説明

含フッ素カチオン重合開始剤、およびそれを用いた重合体の製造方法

【課題】
機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体を提供する。
【解決手段】
主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体の製造方法であって、
(1)カチオン重合開始剤を用いてモノマーの重合を開始させる工程、および
(2)カチオン重合反応停止剤を用いて、カチオン重合反応を停止させる工程を有し、
前記カチオン重合開始剤および前記カチオン重合反応停止剤の少なくとも一方は含フッ素基を有する
ことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素カチオン重合開始剤、およびそれを用いた重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子界面活性剤は、低分子界面活性剤と比べて、乳化能、分散性、および凝集力に優れ、かつ低毒性であるという利点を有することが知られている。しかし、これら高分子界面活性剤は、表面張力の低下能が低いことや、ミセル形成能が低いことが、実用上の課題点である。
一方、含フッ素界面活性剤のうち、低分子量のものは、通常の界面活性剤より、表面張力低下能が高いこと、およびcmc値が小さいため低濃度で機能することなどの利点から、高機能な界面活性剤として多くの応用が行われてきた。しかし、フッ素系界面活性剤のなかでも、高分子量のものは、上述の高分子界面活性剤と同様の課題点を有しており、フッ素基導入の利点が生かされていなかった。
このような高分子界面活性剤が有する課題点に関して、フッ素系高分子界面活性剤の低機能、即ち、フッ素系高分子界面活性剤においてフッ素基導入の利点が生かされていないことの原因は、フッ素基が分子鎖中にランダムに導入されていることにあると指摘されている。従って、機能発現にとって適切な位置に、選択的にフッ素基を導入することが出来れば、高機能のフッ素系高分子界面活性剤が得られると期待出来る。これを実証するために、沢田らは親水性高分子鎖の両末端に含フッ素基が導入されたテレケリック型オリゴマーを合成し、その機能に関して報告している(非特許文献1)。それによれば、これら含フッ素テレケリック型オリゴマーは、低分子量の含フッ素界面活性剤と同等の高機能を発現する、通常の含フッ素界面活性剤よりも一般溶媒への溶解度が高いなどの利点が見出された。さらに、これら含フッ素テレケリック型オリゴマーは、界面活性剤としての機能だけでなく、溶液中でゲルなど分子集合体を形成出来ることや、ここで発生する分子集合体が抗ウイルス、抗菌活性などの生物活性を示すことなども報告されている。
非特許文献1に記載の方法以外にも、含フッ素テレケリック型の化合物の合成例は存在しているが、その数は少ない。例えば、非特許文献2には、アニオン重合によりポリスチレンの両末端にペルフルオロシリル基が導入された高分子の合成が開示されている。特許文献1には、ポリアルキレングリコールの両末端にペルフルオロアルキル基を導入したものが開示されている。非特許文献3には、ポリジメチルシロキサンの両末端にペルフルオロアルキル基を導入したものが開示されている。
【0003】
なお、非特許文献4には、一般式
【化1】

で表される化合物が開示されているが、当該化合物をカチオン重合開始剤として用いることの記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−179634号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】沢田英夫ら、有機合成化学協会誌、1999年、57巻、p.291−304)
【非特許文献2】Affrossmanら、Macromolecules、1996年、29巻、p.5432−5437
【非特許文献3】Matsuuraら、Journal of Membrane Science、2006年、277巻、p.177−185)
【非特許文献4】Nedolyaら、Russian Journal of General Chemistry 、2002年、72巻、p.760−766)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、なお、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基が導入された高分子を製造することは、困難である。
例えば、非特許文献1に記載の方法の場合、(a)フッ素基導入に、不安定で爆発の危険性が有る、含フッ素カルボン酸の過酸化物を用いていること、(b)ラジカル重合なので、適用可能なモノマーには制限が有ること、(c)分子量をコントロール出来ないため、非常に分子量分布が広く、また高度に高分子量である化合物を得ることも出来ないこと、および(d)両末端に含フッ素基を有するテレケリック型の化合物しか合成することが出来ないこと等の問題がある。
また、これまでに知られているテレケリック型化合物においては、機能発現に寄与する高分子鎖の非フッ素基の多様性が非常に低いため、分子集合体形成能に両末端に存在する含フッ素基が貢献しても、出来た分子集合体の機能性材料として応用範囲はおのずと限られてしまう。
したがって、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体の製造方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明者らは、研究を行った結果、カチオン重合において、カチオン重合開始剤およびカチオン重合反応停止剤の少なくとも一方は含フッ素基を有する化合物を用いることにより、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子を製造できることを見出し、更なる検討の結果、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の[1]〜[14]等に記載の、重合体の製造方法、それにより得られる重合体、およびカチオン重合開始剤等を提供する。
[1]
主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体の製造方法であって、
(1)カチオン重合開始剤を用いてモノマーの重合を開始させる工程、および
(2)カチオン重合反応停止剤を用いて、カチオン重合反応を停止させる工程を有し、
前記カチオン重合開始剤および前記カチオン重合反応停止剤の少なくとも一方は含フッ素基を有する
ことを特徴とする製造方法。
[2]
前記カチオン重合開始剤が含フッ素基を有する
ことを特徴とする前記[1]に記載の方法。
[3]
前記カチオン重合開始剤が式(I)
−CHR1a−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (I)
[式中、
は、R1z−COO−(式中、R1zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表す。)、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、
1aは、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物である
ことを特徴とする前記[1]に記載の方法。
[4]
前記カチオン重合反応停止剤が含フッ素基を有する
ことを特徴とする前記[1]に記載の方法。
[5]
前記カチオン重合反応停止剤が式(II)
f2−(CHn2−X−H (II)
[式中、
f2は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
n2は、1〜18の整数を表し、
は、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表す。]で表される化合物である
ことを特徴とする前記[4]に記載の方法。
[6]
前記カチオン重合開始止剤が式(III)
3a−CHR3a−X3a−A−X3b−CHR3b−Z3b (III)
[式中、
3a、およびZ3bは、それぞれ独立して、R3z−CO−O−(式中、R3zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表す。)、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、
3a、およびR3bは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、
3a、およびX3bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Aは、アルキレン鎖、またはポリアルキレンエーテル鎖、芳香族基、ヘテロ芳香族基を表す。]であり、前記主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体は、主鎖の両端に含フッ素基を有することを特徴とする前記[5]に記載の方法。
[7]
前記モノマーが、ビニルエーテル誘導体、スチレン誘導体、またはビニルエーテル誘導体とスチレン誘導体の組み合わせである
前記[1]〜前記[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]
前記[1]〜前記[7]のいずれか1項に記載の製造方法で得られる重合体であって、分子量分布が1.3以下である、重合体。
[9]
式(I)
−CHR−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (I)
[式中、
は、R1z−COO−(式中、R1zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物を含有するカチオン重合開始剤。
[10]
1aは、−O−である
前記[9]に記載のカチオン重合開始剤。
[11]
1bは、−O−である
前記[9]または前記[10]に記載のカチオン重合開始剤。
[12]
1aは、−O−であり、
Yは、エチレンであり、
1bは、−O−であり、および
m1は、1〜10の整数である
前記[9]に記載のカチオン重合開始剤。
[13]
式(I)で表される化合物が、式(I’)
【化2】

