説明

含フッ素ポリマー液状組成物及びフッ素系架橋体製造方法

【課題】酸・酸塩型基を有するポリマーからなり、基材に塗布又は多孔質材料に含浸したのち架橋することにより機械特性に優れ水分量による寸法変化の小さい架橋体を製造することができる液状組成物を提供する。
【解決手段】液状媒体と、架橋性官能基を有する架橋性含フッ素ポリマーとからなる含フッ素ポリマー液(A)からなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、上記含フッ素ポリマー液(A)は、酸・酸塩型基、若しくは、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる粒子が液状分散媒に分散している含フッ素ポリマー液状分散液(AD)、又は、酸・酸塩型基若しくは酸・酸塩型基の前駆体を有する架橋性含フッ素ポリマー(PS)がフッ素系溶剤若しくはアルコール/水混合溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)であることを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリマー液状組成物及びフッ素系架橋体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年注目を集めている固体高分子型燃料電池には、含フッ素電解質膜が主として用いられているが、以下の問題点がある。燃料電池の発電特性を向上させるためには、電解質膜のイオン交換容量を多くする、膜厚を薄くする等の方法があるが、何れも機械強度の低下をもたらす。使用時に膜を強力に締め付けるので膜がクリープ現象により変形劣化したり、発電の起動停止時に膜が膨潤収縮して劣化し、甚だしい場合にはピンホールが開いて水素と酸素が混じるようになる。
【0003】
含フッ素電解質膜の劣化を防止するため、電解質膜を架橋し架橋膜とすることが提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5、6及び7参照。)。架橋膜を得る方法としては、樹脂と架橋剤とを混合し溶融押出し成形する方法が知られている。しかしながら、成形機内でも架橋反応が起こるので、架橋反応の制御が困難で、品質が安定した膜の製造が困難であるという問題があった。
【0004】
架橋含フッ素電解質膜の製法として、樹脂と架橋剤とを混合しホットプレス成形する方法も知られている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、大きなサイズの膜を得ることが困難で、バッチ生産となるので、大量生産が困難であるという問題があった。
【0005】
架橋含フッ素電解質膜の製法として、通常どおり製膜したパーフルオロ系スルホニルフルオライド膜に架橋剤を含浸させた後、加熱や高エネルギー線によって架橋させる方法が知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、この文献には、溶液でキャスト膜をつくった後に加熱等により架橋させることは開示されていない。また、架橋剤は一般的に大きな分子であり膜の中まで均質に含浸させることが困難で、均質な架橋膜を得ることが困難であるという問題があった。
架橋含フッ素電解質膜の製法として、〜SOF型ディスパージョンに架橋剤を混合したものを、キャスト製膜後、加熱で架橋させる方法が知られている(例えば、特許文献7参照。)。しかしながら、〜SOF型ディスパージョンには、乳化剤や開始剤残渣が残っており、得られる膜の特性が劣化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−133031号公報
【特許文献2】特開昭54−107889号公報
【特許文献3】特開昭54−52690号公報
【特許文献4】特開昭61−276828号公報
【特許文献5】特開2000−188013号公報
【特許文献6】特開2002−53619号公報
【特許文献7】特開2003−128833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、酸・酸塩型基を有するポリマーからなり、基材に塗布又は多孔質材料に含浸したのち架橋することにより機械特性に優れ水分量による寸法変化が小さい架橋体を製造することができる液状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液状媒体と、架橋性官能基を有する架橋性含フッ素ポリマーとからなる含フッ素ポリマー液(A)からなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、
上記含フッ素ポリマー液(A)は、酸・酸塩型基、若しくは、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる粒子が液状分散媒に分散している含フッ素ポリマー液状分散液(AD)、又は、酸・酸塩型基若しくは酸・酸塩型基の前駆体を有する架橋性含フッ素ポリマー(PS)がフッ素系溶剤若しくはアルコール/水混合溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)であり、上記酸・酸塩型基は、スルホン酸基、カルボキシル基、−SONR、−SONR、−SO1/L、−COONR1011又は−COOM1/L(Rは、水素原子又はM1/Lを表し、Rは、アルキル基又はスルホニル含有基を表す。R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、同一若しくは異なり、水素原子又はアルキル基を表し、M、M及びMは、L価の金属を表す。上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。)であり、上記酸・酸塩型基の前駆体は、−SOF、−SONR2223(R22及びR23は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)又は加水分解してカルボキシル基に変換する有機基であることを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物である。
【0009】
本発明は、上記含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造することを特徴とするフッ素系架橋体製造方法である。
本発明は、上記含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋反応開始剤としてパーオキサイド化合物を用いて架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造することを特徴とするフッ素系架橋体製造方法である。後者のフッ素系架橋体製造方法において、上記含フッ素ポリマー液状組成物は、架橋性官能基がI又は−Brであり、架橋剤(B)として多官能不飽和化合物を有するものを用いることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、液状媒体と、架橋性官能基を有する架橋性含フッ素ポリマーとからなる含フッ素ポリマー液(A)からなるものである。
上記液状媒体は、後述の液状分散媒、又は、フッ素系溶剤若しくはアルコール/水混合溶剤である。
【0011】
上記含フッ素ポリマー液(A)は、酸・酸塩型基、若しくは、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる粒子が液状分散媒に分散している含フッ素ポリマー液状分散液(AD)、又は、酸・酸塩型基若しくは酸・酸塩型基の前駆体を有する架橋性含フッ素ポリマー(PS)がフッ素系溶剤若しくはアルコール/水混合溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)である。
【0012】
上記酸・酸塩型基は、スルホン酸基、カルボキシル基若しくは−SONHR(Rは、アルキル基又はスルホニル含有基を表す。)である酸基、又は、−SONR、−SO1/L、−SONM1/L、−COONR1011若しくは−COOM1/L(Rは、上記と同じ。R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、同一若しくは異なり、水素原子又はアルキル基を表し、M、M及びMは、L価の金属を表す。上記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。)である酸塩型基であり、上記酸・酸塩型基の前駆体は、−SOF、−SONR2223(R22及びR23は、同一又は異なって、アルキル基を表す。R23は、−R28SOF等の後述のものであってもよい。)又は加水分解してカルボキシル基に変換する有機基である。
