説明

含フッ素共重合体及びその用途

【課題】耐熱性、耐薬品性、耐候性、耐ストレスクラック性に優れ、かつ接着性に優れる含フッ素共重合体及びその積層体、被覆物品の提供。
【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、CF=CFOCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)、CF=CFOCF及び/又はCF=CFOCFCFに基づく繰り返し単位(c)、ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)、繰り返し単位(d)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が75〜99.79モル%であり、繰り返し単位(b)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(d)が0.01〜5.0モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm/秒である含フッ素共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素重合体は、半導体産業や自動車産業等の種々の分野で使用されている。
【0003】
含フッ素重合体は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性等に優れるものの、他材料との接着性が充分でない。例えば、合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等と接着させるために、含フッ素重合体の表面をコロナ放電処理やナトリウムエッチング処理等を行なった上に、接着剤を塗布して接着させる方法等が用いられる。このような接着方法は、工程が煩雑で、生産性が低く、より簡易な方法で他材料と接着する含フッ素重合体の開発が要請されている。
【0004】
金属基材の表面に含フッ素重合体の被膜を形成する方法としては、あらかじめサンドブラスト等で表面に凹凸形状を形成し、プライマーを塗布し、その上に含フッ素重合体の粒子を付着させ、ついで含フッ素重合体の融点以上の温度で溶融する方法等が挙げられる。この場合にも、コスト低減、生産性の向上の観点から、プライマーが不要で、金属等との接着性に優れるフッ素系重合体の開発が要請されている。
【0005】
近年、塗装ロボット用塗料配管、半導体製造装置用薬液配管、燃料ホース等の材料として、含フッ素重合体とポリアミドとの積層体が検討されている。該用途においては含フッ素重合体の層とポリアミドの層とが強固に接着する必要がある。そこで、含フッ素重合体のチューブの表面を、薬液処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の方法により表面処理し、該表面に必要に応じて接着剤を塗布した後、含フッ素重合体チューブの外側にポリアミドを押出し成形し積層して、含フッ素重合体の層とポリアミドの層との接着性を向上する方法等が用いられる。しかし、この方法は、工程が煩雑で、生産性が低いことから、含フッ素重合体の層の表面処理を必要とせずに、層間の接着性に優れる積層体を成形できる含フッ素重合体の開発が要請されている。
【0006】
そのような含フッ素重合体として、特許文献1には、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位/無水イタコン酸に基づく繰り返し単位を含有する共重合体が記載されている。しかし、該テトラフルオロエチレン共重合体は、300℃という高温領域での耐熱性が十分ではなかった。
【0007】
特許文献2には、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物に基づく繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体が開示されている。該含フッ素共重合体は、他材料との接着性は向上するが、柔軟性に乏しく、塗装ロボット用塗料配管、燃料ホース等の材料として耐ストレスクラック性等の機械的強度が充分でなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−277689号公報
【特許文献2】特開2006−152234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、耐熱性、耐薬品性、耐侯性、耐ストレスクラック性に優れ、かつ熱可塑性樹脂や基材との接着性に優れる含フッ素共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、CF=CFOCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)、CF=CFOCF及び/又はCF=CFOCFCFに基づく繰り返し単位(c)、ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)、繰り返し単位(d)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が75〜99.79モル%であり、繰り返し単位(b)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(d)が0.01〜5.0モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体を提供する。
【0011】
また、本発明は、該含フッ素共重合体の層と該含フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂の層とが直接積層されてなる積層体、及び、該含フッ素共重合体で基材の表面が被覆されてなる被覆物品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素共重合体は、樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等との接着性に優れ、耐熱性、耐薬品性、耐ストレスクラック性に優れる。
【0013】
また、本発明の含フッ素共重合体は、含フッ素重合体以外の熱可塑性樹脂との共押出し成形性に優れる。得られた含フッ素共重合体の層と該熱可塑性樹脂の層とが直接積層されてなる積層体は、層間接着性に優れる。
【0014】
本発明の含フッ素共重合体は、樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等の基材に、プライマーを使用することなく、含フッ素共重合体の被膜を形成でき、基材との接着性に優れる被覆物品を与える。該被覆物品は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、CF=CFOCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)、CF=CFOCF及び/又はCF=CFOCFCFに基づく繰り返し単位(c)、ジカルボン酸無水物基を有する炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有する。
【0016】
以下、CF=CFOCFCFCFをPPVE、CF=CFOCFCFをPEVE、CF=CFOCFをPMVE、という。
【0017】
前記、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)、繰り返し単位(d)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が75〜99.79モル%であり、繰り返し単位(b)が0.1〜20.0モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(b)が0.1〜10.0モル%である。
【0018】
