説明

吸収性物品に係るプレス装置、及びプレス方法

【課題】ロールの外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きを軽減する。
【解決手段】互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロールを具備し、前記一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス装置である。前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールを加熱する加熱機構を有する。前記加熱機構によって、前記ロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールが加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に係るプレス装置、及びプレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造ラインでは、図1に示すように、パルプ繊維を成形等してなる各吸収体3,3…を、その上下から一対のティッシュペーパー等の繊維状連続シート6,4で覆ってなる半製品2が製造される。
そして、この半製品2を製品ピッチで分断して、使い捨ておむつに使用している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−9960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半製品2にあっては、吸収体3と上下一対の繊維状連続シート6,4とを一体化すべく、一方の繊維状連続シート4の両面のうちで、他方の繊維状連続シート6と対向する側の面には、ホットメルト接着剤(不図示)が塗布されており、これによりこれら三者は接着一体化されるようになっている。そして、この一体化度合いを高めたり、半製品2の厚みを薄くする等の目的のために、製造ラインにおいては、当該半製品2を上下一対のプレスロール12,12同士の間のロール間隙Grに通し、その通過の際に、プレスロール12,12の外周面12s,12sにより挟圧することが行われている。
【0005】
但し、この挟圧時には、繊維状連続シート6,4の繊維間隙間を通ってホットメルト接着剤が同シート6,4の外面に染み出して、プレスロール12の外周面12sに付着しこれを汚す虞があり、その清掃を定期的に行わなければならない。
【0006】
また、この接着剤がプレスロール12の外周面12sに堆積すると、その接着力により、繊維状連続シート6,4がプレスロール12の外周面12sに強固に貼り付いてしまう。そして、この貼り付いた繊維状連続シート6,4が、ロール間隙Grの出側において外周面12sから速やかに引き剥がされない場合には、繊維状連続シート6,4は破れてしまい、製造ラインの停止を余儀なくされる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ロールの外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きを軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロールを具備し、
前記一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス装置であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールを加熱する加熱機構を有し、前記加熱機構によって、前記ロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールが加熱されることを特徴とする吸収性物品に係るプレス装置。
【0009】
また、
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス方法であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールの外周面の温度が、70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールを加熱することと、
前記外周面の温度が前記範囲に収められた前記ロールの外周面によって、前記ロール間隙を通過する前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧することと、を有することを特徴とする吸収性物品に係るプレス方法。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロールの外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きを軽減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のプレス装置の概略斜視図である。
