説明

含水スルホン化陽イオン交換樹脂上でのシロキサンの平衡化

本発明は、陽イオン交換樹脂へのシロキサン結合の転位によって有機シロキサンの平衡化物を製造するための方法、そのようにして得られる有機ポリシロキサン、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水陽イオン交換樹脂へのシロキサン結合の転位によって有機シロキサンの平衡化物を製造するための方法、そのようにして得られる有機ポリシロキサン、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂上でのシロキサンの平衡化は、先行技術に含まれる。非常に多くの周知の系の中でもAmberlyst乾燥イオン交換体(特にAmberlyst(登録商標)15)は、頻繁に用いられる触媒相である。
【0003】
特に、陽イオン交換体樹脂上での式1のポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマーの平衡化方法であって、陽イオン交換樹脂が8〜20重量%の含水率を有することができる平衡化方法を提供し、またそのようにして製造されたポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマーの平衡化物も提供する。
【0004】
この場合の平衡化とは、以下の構造の平衡化されるポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマー中のシロキサン結合の平衡形成転位(equilibrium-forming rearrangement)を意味すると見なされる。
【化1】


技術的には、この構造を特徴とするポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマーは、酸触媒上で、シロキサン環状体(siloxane cyclics)を長鎖ポリ(メチルハイドロジェン)シロキサンおよびヘキサメチルジシロキサンと再編成(reorganization)または平衡化することによって得られる。酸触媒としては、例えば、酸で活性化された漂白土(ベントナイト、モンモリロナイト、フラー土など)およびスルホン化マクロ架橋(macrocrosslinked)陽イオン交換樹脂が使用される。
【0005】
独国特許出願公開第10301355号(米国特許出願公開第2004147703号)(これは、本発明に関連して本明細書に全体を参照により援用する)は、出発物質として用いる有機シロキサンまたは有機シロキサン混合物を10℃〜120℃の温度でマクロ架橋スルホン酸基含有陽イオン交換樹脂と接触させ、得られた平衡化有機シロキサンを分離する、陽イオン交換樹脂へのシロキサン結合の転位による有機シロキサンの平衡化物を製造するための方法であって、比表面積と中央細孔径(median pore diameter)との積PがP≧2.2×10−3/kgであり、かつ比表面積Aが≧35m/gである陽イオン交換樹脂を使用することを特徴とする、有機シロキサンの平衡化物を製造するための方法を記載している。乾燥陽イオン交換樹脂及び/または(低)含水率(詳しく指定されていない)の陽イオン交換樹脂が使用されている。
【0006】
欧州特許第1367079号(米国特許出願公開第2003224925号)は、スルホン化樹脂上でポリジメチルシロキサンを平衡化した後に低分子量のシロキサンによる処理でそれを再活性化することに関連して、スルホン化陽イオン交換樹脂の含水率の重要性を示唆し、また最適重合条件を得るために含水量を<7(好ましくは5)質量パーセントに設定しなければならないことを示唆している。
【0007】
独国特許出願公開第102007055484.4号(本出願の優先日には公開されていなかったもの)は、8〜25重量%の含水率を有するスルホン化陽イオン交換樹脂を使用することを特徴とする、スルホン化陽イオン交換樹脂上でポリジメチルシロキサンを再編成するための方法に関する。そのようにして得られる非官能性シリコーン油に任意選択により下流熱分離法(downstream thermal separation process)を施すと、この技術的教示の文脈において、非常に弾力性のあるポリウレタンフォームの安定剤成分としての所定鎖長のポリジメチルシロキサンが得られることが記載されている。
【0008】
