕
【0033】
この実施例は、ヒドロキシフェニルトリアジン(例えば、Tinuvin(登録商標)479)のような紫外線吸収剤を用いた、改良された耐候性を有するポリカーボネート透明板・システムを提供する。この実施例において、実験は該プライマー中に紫外線吸収剤を配合するように行われた。この実施例に対しては、CIBAからの上級トリアジン紫外線吸収剤であるTinuvin(登録商標)479を選択した。
【0034】
プライマー配合物
この実施例システムで使用されたプライマーは水性で、ポリマー乳濁液のHycar(登録商標)26237及びHycar(登録商標)26256から構成されていた。Hycar(登録商標)26237は、9.1 lbs/galのラテックス重量及び4.4 lbs/galの固体重量を有するアクリル系共重合体ラテックスである。該Hycar(登録商標)26237は、pH:2.5;全固体:50.5重量%;粘度:140 cp;表面張力:43 dynes/cm;ラテックス比重:1.091;及びポリマー比重:1.210という性質を有していた。Hycar(登録商標)26256は、9.1 lbs/galのラテックス重量及び4.4 lbs/galの固体重量を有する合成アニオン性アクリル系共重合体ラテックスである。該Hycar(登録商標)26256は、pH:2.5;全固体:49.5重量%;粘度:120 cp;表面張力:43 dynes/cm;ラテックス比重:1.09;及びポリマー比重:1.20という性質を有していた。
【0035】
対照標準配合物には紫外線吸収剤Uvinul(登録商標)3039を含ませた。Uvinul(登録商標)3039は、本実施例において361の分子量を有する澄明な黄色液体の2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートである。該対照標準の配合は「対照標準配合物A」と名付けて下記に提供する。
【0036】
該実施例の配合物にはCibaからの紫外線吸収剤Tinuvin(登録商標)479を使用した。該紫外線吸収剤Tinuvin(登録商標)479は2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンである。
【0037】
【化1】

【0038】
該試料の配合は「試料A−E」と名付けて下記に提供する。
【0039】
対照標準配合物A
該対照標準配合物Aは以下に提供する方法により調製した。約60部の脱イオン水を容器に秤量した。次に約0.02部のクエン酸を添加し、該混合物を約15分間攪拌した。この混合物に、約2.4部のHycar(登録商標)26237及び約2.4部のHycar(登録商標)26256を添加した。次に該混合物を約10分間攪拌した。26部の2−エトキシブタノール中でUvinul(登録商標)3039の溶液を調製し、次に該溶液を該乳濁液混合物に比較的ゆっくりと連続的に攪拌しながら添加した。得られた混合物を約15分間混合してから濾過した。
【0040】
表A: Tinuvin(登録商標)479を含有する配合物
【0041】
【表1】

【0042】
操作手順
【0043】
脱イオン水を容器に秤量した。次にクエン酸を該容器に秤量し、該混合物をゆっくり攪拌しながら、該二つのHycar(登録商標)26256及び26237乳濁液を秤量し該容器に添加した。ゆっくりと攪拌しながら約15分間混合後、該紫外線吸収剤Tinuvin(登録商標)479及び2−エトキシブタノールを別個に秤量し、混合した後該ばら荷容器に添加した。次に該混合物を約30分間混合してから濾過した。固体パーセントは約3.5と4重量パーセントの間であることが分った。
【0044】
塗装塗付
【0045】
ポリカーボネートの成形シート(各々約730mm)を2−イソプロパノールで清浄にしてからイオン化空気を用いて乾燥した。該シートを8ミクロン(乾燥皮膜)黒色インクの二本の帯(幅は約5インチ)で印刷した。次に該プライマー溶液を、温度が約20と25℃の間で相対湿度が約40%というブース条件下で、これらのシート上に流し塗り法により塗付した。該シートを室温で20分間フラッシュし、続いて125℃で60分間焼付けした。該厚さは約0.2と1.0ミクロンの間であることが分った。
【0046】
結果
【0047】
該基体(即ち、下塗りをした飾り板)は、シリコーン硬質塗膜で、続いてシロキサンプラズマ層で表面塗装した。該飾り板は接着性、外観及び紫外線吸収に関して試験した。接着性は、該飾り板の表面部分、中間部分及び底部分について、インク部分上及び非インク部分上の両方で試験した。接着性を検査するのに使用した試験は、該部分を約65℃の温度に維持された水中に10日間浸漬することを含んでいた。該水浸漬試験は、ASTM−D3359−95による初期クロスハッチ接着試験(テープ引張り)に続いて、該印刷され塗装されたプラスチック基体を昇温度約65℃の蒸留水中に約10日間浸すことを含んでいた。該インク及びプライマー/硬質塗膜及び該硬質塗膜の上又は下に塗付された任意の所望による表面塗膜の接着性は、最大10日まで周期的に試験される。下記に示されているように、該接着試験の結果(接着性%)は、非インク領域(表B)及びインク領域(表C)が比較的接着性の性能(>90%)を有することを示した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
Tinuvin(登録商標)479を含有するプライマー配合物の接着性は、比較的良好でUvinul(登録商標)3038を含有する対照標準配合物に匹敵することが分った。
【0051】
紫外線吸光度
【0052】
該プライマー溶液を、紫外線吸収剤を含有しない基体、即ちポリカーボネート飾り板上に塗付した。該プライマーの厚さを測定し、340nmでVarian Cary 500紫外線可視光線近赤外光分光光度計を用いて、該紫外線指数を測定した。下の表Dに示されているように、該プライマーの紫外線吸光度はその中の紫外線吸収剤濃度が増加するに従って増加し、該プライマーにおける好ましい紫外線吸収剤の有用性が示されている。
【0053】
【表4】