[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物である前記[9]に記載のカチオン重合開始剤。
[14]
式(Ia)
1z−CO−O−CHR−X1a−(Y−X1b−(CH−Rf1 (Ia)
[式中、
1z−は、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物
(但し、式(Ia’)
1z−CO−O−CH(−CH)−O−CH−Rf1 (Ia’)
(式中の記号は前記と同意義を表す。)
で表される化合物を除く)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体を製造できる。
また、本発明のカチオン重合開始剤を用いることにより、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法は、主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体の製造方法であって、
(1)カチオン重合開始剤を用いてモノマーの重合を開始させる工程(工程1)、および
(2)カチオン重合反応停止剤を用いて、カチオン重合反応を停止させる工程(工程2)を有し、
前記カチオン重合開始剤および前記カチオン重合反応停止剤の少なくとも一方は含フッ素基を有する。
【0010】
<製造方法A>
本発明の製造方法の一態様においては、カチオン重合開始剤が含フッ素基を有する。これにより、得られる重合体は、主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する。次に、このようなカチオン重合開始剤について説明する。
【0011】
当該含フッ素基を有するカチオン重合開始剤としては、
式(I)
−CHR−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (I)
[式中、
は、R1z−COO−(式中、R1zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルポリオロエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物が好ましい。
なお、式(I)で表される化合物のうち、式(Ia)
1z−CO−O−CHR−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (Ia)
[式中、
1z−は、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物
(但し、式(Ia’)
1z−CO−O−CH(−CH)−O−CH−Rf1 (Ia’)
(式中の記号は前記と同意義を表す。)
で表される化合物を除く)
は新規化合物である。
【0012】
以下に、式中の記号を説明する。
なお、本発明における重合開始剤、および停止剤等は均一であっても、不均一であってもよい。すなわち、例えば、以下に説明する数値は、数平均値または重量平均値が満たしていればよい。
本明細書中、特に記載の無い限り、「脂肪族炭化水素基」としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、および炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。
本明細書中、特に記載の無い限り、「パーフルオロアルキル基」としては、例えば、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6)のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
本明細書中、特に記載の無い限り、「パーフルオロアルコキシ基」としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6)のパーフルオロアルコキシ基が挙げられる。当該「パーフルオロアルキル基」は、直鎖状でも分子鎖状でもよいが、直鎖状のものが好ましい。また、末端に−C(CFの構造を有し、その他の部分は直鎖状のものも好ましい。
本明細書中、特に記載の無い限り、「パーフルオロポリエーテル基」としては、例えば、末端に炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6)のパーフルオロアルキル基を有し、−CO−、CO−、および−CFO−から選択される1種以上の繰り返し単位を有する、炭素数2〜50のパーフルオロポリエーテル基が挙げられる。当該繰り返し単位としては、−CO−が好ましい。前記繰り返し単位の繰り返し数は、好ましくは、2〜20である。
パーフルオロポリエーテル基はとして、具体的には例えば、
F(CF(−CF)−CF−O)−CF(CF)−[式中、n=1〜16の整数である。]、
CFO−(CF(−CF)−CF−O)−(CFO)−CF−[式中、n=0〜16、m=0〜20の整数である。]、
CF−O−((CF−O)−(CF−O)−CF−[式中、n=1〜20、m=0〜20の整数である。]、および
F((CF−O)−(CF−[式中、n=1〜16の整数である。]
等が挙げられる。
【0013】
本明細書中、特に記載の無い限り、「アルキル基」としては、例えば、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基が挙げられ、なかでも、例えば、メチル基が好ましい。
1aとしては、例えば、−O−が好ましい。
1bとしては、例えば、−O−が好ましい。
Yとしては、例えば、エチレンが好ましい。
【0014】
m1は、0または1が好ましい。
n1は、1〜6の整数が好ましい。
【0015】
特に、式(I)で表される化合物としては、例えば、式(I’)
【化3】