しかしながら、上述のシリコーン油の平衡化方法と比べて、共重合ジメチルシロキサン−ポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンの平衡化は、要求がずっと厳しいものである。基本的な問題は、強酸の存在下での水に対するSiH基を有するシロキサンの過敏性だけに起因するものである。そのことゆえに、場合によっては、脱水素によってSiHが失われ、SiOH官能基が形成されるという危険が生じ、縮合によるシロキサン骨格の架橋結合がさらに起こる可能性がある。しかし、そうではあっても、SiH官能基を有するシロキサンの工業的平衡化では、経済上道理にかなった期間内に化学平衡を確立するために、強酸触媒を使用することは避けられない。スルホン化陽イオン交換樹脂タイプの固相酸触媒を使用することに関しては、このことは、含水率をあまり大きく減少させることができないために触媒でのプロトン活性が不十分であることも意味する。酸触媒副反応(脱水素によるSiH官能基の上述の破壊など)は、スルホン化樹脂の望ましくない化学乾燥をもたらし、平衡触媒としての有用性を損なって完全な非活性化をもたらしうる。この知見は、ジメチルシロキサン−ポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンの製造における平衡化触媒としてのスルホン化樹脂の使用に関して非常に重要である。というのは、スルホン化樹脂を何度も繰り返して使用するのでなければ、この方法の経済性は確かなものとならないからである。固相の非活性化が早すぎることは、触媒の交換の必要性に関連して、これらの系の使用を魅力のないものにする。
【0009】
ジメチルシロキサン−ポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンは、特に、PU安定剤(ここでは特に熱軟質フォーム系(hot soft foam systems))を合成する際の有用な出発物質である。これらの共重合ハイドロジェンシロキサンをもたらす平衡化で達成される品質は、大抵の場合、アリルポリエーテル及び/またはアリルポリエーテル混合物による、得られる平衡物質のSiC結合修飾という後続の工程ですぐに明確になる。得られたオリゴマーの分子量分布および微細構造が平衡状態を達成しなかった場合は、ヒドロシリル化、すなわち、SiH基含有シロキサンとアリルポリエーテルとの間の貴金属触媒によるSiC結合反応により、非常に濁ったシリコーンポリエーテルコポリマーが必ず生じる。そのコポリマーは、軟質フォーム系のPUフォーム安定剤として使用した場合、多大のフォーム消滅またはフォーム破壊を必ずもたらす。
【0010】
使用試験、すなわち、ポリウレタン熱軟質フォーム系でシリコーンポリエーテルコポリマー(そのシリコーンポリエーテルコポリマーは、平衡化およびその後のヒドロシリル化によって合成できる)を使用すると極めて敏感な反応が得られるので、それゆえにその試験は、論争した合成経路の質を評価するための好適な方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって解決すべき技術的問題点は、現時点において、SiH基を有するシロキサン、特に共重合ジメチルシロキサン−ポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンの平衡化を、速い平衡化速度(equilibration kinetics)、高い触媒安定性および最適な生成物の品質という相反する要件を同時に達成するような仕方で可能にする系を見つけ出すことにある。
【0012】
驚くべきことに、独国特許出願公開第10301355号(米国特許出願公開第2004147703号)にすでに明記されている幾何学的パラメーター(比表面積および中央細孔径)に加えて、使用するスルホン化樹脂の含水率が平衡動力学、触媒安定性に重要であるだけでなく、得られるポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマーで達成される品質にも重要であることがこのほど見出された。欧州特許出願公開第1367079号(米国特許出願公開第2003224925号)にある非官能性ポリジメチルシロキサンの平衡化において見出される、<7(好ましくは5)質量パーセントという有利な含水量とは異なり、マクロ架橋のスルホン化陽イオン交換樹脂は、ポリ(メチルハイドロジェン)−ポリジメチルシロキサンコポリマーの平衡化において、その比表面積と中央細孔径との積PがP≧2.2×10−3/kgであり、その比表面積Aが≧35m/gであり、かつその含水量が<20から>8%の間であるときに、最適活性となる。
【0013】