好ましくは繰り返し単位(a)が85〜98.97モル%、繰り返し単位(b)が0.5〜7モル%であり、繰り返し単位(c)が0.5〜7モル%、繰り返し単位(d)が0.03〜1モル%であり、より好ましくは繰り返し単位(a)が89.5〜97.97モル%、繰り返し単位(b)が1.0〜5モル%であり、繰り返し単位(c)が1.0〜5モル%であり、繰り返し単位(d)が0.03〜0.5モル%である。繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れ、成形性や耐ストレスクラック性等の機械物性に優れる。
さらに、繰り返し単位(d)のモル%がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、該フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂や基材との接着性に優れる。
【0019】
本発明において「ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマー」とは、ジカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)と重合性不飽和基を有する化合物であり、脂肪族ジカルボン酸無水物や炭化水素環を有するジカルボン酸の無水物などが挙げられる。また、この重合性炭化水素モノマーにおける炭素原子に結合した水素原子の一部は、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基その他の置換基に置換されていてもよい。
【0020】
本発明において好ましい上記重合性炭化水素モノマーは、炭化水素環を有するジカルボン酸の無水物である。炭化水素環は炭素原子のみからなる環であり、炭化水素環は、単環、縮合多環、有橋多環、集合多環などのいずれであってもよく、脂環であっても芳香環であってもよい。重合性不飽和基は環を構成する炭素原子間に存在していてもよく、環外の炭素原子と環を構成する炭素原子間又は環外の炭素原子間に存在していてもよい。ジカルボン酸無水物基の2つの結合手はそれぞれ環を構成する炭素原子や環外の炭素原子に結合する。炭化水素環としては単環、縮合多環又は有橋多環の構造を有する脂環が好ましい。さらに、ジカルボン酸無水物基は脂環を構成する2つの炭素原子に結合していることが好ましく、特に脂環を構成しかつ隣接した2つの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
上記ジカルボン酸無水物基を有する重合性環状炭化水素モノマーの具体例としては、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、NAHという。)、下式(1)〜(3)で表される酸無水物等が挙げられる。好ましくは、NAHである。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
本発明の含フッ素共重合体が、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)、繰り返し単位(d)に加えて、その他のモノマーに基く繰り返し単位(e)を含有することも好ましい。
【0026】
該その他のモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFという。)、トリフルオロエチレン、CF=CFORf2SO(Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、Xはハロゲン原子又は水酸基。)、CF=CFORf2CO(ここで、Rf2は前記と同じ、Xは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基。)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2。)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2〜10の整数。)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2〜4のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。その他のモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しれもよい。
【0027】
CH=CX(CFとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH等が挙げられる。好ましくは、CH=CH(CFF又はCH=CH(CFFである。
その他のモノマーとして、好ましくは、HFP、VdF、CH=CX(CF、エチレン、プロピレン及び酢酸ビニルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、HFP、エチレン及びCH=CX(CFからなる群から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、HFPである。
【0028】
本発明の含フッ素共重合体の好ましい具体例としては、TFE/PPVE/PMVE/NAH共重合体、TFE/PPVE/PEVE/NAH共重合体、TFE/HFP/PPVE/PMVE/NAH共重合体、TFE/HFP/PPVE/PEVE/NAH共重合体等が挙げられる。
【0029】
本発明の含フッ素共重合体の融点は、150〜320℃が好ましく、200〜310℃がより好ましい。この範囲にあると熱可塑性樹脂との溶融共押出し成形性に優れる。融点は、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)繰り返し単位(c)、及び繰り返し単位(d)の含有割合を前記範囲内で適宜選定して調節することが好ましい。
【0030】
本発明の含フッ素共重合体の高分子末端基として、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物残基等の接着性官能基を有すると、熱可塑性樹脂や基材との接着性に優れるので好ましい。該接着性官能基を有する高分子末端基は、含フッ素共重合体の製造時に、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入することが好ましい。
【0031】
本発明の含フッ素共重合体の380℃における容量流速(以下、Q値という。)は、0.1〜1000mm/秒である。Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。本発明におけるQ値は、島津製作所製フローテスタを用いて、含フッ素共重合体の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。Q値が小さすぎると押出し成形が困難となり、大きすぎると含フッ素共重合体の耐ストレスクラック性が充分でない。本発明の含フッ素共重合体のQ値は5〜500mm/秒が好ましく、10〜200mm/秒がより好ましい。
【0032】
本発明における含フッ素共重合体のMIT折り曲げ寿命は100万回以上である。ここ
で、MIT折り曲げ寿命とは、ASTM D2176に準じて実施される折り曲げ試験に
おいて、試料が破断するまでの折り曲げ回数である。この値が大きいほど、耐ストレスク
ラック性に優れることを示す。好ましくは200万回以上、より好ましくは300万回以上である。
【0033】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法は特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、フッ化炭化水素エーテル、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
【0034】
ラジカル重合開始剤としては、その半減期が10時間である温度が0℃〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。その具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0035】