上記Rにおけるスルホニル含有基は、スルホニル基を有する含フッ素アルキル基であり、例えば、末端に置換基を有していてもよい含フッ素アルキルスルホニル基等が挙げられ、上記含フッ素アルキルスルホニル基としては、例えば、−SO(Rは、含フッ素アルキレン基を表し、Zは、有機基を表す。)等が挙げられる。上記有機基としては、例えば、−SOF、−SOH、−SO1/Lが挙げられ、−SO(NR27SOSONR27SO−(kは、1以上の整数を表し、Rは、含フッ素アルキレン基を表す。R27は、アルキル基、水素又はL価の金属を表す。)のように無限につながっていてもよく、また、−SO(NR27SOSONR27SOF、−SO(NR27SOSONR27SOX(各式中、kは、1以上、100以下の整数を表す。R27及びRは、上記と同じ。Xは、水素又はL価の金属を表す。)等であってもよい。
【0013】
上記加水分解してカルボキシル基に変換する有機基は、−COOR12(R12は、アルキル基を表す。)又は−CONR2425(R24及びR25は、同一若しくは異なって、アルキル基又は水素原子を表す。)であることが好ましい。
上記R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R22、R23、R24、R25及びR27におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、なかでも、メチル基又はエチル基が好ましい。上記R23としては、例えば、−R28SOFや、−SO(NR29SOSONR29SO−(kは、1以上の整数を表し、Rは、含フッ素アルキレン基を表す。R28は、アルキレン基を表す。R29は、R22等と同様、アルキル基を表す。)のように無限につながっていてもよく、また、−SO(NR27SOSONR27SOF(kは、1以上、100以下の整数を表す。R27及びRは、上記と同じ。)等であってもよい。
【0014】
上記含フッ素ポリマー液(A)は、カルボキシル基、酸塩型基、若しくは、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる含フッ素ポリマー液状分散液(AD)、又は、カルボキシル基、酸塩型基若しくは酸・酸塩型基の前駆体を有する架橋性含フッ素ポリマー(PS)からなる含フッ素ポリマー溶液(AS)であることが好ましく、酸塩型基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる含フッ素ポリマー液状分散液(AD)であることがより好ましく、−SO1/L(Mは、上記と同じ。)を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)であることが更に好ましい。
【0015】
上記酸・酸塩型基、酸・酸塩型基の前駆体、及び、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基は、下記一般式(I)
−O−(CFCFY−O)−(CFY− (I)
(式中、Yは、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表されるフルオロエーテル側鎖に結合しているものであり、上記フルオロエーテル側鎖は、架橋性含フッ素ポリマーの主鎖中パーフルオロエチレン単位を構成している炭素原子にエーテル結合しているものであることが好ましい。上記パーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜3のものが好ましい。
【0016】
上記架橋性含フッ素ポリマーは、下記一般式(II)
CF=CF−O−(CFCFY−O)−(CFY−A (II)
(式中、Yは、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−COOM1/L又は加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM1/L、−NR1314又は−ONR15161718(R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルキル基若しくはスルホニル含有基を表す。M及びMは、L価の金属を表す。R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体を重合して得られる含フッ素ポリマー前駆体、又は、上記含フッ素ポリマー前駆体に由来するものであることが好ましい。
架橋性含フッ素ポリマーが含フッ素ポリマー前駆体である場合、上記一般式(II)における−SOX(Xは、−OM1/L、−NR1314又は−ONR15161718であり、Mは、上記と同じ。R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、上記と同じ(但し、該−SOXが、酸・酸塩型基に相当することとなるもの。)。)及び−COOM1/Lは、上記架橋性含フッ素ポリマーにおける酸・酸塩型基と同じである。
上記「含フッ素ポリマー前駆体に由来するもの」は、含フッ素ポリマー前駆体を後述するように水存在下で加水分解して得られたもの、又は、上記含フッ素ポリマー前駆体が有する上記一般式(II)におけるM若しくはM、又は、R13及び/若しくはR14としてのアルカリ金属又はスルホニル含有基におけるL価の金属を、他の金属その他の陽イオン等に交換し得られたものである。
【0017】
上記フルオロビニルエーテル誘導体は、上記一般式(II)におけるnが、0〜3の整数を表すものである。上記nは、0又は1であることが好ましい。上記一般式(II)におけるmは、1〜5の整数を表す。上記mは、2であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(II)におけるYは、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表し、n個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
上記一般式(II)におけるYは、好ましくは、フッ素原子又は塩素原子を表し、m個のYは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(II)において、Yは、トリフルオロメチル基であることが好ましく、Yは、フッ素原子であることがより好ましい。
【0019】
上記フルオロビニルエーテル誘導体は、上記一般式(II)におけるYが、トリフルオロメチル基であり、Yが、フッ素原子であり、nが、0又は1であり、mが、2であることが更に好ましい。
【0020】
上記含フッ素ポリマー前駆体は、上述したフルオロビニルエーテル誘導体と含フッ素エチレン性単量体とを重合して得られた2元以上の共重合体であることが好ましい。上記含フッ素ポリマー前駆体は上記2元以上の共重合体である場合、フルオロビニルエーテル誘導体と含フッ素エチレン性単量体との組成比は1:99から50:50が好ましく、5:95から30:70が更に好ましい。
上記含フッ素エチレン性単量体は、ビニル基を有するものであれば特に限定されず、上記フルオロビニルエーテル誘導体とは異なるものである。
【0021】
上記含フッ素エチレン性単量体としては、例えば、下記一般式
CF=CF−Rf
(式中、Rfは、フッ素原子、塩素原子、−Rf又は−ORfを表し、Rfは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表されるハロエチレン性モノマー、下記一般式
CHY=CFY
(式中、Yは、水素原子又はフッ素原子を表し、Yは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、−Rf又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜9のエーテル酸素を有していてもよい直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基を表す。)で表される水素含有フルオロエチレン性単量体等が挙げられる。
【0022】
上記含フッ素エチレン性単量体は、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CF=CFH、CH=CFH、CF=CFCF、及び、CF=CF−O−Rf(式中、Rfは、炭素数1〜9のフルオロアルキル基又は炭素数1〜9のフルオロポリエーテル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記フルオロビニルエーテルは、Rfの炭素数が1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0023】