こうした発見は当業者が決して予測できるものではなかった。というのは、欧州特許出願公開第1367079号におけるスルホン化陽イオン交換樹脂の低い含水量は、非官能性シリコーン油の平衡化を成功させるための条件であり、さらにSiH基を有するシロキサンが強酸の存在下でどれほど過敏に水と反応しうるか(脱水素によってSiHが失われてSiOH官能基が形成される。また縮合によって架橋結合がさらに行われる可能性がある)が知られているからである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の問題は、1つの実施形態では、出発物質として使用する有機シロキサンまたは有機シロキサン混合物を10℃〜120℃の温度でマクロ架橋の含水スルホン酸基含有陽イオン交換樹脂と接触させ、得られた平衡化有機シロキサンを分離するという、含水スルホン化陽イオン交換樹脂へのシロキサン結合の転位によって有機シロキサンの平衡化物を製造するための方法であって、比表面積と中央細孔径との積Pが、P≧2.2×10−3/kgであり、かつ比表面積Aが≧35m/gであり、さらに含水率が8から25重量%(使用する陽イオン交換体の質量に対して)の間である含水陽イオン交換樹脂を使用することを特徴とする製造方法によって解決される。
【0015】
驚くべきことに、例えば、スルホン化イオン交換樹脂である含水のLewatit(登録商標)K 2621により、時間の点から十分迅速に平衡化平衡を確立することが可能となり、そのようにして得られたハイドロジェンシロキサンは、軟質ポリウレタンフォームの安定剤の好ましい出発物質である透明液体を形成することが見出された。
【0016】
こうした発見は当業者にとって驚くべきことである。というのは、マクロ細孔スルホン化ポリスチレンであるこのポリマー樹脂は、Amberlyst(登録商標)15と同一の基本的化学構造を有し、さらに表Iに示されているように似たような巨視的性質を示すからである。
【0017】
【表1】

【0018】
さらに、陽イオン交換樹脂の含水率が平衡反応に有利に影響しうるであろうことは予想外であった。
【0019】
好ましい実施形態では、この方法は、低分子量の有機ポリシロキサン(特に、線状有機ポリシロキサン)を解重合させて、平衡化することを特徴とする。特に、化合物の平衡状態にある有機シロキサンを分離する。特に、出発物質として、粘度が最大で約10000cPまでの有機シロキサンを使用する。
【0020】
好ましくは、3〜200個のSi原子を有するシロキサンおよびH−シロキサンを使用する。
【0021】
更なる実施形態では、中央細孔径が少なくとも約65nmであり、かつ平均比表面積が約30〜50m/gである含水陽イオン交換樹脂を使用する。
【0022】
陽イオン交換樹脂の含水率は、好ましくは8〜20重量%、特に8〜15重量%である。
【0023】
転位は、好ましくは約35℃〜約100℃の温度で行われる。
【0024】
本発明によれば、更なる実施形態では、この方法は連続的に実施し、望ましい沸点範囲を有する留分を流出する有機シロキサン混合物から分離し、望ましくない沸点範囲を有する留分を有機シロキサンの供給原料へと再循環させる。
【0025】
特に、ヘキサメチルジシロキサンとポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンとシロキサン環状体との混合物を出発物質として使用する。
【0026】
更なる実施形態は、SiC結合を形成するための有機シロキサンの使用であって、この有機シロキサンとアリルポリエーテルとの混合物を白金金属錯体と接触させ、得られたポリシロキサンを軟質ポリウレタンフォームの安定剤として使用する、有機シロキサンの使用である。
【0027】
本発明を使用すれば、定義されたマクロ架橋スルホン酸基含有陽イオン交換樹脂を用いた、メチルハイドロジェンポリシロキサンと環状または線状の(適切な場合には、水素官能化された)ポリシロキサンとの混合物の平衡化によって、線状および環状化合物の明確な平衡状態を有する統計学的に均一に作り上げられた有機ハイドロジェンシロキサンを製造することが可能である。独国特許出願公開第2152270号を、上記および更なる定義に関連して参照により明示的に援用する。
【0028】
イオン交換系としてAmberlyst(登録商標)15、Purolite(登録商標)CT 169D(表面積35〜50m/g、中央細孔径24.0〜42.5nm)またはPurolite(登録商標)CT 165(表面積2.5m/g、中央細孔径>100)をベースにして製造された軟質フォームの安定剤(ポリエーテルシロキサン)はすべて、PUフォームの破壊につながる概して濁った液体であることを確認する必要がある。それゆえに、本発明に従って使用する触媒相を記述するための基本的なパラメーターは、比表面積および孔隙率(すなわち中央細孔径)である。その2つの値の積をとると、それは、密度の逆数(inverse density)(体積:質量)という性質を有し、官能性イオン交換体と、本発明によるのではないイオン交換体との違いを明確にすることができる。