[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物が好ましい。
【0016】
式(I)の化合物は、例えば前記非特許文献4に記載の方法などの、公知の合成方法を利用して製造することができる。
具体的には、含フッ素基を有するビニルエーテルに対するカルボン酸の付加によって、式(I)の化合物を合成することができる。
【0017】
式(I)の化合物は、カチオン重合の開始種として機能する。すなわち、本発明は、式(I)の化合物からなるカチオン重合の開始種もまた提供するものである。開始種は、活性種であるカチオンを生成する化合物であり、カチオン重合においては、通常、ルイス酸と組み合わせて用いられる。
【0018】
前記ルイス酸としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
一般式(1):AlX
(式中、X、X、およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を表す。)
で表されるアルミニウム化合物。
、X、およびXで表される「ハロゲン原子」としては、例えば、塩素、臭素、およびヨウ素などが挙げられる。
、X、およびXで表される「アルキル基」としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
、X、およびXで表される「アリール基」としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
、X、およびXで表される「アルコキシ基」としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
、X、およびXで表される「アリール基」としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
一般式(1)で表されるアルミニウム化合物として具体的には、例えば、
ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムブロマイド、ジイソプロピルアルミニウムフルオライド、ジイソプロピルアルミニウムアイオダイド、ジメチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチルアルミニウムジクロライド、オクチルアルミニウムジクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、ビニルアルミニウムジクロライド、フェニルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、エチルアルミニウムエトキシクロライド、ブチルアルミニウムブトキシクロライド、エチルアルミニウムエトキシブロマイドなどの有機ハロゲン化アルミニウム化合物、および
ジエトキシエチルアルミニウムなどのジアルコキシアルキルアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウムなどのビス(アルキル置換アリロキシ)アルキルアルミニウムなどが挙げられる。これらのアルミニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
一般式(2):MY
(式中、Mは4価のTiまたはSnを表し、Y、Y、Y、およびYは、それぞれハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。)
でそれぞれ表される。四価チタニウムまたは四価スズ化合物。
、Y、Y、およびYでそれぞれ表される、「ハロゲン原子」、「アルキル基」、「アリール基」、および「アルコキシ基」としては、それぞれX、X、およびXについて例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)で表される四価チタニウム化合物として具体的には、例えば、
四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のハロゲン化チタン、
チタントリエトキシクロライド、チタントリn−ブトキシドクロライド等のハロゲン化チタンアルコキシド、
チタンテトラエトキシド、チタンn−ブトキシドなどのチタンアルコキシドなどが挙げられる。
一般式(2)で表される四価スズ化合物として具体的には、例えば、
四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のハロゲン化スズ等を挙げることができる。
これらの四価チタン化合物および四価スズ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、前記ルイス酸としては、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、またはアンチモン(Sb)のハロゲン化物;オニウム塩(例、アンモニウム塩、ホスホニウム塩);金属酸化物(例、Fe、Fe、In、Ga、ZnO、およびCo3O等)も挙げられる。
【0020】
また、カチオン重合の開始種は、生長種を安定化させる目的で、好ましくは、
含酸素または含窒素化合物が用いられる。ここで、生長種とは、活性種(カチオン)を有するポリマーであるポリマーの末端に存在する、その活性種(すなわち、カチオン)を意味する。
当該含酸素または含窒素化合物としては、例えば、エステル、エーテル、酸無水物、ケトン、イミド、リン酸化合物、ピリジン誘導体、およびアミンが挙げられる。具体的には、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸メチル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチルなどが挙げられる。
当該エーテルとしては、例えば、
ジエチルエーテル、エチレングリコールなどの鎖状エーテル、
ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルが挙げられる。
前記酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
前記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
前記イミドとしては、エチルフタルイミドなどが挙げられる。
前記リン酸化合物としては、トリエチルホスフェートなどが挙げられる。
前記ピリジン誘導体としては、2,6−ジメチルピリジンなどが挙げられる。
前記アミンとしては、トリブチルアミンなどが挙げられる。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような開始種を用いることなどにより、本発明においては、反応をリビングカチオン重合とすることが容易に出来る。リビング重合とすることで、生成するポリマーの分子量、分子量分布を制御でき、また共重合におけるブロック重合体やグラジェント重合体の合成も可能となる。さらには生成ポリマーの純度、収率の向上も可能となる。
ポリマーの機能発現において、分子量や分子量分布の制御は非常に重要である。このような背景のもと、狙った機能を実現するための最適化合物を、本重合方法により合成することが可能になる。
【0021】
(工程1)
製造方法Aの工程1では、カチオン重合性を有するモノマーを、前記式(I)で表される化合物、およびルイス酸の存在下で、カチオン重合させる。
カチオン重合性を有するモノマーとしては、例えば、ビニルエーテル誘導体、スチレン誘導体、またはビニルエーテル誘導体とスチレン誘導体の組み合わせが好ましい。
【0022】
当該ルイス酸としては、例えば、前記で例示したものが用いられる。
前記ルイス酸の使用量は、ビニル化合物/ルイス酸(モル比)=2〜1000が好ましく、10〜1000がより好ましい。
また、ここで、前記の生長種を安定化させる目的で、前記の含酸素または含窒素化合物を用いてもよい。
前記含酸素または含窒素化合物の使用量は、含酸素または含窒素化合物/ルイス酸(モル比)=0.1〜2000が好ましく、1〜2000がより好ましい。
前記式(I)で表される化合物の濃度は、0.1〜1000mMが好ましく、1〜100mMがより好ましい。
当該反応は、バルクで行ってもよいが、好ましくは、溶媒を使用する。
溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。特に無極性溶媒が好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は、通常、溶媒:ビニル化合物(容量比)=1:1〜100:1であり、好ましくは5:1〜30:1である。
反応温度は、通常−80℃〜150℃、好ましくは−78〜80℃である。
反応時間は、通常1分〜1ヶ月間、好ましくは1分〜100時間である。
【0023】
所望により、前記の反応後に、前記とは異なるモノマーを反応液に添加することで、マルチブロックポリマーを得ることもできる。
【0024】
(工程2)
製造方法Aの工程2では、前記で得られた反応液にカチオン重合反応停止剤を添加し、活性種を消失させて、カチオン重合を停止させる。
カチオン重合反応停止剤としては、カチオン重合反応を停止できるものであれば特に限定されず、例えば、アルコールまたはカルボン酸を用いることができるが、アルコールが好ましい。
ここで、カチオン重合反応停止剤として、フッ素原子を含有しない化合物を用いた場合、ポリマー鎖の一方の末端に含フッ素基を有する重合体が得られる。
当該フッ素原子を含有しないカチオン重合反応停止剤としては、例えば、
式:R−OH
[式中、
は、アルキル基、アルコキシ基、またはポリエーテル基を表す。]
で表される化合物が好ましい。
本明細書中、特に記載の無い限り、「アルコキシ基」としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6)のアルコキシ基が挙げられる。
本明細書中、特に記載の無い限り、「ポリエーテル基」としては、末端に炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基を有し、−CO−、−CO−、および−CHO−から選択される1種以上の繰り返し単位(好ましくは−CO−)を有する、炭素数4〜50のポリエーテル基が挙げられる。
【0025】
一方、ここで、カチオン重合反応停止剤として、フッ素原子を含有する化合物を用いた場合、ポリマー鎖の両方の末端に含フッ素基を有する重合体(含フッ素テレケリック型高分子)が得られる。
当該フッ素原子を含有するカチオン重合反応停止剤としては、例えば、式
sf−OH
[式中、Rsfはフッ素化された1価の有機基を表す。]
で表される化合物を添加し、活性種を消失させて、カチオン重合を停止させるとともに、フッ素原子を含む−ORsf基を、中心核に結合させる。