本発明において、含フッ素共重合体のQ値を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。含フッ素共重合体の高分子末端に接着性官能基を導入するための連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0036】
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
【0037】
重合中のジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーの濃度は、全モノマーに対して0.01〜5モル%が好ましく、0.05〜3モル%がより好ましく、0.05〜1モル%が最も好ましい。ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。前記範囲にあると製造時の重合速度が低下せず、かつ、含フッ素共重合体は接着性に優れる。重合中、ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーが重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーの濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
【0038】
本発明の積層体は、含フッ素共重合体の層と該フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂の層とが直接積層されてなる。含フッ素共重合体と該熱可塑性樹脂との積層は、溶融成形法を用いることが好ましく、共押出し成形法が生産性に優れるのでより好ましい。共押出し成形法は、フィルム、チューブ等の形状の2層以上の積層体を得る方法である。2機以上の押出機の吐出口から出てくる溶融物は、溶融状態で接触しつつダイを通り積層体に成形される。共押出し成形のために、含フッ素共重合体と該熱可塑性樹脂とは、互いに近い成形温度を有することが好ましい。押出し温度は、含フッ素共重合体及び該熱可塑性樹脂の融点及び分解温度等の観点より決定される。スクリュー温度は100〜400℃が好ましく、ダイ温度は150〜400℃が好ましい。スクリュー回転数は特に限定されないが10〜200回転/分が好ましい。含フッ素共重合体の押出し機内の滞留時間は1〜20分が好ましい。
【0039】
本発明の積層体における、含フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)等のポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレエート等が挙げられる。
【0040】
本発明の被覆物品は、含フッ素共重合体で基材の表面が被覆されてなる。基材としては、前記含フッ素重合体以外の熱可塑性樹脂等の有機材料、鉄、ステンレス鋼、銅、黄銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム合金、チタン等の金属材料、ガラス、セラミックス等の無機材料が挙げられる。
該基材を被覆する方法としては、静電粉体成形法、回転成形法、溶射成形法、流動浸漬法、ディスパージョン法、溶媒キャスト法等が採用できる。
【0041】
静電粉体成形法では、含フッ素共重合体の粉末に負の高電圧を印加して帯電させ、基材表面に付着させ、ついで付着した含フッ素共重合体をその融点以上分解点以下の温度で5分〜1時間、加熱して溶融させ、基材表面に一定の厚さの含フッ素共重合体の被膜を形成させることが好ましい。
回転成形法では、缶状や筒状の基材の内部に含フッ素共重合体の粉末を挿入し、基材を回転させながら含フッ素共重合体の融点以上分解点以下の温度に5分〜1時間、基材を加熱して含フッ素共重合体を溶融させ、基材の内面に均一な厚さの含フッ素共重合体の被膜を形成させることが好ましい。
【0042】
溶射成形法では、予熱した基材に粉末溶射器を用い、半融解状態の含フッ素共重合体を吹き付けることによって、基材表面に含フッ素共重合体の被膜を形成させることが好ましい。
流動浸漬法では、含フッ素共重合体の粉末を、底が通気性の多孔板である容器に入れ、多孔板より気体を送ることにより粉末を流動化させ、この流動層中に含フッ素共重合体の融点以上分解点以下に加熱した基材を1分以上1時間以下浸漬することにより、基材表面に均一な含フッ素共重合体の被膜を形成させることが好ましい。
【0043】
ディスパージョン法では、含フッ素共重合体の微粉末を水又は溶剤に浮遊、又は液に懸濁させて、これを基材に噴射して、水又は溶剤を蒸発させて均一な粉末の堆積層を形成させる。ついで、含フッ素共重合体の融点以上分解点以下に1分〜1時間加熱し溶融させ、基材表面に含フッ素共重合体の被膜を形成させることが好ましい。
【0044】
含フッ素共重合体を溶媒に溶解できる場合には、キャスティング、浸漬等により基材の表面に塗布して、含フッ素共重合体の被膜を形成することも好ましい。
前記基材の表面は、接着性を向上するために前処理されることも好ましい。前処理方法としては、サンドブラスト処理、リン酸塩処理、塩酸処理、硫酸処理等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例1〜4及び比較例1〜4を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、接着強度、耐ストレスクラック性能、及びNAHの含有量は下記の方法によって測定した。
【0046】
[接着強度(単位:N/cm)]
100μmの厚さの含フッ素共重合体のフィルムと、100μmの厚さのポリアミド12(宇部興産株式会社製3030JLX、以下PA12という。)のフィルム、銅箔又はアルミ箔とを重ね合せ、ヒートシーラー(富士インパルス社製)を用いて、加熱レベル9(到達温度280℃)の設定で溶融接着させた。得られた積層フィルムを縦10cm横1cmの短冊状に切断し、試験片を作成した。引張試験機を用いて該試験片の剥離強度を測定し、接着強度とした。
【0047】
同様に、100μmの厚さの含フッ素共重合体のフィルムと、厚さ20μmの銅箔(福田金属箔粉工業社製電解銅箔SV)との接着強度、厚さ100μmのアルミ箔(東海アルミ箔社製硬質アルミ箔)との接着強度、を測定した。
【0048】
[耐ストレスクラック性試験(MIT折り曲げ寿命)]
含フッ素共重合体を340℃で圧縮成形して得た厚さ0.220〜0.236μmのフィルムを幅12.5mmの短冊状に打ち抜いて測定試料を得た。ASTM D2176に準じて、荷重1.25kg、折り曲げ角度±135度、室温で折り曲げ試験機MIT−D(東洋精機製作社製)を用いて測定試料の折り曲げ試験を行った。破断するまでの折り曲げ回数をMIT折り曲げ寿命とした。この値が大きいほど、耐ストレスクラック性に優れることを示す。
【0049】
[NAHに基づく繰り返し単位の含有量(単位:モル%)]
100μmの含フッ素共重合体のフィルムを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルにおけるNAHの吸収ピークは1778cm−1に現れるのでそのピークの吸光度を測定した。NAHのモル吸光係数1340l・mol−1・cm−1を用いてNAHに基づく繰り返し単位の含有量を算出した。
【0050】
[PMVE、PEVE、PPVE、HFPに基づく繰り返し単位の含有量(単位:モル%)]
旭硝子研究報告40(1)、75(1990)に記載の方法に準じて、溶融NMR分析して算出した。
【0051】
[実施例1(TFE/PPVE/PMVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル−2,2,2,−トリフルオロエチルエーテル(旭硝子社製AE−3000、以下、AE−3000という。)の1131g、PPVEの35g、PMVEの22g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの155gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始5.6時間後、TFEの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0052】