【0029】
一例として使用するイオン交換体のLewatit(登録商標)K 2621の場合、考慮に入れるべき事柄として以下の点がある:
40m/g×65nm=2600mnm/g=2.6×10−3/kg
【0030】
含水率が8から20重量%の間である、本発明に従って使用する好ましいスルホン化陽イオン交換樹脂は、物理的乾燥及び/または化学的乾燥によって、含水率が比較的高い陽イオン交換樹脂をもとにして製造することができる。物理的乾燥は、例えば、乾燥室内で、好ましくは40〜100℃の温度で行うことができ、その場合、乾燥を助けるために、減圧を用いるか、または不活性ガス流を用いることも可能である。達成される乾燥の経過は、この過程の間に規則的な水測定によって(例えば、カールフィッシャー滴定法または質量差測定(differential weighing)によって)観察し、制御できる。あるいはまた、本発明に従って使用するスルホン化陽イオン交換樹脂は、例えば、欧州特許出願公開第1367079号に記載されているように、低分子量のシロキサンと接触させることにより、化学的に乾燥させることもできる。
【0031】
含水率が8〜20重量%である、本発明に従って使用するスルホン化陽イオン交換樹脂の製造は、任意選択により、含水率の少ない陽イオン交換樹脂から始めることもできる。この場合、陽イオン交換樹脂を水と接触させる。最も簡単な場合には、その固有の吸湿性によって含水量が増大するように、通常の大気下で一定期間、スルホン化樹脂を保管することで十分である。
【0032】
その含水率に関して定義されたスルホン化陽イオン交換樹脂を、ポリジメチルシロキサンの平衡化に使用する場合、反応物系を一定量の水と混合すること、特に、反応系の他の成分との相互作用によって引き起こされる樹脂の水枯渇(この場合、特に、本発明による限界である8重量%未満の水分)を効果的になくすことは、有利でありうる。添加は、連続的かまたはバッチ式で行うことができる。場合によって必要な水の添加は、反応生成物中に含まれる水を測定することによって、または任意選択により、陽イオン交換樹脂の含水率の(規則的な)測定によって判断できる。
【0033】
陽イオン交換樹脂として、基本的には、あらゆるスルホン化陽イオン交換樹脂を使用できる。好適な陽イオン交換樹脂は、例えば、フェノール/アルデヒド縮合物のスルホン化、あるいは芳香族ビニル化合物のコオリゴマーのスルホン化によって製造されるものである。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物の例として次のものがある:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレンおよびジビニルベンゼン。特に、スチレンをジビニルベンゼンと反応させて生じさせるコオリゴマーは、スルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂を製造するための前駆体として使用する。樹脂は、原則として、ゲル状、マクロ細孔状、またはスポンジ状となるように製造することができる。これらの樹脂の性質、特に比表面積、孔隙率、安定性、膨潤及び/または収縮および交換容量は、製造方法によって変えることができる。好ましくは、ゲル状の陽イオン交換樹脂は使用せず、むしろ多孔質、好ましくはマクロ細孔のスルホン化陽イオン交換樹脂を使用する。
【0034】
本発明による方法では、酸性状態の従来のマクロ細孔スルホン化陽イオン交換樹脂(「H形態」と称されるもの)を好ましく使用できる。市販のスチレン−ジビニルベンゼン型の好適なポリマー相のうち、本明細書では、比表面積と中央細孔径との積PがP≧2.2×10−3/kgであり、比表面積Aが≧35m/gである、陽イオン交換樹脂が好ましい。好ましくは、中央比表面積が35〜50m/gの範囲内にある陽イオン交換樹脂を使用する。特に好ましくは、スルホン化陽イオン交換樹脂としてLewatit(登録商標)K 2621(Bayer AG)を使用する。
【0035】
しかし、新鮮な陽イオン交換樹脂を触媒として使用することに加えて、本発明による方法に従ってポリジメチルシロキサン組成物の再編成のためにすでに使用されたスルホン化樹脂を使用することもできる。再編成された材料の少しの残留量(その後に、触媒の表面に付着しうるもの)は、通例はこの方法において支障をきたすことはない。