sfで表されるフッ素化された1価の有機基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基が好ましい。
【0026】
カチオン重合反応停止剤の使用量は、反応溶液内で停止剤とポリマーの反応末端が充分に接触することが可能となればよく、使用する量は厳密に規定されるものでは無い。通常、反応溶媒量の0.01〜10倍容量であり、好ましくは0.1〜1倍容量である。
【0027】
<製造方法B>
本発明の製造方法の一態様においては、カチオン重合反応停止剤が含フッ素基を有する。これにより、得られる重合体は、主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する。次に、このようなカチオン重合反応停止剤について説明する。
【0028】
当該含フッ素基を有するカチオン重合反応停止剤として好ましくは、例えば、式(II)
f2−(CHn2−X−H (II)
[式中、
f2は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
n2は、1〜18の整数を表し、
は、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表す。]で表される化合物である。
【0029】
としては、例えば、−O−が好ましい。
【0030】
製造方法Bにおけるカチオン重合反応開始剤としては、カチオン重合反応を開始できるものであれば特に限定されず、例えば、ビニルエーテルのカルボン酸付加体、またはビニルエーテルのハロゲン化水素付加体を用いることができる。中でも、酢酸付加体および塩酸付加体が好ましく用いられる。
ここで、製造方法Aにおいて説明したカチオン重合反応開始剤を用いてもよく、その場合、主鎖の両端に含フッ素基を有する重合体が得られる。
また、リビング重合反応開始剤として、例えば、式(III)
3a−CHR3a−X3a−A−X3b−CHR3b−Z3b (III)
[式中、
3a、およびZ3bは、それぞれ独立して、R3z−CO−O−(式中、R3zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表す。)、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、
3a、およびR3bは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、
3a、およびX3bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Aは、アルキレン鎖、またはポリアルキレンエーテル鎖、芳香族基、ヘテロ芳香族基を表す。]である化合物を用いた場合、当該化合物の両端から伸張した鎖に式(II)の化合物が反応して、主鎖の両端に含フッ素基を有する重合体が得られる。
Aで表されるアルキレン鎖としては、例えば、炭素数が1〜20のアルキレン基が好ましい。
Aで表されるアルキレン鎖としては、例えば、炭素数2〜50のポリアルキレンエーテル鎖が好ましい。また、当該ポリアルキレンエーテル鎖の繰り返し単位の繰り返し数は、好ましくは1〜10である。当該ポリアルキレンエーテル鎖は、アルキレン鎖のC−C結合に酸素原子が挿入された構造を有する。すなわち、当該ポリアルキレンエーテル鎖の両末端はそれぞれアルキレン鎖であり、例えば、繰り返し数が1の場合、アルキレン−O−アルキレンの構造を有する。当該アルキレンとしては、炭素数1〜3のアルキレンが好ましく、ポリアルキレンエーテル鎖の繰り返し単位としては、例えば、−CO−、−CO−、および−CHO−から選択される1種以上の繰り返し単位(好ましくは−CO−)が挙げられる。
Aで表される芳香族基としては、例えば、フェニレン、およびナフチレン等が挙げられる。なお、当該芳香族基は、置換基を有していてもよい。
Aで表されるヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香環から2個の水素を取り除いた基であり、当該ヘテロ芳香環としては、例えば、5〜6員(好ましくは5員)のヘテロ芳香環(例、チオフェン)、および当該5〜6員(好ましくは5員)のヘテロ芳香環とベンゼン環との縮合環等が挙げられる。なお、当該ヘテロ芳香族基は、置換基を有していてもよい。
【0031】
製造方法Bにおける工程1および工程2の反応は、製造方法Aと同様に実施すればよい。
【0032】
当該製造方法は、
1)導入できる含フッ素基の選択性が広い、
2)特にリビングカチオン重合である場合、得られる高分子の分子量を望むものに設定できる、
3)特にリビングカチオン重合である場合、得られる高分子の分子量分布を非常に狭く出来る、
4)合成プロセスを安全に行える、
5)生成物の収率が高い、
6)生成物の純度が向上する、
という優れた特徴を有する。
【0033】
当該製造方法においては、リビングカチオン重合として反応をコントロールすることが容易であるので、分子量分布が1〜1.3、好ましくは1〜1.2の重合体を得ることができる。
なお、本明細書中、分子量分布とは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnを意味する。平均分子量および分子量分布は、GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)測定に基づいて求められる。
(GPC測定)
以下のカラムを順に直列配管したものを使用して測定する。
TOSOH TSK guardcolumn HXL−L(6.0mmI.D.×30cm)
TOSOH TSKgel G4000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
TOSOH TSKgel G3000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
TOSOH TSKgel G2000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
溶出液:クロロホルム
標準ポリスチレンで分子量を校正する。
HPLC装置:TOSOH DP−8020,デュアルポンプ、流速:1mL/min
【0034】
本発明の製造方法で得られる高分子の分子量は、特に限定されず、所望する分子量のものを得ることができるが、好ましくは、例えば、数1000〜数10万である。
【0035】
このようにして得られた本発明の重合体は、例えば、塗料用の分散助剤、レオロジー制御剤、定着剤(これは、基板密着性を向上させる)、または親水化剤等として用いることができる。ここで、本発明の重合体は、その分子末端のフッ素の含有量に応じて、溶剤への適当な分散性、適当な塗料粘度、および基板への適当な密着性等を有することができる。
また、本発明の重合体は、高機能性表面処理剤(例、テキスタイル用撥水撥油剤、カーペット用撥剤、紙用撥剤および離型剤等)として用いることができる。ここで、本発明の重合体は、分子末端に導入したフッ素の効果に起因して被覆物の表面に効率よく配向することによって、分子自体の性質等に基づく優れた水濡れ性、撥水性、撥油性、または防汚性を効果的に発現しうる。したがって、本発明の重合体は、環境応答性を有する優れた撥水撥油剤等として用いることができる。
また、本発明の重合体は、樹脂添加剤(例、相溶化剤、内添型撥剤、内添型防汚剤、離型剤、難燃化剤、ドリップ防止剤、耐衝撃改良剤、剛性改良剤および強化剤等)として用いることができる。ここで、本発明の重合体は、分子末端のフッ素の含有量の調節によって、例えば、分子末端のフッ素の疎水的作用と分子中央部の親水的作用に基づく樹脂との相溶性をコントロールし、添加対象となる樹脂に対して適当な相溶性を有することができる。なお、本発明の重合体は、波長レベル以下の粒径を有することができ、このようなポリマーは、特に透明樹脂の添加剤として好適である。
また、本発明の重合体は、DDS(ドラッグデリバリーシステム)の担体等として用いることができる。
また、本発明の重合体は、分子末端に導入したフッ素同士が疎水性相互作用によって分子間および分子内にて自己組織化することで、大きな集合体(高次構造)を形成する。この自己組織化によって得られた集合体の場を様々な用途(例、酵素などの触媒の固定化担体等)として用いることができる。
また、各種光学部材の材料または添加剤(例、屈折率調整剤、防汚剤、発光素子材料、レンズ用材料、光デバイス用材料、表示用材料、光学記録材料、光信号伝送用材料(光伝送媒体)、封止部材用材料)として用いることができる。
また、本発明の重合体は、フッ素が分子末端に存在することによる優れた分子配向性により、フッ素に由来するすべり性、撥水撥油性、防汚性を発現することができるので、化粧品(洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、スキンケア製品、ファンデーション、口紅、ポイントメーク製品、ボディシャンプー、液体石けん、サンスクリーン化粧品等のサンケア製品、ハンドケア製品、防臭化粧品、浴剤等の皮膚化粧料;シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアリキッド、ヘアスプレー、ヘアマニキュア、セットフォーム、ヘアゲル等の毛髪化粧料)の性質改変剤として使用することができる。
また、本発明の重合体は、枝部末端のフッ素の疎水的相互作用を利用したゲル化剤、優れた温度感応特性を利用したセンサー(例、温度センサー、湿度センサー)、メカノケミカル材料および接着剤等における使用が可能である。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
以下の実施例において、GPC測定は、下記の条件で実施した。
HPLC装置:TOSOH DP−8020,デュアルポンプ、流速:1mL/min
カラム:以下のカラムを順に直列配管したものを使用した。
TOSOH TSK guardcolumn HXL−L(6.0mmI.D.×30cm)
TOSOH TSK gel G4000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
TOSOH TSK gel G3000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
TOSOH TSK gel G2000HXL(7.8mmI.D.×30cm)
溶離液: クロロホルム
ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。
【0037】
実施例1
<酢酸1−[2−(9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロ−1−ノニルオキシ)−エトキシ]−エチル(以下、酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチルと略記する。)の合成>
【化4】