得られた含フッ素共重合体1のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体1の45gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体1の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=95.8/2.0/2.1/0.1(モル%)であった。融点は285℃、Q値は28mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は220万回であり、耐ストレスクラック性に優れることがわかった。含フッ素共重合体1のフィルムと、PA12のフィルムとの接着強度は14.1N/cmであり、銅箔との接着強度は10.5N/cmであり、アルミ箔との接着強度は9.3N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた含フッ素共重合体1の物性を表1に示す。
【0053】
[実施例2(TFE/PPVE/PEVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの35g、PEVEの29g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの160gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始5.6時間後、TFEの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0054】
得られた含フッ素共重合体2のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体2の46gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体2の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/PEVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=95.6/2.1/2.2/0.1(モル%)であった。融点は287℃、Q値は30mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は230万回であり、耐ストレスクラック性に優れることがわかった。含フッ素共重合体2のフィルムと、ポリアミド12のフィルムとの接着強度は13.2N/cmであり、銅箔との接着強度は9.5N/cmであり、アルミ箔との接着強度は9.9N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた含フッ素共重合体2の物性を表1に示す。
【0055】
[比較例1(TFE/PPVE共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの40g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの169gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。重合開始5時間後、TFEの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0056】
得られた含フッ素共重合体3のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体3の45gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体3の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=98.0/2.0(モル%)であった。融点は300℃、Q値は20mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は50万回であった。含フッ素共重合体3のフィルムは、PA12のフィルム、銅箔、アルミ箔のいずれとも全く接着しなかった。得られた含フッ素共重合体3の物性を表1に示す。
【0057】
[比較例2(TFE/PPVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの40g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの169gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始5.5時間後、TFEの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0058】
得られた含フッ素共重合体4のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体4の46gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体4の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=97.9/2.0/0.1(モル%)であった。融点は300℃、Q値は23mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は30万回であった。含フッ素共重合体4のフィルムと、PA12のフィルムとの接着強度は13.5N/cmであり、銅箔との接着強度は9.5N/cmであり、アルミ箔との接着強度は8.4N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた含フッ素共重合体の物性を表1に示す。
【0059】
[実施例3(TFE/HFP/PPVE/PMVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの15g、PMVEの10g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの25g、HFPの300gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始6.1時間後、TFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0060】
得られた含フッ素共重合体5のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体5の47gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体5の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=88.1/8.1/1.6/2.1/0.1(モル%)であった。融点は246℃、Q値は56mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は200万回であり、耐ストレスクラック性に優れることがわかった。含フッ素共重合体5のフィルムと、PA12のフィルムとの接着強度は14.1N/cmであり、銅箔との接着強度は12.1N/cmであり、アルミ箔との接着強度は12.5N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた含フッ素共重合体5の物性を表1に示す。
【0061】