上記含フッ素エチレン性単量体は、パーハロエチレン性単量体、特にパーフルオロエチレン性単量体であることが好ましく、CF=CFであることがより好ましい。上記含フッ素エチレン性単量体としては、1種又は2種以上を用いることができる。
上記架橋性含フッ素ポリマーは、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の従来公知の重合法により重合することができる。
上記架橋性含フッ素ポリマーは、シード重合体であってもよい。
【0024】
上記架橋性含フッ素ポリマーは、スルホン酸基若しくはカルボキシル基、又は、上記スルホン酸基若しくはカルボキシル基の塩を有するものである場合、上記含フッ素ポリマー前駆体が有する−SO(Xは、ハロゲン原子を表す。)又は−COZ(Zは、アルコキシル基を表す。)を水存在下で加水分解することにより得られたものであることが好ましい。
上記−COZにおけるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシル基が挙げられ、なかでも、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0025】
上記加水分解は、アルカリ、好ましくはアルカリ水溶液を添加することにより行う。上記アルカリとしては、加水分解に用いることがあるアルカリであればよく、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩等が挙げられ、上記水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
上記加水分解は、通常、常温〜130℃において、1分〜10時間行うものであり、例えば、上記含フッ素ポリマー前駆体が有する酸・酸塩型基の前駆体が−SOFである場合、80℃〜100℃において、10分〜5時間行うことが一般的である。
【0026】
上記架橋性含フッ素ポリマーは、架橋性官能基を有するものである。
上記架橋性官能基は、架橋反応に消費される基である。上記「架橋」は、橋かけ結合を形成することである。上記架橋性官能基としては、上述した酸・酸塩型基や、酸・酸塩型基の前駆体のほか、ヨード基〔−I〕、ブロモ基〔−Br〕、シアノ基、架橋性カルボキシル基、シアナト基、水酸基、パーフルオロビニル基、ハロカルボニル基等が挙げられる。
上述の酸・酸塩型基、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基、及び、酸・酸塩型基の前駆体は、架橋反応に消費され得る種類の官能基をも含むが、本明細書において、架橋反応に消費され得る種類の官能基であって、架橋反応に消費される基を上記架橋性官能基といい、架橋反応に消費されない官能基を上述の「酸・酸塩型基、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基、及び、酸・酸塩型基の前駆体」(以下、「非架橋性官能基」ということがある。)という。上記架橋反応に消費され得る種類の官能基としては、例えば、カルボキシル基等が挙げられる。
本明細書において、上記「架橋性カルボキシル基」は、架橋反応に消費されるカルボキシル基である点で、架橋反応に消費されず、後述する架橋処理後においても上述した酸基として残存するカルボキシル基とは概念的に区別すべきものである。本発明における架橋性含フッ素ポリマーが酸基としてのカルボキシル基と上記架橋性カルボキシル基とを併有する場合、通常、両カルボキシル基は合計で架橋剤(B)に対し過剰量存在するので後述の架橋処理によっても架橋反応に消費されないカルボキシル基が残存し、この残存したカルボキシル基が上述の酸基として機能し得る。本明細書において、上記架橋反応に消費されたカルボキシル基が上述の架橋性カルボキシル基であり、架橋反応に消費されずに残存したカルボキシル基が酸基としてのカルボキシル基である。
上記架橋性含フッ素ポリマーは、架橋反応条件等によるが、架橋反応後の当量重量〔EW〕が300〜5000となるものが好ましい。架橋反応後のEWのより好ましい下限は、500、より好ましい上限は、1500である。本明細書において、上記架橋反応後の当量重量〔EW〕は、上述の非架橋性官能基の量を表すものであり、架橋性官能基の量を表すものではない。
上記架橋性含フッ素ポリマーは、架橋反応後にゴムではなく樹脂として用いられるものが好ましい。
【0027】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上記架橋性官能基の種類や用いる架橋系にもよるが、上記含フッ素ポリマー液(A)と、更に架橋剤(B)とからなるものであることが好ましい。
上記架橋剤(B)は、例えば、上記架橋性官能基が架橋性カルボキシル基、シアノ基、−I、−Br等である場合、架橋剤(B)は用いなくても架橋することが可能である。例えば、上記架橋性官能基が−I又は−Brである場合、架橋剤(B)を用いなくとも架橋し得るものであるが、架橋剤(B)を用いて架橋を行ってもよい。
上記架橋剤(B)としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はシアノ基と反応可能なもの、特にオキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用されるものが挙げられる。上記オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤(B)としては、例えば、下記一般式(IV)
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、R19及びR20は、一方が−NHを示し、他方が−NH、−NH−Ph、−OH又は−SHを示す。Phは、フェニル基を表す。R21は、−SO−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基又は単結合手を表す。)で表されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、下記一般式(V)
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、R21は上記と同じ、R26
【0032】
【化3】

【0033】
又は
【0034】
【化4】

【0035】
を表す。)で表されるビスアミドラゾン系架橋剤、下記一般式(VI)又は下記一般式(VII)
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基を表す。)
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、pは1〜10の整数を示す。)で表されるビスアミドキシム系架橋剤等が挙げられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤又はビスジアミノフェニル系架橋剤等は従来ニトリル基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、含フッ素重合体が有するカルボキシル基及びアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
上記架橋剤(B)としては、また、複数個の3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基及び/若しくは3−アミノ−4−メルカプトフェニル基を有する化合物、又は下記一般式(III)
【0040】
【化7】

【0041】
(式中、R19、R20及びR21は上記と同じである。)で表される架橋剤(B1)、例えば、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス3,4−ジアミノフェニルメタン、ビス3,4−ジアミノフェニルエーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0042】
上記架橋剤(B)としては、また、ポリアミン化合物、ポリイソシアナート、ポリエポキシ化合物等が挙げられる。上記ポリアミン化合物としては、ヘミサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン;ポリアミン塩とグアジニン誘導体の併用等が挙げられる。上記ポリイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。上記ポリイソシアナート化合物は、プレポリマーや硬化温度を選択することができるブロック型であってもよい。上記架橋剤(B)としては、また、エポキシ化合物と、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩又は塩基性化合物との併用等が挙げられる。