【0054】
本発明は好ましい態様に関して説明されてきたけれども、勿論本発明がそれらに限定されないことは理解されるであろう。何故なら、特に前述の教示を考慮すると、当業者には修正を行うことが出来るからである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一態様に従って描かれたポリカーボネート・システムの断面図である。
【図2】本発明のもう一つの態様に従うポリカーボネート・システム1の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムであって、
第一表面及び第二表面を含む基体、
該基体の第一表面上に配置されたプライマー、及び
耐磨耗用に該第一表面上のプライマー上に配置された表面塗膜、
を含み、該プライマー及び該表面塗膜の少なくとも一方が紫外線吸収のために溶剤中の紫外線吸収剤を含み、該紫外線吸収剤がλ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する、前記のシステム。
【請求項2】
該基体が透明である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
該基体が自動車の窓である、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
該紫外線吸収剤がλ=325nmにおいて55,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
該紫外線吸収剤がλ=325nmにおいて65,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
該プライマーが該基体の第二表面上に配置され、該表面塗膜が該第二表面上のプライマー上に配置されている、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
該プライマーが2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン及びポリメチルメタクリレートを含む、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
該第一及び第二表面上の表面塗膜上に配置された耐磨耗材料を更に含む、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
該基体の該第二表面上の一部に配置されたインク層を更に含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
該インクが合成樹脂を含み、該合成樹脂がポリカーボネート樹脂又はポリエステル樹脂又はそれらの混合物である、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
該表面塗膜上に配置された耐磨耗材料を更に含む、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
該耐磨耗材料が酸化アルミニウム、弗化バリウム、窒化硼素、酸化ハフニウム、弗化ランタン、弗化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素、オキシ窒化珪素、オキシ炭化珪素、炭化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、又はそれらの混合物を含む、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
該プライマーが水溶型プライマー及び溶剤型プライマーの一方を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
該プライマーが2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン及びポリメチルメタクリレートを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
該紫外線吸収剤がヒドロキシフェニル−トリアジンを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
該溶剤が第一共溶剤及び第二共溶剤を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
該第一共溶剤が水を含み、該第二共溶剤がグリコールエーテル、ケトン、アルコール、又はアセテート、又はそれらの混合物を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
該第一及び第二共溶剤の各々がグリコールエーテル、ケトン、アルコール、又はアセテート、又はそれらの混合物を含む、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
該基体がポリカーボネート、ポリエチレン、又はポリプロピレン、又はそれらの混合物を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
該表面塗膜が該紫外線吸収剤及び以下の物質、即ち、ポリメチルメタクリレート、ポリ弗化ビニリデン、ポリ弗化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、及びシリコーンの少なくとも1種を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムの製造方法であって、
紫外線吸収剤の溶液を希釈ラテックス乳濁液の混合物に添加して分散液プライマーを確立するステップであって、該紫外線吸収剤がλ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有するものであるステップ、
該プライマーをポリカーボネート基体の表面上に塗付するステップ、及び
該プライマー上に磨耗抵抗用の表面塗膜を塗付するステップ
を含む前記の方法。
【請求項22】
該表面塗膜が該紫外線吸収剤を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
添加するステップが紫外線吸収剤を溶剤中に大体室温〜約50℃で20分間混合して紫外線吸収剤溶液を確立することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該プライマーの塗付するステップが
該プライマーを該基体上で室温において約20分間乾燥させるステップ、及び
該基体上のプライマーを約120と130℃の間で約30分間硬化させるステップ
を含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
向上した耐候性を有するポリカーボネート・システムの製造方法であって、
紫外線吸収剤を溶剤中に大体室温と約50℃の間で20分間混合して紫外線吸収剤溶液を確立するステップであって、該紫外線吸収剤がλ=325nmにおいて45,000L−mol−1cm−1以上の吸光係数を有するものであるステップ、
該紫外線吸収剤溶液を希釈ラテックス乳濁液の混合物に添加して分散液プライマーを確立するステップ、
該プライマーをポリカーボネート基体の表面上に塗付するステップ、
該プライマーを該基体上で室温において約20分間乾燥させるステップ、
該基体上のプライマーを約120と130℃の間で約30分間硬化させるステップ、及び
該プライマー上に磨耗抵抗用の表面塗膜を塗付するステップ
を含む前記の方法。
【請求項26】
該プライマーからの吸光度値が少なくとも0.5である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該紫外線吸収剤がヒドロキシフェニル−トリアジンを含む、請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−515732(P2009−515732A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540030(P2008−540030)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040102
【国際公開番号】WO2007/058724
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】