【図2】図2Aは、本実施形態に係るプレス装置10の概略斜視図であり、図2Bは同側面図である。
【図3】半製品2の他の態様2aの斜視図である。
【図4】プレス装置10の変形例10aの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロールを具備し、
前記一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス装置であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールを加熱する加熱機構を有し、前記加熱機構によって、前記ロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールが加熱されることを特徴とする吸収性物品に係るプレス装置。
このような吸収性物品に係るプレス装置によれば、挟圧時には、繊維状連続シートと当接するロールの外周面の温度は、70℃〜120℃の範囲に収められている。よって、接着剤が繊維状連続シートの繊維間隙間を通って外周面の方へ染み出した場合であっても、当該外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きは有効に抑制される。
【0015】
かかる吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記外周面の温度が80℃〜110℃の範囲に収められているのが望ましい。
このような吸収性物品に係るプレス装置によれば、挟圧時には、繊維状連続シートと当接するロールの外周面の温度は、80℃〜110℃の範囲に収められている。よって、接着剤が外周面の方へ染み出した場合であっても、当該外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きは、より有効に抑制される。
【0016】
かかる吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記熱可塑性接着剤はホットメルト接着剤であり、
前記繊維状連続シートは、ティッシュペーパーであるのが望ましい。
このような吸収性物品に係るプレス装置によれば、上述の抑制効果を有効に享受することができる。
【0017】
かかる吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記繊維状連続シートには、前記吸収性物品に係る吸収体が前記繊維状連続シートの前記連続方向に沿って間欠的に載置されており、
前記繊維状連続シートを第1繊維状連続シートとした場合に、前記吸収体は、第2繊維状連続シートで覆われることにより、該第2繊維状連続シートと前記第1繊維状連続シートとで挟み込まれており、
前記加熱機構が前記一対のロールの両方のロールを加熱することにより、前記両方のロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収められているのが望ましい。
このような吸収性物品に係るプレス装置によれば、第1繊維状連続シート及び第2繊維状連続シートの両方の外面に接着剤が染み出す虞があるが、この点につき、各ロールの外周面の温度を70℃〜120℃の範囲に収めるようにしている。よって、外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きを有効に抑制可能となる。
【0018】
また、
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス方法であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールの外周面の温度が、70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールを加熱することと、
前記外周面の温度が前記範囲に収められた前記ロールの外周面によって、前記ロール間隙を通過する前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧することと、を有することを特徴とする吸収性物品に係るプレス方法。
このような吸収性物品に係るプレス方法よれば、挟圧時には、繊維状連続シートと当接するロールの外周面の温度は、70℃〜120℃の範囲に収められている。よって、接着剤が繊維状連続シートの繊維間隙間を通って外周面の方へ染み出した場合であっても、当該外周面への接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シートの貼り付きは有効に抑制される。