アリーン冷却器と三方活栓をつけたガラス反応容器にフッ素モノマー、ペルフルオロヘキシルプロポキシエチルビニルエーテル1.0mol及び酢酸1.1molを加え、60℃で3時間反応させた。反応物を10時間以上減圧乾燥させ、無色透明の液体である生成物(酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチル)を得た。その後、ヘキサンで0.2Mに希釈し、乾燥窒素下で茶色ガラスアンプルに溶封し、冷暗所に保存し、以後の重合反応に用いた[純度>98%、NMRによる。d=1.45g/ml n=6,d=1.17g/ml,n=2]。
H−NMR(CDCl) δ1.40(d,J=7.0Hz,3H),1.84−1.92(m,2H),2.06(s,3H),2.12−2.23(m,2H),3.48−3.61(m,2 H),3.62−3.73(m,2H),3.75−3.82(m,2H),5.94(q,J=7.0Hz).
【0038】
実施例2
<実施例1で得られた開始剤を用いた2−メトキシエチルビニルエーテルのカチオン重合>
【化5】

重合用のガラス器具は、すべて送風定温乾燥機(130℃)にて3時間乾燥させたものを用いた。三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、窒素加圧下にて室温まで放冷、乾燥窒素で常圧に戻し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内に、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチル(10mM)を乾燥窒素下で添加し、トルエンを加えて全体を4.5mLとした。容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mM トルエン溶液を0.50mL(20mM)加えて、重合を開始した。40分間反応を続けた。
生成したポリマーは、重量法によりモノマーの転換率(重合率、Conversion)を算出し、ほぼ定量的にモノマーがポリマーへと変換されていることが判った。後述するGPC測定によりポリマーの数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
(得られたポリマーのGPC分析)
得られたポリマーの分子量および分子量分布は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。生成ポリマーの重量平均分子量は2.68×10、数平均分子量2.44×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.11と非常に狭いポリマーが得られた。
【0039】
実施例3
<一方の末端にフッ素有する直鎖ポリマー>
【化6】