【0043】
上記架橋剤(B)としては、上述した架橋性官能基がシアノ基又は架橋性カルボキシル基である場合、上記一般式(III)で表される架橋剤(B1)であることが好ましい。
【0044】
上記一般式(III)におけるR19及びR20は、両方とも−NHであるか、又は、一方が−NHであり他方が−NH−Phであることが好ましい。
【0045】
上記架橋剤(B)は、架橋性官能基が−I又は−Brである場合、多官能不飽和化合物であることが好ましい。
【0046】
上記多官能不飽和化合物としては、加熱や後述するパーオキサイド化合物の分解によって発生するヨウ素原子及び/又は臭素原子に起因する重合体ラジカルに対して反応活性を有するものであればよく、特に種類は限定されない。好ましい多官能不飽和化合物としては、例えば、各種のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート〔TMTPA〕、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート〔TAIC〕、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート等が挙げられる。なかでも、1分子あたりの架橋性官能基の保有数が3個以上のものが、架橋性含フッ素ポリマーの架橋しやすさの点で好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
【0047】
上記多官能不飽和化合物の使用量は、上記架橋性含フッ素ポリマー100質量部に対して0.05〜10質量部程度であり、好ましい下限は0.5質量部であり、好ましい上限は5質量部である。
【0048】
上記架橋剤(B)は、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が後述する含フッ素ポリマー溶液(AS)、含フッ素ポリマー液状分散液(AD)の何れの場合であっても、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物固形分の0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。
含フッ素ポリマー液状組成物固形分は、含フッ素ポリマー液状組成物100質量部に対して0.5〜50質量部であることが好ましい。
【0049】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、メタノール、エタノール、プロパノール及びテトラフルオロプロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール(C)とからなるものであることが好ましい。
上記アルコール(C)としては、テトラフルオロプロパノールがより好ましく、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールであることが更に好ましい。上記アルコール(C)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
上記アルコール(C)の添加量は、上記含フッ素ポリマー液(A)の10〜80容量%であることが好ましい。アルコール(C)を上記範囲の量で添加することにより、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物の表面張力を調整することができ、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を用いて後述の膜を形成する場合、均質な膜を得ることができる。
上記含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、上記アルコール(C)と、更に、上述の架橋剤(B)とからなるものであってもよい。
【0051】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、製膜補助剤(D)とからなるものが好ましい。製膜補助剤(D)を添加することにより、成膜性が著しく向上し、キャスティング法による薄膜の製造が容易となる。
【0052】
上記製膜補助剤(D)は、水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体であることが好ましい。100℃以下であると、通常、沸点が水と同じか水より低いので、架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる粒子が水性分散媒に分散している含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)に製膜補助剤(D)を配合したのち水分蒸発を行う方法により含フッ素ポリマー液状分散液(AD)を得る場合(オルガノゾル化)、上記製膜補助剤(D)を残存させつつ水系分散媒を除去することができない。300℃を超えると、得られる含フッ素ポリマー液状組成物を用いて形成される膜から製膜補助剤(D)を除去する必要がある場合、除去が困難となりやすい。上記製膜補助剤(D)の沸点の好ましい下限は、150℃であり、好ましい上限は、250℃である。
上記製膜補助剤(D)は、本発明における含フッ素ポリマー液(A)が含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)、又は、架橋性含フッ素ポリマーがアルコール/水混合溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)である場合、特に用いることが好ましい。
【0053】
上記製膜補助剤(D)は、上記酸・酸塩型基の前駆体が−SONR2223(R22及びR23は、上記と同じ。)、又は、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基である場合、本発明における含フッ素ポリマー液(A)のうち架橋性含フッ素ポリマー(PS)が−SOFを有するものであって、この架橋性含フッ素ポリマー(PS)がフッ素系溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)を除くものであるが、(1)リン酸エステル、(2)エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテル、及び/又は、(3)環状アミド若しくは環状アミド誘導体であることが好ましい。
【0054】
上記製膜補助剤(D)は、架橋性含フッ素ポリマー1質量部に対して0.1〜100質量部を配合するものであることが好ましい。0.1質量部未満であると、得られる含フッ素ポリマー液状組成物を用いて膜を形成する場合、造膜性が不充分であるおそれがある。100質量部を超えると、配合量に見合った効果が得られにくく、経済的に好ましくない。より好ましい下限は、0.5質量部であり、より好ましい上限は、20質量部である。
上記含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、上記製膜補助剤(D)と、更に、上述の架橋剤(B)とからなるものであってもよいし、含フッ素ポリマー液(A)と、上記架橋剤(B)と、更に、製膜補助剤(D)及びアルコール(C)とからなるものであってもよい。
【0055】
上記含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、活性物質(E)とからなるものであってもよい。
上記活性物質(E)としては、例えば、本発明のフッ素系架橋体製造方法について後述する触媒等が挙げられる。
上記含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、活性物質(E)と、架橋剤(B)、アルコール(C)及び製膜補助剤(D)よりなる群から選ばれる少なくとも1種とからなるものであってもよい。
【0056】
上記含フッ素ポリマー液(A)は、含フッ素ポリマー液状分散液(AD)であることが好ましく、上記含フッ素ポリマー液状分散液(AD)の固形分濃度は、2〜80質量%であることが好ましい。架橋剤(B)は、上述のように、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が含フッ素ポリマー液状分散液(AD)と更に架橋剤(B)とからなるものである場合、含フッ素ポリマー液状組成物固形分の0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0057】