【0019】
===本実施形態===
図2A及び図2Bは、本実施形態に係るプレス装置10の説明図である。図2Aは、プレス装置10の概略斜視図であり、図2Bは同側面図である。なお、図2Bでは、半製品2の吸収体3を不図示としている。
【0020】
このプレス装置10は、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつの製造ラインで使用される。そして、プレス装置10には、例えばおむつの半製品2が搬送方向に連続した状態で供給され、プレス装置10は、この半製品2を厚み方向に挟圧して下工程へ送り出す。
【0021】
半製品2は、例えば、搬送方向に連続して搬送される第1繊維状連続シート4と、この第1繊維状連続シート4の上面に、搬送方向に間欠的に製品ピッチで重ね合わされた重合物の一例としての複数の吸収体3,3…と、上記第1繊維状連続シート4とによって吸収体3,3…を挟むように上方から覆う第2繊維状連続シート6と、を有している。
【0022】
吸収体3は、液体吸収性繊維としてのパルプ繊維を例えば100〜400(g/m)の坪量で略直方体等の所定形状に積層したものである。通常は、この吸収体3内に高吸収性ポリマー(以下、SAPとも言う)が混合されているが、混合されていなくても良い。なお、この例では、SAPは50〜300(g/m)の坪量で混合されている。
【0023】
第1及び第2繊維状連続シート4,6の一例としては、不織布等が挙げられる。詳しくは、木材パルプ繊維を含むティッシュペーパー等の湿式不織布や、短繊維の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維を含む乾式不織布等を例示できる。なお、湿式不織布とは、繊維分散液中の金網上でフォーミングした後、ボンディングした不織布のことを言い、乾式不織布とは、カード器によりウエブを形成した後、ボンディングした不織布のことを言う。この例では、第1及び第2繊維状連続シート4,6の両者に対して、木材パルプ繊維からなる坪量が12〜20(g/m)のティッシュペーパーを使用している。ちなみに、このティッシュペーパーの搬送方向の引張強度は5〜10(N/25mm)であり、幅方向の引張強度は1〜5(N/mm)である。なお、前者の引張強度の単位に係る分母の「25mm」の記載は、当該表示された引張強度の値が、25mm幅当たりの引張強度である旨を示している。
【0024】
そして、これら上下一対の繊維状連続シート6,4の少なくとも一方の繊維状連続シート4(6)に係り、同シート4(6)が具備する両面のうちで吸収体3と対向する側の面には、予め熱可塑性接着剤としてのホットメルト接着剤が、所定の塗布パターン(例えば、搬送方向に沿った複数の波線パターン等)で略全面に亘って塗布されている。よって、当該接着剤の接着力に基づいて、吸収体3、第1繊維状連続シート4、及び第2繊維状連続シート6の三者は互いに接合される。
【0025】
例えば、塗布対象が第1繊維状連続シート4の場合には、その上面に吸収体3,3…が重ね合わされるよりも前に、同上面に対して接着剤が塗布される。そして、第1繊維状連続シート4において吸収体3が重なる部分には吸収体3が接着される一方、吸収体3よりも幅方向の外方に飛び出した部分4aや、搬送方向に隣り合う吸収体3,3同士の間の部分4bにあっては、第2繊維状連続シート6が当接して接着される。これにより、第1繊維状連続シート4と第2繊維状連続シート6との間に吸収体3が挟まれる形で、これら三者は接合一体化される。
【0026】
他方、塗布対象が第2繊維状連続シート6の場合には、吸収体3,3…が重ね合わされた第1繊維状連続シート4の上方から第2繊維状連続シート6が重ね合わされるよりも前に、当該第2繊維状連続シート6の下面に対して接着剤が塗布される。そして、第2繊維状連続シート6において吸収体3が重なる部分には、吸収体3が接着される一方、吸収体3よりも幅方向の外方に飛び出した部分6aや、搬送方向に隣り合う吸収体3,3同士の間の部分6bにあっては、第1繊維状連続シート4が当接して接着される。これにより、第1繊維状連続シート4と第2繊維状連続シート6との間に吸収体3が挟まれる形で、これら三者は接合一体化される。
【0027】
ホットメルト接着剤としては、合成ゴム系ホットメルト接着剤(SIS、SBS,SEPS、SEBS等の合成ゴムのベースポリマーを有するホットメルト接着剤)や、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤(PE、PP等のポリオレフィンのベースポリマーを有するホットメルト接着剤)等を例示することができる。ここでは、MQ−654E(商品名)(ヘンケルジャパン社製)を用いている。また、接着剤の単位面積当たりの塗布量については、2〜10(g/m)に設定されている。また、ホットメルト接着剤は、適宜な接着剤塗布装置のノズル等から吐出されて塗布されるが、この吐出時の接着剤の温度は、加熱等により、例えば140℃〜160℃にされており、その粘度は例えば2000〜200000(cP)になっている。