重合用のガラス器具は、すべて送風定温乾燥機(130℃)にて3時間乾燥させたものを用いた。三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、窒素加圧下にて室温まで放冷、乾燥窒素で常圧に戻し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内に、トルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、2−メトキシエチルビニルエーテルの酢酸付加体(10mM)およびトルエン、乾燥窒素下で添加し、全体を4.5mLとし、0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mM トルエン溶液を0.50mL(20mM)加えて、重合を開始した。35分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈したCCHOHを添加し、反応停止させた。
得られたポリマーを減圧下に乾燥して重量を測定し、使用したモノマーは定量的にポリマー化していることを確認した。
(得られたポリマーのGPC分析)
得られたポリマーの分子量および分子量分布は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。生成ポリマーの数平均分子量0.34×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.14と非常に狭いポリマーが得られた。
また、H−NMRの測定により、3.2−3.8ppmの−OCHCHO−領域の低磁場側4ppmに−OCHCFCF基由来のメチレン基が観測された。
以上により、停止剤に含フッ素化合物を用いることにより、末端に含フッ素基が導入されたポリマーが合成できることが判った。
【0040】
実施例4
<両末端にフッ素基を有するポリマーの合成>
【化7】

重合用のガラス器具は、すべて送風定温乾燥機(130℃)にて3時間乾燥させたものを用いた。三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、窒素加圧下にて室温まで放冷、乾燥窒素で常圧に戻し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内に、トルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチル(10mM)を乾燥窒素下で添加し、トルエンを加えて全体を4.5mLとした。反応容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMトルエン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。38分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈したC13CHCHOHを添加し、反応停止させた。
生成したポリマーは、重量法によりモノマーの転換率(重合率、Conversion)を算出し、ほぼ定量的にモノマーが使用されていることが判った。
【0041】
実施例5
<両末端にフッ素基を有するポリマーの合成>
【化8】

実施例4と同様にして、窒素雰囲気下、容器内に、トルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチル(10mM)を乾燥窒素下で添加し、トルエンを加えて全体を4.5mLとした。反応容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMトルエン溶液を0.50mL(20mM)加えて、重合を開始した。38分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈したCCHOHを添加し、反応停止させた。
生成したポリマーは、重量法によりモノマーの転換率(重合率、Conversion)を算出し、ほぼ定量的にモノマーが使用されていることが判った。
【0042】
【化9】

実施例6
<共重合体>
実施例2と同様に乾燥させた重合用容器内に、窒素雰囲気下にトルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、およびシクロヘキシルビニルエーテル(1.0M)、酢酸ペルフルオロヘキシルプロポキシエトキシエチル(10mM)を添加し、トルエンを加えて全体を4.5mLとした。反応容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMトルエン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。38分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈した1H,1H−ペンタフルオロプロパノール(1mL)を添加し、反応停止させた。
後処理後、得られたポリマーを19F−NMRで解析した: 83.2ppm(3F)、128.0ppm(2F)、125.3ppm(2F)、124.3ppm(2F)、123.0ppm(2F)、115.3ppm(2F)以上−C13CHCHO−;83.4ppm(3F)、115.6ppm(2F)以上CCHO−。
以上のことから、両末端に別々のペルフルオロアルキル基が導入されていることが判る。
即ち、開始剤と停止剤に含フッ素化合物を用いることにより、末端にフッ素基が導入されたポリマーが合成出来ることが判る。
【0043】
実施例7
<両末端にフッ素基を有するポリマーの合成>
【化10】