上記含フッ素ポリマー液状分散液(AD)は、液状分散媒が水系分散媒である含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)であることが好ましく、上記水系分散媒は、水含有率が10〜100質量%であるものであることが好ましい。上記水系分散媒水含有率は、10質量%未満であると、分散性が悪化しやすく好ましくない。より好ましい下限は40質量%である。
【0058】
本明細書において、上記「水系分散媒」は、架橋性含フッ素ポリマー(PD)の分散媒であって、水を含むものである。上記水系分散媒としては、水からなるものであれば、水とともに更に水溶性の有機溶剤からなるものであってもよい。上記水系分散媒は、水系の分散体に通常用いられる界面活性剤、安定剤等の添加剤を有するものであってもよい。
上記含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)は、架橋性含フッ素ポリマーが酸・酸塩型基を有するものである場合、実質的に界面活性剤を含まないものであっても充分な分散安定性を有するものである。
【0059】
上記含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)は、架橋性含フッ素ポリマーを乳化重合によって得た場合、重合上がりの分散液そのものであってもよいし、重合上がりの分散液に含まれる架橋性含フッ素ポリマーが酸・酸塩型基の前駆体を有する含フッ素ポリマー前駆体である場合、上述の加水分解を経て得られたものであってもよい。
【0060】
上記含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)は、無機塩、低分子量不純物、ポリマーの超低分子量体等の除去を目的として、精製を行ったものであることが好ましい。上記精製の方法としては、例えば、限外ろ過等が挙げられる。
【0061】
上記含フッ素ポリマー液状分散液(AD)は、上記含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)に製膜補助剤(D)を配合したのち水分蒸発を行う方法により得られたいわゆるオルガノゾルであってもよい。
【0062】
上記含フッ素ポリマー液(A)は、含フッ素ポリマー溶液(AS)であってもよく、上記架橋性含フッ素ポリマー(PS)は、含フッ素ポリマー液状組成物の0.1〜10質量%であることが好ましい。架橋剤(B)は、上述のように、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物が含フッ素ポリマー液状分散液(AS)と更に架橋剤(B)とからなるものである場合、含フッ素ポリマー液状組成物固形分の0.1〜20質量%であることが好ましい。
上記含フッ素ポリマー溶液(AS)において架橋性ポリマー(PS)を溶解している液状媒体は、架橋性含フッ素ポリマー(PS)が酸・酸塩型基の前駆体を有するものである場合、フッ素系溶剤であることが好ましく、酸・酸塩型基を有するものである場合、アルコール/水混合溶剤であることが好ましい。
【0063】
上記フッ素系溶剤は、分子中にフッ素原子を有し、沸点が30〜150℃であるものである。上記フッ素系溶剤としては分子中にフッ素原子を有し、沸点が30〜150℃であるものであれば、芳香族、脂肪族の何れであってもよい。
上記フッ素系溶剤としては特に限定されず、例えば、クロロフルオロカーボン、パーフルオロベンゼン等が挙げられ、なかでも、下記一般式(VIII)
Cl(2a+2−b−c) (VIII)
(式中、aは、3〜6の整数であり、bは、0〜2の整数であり、cは、0〜4の整数である。)で表される鎖状クロロフルオロカーボン、又は、下記一般式(IX)
Cl(2a−b−c) (IX)
(式中、a、b及びcは、上記と同じ。)で表される脂環状クロロフルオロカーボンであることが好ましい。
【0064】
上記クロロフルオロカーボンとしては、上記一般式(VIII)及び一般式(IX)におけるbが0又は1、cが1又は2であるものであることが好ましく、CFCClFCClFCFとCClFCClFCFCFとの混合物、CFCFCHClとCClFCFCHClFとの混合物〔HCFC−225〕、又は、H(CFCFClであることがより好ましい。
上記クロロフルオロカーボンとしては、パーフルオロシクロブタンを用いることもできる。
【0065】
上記アルコール/水混合溶剤に用いるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
上記アルコール/水混合溶剤におけるアルコールの混合比率としては、10:90〜90:10(アルコール:水、容量%)であることが好ましい。
上記アルコール/水混合溶剤に用いるアルコールは、上述した製膜性を向上させるアルコール(C)と同じものを用いることができるが、架橋性含フッ素ポリマー(PS)の溶解に必須である点で、必須ではないアルコール(C)とは区別すべき概念である。
【0066】
上記含フッ素ポリマー溶液(AS)における架橋性含フッ素ポリマー(PS)の溶解処理は、フッ素系溶媒又はアルコール/水混合溶剤の沸点以上、好ましくは、120℃以上、より好ましくは、150℃以上で行うものである。上記溶解処理は、従って、耐圧容器内で行うことが好ましい。上記溶解処理の時間は、溶解処理の温度にもよるが、通常、10分〜300時間である。
上記沸点及び溶解処理の温度は、常温常圧下における値である。本明細書において、上記「常温」は、通常の意味での常温であり、通常、20〜30℃である。本明細書において、上記「常圧」は、通常の意味での常圧であり、通常、1013ヘクトパスカル(=1atm)である。
【0067】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上記含フッ素ポリマー液状分散液(AD)又は含フッ素ポリマー溶液(AS)の作製のために加熱する際、液温を一旦常温に戻した後に架橋剤(B)を添加して調製することができる。本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、このような手順で調製することにより、上記加熱時に架橋剤(B)を添加すると架橋反応が進行してしまい目的とする含フッ素ポリマー液状組成物が得られないという問題を生じない。
【0068】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、プロトン伝導性材料、特に、プロトン伝導性膜用材料として好適に用いることができる。
【0069】
本発明のフッ素系架橋体製造方法は、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造するものである。
上記フッ素系架橋体は、上記含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋処理を行わずに得られた膜に比べて、機械特性を改善し、水分量による寸法変化を小さくすることができ、また、その結果、耐久性を向上したものとすることもできる。
本発明のフッ素系架橋体製造方法は、本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を用いることにより、通常、工業的に効率よく安定してフッ素系架橋体を製造することができるものである。
【0070】
上記基材としては特に限定されず、例えば、上述した多孔性支持体、樹脂成形体、金属板等が挙げられ、燃料電池等に用いられる電解質膜、多孔性カーボン電極等が好ましい。
上記多孔質材料は、多孔構造を有するものであれば、有機材料又は無機材料の何れでもよく、例えば、グラスウール、セラミック、アルミナ、ポリテトラフルオロエチレンウェブ、ポリテトラフルオロエチレン成形体延伸多孔フィルム、カーボン、各種ポリマーからなるもの等が挙げられる。
【0071】
上記液状溶媒は、通常、常温下及び/又は加熱下で乾燥することにより除去することができる。上記含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸して得られる膜は、上記乾燥を常温下のみで行うと、水等に容易に溶解することがあるので、少なくとも加熱下で乾燥を行うことが好ましい。上記液状媒体の除去における「加熱下」は、通常、80〜400℃であり、200℃以上であることが好ましい。
【0072】
上記フッ素系架橋体は、基材又は多孔質材料を含むものであってもよいが、基材に塗布したものである場合、水中に浸漬する等して基材の表面から剥離し、基材を含まない薄膜として得ることもできる。
【0073】
上記架橋処理は、高エネルギーを用いた架橋処理であることが好ましい。
上記高エネルギーを用いた架橋処理は、加熱、放射線照射、電子線照射又は光照射により行うことが好ましく、なかでも、装置の入手のしやすさや取り扱いの容易さ等の点で、加熱により行うことがより好ましい。