【0028】
プレス装置10は、半製品2を所定厚みまで薄くすべく、同半製品2を厚み方向に挟圧する装置である。挟圧に係る圧縮荷重は、例えば単位幅当たり35000〜140000(N/m)に設定されている。なお、この挟圧時には、ホットメルト接着剤は未だ未固化状態にあり、つまり流動性が有る状態なので、当該挟圧により、ホットメルト接着剤は繊維状連続シート4,6の略全面に亘り延ばされて均され、全体として半製品2の接合強度が高められる。
【0029】
以下、プレス装置10について詳細に説明するが、以下の説明では、半製品2の搬送方向のことを「MD方向」とも言い、更にMD方向と直交する方向のうちで半製品2の幅方向(繊維状連続シート4,6の幅方向)のことを「CD方向」とも言う。なお、CD方向は、例えば水平方向を向いており、図2B中では紙面を貫通する方向を向いている。
【0030】
図2A及び図2Bに示すように、プレス装置10は、互いの外周面12s,12sを対向させて駆動回転する上下一対のプレスロール12,12と、各外周面12s,12sの温度が所定の目標温度範囲内に入るように各ロール12,12を加熱する加熱機構と、を有する。そして、プレスロール12,12同士の間のロール間隙Grに半製品2がMD方向に沿って通される際に、外周面12s,12sの温度をその目標温度範囲の70℃〜120℃に収めながらこれら外周面12s,12sによって半製品2を挟圧する。
【0031】
各プレスロール12は、例えば外周面12sが平滑な平ロールであり、これらプレスロール12,12は、それぞれ、不図示の軸受け部材によって、CD方向に平行な回転軸C12,C12周りに回転可能に支持されている。そして、駆動回転力が、不図示の駆動源としてのモータから減速機等を介して入力され、これにより各プレスロール12はMD方向に沿って駆動回転する。各プレスロール12の周速V12は、半製品2の搬送速度V2と連動して、100(m/min)〜600(m/min)の範囲で変化される。すなわち、プレス装置10は、コンピュータやPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の速度制御部(不図示)を有し、この速度制御部によってモータは回転を制御され、これにより、各プレスロール12は、半製品2の搬送速度V2と同期されながら当該搬送速度V2と周速V12とが揃うように回転される。
【0032】
なお、この例では、プレスロール12はS45Cの鋼製であるが、その素材は何等これに限るものではない。例えば、アルミニウムや銅等の非鉄金属製でも良いし、適宜な耐熱性や熱伝導性を有する場合には、樹脂等の非金属製でも良い。
【0033】
加熱機構は、プレスロール12の外周面12sへのホットメルト接着剤の付着や同外周面12sへの繊維状連続シート6,4の貼り付きを抑制するための装置である。
詳しく説明すると、上下のプレスロール12,12で挟圧されるべき上記半製品2にあっては、その上下面をなす上下の連続シート6,4が、前述の如き繊維状シートであることから、挟圧時に、半製品2の内部のホットメルト接着剤が、各繊維状連続シート6,4の繊維間隙間を通って、同シート6,4の外面たる上下面へと染み出すことがあり得る。そして、染み出した接着剤は、プレスロール12,12の外周面12s,12sに付着してこれを汚し、場合によっては同外周面12s,12sに堆積するとともに、この堆積した接着剤の接着作用により、繊維状連続シート6,4が外周面12s,12sに貼り付いて巻き込まれ、その結果、繊維状連続シート6,4が破れてしまう。そして、その場合には、製造ラインを停止して、破れた繊維状連続シート6,4の除去や外周面12s,12sの清掃等といった復旧作業を行わねばならず、結果、生産性の低下を招いてしまう。そのため、かかるプレスロール12の外周面12sへのホットメルト接着剤の付着や同外周面への繊維状連続シート6,4の貼り付きを抑制し、同シート6,4の破損を防止する目的で、各プレスロール12を加熱して、その外周面12sの温度をその目標温度範囲の70℃〜120℃に収めている。なお、この目標温度範囲に収めることで、接着剤の付着や繊維状連続シート6,4の貼り付きが抑制されて同シート6,4の破損が防止される理由については後述する。
【0034】
かかる機能の加熱機構は、プレスロール12の内部に差し込まれた発熱体22と、プレスロール12の外周面12sの温度を計測する温度センサー24と、温度センサー24から出力される温度信号に基づいて発熱体22の発熱量を制御する温度制御部(不図示)と、を有する。
【0035】