【0036】
本発明による方法で使用できるシロキサン原料は、従来の直鎖及び/または環状のシロキサンすべてである。好ましくは、低分子量の線状ジメチルシロキサンと環状シロキサン及び連鎖停止剤としてのヘキサメチルジシロキサンとの混合物を再編成する。この場合に使用するポリジメチルシロキサンの粘度の上限は、好ましくは500mPas以下であるべきである。使用するシロキサンの鎖長は、好ましくは2〜200個のSi原子の範囲である。
【0037】
使用できるシロキサン原料は、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン及び/またはオクタメチルトリシロキサンおよびシロキサン環状体(例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D)及び/またはデカメチルシクロペンタシロキサン(D)など)を含むか、またはそれらからなる混合物である。好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンならびにDおよびDを含むか、または好ましくはそれらからなる技術的混合物を使用する。
【0038】
好ましくは、平衡化は10℃〜110℃の温度、好ましくは25℃〜100℃で実施する。平衡化は、任意選択により、減圧下、大気圧下または大気圧より高い圧力下で実施することもできる。この場合の大気圧とは、元々の定義に加えて、周囲大気のその都度の一般的な気圧を意味することを意図している。好ましくは、平衡化は、950mbar〜1100mbarの圧力、特に好ましくは1013mbarで実施する。
【0039】
平衡化は、20分間〜7時間の反応時間で、好ましくは30分間から5時間までに実施するのが有利でありうる。
【0040】
特に非常に好ましくは、平衡化は、25℃〜100℃の温度、およそ1013±10mbarの圧力、および30分間から5時間までの時間で実施し、反応は、好ましくは70℃で行う。
【0041】
所望される場合には、平衡化は、溶媒の存在下で実施することもできる。適切な溶媒は、平衡化において、陽イオン交換樹脂(触媒)、出発物質および生成物に対して不活性である溶媒すべてである。しかし、特に好ましくは、平衡化は溶媒の非存在下で実施する。
【0042】
反応混合物に対して使用する陽イオン交換樹脂の量は、好ましくは8〜25重量%、特に好ましくは8〜15重量%であり、その陽イオン交換樹脂は上述の限界内の水を含む。
【0043】
本発明による方法は、バッチ式で、または連続的に実施することができる。
【0044】
望ましい沸点範囲を有する一部を、本発明による平衡化の反応混合物として得られる平衡物質から分離するのは有利でありうる。望ましい沸点範囲を持たない平衡物質の残留物は、平衡化における出発物質(有機シロキサン)として再び使用できる。特に好ましくは、この方法を連続的に実施するときにはとりわけ、望ましい沸点範囲を有する一部を、結果として得られたポリシロキサン混合物から分離し、望ましい沸点範囲を持たない残りの物を平衡物質の出発物質(有機シロキサン)として使用する。この分離は、例えば、単純な熱分離(例えば、単純な蒸留、または同様の手段など)で行うことができる。
【0045】
本発明による方法の更なる実施形態は、特許請求の範囲からもたらされる。
【0046】
本発明による平衡化物およびその使用を、以下に例を挙げて説明するが、本発明はそうした例示的な実施形態に限定されるものではない。以下に化合物の範囲、一般式または種類を挙げる場合、それらは明示的に述べた化合物の対応範囲または群を含むだけでなく、個々の値(範囲)または化合物を取り上げて得ることができる化合物のすべての部分範囲および部分群も含む。本発明との関連において文献を引用している場合、その内容を参照によりすべて本発明の内容に援用する。
【0047】
以下、実施例を参照しながら、本発明の利点を示す。
【実施例】
【0048】
本発明に従った実施例で用いるスルホン化イオン交換樹脂および本発明によらない実施例で用いるスルホン化イオン交換樹脂の調製
含水率の大きい市販形態のLewatit(登録商標)K 2621を、8時間または18時間の間、60℃に加熱された乾燥室内のふたのされていない蒸発皿に入れ、その後まだ暖かい状態のまま、水分を取り除いた不活性化容器に移し、保管した。カールフィッシャー滴定法による含水率は、8時間乾燥させた樹脂の場合、25%であり、18時間乾燥させた樹脂の場合、12%であった。
【0049】
