説明

含フッ素オルガノポリシロキサン

【解決手段】 下記一般式(1)で示されることを特徴とする含フッ素オルガノポリシロキサン。


(但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異種の、水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R5及びR6は、同一又は異種の置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、結合途中に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでもよい。Rfは炭素数3以上の一価パーフルオロアルキル基又は一価パーフルオロアルキルエーテル基、kは1〜100の整数、mは0〜500の整数、nは1〜100の整数である。)
【効果】 脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーをUV光で硬化させる際の架橋剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文献未載の新規な含フッ素オルガノシロキサンに関するものであり、特には、脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーを紫外光(UV光)で硬化させる際の架橋剤として有用な含フッ素オルガノシロキサンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、UV光の照射により脂肪族不飽和基を有するポリマーを硬化させる場合に使用する架橋剤としては、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンが知られているが(特許文献1,2:米国特許第4,780,486号明細書、特開平5−156163号公報参照)、フッ素原子の含有率の高い脂肪族不飽和基を有するポリマーに対しては、この架橋剤は相溶しないために均一な硬化物を得ることが困難であった。
従って、フッ素原子の含有率の高い脂肪族不飽和基を有するポリマーに対するUV光硬化用として有用な架橋剤が望まれている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,780,486号明細書
【特許文献2】特開平5−156163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーをUV光硬化させる際の架橋剤として有用な含フッ素オルガノシロキサンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、後述する方法によって製造され、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基とSH基を有する下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンが、脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーをUV光で硬化させる際の架橋剤として有用であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記含フッ素オルガノシロキサンを提供する。
[I]下記一般式(1)で示されることを特徴とする含フッ素オルガノポリシロキサン。
【0007】
【化1】

(但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異種の、水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R5及びR6は、同一又は異種の置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、結合途中に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む置換もしくは非置換の二価炭化水素基も含まれる。Rfは炭素数3以上の一価パーフルオロアルキル基又は一価パーフルオロアルキルエーテル基、kは1〜100の整数、mは0〜500の整数、nは1〜100の整数である。)
[II]置換基Rfが一価パーフルオロアルキルエーテル基である[I]の含フッ素オルガノポリシロキサン。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素オルガノポリシロキサンは、脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーをUV光で硬化させる際の架橋剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係わる含フッ素オルガノシロキサンは下記一般式(1)で示されるものである。
【化2】

【0010】
上記一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異種の水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R5及びR6は同一又は異種の置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、結合途中に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでもよい。Rfは炭素数3以上の一価パーフルオロアルキル基又は一価パーフルオロアルキルエーテル基、kは1〜100の整数、mは0〜500の整数、nは1〜100の整数で示されるものである。
【0011】
本発明における含フッ素オルガノシロキサンのR1、R2、R3及びR4の置換及び非置換の一価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜7であるものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基あるいはこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子などで置換された基が例示される。また、R5及びR6の置換及び非置換の二価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜7であるものが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのアルキレン基、このアルキレン基の結合の途中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子が介在している基(なお、窒素原子は−NH−、−N(CH3)−、−N(C65)−等として介在し得る)、フェニレン基、トリレン基などのアリーレン基、上記アルキレン基とアリーレン基とが結合した基が例示される。Rfの一価パーフルオロアルキル基又は一価パーフルオロアルキルエーテル基としては、炭素数1〜50、特に1〜25のものが好ましく、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、一般式:F(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)(但し、p=1〜10、特に1〜6)で示されるパーフルオロアルキルエーテル基などが例示される。また、上記一般式(1)中、kは1〜100の整数、mは0〜500の整数、nは1〜100の整数であり、好ましくはkは3〜50、mは10〜300、nは3〜50である。
【0012】
次に、本発明の含フッ素オルガノシロキサンを例示するが、これらは代表例であり、本発明の含フッ素オルガノシロキサンはこれらに限定されるものではない。但し、以下、メチル基はMeと略記する。
【0013】
【化3】

【0014】
本発明における含フッ素オルガノシロキサンは、下記式の化合物の共重合により合成することができる。
【0015】
【化4】

【0016】
この共重合は酸触媒を用いて行うことができる。反応温度は30〜100℃、好ましくは50〜80℃、反応時間は2〜24時間、好ましくは8〜16時間行うとよい。酸触媒としては、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等の強酸を用いると効果的である。
【0017】
本発明の含フッ素オルガノポリシロキサンは、脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマーをUV光で硬化させる際の架橋剤として有用である。脂肪族不飽和基を有する含フッ素ポリマー、含フッ素オルガノポリシロキサン及び光重合開始剤を所定量混合し、UV光を照射することにより、硬化物を得ることができる。この硬化物はポリマーの分子量により樹脂、エラストマー、ゲル状の形態にすることが可能である。これら硬化物は接着剤、ゲル、シーリング材、コーティング材、離型剤などに有用である。
【実施例】
【0018】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0019】
[実施例]
撹拌棒、温度計、ジムロートを付した300ml四つ口セパラブルフラスコに下記式(I)のシクロトリシロキサン146.1gと下記式(II)のポリシロキサン13.4g及びヘキサメチルジシロキサン3.25gを仕込み、混合した。その混合物にトリフルオロメタンスルホン酸0.1gを添加し、60℃に加熱しながら、12時間撹拌した。
【0020】
【化5】

【0021】
反応液は次第に増粘し、粘稠液体となった。反応後、冷却してから、28%アンモニア水1.0gを添加し、系内を中和した後、ロータリーエバポレーターで系内の揮発分を留去した。留去後、冷却し、中和で生成した塩を加圧濾過により除去し、屈折率1.424(25℃)、粘度143cs(25℃)の粘稠液体147.2gを得た。この粘稠液体を1H−NMR、19F−NMR及びIRにより分析したところ、下記化合物であることが確認された。
【0022】
【化6】

【0023】
1H−NMR
δ0.25(s,Si−CH3
δ1.20(s,Si−CH2
δ1.80(s,CH2−CH2−CH2
δ2.60(s,S−H)
δ3.65(s,S−CH2
δ4.10(s,O−CH2
19F−NMR
80〜84(s、CF3、CF2、13F)
130.5(s、CF3−CF2−CF2、2F)
133.5(s、CF−CH2、1F)
145.5(s、O−CF(CF3)−CF2、1F)
IR(図1参照)
1100cm-1 νSi-O
1250cm-1 νC-F
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例で得た化合物の赤外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とする含フッ素オルガノポリシロキサン。
【化1】

(但し、式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異種の、水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R5及びR6は、同一又は異種の置換もしくは非置換の二価炭化水素基であり、結合途中に酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでもよい。Rfは炭素数3以上の一価パーフルオロアルキル基又は一価パーフルオロアルキルエーテル基、kは1〜100の整数、mは0〜500の整数、nは1〜100の整数である。)
【請求項2】
置換基Rfが一価パーフルオロアルキルエーテル基である請求項1記載の含フッ素オルガノポリシロキサン。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111734(P2006−111734A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300875(P2004−300875)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】