発熱体22,22及び温度センサー24,24は、プレスロール12毎に互いに対応付けて設けられる。そして、温度制御部は、それぞれ、温度センサー24,24と発熱体22,22とを対応付けながら、温度センサー24の温度信号に基づいて、対応する発熱体22の発熱量を制御する。すなわち、上プレスロール12の温度センサー24の温度信号は、上プレスロール12内の発熱体22の温度制御に供され、下プレスロール12の温度センサー24の温度信号は、下プレスロール12内の発熱体22の温度制御に供される。
【0036】
発熱体22は、例えば電熱器であり、供給される電力に基づいて熱を発する。電力の供給及びその停止は温度制御部が行う。例えば、温度センサー24からの温度信号の指示値が、上記目標温度範囲の下限値たる70℃よりも高い第1閾値としての85℃以下になれば、温度制御部は発熱体22へ給電し、他方、温度センサー24からの温度信号の指示値が、上記目標温度範囲の上限値たる120℃よりも低く前記第1閾値よりも高い第2閾値としての105℃以上になれば、給電を停止する。これにより、外周面12sの温度を、常に、上述の目標温度範囲たる70〜120℃内に収めることを達成している。なお、温度制御部は、例えば、コンピュータやPLC等であり、自身が具備するプロセッサがメモリから適宜なプログラムを読み出して実行することにより、上述のような制御動作を行う。
【0037】
発熱体22の差し込み位置は、プレスロール12の外周面12sが全周に亘って均等に加熱されるように、その回転軸C12に関して点対称な位置に決められる。ここでは、各プレスロール12には、略棒状の発熱体22を回転軸C12に沿って収容する一つの収容孔22hが、その孔22hの中心を回転軸C12と一致させて形成されている。但し、何等これに限るものではない。例えば、複数本の収容孔を、プレスロール12の全周を周方向に等分する位置であって、外周面12sから径方向に等距離の位置にそれぞれ形成し、各収容孔にそれぞれ発熱体22を収容しても良い。
【0038】
温度センサー24としては、例えば、測温対象物たるプレスロール12の外周面12sの温度を同外周面12sと非接触状態で測温可能な非接触式温度センサーが使用される。かかる非接触式温度センサーの一例としては、測温対象物の輻射量に基づいて測温する放射温度計などが挙げられ、ここでは、これを用いているが何等これに限らない。例えば、接触式温度計を用いても良い。つまり、プレスロール12の外周面12sに、熱電対等の温度検知部を摺接させて外周面12sの温度を計測しても良い。
【0039】
ここで、前述のように外周面12sの温度を70℃〜120℃の範囲に収めることにより、プレスロール12の外周面12sへのホットメルト接着剤の付着や同外周面12sへの繊維状連続シート4(6)の貼り付きが抑制されて同シート4(6)の破損が防止される理由について説明する。
【0040】
なお、その前に、以下の説明で使用する用語の意味について説明する。「凝集」とは、接着剤が塊となることである。「凝集破壊」とは、凝集して塊となった接着剤が、引っ張られる等して引き千切られることである。「アンカー性が高い」とは、例えば接着剤が繊維状連続シート4(6)の繊維間隙間に広がることにより接着剤が繊維状連続シート4(6)から離脱し難くなることであり、逆に言えば、接着剤が繊維状連続シート4(6)に係止されて留まり易くなることである。
【0041】
以下、これら用語を用いながら、上述の理由について説明する。
先ず、繊維状連続シート4(6)がプレスロール12のロール間隙Grに到達した時点のホットメルト接着剤の温度は、約40℃〜60℃にまで降下している。よって、ロール間隙Grに到達直前の接着剤は、繊維状連続シート4(6)の繊維に付着しながら概ね凝集した状態にある。
【0042】
ここで、プレスロール12の外周面12sの温度が120℃よりも高い場合には、接着剤の温度よりも外周面12sの温度の方が格段に高いことから、外周面12sに繊維状連続シート4(6)の接着剤が接触した際に、外周面12sから接着剤へと大きな熱量が入力される。そして、この大きな入熱により、繊維状連続シート4(6)の接着剤は即座に軟化・溶融し、凝集破壊を起こしてプレスロール12の外周面12sに付着し、その結果、比較的早期に多量の接着剤が外周面12sに堆積してしまう。
【0043】
すると、当該堆積した接着剤を介して繊維状連続シート4(6)が外周面12sに接合してしまうが、ここで、仮に、この接合強度が、繊維状連続シート4(6)の引張強度よりも格段に低い場合には、ロール間隙Grの出側において、下工程から繊維状連続シート4(6)に付与される搬送用張力により、繊維状連続シート4(6)は外周面12sから円滑に引き剥がされ、よって破れること無く速やかに下工程へと搬送される。