5%の水を含有する市販形態のものとしてAmberlyst(登録商標)15を直接入手した。この樹脂の一部を通常の大気下でおよそ5時間保管した。その結果、その固有の吸湿性のため、含水量が10%となった。
【0050】
実施例1:
ハイドロジェンシロキサンの製造(本発明に従った実施例)
223.0gのデカメチルシクロペンタシロキサン(D)、20.2gのポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンPTF1(SiH含有量:15.75val/kg)および6.9gのヘキサメチルジシロキサンHMDSからなる混合物(61.5モルのD:0.135モルのPTF1:0.865モルのHMDS)を、3m−%の事前乾燥したイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K 2621(含水率12%)と混合し、絶えず攪拌しながら70℃で6時間平衡化し、反応混合物を冷却した後に、イオン交換樹脂を濾過分離する。活性SiHの含有量は、ガス体積測定(gas volumetry)によって測定すると1.26val/kgであった(酪酸ナトリウム溶液を用いて秤量シロキサン試料を破壊)。ハイドロジェンシロキサンの粘度は、86.4mPas(25℃)であった。
【0051】
29Si−核磁気共鳴分光法によると、本発明に従って得られたハイドロジェンシロキサンは、以下の式で表すことのできる平均構造(median structure)になった。
(CH)SiO−[(CHSiO−]61.5[(CH)HSiO−]6.5Si(CH
【0052】
濾過分離されたスルホン化イオン交換体を、既述の手順と同様にして、上述のハイドロジェンシロキサンの平衡化のためにさらに6回用いた。その場合に、平衡物質のSiH含有量は、1.26から1.27val/kgの間であり、かつ粘度が85.5から86.8mPasの間であった。同時に行った29Si−核磁気共鳴分光法により、上に示した構造式が確認された。
【0053】
反応の再現性により、陽イオン交換樹脂が再使用可能であることが確証される。
【0054】
比較例2:
ハイドロジェンシロキサンの製造(本発明によるものではない)
223.0gのデカメチルシクロペンタシロキサン(D)、20.2gのポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンPTF1(SiH含有量:15.75val/kg)および6.9gのヘキサメチルジシロキサンHMDSからなる混合物(61.5モルのD:0.135モルのPTF1:0.865モルのHMDS)を、3m−%の事前乾燥したイオン交換樹脂Amberlyst(登録商標)K15(含水率10%)と混合し、絶えず攪拌しながら70℃で6時間平衡化し、反応混合物を冷却した後に、イオン交換樹脂を濾過分離した。活性SiHの含有量をガス体積測定で測定すると、1.26val/kgであった。ハイドロジェンシロキサンの粘度は、74.3mPas(25℃)であった。
【0055】
29Si−核磁気共鳴分光法によると、こうして得られたハイドロジェンシロキサンは、実施例1の場合と同じ平均構造になった。実施例1との有意差は示されなかった。それにも関わらず、実施例4と5とを比較すると、挙動が異なっていることが分かる:
(CH)SiO−[(CHSiO−]61.5[(CH)HSiO−]6.5Si(CH
【0056】
比較例3:
ハイドロジェンシロキサンの製造(本発明によるものではない)
223.0gのデカメチルシクロペンタシロキサン(D)、20.2gのポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサンPTF1(SiH含有量:15.75val/kg)および6.9gのヘキサメチルジシロキサンHMDSからなる混合物(61.5モルのD:0.135モルのPTF1:0.865モルのHMDS)を、3m−%の適度に事前乾燥させたイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K 2621(含水率25%)と混合し、絶えず攪拌しながら70℃で6時間平衡化し、反応混合物を冷却した後に、イオン交換樹脂を濾過分離した。活性SiHの含有量をガス体積測定で測定すると、1.26val/kgであった。ハイドロジェンシロキサンの粘度は、75.2mPas(25℃)であった。
【0057】
29Si−核磁気共鳴分光法によると、こうして得られたハイドロジェンシロキサンは、以下の平均構造になった。
(CH)SiO−[(CHSiO−]61.5[(CH)HSiO−]6.5Si(CH