上記架橋処理における加熱は、通常、オーブン、又は、プレス加工により、100〜400℃において、1分〜10時間行う。
【0074】
上記架橋処理は、架橋反応開始剤として後述のパーオキサイド化合物を用いる場合、実質的に酸素の不存在下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下で行うことがより好ましい。酸素存在下ではパーオキサイド化合物が開裂して生じるラジカルが酸素に捕捉され架橋の進行の妨げとなりやすい。
【0075】
本発明のフッ素系架橋体製造方法は、また、上記本発明の含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋反応開始剤としてパーオキサイド化合物を用いて架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造するものであってもよい。
上記含フッ素ポリマー液状組成物は、架橋反応開始剤としてパーオキサイド化合物を用いて架橋処理を行う場合、架橋性官能基が−I又は−Brであり、架橋剤(B)として多官能不飽和化合物を用いたものが好ましい。上記多官能不飽和化合物としては、トリアリルイソシアネートが好ましい。
【0076】
上記パーオキサイド化合物としては、液状媒体の沸点以上、架橋性含フッ素ポリマーの分解温度以下で適当な分解速度を有し、容易に揮発しない程度の蒸発温度を有するものであることが好ましく、このようなものとしては例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジ−t−ブチルパーオキシアルカンが挙げられる。
【0077】
上記パーオキサイド化合物の配合量は、含フッ素ポリマー100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましい。含フッ素ポリマー100質量部に対し、0.001質量部未満であると、架橋反応が不充分となる場合がある。含フッ素ポリマー100質量部に対し、5質量部を超えると、パーオキサイドの残渣が多くなり強度が低下する場合がある。上記パーオキサイド化合物の配合量は、含フッ素ポリマー100質量部に対し、より好ましい下限が0.01質量部であり、より好ましい上限が1質量部である。
【0078】
上記塗布又は含浸は、比較的低温にて行った後、昇温して架橋処理を行うことが望ましい。上記塗布又は含浸は、それぞれ上記架橋処理と交互に繰り返し行ってもよい。
【0079】
上記フッ素系架橋体は特に限定されないが、例えば、プロトン伝導性、特に、電解質膜、イオン交換膜等として用いることができる。
上記フッ素系架橋体は、電解質膜等として使用する場合、膜厚を5〜200μmにすることができる。上記膜厚の好ましい下限は、10μmであり、上記膜厚の好ましい上限は50μmである。
上記フッ素系架橋体は、電解質膜等として使用する場合、長時間含浸しても、膜膨張率が低く、例えば、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)スルホニルクロライド単位を18モル%有する架橋性含フッ素ポリマーを架橋してなるフッ素系架橋体は、約15時間、水性媒体に含浸しても膜膨張率が該含浸前の通常10体積%以下となる。
上記フッ素系架橋体は特に限定されないが、例えば、固体高分子型燃料電池の電解質膜、リチウム電池用膜、食塩電解用膜、水電解用膜、ハロゲン化水素酸電解用膜、酸素濃縮器用膜、湿度センサー用膜、ガスセンサー用膜等に用いることができる。
【0080】
本発明のフッ素系架橋体製造方法により得られるフッ素系架橋体は、活性物質(E)を含有する活性物質固定架橋体を含むものであってもよい。
【0081】
上記活性物質(E)としては、上記活性物質固定架橋体において活性を有し得るものであれば特に限定されず、本発明の活性物質固定架橋体の目的に応じて適宜選択されるが、例えば、触媒を好適に用いることができる。
【0082】
上記触媒としては、電極触媒として通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、白金、ルテニウム等を含有する金属;通常1種類以上の金属からなる中心金属をもつ有機金属錯体であって、その中心金属の少なくとも1つが白金又はルテニウムである有機金属錯体等が挙げられる。上記白金、ルテニウム等を含有する金属としては、ルテニウムを含有する金属、例えば、ルテニウム単体等であってもよいが、白金を含有する金属が好ましく、上記白金を含有する金属としては特に限定されず、例えば、白金の単体(白金黒);白金−ルテニウム合金等が挙げられる。上記触媒は、通常、シリカ、アルミナ、カーボン等の担体上に担持させて用いる。
【0083】
上記活性物質固定架橋体は、通常、固体高分子電解質型燃料電池を構成する電極等の構成成分を含むものであってよく、固体高分子電解質型燃料電池用電極体であることが好ましい。
【0084】
上記フッ素系架橋体は、固体高分子電解質型燃料電池用電極体と電解質膜とが接合してなる膜・電極接合体〔membrane electrode assembly;MEA〕として用いることができる。
【発明の効果】
【0085】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、上述の構成よりなるので、機械特性及び耐久性に優れ水分量による寸法変化の小さい架橋体を工業的に効率よく安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例1
内容積500mlのSUS製オートクレーブへ、溶剤としてパーフルオロシクロブタン227.5g、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)スルホニルフルオライド(PFSF,CF=CFOCFCFSOF)を168.2g、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(CNVE)を16.1g仕込み、脱気を行った。800rpmで攪拌しながら、温度を30℃の条件で、テトラフルオロエチレン〔TFE〕を全圧0.33MPaまで圧入して、開始剤ジ(ω−ヒドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液3.56gを圧入して重合反応を開始した。反応中は系外よりTFEを導入し、圧力を一定に保持させ、また、反応で消費されたPFSFを断続的に合計7.0g圧入した。2時間後に未反応のTFEを系外に排出し、重合反応を停止させた。系内の攪拌状態は良好であった。重合反応終了後、クロロホルムを250ml投入し、30分間攪拌させた。次に、遠心分離器を用いて固液分離し、その固形分にクロロホルムを250ml投入し、30分間攪拌させた。この操作を3回行い、ポリマ−を洗浄した。次に、この洗浄ポリマ−を120℃真空下で残留クロロホルムを除去し、21.8gの共重合体aを得た。得られた共重合体aの300℃溶融NMRから推定されるPFSFの含有率は、16.2モル%であり、CNVEの含有率は、1.1モル%であった。
【0088】
得られた共重合体a 4gにフッ素系溶剤としてH(CFCl 400mlを加えて容積600mlのSUS製耐圧容器に導入した。150℃で12時間保った後取り出すと無色透明の溶液が得られた。得られた溶液にジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンスのポリマー・ケミストリー編、Vol.20、2381〜2393頁(1982年)に記載の方法で合成した架橋剤である2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(AFTA−Ph)を32mg混合した。得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕多孔膜(ダイキン工業社製)に含浸し、30分風乾した後、80〜100℃に設定したオーブンで30分間乾燥し、塗膜を形成した。さらに、その後、200℃で10分間焼成を行ない、純水中に浸漬してガラス板から薄膜を剥離した。得られた薄膜は、膜厚15μmであった。
【0089】
実施例2
氷冷した300ml内容積の撹拌式オートクレーブに150mlの純水、3gのパーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)スルホニルフルオライド(PFSF、CF=CFOCFCFSOF)37g、I(CFI 0.18g、過硫酸アンモニウム60mgを入れ、内部空間をテトラフルオロエチレン〔TFE〕で充分置換した後、TFEで0.2MPaに加圧し、速やかに系内温度を60℃に昇温し、TFEを追加供給して圧力を0.8MPaとして重合を開始した。圧力が低下するので0.8〜0.75MPaになるようにTFEを追加供給して反応を継続し、6時間の後に20℃以下に急冷、未反応のTFEを放圧して重合を停止した。わずかに白濁した透明な含フッ素ポリマー水性分散液、240gを得た。