しかし、外周面12sの温度が上述の120℃以上の如く高温の場合には、前述したように接着剤の凝集破壊に基づいて外周面12sには多量の接着剤が堆積する。すると、この堆積量が多いことに基づいて接着剤の接着力も強くなり、つまり、当該接着剤を介して繊維状連続シート4(6)が外周面12sに高い接合強度で貼り付くことになり、結果、繊維状連続シート4(6)に搬送用張力が作用しても、外周面12sから繊維状連続シート4(6)は剥がれずに踏ん張った状態となる。一方、ここで、繊維状連続シート4(6)は多数の繊維の集合体であることから、上記の接合強度よりも強度的に弱い部分を有し易い。そのため、最終的には、当該弱い部分を起点として破れることにより、繊維状連続シート4(6)の一部が外周面12sに貼り付いたままプレスロール12に持って行かれながら、残りの部分が下工程へと搬送されることとなる。つまり、繊維状連続シート4(6)は破損してしまうことになる。
【0044】
他方、プレスロール12の外周面12sの温度が70℃よりも低い場合には、この外周面12sの温度が比較的低いことから、この外周面12sが繊維状連続シート4(6)の接着剤に接触した際の接着剤への入熱量は小さくなる。よって、接着剤の軟化・溶融は軽度となり、凝集破壊は概ね生じずに、凝集破壊起因の外周面12sへの接着剤の付着は抑制される。
【0045】
但し、ロール間隙Grで挟圧される際に、当該接着剤は凝集状態且つ流動性の低い状態であるので、外周面12sに強固に圧着され、この圧着された接着剤を介して繊維状連続シート4(6)は外周面12sに強固に貼り付けられる。
【0046】
よって、上述と同様に、外周面12sに貼り付いた繊維状連続シート4(6)を、ロール間隙Grの出側において搬送用張力が外周面12sから引き剥がそうとする際には、繊維状連続シート4(6)において強度的に弱い部分を起点として破れてしまうことになる。
【0047】
これに対して、プレスロール12の外周面12sの温度が70℃〜120℃の範囲の場合には、外周面12sが繊維状連続シート4(6)の接着剤に接触した際の接着剤への入熱量が、概ね過不足の無い適量となり、この入熱により、接着剤は、適度な凝集性と流動性とを持つようになる。よって、繊維状連続シート4(6)の接着剤が外周面12sに接触した際に、大きな凝集破壊は起こらず、もって、外周面12sへの接着剤の付着は抑制される。また、接着剤は、適度な流動性を有しているので、挟圧時に繊維状連続シート4(6)の繊維間隙間に速やかに広がり、これにより接着剤は繊維状連続シート4(6)に留まり易くなる。つまり、繊維状連続シート4(6)に対する接着剤のアンカー性が向上し、このことも、外周面12sへの接着剤の付着の抑制に寄与する。更には、上記適度な流動性に基づいて、挟圧時に接着剤は柔軟に変形するので、プレスロール12に強固に圧着されてしまうことも抑制される。
【0048】
その結果、繊維状連続シート4(6)が外周面12sに強固に貼り付けられてしまうことは有効に回避され、以上をもって、繊維状連続シート4(6)は、ロール間隙Grの出側にて作用する搬送用張力により、プレスロール12の外周面12sから円滑に引き剥がされ、繊維状連続シート4(6)の破損は防止される。
【0049】
なお、かかる効果をより確実なものとするためには、プレスロール12の外周面12sの温度を、上述の70℃〜120℃よりも狭い範囲の80℃〜110℃に収めることが望ましい。
【0050】
ところで、上述の例では、半製品2の上下面をなす上下の連続シート6,4が、どちらも繊維状シートであったことから、上下のプレスロール12,12同士で半製品2を挟圧する際に、その内部のホットメルト接着剤は、半製品2の上下面の両面へと染み出す虞があった。このため、上下のプレスロール12,12の両方の外周面12s,12sの温度が70℃〜120℃になるように加熱していたが、半製品2の上下面のうちの一方の面にホットメルト接着剤が染み出さない場合には、染み出さない面の側に位置するプレスロール12に対しては、加熱せずに、染み出す面の側に位置するプレスロール12に対してのみ加熱しても良い。
【0051】
例えば、図2Bにおいて上面をなす連続シート6が繊維状シートであり、下面をなす連続シート4がフィルム等の液不透過性シートの場合には、半製品2の下面からはホットメルト接着剤は染み出さない。よって、この場合には、下のプレスロール12に対しては発熱体22や温度センサー24を設けずに、上のプレスロール12に対してのみ発熱体22や温度センサー24を設ければ良い。
【0052】
また、上述では、半製品2の一態様として、上下一対の繊維状連続シート6,4同士の間に吸収体3が介装されたものを例示したが、半製品2の態様は何等これに限らない。例えば、上下一対の繊維状連続シート6,4の間に吸収体3が介装されず、第2繊維状連続シート6と第1繊維状連続シート4とが全面に亘って当接して接合してなる半製品であっても良い。なお、その場合には、一方のシート4(6)が請求項の「繊維状連続シート」に相当し、他方のシート6(4)が請求項の「重合物」に相当することになる。更には、シート6,4の積層数も、何等二枚に限るものではなく、三枚以上であっても良い。また、当該態様の場合、つまり吸収体3が介装されない態様の場合にあっても、上下面の何れか一方の面をなす連続シート6(4)が繊維状連続シートであれば、本発明を適用可能であるので、前記一方の面をなす連続シート6(4)以外のシート4(6)については繊維状シートでなくても良い。