実施例2と同様の手法により乾燥した重合用のガラス器具に、トルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、モノマーとして2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)(1.0M)、下記に構造を示した二点の反応点を有する開始剤(10mM)を乾燥窒素下で添加し、トルエンを加えて全体を4.5mLとした。反応容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMトルエン溶液を0.50mL(20mM)加えて、重合を開始した。38分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈した1H,1H,2H,2H−ヘキサフルオロオクタノール(1mL)を添加し、反応停止させた。
(本実施例で用いた開始剤の構造)
【化11】

【0044】
合成例1
<2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エチル ビニル エーテルの合成>
【化12】

CFOCFCFOCFCFOCFCHOH(3.98g,10mmol),硫酸水素テトラブチルアンモニウム(340mg,1mmol),40% NaOH水溶液を室温で30分間攪拌した。
この反応液に2−クロロエチルビニルエーテル(10ml)を加えて、70℃で3日間攪拌した。
冷却後、反応液をエーテルで抽出した。有機相を水洗後、硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、溶媒を溜去した。残った反応物を減圧下に蒸留し(沸点:74℃、9mmHg)、目的物を得た(3.1g、収率 66.2%)。
H−NMR(CDCl) δ 3.74−3.79(m,1H),3.82−3.95(m,3H),3.92(t,J=9.3Hz,2H),4.03(d−d−t,J=8.0,2.2,8.0Hz,1H),4.20(d−d−t,J=16.0,2.2,4.0Hz,1H),6.48(d−d−t,J=16.0,8.0,8.0Hz,1H).
【0045】
実施例8
<1−{2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エトキシ}エトキシ アセタートの合成>
【化13】

実施例1と同様にして、アリーン冷却器と三方活栓をつけたガラス反応容器に、合成例1で合成した2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エチル ビニル エーテル 1.0mol及び酢酸1.1molを加え、60℃で15時間反応させた。反応物を10時間以上減圧乾燥させ、無色透明の液体である生成物、1−{2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エトキシ}エトキシ アセタートを得た。その後、ヘキサンで0.2Mに希釈し、乾燥窒素下で茶色ガラスアンプルに溶封し、冷暗所に保存した[純度>98%、NMRによる]。
H−NMR(CDCl) δ1.41(d,J=7.0Hz,3H),2.06(s,3H),3.58−3.84(m,4H),3.93(t,J=9.3Hz,2H),5.93(q,J=7.0Hz).
【0046】
実施例9
<1−{2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エトキシ}エトキシ アセタートを用いたp-メトキシスチレンの重合>
【化14】

実施例2と同様の手法により乾燥した重合用のガラス器具に、トルエン、1,4−ジオキサン(1.0M)、精製したp-メトキシスチレン(1.0M)を入れ、これに1−{2−(1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカノキシ)エトキシ}エトキシ アセタート(10mM)を乾燥窒素下で添加し、さらにトルエンを加えて全体を4.5mLとした。反応容器を0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMトルエン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。60分間後、テトラヒドロフラン(THF)で希釈したCFCFCFOCF(CF)CHOH(1mL)を添加し、反応停止させた。
溶媒を留去してポリマーを取り出し、NMRにより、構造を確認した。
H−NMR(CDCl) δ0.95−2.80(m),3.70−3.80(m),3.80−4.00(m),6.40−7.45(m). ポリスチレンの主鎖領域(0.95−2.80 ppm),ベンゼン環領域(6.40−7.45 ppm)の間の領域に開始剤および停止剤由来のメチレン基の吸収(3.70−3.80 ppm,3.80−4.00 ppm)が確認出来た。
さらに19F−NMRより、134ppm(1F)、129.4ppm(2F)、82.6ppm(3F)、81.7ppm(2F)、81.1ppm(3F)以上 CFCFCFOCF(CF)CHO−;90.2ppm(2F)、88−89ppm(6F)、76.6ppm(2F)、55.1ppm(3F)以上 CFOCFCFOCFCFOCFCHO−が観測された。
以上から、両末端に開始剤および停止剤に使用した含フッ素化合物に由来するフッ素基が、選択的に導入されたことが判った。
【0047】
実施例10
<ビニルエーテル塩酸付加体の合成 1−クロロ−[2−(9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロ−1−ノニルオキシ)エトキシ]エタン>
【化15】

2−(9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロ−1−ノニルオキシ)エチル ビニル エーテルの0.2Mヘキサン溶液に、HClガスを0℃で1時間バブリングさせた。残った塩酸ガスを乾燥窒素でパージした。得られた化合物の構造はH−NMRにより確認した。
H−NMR(CDCl) δ1.80(d,J=5.5Hz,3H),1.84−1.92(m,2H),2.12−2.23(m,2H),3.48−3.61(m,2H),3.62−3.73(m,2H),3.75−3.82(m,2H),5.75(q,J=5.5Hz).
【0048】
実施例11
<α−メチルスチレンの重合反応>
【化16】