得られた含フッ素ポリマー水性分散液(BDA−1)の一部を硝酸で凝析後、水洗・乾燥して得られる架橋性含フッ素ポリマーのヨウ素含有量は0.1%で、300℃溶融NMRから推定されるPFSFの含有率は、18.5モル%であった。
得られた含フッ素ポリマー水性分散液50mlを純水を用いて2倍に希釈し、容積200mlのビーカー中で攪拌し、温度を55℃にして、10質量%の水酸化カリウム水溶液を滴下しながらpHを10以上に保持して、含フッ素ポリマー前駆体が有する−SOFの加水分解を行った。約3時間後にpHの低下がみられなくなったが、加水分解を更に2時間継続し、停止した。この間、含フッ素ポリマーの析出は目視により確認されなかった。得られた反応液を、Centriprep YM−10(アミコン社製)を用いて、遠心式限外濾過法により低分子物質の除去及び含フッ素ポリマーの精製濃縮を行った。得られた含フッ素ポリマー分散体は、含フッ素ポリマー濃度が32質量%であった。得られた含フッ素ポリマー水性分散体10mlを撹拌しながら、リン酸トリエチル12mlとイソプロパノール5ml、パーヘキサ25B(日油社製)50mg、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成社製)150mgとを配合した。得られた含フッ素ポリマー分散体組成物をガラス板上に塗布して、30分風乾させた後、80℃に設定したオーブンで30分間乾燥し、塗膜を形成した。さらにその後、塗膜のついたガラス板をアルミ箔で封止し、170℃で10分間焼成を行ない、冷却後アルミ箔から取り出し、純水中に浸漬してガラス板から薄膜を剥離し、すぐに水から取り出し室温で風乾させた。得られた薄膜は、膜厚15μmであった。得られた薄膜を室温の純水中に15時間浸漬したところ、膜の膨潤率(体積比)は10%以下であった。
【0090】
比較例1
パーヘキサ25BとTAICを入れないこと以外は実施例2と同様の操作をおこなったところ、膜の膨潤率は20%であった。
【0091】
実施例3
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)スルホニルフルオライド(PFSF,CF=CFOCFCFSOF)を49gとした以外は、実施例2と同様におこなったところ、300℃溶融NMRから推定されるPFSFの含有率は、23.4モル%であり、膜の膨潤率は160%であった。
【0092】
比較例2
パーヘキサ25BとTAICを入れないこと以外は実施例3と同様の操作をおこなったところ、得られた薄膜を室温の純水中に15時間浸漬すると、膜は水に溶解した。
【0093】
実施例4
実施例3の、遠心式限外濾過法により低分子物質の除去及び精製濃縮を行った含フッ素ポリマー分散体を50ml、純水100ml、過硫酸アンモニウム20mgを同じオートクレーブに入れ、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕ガスで反応容器を充分置換した後、4℃でHFPガスを20g、TFEで1MPaに加圧したのち60℃に昇温し、TFEとHFPの共重合体をブロック重合した。圧力が初期の1.6MPaから5時間後に1.1MPaまで低下した段階で20℃以下に降温し、放圧することにより165mlの含フッ素ポリマー水性分散液を得た。得られた反応液をさらにCentriprep YM−10(アミコン社製)を用いて、遠心式限外濾過法により低分子物質の除去及び含フッ素ポリマーの精製濃縮を行った。得られた含フッ素ポリマー水性分散体10mlを撹拌しながら、リン酸トリエチル12mlとイソプロパノール5ml、パーヘキサ25B(日本油脂社製)50mg、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成社製)150mgとを配合した。得られた含フッ素ポリマー分散体組成物をガラス板上に塗布して、30分風乾させた後、80℃に設定したオーブンで30分間乾燥し、塗膜を形成した。さらにその後、塗膜のついたガラス板をアルミ箔で封止し、170℃で10分間焼成を行ない、さらに295℃で5分間加熱した後、冷却してアルミ箔から取り出し、純水中に浸漬してガラス板から薄膜を剥離し、すぐに水から取り出し室温で風乾させた。得られた薄膜は、膜厚15μmであった。得られた薄膜を室温の純水中に15時間浸漬したところ、膜の膨潤率は0であった。得られた膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、870g/当量であった。
【0094】
実施例5
I(CFIに代えてCF=CFOCFCFIを2g使用したほかは実施例3同様に行ったところ、300℃溶融NMRから推定されるPFSFの含有率は、23.0モル%であり、膜の膨潤率は5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の含フッ素ポリマー液状組成物は、例えば、電解質膜等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒体と、架橋性官能基を有する架橋性含フッ素ポリマーとからなる含フッ素ポリマー液(A)からなる含フッ素ポリマー液状組成物であって、
前記含フッ素ポリマー液(A)は、酸・酸塩型基、若しくは、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を有する架橋性含フッ素ポリマー(PD)からなる粒子が液状分散媒に分散している含フッ素ポリマー液状分散液(AD)、又は、酸・酸塩型基若しくは酸・酸塩型基の前駆体を有する架橋性含フッ素ポリマー(PS)がフッ素系溶剤若しくはアルコール/水混合溶剤に溶解してなる含フッ素ポリマー溶液(AS)であり、
前記酸・酸塩型基は、スルホン酸基、カルボキシル基、−SONR、−SONR、−SO1/L、−COONR1011又は−COOM1/L(Rは、水素原子又はM1/Lを表し、Rは、アルキル基又はスルホニル含有基を表す。R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、同一若しくは異なり、水素原子又はアルキル基を表し、M、M及びMは、L価の金属を表す。前記L価の金属は、周期表の1族、2族、4族、8族、11族、12族又は13族に属する金属である。)であり、
前記酸・酸塩型基の前駆体は、−SOF、−SONR2223(R22及びR23は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)又は加水分解してカルボキシル基に変換する有機基である
ことを特徴とする含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項2】
酸・酸塩型基、酸・酸塩型基の前駆体、及び、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基は、下記一般式(I)
−O−(CFCFY−O)−(CFY− (I)
(式中、Yは、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表されるフルオロエーテル側鎖に結合しているものであり、
前記フルオロエーテル側鎖は、架橋性含フッ素ポリマーの主鎖中パーフルオロエチレン単位を構成している炭素原子にエーテル結合しているものである請求項1記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項3】
架橋性含フッ素ポリマーは、下記一般式(II)
CF=CF−O−(CFCFY−O)−(CFY−A (II)
(式中、Yは、フッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。nは、0〜3の整数を表す。n個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Yは、フッ素原子又は塩素原子を表す。mは、1〜5の整数を表す。m個のYは、同一であってもよいし異なっていてもよい。Aは、−SOX、−COOM1/L又は加水分解してカルボキシル基に変換する有機基を表す。Xは、ハロゲン原子、−OM1/L、−NR1314又は−ONR15161718(R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属、アルキル基若しくはスルホニル含有基を表す。M及びMは、L価の金属を表す。R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテル誘導体を重合して得られる含フッ素ポリマー前駆体、又は、前記含フッ素ポリマー前駆体に由来するものである請求項1又は2記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項4】