【0053】
また、半製品2の他の態様2aとしては、図3の斜視図に示すように、繊維状連続シート4の一方面に、重合物としての複数の吸収体3,3…のみが接着されてなる半製品2aを例示することもできる。つまり、繊維状連続シート4は吸収体3の下面側にのみ設けられ、上面側には設けられなくても良い。その場合には、繊維状連続シート4において各吸収体3が載置される部分にのみ選択的にホットメルト接着剤が塗布され、載置されない部分には塗布されないのは言うまでもない。例えば、繊維状連続シート4の幅寸法の方が吸収体3の幅寸法よりも広く、繊維状連続シート4が、吸収体3よりも幅方向の外側にはみ出す部分4aを有する場合には、当該はみ出す部分4aにはホットメルト接着剤は塗布されない。また、吸収体3がMD方向に連続して帯状に載置されるのではなく、同図4のように、MD方向に間欠的に島状に載置される場合には、繊維状連続シート4において吸収体3,3同士の間の部分4bにもホットメルト接着剤が塗布されないことになる。
【0054】
そして、かかる態様の半製品2aの場合には、図3に示すように、繊維状連続シート4の側に位置するロールたる下プレスロール12に対してのみ発熱体22や温度センサー24を設け、上プレスロール12に対しては設けなくて良い。これは、吸収体3の繊維の積層密度は一般に高いので、吸収体3の上面へのホットメルト接着剤の染み出しは、ほぼ無いと考えられるからである。但し、吸収体3の積層密度が低い等、上面への染み出しが想定される場合には、上プレスロール12に対して発熱体22や温度センサー24を設けても良い。
【0055】
図4は、プレス装置10の変形例10aの概略側面図である。
上述の実施形態では、上下一対のプレスロール12,12には、第2繊維状連続シート6と、吸収体3と、第1繊維状連続シート4とが一体に重なった状態の半製品2が供給されていた(図2A)。これに対して、この変形例では、図4に示すように、上下一対のプレスロール12,12には、吸収体3が載置された第1繊維状連続シート4と、第2繊維状連続シート6とが互いに分かれた状態で別々に供給され、プレスロール12,12同士の間のロール間隙Grで、これら連続シート4,6が重なり合って接合一体化されるようになっている。
【0056】
詳しくは、第1繊維状連続シート4は、例えば、水平方向に沿ってプレスロール12,12へと搬送される。一方、第2繊維状連続シート6は、鉛直方向の下方へ向かう搬送経路でプレスロール12,12に搬送される。そして、この搬送経路には、ホットメルト接着剤塗布装置30が配置されており、この塗布装置30によって、同連続シート6における両面のうちで吸収体3と対向すべき面に対してホットメルト接着剤が所定の塗布パターンで略全面に亘り塗布される。そして、上プレスロール12の外周面12sに略90°の巻き付け角度で巻き付いて外周面12sと一体となってロール間隙Grまで搬送され、当該ロール間隙Grにおいて、第1繊維状連続シート4の上面に上方から重なって、これにより、第2繊維状連続シート6は、第1繊維状連続シート4とによって吸収体3を挟むように同第1繊維状連続シート4に接合される。
【0057】
なお、この変形例の場合についても、前述の実施形態と同様、上プレスロール12の外周面12sと当接すべき第2繊維状連続シート6の上面からの接着剤の染み出しの可能性があり、また、下プレスロール12の外周面12sと当接すべき第1繊維状連続シート4の下面からの接着剤の染み出しの可能性がある。よって、これら上下一対のプレスロール12,12に対して、それぞれ上述の発熱体22,22及び温度センサー24,24が設けられている。そして、これにより、各プレスロール12,12の外周面12s,12sの温度は、70℃〜120℃の範囲に収められている。
【0058】
なお、これ以外の点は、概ね前述の実施形態と同じであるので、図4中では、前述の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0059】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0060】
前述の実施形態では、上下一対のプレスロール12,12の一例として、両ロール12,12とも、外周面12s,12sが平滑な平ロールである場合を例示したが、何等これに限るものではない。例えば、上下一対のロールの一方が、外周面から突出した複数の凸部を有するエンボスロールであり、他方のロールが、凸部を受ける平滑な外周面を有したアンビルロールであっても良いし、両方のロールがエンボスロールであっても良い。