実施例2と同様に乾燥したガラス容器に入れたα−メチルスチレン(0.3mL)のCHCl溶液(5mL)中に、実施例10で調製したビニルエーテル塩酸付加体の0.2Mヘキサン溶液(0.5mL)とSnCl(1M、CHCl中)溶液0.5mLをシリンジを用いて、−78℃で滴下した。GLCによりα−メチルスチレンが消失したのを確認後、9,9,9,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4−トリデカフルオロ−1−ノニルアルコール(1mL)のTHF溶液で反応をクエンチした。反応液をトルエン20mLで希釈して、5%塩酸、5%水酸化ナトリウム、精製水で洗浄した。溶媒を減圧下に留去し、得られたポリマーを分析した。
H−NMR(CDCl) δ 0−0.5(m),0.6−1.0(m),1.3−2.1(m),2.1−2.5(m),3.4−4.0(m),6.5−7.4(m).0.5ppmまでのポリスチレン由来のメチル基、1.3−2.1ppmのポリスチレン主鎖のメチレン基、6.5−7.4ppmのベンゼン環の吸収が観測され、これに開始剤由来のメチル基が6.5−7.4ppmに、開始剤および停止剤由来のメチレン基が2.1−2.5 ppmと 3.4−4.0(m)ppmに観測された。
【0049】
合成例2
<2−(1H,1H−ペルフルオロオクチル)−ビス(エチレンオキシ) ビニル エーテル の合成>
【化17】

合成例1の方法と同様にしてC17CHO(CHCHO)OHと2−クロロエチルビニルエーテルから合成した。
H−NMR(CDCl) δ 3.60−3.85(m,8H),4.02(d−d,J=4.0,1.2Hz,1H),4.03(t,J=9.0Hz,2H),4.20(d−d,J=8.0,1.2Hz,1H),6.50(d−d,J=4.0,8.0Hz,1H).
【0050】
実施例12
<1−{2−(1H,1H−ペルフルオロオクチル)−ビス(エチレンオキシ)}エトキシ アセタートの合成>
【化18】

実施例1と同様にして、アリーン冷却器と三方活栓をつけたガラス反応容器に、合成例2で合成した2−(1H,1H−ペルフルオロオクチル)−ビス(エチレンオキシ)ビニルエーテル1.0mol及び酢酸1.1molを加え、60℃で15時間反応させた。反応物を10時間以上減圧乾燥させ、無色透明の液体である生成物1−{2−(1H,1H−ペルフルオロオクチル)−ビス(エチレンオキシ)}エトキシ アセタートを得た。その後、ヘキサンで0.2Mに希釈し、乾燥窒素下で茶色ガラスアンプルに溶封し、冷暗所に保存した[純度 > 98%、NMRによる]。
H−NMR(CDCl) δ 1.40(d,J=7.0Hz,3H),2.05(s,3H),3.60−3.85(m,8H),4.03(t,J=9.0Hz,2H),5.94(q,J=7.0Hz).
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の製造方法によれば、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体を製造できる。
また、本発明のカチオン重合開始剤を用いることにより、機能発現にとって適切な位置に選択的にフッ素基を導入でき、かつ非フッ素部の多様性が高い高分子、特に主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体の製造方法であって、
(1)カチオン重合開始剤を用いてモノマーの重合を開始させる工程、および
(2)カチオン重合反応停止剤を用いて、カチオン重合反応を停止させる工程を有し、
前記カチオン重合開始剤および前記カチオン重合反応停止剤の少なくとも一方は含フッ素基を有する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記カチオン重合開始剤が含フッ素基を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン重合開始剤が式(I)
−CHR1a−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (I)
[式中、
は、R1z−COO−(式中、R1zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表す。)、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、
1aは、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン重合反応停止剤が含フッ素基を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオン重合反応停止剤が式(II)
f2−(CHn2−X−H (II)
[式中、
f2は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
n2は、1〜18の整数を表し、
は、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表す。]で表される化合物である
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオン重合開始止剤が式(III)
3a−CHR3a−X3a−A−X3b−CHR3b−Z3b (III)
[式中、
3a、およびZ3bは、それぞれ独立して、R3z−CO−O−(式中、R3zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表す。)、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表し、
3a、およびR3bは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、
3a、およびX3bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Aは、アルキレン鎖、またはポリアルキレンエーテル鎖、芳香族基、ヘテロ芳香族基を表す。]であり、前記主鎖の少なくとも一方の末端に含フッ素基を有する重合体は、主鎖の両端に含フッ素基を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記モノマーが、ビニルエーテル誘導体、スチレン誘導体、またはビニルエーテル誘導体とスチレン誘導体の組み合わせである
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られる重合体であって、分子量分布が1.3以下である、重合体。
【請求項9】
式(I)
−CHR−X1a−(Y−X1bm1−(CHn1−Rf1 (I)
[式中、
は、R1z−COO−(式中、R1zは、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物を含有するカチオン重合開始剤。
【請求項10】
1aは、−O−である
請求項9に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項11】
1bは、−O−である
請求項9または10に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項12】
1aは、−O−であり、
Yは、エチレンであり、
1bは、−O−であり、および
m1は、1〜10の整数である
請求項9に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項13】
式(I)で表される化合物が、式(I’)
【化1】

[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物である請求項9に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項14】
式(Ia)
1z−CO−O−CHR−X1a−(Y−X1b−(CH−Rf1 (Ia)
[式中、
1z−は、脂肪族炭化水素基、フェニル、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
は、アルキル基を表し、
1aおよびX1bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−、または−N(−CH)−を表し、
Yは、炭素数1〜3のアルキレン鎖を表し、
f1は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、またはパーフルオロポリエーテル基を表し、
m1は、0〜10の整数を表し、
n1は、1〜18の整数を表す。]
で表される化合物
(但し、式(Ia’)
1z−CO−O−CH(−CH)−O−CH−Rf1 (Ia’)
(式中の記号は前記と同意義を表す。)
で表される化合物を除く)。

【公開番号】特開2011−52081(P2011−52081A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201016(P2009−201016)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】