[実施例4(TFE/HFP/PPVE/PEVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの15g、PEVEの12.5g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの25g、HFPの300gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始6.3時間後、TFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0062】
得られた含フッ素共重合体6のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体6の46gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体6の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/PEVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=88.2/8.0/1.7/2.0/0.1(モル%)であった。融点は245℃、Q値は56mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は210万回であり、耐ストレスクラック性に優れることがわかった。含フッ素共重合体6のフィルムと、PA12のフィルムとの接着強度は13.6N/cmであり、銅箔との接着強度は11.9N/cmであり、アルミ箔との接着強度は13.7N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた共重合体の物性を表1に示す。
【0063】
[比較例3(TFE/HFP/PPVE共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの15g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの25g、HFPの300gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスを連続的に仕込んだ。重合開始6時間後、TFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0064】
得られた含フッ素共重合体7のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体7の46gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体7の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=90.5/8.0/1.5(モル%)であった。融点は262℃、Q値は50mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は25万回であった。含フッ素共重合体7のフィルムは、PA12のフィルム、銅箔、アルミ箔のいずれとも全く接着しなかった。得られた含フッ素共重合体の物性を表1に示す。
【0065】
[比較例4(TFE/HFP/PPVE/NAH共重合体)]
内容積が1.2Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、AE−3000の1131g、PPVEの15g、メタノールの5gを仕込んだ。ついで重合槽内を50℃に昇温し、TFEの25g、HFPの300gを仕込んで圧力を0.99MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液として(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.1質量%AE−3000溶液の1cmを仕込み、重合を開始させ、以後10分毎に該重合開始剤溶液の1cmを仕込んだ。また、重合中圧力が0.99MPa/Gを保持するようにTFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量のNAHの0.3質量%AE−3000溶液を連続的に仕込んだ。重合開始6.1時間後、TFE/HFP=91/9(モル比)の混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0066】
得られた含フッ素共重合体8のスラリをガラスフィルターで濾過して溶媒を分離した後150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体8の46gを得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体8の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/HFPに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/NAHに基づく繰り返し単位=90.2/8.1/1.6/0.1(モル%)であった。融点は260℃、Q値は55mm/秒であった。MIT折り曲げ寿命は15万回であった。含フッ素共重合体8のフィルムと、PA12のフィルムとの接着強度は14.0N/cmであり、銅箔との接着強度は10.2N/cmであり、アルミ箔との接着強度は12.5N/cmであり、いずれも接着性に優れることがわかった。得られた含フッ素共重合体の物性を表1に示す。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の含フッ素共重合体及び積層体は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性等に優れ且つ、耐ストレスクラック性に優れることから、塗装ロボット用塗料配管、半導体製造装置用薬液配管、自動車用燃料用ホース、産業用ホース、食品用ホース、耐候性積層フィルム、耐候性積層シート、IC基板、接着材等の用途に適する。
【0069】
また、本発明の被覆物品は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れることから、食品用、医療用、半導体用、化学プラント用等の反応器、容器、配管等、薬液輸送用タンクローリー、飛散防止ガラス板、飛散防止ガラスビン、耐磨耗性セラミックス部品等の用途に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、CF=CFOCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)、CF=CFOCF及び/又はCF=CFOCFCFに基づく繰り返し単位(c)、ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)、繰り返し単位(d)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が75〜99.79モル%であり、繰り返し単位(b)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(c)が0.1〜10.0モル%であり、繰り返し単位(d)が0.01〜5.0モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体。
【請求項2】
前記ジカルボン酸無水物基を有する重合性炭化水素モノマーが、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層と該含フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂の層とが直接積層されてなる積層体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体で基材の表面が被覆されてなる被覆物品。

【公開番号】特開2010−53209(P2010−53209A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217794(P2008−217794)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】