含フッ素ポリマー前駆体は、フルオロビニルエーテル誘導体と含フッ素エチレン性単量体とを重合して得られた2元以上の共重合体である請求項3記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項5】
は、トリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子であり、nは、0又は1であり、mは、2である請求項3又は4記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項6】
加水分解してカルボキシル基に変換する有機基は、−COOR12(R12は、アルキル基を表す。)又は−CONR2425(R24及びR25は、同一若しくは異なって、アルキル基又は水素原子を表す。)である請求項1、2、3、4又は5記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項7】
架橋性官能基は、シアノ基又は架橋性カルボキシル基であり、
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に架橋剤(B)とからなるものであり、
前記架橋剤(B)は、下記一般式(III)
【化1】

(式中、R19及びR20は、一方が−NHを示し、他方が−NH、−NH−Ph、−OH又は−SHを示す。Phは、フェニル基を示す。R21は、−SO−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基又は単結合手を示す。)で表される架橋剤(B1)である請求項1、2、3、4、5又は6記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項8】
19及びR20は、両方とも−NHであるか、又は、一方が−NHであり他方が−NH−Phである請求項7記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項9】
架橋性官能基は、−I又は−Brであり、
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に架橋剤(B)とからなるものであり、
前記架橋剤(B)は、多官能不飽和化合物である請求項1、2、3、4、5又は6記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項10】
多官能不飽和化合物は、トリアリルイソシアヌレートである請求項9記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項11】
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、メタノール、エタノール、プロパノール及びテトラフルオロプロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール(C)とからなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項12】
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、製膜補助剤(D)とからなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の含フッ素ポリマー液状組成物であって、
前記製膜補助剤(D)は、水と相溶性があり沸点が100℃を超え、300℃以下である有機液体である含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項13】
酸・酸塩型基の前駆体は、−SONR2223(R22及びR23は、前記と同じ。)、又は、加水分解してカルボキシル基に変換する有機基であり、
製膜補助剤(D)は、(1)リン酸エステル、(2)エチレンオキシドオリゴマーのモノヒドロキシエーテル、及び/又は、(3)環状アミド若しくは環状アミド誘導体である請求項12記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項14】
含フッ素ポリマー液状組成物は、含フッ素ポリマー液(A)と、更に、活性物質(E)とからなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項15】
架橋性含フッ素ポリマーは、スルホン酸基若しくはカルボキシル基、又は、前記スルホン酸基若しくはカルボキシル基の塩を有するものであり、
含フッ素ポリマー前駆体が有する−SO(Xは、ハロゲン原子を表す。)又は−COZ(Zは、アルコキシル基を表す。)を水存在下で加水分解することにより得られたものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項16】
含フッ素ポリマー液(A)は、含フッ素ポリマー液状分散液(AD)であり、
前記含フッ素ポリマー液状分散液(AD)の固形分濃度は、2〜80質量%である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項17】
含フッ素ポリマー液状分散液(AD)は、液状分散媒が水系分散媒である含フッ素ポリマー水性分散液(ADA)であり、
前記水系分散媒は、水含有率が10〜100質量%であるものである請求項16記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項18】
含フッ素ポリマー液(A)は、含フッ素ポリマー溶液(AS)であり、
前記架橋性含フッ素ポリマー(PS)は、含フッ素ポリマー液状組成物の0.1〜10質量%である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の含フッ素ポリマー液状組成物。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造する
ことを特徴とするフッ素系架橋体製造方法。
【請求項20】
請求項9又は10記載の含フッ素ポリマー液状組成物を基材に塗布又は多孔質材料に含浸させたのち液状媒体を除去し架橋反応開始剤としてパーオキサイド化合物を用いて架橋処理を行うことによりフッ素系架橋体を製造する
ことを特徴とするフッ素系架橋体製造方法。
【請求項21】
架橋処理は、高エネルギーを用いた架橋処理である請求項19又は20記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項22】
高エネルギーを用いた架橋処理は、加熱、放射線照射、電子線照射又は光照射により行うものである請求項21記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項23】
フッ素系架橋体は、活性物質(E)を含有する活性物質固定架橋体を含むものである請求項19、20、21又は22記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項24】
活性物質(E)は、触媒である請求項23記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項25】
触媒は、白金を含有する金属である請求項24記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項26】
活性物質固定架橋体は、固体高分子電解質型燃料電池用電極体である請求項23、24又は25記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項27】
フッ素系架橋体は、電解質膜である請求項19、20、21又は22記載のフッ素系架橋体製造方法。
【請求項28】
フッ素系架橋体は、固体高分子電解質型燃料電池用電極体と電解質膜とが接合してなる膜・電極接合体〔membrane electrode assembly;MEA〕である請求項23、24又は25記載のフッ素系架橋体製造方法。

【公開番号】特開2010−180408(P2010−180408A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50980(P2010−50980)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2005−515951(P2005−515951)の分割
【原出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】