【0058】
実施例4:
(実施例1で得たハイドロジェンシロキサンをさらに処理してポリシロキサン−ポリオキシアルキレン混合ブロックコポリマーを得る)
(1) 259.2g(0.185モル)の平均式(median formula)CH=CH−CHO−(CO−)(CO−)21CHのポリエーテル、
(2) 86.4g(0.062モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)26(CO−)CHのポリエーテル、
(3) 234.5g(0.061モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)45(CO−)34CHのポリエーテル、
(4) 156.4g(0.041モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)36(CO−)38Hのポリエーテルおよび
(5) 37.0g(0.061モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)14CHのポリエーテル
を、15.4mgのcis(NHPtClと一緒に、滴下漏斗、撹拌機、温度計、ガス注入口および還流冷却器を備えたフラスコ内に投入した。装置は、穏やかな窒素気流で不活性状態にした。混合物を120℃まで加熱した後、それぞれの場合に、実施例1からの240gのハイドロジェンシロキサン(=0.301モルのSiH)を30分間の間に滴加した。反応混合物は、引き続き3時間反応させて、定量的SiH変換を達成した(酪酸ナトリウム溶液と反応させて、ガス体積測定によって判定した)。Seitz−K−300フィルターディスクに通して濾過した後、透明なやや黄色の生成物を得た。
【0059】
実施例5:
(実施例2および3で得られたハイドロジェンシロキサンをさらに処理してポリシロキサン−ポリオキシアルキレン混合ブロックコポリマーを得る)
実施例4と同様にして、
(1)259.2g(0.185モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)(CO−)21CHのポリエーテル、
(2)86.4g(0.062モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)26(CO−)CHのポリエーテル、
(3)234.5g(0.061モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)45(CO−)34CHのポリエーテル、
(4)156.4g(0.041モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)36(CO−)38Hのポリエーテルおよび
(5)37.0g(0.061モル)の平均式CH=CH−CHO−(CO−)14CHのポリエーテル
を、15.4mgのcis(NHPtClと一緒に、滴下漏斗、撹拌機、温度計、ガス注入口および還流冷却器を備えたフラスコ内に投入した。装置は、穏やかな窒素気流で不活性状態にした。混合物を120℃まで加熱した後、それぞれの場合に、比較例2および3の本発明によらない240gのハイドロジェンシロキサン(=0.301モルのSiH)を30分間の間に滴加した。反応混合物は、引き続き3時間反応させて、定量的SiH変換を達成した(酪酸ナトリウム溶液と反応させて、ガス体積測定によって判定した)。定量的SiH変換であったにもかかわらず、結果として得られたポリシロキサン−ポリエーテルコポリマーは、濁っていて不透明であり、やや黄色の液体であった。これは、Seitz−K−300フィルターディスクに通して濾過した後でさえ透明にはならなかった。
【0060】
実施例6:
製造したフォーム安定剤の性能特性を、フォーム配合物を用いて以下のようにして試験した:
それぞれの場合に、柔軟なポリウレタンフォーム製造用の市販のポリエーテル300部(このポリエーテルは、平均的分子内に3個のヒドロキシル基を有しており、分子量が3500であった)を、水15部、物理的発泡剤15部、本発明による実施例1の試験または比較例2による試験でのフォーム安定剤の対応量、ジエチレントリアミン0.33部およびオクタン酸スズ0.69部と一緒に、よく攪拌しながら混合した。トルエンジイソシアネート(2,4異性体と2,6異性体の4:1の比の混合物)189部を加えた後、Glatt撹拌機を用いて2500rpmで7秒間その混合物を攪拌し、上部の開いたボックスに注ぎ入れた。これにより、以下のようなパラメーターで特徴付けられた細孔フォームが製造された:
1. 上昇段階の最後におけるフォームの垂れ(sag)(表II中では「垂れ」と表記されている)。
2. フォームの1センチメートル当たりの気泡数(顕微鏡で求めた)。
【0061】
表IIは、本発明による方法で得られた安定剤(実施例1/1〜7)の2種類の異なる濃度(1.8部/1.5部)および本発明に従って製造されたものではない安定剤(比較例2および3の製造物)の2種類の異なる濃度(1.8部/1.5部)の測定値を比較している。
【0062】
【表2】

【0063】
表IIは、同じ陽イオン交換樹脂を用いて平衡化を合計7サイクル繰り返した後の反応の結果を示している。これは、反応の再利用性および再現性があり、陽イオン交換樹脂の「再活性化」も後処理も必要としないことを確証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発物質として使用する有機シロキサンまたは有機シロキサン混合物を10℃〜120℃の温度でマクロ架橋されたスルホン酸基含有陽イオン交換樹脂と接触させ、得られた平衡化有機シロキサンを分離する、スルホン化陽イオン交換樹脂へのシロキサン結合の転位によって有機シロキサンの平衡化物を製造する方法であって、比表面積と中央細孔径との積Pが、P≧2.2×10−3/kgであり、かつ比表面積Aが≧35m/gである陽イオン交換樹脂を使用し、さらに前記スルホン化陽イオン交換樹脂の含水率が、使用する前記陽イオン交換体の質量に対して8から25重量%の間であることを特徴とする、有機シロキサンの平衡化物を製造する方法。
【請求項2】
低分子量の有機ポリシロキサンを解重合させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低分子量の有機ポリシロキサンを平衡化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒として脂肪族炭化水素を使用することを特徴とする、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物の平衡状態にある有機ポリシロキサンを分離することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
中央細孔径が少なくとも約65nmである陽イオン交換樹脂を使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記転位を約35〜約80℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
出発物質として、粘度が最高で約10000cPの有機シロキサンを使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
平均比表面積が約30〜50m/gである陽イオン交換樹脂を使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法を連続的に実施し、望ましい沸点範囲を有する留分を前記得られた有機シロキサン混合物から分離し、望ましくない沸点範囲を有する留分を有機シロキサンの供給原料に入れて再循環させることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヘキサメチルジシロキサン、ポリ(メチル)ハイドロジェンシロキサン、及びシロキサン環状体の混合物を出発物質として使用することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法によって得られる有機ポリシロキサン。
【請求項13】
これらの有機シロキサンとアリルポリエーテルとの混合物を白金金属錯体と接触させる、SiC結合の形成における請求項12に記載の有機シロキサンの使用。
【請求項14】
得られた前記ポリシロキサンを軟質ポリウレタンフォームの安定剤として使用する、請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2012−503049(P2012−503049A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527277(P2011−527277)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060818
【国際公開番号】WO2010/031654
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】