【0061】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつを例示したが、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば何等これに限るものではなく、例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等でも良い。
【0062】
前述の実施形態では、加熱機構の発熱体22に電熱器を用いた構成を例示したが、プレスロール12を加熱できれば何等これに限るものではない。例えば、加熱機構として誘導加熱装置を用いても良い。すなわち、誘導加熱装置は、プレスロール12の外周面12sに非接触に対向配置された動磁場発生部を有する。そして、この動磁場発生部が外周面12sに対して高周波の動磁場を付与すると、この動磁場の作用により、外周面12sには渦電流が発生する。そして、この渦電流により外周面12sは発熱し、これにて当該外周面12sは加熱される。ちなみに、この誘導加熱装置を用いる場合には、プレスロール12には、導電性素材のロールが使用される。
【符号の説明】
【0063】
2 半製品、2a 半製品、
3 吸収体(重合物)、
4 第1繊維状連続シート(繊維状連続シート)、4a 部分、4b 部分、
6 第2繊維状連続シート(繊維状連続シート)、6a 部分、6b 部分、
10 プレス装置、10a プレス装置、
12 プレスロール、12s 外周面、
22 発熱体、22h 収容孔、24 温度センサー、
30 接着剤塗布装置、
Gr ロール間隙、C12 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロールを具備し、
前記一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス装置であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールを加熱する加熱機構を有し、前記加熱機構によって、前記ロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールが加熱されることを特徴とする吸収性物品に係るプレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記外周面の温度が80℃〜110℃の範囲に収められていることを特徴とする吸収性物品に係るプレス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記熱可塑性接着剤はホットメルト接着剤であり、
前記繊維状連続シートは、ティッシュペーパーであることを特徴とする吸収性物品に係るプレス装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸収性物品に係るプレス装置であって、
前記繊維状連続シートには、前記吸収性物品に係る吸収体が前記繊維状連続シートの前記連続方向に沿って間欠的に載置されており、
前記繊維状連続シートを第1繊維状連続シートとした場合に、前記吸収体は、第2繊維状連続シートで覆われることにより、該第2繊維状連続シートと前記第1繊維状連続シートとで挟み込まれており、
前記加熱機構が前記一対のロールの両方のロールを加熱することにより、前記両方のロールの外周面の温度が70℃〜120℃の範囲に収められていることを特徴とするプレス装置。
【請求項5】
互いの外周面を対向させて駆動回転する一対のロール同士の間のロール間隙に、熱可塑性接着剤を介して重合物が重ね合わされた状態の繊維状連続シートをその連続方向に沿って通す際に、前記外周面によって前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧するプレス方法であって、
前記一対のロールのうちで少なくとも前記繊維状連続シートの側に位置するロールの外周面の温度が、70℃〜120℃の範囲に収まるように前記ロールを加熱することと、
前記外周面の温度が前記範囲に収められた前記ロールの外周面によって、前記ロール間隙を通過する前記重合物と前記繊維状連続シートとを一体に挟圧することと、を有することを特徴とする吸収性物品に係るプレス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−50567(P2012−50567A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194485(P2010−194485)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】